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視覚・心理的評価による森林景観の位置づけ

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(1)

広葉樹研究 NQ 8:11∼27(1999) (11) 〈論文〉

視覚・心理的評価による森林景観の位置づけ

藤井禧雄*・石田志保*

On the Visual and Psychological Effects of Forest Scenery Yoshio Fu」II*and Shiho IsHIDA*

Summary

  The visual and psychological effects of fbrest scenery on people were investigated using the SD−method(Semantic Dif6》rential Technique). These were then compared with the effects of natural or arti品al scenery.   For this▲nvestigation, ten dif飽rent types of scenery around Tottod City were selected, including three types of fbrest scenery. As su句ect, twenty peoples were selected fξom students be▲onging to the Faculty of Agriculture at Totto亘University.   1ne reSU正tS may De SUmmanZeO aS tOl10WS:   1.It was fbund that a park and recreation facility compound should be composed of a broad−leaved 衣)rest or mixed fbrest, and not a needle−leaved fbrest. On the other hand, the lack of a broad vista was pointed out as a minus effect of fbrest scenery. For a recreation compound, therefbre, we recommend scenery composed of a mixed or broad−leaf fbrest with a broad field of grass and a正ong row of taU trees.   2.Compared with the outdoor field investigation, the indoor screening of scenery experienced some r《蓼ection due to unexpected exper油ental factors(heat, noise, high humidity etc.). However, the results of the principal analysis indicated that the visual effεcts increased and bodi豆y sensations decreased in the indoor experiment, since the pr(ヵecting screen fbr the s駐des was lacking in reality, actuality and scenlc depth. *鳥取大学農学部農林総合科学科森林生産学講座: D¢ρα伽θ〃’げFbrεぷ的5cjεηcε,仇c吻(ヅA8r∫cμ∫τμrε, 7b’rorεぴ輌vεr∫卿

(2)

(12) 藤井禧雄・石田志保

1 は じ め に

 世の中には自然的な,あるいは人工的な多種多様な景観が存在し,それ等に接する人々の心に様々 な効果を及ぼしているが,これら景観の中における森林景観の位置付けをしようと考えた。つまり, 森林景観の持つ視覚・心理的効果を明らかにしようとしたわけである。そこで,森林景観を含む, 鳥取市周辺に散在する多様な景観を選定し,鳥取大学農学部学生を被験者にして,計量心理学的手 法を用いてこの効果を検討した。  なお,この様な研究では,被験者を現地へ連れ出し景観を前にして評価する方法(1,5)と,現 地景観をあらかじめ撮影した写真・スライドを室内で示して評価する方法(2,3,4)とがある。どち らも,それぞれの長短を有するが,直接,両方法を比較した研究は見あたらない。そこで,本研究 ではこの両手法を併用して,両手法の比較が可能となるように計画した。

n 調査地と被験者および研究の方法

1 調査地

調査地として,人の心をなごませ.また痴れを癒す効果を持っρ老芝ら力ゑ巨前古国mの暑棚痴 林杯京慨cめる。衣⊥に,⊆れ寺調全地の概要を示したが,森林景観以外の7箇所は,それぞれ樹 木の有無,視点の高さ,自然景観か人工景観かなどの点を配慮して選定した。また,調査地を,鳥 取市を中心とする比較的狭い範囲の10箇所に限定したのは,自動車を使用してほぼ半日で各調査地 を一巡できる利便性を考えてのことである。 表1 調査対象地の概要 調査対象地 所在地:     備  考 1 海 岸 北斗海岸: 日本海を望む 2 針広混交林 青島: アカマツと広葉樹との混交林 3 広葉樹林 青島: イヌシデ,カクレミノ,タブなどの林 4 芝 生 布勢運動公園: 公園に付属した広い芝生 5 日本庭園 布勢運動公園: 裏山を背景に池や東屋を配した日本風庭園 6 水 田 河原町: 国道沿いの遠望の利く水田 7 針葉樹林 河原町: 足数の多い壮齢スギ入工林 8 砂 丘 鳥取砂丘: 観光地として有名 9 湖山池鳥撤 鳥取大学屋上: 屋上から眼下の湖山池を眺望

10並木道

鳥取大学構内: ケヤキとユリノキの高木並木道 注)調査時,上記の順序で各調査地を回った。

(3)

視覚・心理的評価による森林景観の位置づけ (13)

