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2 一八八八( 明治21 ) 年の磐梯山の噴火後の写真を撮影したことが二人の共通点だが それ以外に彼らを結びつけるものはない しいていえば 今回の企画展 夜明け前 に二人の写真が並んでいることであろうか( 写真1 2) 磐梯山の噴火では多くのカメラマンが駆けつけて 何百枚という写真を撮影したが 現存

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(1)

鈴木真一ヵ《横山松三郎》明治中期 鶏卵紙 新潟県立近代美術館・万代島美術館蔵(後期展示)

ヨーゼフ・イスラエルス《日曜の朝》1880年 油彩・板  40.5×28.3cm ハーグ市立美術館蔵 Collection Gomeentemuseum Den Haag,

The Hague,The Netherlands ISSN 0918-1385

郡山市立美術館ニュース ザ・ルーフ

2013.11.2

Vol.

43

夜明けまえ

知られざる日本写真開拓史

—北海道・東北編—

前期 ●平成25年11月2日(土)~ 24日(日) 後期 ●平成25年11月27日(水)~ 12月15日(日)    ※11月26日(火)は展示替えのためご覧いただけません。

近代自然主義絵画の成立

オランダ・ハーグ派展

●平成26年2月22日(土)~3月29日(土)

(2)

  一 八 八 八 ( 明 治 2 1) 年 の 磐 梯 山 の 噴 火 後 の 写 真 を 撮 影 し た こ と が 二 人 の 共 通 点 だ が、 そ れ 以 外 に 彼 ら を 結 び つ け る も の は な い。 し い て い え ば、 今 回 の 企 画 展「 夜 明 け 前 」 に 二 人 の 写 真 が 並 ん で い る こ と で あ ろ う か ( 写 真 1、 2 ) 。 磐 梯 山 の 噴 火 で は 多 く の カ メ ラ マ ン が 駆 け つ け て、 何 百 枚 と い う 写 真 を 撮 影 し た が、 現 存 し て い る も の は、 そ の 中 の 一 六 〇 点 ほ ど に す ぎ な い。 明 治 前 半 ま で カ メ ラ は 高 度 な 技 術 が な け れ ば 撮 影 で き な い も の で、 当 時 は 撮 影 者 を 写 真 師 な ど と 呼 ん だ。 ま た、 多 く の カ メ ラ マ ン が 来 た 理 由 の 一 つ と し て、 報 道 の 変 化 が あ げ ら れ る。 そ れ ま で 政 党 新 聞 が 中 心 で あ っ た が、 そ の 時 々 の 出 来 事 を 伝 え る 大 衆 新 聞 に 変 わ ろ う と し て い た 時 期 に 磐 梯 山 が 噴 火 を し た の で ある。   一 八 八 八 年 以 前 の 明 治 前 半 は あ ま り 大 き な 自 然 災 害 は 発 生 し て い な い た め、 磐 梯 山 が 注 目 を 集 め る こ と に な っ た。 磐 梯 山 の 噴 火 は、 北 側 に あ っ た 小 磐 梯 と い う 火 山 が 水 蒸 気 爆 発 で 山 体 崩 壊 を し、 岩 な だ れ と な っ て 北 側 に 流 れ 下 り、 四 七 七 人 が 犠 牲 と な っ た自然災害であった。   岩 田 善 平 は 横 浜 で 下 岡 蓮 杖 に 写 真 を 学 び、 喜 多 方 に 戻 っ て 写 真 館 を 開 い た。 彼 が 学 ん だ 写 真 技 術 は 湿 板 法 と い う 手 法 で、 現 場 で 溶 液 を 調 整 し て ガ ラ ス 原 板 に 塗 っ て 撮 影 す る も の で、 多 く の 機 材 を 現 場 に 持 参 し な け ればならず困難な作業であった。   一 方、 W・ K・ バ ル ト ン は 新 し い 技 法 の 乾 板 法( 註 ) で、 ど こ で も す ぐ に 撮 影 で き る カ メ ラ を 用 い た。 彼 は 東 京 帝 国 大 学 の お 抱 え 教 師 で、 専 門 は 衛 生 工 学 だ が 写 真 撮 影 技 術 が す ぐ れ て い た た め、 地 震 学 者 の 関 谷 清 景 か ら 依 頼 を 受 け て、 磐 梯 山 に 同 行 し た。 関 谷 は 彼 の 撮 影 し た 写 真 を も と に ス ケ ッ チ ( 図 1 ) を 起 こ し、 磐 梯 山 の 英 語 論 文 に 掲 載 し た。 バ ル ト ン は 英 国 出 身 で、 日 本 で 撮 影 し た 写 真 を 母 国 に 送 っ た た め、 様 々 な 雑 誌 な ど に 掲 載 さ れ た。 そ の 母 国 で の 受 取 人 が 有 名 な 作 家 の コ ナ ン・ ド イ ル で あ っ た。 彼 と ド イ ル は 幼 馴 染 で、 そ の 関 係 で ド イ ル が 受取人となったのである。   磐 梯 山 の 噴 火 で は 錦 絵 ( 図 2 ) も 活 用 さ れ た が、 そ れ ら の 絵 は、 多 く の 部 分 が 想 像 で 描 か れ、 実 態 と は か け は な れ て い た。 そ の た め、 印 刷 物 に 写 真 が 刷 り 込 め る よ う な る と、錦絵は急速に廃れていった。   災 害 写 真 は、 そ の 状 況 を 正 確 に 伝 え る 手 法 と し て、 画 期 的 で 役 立 つ も の だ っ た の で ある。 註   乾 板 法 は 溶 液 を ガ ラ ス 原 板 に 先 に 塗 布 し た 状 態 で 持 ち 運 べ、 現 像 も 持 ち 帰 っ て で き る こ と か ら、 屋外での撮影が簡単になった。

