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香り米品種における玄米と葉身の香り鑑定法の検討

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Academic year: 2021

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(1)

2020 年 4 月 20 日 受理 連絡責任者:猪谷富雄(jz7859@bma.biglobe.ne.jp)

香り米品種における玄米と葉身の香り鑑定法の検討

猪谷富雄

1)2)

・金澤理恵

2)

・繁内康男

2)

・妹尾拓司

1)2)

・山本涼平

1) 1)龍谷大学農学部(〒 520-2194 大津市瀬田大江町横谷 1-5) 2)県立広島大学生命環境学部(〒 727-0023 庄原市七塚町 5562) 要旨:香り米(匂い米)とは,炊飯すると独特の香気を発する米であり,古くから日本や世界各地に分布し,と くに海外では高く評価されている.本研究では,日本および諸外国の香り米 20 品種と普通米 3 品種を栽培し,収 穫後の玄米と新鮮な葉身を用いた香り鑑定法(それぞれ炊飯法と KOH 法)を 2 年間にわたり実施した.炊飯法で は,試験管中で玄米もしくは白米と蒸留水をともに加熱し,放冷後に香りをかぐことで,その特有の香りを判定 できた.また,分げつ期の葉身・葉鞘あるいは出穂期前後の葉身を細断し希アルカリ溶液に浸す KOH 法によって, 香り米と普通米との違いを明確に区別できた.栽培時の施肥量が玄米と葉身の香りの強さに及ぼす影響,また収 穫時期が玄米の香りの強さに及ぼす影響は,ともに 明確ではなかった.香り米品種間では炊飯米の香りと葉身の 香りとには強い相関関係がないものの,葉身 KOH 法はイネ品種の有香と無香の識別に有効であった. キーワード:香り,香り米,官能試験,水酸化カリウム溶液,葉身

緒言

炊飯すると独特の香りを発生する香り米は,日本では 匂 い米 , 芳香米 , 有香米 , 有臭米 , 麝香米 , かば しこ(香子) , 鼠米 ,海外では Aromatic Rice , Scented Rice , Flavor Rice , Smelled Rice , Pecan Rice などと呼ば れ,古い時代から世界中に分布していた(岡崎・近藤 1964,嵐 1975).日本の最古の農書の一つである「清良記」 (江戸時代初期)には 薫早生 , 香餅(こうばし) ,ま た「会津農書」(1684)には 香早稲 , 鼠早稲 の品種名 がある.江戸時代中期の享保・元文期(1735-1738)に幕 府によってまとめられた「諸国産物帳」には,九州から東 北にいたる全国の香り米品種が記載されている(小川・猪 谷 2008,2010).明治時代の北海道稲作黎明期に上白石試 作場へ導入された 六八早稲 と 香早稲 は,分げつは少 ないが,熟期が早く冷涼な不良土壌地帯向きであるとの報 告がある(北海道庁 1899). 香り米の香りは炊飯した場合だけではなく,植物体全体 からも発散し,特に開花中はかなり遠くからでもそれとわ かる品種もあるといわれる.炊飯時の香りは,煎り大豆や ポップコーン様,またはネズミ尿臭と形容され,人によっ て好き嫌いがある(猪谷 1993,2000).インドとパキスタ ンにまたがるパンジャブ地方で生産される香り米品種 Basmati (バスマティ)やタイの Khao Dawk Mali 105 (カ オドマリ 105,いわゆるジャスミン米)はコメの国際市場 で普通米より高い価格で流通しており,アメリカ合衆国や 国際稲研究所(IRRI,フィリピン)でも香り米の新品種が 育成されている(Singh et al. 2000,猪谷 2000).高級香り 米の生産は,カンボジア,ベトナム,ミャンマー,中国へ も拡大している(福井 2005,宮田 2011). 日本では,九州から東北にかけて約 100 品種もの在来の 香り米品種が収集・保存され(宮川 1985),宮城県で み やかおり や はぎのかおり ,高知県で さわかおり ,農 研機構で サリークイーン や プリンセスサリー ,青森 県で 恋ほのか ,新潟県で かほるこ ,そして鳥取県で は プリンセスかおり などの香り米品種が育成されてい る(佐々木 1989,猪谷 2000,三上ら 2007,小林 2009,鳥 取県 2019).高知県は,日本一の香り米生産量を誇り,中 山間の昼夜の気温差の大きい地域で香りの高いものが生産 されている.通常,香り米を普通米に 3 ∼ 10%程度をブ レンドするが,全量で用いるタイプもある.古米に香り米 をブレンドすることで古米臭の抑制や食味改善効果などが 期待できる(猪谷・山崎 1994,深井・石谷 2004). 米の香りは 200 以上の成分によって複合的に構成されて いるが,香り米の有力な香気成分は 2- アセチル -1- ピロリ ン(以下 2AP と略す)である(Buttery et al. 1983,1986). 香り米では,ポリアミン系代謝酵素であるアミノアルデヒ ド脱水素酵素をコードしている OsBADH2 もしくは Os2AP 遺伝子が欠損しているため,中間体の 4- アミノブタナー ルが蓄積し 2AP が産生される(Kovach et al. 2009,吉橋 2011).香り米に含まれる 2AP の濃度は普通米品種の数倍 から数十倍にのぼる.香り米同士であっても品種によって 微妙に香りが異なるが,その原因となる成分については はっきりとは解明されていない.なお,2AP はポップコー ンやニオイタコノキ(パンダン),ダダチャマメの枝豆, 小麦パン,調理した牛肉などにも含まれる天然香料の一種 であり,日本でも食品添加物として認められている(伏見 2006). 香りの発現は,栽培中および収穫後の環境によって影響 される.高知県で行われた調査結果によると,標高が高く 43

Copyright 近畿作物・育種研究会 (The Society of Crop Science and Breeding in Kinki, Japan)

