術直後からのリハビリテーションは成人脊柱変形手術成績をより改善する
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(2) 210. 理学療法学 第 46 巻第 3 号. 表1 I. II. III. IV. V. 下肢神経障害. +. +. +. +. +. 腰痛. −. +. +. +. +. 不安定性. −. +. +. +. +. SVA ≧ 50mm. −. −. +. +. +. 腰椎側弯≧ 30 °. −. −. +. ±. ±. 腰椎後弯 smooth. −. −. +. +. −. 腰椎後弯 sharp. −. −. −. −. +. Level I: 除圧 Level II: 除圧+局所固定 Level III: Ponte 骨切り + Rod rotation または LLIF & PCO Level IV:PSO Level V: VCR. として Cobb10°以上の側弯を呈するものを腰椎変性側. 関節の変性をきたしており,すべりや黄色靭帯の肥厚に. 弯 症(degenerative lumbar scoliosis: 以 下,DLS) と. より,脊柱管狭窄症等の神経症状合併が多いことによ. 定義し,X 線写真上の病態をもとに TypeI:L4/5 の椎. り,矯正に際し除圧と椎間操作を必要とする②矢状面バ. 間板楔状化が主体の上位腰椎の代償性側弯,TypeII:. ランスの異常:特発性側弯症では変形自体が大きくて. 中位腰椎の多椎間変性に伴う側弯変形を主因とする側弯. も,脊柱全体のバランスは比較的保たれる。しかし,成. と分類している。しかし,これらの病態分類は,症状と. 人側弯症ではしばしば矢状面のバランスの異常がみられ. 治療方針決定に直接結びつかず,実際の治療においては. る。また,手術治療を要する大部分の成人側弯症患者. 姿勢保持時の腰背痛や外観への苦痛,腹部圧迫などの脊. は,側弯のみではなく後側弯の形態をとっている。③高. 柱変形を原因とする症状を呈し,変形自体を治療すべき. 齢者,骨粗鬆症の合併:米国を主とする海外の報告では. 側弯症患者群と,画像上の側弯を呈するものの,神経根. 成人側弯手術患者の平均年齢は 50 歳前後と壮年期にあ. や馬尾の症状がメイン主体の側弯変形を有する狭窄症. ることが多いが,これは特発性側弯症の遺残群を多く含. 患者群が混在して報告されており,混乱がある。鈴木. む結果ではないかと思われる。しかし実際の診療で,よ. らは. 3). 症状と画像上での側弯変形の混乱を避けるため,. く目にする変性側弯症患者はより高齢の患者が多い。当. 側弯変形が症状の主因であり,変形を矯正,固定するこ. 科の平成 23 年における成人脊柱変形手術 64 例の平均年. とで症状が改善するものを変性側弯症とすべきであると. 齢は 65.9 歳(20 ∼ 82 歳)となっており,骨粗鬆症を合. 述べている。. 併していることが多い。そのため矯正に際しては,スク. 成人の脊柱変形による症状は,冠状面の変形である. リューに無理な力をかけないような矯正方法が求められ. 側弯よりも矢状面の変形である後弯や,矢状面バラン. る。④再手術例:過去に除圧術や固定術などを行われて. ス異常がより大きく関与していることが報告されてお. いる例も多く,前述の成人側弯症 64 例中,10 例に病変. 4)5). ,治療の目標も冠状面の矯正よりも矢状面バラン. 部の除圧や固定術の既往があった。⑤治療法の違い:. スの改善や,後弯の矯正に重きが置かれるようになって. 変形自体が硬い例があることや,矢状面バランスの改. きている。また,このような成人での脊柱変形をきたす. 善 の た め,SPO(Smith-Peterson Osteotomy) や PSO. 原因としては加齢による変性を基盤とする DLS の他に,. (Pedicle Subtraction Osteotomy),VCR(Vertebral. パーキンソン病や神経筋疾患等の症候性,感染や炎症,. Colmun Osteotomy)などの椎体や椎間関節の骨切りを. 外傷,骨粗鬆症,医原性など原因は様々ある。このよう. 必要とする症例が多い。. り. な現状をふまえたうえで,本来は成人脊柱変形症(adult spinal deformity)とでも呼ぶべきであろう。. 成人脊柱変形症の特徴. 手術方針 変性側弯症の手術アルゴリズム 6)(表 1) 今回の趣旨は医療安全であるため,手術法の詳細は省. 成人側弯症の特徴. 略するが,当科における成人側弯手術方針の概要は以. 成人側弯症の治療を検討するには,成人側弯症の特性. 下の通りである. を知る必要がある。同じく変形矯正を必要とする特発性. 旋を伴う変性(後)側弯症に対しては Simmons. 側弯症と異なる点として,①変性の存在:椎間板や椎間. 提唱するように,rod rotation を用いて矯正し , 腰椎多. 6). 。側弯変形が腰椎高位にある強い回 7). らの.
