―厳格なスポーッ・クラブ指導者への支持度 を規定する要因の分析―
福 元和行 ・遠藤勝 恵* (平成 6年6月21日受理) 研 究 目的 今 日のスポーツの状況 は,大
衆化,多
様化,大
型化,
日常化 な どの言葉 で表現 され,人
間欲求 と してのスポーツ欲求が顕在化 した もの と考 えることが出来 るが,ス
ポーツ欲求の充足 に際 してのス ポーツ指導者の重要性 については言 うまで もない。 過 日,地
域社会 のスポー ツ・ クラブの指導者 に求め られる条件 を明 らか に しようとして因子分析 を行 った結果,第
1因子 として「資質」が抽 出 されたが,抽
出 された資質の内容 は,明
朗 な人,信
頼感 のある人,親
切 な人,ユ
ーモアのある人,判
断力 のある人,の
5変
数であった(1)。 ところで , 厳格 な人 とい う変数 について も少 なか らぬ支持 が寄せ られたが,因
子 の中に組み込 まれなか った。 それは厳格 な人,
とい うイメージは先の5変
数がそれぞれ持つ イメー ジと大 きく異 なるため,一
つ だけの変量 があ らわす変動 は共通 囚子 の中に くみ込 まれ ない ② ためであった とも考 えられるが, 厳格 な指導者 を支持す る人の分析 は残 されたままであ る。 本研究 は地域 のスポーツ・ クラブのメ ンバ ーによる厳格 な指導者へ の支持度 を規定 している要 因 を探 ることを研究 目的 としている。 研究方法1
データの収集 公営体育館 を利用 して活動 しているスポーッ・クラブのメンバーに対 して,留
置法による調査 を 行 った。135名の有効回答 を得たが,標
本の構成は表-1の
通 りである。 調査 は1992年4月 に実施 した。調査内容は個人及びクラブの属性に関 して10項目,指
導者の条件 の規定要因に関 して33項目を設定 したが,後
者 については「全 く思わない」から「強 く思 う」 まで のワーデ1ン
グによ々リッカー ト尺度の5段
階評定 を用いた。*山
口大学教育学部福元和行・遠藤勝恵 表
-1
標本 の構成1.性
別 男子 女子 %86 637
49 363
2.年
齢 30才 未満 30才 代 40才 代 50才 以上57 422
25 185
19 141
34 252 技術 の向上3.ク
ラブヘ の参加スポー ツを楽 しむ 目的
仲 間 と楽 しく運動 健康 づ くり ,そ の他
16 119
68 504
20 148
31 230
半年未満4.ク
ラ
ブ
の
在
籍
年
数
予
算
歓
土
:毎棄
穏
3年以上8 59
6 44
25 185
96 711
5.ク
ラブ種 目につ い ての学生時代 の運動 経験 同種 目の クラブに入 って運動 していた 異種 目の クラブに入 って運動 していた 授 業 で教 わった 放課後 な どに個 人的 に行 った 行 った こ とが なか った68 504
4 30
7 52
13 96
43 319
6.ク
ラブでの役 割 リー ダー 。世話人 会計 ・連 絡係 役職 な し 21 1568 59
106 785
7.ク
ラブの活動 目的 技術 の向上 スポー ツを楽 しむ 健康づ くり その他26 193
88 652
13 96
8 59
8.ク
ラブのメ ングヾ― 数 10人未満 10人以上20人未満 20人 以上30人未満 30人 以上20 148
50 370
16 119
49 363
9.指
導者 の有無 い る(ク ラ ブの メ い る(ク ラブの メ い ない ンバ ー) ンバ ー以外)481
52
467
・ 法 指導者が決定 練 習計 画 の決定方 リー ダー・世話人が決定 指導者 と リーダー・世話人が相談 して決定 クラブ員全員で決定 その他12 89
43 319
16 119
48 356
16 119
2
データの分析 スポーツ・クラブ員による厳格な指導者への支持度 と各変数 との関係 を探 るため,
χ2値及び ピ アソンの相関係数 を求め,
さらに林の数量化理論H類
を適用するとい う3種
類の解析方法 を採用 し たが,数
量化 Ⅱ類の適用 に関 して,回
答数が きわめて少ないカテゴリーはパラメータが不安定にな りやすい・ ), とい う問題 を回避す るため,個
人及びクラブの属性以外 のアイテム と外的基準 につ いては「全 く思わない」か ら「強 く思 う」 までの5段
階評定 を「思わない」「わか らない 。思 う」 の2段
階評定に統合 し直 した。解析の条件はT=2,ア
イテム数42,