2 被験者

 鳥取大学農学部の20名の学生を調査の対象者(被験者)とした。彼らが,森林に関する知見を一 通り備え,また自然および森林景観に関心を持っていると考えたからである。これ等の被験者を, 晴れた日を選んで,いくつかのグループに分けて上記調査地を一巡りし,調査を実施した。

3 研究の方法

 計量心理学的評価法であるSD法(Semantic Differential Technique)を採用した。これは, 対象地ごとに表2に示すような21の形容詞対に対して,それぞれ5段階(−2∼+2)評価を行な う方法である。 表2 評価表 か な り 一2 どと ちい らえ かば 一,1 ども ちな らい で  、0 どと ちい らえ かば  i1 か な り i2 1うるさい 2寂しい う  ヰ、」李、・ 静かな 賑やかな ぴ   工v 6悲しい

7汚い

8不快な

9弱い

10疲れたような 11貧相な 12単調な 13不安な 14気持ちが沈む 15圧迫感のある 16親しみにくい 17見通しの悪い 18イライラする 19暑苦しい 20激しい 21異国的な .」_ ・・o 牛至い 嬉しい 美しい 快い 強い 躍動感溢れる 豊かな 複雑な 安心な はずむ 解放感のある 親しみやすい 見通しの良い のどかな 清々しい 穏やか 日本的な  本調査に即して具体的に述べれば,上記10箇所の調査地を順に廻り,景観を前にして被験者は, 表2の各形容詞対ごとに最も適当と判断した評価位置を選び印を付けて行くわけである。  解析は,このSD法により得られた各景観ごとの定量的評価得点に基づき,まず,主成分分析 を行い全体を概観し,次いで,各景観ごとにプロフィル曲線を描き,個々に検討を加えた。

(4)

(14) 藤井繭雄・石田志保

4 現地調査と室内(スライド写真)調査

 冒頭で述べたように,SD法は,現地へ被験者を連れて行く方法(現地調査)と,室内において スライド写真などを見せる方法(室内調査)とに大別される。  現地調査では,身体全体でその場の雰囲気を実感できるので,臨場感にあふれた中での評価が可 能な反面,視覚以外の多様な因子(その日の寒暖や湿度,他の訪問者による騒音や混雑など)の影 響を受け,評価にバラツキが生じ易い。室内調査では,これら不測の因子による影響は免れる反面, 立体感や臨場感に乏しい中での評価となる傾向は否めない。  そこで,直接,現場に出掛ける調査を実施した後,他B,室内において10箇所の景観を撮影した スライド写真を順に見せ,被験者に同様の評価を行ってもらった。なお,室内調査に参加した被験 者は,現地調査に出i掛けた被験者20名中の15名であった(残る5名については調査できなかった)。

皿 結果と考察

1 現地調査の場合

(1)主成分分析の結果 頚柚言周杏で得ナ宇罰三柵径占 r据胎う搭ワn・乞のヨz格楠、 Lテ圭仁イ|,、rr士虚心呑ま斤疹乏二^ナ,玄士.里痴1、lrに/(「司 形谷6円メ丁 弟1王成クナ 弟z王成分 第3ヨ三成分 1うるさい一静かな 一〇.015

一〇.266 2寂しい一賑やかな 0,148 一〇.310 0,178 3かたい一やわらかい 0,234 0,137 0,046 4暗い一明るい 0,338 0,033 一〇.068 5重い一軽い 0,337 0,005 0,015 6悲しい一嬉しい 0,327 一〇.008 0,173 7汚い一美しい 0,002 0,239 一〇.116 8不快な一1央い 0,104 0,315 0,016 9弱い一強い 一〇.166 一〇.081 一〇.280 10疲れたような一躍動感溢れる 0,150 一〇.179 0,373 11貧相な一豊かな 一〇.180 0,168 0,406 12単調な一複雑な 一〇.196 一〇.021 0,458 13不安な一安心な 一〇.047 0,310 0,330 14気持ちが沈む一はずむ 0,309 一〇.008 0,157 15圧迫感のある一解放感のある 0,322 0,091 一〇.092 16親しみにくい一親しみやすい 0,254 0,181 0,210 17見通しの悪い一良い 0,315 0,085 一〇.136 18イライラする一のどかな 0,133

