鈴木真一ヵ《横山松三郎》明治中期 鶏卵紙 新潟県立近代美術館・万代島美術館蔵(後期展示)
ヨーゼフ・イスラエルス《日曜の朝》1880年 油彩・板 40.5×28.3cm ハーグ市立美術館蔵 Collection Gomeentemuseum Den Haag,
The Hague,The Netherlands ISSN 0918-1385
郡山市立美術館ニュース ザ・ルーフ
2013.11.2
Vol.
43
夜明けまえ
知られざる日本写真開拓史
—北海道・東北編—
前期 ●平成25年11月2日(土)~ 24日(日) 後期 ●平成25年11月27日(水)~ 12月15日(日) ※11月26日(火)は展示替えのためご覧いただけません。近代自然主義絵画の成立
オランダ・ハーグ派展
●平成26年2月22日(土)~3月29日(土)一 八 八 八 ( 明 治 2 1) 年 の 磐 梯 山 の 噴 火 後 の 写 真 を 撮 影 し た こ と が 二 人 の 共 通 点 だ が、 そ れ 以 外 に 彼 ら を 結 び つ け る も の は な い。 し い て い え ば、 今 回 の 企 画 展「 夜 明 け 前 」 に 二 人 の 写 真 が 並 ん で い る こ と で あ ろ う か ( 写 真 1、 2 ) 。 磐 梯 山 の 噴 火 で は 多 く の カ メ ラ マ ン が 駆 け つ け て、 何 百 枚 と い う 写 真 を 撮 影 し た が、 現 存 し て い る も の は、 そ の 中 の 一 六 〇 点 ほ ど に す ぎ な い。 明 治 前 半 ま で カ メ ラ は 高 度 な 技 術 が な け れ ば 撮 影 で き な い も の で、 当 時 は 撮 影 者 を 写 真 師 な ど と 呼 ん だ。 ま た、 多 く の カ メ ラ マ ン が 来 た 理 由 の 一 つ と し て、 報 道 の 変 化 が あ げ ら れ る。 そ れ ま で 政 党 新 聞 が 中 心 で あ っ た が、 そ の 時 々 の 出 来 事 を 伝 え る 大 衆 新 聞 に 変 わ ろ う と し て い た 時 期 に 磐 梯 山 が 噴 火 を し た の で ある。 一 八 八 八 年 以 前 の 明 治 前 半 は あ ま り 大 き な 自 然 災 害 は 発 生 し て い な い た め、 磐 梯 山 が 注 目 を 集 め る こ と に な っ た。 磐 梯 山 の 噴 火 は、 北 側 に あ っ た 小 磐 梯 と い う 火 山 が 水 蒸 気 爆 発 で 山 体 崩 壊 を し、 岩 な だ れ と な っ て 北 側 に 流 れ 下 り、 四 七 七 人 が 犠 牲 と な っ た自然災害であった。 岩 田 善 平 は 横 浜 で 下 岡 蓮 杖 に 写 真 を 学 び、 喜 多 方 に 戻 っ て 写 真 館 を 開 い た。 彼 が 学 ん だ 写 真 技 術 は 湿 板 法 と い う 手 法 で、 現 場 で 溶 液 を 調 整 し て ガ ラ ス 原 板 に 塗 っ て 撮 影 す る も の で、 多 く の 機 材 を 現 場 に 持 参 し な け ればならず困難な作業であった。 一 方、 W・ K・ バ ル ト ン は 新 し い 技 法 の 乾 板 法( 註 ) で、 ど こ で も す ぐ に 撮 影 で き る カ メ ラ を 用 い た。 彼 は 東 京 帝 国 大 学 の お 抱 え 教 師 で、 専 門 は 衛 生 工 学 だ が 写 真 撮 影 技 術 が す ぐ れ て い た た め、 地 震 学 者 の 関 谷 清 景 か ら 依 頼 を 受 け て、 磐 梯 山 に 同 行 し た。 関 谷 は 彼 の 撮 影 し た 写 真 を も と に ス ケ ッ チ ( 図 1 ) を 起 こ し、 磐 梯 山 の 英 語 論 文 に 掲 載 し た。 