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Koike 2001 Pheloung et al Nishida et al A B C 3 A B B C x y 1 1 T S

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(1)

専門家アンケートをもとにした一対比較による在来植物の脅威となる

外来生物の重要度評価

小池 文人

1

・小出 可能

2

・西田 智子

3

・川道 美枝子

4

1横浜国立大学 環境情報研究院・2自然環境研究センター・3農業環境技術研究所・4生物多様性 JAPAN Evaluation of hazards posed by alien organisms threatening native plants and communities using paired comparisons based on

questionnaires answered by specialists

Fumito Koike1, Kano Koike2, Tomoko Nishida3 and Mieko Kawamichi4

1Graduate School of Environment and Information Sciences, Yokohama National University 2Japan Wildlife Research Center

3National Institute for Agro-Environmental Sciences 4Biodiversity Network Japan

要旨:絶滅危惧植物や保全すべき重要な植物群集の中には、外来生物(植物や動物、寄生生物)による被害が大き なものもある。種の生物学的な特性にもとづく外来種のリスク評価は研究途上であるが、社会においては研究の進 展を待たず、今すぐ評価することも必要である。ここではこのような要求にこたえるため、専門家によるアンケー トをもとに、在来植物のハビタットにおける対策の重要性と、外来生物種の脅威の大きさの評価を試みた。絶対的 な尺度のないアンケートでは評価者によって全体の重要度レベルが異なり、また北海道から沖縄までの全国の全て の現場を知っている専門家は存在しない。そこで回答者ごとの外来種間の 1 対 1 比較(どちらが相対的に大きな脅 威か)を元のデータとして、全体の重要度を再構成した。侵入先のハビタットへの外来種対策の重要度にも違いが あるため、まずハビタットごとの対策の重要度を比較し、次に各ハビタット内で外来種の重要度を比較した。対策 を取るべきハビタットとしては、小笠原諸島など海洋島の植生、水生植物群集、河原・崩壊地の貧栄養砂礫地の順 に重要であり、里山の二次草原と貧栄養湿地、砂浜海岸が続くとの結果になり、それぞれのハビタットでの重要な外 来生物のランキングが得られた。交雑や寄生などハビタット保全以外の対策が必要な影響については別途比較した。 Abstract: Many alien organisms (plant competitors, herbivorous animals, and host-specific parasites) are hazardous to endangered plants and important plant communities requiring conservation. Therefore, estimations of such hazards based on the biological traits of alien organisms are necessary; however, such information is not yet readily available. Despite technological deficits, we must immediately evaluate the hazards posed by alien organisms to plan countermeasures. Using paired comparisons based on questionnaires answered by specialists, we developed a method to evaluate the hazards of alien organisms that can damage native plants and communities. The knowledge of specific specialists was often limited to certain habitats (e.g., forest or wetland) and climatic zones (e.g., subtropical or boreal). Therefore, we constructed a table of paired comparisons using the answers from all specialists. Due to difficulties comparing the hazards of various alien species in diverse habitats, we first compared the importance of habitat (necessity of countermeasures) and then compared the hazard posed by individual alien species in each habitat. Hazards to native plant species through reproductive interference, hybridization, or host-specific parasitism were evaluated separately. Among habitats, vegetation on oceanic islands was the most important habitat in terms of hazards posed by alien species. Plant communities in aquatic systems and on oligotrophic sand and gravel along riversides were next most important.

1〒 240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台 79-7 横浜国立大学大学院環境情報研究院

Graduate School of Environment and Information Sciences, Yokohama National University, 79-7 Tokiwadai, Hodogaya-ku, Yokohama 240-8501, Japan

e-mail: koikef@ynu.ac.jp 2015 年 3 月 4 日受付、2015 年 3 月 22 日受理

(2)