佐藤

 

(磐梯山噴火記念館副館長)

岩田とバルトン

  

記録された磐梯山噴火

(写真1)ウィリアム・キンムンド・バルトン《磐梯山・噴口遠望》 明治21年 鶏卵紙 東京都写真美術館蔵(前期展示) (写真2)岩田善平《見弥村ノ大石》明治21年 コロディオン湿版ネガ      福島県立博物館寄託(後期展示) (図1)北東6kmの秋元から見た磐梯山(Sekiya&Kikuchi 1889) (この作品は展示されません) (図2)小林幾英《岩代国磐梯山噴火之図》明治21年 多色刷木版画 磐梯山噴火記念館蔵(前期展示)

(3)

夜明けまえ

知られざる日本写真開拓史

夜明けまえ

知られざる日本写真開拓史

○講演会「幕末・明治のおもしろ写真」

 講 師 石黒敬章さん(ゆうもあくらぶ事務局長、        日本写真芸術学会評議員)  日 時 11月2日(土)午後2時~  場 所 多目的スタジオ(入場無料)

○ワークショップ

・古典写真講座  講 師 三井圭司さん(東京都写真美術館学芸員)       高島圭史さん(写真家)  日 時 11月24日(日)午前10時~  会 場 創作スタジオ 材料費1000円 定員15名  申込方法 11月6日(水)から電話受付・先着順       (受付時間:午前9時30分~午後5時)  ・公開ワークショップ「磐梯山噴火と写真」  講 師 佐藤公さん(磐梯山噴火記念館副館長)  日 時 12月1日(日)午後2時~  会 場 多目的スタジオ(入場無料) ・一眼レフカメラ分解講座  講 師 井口芳夫さん(日本カメラ博物館学芸員)  日 時 12月15日(日)午後2時~  会 場 創作スタジオ 定員12名  申込方法 11月27日(水)から電話受付・先着順       (受付時間:午前9時30分~午後5時)

○映 画 会

・吶とっかん喊(1975年 監督:岡本喜八)  日 時 11月17日(日)午後2時~  会 場 多目的スタジオ(入場無料) ・ラスト・サムライ  (2003年 監督:エドワード・ズウィック)  日 時 12月8日(日)午後2時~  会 場 多目的スタジオ(入場無料)

○美術講座

・「幕末明治の写真と絵画」  日 時 11月23日(祝・土)午後2時~  講 師 当館学芸員  会 場 講義室(入場無料) ・「実在したラスト・サムライ」  日 時 12月14日(土)午後2時~  講 師 当館学芸員  会 場 講義室(入場無料)