バ ル ト ン は 英 国 出 身 で、 日 本 で 撮 影 し た 写 真 を 母 国 に 送 っ た た め、 様 々 な 雑 誌 な ど に 掲 載 さ れ た。 そ の 母 国 で の 受 取 人 が 有 名 な 作 家 の コ ナ ン・ ド イ ル で あ っ た。 彼 と ド イ ル は 幼 馴 染 で、 そ の 関 係 で ド イ ル が 受取人となったのである。 磐 梯 山 の 噴 火 で は 錦 絵 ( 図 2 ) も 活 用 さ れ た が、 そ れ ら の 絵 は、 多 く の 部 分 が 想 像 で 描 か れ、 実 態 と は か け は な れ て い た。 そ の た め、 印 刷 物 に 写 真 が 刷 り 込 め る よ う な る と、錦絵は急速に廃れていった。 災 害 写 真 は、 そ の 状 況 を 正 確 に 伝 え る 手 法 と し て、 画 期 的 で 役 立 つ も の だ っ た の で ある。 註 乾 板 法 は 溶 液 を ガ ラ ス 原 板 に 先 に 塗 布 し た 状 態 で 持 ち 運 べ、 現 像 も 持 ち 帰 っ て で き る こ と か ら、 屋外での撮影が簡単になった。
佐藤
公
(磐梯山噴火記念館副館長)
岩田とバルトン
記録された磐梯山噴火
(写真1)ウィリアム・キンムンド・バルトン《磐梯山・噴口遠望》 明治21年 鶏卵紙 東京都写真美術館蔵(前期展示) (写真2)岩田善平《見弥村ノ大石》明治21年 コロディオン湿版ネガ 福島県立博物館寄託(後期展示) (図1)北東6kmの秋元から見た磐梯山(Sekiya&Kikuchi 1889) (この作品は展示されません) (図2)小林幾英《岩代国磐梯山噴火之図》明治21年 多色刷木版画 磐梯山噴火記念館蔵(前期展示)夜明けまえ
知られざる日本写真開拓史
夜明けまえ
知られざる日本写真開拓史
○講演会「幕末・明治のおもしろ写真」
講 師 石黒敬章さん(ゆうもあくらぶ事務局長、 日本写真芸術学会評議員) 日 時 11月2日(土)午後2時~ 場 所 多目的スタジオ(入場無料)○ワークショップ
・古典写真講座 講 師 三井圭司さん(東京都写真美術館学芸員) 高島圭史さん(写真家) 日 時 11月24日(日)午前10時~ 会 場 創作スタジオ 材料費1000円 定員15名 申込方法 11月6日(水)から電話受付・先着順 (受付時間:午前9時30分~午後5時) ・公開ワークショップ「磐梯山噴火と写真」 講 師 佐藤公さん(磐梯山噴火記念館副館長) 日 時 12月1日(日)午後2時~ 会 場 多目的スタジオ(入場無料) ・一眼レフカメラ分解講座 講 師 井口芳夫さん(日本カメラ博物館学芸員) 日 時 12月15日(日)午後2時~ 会 場 創作スタジオ 定員12名 申込方法 11月27日(水)から電話受付・先着順 (受付時間:午前9時30分~午後5時)○映 画 会
・吶とっかん喊(1975年 監督:岡本喜八) 日 時 11月17日(日)午後2時~ 会 場 多目的スタジオ(入場無料) ・ラスト・サムライ (2003年 監督:エドワード・ズウィック) 日 時 12月8日(日)午後2時~ 会 場 多目的スタジオ(入場無料)○美術講座
・「幕末明治の写真と絵画」 日 時 11月23日(祝・土)午後2時~ 講 師 当館学芸員 会 場 講義室(入場無料) ・「実在したラスト・サムライ」 日 時 12月14日(土)午後2時~ 講 師 当館学芸員 会 場 講義室(入場無料)○ギャラリートーク
日 時 11月10日(日) 午後2時~、 12月7日(土) 午後2時~ 講 師 当館学芸員 会 場 企画展示室(要観覧券)関 連 行 事
前 期 ●平成25年11月2日(土)~ 24日(日)