0,023 19暑苦しい一亨青々しい 一〇.224 0,264 0,090 20激しい一穏やか 一〇.050

一〇.122 21異国的な一日本的な 一〇.143 0,278 0,164 固有値 8,247 5,963 2,484 寄与率 0,393 0,284 0,118 累積寄与率 0,393 0,677 0,795 の分析には,鳥取大学

情報処理センター

(HITAC M−280)の統

計パッケージSASを

使用した。  表3は各主成分ごと

の固有ベクトル

(Eigen vector)を示 したものであるが,第 2主成分までの累積寄 与率は67.7%,第3主 成分まででは79.5%で あった。 第1主成分 は,「暗い一明るい」, 「重い一軽い」,「悲し い一嬉しい」などの形 容詞対の係数値が大き く,“気分高揚因子”

(5)

視覚・心理的評価iによる森林景観の位置づけ (15) 表4 主成分得点(現地調査 20名分) 調査対象地 第1主成分 第2主成分 第3主成分 湖山池鳥鰍 0,772 0,363 0,646 並木道 0,703 一2.085 1,180 海 岸 0,427 0,371 一〇.401 針広混交林 一1.050 0,298 0,803 広葉樹林 一〇.570 一〇.062 1,250 芝 生 1,174 0,194 一〇.874 日本庭園 一〇.775 0,858 0,112 水 田 0,615 L551 0,107 針葉樹林 一1.894 一〇,672 一L256 砂 丘 0,596 一〇.815 一L567 る妾食 亭袖禽 田e 畠 霞 箋 養 目 2、s 2 1.5 t O、5 0 −0.5 一1 と名付けた。同様に,第2主成分は,「激 しい一穏やかな」,「イライラする一のどか な」,「うるさい一静かな」の値が大きく, “精神安定因子”と,また,第3主成分は, 10∼13番目の形容詞対の値が大であり“ダ イナミック因子”と名付けた。 水田 ● 日本庭園       ●針広 ャ交林 @  ●   湖山池 @  鳥轍 @●  ○  芝生 C岸       ● 広葉樹林 砂丘   ○ j薫樹林 ● 各景観ごとの主成分得点(スコア)を示 したのが表4,その一部を図化したのが図

1,図2である。図1は,第1および第2

       主成分得点をプロットした        ものであるが,右上に位置        する景観ほど人の気分を高        揚させ,また,精神を安定        させると評価され,左下に        位置する景観ほど,その逆        の評桶キ亭↓十ナタご方ピカ・Z、一 コんさ  一2.5   −2   −1.5   −1   −0.5    0    0.5    1    1・5    2      暗い,重い,悲しい    第1主成分:気分高娼因子   明るい,軽い,嬉しい     図1 主成分分析(現地調査,20名分)   2.5 ふゑゆ   ア 繍畠 い’: 》 。, ミ 。 書 →.5 目   “1   −1.5 霧馨編 斉思壊  一2   −2,5    −2.5 ●広葉樹林 ●並木道 ●針広混交# ●罐 ●日本 薗 ●水田 ●梅岸 ●芝生 ●針葉樹林 ●砂丘 一2  −L5  −1  −0.5  0  0.5  1  1・5  締い,重い,悲しい     第1主成分:気分高嬬因子      明るい,軽い,嬉しい  図2 主成分分析(現地調査,20名分) 2 的風景である水田であり,また,芝生であった。     はげしく, 評価されたが,これは,調査時,多数の人々が並木道を往来していたためらしいが,この点につい ては後述する。  図2は,第1および第3主成分得点をプロットした図であるが,第3主成分を見ると,広葉樹,   針葉樹杯景観(以下,すべ 2,5   て「景観」を省略)が左下   にあることである。すなわ   ち,両主成分の得点がマイ   ナスであり,暗くて,重々   しくて,悲しい景観だと評   価された。また,針広混交   林と広葉樹林は日本庭園と   似通った評価を受けており,   とりわけ混交林は日本庭園   に近い評価であった。また,   穏やかで,のどかで,比較 2,5   的明るいなどと評価が高   かったのは,伝統的な日本    イライラし,うるさいと

(6)

     か   

どと   ども   どと   か      な   ちい   ちな   ちい   な      り   らえ   らい   らえ   り

        かばで かば

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     ロ        コ        ロ       ユテヴテテパコ のノ 1うるさい    .一“‥一‥ ア一‥一‥「’…ノ…・    1 2寂しい     r−・一一一一一了一一 一’←r−““一一一一㌍≡≡“←’一コ 3かたい     1−一一『一・ドー一一、一一一一一・・丁一一一一一㍉ 4暗い      :一一一一一’・一’