○ギャラリートーク

 日 時 11月10日(日) 午後2時~、      12月7日(土) 午後2時~  講 師 当館学芸員  会 場 企画展示室(要観覧券)

関 連 行 事

      前 期 ●平成25年11月2日(土)~ 24日(日)

      後 期 ●平成25年11月27日(水)~ 12月15日(日)

       ※11月26日(火)は展示替えのためご覧いただけません。

会  場:郡山市立美術館

時  間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)

休 館 日:毎週月曜日休館(11月4日は開館、翌日休館)

観 覧 料:一般 500(400)円 高・大生300(240)円

      ※中学生以下・65歳以上の方、障がい者手帳をお持ちの方は無料

主  催:郡山市立美術館 読売新聞社 美術館連絡協議会 福島民友新聞社、福島中央テレビ 

協  賛:ライオン 清水建設 大日本印刷 損保ジャパン

協  力:東京都写真美術館 日本大学藝術学部

田本研造ヵ《総裁 榎本釜次郎[武揚]  海軍副総裁》明治2年頃  函館市中央図書館蔵(後期展示)

(4)

  運 河 と 干 拓 地 、 高 い 空 と ど こ ま で も 広 が る 大 地 と 海 、 そ し て 風 車 。 こ の キ ー ワ ー ド か ら ど こ の 国 を 連 想 し ま す か ? 多 く の 方 は オ ラ ン ダ を イ メ ー ジ さ れ る の で は な い で し ょ う か 。   今 回 、 そ ん な オ ラ ン ダ の 魅 力 が 満 載 の 展 覧 会 「 オ ラ ン ダ ・ ハ ー グ 派 展 」 を 開 催 し ま す 。 19世 紀 に 活 躍 し た オ ラ ン ダ の ハ ー グ 派 に 焦 点 を 当 て て 紹 介 す る の は 、 日 本 初 と な る 貴 重 な 展 覧 会 で す 。   北 海 沿 岸 に 位 置 す る ハ ー グ は 、 現 在 、 ア ム ス テ ル ダ ム 、 ロ ッ テ ル ダ ム に 次 ぐ 大 都 市 で す 。 ハ ー グ は 今 で こ そ 有 名 な リ ゾ ー ト 地 で 、 ま た 国 際 都 市 と し て も 知 ら れ て い ま す が 、 19世 紀 末 ま で は 、 豊 か な 自 然 と 慎 ま し い 生 活 が 残 っ て い ま し た 。 ハ ー グ 派 の 画 家 た ち は 、 そ う し た 、 出 生 地 の オ ラ ン ダ の 美 し い 自 然 と 生 活 に 愛 着 を 抱 き 、 温 か い ま な ざ し を 持 っ て 描 い た の で す 。   ハ ー グ 派 の 画 家 た ち が お 手 本 に し た の が 、 フ ラ ン ス の バ ル ビ ゾ ン 派 の 絵 画 で す 。 バ ル ビ ゾ ン 派 の 画 家 た ち は 野 外 で の 自 然 観 察 を 重 視 し 、 穏 や か な 風 景 を 愛 し て い ま し た 。「 オ ラ ン ダ の バ ル ビ ゾ ン 」 と も 呼 ば れ た 彼 ら で す が 、 20世 紀 美 術 を 代 表 す る ゴ ッ ホ と モ ン ド リ ア ン は 、 こ の ハ ー グ 派 に ル ー ツ を 持 っ て い ま す 。   一 時 期 、 ハ ー グ に 居 住 し た こ と の あ る ゴ ッ ホ は 、 ハ ー グ 派 の 画 家 た ち が 好 ん だ 「 貧 し い 農 民 」 と い う 主 題 に 惹 き つ け ら れ ま し た ( 図 1 、 図 2 )。 影 響 関 係 を 簡 略 し て 矢 印 で 示 す と 、「 バ ル ビ ゾ ン 派 → ハ ー グ 派 → ゴ ッ ホ 、 モ ン ド リ ア ン 」 と い う 図 式 が 成 立 し ま す が 、 さ ら に 興 味 深 い の は 、 バ ル ビ ゾ ン 派 と ハ ー グ 派 が と も に 17世 紀 オ ラ ン ダ 黄 金 時 代 の 画 家 に 影 響 を 受 け て い る こ と で す 。   た と え ば 、 ヴ ァ イ セ ン ブ ル フ の 《 ハ ー ル レ ム の 風 景 》( 図 3 ) は 、 17世 紀 オ ラ ン ダ の 巨 匠 ラ イ ス ダ ー ル を 称 賛 す る よ う な 作 品 で す 。 ラ イ ス ダ ー ル と い う 画 家 は 、 実 は 、 イ ギ リ ス の 画 家 タ ー ナ ー も 敬 愛 し て や ま な か っ た 画 家 な の で す 。 す る と 、 ハ ー グ 派 の 画 家 た ち と タ ー ナ ー も ラ イ ス ダ ー ル と い う 同 じ ル ー ツ を 持 っ て い る こ と に な り ま す 。   ハ ー グ 派 と タ ー ナ ー と い う 、 美 術 史 上 で は 現 在 の と こ ろ 互 い に 点 に す ぎ な い 両 者 が