序 文

 絶滅危惧植物や保全すべき重要な植物群集の中には、 外来生物(植物や動物、寄生生物)による被害が大きな ものもある。生物学的な特性にもとづく外来種のリスク 評価は研究途上である(たとえば Koike 2001)。オース トラリアなどで行われている雑草化リスク評価は、さま ざまな種特性(生物的特性、世界の侵入履歴、被害のタ イプなど)から未導入の外来生物のリスクを導入前に評 価するものであるが(Pheloung et al. 1999;Nishida et al. 2009)、すでに野生化している外来種の在来種への影響 に関する知見を積極的に評価するものではない。他方で 既存の文献などから侵略性や優占面積、駆除事例を得点 化する方法もあるが(たとえば村中ほか 2005)種によ り得られる情報量に差がある。また野生化している外来 種と在来種とのニッチの重複から外来種の影響の大きさ を評価することも行われているが(たとえば三上・小池 2005)、全国の多様な自然においてデータを元に評価す るのは容易な作業ではない。社会においては研究の進展 を待たず、今すぐ評価することも必要である(たとえば 外来生物法 http://www.env.go.jp/nature/intro/、2015 年 3 月 3 日確認)。ここでは、このような要求にこたえるため、 すでに野生化し被害状況を観察可能な外来生物につい て、多くの専門家のアンケートをもとに、専門家どうし のコンセンサスとなりうる影響評価を迅速に得ることを 目的とする。  ただし絶対的な尺度のないアンケートでは評価者によ って全体の重要度レベルが異なり、A(重要)、B(普通)、 C(影響小)の 3 段階の評価においては A と B のみで 回答する傾向のある評価者と、B と C のみで回答する 傾向のある評価者が現れる。また北海道から沖縄までの 全国の全ての現場を知っている専門家は存在しないた め、評価者 x による北海道と関東の評価と、評価者 y に よる関東と沖縄の評価を合成し、北海道から沖縄までの 統一的な評価を行う必要がある。そこで回答者ごとの、 ハビタットの組み合わせや外来種の組み合わせにおける 1対 1 の比較(どちらが相対的に重要か)を元のデータ として、全体の重要度を再構成した。  侵入先のハビタットの保全的な重要度には違いがあり 「保全的な価値が低い路傍草地に優占する外来種 T の重 要度」と「貴重な極相植生に散在する外来種 S の重要度」 を直接比較することは困難である。そのため「わが国の 植物相を形づくっている植物群落のうち、規模や構造、 分布等において代表的・典型的なもの、代替性のないも の、あるいはきわめて脆弱であり、放置すれば存続が危 ぶまれるもの」として調査が行われている特定植物群落 を参考に(環境省自然環境保全基礎調査 特定植物群落 調査 http://www.biodic.go.jp/kiso/12/12_toku.html、2015 年 3 月 3 日確認)、海洋島の植生、水生植物群集、河原・ 崩壊地の貧栄養砂礫地、里山の二次草原、貧栄養湿地、 砂浜海岸、高山植生、塩性湿地、雑木林・都市林、極相 林、低地岩場、海岸岩場を主要なハビタットとして対策 の重要度を比較し、次にハビタットごとに、そこでの各 外来種の重要度を比較した。  このようなハビタット保全の考え方とは別に、種特異 性が高い被害をもたらす場合として、在来種と外来近縁 種の間の繁殖干渉や交雑、外来寄生生物(狭食性害虫を 含む)の影響を別途評価した。

方 法

アンケート項目  外来生物が在来植物に与える影響のなかで、光をめぐ る資源競争や外来哺乳類の採食などの種特異性の低いも のは、特定の在来植物だけでなく植物群集全体に影響を 与える。このため、外来生物の影響はハビタットや植物 群集全体への影響として把握できる。この場合は脅威と なる外来生物から重要なハビタットや植物群集を保全す ることで、在来植物の保全を行うことができる。  それに対して近縁種との交雑や繁殖干渉、寄生(狭食 性の捕食者)などでは、特定の外来生物の種が特定の在 来植物種のみに影響を与える。この場合は保全すべき在 来植物を特定し、その脅威となる特定の外来生物に対す る対策を講じることになる。  このアンケートでは上記の 2 つのケースを分離した。 ハビタットに対する脅威では、海洋島の植生、水生植物 群集、河原・崩壊地の貧栄養砂礫地、里山の二次草原、 貧栄養湿地、砂浜海岸、高山植生、塩性湿地、雑木林・ 都市林、極相林、低地岩場、海岸岩場、の 12 ハビタッ トについて外来生物対策の重要性をアンケート調査し た。これらのハビタットにはそれぞれ保全すべき重要な 在来植物が生育し、また植物群集も特有のものであり、 種レベルや群集レベルでの生物多様性にとって重要なも のであると考えられ、これまでの特定群落調査でも取り 上げられている(環境省自然環境保全基礎調査 特定植 物群落調査 http://www.biodic.go.jp/kiso/12/12_toku.html、 2015年 3 月 3 日確認)。さらに、これらの各ハビタット で脅威となる外来生物の影響の大きさをアンケート調査

(3)

した。  特定の在来植物のみに脅威となる種特異性の高い外来 生物については、被害を受ける在来植物に対する対策の 重要度と、影響を与える外来生物の脅威の大きさをそれ ぞれアンケート調査した。 調査対象と手順  アンケート調査の対象は日本国内の専門家であり、 2009年 11 月に生態学や農学関係者、地域の生物に関す るアマチュア研究者など 76 名に回答を直接依頼したほ か、帰化植物メーリングリスト(naturplant)でも回答 を依頼した。日本国内のなるべく多くの専門家を網羅す るため、第 1 回目のアンケートでは本人以外の専門家の 紹介も依頼した。2010 年 1 月に行われた第 2 回目のア ンケートでは、新たに 66 名の専門家に追加アンケート を発送し、また国内の生態学や進化学のメーリングリス トである jeconet と evolve でも不特定の専門家に回答を 依頼した。  アンケートでは、(1)例示したハビタットにおける外 来種対策の重要性について A(重要)、B(普通)、C(影 響小)の 3 段階で回答を依頼した(付録 1)。次に、(2) 各ハビタットにおける外来生物種を例示し、それぞれの 外来種の脅威の大きさについて A、B、C の 3 段階での 回答を依頼した。また(3)繁殖干渉や交雑、寄生につ いては上記とは別に、保全すべき在来植物の重要度(A、 B、C の 3 段階)と外来種の重要性(A、B、C の 3 段階) についての回答を依頼した。第 1 回と第 2 回のアンケー ト共に、回答中でハビタットや外来種、影響を受ける在 来種を自由に追加できる構成としたが、第 1 回の回答の 中に追加記載されたハビタットや種の中から重要と思わ れるものは第 2 回のアンケートに追加した。なお、十分 な知識や経験がない場合は欠損値とするよう依頼した。 集計  重要度を数値化する目的で多変量解析を行った。ハビ タットに対する対策の重要性や外来生物の脅威の大きさ は A(重要)、B(普通)、C(影響小)、の 3 段階であり、 これをもとにまず全ハビタット×全ハビタットや、各ハ ビタットにおける外来種×外来種の 1 対比較表を作成し た。全回答者の回答を 1 対比較に分解し、複数の回答者 からの回答が得られている組み合わせでは回答者の平均 を 1 対比較表のセルの値とした。なお回答がひとつも得 られていないセルには 1 対比較表内で回答が得られた全 セルの平均を与えた。この表を行列として固有ベクトル を計算し、ハビタットや外来種の重要度を得た。固有ベ クトルの要素は平均値 0.0、標準偏差 1.0 に正規化した。 固有ベクトルの要素の値が対応するハビタットや種の重 要度であり、値が大きいほど重要である。なお 5 名以上 の回答者による評価が得られたハビタットや種のみを重 要度の計算対象とした。また固有ベクトルの計算に先立 ち、回答が得られた対象(ハビタットや種)どうしの比 較をたどることで全対象を比較可能なデータが得られて いることを確認した。  全てのハビタットをまとめた外来種の重要度について は、ハビタットの重要度(正規化済み)と各ハビタット 内の外来種の重要度(正規化済み)の和として評価を試 みた。