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6悲しい     :‥‥’”‥‥≡‥      : 7汚い    i        −・一一…一・: 8不快な 9弓§し、       i       ・一→一・一・一一一一・:

10疲れたような  ∴,._._一.__      i U貧相な 12単調な     ト・・^一一・一一一・’‥≡.’      ・ 13不安な     :・       ・ ▲4気持ちが沈む  ㌍・…・…一一一…・      、

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l6親しみにくい  ∵’一’“’…’w吟”一’         : 17見通しの悪い 1……一一・       、 18イライラする  ’       i

l9暑苦しい  .       …’…’i

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針葉樹林

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図3 プロフィル曲覇

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   かばで かば

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     広葉樹林

調査、20名分)

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(7)

 1うるさい  2寂しい  3かたい 4暗い  5重い  6悲しい  7汚い  8不快な  9弱い 10疲れたような 11貧相な 12単調な 13不安な 14気持ちが沈む 15圧迫感のある 16親しみにくい 17見通しの悪い 18イライラする 19暑苦しい 20激しい 21異国的な か    どと   ども   どと な   ちい   ちな   ちい り   らλ   らい   らえ

    かばで かば

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六 外 鴻 盟 蔵 ∪ 図5 プロフィル曲絹 調査、20名分)

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(8)

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かばで かば  

かばで かば

 ハユ  む   エ        ヨ  む   ハ    ::::::;::::⊃;;il:1二二i:二::二li l二:::::::i::二’:;;i三ii::i:=::::i;㌫な 一一…− 堰│…・一・一…一…一・i……・・i−一……一……一一一……i・やわ…    エ    ニ  エ バロ   び トロ   ロニ         ロ   コ ぐ るい __ 堰D._,,,、_一._.__.;__i..__、_一_、_.,_;5軽い ・’一・・ O一・・一一一一一一一・つ一一・一・一一・  二・一一… i・・一一・一一一・一一’… 一・・’一一一・i 6嬉しい …… 堰│一……・’…・…・…一…’・ i…・一…i……一一・……一…・・……i7美しい ・一一 O一一一一会一一・… 一一一・ 一一一一・・  i−・一… i・ウ噺吟舎吟・一… ’・・・… 一『『’一’i 8快い ..一._.:一___一.. 一.._一一一^才____.____‘  し一一.,...∴...噺.一,一’ ,...∴,一、一、一.一..: 9弓童し、 ,_..L_」,_.一..三___i L−.....∴.一_∴__;一,..一_.i正0鋤離れる 一一 E…一一・…一一一一…一… 奄堰│一…i・・……・…一・・…・−iU豊かな ::一.:;::i∼iこ:::1:二:::ご1:::::::‡.::::ili;;;:’:;:::::::::il㌫竺 …+一一・÷一…一・…一一’ 堰p…・−i−…・{一一一{…・一…・il・はずむ :::::i::::ご::::::二’乙::二li;:::::::‡::::::‡:::::::1.:::::二:i㍑漂芸 ’…‘“』’…一一這…一・一一’一… 奄戟│……i…一一…{…−i−・一一il7見通しの良い   パ    ふ  ロ     ノ  し    し    の    り   コぷエヨのどかな …一一…J……..’一_._ 奄堰Q._.i..__1__i,.._.i19清・し・ ::⊃二⊃’;;≡i::..二二::一::::::::i::::::::i::::::::;:::Nl霊㌶な

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調査、20名分) 水田

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寸欝汁口ぺ画ふ培斗宇砥叶く寿㌣管←

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(9)

視覚・心理的評価による森林景観の位置づけ (19)   2  1.5   1 平0・5

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点_0。5  −1  −1.5  −2 ノ← 卜\ 」、\こ