平成26年2月22日(土)~3月29日(土)

休 館 日:毎週月曜日

開館時間:午前9時30分~午後5時

     (最終入館は午後4時30分)

観 覧 料:一般1000(800)円、

     高校・大学生500(400)円

     

※( )内は20名以上の団体料金。中学生以下、        65歳以上、障がい者手帳をお持ちの方は無料。

主  催:郡山市立美術館

後  援:オランダ王国大使館、オランダ政府観光局

協  力:KLMオランダ航空、

     ヤマトロジスティクス株式会社

企画協力:株式会社ブレーントラスト

近代自然主義絵画の成立

オランダ・ハーグ派展

図1 フィンセント・ファン・ゴッホ《白い帽子をかぶった農婦の顔》 1884-85年 油彩・カンヴァス 44.0×35.9cm クレラー=ミュラー美術館蔵 

Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

図2 フィンセント・ファン・ゴッホ《じゃがいもを掘る2人の農婦》 1885年 油彩・カンヴァス

31.5×42.5cm クレラー=ミュラー美術館蔵  Kröller-Müller Museum, Otterlo, The Netherlands

(5)

線 と な っ て つ な が る 可 能 性 も あ る の で す 。 こ の 謎 を 解 明 す べ く 、「 オ ラ ン ダ ・ ハ ー グ 派 展 」 を お 楽 し み い た だ き な が ら 、タ ー ナ ー が 展 示 さ れ て い る 当 館 の 常 設 展 に も ぜ ひ お 立 ち 寄 り く だ さ い 。 ( 富 岡 進 一 ) 図3 ヤン・ヘンドリック・ヴァイセンブルフ 《ハールレムの風景》 1845-48年 油彩・板 23.2×34.1cm バーグ市立美術館蔵 Collection Gemeentemuseum Den Haag,The Hague, The Netherlands

 

○講演会

  「オランダ風景画の魅力」

(仮題)

 

講師/古谷可由さん

 

    (公益財団法人ひろしま美術館     

学芸部長、 本展監修者)

 

日時/平成

26年2月

23日(日)

    

午後2時~

 

会場/多目的スタジオ

         

(入場無料)

○美術講座

 

講師/当館学芸員

 

26年

日(

)   

    

午後2時~

 

会場/講義室

(入場無料)

○ギャラリートーク

 

講師/当館学芸員

 

26年

日(

)、

   

    

3月8日

(土)

午後2時~

 

会場/企画展示室

(要観覧券)

○ミュージアム・

シアター

  「炎の人ゴッホ」

 

(1955年、 ヴィンセント・ ミネリ監督)

 

日時/平成

26年3月

16日(日)

    

午後2時~

 

会場/多目的スタジオ

(入場無料)

