財政学Ⅰ
第12回 租税(6)消費税(付加価値税)(2)
2015年6月26日(金)
担当:天羽正継(経済学部経済学科准教授)
日本の消費税(1)
2013年度決算における消費税の収入額は10.8兆円で、税収に占める割合は23.6%、一般会計の歳入総額に占
める割合は10.2%。
税収としては所得税(15.5兆円)に次ぎ、法人税(10.5兆円)を上回る規模。
税率は8%で、そのうち1.7%が地方税分(地方消費税)。
さらに、6.3%の国税分のうち1.4%が地方交付税分となるため、税率8%のうち3.1%が地方分となる。 創設当初(1989年4月)の税率は3%で、その際には地方税分はなし。1997年4月に5%に引き上げられた際に、そのう ち1%が地方税分となる。現在の税率は2014年4月から。
課税対象は原則として、国内におけるすべての財・サービスの取引(国内取引)と、外国貨物の取引(輸入
取引)(スライド3)。
国内取引でも課税されない取引が一部にある(非課税取引)。 輸入品には課税されるが、輸出品には課税されない(輸出免税取引)。 原産地原則に対する仕向地原則(後述)。
納税義務者は個人事業者および法人。
前段階からの仕入額として、機械等の資本財の購入額も控除することを認める消費型付加価値税。
政府支出と外国貿易を捨象した場合に、GDP = C + I ⇔ C = GDP
-I
であることからこのように呼ばれる。世界で最 も普及しているタイプの付加価値税。2
日本の消費税(2)
3
輸入取引 課税取引 (課税貨物の引取り) 非課税取引 例:有価証券の輸入 国外において行う取引 (不課税取引) 出所:住澤整編著『図説日本の税制 平成26年度版』財経詳報社、187ページ。 国 内 取 引 資 産 の 譲 渡 等 課税取引 輸出免税取引 非課税取引 例:土地の譲渡、貸付け 資産の譲渡等に該当しない取引 (不課税取引) 例:寄附金、配当 日本の消費税の課税対象日本の消費税(3)
日本の消費税では、前段階の(仕入れに係わる)税額控除はインボイスを用いずに、帳簿上で行われる(ス
ライド5)。
EUの付加価値税ではインボイスに税額が明記されているので、正確な前段階税額控除が可能。 単一税率の下では、インボイスがなくても前段階の税額の計算に支障はないが、複数税率の下では、インボイスがなけ れば正確な計算は困難。 前段階の税額の計算をより正確に行うために、帳簿とともに取引の相手方が発行した請求書等を保存することを1997 年の改正で義務付ける(請求書等保存方式)。
小規模事業者に対する特例措置
前々年(事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税義務を免除(免税点制度)。 課税売上高が5,000万円以下の事業者は簡易課税制度を利用可能。 売上げにかかわる消費税額に「みなし仕入率」(スライド6)を掛け合わせた額を、前段階の税額として控除できる制度。 納税の事務手続きが大きな負担となる小規模事業者への配慮。 しかし、みなし仕入率が売上額に対する実際の仕入額の比率を上回る場合、実際よりも多くの税額を控除できるため、納税額が少 なく済んでしまい、その分が事業者の利益となる(益税)。
毎年度の予算総則において、国の消費税収のうち地方交付税交付金に充てる部分以外は、基礎年金、高齢者
医療、介護、子供・子育て支援の社会保障四経費に充てることを明記(福祉目的化)。
4
日本の消費税(4)
5
日本の「請求書」とイギリスの「インボイス」
日本の消費税(5)
6
業種
みなし仕入率
第1種事業(卸売業)
90%
第2種事業(小売業)
80%
第3種事業(製造業等)
70%
第4種事業(その他)
60%
第5種事業(サービス業等)
50%
世界の付加価値税(1)
付加価値税が世界で初めて導入されたのは1954年のフランス。その後、1960年代にEC諸国で域内取引を円滑
にするため、相次いで導入される。
EC委員会が加盟国に対して付加価値税の導入を指令するとともに、付加価値税の導入をECへの加盟条件とした。
その後、アジア、アフリカでも付加価値税を導入する国が広がる。
しかし、アメリカは州税として小売売上税が存在するため、現在に至るまで導入せず。
現在のEUでは、各国間で付加価値税の統一を図るため、遵守すべき基準を設定。
標準税率は15%以上。 ゼロ税率および割増税率は否定。 軽減税率は5%以上で2本以下。
軽減税率を実施する場合、一般に生活必需品が対象となるが、具体的に何を対象とするのかを決めるのは非
常に困難(スライド10)。
例:ハンバーガーを店内で食べる場合は「外食」となり、標準税率が適用されるが、持ち帰りの場合は「食料」となり、 軽減税率が適用される。7
世界の付加価値税(2)
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付加価値税率(標準税率)の国際比較
注:日本については2014年4月時点の税率、その他の国については2014年1月時点の税率を記載。 出所:財務省ホームページ