慈恵
ICU Journal club
2014.5.13齋藤 慎二郎
Background
N Engl J Med. 2001 Nov;345(19):-‐1368-‐1377
• 単施設RCT、263人
• 従来の治療群 vs. EGDT群
• CVP,MAP,尿量,ScvO2 or SvO2の4つを指標とした目標値 を6時間以内に達成させる。(resuscitaTon bundle)
結果
Background
• EGDTで採用された個々のパラメーターは既にSCCMのガイド
ラインで推奨されているもので目新しいものではない。
(Crit Care Med 1999 ; 27 : 639-‐60)
• Riversらの報告は単施設での報告であり、普遍性に疑問。
• 2004年、DellingerらはCVP, MAP, 尿量, ScvO2, Ht の目標設
定値を推奨度Bと評価。
(Crit Care Med 2004 ; 32 :858-‐73)
• 2007年、SevranskyらはEGDTの文献レビューを行い、モニタリ ングや目標設定値に統一性のないことを報告。Sepsisという 複雑で多様性を持つ病態を1つの設定目標で治療すること の難しさを指摘。 (Crit Care 2007 ; 11 ; R67) 【EGDTに対する評価と批判】
• 2008年、Perel らの指摘 – Riversらの対象患者の特徴 • 初療時のCVP,ScvO2が非常に低値で乳酸値も異常に 高い。 • ER初診時の状態が非常に悪い。 – CVPについて • 8-‐12mmHgの根拠が貧弱(1983年の15例の研究結果) • 前負荷の指標としての信頼性低い • 前負荷のみを水分負荷の指標とすることの危険性 – ScvO2について • ScvO2は組織酸素摂取率(O2ER)が決定因子 • 低O2ERを示すsepsis患者では高ScvO2を示す。 • 正常値が必ずしも組織低酸素を否定する訳ではない。 (Crit Care 2008 ; 12 : 223)
JAMA 2010; 303:739-‐46.
• 多施設無作為化非劣性試験
• 重症敗血症 or 敗血症性ショック患者300人 • Scvo2 EGDT vs. 乳酸EGDT
• 結果:病院死亡率 23% (95% CI, 17%-‐30%) vs. 17% ( 95% CI, 11%-‐24%) Ø 統計学的に有意差なし • Jonesらの研究 組織低灌流の指標としてのScvO2 モニタリングの有用性が疑問視されるようになった。
N Engl J Med. 2014 May;370(18):1683-‐1693
この研究の検討課題
• 重症敗血症および敗血症性ショックの患者に対する、初期 ResuscitaTonの検討
• Central hemodynamic targetsを指標としたEGDTプロトコール
が標準的な治療よりも患者の予後を改善させるか。
• EGDTプロトコールがすべての敗血症患者に適応できるか。
• EGDTプロトコールのすべての要素が必要か。(特にCVP,
Methods
n 多施設
• 31 hospitals in the United States. • 大学病院の救急科 ü 乳酸の測定をする(潜在性ショックのスクリーニング)。 ü ResuscitaTon以外のケアはSSCGのガイドラインに従う。 ü ルーチンのResuscitaTonプロトコールを持たない。 ü ルーチンにScvO2モニタリングをしない。 n 前向き無作為比較試験 n 2008. 3〜 2013. 5
Methods
【患者】
• 18歳以上
• 敗血症の疑われる患者 • SIRS ≥2項目
• fluid challengeでもSBP 90 mmHg> or 血管収縮薬使用 or
乳酸 >4mmol /L
fluid challenge: >20ml/kg 30min 、 2010年以降 > 1000ml以上 30min Riversらの定義
Methods
【除外基準】 • 急性脳血管イベント • 急性冠症候群:急性肺水腫:喘息:重症不整脈 • 活動性の消化管出血 • てんかん • 過量服薬 • 熱傷:外傷:緊急手術 • CD4 <50/mm2 • 事前の意思表示:CVの禁忌:エホバの証人 • 無益な蘇生と判断した場合 • 妊婦:他の研究に参加:他院からの転送患者Methods
【ランダム化割り付け】
• centralized Web-‐based program
• 3つのグループに割り付け
protocol-‐based EGDT 群 vs.
protocol-‐based standard therapy 群 vs.