雪村周継《四季山水図屏風》 16世紀後半(室町時代末~桃山時代)作 紙本墨画 各150.2×341.8cm 六曲一双 平成26年1月5日(日)〜 1月19日(日) 休 館 日:毎週月曜日(1月13日は開館、翌日休館) 開館時間:午前9時30分〜午後5時      (最終入館は午後4時30分) 料  金:一般200(150)円 高・大生100(70)円      ( )内は20名以上の団体料金。中学生以下、      65歳以上、障がい者手帳をお持ちの方は無料。  現在の茨城県常陸大宮市で生まれたとされる雪村周継 (1500年頃―1580年代前半)は室町時代後期を代表する画家の ひとりです。雪村がその晩年を過ごしたとされる庵のあった 場所は当時三春、現在の郡山市西田町であり、そこには雪村 庵が残っています。  当館では、2005(平成17)年からほぼ毎年正月に、彼の屏風 を企画展示室で特別展示しています。右から順に四季の風景 が描かれている本作では、墨の濃淡だけによる雄大な自然を 満喫できるだけでなく、ところどころに描かれた寺、舟、滝、 それに人を探すだけでも楽しくなります。  今年もどうぞお楽しみください。常設展のチケットでご覧 いただけます。

雪村周継《四季山水図屏風》特別展示

(6)