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→一L葉樹林一←針広混交林一 一噛一坙{庭園

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      形容詞対の番号   図4 プロフィル曲線(現地調査,20名分) 木道のプロフィル曲線を 見ると,かなりうるさい と評価されている。つま り,調査した時点のこの 並木道を往来する人々の 多さと,そのために生じ た騒音とがやはり影響し ていたことが分かる(後 述するスライド写真によ る調査で,この点が一段 と明瞭になる)。  図6は,樹木のない景 観である水田,芝生,海岸,砂丘のプロフィル曲線を示したものである。これ等の景観は,森林景 観とは逆に,見通しがよく,開放感があり,明るいとされる反面,いずれも,単調であると評価さ れる点が特徴的であった。 / n 、  ヰ 、. 己 ①全般的に言えば,人の気分を高揚させ,精神を安定させる効果は,森林景観よりも,水田,芝 生,湖山池鳥敵などが勝っていた。 ②針広混交林と広葉樹林は,人間が巧みに自然美を取り込んだ日本庭園と似通っているとの評価 を受けた事実で明らかなように,人の精神を安定させる効果を持っている。一方,針葉樹林は,人 の心を暗くて悲しい気分にさせた。したがって,リクリエーションの場や公園などには,針葉樹林 は相応しくなく,針広混交林か広葉樹林がより好ましいと言えよう。  すべての森林景観は,マイナス面の評価として「見通しの悪さ」が指摘された。  ③日本の伝統的景観である水田は,気分高揚性,精神安定性ともに高い評価を受けた。次いで, 芝生,鳥轍風景が高い評価を受けた。これ等景観はいずれも,見通しのよさが高く評価されたが, 一方で,かなり単調な景観であるとされた。  ⑤広葉樹林,並木道,針広混交林は,複雑かつ躍動感のある景観だと評価された。  結局,人の心を高揚させ,情緒を安定させる景観とは,ある程度の見通しがあり,かつ単調では ない景観と言うことになる。すなわち,広葉樹林ないしは針広混交林による空間を中核とし,それ に,広葉樹高木の並木道と広い芝生とを組み合わせた空間などが好ましい景観の典型であると言え よう。

2.室内(スライド写真)調査の場合

上述10箇所の景観を撮影したスライド写真を室内でスクリーンに投影して,同様の調査を行った。

(10)

(20) 藤井祠雄・石田志保 表5 固有ベクトル(室内調査 15名分) 1うるさい一静かな 2寂しい一賑やかな 3かたい一やわらかい 4暗い一明るい 5重い一軽い 6悲しい一嬉しい 7汚い一美しい 8不快な一快い 9弱い一強い 10疲れたような一躍動感溢れる 11貧相な一豊かな 12単調な一複雑な 13不安な一安心な 14気持ちが沈む一はずむ 15圧迫感のある一解放感のある 16親しみにくい一親しみやすい 17見通しの悪い一良い 18イライラする一のどかな 19暑苦しい一清々しい 20激しい一穏やか り1里圃白くヨカ・_口木舶フち 一〇.212  0.211 −0.037 −0.223 −0.191 −0.003

8:1;1

 0.252 −0.110 −0.253 −0.059 −0.133 −0.065  0.183 −0.014 −0.263 −0.314 −0.025 −0.117  0.061 −0、183 ∼0、034  0.094  0.094  0.307 被験者は,現地調査に 参加した者の中から再 参集できた15名であっ た。なお,これら被験 者は,すでに現地に出 掛けその場の雰囲気を 体感した後で室内調査 に臨んだわけであるが, 本室内調査では,先入 観は捨て,スライドに よる景観に基づいた評 価のみを行うようにと, 事前に注意を促した。  (1)主成分分析の 結果  宇ピ }↓ノぴ→一領ノペノベ↓巴 累積寄与率

0528

0726

0865

たものであるが,第2 主成分までの累積寄与 率は72.6%,第3主成分まででは86.5%であった。  現地調査では,体感的(身体全体で感じるような)な要因を示す形容詞対の係数値が大きかった のに対し,室内調査では,視覚的で,また景観を客観視するような形容詞対の係数値が大きくなっ た。また,室内調査では,うるさい一静かな,など騒音に関する形容詞対の係数値は大きくなかっ た(表3と比較)。 すなわち,第1主成分では,係数の大きかった形容詞対は,     16 親しみにくい一 親しみやすい     8 不快な   一 快い

    6 悲しい  一嬉しい

であり,景観に対する好悪を表す要因から成り 査では,「気分高揚因子」であった。  第2主成分は,同様に,     12 単純な   一 複雑な

    11貧相な   一豊かな

    17 見通しの悪い一 見通しの良い 「好感度因子」と名付けた。これに対する現地調

(11)