論 文

(2)

昼夜の気温差の大きい地域で栽培すると香りが強くなる, 施肥量を多くすると香りが弱くなる,出穂後 30 日を経過 すると徐々に香りが薄くなる,高温で乾燥させると香りが 失われるなどの特徴が確認されている(岩原 1971,猪谷 1987,2000,中村 1998).また,香り米の 2AP は米粒の外 側に多く分布しているため,精白の歩合が高まるに従い香 り が 弱 く な る こ と は 明 ら か に な っ て い る が( 原 田 ら 1990),前述のような環境の違いによって香りが変化する 機構については未解明の部分が多い(猪谷 1994,2005). 香り米の育種を行う上で,イネの幼苗期に香り米である かどうかを判別することができれば,育種に費やす時間を 短縮し,品種改良を効率よく行うことができる.したがっ て,葉身の香りの強さと玄米や白米の香りの強さの関係性 を調べることが必要である.また,香りの遺伝様式を調べ る際,分離世代では米粒ごとに遺伝子型が異なるので,葉 身などの植物体を用いて個体ごとに調査する必要がある. 香り米の香り鑑定法,とくに葉身 KOH 法については,い くつかの大学や農業試験場での研究例もある(続ら 1991, 松永・永野 1996,中村 1998,Hien et al. 2006a, b).しかし, 葉身における香りの発現と玄米における発現との関連性は まだ充分に解明されているとは言えない.本報告は,香り 米の育種あるいは香りの遺伝の研究において重要な玄米と 葉身の香りに関する情報を得るために,県立広島大学研究 水田で栽培された日本および外国の香り米品種を対象に, 玄米と葉身の香りの強さの変異と両者の関係,またその変 動要因について検討したものである.

材料および方法

イネの栽培法 供試した香り米の 20 品種・系統は,著者らにより 1976 年から 2011 年までに収集されたもので,その原産地や栽 培特性は多様である(猪谷ら 1981,猪谷 2002a, b).香り 米品種および対照として用いた普通米品種(無香品種)を, 県立広島大学生命環境学部附属フィールド科学教育研究セ ンター(庄原市)の研究水田において,条間 30 cm,株間 15 cm,1 株 1 本植,全量基肥(硫安,過リン酸石灰,塩化 カリで N5:P8:K8 g/m2 ),中干せず常時湛水で栽培した. 播種は中苗用育苗箱に,2012 年は 5 月 9 日,2013 年は 5 月 8 日,本田への移植は,2012 年は 6 月 6 日,2013 年は 6 月 5 日に行った.2013 年は多肥区を設け,6 月 25 日に追 肥(緩効性化成肥料セラコート,N:P:K 各 5 g/m2 )を施 用した.両年とも 1 区は 10 株 5 列(2.25 m2 )で反復は設 けなかった.とくに記載のない場合は,葉身はおおむね出 穂期ごろに採取,その直後に,またはビニールに封入して 冷凍保存したものを香りの鑑定に用いた.玄米は,成熟期 に株刈りし,架干で自然乾燥し,ハウスへ搬入後,脱穀, 籾摺したものを研究室内に保管し,香りの鑑定に用いた. 香り鑑定法 <炊飯法> 玄米もしくは白米 1 g と蒸留水 1.4 ml を試験 管に入れてアルミホイルでふたをし,1 時間浸漬させた後, 沸騰水中で 30 分間加熱した.完全に冷却してから,香り の強さを 5 人以上のパネル(評価者)で 0 から 3 の数値で 評価した.対照区として普通米 コシヒカリ と香り米 ヒ エリ を同様に調製し,香り米独特の香りの強さについて コシヒカリ を 0, ヒエリ を 3 の基準として,一度に最 大 14 点を評価した. < KOH 法> 止葉を含む上位 3 葉までの完全展開葉の葉身 もしくは葉鞘や根 1 g をハサミで約 1 mm の幅で切断して ガラスシャーレ(直径 9 cm)に入れ,1.7% KOH を 10 ml 加えて 10 分間ふたをしたまま静置した.発生した香りの 強さを 5 人以上のパネラーで 0 から 3 の数値で評価した. 毎回,対照区として普通米 コシヒカリ と香り米 ヒエリ を同様に調製し,発生した香りについて コシヒカリ を 0, ヒエリ を 3 の基準として,一度に最大 6 点を評価した. <パネルと評価> すべての実験において,香り鑑定のパネ ルは,研究室の学部 3,4 年生と大学院生を中心とした約 20 名の中から 5 ∼ 10 名が担当した.アンケート用紙(第 1 図)で集計した評価の数値は平均値と不偏標準偏差で示し, 続ら(1991)を参照し,目安として,平均値 1 未満を−(無 香),1 以上∼ 2 未満を+(香弱),2 以上∼ 3 を++(香強) と判定した. 実験方法 <実験 1 > 炊飯法による白米と玄米の比較および普通米と 香り米の混米率が香りに及ぼす影響 2013 年度産の普通米 3 品種 コシヒカリ ,ヒノヒカリ , タンチョウモチ と香り米 2 品種 サリークイーン , ヒ エリ ,それぞれの白米と玄米の香りを評価した. また,普通米 中生新千本 の玄米に香り米 ヒエリ の 第 1 図 香りの評価に用いたアンケート用紙



作物研究 65 号(2020)

(3)