  紙を折り畳んで型紙の通りに切り、 そっ と 開 く。 す る と 手 の 中 に ふ わ り と、 美 し い 日 本 の 形 が 舞 い お り る。 そ の 瞬 間 の と き め き は、 何 度 や っ て も 色 褪 せ る こ と が ない。   明 治 時 代 の 遊 び の 本 で「 紋 切 り 型 」 を 見 つ け た。 そ れ ま で こ の 言 葉 の 意 味 を 深 く 考 え ず に 使 っ て 来 た。 そ う 「 型 通 り で つ ま ら な い 」 と い う 意 味 だ。 そ の 語 源 が 家紋を切り抜くための 「 型紙」 だったこと、 そ し て 家 紋 を こ の よ う に 遊 ぶ と い う こ と 自 体 に 驚 い た。 そ こ か ら、 私 達 の 祖 先 が 暮 ら し の 中 で 育 ん で き た 文 様 の 文 化 を 探 求するようになった。   「 紋 切 り あ そ び 」 は 江 戸 時 代 の 職 人 が 紋 を 美 し く 簡 単 に 描 く た め の 技 術 と し て 始 ま り、 意 外 な 形 が 生 ま れ る 面 白 さ か ら 寺 子 屋 な ど で も 遊 ば れ た よ う だ。 昭 和 の 初 め の 頃 ま で は 図 工 の 教 科 書 に も 載 っ て い   福 島 の 皆 様 に 当 館 の コ レ ク シ ョ ン を ご 覧 い た だ く こ と が で き、 心 か ら 嬉 し く 思 っ て い ま す。 東 日 本 大 震 災 の 発 生 か ら 既 に 2 年 半 を 超 え る 時 間 が 流 れ ま し た。 し か し、 福 島 第 一 原 発 事 故 の 影 響 も あ り、 い ま だ 将 来 へ の 確 か な 希 望 を も て な い 状 況 が 続 い て い ま す。 そ の な か で 郡 山 市 立 美 術 館 か ら の ご 要 請 に お 応 え し て、 震 災 復 興 支 援 と し て 当 館 の コ レ ク シ ョ ン を 郡 山 市、 そ し て 福 島 県 の 皆 様 に ご 覧 い た だ く 機 会 を も て た こ と に は 特 別 な 意 味 が あ り ま し た。 な ぜ な ら 当 館 の 歴 史 は、 サ ン フ ラ ン シ ス コ 講 話 条 約 締 結 を 記 念 し て、 第 二 次 大 戦 後 の 復 興 と 人 々 の 心 の 拠 り 所 と な る こ と を 願 っ て 計 画 さ れ、 昭 和 30年 に 開 館 し た 愛 知 県 文 化 会 館 美 術 館 に 始 ま っ て い る か ら で す。 さ ら に そ の 数 年 後、 私 た ち は 伊 勢 湾 台 風 と い う、 愛 知 県 だ け で も 三 千 人 を 超 え る 犠 牲 を と も な っ た 記 録 的 な 災 害 に も 見 舞 た。 と こ ろ が い つ の 間 に か ふ っ つ り と 姿 を 消 し て い た の だ。 私 達 の 暮 ら し か ら 和 服 が 消 え、 そ こ で 生 き て き た 文 様 と も 縁 遠くなってしまった。   今 で も 家 紋 を 描 く 職 人 さ ん の た め の 「 紋 帖 」 が あ る 。 そ こ に 植 物 や 動 物 だ け で な く 暮 ら し の 道 具 、 月 や 星 、 雷 や 霞 … な ど 森 羅 万 象 が ぎ っ し り と 並 び 、 ま る で 博 物 図 鑑 を み る よ う だ 。 そ こ か ら は 祖 先 達 の 暮 ら し ぶ り や 身 近 な 自 然 に 注 ぐ 細 や か な 観 察 眼 が 見 て と れ る 。 ひ と つ ひ と つ に 意 味 や 物 語 が い っ ぱ い だ 。   「 紋 切 り あ そ び 」 を 通 し て こ れ ら の「 か た ち 」 と も っ と 親 し く つ き あ い、 私 達 の 今 の 暮 ら し の な か で、 遊 ん で 使 っ て 次 の 世代に手渡していければいいな。 そう思っ て、 型紙を工夫し、 本を出版、 ワークショッ プ を 続 け て い る。 郡 山 市 立 美 術 館 に も そ んなご縁で訪れ、 みなさんと団扇をつくっ た。 ワ ー ク シ ョ ッ プ を す る た び 驚 く の は、 同 じ 型 か ら 始 ま っ て 実 に 個 性 豊 か な 作 品 が 出 来 る と い う こ と。 そ う、 型 が あ る か ら こ そ 「 型 破 り 」 が で き る! 個 性 や 創 造 は 白 い 紙 の 上 に ひ ょ い と 生 ま れ る も の で は な く、 多 く の 祖 先 達 の 残 し た 「 型 」 の 上 に 咲 く 花 な の だ。 ぜ ひ、 あ な た も 誰 か に手渡して欲しい。 ワークショップ ワークショップ   江戸の切り紙 「紋切りあそび」で団扇をつくろう 平成 25年7月 14日(日) 会場   多目的スタジオ 講師   下中菜穂さん   松田牧恵さん わ れ ま し た。 敗 戦 や 災 害 と い っ た 苦 難 の な か で も、 美 術 に 触 れ、 そ れ を 糧 と し て 未 来 を 信 じ て 歩 み を 重 ね て い く こ と の 大 切 さ を、 当 館 の 歴 史 と コ レ ク シ ョ ン が 教 えてくれているように思います。   こ の 展 覧 会 で は、 ク リ ム ト の 代 表 作《 人 生 は 戦 い な り( 黄 金 の 騎 士 )》 を 皆 様 に ご 覧 い た だ き ま し た。 こ の 作 品 は、 彼 が 芸 術 の 理 想 を 求 め な が ら も 周 囲 の 理 解 を 得 る こ と が で き ず、 人 生 の 窮 地 に 陥 っ て い た 時 に、 自 ら を 奮 い 立 た せ る た め に 描 い た と 言 わ れ る も の で す。 ク リ ム ト が 困 難 に 立 ち 向 か う た め こ の 絵 に 込 め た 思 い が、 芸 術 に よ る 力 強 い エ ー ル と し て 皆 様 に 受 け 止 め て い た だ け た も の と 確 信 し て い ま す。   皆 様 に と っ て 今 回 の 展 覧 会 が 芸 術 に 触 れ る 一 時 の 安 ら ぎ の 場 と な り、 そ し て 明 日 へ の 糧 を 得 て い た だ く 機 会 と し て い た だ く こ と が で き た の で あ れ ば、 こ れ に勝る喜びはありません。 講演会 「 美 術 の 持 つ 力 ― 愛 知 県 美 術 館 の コレクションを中心に」 平成 25年8月 31日(土) 会場   多目的スタジオ 講師   村田眞宏さん

 

 

 

(造形作家)

村 田 眞 宏

(愛知県美術館長)

「震災復興支援 愛知県美術館所蔵品展

黄金の騎士、北へ」を終えて

展覧会テープカット(平成25年8月30日) 左から 佐治ゆかり(当館館長)、杉山みなみ氏(公募参加者代表)、 村田氏、木村孝雄(郡山市教育委員会教育長)、大内嘉明氏(郡山 市議会議長)、太田忠良氏(同副議長)、阿部晃造氏(郡山市教育委 員会教育委員長) ワークショップ風景