視覚・心理的評価による森林景観の位置づけ (21) であり,景観の持つ密度や深さ・立体感を示す「視覚構成因子」であった。現地調査では,「精神 安定因子」であった。  第3主成分は,     19 暑苦しい一 清々しい     20 激しい 一 穏やか     21異国的な一 日本的な であり,その場での居心地や落着きの良さなどを示す「居心地因子」であった。 これは体感的な因子と言えるが,異国的一日本的のような視覚的要素も含まれる。現地調査では, 「ダイナミック因子」であった。 2.5    2 ぷだニ き鑓  豊1’5    1畠 藁 ゜・5 §  。 § .。.5

2

針広 混交林 ● 広葉樹林 ● 日本庭 並木道 ● 針葉樹林 湖幽池 ●水田 ● 梅岸  景観ごとの各主成分 得点(スコア)を図示 したのが図7,図8で ある。

 図7は第1および第

2主成分を示したもの ナ芸晶書  晶っトこ舌  可レ田キ〉 廷偲⊃ ぼ田頻 卦楓パ 3条{量 ⊃傘特 ヤ田田 畠 弩 § 駕 蒜貧 柳艇蹴

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_2.5     −2     ’L5     −1     −0.5     0      0・5      1     親しみにくい       第1主成分:好感度囚子     不快な,悲しい     図7 主成分分析(室内調査,15名分) 2.5 2 1,5 1 o.5 o 一〇.5 一1 一1.5 一2 一2.5  −2.5     −2     −1.5     −1     −0噺5     0     0.5          親しみにくい,         第1主成分:好感度因子       不快な,悲しい      図8 主成分分析(室内調査,15名分)  1.5    2 親しみやすい 快い.嬉しい 2.5 日本庭 水田 湖山池 ● 針葉樹林 鳥撒 ● ● 海岸 ● ● 並木道 針広混交林 ● ● ● 広葉樹林 ● 砂丘  1.5    2 規しみやすい,  快い,嬉しい 2.5 すくて好感度の高い景 観であり,また,針広 混交林,広葉樹林およ びB本庭園は優れた視 覚構成を持つと評価さ れたことが分かる。針 葉樹林はやはり評価が 低かった。図8の第3 主成分「居心地因子」 を見ると,日本庭園は 日本的で,砂丘は異国 的だと常識的な評価が なされている一方,広 葉樹林,針広混交林の 評価が予想外に低くな っている。  さらに詳しい考察は, 次節の現地調査との比

(12)

(22) 藤井祠雄・石田志保 較のところで述べる。 (2)プロフィル分析の結果 プロフィル分析についても,次節の現地調査の場合と比較して論ずる。

3.現地調査と室内調査との比較

 (1)主成分分析結果の比較  室内調査に参加しなかった被験者5名分のデータを除く,残り15名分の現地調査データを基に, 再度,主成分分析を行った結果が表6である。室内調査結果との比較を容易にするためである。  先に示した表3(被験者全20名)とこの表6を比較すると,係数値が最も大きいグループに属す る形容詞対は,第2主成分では変化がなかったが,第1および第3主成分では,第3位の係数値を 示した形容詞対が異なっていた。しかし,各主成分の持つ意味を大きく変えるほどの異差ではなかっ た。  室内および現地調査における主成分分析結果を重ね合わせたのが図9である。横軸に第1主成分 (現地調査:気分高揚因子,室内調査:好感度因子)を,縦軸に第2主成分(現地:精神安定因子, 窒内:相営機成閃早、がプロツトLてあん 形谷副刈 弟⊥土成クア 弟z王成クオ 弟5王灰分 1うるさい一静かな 0,026

2激しい一穏やかな 0,118 一〇.302 0,309 3かたい一やわらか 0,233 0,151 0,002 4暗い一明るい T重い一軽い

0,058 O,030 0,004 O,045 6悲しい一嬉しい 0,322 0,008 0,216 7汚い一美しい 0,033 0,238 0,212 8不快な一快い 0,104 0,315 0,016 9弱い一強い 0,162 一〇.122 一〇.312 10疲れたような一躍動感溢れる 0,170 一〇.219 0,047 11貧相な一豊かな P2単調な一複雑な 0,184 O,219  0.097 │0,028