玄米の混米率を,0,20,25,33,50,67,75,100% とし, 炊飯米の香りを評価した.精白歩合は,株式会社サタケの キッチン用精米機「マジックミル」を用い,およそ 92% とした.白米の場合も,対照区は コシヒカリ と ヒエリ の玄米とした. <実験 2 >植物体の KOH 法による分げつ期植物体の部位 別評価 2013 年度産の普通米 3 品種 コシヒカリ ,ヒノヒカリ , 中生新千本 と香り米 3 品種 サリークイーン ,十和錦 , ヒエリ について,移植後 2 週間の分げつ期の株を丁寧 に掘り取り,その葉身・葉鞘・根の香りの強さを KOH 法 を用いて評価した.葉鞘,根の場合も,対照区は コシヒ カリ と ヒエリ の葉身とした. <実験 3 >玄米と葉身の香りの強さに対する施肥条件の影響 2013 年度産の異なる施肥条件,すなわち標肥区(N5: P8:K8 g/m2 )と多肥区(N10:P13:K13 g/m2 )で栽培し た普通米 3 品種 コシヒカリ ,中生新千本 ,ヒノヒカリ と香り米 9 品種,日本産 ジャコウイネ , 麝香糯 , 十 和 錦 , ヒ エ リ , サ リ ー ク イ ー ン , 外 国 産 Della ,

Surjamukhi , KU-70-1 , Basmati 370 の出穂期前後の葉身 の香りの強さを KOH 法,成熟後の玄米の香りの強さを炊 飯法によって調べた. <実験 4 >出穂後の玄米の香りの強さの推移 登熟に伴う玄米の香りの強さの推移を明らかにするため, 実験 3 で供試した 2013 年度産の普通米 3 品種と香り米 9 品種について,それぞれの出穂期から 30,40,50 日後に収 穫を行い,玄米の香りの強さを炊飯法によって調べた. <実験 5 >玄米と葉身の香りの強さの関係 2012 年度産および 2013 年度産の普通米 3 品種と香り米 20 品種について,玄米の香りの強さは炊飯法を用いて, 出穂期前後の葉身の香りの強さは KOH 法を用いて調べた. 実験 3 または 4 で供試した品種に加え,香り米として日本 産 紅香 , 越佳香 , かほるこ , 万石ウルチ , 万石 モチ ,外国産 香谷 1 号 , 紫麝香 ,Carolina ,Karalath , 南香糯 , 長香穀 の 11 品種を追加した.

結果および考察

<実験 1 >炊飯法による白米と玄米の比較および普通米と 香り米の混米率が香りに及ぼす影響 炊飯法による白米と玄米とで,香り米 2 品種 サリーク イーン と ヒエリ のスコアは,いずれも普通米 3 品種 の平均値と比べて有意な差がみられ,このことから香りの 強さで明確に区別が可能であった(第 1 表).玄米の場合は, 白米よりもスコアの差が小さくなったが,これは独特の糠 臭が関係している可能性があり,それによって普通米の値 が高くなったからであろう. パネルによる評価の内容を検討するため,普通米に香り 米を 7 段階の混米率で混合し,香りの強さを調べた(第 2 表, 第 2 図).結果として,香り米の混米率が上がると香りが 強くなる傾向が見られ,ヒエリの混米率と香りの強さの関 係はほぼ直線的で両者には強い相関が確認された(r= 0.8797** )(** :相関係数が 1% レベルで有意).しかし,パ ネルごとにみると,混米率を上げても香りの捉え方は多様 で,パネル a,d のように評価の絶対値こそ違うものの, 混米率の上昇に応じて香りを強く感じたパネルもいれば, e,f,g のような混米率に反応しないパネルもいた.ヒエ リ 0%の混米率で香りの強さの平均値は期待値の 0 でなく 0.25 であり,ヒエリ 100% の炊飯米も香りの強さの平均値 は期待値 3 よりも低い 1.88 であった. 普通米にも香り米の数%程度の 2AP が含まれており (Buttery et al. 1986,原田ら 1990),これが混米率の低い試 験区でもやや高い値をとった要因と考えられる.なお,本 研究では全パネルの評価点を用いて平均値と標準偏差で香 りの強さを評価することとした. <実験 2 >植物体の KOH 法による分げつ期植物体の部位 別評価 部位別の香りの強さは,葉身と葉鞘では香り米 3 品種が ➨㻝⾲䚷⅕㣤ἲ䛻䜘䜛ⓑ⡿䛸⋞⡿䛾㤶䜚䛾ᙉ䛥 ᖹᆒ್ 㻿㻰 ุᐃ ᖹᆒ್ 㻿㻰 ุᐃ 䝁䝅䝠䜹䝸 㻜㻚㻜㻜 㻜㻚㻜㻜 䠉 㻜㻚㻝㻥 㻜㻚㻡㻞 䠉 䝠䝜䝠䜹䝸 㻜㻚㻝㻜 㻜㻚㻟㻞 䠉 㻜㻚㻝㻣 㻜㻚㻟㻤 䠉 䝍䞁䝏䝵䜴䝰䝏 㻜㻚㻜㻜 㻜㻚㻜㻜 䠉 㻜㻚㻝㻟 㻜㻚㻠㻢 䠉 ᖹᆒ್ 㻜㻚㻜㻟 㻜㻚㻝㻢 䝃䝸䞊䜽䜲䞊䞁 㻝㻚㻢㻜 㻝㻚㻝㻣 䠇 㻝㻚㻢㻟 㻜㻚㻣㻥 䠇 䝠䜶䝸 㻝㻚㻤㻜 㻝㻚㻠㻜 䠇 㻝㻚㻡㻤 㻝㻚㻝㻟 䠇 ᖹᆒ್ 㻝㻚㻣㻜 䠆 㻝㻚㻢㻝 䠆 ရ✀ྡ ⓑ⡿ ⋞⡿ 㤶䜚 ⡿ရ ✀ ᬑ㏻ ⡿ရ ✀ ὀ䠖䇺䝠䜶䝸䇻䛸䇺䝁䝅䝠䜹䝸䇻䛾⋞⡿䜢ᑐ↷༊䛸䛧䛶౑⏝䛧䠈㻞㻜㻝㻠ᖺ㻞᭶䛻㻤ྡ䛾䝟䝛 䝹䛷ᐇ᪋䛧䛯䠊㻿㻰㻦㻌ᶆ‽೫ᕪ䠊䠆㻦㻌ᬑ㏻⡿䛾ᖹᆒ್䛸ẚ㍑䛧䛶㻡㻑䝺䝧䝹䛷᭷ពᕪ䛒 䜚䠊ุᐃ㻌䠉㻌㻔↓㤶㻕㻌㻦㻌ᖹᆒ್㻝ᮍ‶䠈䠇䠄㤶ᙅ㻕㻦㻌㻝௨ୖ䡚㻞ᮍ‶䠈䠇䠇㻌㻔㤶ᙉ㻕㻌㻦㻌㻞௨ ୖ䡚㻟䠊 ➨ ⾲ ࠉ 㤶 ࡾ ⡿ ࡢ ΰ ⡿ ⋡ ࡜ 㤶 ࡾ ࡢ ᙉ ࡉ ࣃ ࢿ ࣝ D 㹠 㹡 㹢 H I J K ᖹ ᆒ ್ 6' ุ ᐃ 6(            㸫             㸩             㸩             㸫             㸩             㸩             㸩 㸩             㸩  ࣃ ࢿ ࣝ ᖹ ᆒ ್          ΰ ⡿ ⋡ 㸦 㸣 㸧 ὀ 㸸 ᖺ ᭶ ࡟ 㤶 ࡾ ⡿ ͂ ࣄ ࢚ ࣜ ̓ ࢆ ᬑ ㏻ ⡿ ͂ ୰ ⏕ ᪂ ༓ ᮏ ̓ ࡟ ΰ ⡿ ࡋ 㸪 ྡ ࡢ ࣃ ࢿ ࣝ ࡛ ᐇ ᪋ ࡋ ࡓ 㸬 6' ᶆ ‽ ೫ ᕪ 㸪 6(ᶆ ‽ ㄗ ᕪ 㸬 ุ ᐃ 㸫  ↓ 㤶 ᖹ ᆒ ್ ᮍ ‶ 㸪 㸩 㸦 㤶 ᙅ ௨ ୖ 㹼 ᮍ ‶ 㸪 㸩 㸩  㤶 ᙉ ௨ ୖ 㹼 㸬 第 1 表 炊飯法による白米と玄米の香りの強さ 注: ヒエリ と コシヒカリ の玄米を対照区として使用し,2014 年 2 月に 8 名 のパネルで実施した.SD:標準偏差.*:普通米の平均値と比較して 5% レベルで 有意差あり.判定 −(無香):平均値 1 未満,+(香弱):1 以上∼ 2 未満,++(香 強):2 以上∼ 3. 45