後 期 ●平成25年11月27日(水)~ 12月15日(日)
※11月26日(火)は展示替えのためご覧いただけません。会 場:郡山市立美術館
時 間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休 館 日:毎週月曜日休館(11月4日は開館、翌日休館)
観 覧 料:一般 500(400)円 高・大生300(240)円
※中学生以下・65歳以上の方、障がい者手帳をお持ちの方は無料主 催:郡山市立美術館 読売新聞社 美術館連絡協議会 福島民友新聞社、福島中央テレビ
協 賛:ライオン 清水建設 大日本印刷 損保ジャパン
協 力:東京都写真美術館 日本大学藝術学部
田本研造ヵ《総裁 榎本釜次郎[武揚] 海軍副総裁》明治2年頃 函館市中央図書館蔵(後期展示)運 河 と 干 拓 地 、 高 い 空 と ど こ ま で も 広 が る 大 地 と 海 、 そ し て 風 車 。 こ の キ ー ワ ー ド か ら ど こ の 国 を 連 想 し ま す か ? 多 く の 方 は オ ラ ン ダ を イ メ ー ジ さ れ る の で は な い で し ょ う か 。 今 回 、 そ ん な オ ラ ン ダ の 魅 力 が 満 載 の 展 覧 会 「 オ ラ ン ダ ・ ハ ー グ 派 展 」 を 開 催 し ま す 。 19世 紀 に 活 躍 し た オ ラ ン ダ の ハ ー グ 派 に 焦 点 を 当 て て 紹 介 す る の は 、 日 本 初 と な る 貴 重 な 展 覧 会 で す 。 北 海 沿 岸 に 位 置 す る ハ ー グ は 、 現 在 、 ア ム ス テ ル ダ ム 、 ロ ッ テ ル ダ ム に 次 ぐ 大 都 市 で す 。 ハ ー グ は 今 で こ そ 有 名 な リ ゾ ー ト 地 で 、 ま た 国 際 都 市 と し て も 知 ら れ て い ま す が 、 19世 紀 末 ま で は 、 豊 か な 自 然 と 慎 ま し い 生 活 が 残 っ て い ま し た 。 ハ ー グ 派 の 画 家 た ち は 、 そ う し た 、 出 生 地 の オ ラ ン ダ の 美 し い 自 然 と 生 活 に 愛 着 を 抱 き 、 温 か い ま な ざ し を 持 っ て 描 い た の で す 。 ハ ー グ 派 の 画 家 た ち が お 手 本 に し た の が 、 フ ラ ン ス の バ ル ビ ゾ ン 派 の 絵 画 で す 。 バ ル ビ ゾ ン 派 の 画 家 た ち は 野 外 で の 自 然 観 察 を 重 視 し 、 穏 や か な 風 景 を 愛 し て い ま し た 。「 オ ラ ン ダ の バ ル ビ ゾ ン 」 と も 呼 ば れ た 彼 ら で す が 、 20世 紀 美 術 を 代 表 す る ゴ ッ ホ と モ ン ド リ ア ン は 、 こ の ハ ー グ 派 に ル ー ツ を 持 っ て い ま す 。 一 時 期 、 ハ ー グ に 居 住 し た こ と の あ る ゴ ッ ホ は 、 ハ ー グ 派 の 画 家 た ち が 好 ん だ 「 貧 し い 農 民 」 と い う 主 題 に 惹 き つ け ら れ ま し た ( 図 1 、 図 2 )。 影 響 関 係 を 簡 略 し て 矢 印 で 示 す と 、「 バ ル ビ ゾ ン 派 → ハ ー グ 派 → ゴ ッ ホ 、 モ ン ド リ ア ン 」 と い う 図 式 が 成 立 し ま す が 、 さ ら に 興 味 深 い の は 、 バ ル ビ ゾ ン 派 と ハ ー グ 派 が と も に 17世 紀 オ ラ ン ダ 黄 金 時 代 の 画 家 に 影 響 を 受 け て い る こ と で す 。 