カテゴリー総数96である。 結果及び考察1
外的基準 と説明変数の クロス集計結果及び相関1)個
人及 びクラブの属性 個人及び クラブの属性 と外 的基準 (スポーツ・ クラブ員 による厳格 な指導者へ の支持度)と
の関 係 を見 ようとしたのが表-2で
ある。設定 した10変数の うち,2変
数 について有意差が認め られた。 表-2
外 的基準 と個人及び クラブの属性関連変数 の クロス集計結果及び相関 クロス集計 本日FEl 要因説 明変数 χ2値
P
相 関係数 個 人及 び在籍年数 クラブの所属
指導者 の有無
-211
194*<.05
在籍年数が半年未満の人では,指
導者 として厳格な人を求める人が約38%で
あるのにたい して3年
以上在籍 している人では,厳
格 な人を希望 している人が約70%と
なってお り,在
籍年数が長 くなる と,指
導者 として厳格な人 を求める人が多 くなる傾向が表れている。 指導者の有無別では, クラブの指導者 として厳格な人を求める人は,所
属 しているクラブに指導 者がいる場合に多 く見 られるが,特
にクラブ指導者がクラブの構成メンバーである場合 に多 く見 ら れる。一方,ク
ラブに指導者がいないクラブに在籍 している人では,指
導者 として厳格 な人を希望 する人は少な く,指
導者の有無 により厳格な指導者に対する支持度 に差異が見 られる。2)資
質 資質 と関連 した変数 と外的基準 との関係 を見 ようとしたのが表-3で
ある。4変
数に有意差が認 め られた。496
福元和行・遠藤勝恵 表-3
外 的基準 と資質関連変数 の クロス クロス集計 木日関 要因説 明変数 χ2値
P
相 関係 数P
親切 な人157 *
明朗 な人5606 * 206 **
資 質 知性 的 な人18533 *** 371 ***
判 断力 のあ る人6023 * 214 **
***<001 **<01 *<05
適当な指導者 として親切 な人,明
朗 な人,知
性的な人,判
断力 のある人 を挙 げた人では,厳
格 な 人 を指導者 として支持 す る傾 向が見 られ るが,特
に知性 的 な人 を挙 げた人では χ2値,相
関係数 の 両方で高い値 を示 した。一方,こ
れ らの4つ
の資質 について否定的 な人では,指
導者 として厳格 な 人 を支持す る人が少 ない とい う傾 向が伺 われた。3)親
和 クラブ・ メンバーの指導者 に対す る親 しみ (親和)に
関連 した変数 と外 的基準 との関係 を見 よう としたのが表-4で
あ り, 3変
数 に有意差が認め られた。 表-4
外的基準と親和関連変数のクロス集計結果及び相関 クロス集計相 関 要因
説明変数 χ2値
P
相 関係 数P
若 いノkが よV`3970 * 172 *
親 和クラブの構成 メ ンバ ーである人
7549 ** 237 **
クラブと一体化 しようと努力する人4379 * 181 *
**<01 *<05
指導者 として適当な人 は若 い人,
クラブの構成 メ ンバ ーである人,
クラブ と一体化 しようと努力 す る人,で
ある と考 えてい る人 には,厳
格 な人 を指導者 として支持す る人が多 く見 られるが,こ
れ らの項 目にたい して否定 的 な人では,指
導者 として厳格 な人 を支持す る人は少 ない,
とい う結果 に なっている。4)技
術・知識の指導 技術・知識の指導 に関連 した変数 と外 的基準 の関係 を見 ようと したのが表-5で
ある。6変
数 に 有意差が認 め らっれた。 スポーツ・ クラブの指導者 と して適 当な人は,ス
ポーッの楽 しさを指導 して くれる人,体
力づ く表
-5
外 的基準 と技術・知識指導関係 変数 の クロス集計結果及び相関 クロス集計 本日晶尋 要 因 説 明変数 χ2値 相 関係 数 技術・知識 の指導 スポーツの楽しさを教えてくれる人 体力づくりを指導してくれる人 ルール・細 などC嬬説を撫事してくれる人 作戦・戦法などの知識を教えてくれる人 体力づくりの知識を教えてくれる人 安全の為の知識を教えてくれる人7292
10140
15590
6454
20364
9613
** ** *** * *** ** 232 275 340 219 391 267 ** *** *** ** *** ******<001 **<01 *<05
りを指導 して くれる人,ル
ール・審判法などの知識を指導 して くれる人,作
戦 。戦法などの知識 を 指導 して くれる人,体
力づ くりの知識 を指導 して くれる人,安