(4)

普通米品種のいずれよりも高かった(第 3 表).根では香 りが弱く,両品種群とも−(無香)の判定となった.例外 として,中生新千本は葉鞘で平均値が 1.06 で+(香弱) の判定となった. 品種ごとの平均値を反復とみなして,香り米と普通米と を比較すると,葉身と葉鞘において有意水準 5%で有意な 差があり,根では有意な差がなかった.したがって,香り 成分は葉すなわち葉身および葉鞘において多く作られると 考えられる.この結果は,香り米の苗の地上部から 2AP が検出され,根からは検出されなかったという吉橋(2011) の報告と一致した.このことから,KOH 法を地上部に適 用することによって,幼苗時に香り米を判別できる可能性 が示された.普通米品種と香り米品種を判別する際には, 葉鞘よりも試料として多量に採取可能で評価も安定してい る葉身を使用することが適していると考えられる. <実験 3 >玄米と葉身の香りの強さに対する施肥条件の影響 異なる施肥条件で栽培したイネの玄米の香りの強さは, 普通米と香り米のいずれも標肥区と多肥区とで明確な違い は認められなかった(第 3 図).一方で,葉身の香りの強 さも標肥区と多肥区で明確な違いはなく,また香りの低 かった 十和錦 を除き,炊飯米ほど明確ではないが,供 試した普通米品種と香り米品種とで香りの強さが異なった (第 4 図).香り米は施肥量を多くすると香りが弱くなると い う 報 告 が あ る が( 岩 原 1971, 猪 谷 1987,2000, 中 村 1998),本研究では香り米品種に共通する施肥量の影響は 見られず,品種ごとの平均値を反復とみなして標肥区と多 ➨㻝⾲䚷⅕㣤ἲ䛻䜘䜛ⓑ⡿䛸⋞⡿䛾㤶䜚䛾ᙉ䛥 ᖹᆒ್ 㻿㻰 ุᐃ ᖹᆒ್ 㻿㻰 ุᐃ 䝁䝅䝠䜹䝸 㻜㻚㻜㻜 㻜㻚㻜㻜 䠉 㻜㻚㻝㻥 㻜㻚㻡㻞 䠉 䝠䝜䝠䜹䝸 㻜㻚㻝㻜 㻜㻚㻟㻞 䠉 㻜㻚㻝㻣 㻜㻚㻟㻤 䠉 䝍䞁䝏䝵䜴䝰䝏 㻜㻚㻜㻜 㻜㻚㻜㻜 䠉 㻜㻚㻝㻟 㻜㻚㻠㻢 䠉 ᖹᆒ್ 㻜㻚㻜㻟 㻜㻚㻝㻢 䝃䝸䞊䜽䜲䞊䞁 㻝㻚㻢㻜 㻝㻚㻝㻣 䠇 㻝㻚㻢㻟 㻜㻚㻣㻥 䠇 䝠䜶䝸 㻝㻚㻤㻜 㻝㻚㻠㻜 䠇 㻝㻚㻡㻤 㻝㻚㻝㻟 䠇 ᖹᆒ್ 㻝㻚㻣㻜 䠆 㻝㻚㻢㻝 䠆 ရ✀ྡ ⓑ⡿ ⋞⡿ 㤶䜚 ⡿ရ ✀ ᬑ㏻ ⡿ရ ✀ ὀ䠖䇺䝠䜶䝸䇻䛸䇺䝁䝅䝠䜹䝸䇻䛾⋞⡿䜢ᑐ↷༊䛸䛧䛶౑⏝䛧䠈㻞㻜㻝㻠ᖺ㻞᭶䛻㻤ྡ䛾䝟䝛 䝹䛷ᐇ᪋䛧䛯䠊㻿㻰㻦㻌ᶆ‽೫ᕪ䠊䠆㻦㻌ᬑ㏻⡿䛾ᖹᆒ್䛸ẚ㍑䛧䛶㻡㻑䝺䝧䝹䛷᭷ពᕪ䛒 䜚䠊ุᐃ㻌䠉㻌㻔↓㤶㻕㻌㻦㻌ᖹᆒ್㻝ᮍ‶䠈䠇䠄㤶ᙅ㻕㻦㻌㻝௨ୖ䡚㻞ᮍ‶䠈䠇䠇㻌㻔㤶ᙉ㻕㻌㻦㻌㻞௨ ୖ䡚㻟䠊 ➨ ⾲ ࠉ 㤶 ࡾ ⡿ ࡢ ΰ ⡿ ⋡ ࡜ 㤶 ࡾ ࡢ ᙉ ࡉ ࣃ ࢿ ࣝ D 㹠 㹡 㹢 H I J K ᖹ ᆒ ್ 6' ุ ᐃ 6(            㸫             㸩             㸩             㸫             㸩             㸩             㸩 㸩             㸩  ࣃ ࢿ ࣝ ᖹ ᆒ ್          ΰ ⡿ ⋡ 㸦 㸣 㸧 ὀ 㸸 ᖺ ᭶ ࡟ 㤶 ࡾ ⡿ ͂ ࣄ ࢚ ࣜ ̓ ࢆ ᬑ ㏻ ⡿ ͂ ୰ ⏕ ᪂ ༓ ᮏ ̓ ࡟ ΰ ⡿ ࡋ 㸪 ྡ ࡢ ࣃ ࢿ ࣝ ࡛ ᐇ ᪋ ࡋ ࡓ 㸬 6' ᶆ ‽ ೫ ᕪ 㸪 6(ᶆ ‽ ㄗ ᕪ 㸬 ุ ᐃ 㸫  ↓ 㤶 ᖹ ᆒ ್ ᮍ ‶ 㸪 㸩 㸦 㤶 ᙅ ௨ ୖ 㹼 ᮍ ‶ 㸪 㸩 㸩  㤶 ᙉ ௨ ୖ 㹼 㸬 注: ヒエリ と コシヒカリ の玄米を対照区として使用し,2014 年 2 月に 8 名のパネルで実施した.SD:標準偏差. 判定 −(無香):平均値 1 未満,+(香弱):1 以上∼ 2 未満,++(香強):2 以上∼ 3. 第 2 表 香り米の混米率と香りの強さ 第 2 図 香り米の混米率と香りの強さの関係 注:普通米 中生新千本 に香り米 ヒエリ を 7 段階の割合で混米して炊飯 試験をおこなった.エラーバーは標準誤差.相関係数の有意性 **:1% レ ベルで有意. 作物研究 65 号(2020)