た と え ば 、 ヴ ァ イ セ ン ブ ル フ の 《 ハ ー ル レ ム の 風 景 》( 図 3 ) は 、 17世 紀 オ ラ ン ダ の 巨 匠 ラ イ ス ダ ー ル を 称 賛 す る よ う な 作 品 で す 。 ラ イ ス ダ ー ル と い う 画 家 は 、 実 は 、 イ ギ リ ス の 画 家 タ ー ナ ー も 敬 愛 し て や ま な か っ た 画 家 な の で す 。 す る と 、 ハ ー グ 派 の 画 家 た ち と タ ー ナ ー も ラ イ ス ダ ー ル と い う 同 じ ル ー ツ を 持 っ て い る こ と に な り ま す 。 ハ ー グ 派 と タ ー ナ ー と い う 、 美 術 史 上 で は 現 在 の と こ ろ 互 い に 点 に す ぎ な い 両 者 が
平成26年2月22日(土)~3月29日(土)
休 館 日:毎週月曜日
開館時間:午前9時30分~午後5時
(最終入館は午後4時30分)
観 覧 料:一般1000(800)円、
高校・大学生500(400)円
※( )内は20名以上の団体料金。中学生以下、 65歳以上、障がい者手帳をお持ちの方は無料。
主 催:郡山市立美術館
後 援:オランダ王国大使館、オランダ政府観光局
協 力:KLMオランダ航空、
ヤマトロジスティクス株式会社
企画協力:株式会社ブレーントラスト
近代自然主義絵画の成立
オランダ・ハーグ派展
図1 フィンセント・ファン・ゴッホ《白い帽子をかぶった農婦の顔》 1884-85年 油彩・カンヴァス 44.0×35.9cm クレラー=ミュラー美術館蔵Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands
図2 フィンセント・ファン・ゴッホ《じゃがいもを掘る2人の農婦》 1885年 油彩・カンヴァス
31.5×42.5cm クレラー=ミュラー美術館蔵 Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands
線 と な っ て つ な が る 可 能 性 も あ る の で す 。 こ の 謎 を 解 明 す べ く 、「 オ ラ ン ダ ・ ハ ー グ 派 展 」 を お 楽 し み い た だ き な が ら 、タ ー ナ ー が 展 示 さ れ て い る 当 館 の 常 設 展 に も ぜ ひ お 立 ち 寄 り く だ さ い 。 ( 富 岡 進 一 ) 図3 ヤン・ヘンドリック・ヴァイセンブルフ 《ハールレムの風景》 1845-48年 油彩・板 23.2×34.1cm バーグ市立美術館蔵 Collection Gemeentemuseum Den Haag,The Hague, The Netherlands
関
連
事
業
○講演会
「オランダ風景画の魅力」
(仮題)
講師/古谷可由さん
(公益財団法人ひろしま美術館
学芸部長、 本展監修者)
日時/平成
26年2月
23日(日)
午後2時~
会場/多目的スタジオ
(入場無料)
○美術講座
講師/当館学芸員
日
時
/
平
成
26年
3
月
9
日(
日
)
午後2時~
会場/講義室
(入場無料)
○ギャラリートーク
講師/当館学芸員
日
時
/
平
成
26年
3
月
1
日(
土
)、
3月8日
(土)
午後2時~
会場/企画展示室
(要観覧券)
○ミュージアム・
シアター
「炎の人ゴッホ」
(1955年、 ヴィンセント・ ミネリ監督)
日時/平成
26年3月
16日(日)
午後2時~
会場/多目的スタジオ
(入場無料)