13不安な一安心な 0,082 0,310 0,337 14気持ちが沈む一はずむ 0,280 0,005 0,092 15圧迫感のある一解放感のある

0,103 一〇.062 16親しみにくい一親しみやすい 0,231 0,159 0,225 17見通しの悪い一良い

0,091 一〇.108 18イライラする一のどかな 0,132

一〇.111 19暑苦しい一清々しい 一〇.251 0,232 一〇.026 20激しい一穏やか 一〇,088

一〇.091 21異国的な一日本的な 一〇.168 0,268 0,035 固有値 8,408 5,261 2,409 寄与率 0,400 0,251 0,115 累積寄与率 0,400 0,651 0,766 分といえども,両調査 における各主成分の意 味するところは幾分異 なるが,右上に位する 景観の評価が高く,左 下にある景観の評価は 低いことには変わりが ない。  すなわち,現地調査 と比較して,室内(ス ライド写真)調査では, ①森林景観では,広 葉樹林および針広混交 林の評価はより高くな り,逆に,針葉樹林景 観の視覚構成的因子は 幾分高まったものの, より好感度の低い景観

(13)

視覚・心理的評価による森林景観の位置づけ (23)  2,5

 2

 1、5

 l

 o,5 書 碧 ゜ 塙…−o.5  −1  −1,5  −2  −2,5 針 針

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底   広 ⑧⑧並 [コ室内贋査 O娩百査 困 回   を

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 芝 ⑧ 湖一湖山池 泉険 並一並木直 海一肖岸 良一針広醒交柊 広一広葉樹林 芝一芝生 庭一日本庭田 水一水田 針一針蛮桜林 砂一砂丘 一2.5    −2   −1.5    −1   −0.5    0    0.5     |    1,5    2    2.S       第1主成分   図9 主成分分析(現地・室内調査の比較) だとされた。  ②スライド写真では,視覚構成因 子,すなわち,景観の立体感や広が りの程度が減ずるためか,海岸,砂 丘,芝生,湖山池鳥撤などは大きく 評価を下げた。  ③並木道はかなり評価が高くなっ たが,やはり,スライド写真(人の 往来がないときの撮影)では人の群 と騒音の影響が除去されたためであ ろう。  (2)プロフィル曲線の比較  以上,両調査問の相違を概観したが,次に,現地および室内調査のプロフィル曲線を重ね書きし た図10∼図12を考察する。  3種類の森林景観を∼括した図10を見ると,現地調査で見られた森林景観のマイナス評価面であ 一  一  、,  、   _  〔  ⊂・ 、 1     −一・旦_土一  一  ,  r唱   、  ふ   、   L   一  、       、 _  、  一、“    〒門 r.r 訓十   /十.工山 、一  占  ♪  ロ   ノ  、    { 十  } ÷ 違をあげると,針葉樹林では,全体的に現地調査の方が高い評価を得る傾向があった。しかし,形 容詞対1.うるさい一静かな,を見ると,室内調査の方がかなり静かであると評価されている。こ れは,現地調査時,針葉樹林内は蝉の鳴き声がうるさく,また蚊が多かった点が評価に影響を与え たが,室内調査ではこれ等因子が除去されたためであると推察できる。逆に,広葉樹林では形容詞 対1∼6,つまり,賑やかさや明るさなどは室内調査の方が平均得点が高い。針広混交林では,全 体的にみて顕著な異差は認められなかった。  樹木のある景観および鳥鰍景観をまとめた図11を見ると,並木道は室内調査の方が全体的に曲線 が右寄りとなり,評価が高くなっている。とりわけ,すがすがしさ,穏やかさ,のどかさが増して いる。そして,うるささが大きく減じ,先の主成分分析の結果を裏付けている。日本庭園および湖 山池鳥鰍は,現地,室内調査でほとんど変わりがなかった。鳥撤風景では,現場調査の方が開放感 があり,見通しがよいとされたが,当然の結果であろう。  樹木のない景観を一括した図12を見ると,両調査において水田,芝生,砂丘は,全体的にはほと んど変化がなかった。ただ,かなり単調だと評されるこれ等景観でも,室内調査では,水田はより 賑やかさが増加し,逆に,砂丘はより賑やかさが減ずる傾向があった。海岸は,室内調査では,全 体的に曲線が左寄りとなり評価が減じている。  この様に,景観によっては,室内調査と現地調査でかなり異なった傾向を示すことが分かる。た だ,室内調査では,使用したスライド写真がその場の雰囲気を十分適正に表現し得ていたかどうか

(14)

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 1うるさい  2寂しい  3かたい  4暗い  5重い  6悲しい  7汚い  8不快な  9弱い 10疲れたような 1{貧相な 12単鯛な 13不安な 14気持ちが沈む 15圧迫感のある 16親しみにくい ]7見通しの悪い 18イライラする 19暑苦しい 20激しい 21異国的な N ω 《 o o → ◎o q∋ ; = : : = 宗 : 二 ε 呂 巴