結果と考察

 第 1 回のアンケートでは 38 件の回答を得ることがで き、第 1 回と第 2 回との合計で 74 件の回答を得た。メ ーリングリストに対する回答は少なく(全回答の 11%)、 ほとんどの回答は直接依頼したものに対してであった が、直接依頼に対する回収率は 46% であった。 在来植物のハビタットを保護するアプローチ  外来生物への対策を取るべきハビタットとしては、小 笠原諸島などの海洋島の植生がもっとも重要であるとの 結果が得られた(表 1)。それに続いて重要とされるハ ビタットは水生植物群集と河原・崩壊地の貧栄養砂礫地 であり、里山の二次草原と貧栄養湿地、砂浜海岸は、さ らにそれに続く重要性を持つとの結果になった。高山植 生、塩性湿地、雑木林・都市林、極相林、低地岩場の重 要度は相対的に低いとみなされており、海岸岩場は最も 表 1.外来生物に対する対策が必要なハビタット。 ハビタット (正規化)重要度 (74 名中)回答者数 海洋島の植生 1.56 33 水生植物群集 1.19 43 河原・崩壊地の貧栄養砂礫地 0.96 48 里山の二次草原 0.47 52 貧栄養湿地 0.19 30 砂浜海岸 0.17 32 高山植生 -0.16 27 塩性湿地 -0.25 19 雑木林・都市林 -0.46 42 極相林 -0.69 29 低地岩場 -0.86 18 海岸岩場 -2.11 7

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表 2.外来種の重要度。全ハビタット総合重要度は、ハビタット内の外来種の相対的な重要度と、ハビタットへの外来種対策の重 要度(表 1)の和としてもとめた。学名は「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)(米倉浩司・梶田忠 http://bean.bio. chiba-u.jp/bgplants/ylist_main.html 2015 年 3 月 30 日確認)などによる。* 動物、A 特定外来生物、B 要注意外来生物 ハビ タッ ト名 外来生物 学名 ハビタッ ト内の重 要度(正 規化) 全ハビ タット総 合重要度 回答者数 (74 名中) 海洋島 ノヤギ * Capra hircus L. 1.58 3.14 29

アカギ Bischofia javanica Blume 1.55 3.11 34

クマネズミ * Rattus rattus L. 0.85 2.41 22 モクマオウ Casuarina equisetifolia L. 0.77 2.33 29 ギンネム B Leucaena leucocephala (Lam.) de Wit 0.72 2.27 34

シマグワ Morus australis Poir. 0.45 2.01 24

グリーンアノール *A Anolis carolinensis Voigt 0.04 1.6 5 ランタナ B Lantana camara L. 0.01 1.57 28 キバンジロウ B Psidium cattleyanum Sabine 0.01 1.57 22 アフリカマイマイ * Achatina fulica Ferussac -0.41 1.15 22 アワユキセンダングサ B Bidens pilosa L. var. radiata Sch. Bip. -0.8 0.76 21 リュウキュウマツ Pinus luchuensis Mayr -0.9 0.66 25 ガジュマル Ficus microcarpa L.f. -0.96 0.6 6 ホナガソウ Stachytarpheta urticifolia Sims -1.03 0.53 23 カッコウアザミ Ageratum conyzoides L. -1.87 -0.31 18 水生植物群集

オオカナダモ B Egeria densa Planch. 1.36 2.54 41 ボタンウキクサ A Pistia stratiotes L. 1.13 2.32 36 オオフサモ A Myriophyllum aquaticum (Vell.) Veldc. 1.09 2.28 35 ホテイアオイ B Eichhornia crassipes (Mart.) Solms 1.05 2.24 38 コカナダモ B Elodea nuttallii (Planch.) St.John 0.98 2.16 40 ナガエツルノゲイトウ A Alternanthera philoxeroides (Mart.) Griseb. 0.75 1.94 28 ミズヒマワリ A Gymnocoronis spilanthoides (D.Don ex Hook. et Arn.) DC. 0.48 1.67 26 外来アカウキクサ A Azolla spp. 0.41 1.59 34 チクゴスズメノヒエ Paspalum distichum L. var. indutum Shinners 0.33 1.52 21 キシュウスズメノヒエ B Paspalum distichum L. 0.03 1.21 31 ハゴロモモ B Cabomba caroliniana A.Gray -0.32 0.87 26 ブラジルチドメグサ A Hydrocotyle ranunculoides L.f. -0.39 0.8 19 オランダガラシ B Nasturtium officinale R.Br. -0.39 0.8 37 ナガバオモダカ B Sagittaria graminea Michx. -0.77 0.42 19 シュロガヤツリ Cyperus alternifolius L. -1.08 0.11 8 キショウブ B Iris pseudacorus L. -1.15 0.04 16 園芸スイレン Nymphaea cv. -1.65 -0.46 31 アメリカミズユキノシタ B Ludwigia repens J.R.Forst. -1.84 -0.65 12 河原・崩壊地の貧栄養砂礫地