雪村周継《四季山水図屏風》 16世紀後半(室町時代末~桃山時代)作 紙本墨画 各150.2×341.8cm 六曲一双 平成26年1月5日(日)〜 1月19日(日) 休 館 日:毎週月曜日(1月13日は開館、翌日休館) 開館時間:午前9時30分〜午後5時 (最終入館は午後4時30分) 料 金:一般200(150)円 高・大生100(70)円 ( )内は20名以上の団体料金。中学生以下、 65歳以上、障がい者手帳をお持ちの方は無料。 現在の茨城県常陸大宮市で生まれたとされる雪村周継 (1500年頃―1580年代前半)は室町時代後期を代表する画家の ひとりです。雪村がその晩年を過ごしたとされる庵のあった 場所は当時三春、現在の郡山市西田町であり、そこには雪村 庵が残っています。 当館では、2005(平成17)年からほぼ毎年正月に、彼の屏風 を企画展示室で特別展示しています。右から順に四季の風景 が描かれている本作では、墨の濃淡だけによる雄大な自然を 満喫できるだけでなく、ところどころに描かれた寺、舟、滝、 それに人を探すだけでも楽しくなります。 今年もどうぞお楽しみください。常設展のチケットでご覧 いただけます。雪村周継《四季山水図屏風》特別展示
紙を折り畳んで型紙の通りに切り、 そっ と 開 く。 す る と 手 の 中 に ふ わ り と、 美 し い 日 本 の 形 が 舞 い お り る。 そ の 瞬 間 の と き め き は、 何 度 や っ て も 色 褪 せ る こ と が ない。 明 治 時 代 の 遊 び の 本 で「 紋 切 り 型 」 を 見 つ け た。 そ れ ま で こ の 言 葉 の 意 味 を 深 く 考 え ず に 使 っ て 来 た。 そ う 「 型 通 り で つ ま ら な い 」 と い う 意 味 だ。 そ の 語 源 が 家紋を切り抜くための 「 型紙」 だったこと、 そ し て 家 紋 を こ の よ う に 遊 ぶ と い う こ と 自 体 に 驚 い た。 そ こ か ら、 私 達 の 祖 先 が 暮 ら し の 中 で 育 ん で き た 文 様 の 文 化 を 探 求するようになった。 「 紋 切 り あ そ び 」 は 江 戸 時 代 の 職 人 が 紋 を 美 し く 簡 単 に 描 く た め の 技 術 と し て 始 ま り、 意 外 な 形 が 生 ま れ る 面 白 さ か ら 寺 子 屋 な ど で も 遊 ば れ た よ う だ。 昭 和 の 初 め の 頃 ま で は 図 工 の 教 科 書 に も 載 っ て い 福 島 の 皆 様 に 当 館 の コ レ ク シ ョ ン を ご 覧 い た だ く こ と が で き、 心 か ら 嬉 し く 思 っ て い ま す。 東 日 本 大 震 災 の 発 生 か ら 既 に 2 年 半 を 超 え る 時 間 が 流 れ ま し た。 し か し、 福 島 第 一 原 発 事 故 の 影 響 も あ り、 い ま だ 将 来 へ の 確 か な 希 望 を も て な い 状 況 が 続 い て い ま す。 そ の な か で 郡 山 市 立 美 術 館 か ら の ご 要 請 に お 応 え し て、 震 災 復 興 支 援 と し て 当 館 の コ レ ク シ ョ ン を 郡 山 市、 そ し て 福 島 県 の 皆 様 に ご 覧 い た だ く 機 会 を も て た こ と に は 特 別 な 意 味 が あ り ま し た。 な ぜ な ら 当 館 の 歴 史 は、 サ ン フ ラ ン シ ス コ 講 話 条 約 締 結 を 記 念 し て、 第 二 次 大 戦 後 の 復 興 と 人 々 の 心 の 拠 り 所 と な る こ と を 願 っ て 計 画 さ れ、 昭 和 30年 に 開 館 し た 愛 知 県 文 化 会 館 美 術 館 に 始 ま っ て い る か ら で す。 さ ら に そ の 数 年 後、 私 た ち は 伊 勢 湾 台 風 と い う、 愛 知 県 だ け で も 三 千 人 を 超 え る 犠 牲 を と も な っ た 記 録 的 な 災 害 に も 見 舞 た。 