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ご 1  1静かな  2賑やかな  3やわらかい 4明るい  5軽い 6嬉しい 7美しい 8快い  9強い 10躍動感溢れる 11豊かな {2複雑な 13安心な 14はずむ 15解放感のある 16親しみやすい ]7見通しの良い 18のどかな |9;青々しい 20穏やか 21日本的な 針葉樹林 針庄 広葉樹林 顯 田 枡 図10 プロフィル曲線 室内調査の比較)

(15)

       平均得点       平均

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 ]うるさい  2寂しい  3かたい  4暗い  5重い  6悲しい  7汚い  8不快な  9弱い ]O疲れたようなεi 11貧相な 12単腸な 13不安な 14詩ちが沈む当 15圧迫感のあるま 16親しみにくい三 17見通しの悪い: 18イライラする完 19暑苦しい 20激しい 21異国的な

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(16)

■ 巳 1うるさい 2寂しい 3かたい 4暗い 5重い 6悲しい 7汚い 8不快な 9弱い 〔o o ふ 閉 o ぺ oo 昭コ 10疲れたような; 1|貧相な   = 12単鯛な   = 13不安な    = 14気持ちが沈む= 15圧迫感のある宗 16親しみにくい嵩 17見通しの悪い二 18イライラする完 19暑苦しい   二 20激しい   苫 21異国的な  巳        平均得点       平均得点

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水田  1静かな 2賑やかな 3やわらかい 4明るい 5軽い 6嬉しい 7美しい 8快い 9強い 10躍動感溢れる 11豊かな 12複雑な 13安心な 14はずむ 15解放慈のある 16親しみやすい 17見通しの良い 18のどかな 19;青々しい 20穏やか 21日本的な 田 酎 注)芝生      、     図12 プロフィル曲線 水田で、一部折れ線が抜けてい 室内調査の比較) 、2本の線が重ることを示している。

(17)

視覚・心理的評価による森林景観の位置づけ (27) という問題も考慮する必要がある。  なお,両調査の比較において,特に大きい平均得点差を示した形容詞対は,暑苦しい一清々しい, うるさい一静かな,寂しい一賑やかな,であり,いずれも体感的要素を持つ形容詞であった。

IV 総 括

好ましい景観,および室内調査の特徴

 人が心の安らぎを求めたり,また疲れを癒す場である公園やリクリエーション施設は,広葉樹林 ないしは針広混交林が相応しいと言う結果になった。ただ,森林景観は,他の景観と比べると,共 通して見通しの悪さが指摘された。そこで,森林景観とともに,見通しの良さなど,つまり, Vistaに富んだ高木から成る並木道や芝生が併設された景観(空間)が好ましいと推察した。一方, 針葉樹林は公園などには相応しくないとされたが,逆に,人の心を沈静化する場所には相応しい景 観だと言える。  次に,室内(スライド写真)調査では,並木道および針葉樹林景観の考察で見たように,現地の 騒音や昆虫類の存在など不測因子の影響を除去できる効果が認められた。現地調査では,この他に 調査日の暑気,高湿度,強風などが被験者に影響を及ぼし,引いては評価をも左右すると考えてお く必要がある。あるいは,逆に,現地調査における評価は,これら被験者の心身状態の影響を含ん 才ミ弐汀江》7ぐ上 フ し 9 ≡よ  ト ♪1 し,スライド写真では,現場に立つ場合のような臨場感,立体感,奥行きの深さなど体感的効果が 減じ,視覚的要素が増すことが,主成分分析の結果から明らかになった。

引用文献

(1)藤井禧雄・永田倫嗣(1992)林道の切取法面及び路線形状が周囲景観に及ぼす影響について,   鳥取大学演研報 21:177−193. (2)小林洋司・塩原幸夫(1985)林道法面保護工の景観的立場からの評価(1)一計量心理学的   手法による解析一,日林論 96:653−654. (3)小林洋司・山日祐子(1988)林道路線が景観に与える影響,日林誌 70:352−361. (4)山本敏子(1989)切取りのり面が林道の景観に及ぼす影響評価に関する研究,日林論 100:   781−782. (5)吉田博宣(1981)道路切取のり面の景観評価に関する研究,斜面緑化研究 3:50−82.

参照

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