「江戸」からの贈りもの

       

もんきりあそび

「江戸」からの贈りもの

       

もんきりあそび

 

 

 

(造形作家)

(7)

eport

講演会

「日本洋画史の中の小磯良平」

平成25年6月2日(日) 会場:多目的スタジオ 講師:島田康寛さん(神戸市立小磯記念館長)

朗読会

平成25年7月13日(土)、8月17日(土) 会場:多目的スタジオ 講師:児玉理恵さん(テレビユー福島アナウンサー) 「生誕110年 小磯良平の世界」にあわせて、 大正末期からの日本洋画の歴史とその中にお ける小磯良平の位置を考える講演会。戦前の 滞欧期、エコール・ド・パリの時代にあって、 彼が得たものと、その後の作風の変遷を深く ご紹介いただきました。 「滝平二郎展」出品作『花さき山』、『モチモ チの木』、『八郎』の絵本を朗読していただき ました。秋田弁で書かれた絵本を秋田県出身 の児玉さんが朗読するという、とても贅沢な 朗読会になり、会場は温かな雰囲気に包まれ ました。

第12回風土記の丘の美術展

郡山市内の小学生による作品展 平成25年7月23日(火)~       8月25日(日) 会場:展示ロビー 講師:郡山市立美術館    郡山市小学校造形教育研究会

夏休み公開ワークショップ

風土記の丘発 図工&美術の時間へ ようこそ! パートⅧ 平成25年8月3日(土) 会場:多目的スタジオ 講師:郡山造形サークル会員教諭8名 郡山市内の小学生が授業で制作した作品を、 地域ごとに週替わりで展示しました。子ども たちの素直な気持ちが表現された印象深い作 品が数多く出品されました。 現行の図工と美術の授業内容を体験するワー クショップ。会場内に設けた様々な屋台と遊 びのコーナーは、終日大勢の人でにぎわいま した。

ミュージアム・コンサート

絵画から聴こえてくる響き 平成25年6月8日(土) 会場:階段ホール 演奏:永田平八さん(リュート)    松村萌子さん(ソプラノ)    佐藤恵梨奈さん(ヴァイオリン)    能登伊津子さん(チェンバロ)

対談「滝平二郎の原風景」

平成25年7月15日(祝・月) 会場:多目的スタジオ 講師:滝平加根さん(滝平二郎長男)    村田哲朗さん(町田市立国際版画美術館長) 「生誕110年 小磯良平の世界」にあわせて、 小磯作品にたびたび描かれた古楽器によるコ ンサートを開催しました。様々な楽器の演奏 に、古楽器についてのレクチャーなどが加わ って、充実した内容になりました。 「滝平二郎展」にちなみ、長男である加根さん、 作家に親しく接してきた村田さんに、それぞ れの立場から想い出のエピソード等を紹介し ていただきました。滝平が絵本の挿絵を描く 前の、木版画の魅力についても深く入り込ん だ貴重な対談でした。

みんなで楽しむワークショップ

ふくらませよう!「ドリーム ばるーん」 平成25年8月14日(水) 会場:多目的スタジオ 講師:安田悟さん(共立女子大学教授)

正楽紙切りの世界

平成25年8月11日(日) 会場:多目的スタジオ 講師:林家正楽師匠(紙切り)、林家正雀師匠(落語、太鼓)、    長澤あや師匠(お囃子) 参加者全員でカラフルなビニールシートをつ なぎ合わせ、大きなバルーンを制作しました。 完成後は、バルーンの中に入り、自由に絵を 描くなどして楽しみました。 音曲にあわせて、即興で紙を切っていく紙切り 芸。郡山市にゆかりのある三代目正楽師匠が、 江戸時代から伝わるその名人芸を披露してくだ さいました。寄席以外ではなかなか聴くことの できない生のお囃子に加え、紙切りに関する対 談や正雀師匠の落語と日本舞踊、そして正楽師 匠の紙切りとワークショップなど、たっぷりの 内容で満員御礼の会場内には笑いが絶えません でした。 左:あや師匠と正雀師匠 中:正楽師匠 右:正雀師匠

(8)