ニセアカシア B Robinia pseudoacacia L. 1.68 2.64 50 シナダレスズメガヤ B Eragrostis curvula (Schrad.) Nees 1.65 2.61 46 イタチハギ B Amorpha fruticosa L. 1.15 2.1 19 オオキンケイギク A Coreopsis lanceolata L. 0.7 1.65 42 ネズミムギ B Lolium multiflorum Lam. 0.38 1.33 37 シロバナシナガワハギ Melilotus officinalis (L.) Pall. subsp. albus (Medik.) H.Ohashi et Tateishi 0.01 0.96 29 ハルシャギク Coreopsis tinctoria Nutt. -0.02 0.93 9 ハルザキヤマガラシ B Barbarea vulgaris R.Br. -0.26 0.7 30 外来クサフジ類 Vicia spp. -0.34 0.62 32 セイヨウカラシナ Brassica juncea (L.) Czern. -0.61 0.35 37 ピラカンサ類 Pyracantha spp. -0.77 0.19 7 オオフタバムグラ B Diodia teres Walter -1 -0.05 28 ムシトリナデシコ Silene armeria L. -1.11 -0.15 17 ビロードモウズイカ Verbascum thapsus L. -1.46 -0.5 40 里山の二次草原

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表 2.続き ハビ タッ ト名 外来生物 学名 ハビタッ ト内の重 要度(正 規化) 全ハビ タット総 合重要度 回答者数 (74 名中) セイタカアワダチソウ B Solidago altissima L. 2.08 2.54 54 オオブタクサ B Ambrosia trifida L. 1.85 2.31 48 オオハンゴンソウ A Rudbeckia laciniata L. 1.71 2.18 40 オニウシノケグサ B Schedonorus phoenix (Scop.) Holub 1.07 1.53 43 メリケンカルカヤ B Andropogon virginicus L. 0.65 1.12 45 オオキンケイギク A Coreopsis lanceolata L. 0.33 0.8 40 ナルトサワギク A Senecio madagascariensis Poir. 0.29 0.75 18 アラゲハンゴンソウ Rudbeckia hirta L. 0.29 0.75 27 セイバンモロコシ Sorghum halepense (L.) Pers. 0.24 0.71 32 エゾノギシギシ B Rumex obtusifolius L. 0.1 0.57 43

ハルガヤ Anthoxanthum odoratum L. 0.01 0.48 40

キショウブ B I. pseudacorus -0.08 0.39 38 カモガヤ B Dactylis glomerata L. -0.08 0.39 42 オオアワガエリ B Phleum pratense L. -0.31 0.16 38 ヒメジョオン B Erigeron annuus (L.) Pers. -0.36 0.11 51 シロツメクサ Trifolium repens L. -0.36 0.11 47 セイヨウタンポポ B Taraxacum officinale Weber ex F.H.Wigg. -0.54 -0.07 45 アメリカオニアザミ B Cirsium vulgare (Savi) Ten. -0.54 -0.07 26 セイヨウカラシナ Brassica juncea (L.) Czern. -0.54 -0.07 28 アレチマツヨイグサ Oenothera parviflora L. -0.58 -0.12 46 ツルニチニチソウ Vinca major L. -0.63 -0.16 27 ハルジオン B Erigeron philadelphicus L. -0.91 -0.44 45 ナンキンハゼ Triadica sebifera (L.) Small -0.91 -0.44 23 セイヨウヒキヨモギ Bellardia viscosa (L.) Fisch. et C.A.Mey. -0.95 -0.48 7 フランスギク Leucanthemum vulgare Lam. -1.04 -0.58 33 ヘラオオバコ B Plantago lanceolata L. -1.23 -0.76 44 ルピナス Lupinus spp. -1.69 -1.22 28 貧栄養湿地 メリケンカルカヤ B A. virginicus 0.72 0.91 10 外来ミミカキグサ類 Utricularia spp. 0.62 0.81 8 外来モウセンゴケ類 Drosera spp. 0.12 0.3 21 キバナノマツバニンジン Linum medium (Planch.) Britton -1.45 -1.26 14 砂浜海岸

アメリカハマグルマ B Sphagneticola trilobata (L.) Pruski 2.26 2.43 5 コマツヨイグサ B Oenothera laciniata Hill 0.68 0.84 31 外来ハマアカザ類 Atriplex spp. 0.27 0.43 5 オニハマダイコン Cakile edentula (Bigelow) Hook. 0.05 0.22 7 ヒゲナガスズメノチャヒキ Bromus diandrus Roth 0.01 0.18 5 ヒメスイバ Rumex acetosella L. -0.06 0.1 24 コバンソウ Briza maxima L. -0.51 -0.35 20 マツヨイグサ Oenothera stricta Ledeb. ex Link -0.51 -0.35 27