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肥区を比較すると,有意な差は認められなかった. <実験 4 >出穂後の玄米の香りの強さの推移 出穂 30,40,50 日後のいずれの時期でも普通米品種と 香り米品種の香りの強さは大きく異なった(第 4 表).香 り米品種全体で,30 日,40 日,50 日の香りの強さの間に は多重比較検定で有意な差異は認められなかった.中村 (1998)や Itani et al. (2004)は,出穂 30 日後から香りが 低下すると報告しているが,本研究結果とは矛盾した. 各品種の出穂期は, ジャコウイネ の 7 月 28 日から Basmati 370 の 9 月 15 日まで最大 49 日間の違いがあり(第 5 表),出穂期から成熟期までの登熟期間も早生種は晩生 種より短く,またジャポニカ型では 40 ∼ 50 日,インディ カ型の Della や Surjamukhi は 35 ∼ 40 日程度の短期間で あり,品種により玄米の発達程度が異なっていると推測さ れる.玄米の香りの強さには,登熟期間中の気象条件や収 穫後の乾燥・調製・保管条件も関与すると思われるが,本 研究ではそれらの影響は判断できず,今後の課題である. <実験 5 >玄米と葉身の香りの強さの関係 玄米については 2012 年産,2013 年産の 2 カ年,葉身に ついては 2013 年に調査したところ,普通米 3 品種はいず れも香りが低かった(第 5 表). 香谷 1 号 と 紫麝香 は 品種名に香りの文字を含むことから香り米品種として供試 したが,葉身・玄米ともに香りは低く,無香品種すなわち 普通米と判断された. 2 年間の玄米の香りの強さの相関は,データのそろって いる 21 品種間で,強い正の相関係数(r= 0.7784** )を示し た(第 5 図).しかし, 香谷 1 号 と 紫麝香 および普通 米品種を除いた有香 16 品種間では相関関係はみられず(r= 0.2774ns )(ns :相関係数が有意でない),栽培年次によって 香りの強さは異なることが大きく影響した. 2013 年に供試した 23 品種での玄米の香りの強さと葉身 の香りの強さの関係を検討し(第 6 図),両者には強い正 の相関(r= 0.6453** )が見られた. しかし,香谷 1 号 と 紫 麝香 および普通米品種を除いた 18 の有香品種間では, 玄米と葉身の香りの強さにまったく相関がみられなかった (r= 0.0017ns ). 万石モチ と 万石ウルチ , Karalath は, 2 年間とも玄米は強い香りを持つものの,葉身の香りの強 さは 0.75 ∼ 0.86 であった(第 5 表).普通米および無香の 品種では,葉身の香りは 0.3 ∼ 0.67 であり,+(香弱)の 基準を 0.7 以上とすれば,玄米の香りの判定と一致する. 香りは量的形質であり,極めて弱い香りを持つ香り米品種 の存在も考えられるので,この点は課題として残る.本研 究結果から,少なくとも生葉に香りがあるものは玄米にも 香りがあることが言え,葉身の香りの強さの鑑定は育種に 充分に利用できると考えられる.