と こ ろ が い つ の 間 に か ふ っ つ り と 姿 を 消 し て い た の だ。 私 達 の 暮 ら し か ら 和 服 が 消 え、 そ こ で 生 き て き た 文 様 と も 縁 遠くなってしまった。 今 で も 家 紋 を 描 く 職 人 さ ん の た め の 「 紋 帖 」 が あ る 。 そ こ に 植 物 や 動 物 だ け で な く 暮 ら し の 道 具 、 月 や 星 、 雷 や 霞 … な ど 森 羅 万 象 が ぎ っ し り と 並 び 、 ま る で 博 物 図 鑑 を み る よ う だ 。 そ こ か ら は 祖 先 達 の 暮 ら し ぶ り や 身 近 な 自 然 に 注 ぐ 細 や か な 観 察 眼 が 見 て と れ る 。 ひ と つ ひ と つ に 意 味 や 物 語 が い っ ぱ い だ 。 「 紋 切 り あ そ び 」 を 通 し て こ れ ら の「 か た ち 」 と も っ と 親 し く つ き あ い、 私 達 の 今 の 暮 ら し の な か で、 遊 ん で 使 っ て 次 の 世代に手渡していければいいな。 そう思っ て、 型紙を工夫し、 本を出版、 ワークショッ プ を 続 け て い る。 郡 山 市 立 美 術 館 に も そ んなご縁で訪れ、 みなさんと団扇をつくっ た。 ワ ー ク シ ョ ッ プ を す る た び 驚 く の は、 同 じ 型 か ら 始 ま っ て 実 に 個 性 豊 か な 作 品 が 出 来 る と い う こ と。 そ う、 型 が あ る か ら こ そ 「 型 破 り 」 が で き る! 個 性 や 創 造 は 白 い 紙 の 上 に ひ ょ い と 生 ま れ る も の で は な く、 多 く の 祖 先 達 の 残 し た 「 型 」 の 上 に 咲 く 花 な の だ。 ぜ ひ、 あ な た も 誰 か に手渡して欲しい。 ワークショップ ワークショップ 江戸の切り紙 「紋切りあそび」で団扇をつくろう 平成 25年7月 14日(日) 会場 多目的スタジオ 講師 下中菜穂さん 松田牧恵さん わ れ ま し た。 敗 戦 や 災 害 と い っ た 苦 難 の な か で も、 美 術 に 触 れ、 そ れ を 糧 と し て 未 来 を 信 じ て 歩 み を 重 ね て い く こ と の 大 切 さ を、 当 館 の 歴 史 と コ レ ク シ ョ ン が 教 えてくれているように思います。 こ の 展 覧 会 で は、 ク リ ム ト の 代 表 作《 人 生 は 戦 い な り( 黄 金 の 騎 士 )》 を 皆 様 に ご 覧 い た だ き ま し た。 こ の 作 品 は、 彼 が 芸 術 の 理 想 を 求 め な が ら も 周 囲 の 理 解 を 得 る こ と が で き ず、 人 生 の 窮 地 に 陥 っ て い た 時 に、 自 ら を 奮 い 立 た せ る た め に 描 い た と 言 わ れ る も の で す。 ク リ ム ト が 困 難 に 立 ち 向 か う た め こ の 絵 に 込 め た 思 い が、 芸 術 に よ る 力 強 い エ ー ル と し て 皆 様 に 受 け 止 め て い た だ け た も の と 確 信 し て い ま す。 皆 様 に と っ て 今 回 の 展 覧 会 が 芸 術 に 触 れ る 一 時 の 安 ら ぎ の 場 と な り、 そ し て 明 日 へ の 糧 を 得 て い た だ く 機 会 と し て い た だ く こ と が で き た の で あ れ ば、 こ れ に勝る喜びはありません。 講演会 「 美 術 の 持 つ 力 ― 愛 知 県 美 術 館 の コレクションを中心に」 平成 25年8月 31日(土) 会場 多目的スタジオ 講師 村田眞宏さん