ムギクサ Hordeum murinum L. -0.61 -0.44 18 アツバキミガヨラン Yucca gloriosa L. -1.57 -1.4 5 高山植生 セイヨウオオマルハナバチ *A Bombus terrestris L. 0.34 0.18 16 野生化コマクサ Dicentra spp. -0.48 -0.64 22 オオハンゴンソウ A R. laciniata -0.83 -0.99 20 セイヨウタンポポ B T. officinale -0.91 -1.07 23 塩性湿地 スパルティナ属 A Spartina spp. 1.7 1.45 10 ホウキギク Symphyotrichum subulatum (Michx.) G.L.Nesom var. subulatum 0.87 0.62 15 ホコガタアカザ Atriplex prostrata Boucher ex DC. -0.69 -0.94 7 雑木林・都市林

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優先度が低いとの評価結果になった。  多くの固有植物が存在する小笠原諸島などの海洋島に おいては、ノヤギ(以下、外来種および一部の在来種の 学名は表 2 と表 3 の中に示す)とアカギの脅威が大きい との評価結果が得られた(表 2)。これに続くものはク マネズミ、モクマオウ、ギンネム、シマグワである。グ リーンアノールやランタナ、キバンジロウ、アフリカマ イマイ、アワユキセンダングサ、リュウキュウマツ、ガ ジュマル、ホナガソウ、カッコウアザミの影響は上記の ものと比べて相対的に低いと見なされた。重大な脅威で あると評価された外来生物は哺乳類や極相林で優占する 樹木であり、原生自然の生態系そのものを大きく変えて しまう外来生物である。二次林などに出現する中程度の 樹高の陽樹の影響は中程度と評価され、低木や草本はそ れよりも影響が小さいと評価されていた。なおグリーン アノールは植物を直接食害しないが、訪花昆虫などを捕 食することで間接的に影響を与えていると考えられる (苅部 2005)。リュウキュウマツは外来生物であるマツ ノザイセンチュウの松枯れにより、かつてほどの影響は ない(矢加部・岡 2007)。ガジュマルは訪花昆虫が非意 図的に導入されてしまったため近年になって結実を始 め、樹上で発芽・成長していることが確認されていて、 今後は大きな問題になる可能性がある(渡邊ほか 2004)。  沈水植物や浮葉植物などの水生植物は地域の生物多様 性の中でも特殊な生活型をとる植物であり、特殊な立地 に成立するハビタットである。このような水生植物群集 ではオオカナダモの影響が最も大きいとの評価結果が得 られた。ボタンウキクサ、オオフサモ、ホテイアオイ、 コカナダモがそれに続き、ナガエツルノゲイトウ、ミズ ヒマワリ、外来アカウキクサ、チクゴスズメノヒエ、キ シュウスズメノヒエ、ハゴロモモ、ブラジルチドメグサ、 オランダガラシは中程度の重要度を持つとされ、ナガバ オモダカ、シュロガヤツリ、キショウブ、園芸スイレン、 アメリカミズユキノシタの重要度の評価は相対的に低か った。多くの場所で優占している沈水植物や浮遊植物の 影響が大きく評価され、湿地の水辺種や分布域の狭い種 の重要度は相対的に低めに評価されていた。沈水植物群 集は単一の外来植物が排他的に優占する場合が多いた め、大きな脅威であると評価されたと思われる。  河原や崩壊地などの貧栄養砂礫地にはカワラニガナ Ixeris tamagawaensis (Makino) Kitam.やカワラサイコ Potentilla chinensis Ser.など河原の砂礫地に特有の在来植 物が生育する。ここではニセアカシアとシナダレスズメ ガヤ、イタチハギ、オオキンケイギクが大きな脅威とし て評価された。これに続くのはネズミムギ、シロバナシ ナガワハギ、ハルシャギク、ハルザキヤマガラシ、外来 ハビ タッ ト名 外来生物 学名 ハビタッ ト内の重 要度(正 規化) 全ハビ タット総 合重要度 回答者数 (74 名中) トウネズミモチ B Ligustrum lucidum Aiton 0.43 -0.03 34 タイワンリス *A Callosciurus erythraeus Pallas 0.39 -0.07 11 ニワウルシ Ailanthus altissima (Mill.) Swingle 0.29 -0.17 13

シュロ類 Trachycarpus spp. 0.19 -0.27 38

ナンキンハゼ Triadica sebifera (L.) Small 0.13 -0.33 10 オオバヤシャブシ Alnus sieboldiana Matsum. -0.25 -0.71 25 ノハカタカラクサ B Tradescantia fluminensis Vell. -0.57 -1.03 23 ヒイラギナンテン Berberis japonica (Thunb.) R.Br. -1.31 -1.77 11 キウイフルーツ Actinidia chinensis Planch. var. deliciosa (A.Cheval.) A.Cheval. -1.41 -1.87 7 極相林

タイワンリス *A C. erythraeus 1.66 0.97 8 キョン *A Muntiacus reevesi Ogilby 0.59 -0.11 6 トウネズミモチ B L. lucidum -0.14 -0.83 21

シュロ類 Trachycarpus spp. -0.29 -0.99 25

ノハカタカラクサ B T. fluminensis -0.64 -1.34 21 コンテリクラマゴケ Selaginella uncinata (Desv.) Spring -1.17 -1.86 6 低地の岩場