総合考察

インドでは,約 200 の香り米品種が各地で栽培されてい る.これら品種は,その香りの強さによって香り強,中, 弱に分類される(Tripathi and Rao 1979).香り米は普通米 よりも高価であり,混ぜものが売られることがある.その



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➨ ⾲ ࠉ 㤶 ࡾ ⡿ ရ ✀ ࡜ ᬑ ㏻ ⡿ ရ ✀ ࡟ ࠾ ࡅ ࡿ ⋞ ⡿ ࡜ ⴥ ㌟ ࡢ 㤶 ࡾ ࡢ ᙉ ࡉ ⋞ ⡿  ⏕ ⴥ  ⋞ ⡿    ᭶᭶ ᪥ ᖹ ᆒ ್ 6' ุ ᐃ ᖹ ᆒ ್ 6' ุ ᐃ ᖹ ᆒ ್ 6' ุ ᐃ ࠐ Q ࢥ ࢩ ࣄ ࢝ ࣜ     㸫   㸫   㸫 ࠐ Q ୰ ⏕ ᪂ ༓ ᮏ     㸫   㸫   㸫 ࠐ Q ࣄ ࣀ ࣄ ࢝ ࣜ     㸫   㸫   㸫 Q 㤶 ㇂ ྕ 㸦 ୰ ᅜ 㸧     㸫   㸫   㸫 J ⣸ 㯊 㤶 㸦 ୰ ᅜ 㸧     㸫   㸫   㸫 ࠐ J ࢪ ࣕ ࢥ ࢘ ࢖ ࢿ 㸦 ᒣ ᙧ ┴ 㸧     㸩   㸩 J ⣚ 㤶 㸦 ᪂ ₲ ┴ 㸧     㸩   㸩   㸩 Q ㉺ ె 㤶 㸦 ᪂ ₲ ┴ 㸧     㸩 㸩   㸩   㸩 㸩 ࠐ J 㯊 㤶 ⣍ 㸦 ᮾ ໭ 㸧     㸩 㸩   㸩 㸩   㸩 Q ࠿ ࡯ ࡿ ࡇ 㸦 ᪂ ₲ ┴ 㸧     㸩   㸩 㸩   㸩 㸩 ࠐ Q ༑ ࿴ 㘊 㸦 㧗 ▱ ┴ 㸧     㸩   㸩 ࠐ Q ࣄ ࢚ ࣜ 㸦 㧗 ▱ ┴ 㸧     㸩 㸩   㸩 㸩   㸩 ࠐ Q ࢧ ࣜ ࣮ ࢡ ࢖ ࣮ ࣥ     㸩 㸩   㸩 㸩   㸩 Q ୓ ▼ ࢘ ࣝ ࢳ 㸦 ⇃ ᮏ ┴ 㸧     㸩 㸩   㸫   㸩 㸩 J ୓ ▼ ࣔ ࢳ 㸦 ⇃ ᮏ ┴ 㸧     㸩 㸩   㸫   㸩 㸩 Q &DUROLQD㸦 86$㸧     㸩 㸩   㸩 㸩   㸩 Q .DUDODWK㸦 ࢖ ࣥ ࢻ 㸧     㸩 㸩   㸫   㸩 ࠐ Q 'HOOD㸦 86$㸧     㸩 㸩   㸩   㸩 㸩 ࠐ Q 6XUMDPXNKL㸦 ࢖ ࣥ ࢻ 㸧     㸩   㸩   㸩 J ༡ 㤶 ⣍ 㸦 ୰ ᅜ 㸧     㸩 㸩   㸩   㸩 Q 㛗 㤶 ✐ 㸦 ୰ ᅜ 㸧     㸩 㸩   㸩   㸩 ࠐ J .8㸦 ࢱ ࢖ 㸧     㸩 㸩   㸩   㸩 㸩 ࠐ Q %DVPDWL㸦 ࢖ ࣥ ࢻ ࣭ ࣃ ࢟ ࢫ ࢱ     㸩 㸩   㸩 㸩   㸩 ရ ✀ ྡ 㸦 ཎ ⏘ ᆅ 㸧 ฟ ✑ ᮇ ᬑ ㏻ ⡿ ရ ✀ 㤶 ࡾ ⡿ ရ ✀ ὀ 㸸 ฟ ✑ ᮇ ࡣ ᖺ 㸬 ⋞ ⡿  ࡣ ᖺ ᭶ 㸪 ⴥ ㌟  ࡣ ᖺ 㹼 ᭶ 㸪 ⋞ ⡿  ࡣ ᖺ 㹼 ᭶ ࡟ ᐇ ᪋ ࡋ ࡓ 㸬  ရ ✀ ྡ ࡢ ๓ ࡟ ࠐ ࢆ ௜ ࡋ ࡓ ရ ✀ ࡢ ᖺ ࡢ ᩘ ್ ࡣ ࠊ ᐇ 㦂 ࡢ ᶆ ⫧ ༊ ࡢ ࡶ ࡢ ࡜ ྠ ࡌ ࡛ ࠶ ࡿ 㸬  Q࢘ ࣝ ࢳ 㸪 Jࣔ ࢳ 㸬 6'ᶆ ‽ ೫ ᕪ 㸬 ุ ᐃ 㸫  ↓ 㤶 ᖹ ᆒ ್ ᮍ ‶ 㸪 㸩 㸦 㤶 ᙅ ௨ ୖ 㹼 ᮍ ‶ 㸪 㸩 㸩  㤶 ᙉ ௨ ୖ 㹼 㸬 ྛ ရ ✀ ࡢ ฟ ✑ ᮇ ࡜ ࣔ ࢳ ࣭ ࢘ ࣝ ࢳ ᛶ ࡣ ➨ ⾲ ࡟ グ ㍕ ࡋ ࡓ 㸬 第 5 表 香り米品種と普通米品種における玄米と葉身の香りの強さ 第 5 図 2 年間の玄米の香りの強さの関係 注:無香品種は普通米と香り米の無香 2 品種を示す.相関係数の有意性 **:1% レベルで 有意.ns:有意差なし. 注:出穂期は 2013 年.玄米(2013)は 2014 年 1 月,葉身(2013)は 2013 年 7 ∼ 8 月,玄米(2012)は 2013 年 1 ∼ 2 月に実施した.(1)品種名の前に〇を付した 12 品種の 2013 年の数値は,実験 3 の標肥区のものと同じである.(2)n:ウルチ, g:モチ.SD:標準偏差.判定 −(無香):平均値 1 未満,+(香弱):1 以上∼ 2 未満,++(香強):2 以上∼ 3.各品種の 出穂期とモチ・ウルチ性は第 5 表に記載した. 49