EGDTのプロトコール(protocol-‐based EGDT)
n Oximetric port付きのCVが必須 n CVPをターゲットに輸液のボーラス 投与を行う。 n MAPをターゲットにVasoacTve agentsを使用。(MAP>90のときは 血管拡張薬を使用。) n ScvO2をターゲットに、輸血(Ht ≥30%) , inotropic agentsを使用。 n 15-‐30分おきに評価を繰り返す。 n ScvO2がターゲットに達しなければ 酸素消費を減らす目的で鎮静、鎮 痛を行う。Standard Therapyのプロトコール
(
protocol-‐based standard therapy)
n CVは静脈確保の目的で使用。既 定の目標を達成できれば20Gでも 可 n 過剰輸液の定義:JVD, rales, pulse oximetry の低下 n Baselineの10%以内の低下、かつ 低灌流の徴候なければ、SBP>100 とみなす。A-‐line は必須ではない。 n 低灌流の定義:MAP<65, lactate >4, mofled skin, 乏尿, 意識の変 容 n 輸血 Hb <7.5
Usual careのプロトコール
• 決まったプロトコールはない。 • 日常業務を行っている医師がすべての治療法を決定。 • 救急医学、あるいは集中治療医学のトレーニングを受けた 医師 。 • Web-‐based examinaTonを合格した医師。 • 施設の研究リーダーは、治療を担当しない。 • 最新のエビデンスに基づいた治療が行われている可能性が 高い。Methods
【1次評価項目】 60日病院死亡率 【2次評価項目】 90日死亡率、90日と1年の積算死亡、血管収縮薬使用期間、 人工呼吸器使用期間、透析使用、入院期間、ICU滞在期間、退 院転帰(disposiTon)、重大合併症イベントMethods
【統計解析】
• 解析方法:intenTon-‐ to-‐treat
• protocol-‐based resuscitaTon (EGDT or standard therapy) vs. Usual care
↓
EGDT vs. standard therapy
• サンプルサイズ:1350人。検出力80%、α値=0.05。 – (推定死亡率20%、減少率6−7%。として算出。始めの推定 死亡率より低いが類似する研究の死亡率に近いという理 由で、中間解析の後、再度計算した。) • 盲検化:患者、医者、データ収集者は盲検化されていない。 – 途中経過は研究期間終了まで明かされない。
Results(患者背景)
Results(患者背景)
Results(1次評価項目と死亡率)
P値はprotocol-‐based vs. usual care
1次評価項目である60日死亡率を含む、死亡率に有意な差は
Results(2次評価項目)
• 新規のRRTを必要とした患者がprotocol-‐based standard therapy
群で有意に多かった。
• 新規の昇圧薬使用、人工呼吸器使用には有意な違いはなかっ た。
Results(2次評価項目)
• Protocol-‐based EGDT群で有意にICU入室が多い。
• ICU滞在期間、入院期間、重大な合併症イベントはグループ間での
Results
【
6,24,48,72hr後の重症度、vital、laboの比較】
Ø 重症度: APACHE Ⅱは3つの群で類似
Ø Vital sign:6時間後の MAP >65 mmHgに到達した患者数はプロト
コール群で多かった。(それぞれ、83.1%, 84.1%, 77.2%、P=0.02) – 体温、呼吸、心拍数に有意差なし。 Ø ABG:6,24hrのpHがプロトコール群で低い。(7.32 vs. 7.34, 7.34 vs. 7.36 p=0.02) – PCO2,PO2 は有意差なし Ø Chemistry:6hrのchlorideがプロトコール群で高い。(P=0.05)
– Na, K, Cr, UN, gluは有意差なし
Ø Hematology:6hrのINRがEGDT群で長い。(2.2 vs. 1.7, 1.6, P=0.02)
– Hgb, WBC, Pltは有意差なし
Results
(
ResuscitaTon and processes)
6hr • CV使用はEGDT群で93%、CV oximeterの使用はEGDT群以外では 少ない。 • 輸液量はStandard群で多い。 • Dobutamine、輸血はEGDT群で多い • ResuscitaTon以外の治療(Tidal, 抗菌薬, ステロイド, APC)は同じ
Results
(
ResuscitaTon and processes)
6-‐72hr, 0-‐72hr 6-‐72hr • 予想体重あたりのTidal volume 以外は有意差なし 0-‐72hr • 輸液、血管収縮薬、Dobutamine、予想体重当たりのTidal volume に有意差あり
Discussion
【Riversらの先行研究との違い】 • 患者背景: この研究の患者の方がBaselineの – 年齢が低い。 – 心臓、肝臓病の既往を持つ患者が少ない。 – 乳酸値が低い – 始めのScvO2が高い(Riversらの研究は初期輸液の前に計測)u Riversらの研究ではEGDT群とusual care群で0-‐72hrの間で終止MAPに有 意差あり。
Ø この10年の間の重症患者の管理の変化(輸血の閾値、肺保護
戦略、血糖管理など)によって、EGDTから受ける恩恵が減少した
• 「CV挿入ができなかった」はEGDT群で30人(6.8%)。 • いずれのプロトコール群でも遵守率は高い。 Ø Riversらの研究では遵守内容の詳細は記載していない。 【プロトコールの遵守率について】 • Riversらの研究では遵守率はほぼパーフェクトであり、遵 守率の差が結果に影響を与えたかもしれない。
Discussion
27Discussion
【3つのグループ間の治療介入の違い】
u EGDT vs. Standard vs. usual care ü 輸液の指標 – CVP vs. SBPと身体所見 vs. 臨床診断 ü 血圧の指標 – MAP vs. SBP vs. おそらくMAP ü 末梢組織循環の指標 – ScvO2 vs. 臨床診断 vs. 臨床診断 ü 輸血の指標 – Ht 30%< vs. Hb7.5≤ vs. 明確な指標はなく臨床判断 その結果、治療内容はどう変化したか?