(3) 術直後からのリハビリは成人脊柱変形手術成績をより改善する. 211. 図3 図5. 図4. 椎間 PLIF(Posterior Lumbar Interbody Fusion)を行 図6. う。固定上位は後弯の頂椎を超え,rib cage に達する胸 椎(ほとんどが第 10 胸椎以上) ,下位は腸骨スクリュー を挿入し,骨盤まで固定を行う。椎体の楔状変形や高度 な後弯変形例に対しては PSO や VCR 等の椎体骨切り. 手術前に痛みやバランス異常で歩行できなかった生活が. を併用した矯正固定を行う。固定範囲は上記に準ずる。. 改善するメリットは大きいが,座り仕事やお尻拭き,床. パーキンソン病や神経筋疾患による camptocormia(腰. からものを拾う動作,爪切りや靴下,靴を履く動作が困. 曲がり)については第 3,4 胸椎などの上位胸椎から骨. 8) 難となることも多いことを報告してきた 。. 盤までの矯正固定とし,胸椎は高分子ポリエチレンテー. 症例を示す。69 歳女性で重度の後側弯変形を呈し,. プ(ネスプロン)による椎弓ワイヤリングを行い,腰椎. 腰 痛, 下 肢 痛, 歩 行 障 害 が 主 訴 で あ っ た。 術 前 ODI. は椎弓根スクリューを挿入する。比較的可動性が残存し. (Oswestry Disability Index)は 72 で日常生活は困難で. ているものには cantilevor technique や rod rotation の. あった。手術を行い術後 6 ヵ月で 28,術後 1 年で 27 と. みでの矯正と後側方固定を行うが,硬い後弯を呈してい. 改善している(図 7)。. るものには椎間解離や椎体骨切りを併用している。. しかし爪切り,仰臥位,おしりふき,ズボン履き,床. こういった高齢者脊柱変形症は,症状が重篤なだけに. からの拾い上げ動作が退院時に困難となっているのがわ. ロコモティブシンドロームにおいて重大な存在である。図. かる(図 8)。. 3 から図 5 に示すように,現在は高齢者であっても手術. 術前生活指導,そして術直後からのリハビリテーショ. によって脊柱をまっすぐにすることが可能となってきた。. ンで術後の ADL は改善する。我々のリハビリテーショ. しかし脊椎を胸椎から骨盤まで矯正固定をした場合,. 9) ンプロトコルを示す(図 9) 。.
(4) 212. 理学療法学 第 46 巻第 3 号. 図 7 69 歳女性後側弯症. 図 8 69 歳女性後側弯症. 図 9 リハビリテーションプロトコル.
(5) 術直後からのリハビリは成人脊柱変形手術成績をより改善する. 213. 図 10 筋力訓練. 図 11 ADL 訓練(自助具使用). まず 2 ∼ 3 日の術前入院で全身精査,骨密度,筋力測. 頭筋のセッティングをはじめ,術後 3 ∼ 4 日で離床させ. 定,ADL での困難な点の確認と改善指導,自宅環境調. バックキック,プローンプランク,スクワット,ランジ. 整を行う。基本的には歩行,筋力,ストレッチは継続し,. などを負担に注意しながら行い,それらに加えて漸増的. 術後 6 ヵ月は硬性コルセット,それ以後 12 ヵ月まで軟. な歩行訓練を進める(図 10) 。また ADL 訓練では起き. 性コルセットの装着を義務づけ,主治医と相談しながら. 上がり,拾い動作,排便処理,下肢の清拭,ズボン,靴. 骨癒合,体幹屈曲の可否を主治医に確認しながら理学・. 下履きなどを自助具を使用して行う(図 11) 。その結果,. 作業療法を 40 ∼ 50 分 / 回を 5 回 / 週継続する(図 9)。. 術後の痛み,大. 具体的な筋力訓練を示す。ベッド上安静時から大. 改善し,そして ADL の自立も可能となる。. 四. 四頭筋筋力,腸腰筋筋力,歩行能力は.
(6) 214. 理学療法学 第 46 巻第 3 号. 術前からの教育,術直後からのリハビリテーションを 行うことによってはじめて手術成績は向上する。 手 術 成 績 は ODI,SRS22(Scoliosis Reserch Society 22),SF36(Short-Form36)などで評価されることがほ とんどである。長大な脊椎矯正固定術がもたらすメリッ トは大きいが,その反面失う機能や ADL 上で一部遂行 困難となることも少なからずある。術前からの患者教 育,そして術直後からのリハビリテーションが必須であ り,真の術後成績を決める大きな要素であることは間違 いない。 文 献 1)Aebi M: The adult scoliosis. Eur Spine J. 2005; 14(10): 925‒948. 2)戸山芳昭:脊柱変形 変性側弯症.戸山芳昭(編) ,腰椎 の臨床,メジカルビュー社,2001,pp. 210‒215. 3)鈴木信正,朝妻孝仁,他:多椎間障害─変性側弯,第 2 章 疾患別病態と診断.鈴木信正,他(編) :腰椎変性疾. 患─基礎知識とチェックポイント.メジカルビュー社, 2004,pp. 105‒111. 4)Glassman SD, Berven S, et al.: Correlation of radiographic parameters and clinical symptoms in adult scoliosis. Spine. 2005; 30(6): 682‒688. 5)Schwab F, Lafage V, et al.: The Schwab-SRS Adult Spinal Deformity Classification: Assessment and Clinical Correlations Based On a Prospective Operative and NonOperative Cohort. Neurosurgery. 2012; 71(2): E556. 6)Matsuyama Y: Surgical treatment for adult spinal deformity: Conceptual approach and surgical strategy. Spine Surg Relat Res. 2017; 1(2): 56‒60. 7)Simmons ED: Surgical treatment of patients with lumbar spinal stenosis with associated scoliosis. Clin Orthop Relat Res. 2001; 382: 153‒161. 8)Togawa D, Hasegawa T, et al.: Postoperative Disability after Long Corrective Fusion to the Pelvis in Elderly Patients with Spinal Deformity. Spine. 2018; 43(14): E804‒ E812. 9)Kondo R, Yamato Y, et al.: Effect of corrective long spinal fusion to the ilium on physical function in patients with adult spinal deformity. Eur Spine J. 2017; 26(8): 2138‒2145..
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