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ため関係者は米を 1 粒ずつ噛んで判定していたこともある が,あいまいで不正確になりがちであった.インド農業研 究所(ニューデリー)遺伝部門の Sood and Siddiq (1978)は, 希水酸化カリウム水溶液(1.7% KOH)に米粒あるいは葉 を浸すことで,より確実に多量のサンプルの香りの有無を 判定できることを報告した.葉緑素臭のある葉身でもアル カリ処理によって明瞭に区別できるとしている. アメリカ合衆国では,イネの育種にあたって「長粒種」 は米質が硬く粘りが少ないタイプ,「中粒種」あるいは「短 粒種」は米質が柔らかく粘りが強いタイプのように粒型と 米質を結びつけているが,米の硬軟を判定するために,白 米を希アルカリ溶液に 1 晩浸漬して,その溶解程度をアル カリ崩壊性として評価する方法が普及している(猪谷 1989,2002 b).アルカリ崩壊性の検定の際に発生する香 りによって香り米であるかどうかの判別もできる. 香り米の香りの鑑定は,GC-MS(ガスクロマトグラフ 質量分析器)で 2AP を定量する方法もあるが(吉橋 2002, 2011,Itani et al. 2004,Hien et al. 2006a, b),育種現場では 人の嗅覚による官能試験に頼らざるをえない.官能試験は, 上記のように,鑑定に直接供する玄米(または白米)を用 いる方法と,葉身を用いる方法の二つに大別できる.両者 とも,そのまま嗅ぐ,水を加えてあるいはそのままで加熱 する,または希アルカリ溶液に浸す方法が行われている. 嗅覚の優れたパネルなら葉身や玄米を摩擦して嗅ぐだけで 識別できると聞くが,多くの材料を扱う場合は嗅覚の順応 や疲れなどの影響が懸念される. 玄米を用いる方法は炊飯時の香りをより直接に鑑定でき る利点を持つが,玄米の香りが胚乳あるいは胚の遺伝子型 だけでなく母体の遺伝子型によっても支配される可能性が あるため,遺伝的に分離した集団にこの方法を適用すると, 結果の解釈が煩雑になる.すなわち,香り米と普通米を交 雑した F1植物体の穂にできた種子は,胚乳は母親と父親 (花粉)の遺伝子を受け継ぐが,玄米の果皮・種皮の部分 はそれぞれ子房壁・珠皮から発達し,母親の組織である. また,香気成分が植物体内の特定の部位で生産されて移動 するのか,しないのか不明な点が多い.少なくとも,普通 米に香り米を交配した F1植物体の茎葉が無香で,その米 が無香と有香とに分離しているとの報告があり(Berner and Hoff 1986),茎葉と子実とで香りの生成は独立と考え られる.また,子実内では胚乳の内部ほど 2AP 含量は低 くなり(原田ら 1990),このことは内部ほどデンプンが多 く,タンパク質,脂質,ミネラル類が少ないことと一致し ている(Itani et al. 2002). 一方,葉身を用いる方法では,葉身から発する香りがそ の母体の遺伝子型のみに支配されるため,実験結果の解釈 は容易である.香り米の香りの遺伝については,香りが 1 対の優性遺伝子,1 対の劣性遺伝子,あるいは 2 あるいは 3, 4 対の補足遺伝子に支配されている場合などさまざまな報 告があり,様々な解釈がなされている(続 1990,Tsuzuki and Shimokawa 1990,猪谷 1994,Pinson 1994,Kato and Itani 1996).米の香りは胚乳形質であって,キセニア現象 として発現する可能性もある.したがって,個々の論文の 結論に関しては,供試材料と香り鑑定法の両面から十分に 検討せねばならない. 近藤(1964,1973)は,高知県内および全国各地から香 り米品種を収集し,香り(におい)の強弱や良否により香 りの品種を区別した.茎葉,玄米,糠,開花時の花のいず れかが香り,炊飯米は普通米と変わらないこともあるとし 第 6 図 玄米と葉身の香りの強さの関係(2013) 注:無香品種は普通米と香り米の無香 2 品種を示す.相関係数の有意性 **:1% レベルで 有意.ns:有意差なし. 作物研究 65 号(2020)