全のための知識 を指導 して くれる人, であると考えている人では,指
導者 として厳格 な人を支持 している人が多 く見 られるが,こ
れ らの 項 目について否定的な人では,指
導者 として厳格な人を支持する人は少ない。5)運
営指導 スポーツ・ クラブの運営面の指導に関連 した変数 と外的基準の関係 を見 ようとしたのが表-6で
ある。6変
数に有意差が認め られた。 表-6
外的基準 と運 営指導関連変数 の クロス集計結果及び相関 クロス集計 オロ関 要 因 説明変数 χ2値 相 関係数 練習計画の立て方を教えてくれる人 運営方法について教えてくれる人 クラブ内の人間関係に配慮してくれる人 運営指導 クラブ内で日っていることの解決に努力して(れる大 カウンセリングを行ってくれる人 練習の進め方、方法を教えてくれる人22354
22958
1873213348
199017296
*** *** *** *** *** ** 410 414 325 278 387 233 *** *** *** *** *** *****<001 **<01
指導者 として適当な人は,練
習計画の立て方 を指導 して くれる人,運
営方法 について指導 して く れる人, クラブ内の人間関係に配慮 して くれる人,ク
ラブ内で困つていることの解決 に努力 して く れる人,カ
ウンセ リングを行 って くれる人,練
習の進め方・方法 を指導 して くれる人,で
あると考 えている人では,厳
格な人を指導者 として希望する人が多 く見 られたが,特
に練習計画の立て方, 運営方法の指導 を行 って くれる人,及
びカウンセ リングを行 って くれる人については,
χ2値,相
福元和行 ・遠藤勝恵 関係数共 に高い値 を示 した。
6)指
導方法 指導方法 に関連 した変数 と外 的基準 との関係 を見 ようとしたのが表-7で
あるが, 2変
数 に有意 差が認 め られた。 スポーツ・ クラブの適 当な指導者 は,指
示 した りして クラブをリー ドして くれ る人,で
あると考 えている人では,指
導者 として厳格 な人がふ さわ しい,
と考 えている人が多 く見 られ る。 クラブ員 の求め に応 じて指導 して くれる人 を支持 してい る人 に も同様 の傾 向がみ られるが,後
者 の方 で χ2 値 に有意差が見 られない こと,及
び相 関係数の有意差で前者が後者 を上 回ることか ら,指
示型の指 導方法 をとる指導者 を支持す る人が,指
導者 と して厳格 な人 を支持 している と考 え られ る。 表-7
外的基準 と指導 方法関連係数 の クロス集計結果及び相関 クロス集計 相 関 要 因 説明変数 χ2値 相関係数 指導方法***<001 *<05
2
要因分析の結果1)
厳格 な指導者への支持度の規定要因 表-8は
スポーッ・クラブ員による厳格な指導者への支持度 を規定する要因の分析結果である。 72値は0.554であった。 レンジは レンジの範囲が大 きい変数ほど,そ
れのどのカテゴリーに反応す るかで予測値が大 きく変わ りそれだけ外的基準 に対する影響が大 きいと考えられることから,各
変 数の外的基準 に対する影響の大 きさをあ らわす 目安 として用い られるため・ ), レンジにより考察 を行 うことにするが,各
要因の規定力 を見 ると,在
籍年数,指
導者の有無,運
動経験,練
習計画の 立て方 を指導 して くれる人,知
性的な人,
クラブのメンバー数, クラブヘの参加 目的,カ
ウンセ リ ングを行って くれる人,練
習計画の決定方法,明
朗 な人,
という順位 になっている。 上位10ア イテムの内訳は,個
人及びクラブの属性 に関するアイテム6,指
導者の資質に関するア イテム2,
クラブの運営指導 に関するアイテム2,
となってお り,個
人及びクラブの属性 に関する アイテムが過半数 を占めた。 指示 した りして クラブ を リー ドして くれ る人 クラブ員の求め に応 じて指導 して くれる人 15291 *** 338 160 *** *表
-8
要 因分析 の結果 アイテム レンジ 順位カテゴリー カテゴリー・スコア 偏相関 順位 在籍年数 1647
1
半年未満 半年以上 1年 未満 1年 以上 3年 未満 3年 以上- 528 267
-1119
- 020
119 指導者の有無 1422 2091086
- 336
2
いる(クラブ・ メ ンバ ー) いる(クラブ・メンバー以外) いない 学生時代の運動経験 9513
同種 目のクラブで運動- 013