ホウライシダ Adiantum capillus-veneris L. 1.18 0.33 11 ツルマンネングサ Sedum sarmentosum Bunge 0.46 -0.4 5 野生化ナンテン Nandina domestica Thunb. -0.67 -1.52 13 野生化ビワ Eriobotrya japonica (Thunb.) Lindl. -0.97 -1.83 13 表 2.続き

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クサフジ類であり、セイヨウカラシナ、ピラカンサ類、 オオフタバムグラ、ムシトリナデシコ、ビロードモウズ イカなどは相対的に低く評価された。貧栄養砂礫地で安 定的に優占する外来植物の脅威が大きく評価されてい る。またオオフタバムグラ、ムシトリナデシコ、ビロー ドモウズイカなど出現しても優占度が低い種は相対的に 低く評価されているように見える。  火入れや刈り取りで維持されオキナグサ Pulsatilla cernua (Thunb.) Berchtold et J.Preslやキキョウ Platycodon grandiflorus (Jacq.) A.DC.などが生育する里山の二次草地 に関するアンケートでは、アレチウリ、セイタカアワダ チソウ、オオブタクサ、オオハンゴンソウなどが脅威の 大きな種とされた。しかしこれらの種の多くは、歴史的 に古くから維持されてきた二次草原(植物社会学におけ るススキクラス)に生育する種ではなく、むしろ人為的 な攪乱の直後に比較的富栄養な立地で優占する 1 年草群 集や、ヨモギクラスなどの多年生路傍植生などに生育す る植物である(宮脇 1986 など)。伝統的な二次草原と攪 乱直後に成立する草本群集を回答者が区別していなかっ た可能性もある。アンケートの文面において、海に近く 攪乱の多い湿性地に生育するタコノアシ Penthorum chinense Purshなど異質な種を含んだ記述が不適切だっ たため、対象とするハビタットが誤解されたと考えられ る。結果として、保全の必要な歴史的二次草地に対する 外来生物の影響評価は、今回のアンケートでは十分に行 うことができなかった。なおシバが優占する草地ではセ ンチピードグラス Eremochloa ophiuroides (Munro) Hack. やメリケンカルカヤが優占してシバが駆逐されるとの情 報があった(下田 私信)。

 食虫植物やサギソウ Pecteilis radiata (Thunb.) Raf. など の希少種が生育する貧栄養湿地では、メリケンカルカヤ が重要な脅威として認識されていた。メリケンカルカヤ を評価した回答者は 74 名中の 10 名と少なかったが、湿 地以外の乾燥地の裸地や背の低い草地にも生育して分布 をひろげるものの、希少種が生育する貧栄養な裸地的環 境にも侵入するため、今後は多様性保全の観点から重要 な外来植物になる可能性がある。外来ミミカキグサ類や 外来モウセンゴケ類などの園芸種も中程度の脅威と評価 されたが、食虫植物の特殊な環境要求性を熟知した山草 マニアが意図的に植栽していると思われ、人為的な植え 出しがマニアの間に流行した場合には重大な脅威となり うる。  砂浜海岸にはハマヒルガオ Calystegia soldanella (L.) R.Br.やコウボウムギ Carex kobomugi Ohwi など他のハビ

タットには生育しない植物が存在するため、地域の生物 多様性にとって重要である。回答者は少ないが、匍匐茎 により亜熱帯の砂浜を覆い尽くしてしまうアメリカハマ グルマが最も重要な脅威であるとの計算結果が得られ た。これよりかなり重要度は下がるが、これに続くもの としてコマツヨイグサ、外来ハマアカザ類、オニハマダ イコン、ヒゲナガスズメノチャヒキ、ヒメスイバなど、 通常はそれほど優占することはないが砂浜海岸で安定し て個体群を維持している外来植物があげられた。  高山植生は日本の生物多様性にとって極めて重要なハ ビタットであるが、人間活動が活発でないためもあり、 外来生物の影響はいまのところ顕著ではないため、ハビ タットに対する外来種対策の重要度は低いとされてい る。その中で未だ高山帯では優占していないが、盗蜜や 在来訪花昆虫への影響が危惧されるセイヨウオオマルハ ナバチ(Matsuura 2004;須賀 2006;Dohzono et al. 2008) が最も重要な脅威として認識されていた。次に重要とさ れる野生化コマクサは、高山荒原での観光目的による意 図的な植栽種である。

 ウラギク Tripolium pannonicum (Jacq.) Schur、アッケシ ソウ Salicornia perennans Willd.、シチメンソウ Suaeda japonica Makino、ハマサジ Limonium tetragonum (Thunb.) A.A.Bullockなどが生育する塩性湿地は、今回のアンケ ートではスパルティナ属が重要な脅威とされた。世界的 にはスパルティナ属の植物が優占することで干潟の生態 系が密生する湿性草原に変わってしまうことが生態学の 教科書により広く知られており、このスパルティナ属の 植物は中国ではすでに緑化用として導入されている。な おこのアンケート後の 2011 年に日本においても野生化 が確認された。  雑木林や都市林には、キンラン Cephalanthera falcata (Thunb.) Blumeやエビネ Calanthe discolor Lindl. など乱 獲対象となるもの以外の稀少植物はそれほど多く生育し ない。むしろ地域の景観要素としての重要度が高いと思 われる。ここではモウソウチクが最も重要な脅威として 多くの専門家に認識されていた。これに続くものはトウ ネズミモチ、タイワンリス、ニワウルシ、シュロ類、ナ ンキンハゼであり、中程度の樹高を持つ外来樹木と樹上 性の哺乳類であった。  極相林は日本の自然の中では重要なハビタットである が、これまで外来生物の侵入は顕著でなく、対策の必要 性はそれほど高くないと評価された。ただし回答者は少 ないが、タイワンリスやキョンなどの外来哺乳類が重要 な脅威として認識されていた。タイワンリスは特定の樹