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ている.本研究では,香りの強弱は確認されたが,良否に ついては判定しなかった.香り米の香りの強さは品種間で 明瞭に異なる(続ら 1977,近藤 1964,1973)が,質的に異 なるかどうかは異論がある.現在の日本では香り米は通常, 普通米に 3 ∼ 10% を混米(ブレンド)して供されるので, 適度に低い強さの香りが高評価をうける可能性もある. 一方,香り米として入手した品種・系統の中には,明ら かな無香品種があった.嵐(1975)は,香り米品種の中に は本来の香り米のほか,かつての普通米の中にいくらかの 香り米が混ざり,さらにそれぞれが増殖して,分離していっ たこともありうるとしている.著者らが収集し栽培してき た香り米品種・系統に関しても,コンタミ状態のものがあ り,それが結果に反映している可能性もある.香りが弱く ブレンドせずに全量で炊飯しても良い香りとされる香り米 在来品種は,香り以外の農業特性は差がなく,香り遺伝子 を含まない系統が混じっている可能性も否定できない. 香り米の香りは,遺伝(品種)と環境の相互作用で決ま り,複雑である.栽培時の塩ストレスや乾燥ストレス,ま た収穫後の乾燥調製条件や貯蔵条件も香りに影響を与える (Itani et al. 2004,猪谷 2005,福田ら 2007,吉橋 2011).一 方,2AP の閾値は低く,濃度が ppb レベルでも人間に感知 され,香り全体に影響を与えるが,分解しやすい香気成分 である.室内で 1 年間保管した古米はほとんど 2AP を失っ ている. アンケートの自由記述の中に,葉身の香りは普通米品種 にもある,香り米品種同士でも微妙に質的な違いがある, 同じ香り米品種でも採取した日によって違いがある,との 指摘があった.本研究の予備試験で,葉身の細断幅の影響, KOH 添加後の時間の影響,冷蔵保存の影響などを検討した が,葉身の 0.5 mm 幅での細断,KOH 添加後の 20 分以上 の経過では,普通米品種と香り米品種の判別が難しくなっ た.冷蔵保存の影響は大きくないと判断された.また,玄 米の香りについても,どんな品種にも独特の香りがあるの で評価が難しいとの指摘もあった.本研究はボランティア 学生をパネルとして,その評価の平均値から香りの強弱を 判定したものであり,今後,パネルの構成,ブラインドテ スト,材料の採取・保管法など手順をマニュアル化するな どの工夫によって香りの鑑定法を改善できると思われる. 本研究の実験 1 ∼ 5 から,香りは質的形質でなく量的形 質であり,有香・無香の鑑定が難しい場合もあるものの, 少なくとも生葉に香りがあるものは玄米にも香りがあるこ とが言え,葉身の香りの強さの KOH による鑑定は育種に 充分に利用できると結論できた.コメについては,通常の 架干,乾燥,調製,保管を行った生産物の香りを調べたも ので,複合的な要因が関わっている可能性がある.また, 供試した香り米品種には,国内外の在来種と改良種が含ま れ,その遺伝的背景も栽培特性も多様である.著者らが収 集した香り米の中には,生態型ではインディカ,熱帯ジャ ポニカ,温帯ジャポニカもあれば,玄米の色では赤米,紫 黒米,緑米もある.Hien らは,玄米と葉身の官能試験で 香り米と確認したアジアの香り米品種の中に,玄米が 2AP を含まない品種を見いだし,2AP とは異なる香気成分を持 つ香り米の存在を指摘している(Hien et al. 2006a, b).眠っ たままの遺伝資源を新しい視点で見直し,より多くの消費 者が「芳香米」と称することのできる,より多様な香りを 有するイネ品種の開発も望まれる. 日本は コシヒカリ 中心で,特殊なイネに関しては研究・ 育種とも低調であるが,香り米は国際市場では「高品質米」 の代名詞であり,日本でも最新の機器を用いてコメの香気 成分の品種間差異や栽培環境,ポストハーベストの影響を 探求すべきであろう.香り米における遺伝や気象条件,栽 培条件,収穫後の条件が香りに及ぼす影響に関する研究は, 香り米の特産化による地域振興のみならず,広くハーブや 果実,野菜など食品の香気の研究にも寄与するものと考え られる.

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(11)

Examination of the sensory tests for judging the aroma of matured grains and

fresh leaves of aromatic rice varieties

Tomio Itani1),2), Rie Kanazawa2), Yasuo Shigeuchi2), Takuji Seo1),2), Ryohei Yamamoto1),2)

1)Faculty of Agriculture, Ryukoku University(Seta Oe-cho Yokotani 1-5, Ohtsu 520-2194, Japan)

2)Faculty of Life and Environmental Sciences, Prefectural University of Hiroshima(5562 Nanatsuka, Shobara, Hiroshima

727-0023, Japan)

Summary:Aromatic rice, a group of rice that emits a special aroma when cooked, has been cultivated in many regions

throughout Japan and in many Asian countries for many years. We examined the sensory tests for judging the aroma of matured grains and fresh leaves(lamina)of aromatic rice varieties. In the boiled grain method, the grains are boiled with water in a test tube. In the KOH leaf method, the leaves are sniff ed for aroma 10 minutes after adding 10 ml of 1.7% KOH solution to 1 g of fi ne pieces of green leaf sample in a glass petri-dish. The 20 aromatic rice varieties showed a wide range of aroma strength in both boiled grain and KOH leaf method. The grain and leaf aroma strength were hardly aff ected by the fertilizer level and the grain aroma strength showed no clear tendency with the delay in the harvest time after heading among 9 aromatic rice varieties. The relationship between grain aroma and leaf aroma among 18 aromatic rice varieties was low. In conclusion, the KOH leaf method proved to be a rapid and accurate method to discriminate aromatic rice from non-aromatic rice.

Key Words:Aroma Strength, Aromatic Rice, Fresh Leaves, Panel Test, Potassium Hydroxide

Journal of Crop Research 65: 43-53 (2020) Correspondence: Tomio Itani(jz7859@bma.biglobe.ne.jp)

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