Discussion
ü 輸液 • 輸液量は始めの6時間では有意にプロトコール群で多かった。そ の後6-‐72時間では各群で有意差がなかった。 Ø CVPやSBPを指標としたプロトコールを使用することで初期輸液量 が増える。 Ø 輸液増加に伴う酸素化の悪化はなさそう。(PaO2に有意差無し)Discussion
ü 血圧(MAP) • 6時間後の MAP >65 mmHgに到達した患者数はプロトコール群で多 かった。(それぞれ、83.1%, 84.1%, 77.2%、P=0.02) • その後72時間までは有意差なし。 • どの群でもMAPはターゲットの65より75 mmHg以上と高めに維持さ れている。 Ø 血圧の指標としたプロトコールでMAPとSBPをターゲットにすると、始 めの6時間のMAPはプロトコールを使わない治療に比べて高くなる。 しかし、その後72時間は同じ。 Ø プロトコールを使用してもしなくても実際のMAPはほぼ76mmHgを超 えるDiscussion
ü 末梢組織循環 ü 輸血
• EGDT群で輸血とドブタミンの量は増える。
• 末梢循環を評価出来るパラメーターは記載無し
• 臓器障害で評価しようとすると、PST(protocol based standard therapy)でRRT使用が多い。循環、呼吸は3群で有意差なし。 Ø ScvO2を使用しても、臓器障害は減らない。
Discussion
3群の治療介入の違い – 初期輸液量の違い – ドブタミン使用量の違い – 輸血量の違い – Vasopressorの使用量の違い 死亡率には大きく寄与しなかった。 • 初期輸液はusual careの量で十分かもしれない。 • ドブタミンの効果は期待できない。 • 輸血もあまり効果は少なさそう。 • 適度にMAPを保つVasopressorの量Discussion
【RRT使用率やICU入室率について】 – Usual care群に比べてRRT施行率がstandard群で約3% (絶対リスク)高い。 Ø Usual careより、輸液量が多く除水が必要となったか。 Ø 輸液量とAKIに関連? Ø 治療者は盲検化されていないので、これらの治療開始判 断に先入観やバイアスが関与した可能性は否定できない。 – EGDT群でICU入室率が5-‐6%(絶対リスク)高い。 Ø CV挿入とScvO2のモニタリングが必要となるため、一般病 棟では管理しにくいためか。Usual careに比べ、Protocol-‐based careではRRTやICUを必要 とする頻度が高くなり、コストがかかる可能性がある。
現在進行中の研究
• Australasian Resuscita.on In Sepsis Evalua.on Randomised Controlled Trial (ARISE)
– 多施設RCT
– EGDT vs. standard care – 1600人
– 終了予定 2015.4月
• ProMISe (Protocolised Management In Sepsis)
– 多施設RCT、emergency departments (EDs) in the UK – EGDT vs. standard care
– 人数不明
目的:これら3つの研究を比較。 方法:CONSORT guideline(非薬剤性治療に関するRCTの 評価方法についてのガイドライン)に従って、3つのRCTの 各項目を検証。 結果:3つの研究は、研究目的、研究デザインの各要素で 共通する部分が多い。将来、すべての研究が完了した時 点で結果を融合し、分析することが有用である。