報告

第1回「型―狂言の身体・演出」 特別講師:野村萬斎さん(狂言師) 日時:5月29日(水)午後2時30分から 会場:多目的スタジオ 知られざる身体の神秘を、動きと言葉 で気づかせてくれる講座でした。 第2回「モノをみる力―若冲登場」 特別講師:ジョー・プライスさん(絵画コレクター)           エツコ・プライスさん      内山淳一さん(仙台市博物館副館長) 日時:7月25日(木)午後2時から 会場:多目的スタジオ 今年の夏、福島県立美術館で開催され た「若冲がきてくれました」展出品作の 所蔵者であるプライス氏の、氏ならで はの作品解釈とものの見方を自ら語っ ていただきました。 第3回「日本人の<もの>観」     講師:佐治ゆかり(当館館長)     日時:9月21日(土)午後2時から     会場:講義室

<アート・テーク>今後の予定

第4回「知のかたち―大学博物館編①」 講師:佐治ゆかり(当館館長) 日時:11月16日(土)午後2時から 会場:講義室 第5回「知のかたち―大学博物館編②」 講師:佐治ゆかり(当館館長) 日時:平成26年1月18日(土)午後2時から 会場:講義室 第6回「ものが語る、ものを語る        ―小泉八雲の怪談(朗読)」 講師:佐野史郎さん(俳優) 日時:平成26年3月15日(土)(予定)    午後2時から 会場:多目的スタジオ ※各回とも参加は無料ですが、第6回  は事前の参加申込が必要です。  詳細は美術館までお問い合わせくだ  さい。

I N F O R M A T I O N

常設展示

■~ 12月1日 (日) 展示室1   イギリス美術名作選 展示室2   洋画事始め 展示室3   美術と社会 展 示 室 4   イ ギ リ ス の 版 画 / ク リ ス ト       ファー・ドレッサーと日本 ■ 12月4日 (水) ~平成 26年3月2日 (日) 展 示 室 1   小 特 集   風 景 を 愛 し た ノ リ       ッジ派の画家たち 展示室2   美しい日本風景 展示室3   イギリスの現代美術 展 示 室 4   日 本 銅 版 画 の 歴 史 / う つ わ       と色 ■平成 26年3月5日 (水) ~ 展示室1   イギリス近代美術 展 示 室 2   小 特 集   西 洋 に 学 ん だ 日 本       の画家たち 展示室3   郡山の彫刻 展示室4   版 の 魅 力 / ガ ラ ス の 神 様 た ち ※ 12月 4 日( 火 )及 び 平 成 26年 3 月 4 日( 火 )は、   展 示 替 え の た め 常 設 展 示 室 は ご 覧 に な れ ま   せ ん 。

第6回風土記の空

郡 山 市 内 の 中 学 校 美 術 部・ 選 択 美 術 に よる作品展   会場=ロビー (無料)   会期= 1 1月 12日(火) ~ 12月 15日(日)   美 術 部 や 選 択 美 術 で 制 作 し た 郡 山 市 内の中学生による作品展です。   み ず み ず し く、 若 さ に あ ふ れ た 作 品 を、 中 学 生 自 身 が 額 装 し、 美 術 館 ロ ビ ーに展示します。   ぜひ、ご覧ください。

館のお知らせ

  12月 20日( 金 )か ら 平 成 26年 1 月 4 日 ( 土 )ま で、 館 内 消 毒 及 び 年 末 年 始 の た め、全館休館となります。

旬のフルーツを使ったパンケーキ 690円

バニラアイスをのせたパンケーキの上に、砂糖と白ワインでじっく り煮詰めた旬の果物のコンフィチュールと生クリームをたっぷりか けたボリュームのあるデザートです。 果物は時期によって変わるので、毎回違った味が楽しめます。 デザートの他、期間限定のお飲物も。 旬のデザートとお好みのお飲物を合わせて、あなただけのカフェ タイムをお楽しみください。 営業時間 11:00-17:00 電話 024-942-2250

T O P

I C S

美術館のカフェ j u j u 1 3 0 c a f e

(ジュジュ イチサンマル カフェ)

平成25年度

〈アート・テーク〉

ご好評をいただいております<アート・テーク>。アートを通して日常をより豊かにすることを目的として開催しています。

参照

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