異種 目のクラブで運動- 796
授業で教わった- 389
放課後 など個人的に運動- 018
行 ったことがなかった155
練習計画の立て方 を指導 して くれる人4
思 う わか らない 。思わない 359- 555
知性的 な人 7855
思 う わか らない 。思わない 291 312- 494
メンバー数6 10人
未満 10人以上20人未満 20人以上30人未満 30人以上 600 118 094 094 196 クラブヘの参加 目的 712 457 004 255 ,0807
技術 の向上 スポーツを楽 しむ 仲間 と楽 しく運動 健康づ くり 。その他 カウンセ リングを行 って くれる人8
思 う わか らない 。思わない 694 411- 283
練習計画の決定方法9
指導者が決定 リーダー 。世話人が決定 指導者 とリーダー・世話 人が相談 して決定 クラブ員全員で決定 その他 356 178 241 188 114 明朗な人 56810
思 う わか らない 。思わない 122 176- 446
クラブの構成 メンバーである人 思 う わか らない 。思わない 211 クラブ員の求めに応 じて指導 してくれる人 思 う わか らない 。思わない 204 ユーモアのある人 思 う わか らない 。思わない (注)順
位 はすべての要因 (42アイテム)中の順位であるが,11位以下は省略 した。(η2=0.554) 191福元和行・遠藤勝恵
2)カ
テゴリー・スコアと寄与の方向 カテゴリー・スコアは各カテゴリーが,厳
格 な指導者への支持度の どの方向にどれだけの強 さで 影響 を与えているかを見ることを可能にするものであ り,本
研究では,カ
テゴリー・スコアが正の 符号の場合,厳
格 な人を指導者 として支持す る,
とい う方向に寄与 し,負
の符号の場合,厳
格 な人 を指導者 として支持 しない,
という方向に寄与することになるが,カ
テゴリー及びカテゴリー・ス コアは表-8の
通 りである。 10アイテムのうち,個
人及びクラブの属性 に関するアイテムが6ア
イテム見 られるが,在
籍年数, 指導者の有無,学
生時代 の運動経験の 3ア イテムが上位3位
までを占めている。在籍年数では期 間 の程度によリカテゴリー・スコアの符号が異なってお り,在
籍期間3年
を分岐点に厳格 な人にたい する支持の変化がみ られる。 また,指
導者の有無では所属するクラブに指導者がいるかいないかに より,学
生時代 の運動経験では,ク
ラブのスポーツ種 目を学生時代 に行 ったことがあったか どうか が,厳
格 な指導者 に対する支持の分岐点になっている。 クラブヘの参加 目的では,技
術 の向上,ス
ポーツを楽 しむを参加 目的にしている,い
わばスポーッ自体 に目的を置 く人では厳格な指導者が支 持 されていると考 えられるが,仲
間と楽 しく運動することや健康づ くりに目的を置 くスポーツを手 段的に捉 えている人では,不
支持の傾向が表れている。 クラブの属性では,メ
ンバー数10人を分岐 点 として支持 に差異がみ られる。 また,練
習計画をどのような方法で決定するかにより,厳
格 な指 導者に対する支持 に差異がみ られる。 資質に関 しては,ス
ポーッ・クラブの指導者 として知性的な人,明
朗 な人がふさわ しい と考 えて いる人では,指
導者 として厳格 な人を支持 している。 運営 に関 しては,練
習計画の立て方 を指導 して くれる人,及
びカウンセリングを行 って くれる人 が指導者 として適当であると考えている人では,厳
格 な人への支持が高い。 本研 究 は地域社会のスポーツ・クラブにおいてスポー ツ・ クラブ員 による厳格 な指導者へ の支持 度 を規定す る要因 を探 ることを目的 とす る ものであったが,結
果 を要約す る と以下の ようになる。1.ス
ポー ッ・ クラブ員 に よる厳格 な指導者への期待度 と説明変数 との関係 を探 るため,
χ2値 及 び相 関係 数 を求 めたが,23の
変数 で χ2値あ るいは相 関係数 の片方 または両方 に有意差 が認 め られた。 内訳 は,個
人及 びクラブの属性 に関連 して2変
数 に,資
質 に関連 して4変
数 に,親
和 に関連 して3変
数 に有意差が認 め られた。 また,技
術 ・知識の指導 に関連 して6変
数 に,運
営 の指 導 に関連 して6変
数 に有意差が認め られた。指導方法 に関連 しては指示型 と助言型 とい う2つ
の 約 要指導方法 に有意差 が認 め られ たが