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種の樹皮をはぎ枝枯れをおこして森林の種組成を変えて しまうほか、ヤブツバキ Camellia japonica L. などの未熟 種子を食害する(小池 個人観察)。森林性で小形のシ カであるキョンは常緑広葉樹の葉や堅果を採食し、同所 においてスゲ類などの単子葉草本を多く採食するニホン ジカ Cervus nippon Temminck と採食特性が異なるため (浅田 2009)、ニホンジカよりも極相林への影響が大き くなる可能性がある。キョンの現在の分布は房総半島と 島嶼に限られており、海や首都圏の市街地、耕地によっ て本州や九州、四国などの主要な森林地帯から分断され ているため、人為的な持ち運びがなければ本州全体など に分布拡大する可能性は比較的低いと考えられる。しか しタイワンリスは伊豆半島など主要な森林地帯と連続し た森林にも野生化しており、将来は本州や九州などの照 葉樹林の全域に分布拡大して重大な脅威となると考えら れる。  林冠下の低地の岩場はイワギボウシ Hosta longipes (Franch. et Sav.) Matsum. var. longipesや イ ワ タ バ コ Conandron ramondioides Siebold et Zucc.などの生育場所 となるほか、石灰岩地には特有の植物も生育する。ここ ではホウライシダが最も大きな脅威として評価された。 ホウライシダは都市の駅のホームでしばしば見られる が、イワギボウシやイワタバコが生育する岩場に密生す ることもあり(小池 個人観察)、将来は被害が拡大す る可能性がある。

 海岸の岩場はアサツキ Allium schoenoprasum L. var. foliosum Regelやスカシユリ Lilium maculatum Thunb. な どの在来植物のハビタットであるが、これまでのところ 外来生物の影響は顕著でない。ただし愛知県においてニ ラ Allium tuberosum Rottler ex Spreng. が侵入していると の回答が 1 件寄せられた(藤井 私信)。  ハビタットの重要度と各ハビタット内の外来種の重要 度を総合し、全てのハビタットをまとめた外来種の重要 度は、里山の二次草地を除くとノヤギ、アカギ、ニセア カシア、シナダレスズメガヤ、オオカナダモ、アメリカ ハマグルマ、クマネズミ、モクマオウ、ボタンウキクサ、 オオフサモ、ギンネム、ホテイアオイ、コカナダモ、イ タチハギ、シマグワの順であり、ナガエツルノゲイトウ、 ミズヒマワリ、オオキンケイギク、モウソウチク、グリ ーンアノール、外来アカウキクサ、ランタナ、キバンジ ロウ、チクゴスズメノヒエ、スパルティナ属、ネズミム ギ、キシュウスズメノヒエ、アフリカマイマイがそれに 図 1.ハビタットにおける外来種対策の必要度と、ハビタット内の外来種の相対的な脅威の大きさからもとめた、 全外来種の総合的な重要度。

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続いた(表 2)。これら 28 種には特定外来生物が 8 種、 要注意外来生物が 12 種、自然環境保全のために小笠原 諸島で防除事業が行われている種が 4 種(ノヤギ、アカ ギ、クマネズミ、モクマオウ)含まれており、日本全体 の重要な外来種のリストを作成する上では利用可能なひ とつの手法であることが示唆された。  各ハビタットの外来種対策の必要度と、各外来種のハ ビタット内での相対的な重要性も考慮した総合的な重要 度との関係は図 1 のようになり、対策の必要度が低いハ ビタットでも総合的にみて重要度が高い種がある関係が 示された。今回はハビタットの重要度とハビタット内の 外来種の重要度を合計する際のウェイトを 1.0 としたが (図 1 における直線の傾きが 1.0)、この値を変えること でハビタットの重要度を考慮しない評価や(傾き 0.0)、 重要なハビタットの外来種を現在のものより大きく評価 する設定(傾きを大きく)とすることも可能である。 在来植物を種ごとに保護するアプローチ  ノダイオウ、マダイオウに対する外来ギシギシ類の交 雑や、ヤクタネゴヨウへのマツノザイセンチュウの寄生、 オガサワラグワに対するシマグワの交雑が重要な脅威で あると認識されていた(表 3)。  カワジシャに対する外来オオカワジシャの交雑や、コ マツナギ、ヤマハギ、メドハギとの外国産同種植物の交 雑による遺伝子頻度の変化、在来タンポポへの外来タン ポポの遺伝子浸透や繁殖干渉などは中程度の脅威である と評価された。  外来生物の影響の大きさは、対応する在来植物とは切 り離して解析したが、シマグワ、マツノザイセンチュウ、 外国産ギシギシ類が最も重要な外来種で、外国産メドハ ギ、外国産コマツナギ、外国産ヤマハギ、外来タンポポ などがそれに続くものであった。種特異的な被害を与え る外来種の重要度は、被害を受ける在来植物への対策の 重要度に対応したものであり、両者の相関係数は高く (r=0.88)矛盾は見られなかった。

まとめと今後の展望

 最も外来生物対策が必要なハビタットは海洋島の植生 と水生植物群集であり、これに河原・崩壊地の貧栄養砂 礫地、里山の二次草原、貧栄養湿地、砂浜海岸などが続 く。今回のアンケート結果は調査時点における専門家の コンセンサスとしておおむね妥当なものと考えられる。 各ハビタットにおいて脅威となる重要な外来生物も、お 表 3.繁殖干渉や交雑、寄生など、種特異性の高い影響をもたらす外来種に対する保護対策が必要な在来植物。* 動物、A 特定外来 生物、B 要注意外来生物 保護対象の在来種 被害をもたらす外来種 在来種への対策の重要 度(正規化) 外来種重要 度(正規化) 在来種対策 回答者数 (74 名中) 外来種重要 度回答者数 (74 名中) オガサワラグワ(Morus boninensis Koidz.)(国 絶滅危惧

IB類) シマグワ(M. australis) 1.37 1.37 23 24 ヤクタネゴヨウ(Pinus amamiana Koidz.)(国 絶滅危惧

IB類)、アカマツ(Pinus densiflora Siebold et Zucc.)、クロ マツ(Pinus thunbergii Parl.)などのマツ属

マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus

xylophilus (Steiner & Buhrer) Nickle)* 1.42 1.29 30 32

ノダイオウ(Rumex longifolius DC.)(国 NT;絶滅危惧 I 類 群馬、ほか)、 マダイオウ(Rumex madaio Makino)

(絶滅危惧 I 類 大阪・岡山・鹿児島、ほか) 外国産ギシギシ類(Rumex spp.)B 1.56 1.09 9 11 コマツナギ(Indigofera pseudotinctoria Matsum.)(絶滅危

惧 II 類 山形、ほか) 外国産コマツナギ(I. pseudotinctoria) -0.08 0.41 10 11 メドハギ(Lespedeza cuneata (Dum.Cours.) G.Don) 外国産メドハギ(L. cuneata) -0.19 0.45 10 9 ヤマハギ(Lespedeza bicolor Turcz.)(分布重要種 鹿児島)外国産ヤマハギ(L. bicolor) -0.1 0.29 27 24 在来タンポポ(Taraxacum spp.)(絶滅危惧 IA 類 高知・

熊本、ほか) 外来タンポポ(Taraxacum spp.) B -0.25 0.1 43 42 カワジシャ(Veronica undulata Wall.)(国 NT;絶滅危惧

IA類 山形、ほか)

オオカワジシャ(Veronica

anagallis-aquatica L.)A 0.29 -0.74 23 24

ヨモギ(Artemisia indica Willd. var. maximowiczii (Nakai)

H.Hara)(分布重要種 鹿児島) 外国産ヨモギ(Artemisia indica Willd.) -0.64 -0.34 28 25 在来キク属(Chrysanthemum spp.)(国 NT、ほか) 栽培キク(Chrysanthemum morifolium Ramat.) -0.81 -1.29 8 10 ススキ(Miscanthus sinensis Andersson) 外国産ススキ(M. sinensis) -1.12 -1.41 20 18 チガヤ(Imperata cylindrica (L.) Raeusch.) 外国産チガヤ(I. cylindrica) -1.46 -1.22 8 8

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おむね妥当なものと考えられる。ただし里山の二次草地 についてはアンケートの文章の検討が不十分であったた め、回答者が対象とするハビタットを特定できなかった 可能性がある。  今回の調査で特筆すべき点は、極相林や雑木林・都市 林、海洋島においてタイワンリスやキョン、クマネズミ、 ノヤギなどの外来哺乳類の影響の重要性が認識されはじ めて来たことである。また食虫植物や高山植物などの外 来山野草の意図的植栽が問題になりつつある。  主観によるアンケート調査の限界として、フィールド での経験の有無や被害情報の広報の有無など、回答者の もつ情報によって結果が影響される可能性がある。侵入 初期で分布が狭い外来生物は、影響が大きくても状況を 見た経験のある専門家が少ないため正しく判定できない 可能性がある。逆に教科書に掲載されている例や、学会 などの研究発表で頻繁に取り上げられる場合は重要度が 過大評価される可能性がある。ただし今回のアンケート 調査では 1 対比較を用いることで、最低 5 名の回答があ れば侵入初期など情報が皆に浸透していない場合でも重 要度が高く評価される解析手法を採用したため、このよ うな弊害はかなり軽減されていると考えられる。  今後は、回答が少なかった外来生物が深刻な脅威にな っている状況について現地視察会などを催して専門家ど うしが情報共有する取り組みや、外来種が被害を与えて いる在来ハビタットの同定精度を上げる試み(ススキク ラスとヨモギクラスを区別するなど)が望まれる。

謝 辞

 アンケートにご回答頂いた専門家の方々に感謝した い。この調査は生物多様性条約の下で植物の多様性保全 をあつかった世界植物保全戦略(Global Strategy for Plant Conservation, http://www.cbd.int/gspc/)の日本における 2010年時点での目標達成状況のレビューの一部として、 地球環境基金、日本経団連および HSBC グループの生 物多様性 JAPAN に対する資金援助で行ったものである。

引用文献

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参照

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