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就労移行支援事業所に通所する統合失調症患者のセルフスティグマ,自己肯定感及びリカバリーに関する研究―Webシステムを通じたセルフモニタリングを用いることを想定して―

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-83 284

-就労移行支援事業所に通所する

統合失調症患者のセルフスティグマ,自己肯定感及びリカバリーに関する研究

―Webシステムを通じたセルフモニタリングを用いることを想定して―

○内田 空 兵庫教育大学学校教育研究科人間発達教育専攻臨床心理学コース 【背景】 近年,精神疾患のある方を対象とした就労支援への 関心が高まっており,その雇用も年々上昇している (厚生労働省,2016)。特に統合失調症は新薬の開発と 心理社会的ケアの進歩により,長期的な回復を期待で きるようになった。しかし,回復しても社会参加でき ない統合失調症患者も多くいる(内閣府,2016)。そ の方々の多くは精神疾患のある自分自身に対する思い 込みや偏見から,自己に価値を見出せず,社会参加に 積 極 的 に な れ な い こ と が 示 さ れ て い る( 天 谷 ら, 2008)。 自己を偏見の対象とすることをセルフスティグマと 呼ぶ(山口ら,2013)。統合失調症患者において,セ ルフスティグマは抑うつに影響を及ぼすとされている (山田,2015)。セルフスティグマは“症状や障害が続 いたとしても人生の新しい意味や目的を見出し充実し た人生を生きていくプロセス(千葉ら,2008)”であ る リ カ バ リ ー を 阻 ん で い る 要 因 で も あ る( 黒 髪, 2013)。これらのことから支援の際はその軽減を視野 にいれる必要がある。また,上述した自己の価値につ いては自己肯定感と呼ばれ,“自己への態度の望まし さ”とされている(平石,1990)。自己肯定感は精神 症状が重度であるほど低いと言われている(國方ら, 2006)。統合失調症患者はセルフスティグマが高いほ ど,自己肯定感が低下すると言われていることからも (Link,2001),両者は回復後の社会参加を考える上で の重要な要因として位置付けられる。 これらへの介入として様々な技法が用いられている が,その中にセルフモニタリングがある。セルフモニ タリングは他の視点から自らの体験を見る自己観察で ある。大野ら(2010)は健康管理チェック表を活用し たことで統合失調症患者の生活習慣への対処能力が高 まったと述べており,松尾ら(2007)はセルフモニタ リングによる統合失調症患者への介入では「自己指向 性」に焦点を当てるべきと述べている。このことか ら,統合失調症患者のセルフスティグマや自己肯定感 に着目して介入することが可能であると思われる。し かし,セルフモニタリングは通常,紙面上でやりとり される技法で当事者に負担が生じる場合が多い。 そこで,統合失調症患者に導入することができる方 法としてWebを通じた介入が挙げられる。その一つと し て,S P I S(S u p p o r t i n g P e o p l e t o I m p r o v e Stability)と呼ばれるWebシステムがある。このシス テムはWeb上の質問に答えて,コメントするだけもの であり,自動的にグラフ化されるようになっている。 支援者側からも閲覧でき,フィードバックが行えるよ うになっている。久保川ら(2015)は,Webシステム を通じたセルフモニタリングを行うことで当事者に安 心感が芽生え,自身の体調管理や状態把握への関心が 高まるとともに,対処意識が高まったと報告してい る。 本研究はWebシステムを通じたセルフモニタリング による介入前の段階として,就労移行支援事業所に通 所する統合失調症患者のセルフスティグマ,自己肯定 感及びリカバリーの実態を把握することを目的とす る。 【方法】 調査対象者 就労移行支援事業を中心に行う法人に通 う統合失調症のある訓練生18人 調査方法 質問紙調査とインタビュー 調査項目 1.フェイスシート(年齢,性別,最終学歴, 婚姻状況,就業経験,就業年数,発症年齢,服薬量, 実習日数)2.自己肯定意識尺度(平石,1990)3.自尊 感情尺度(山本,1982)4.精神障害者の内面化したス テ ィ グ マ 尺 度( 田 邊,2016)5.日 本 語 版Recovery Assessment Scale( 千 葉,2008)6.日 本 語 版Self-identified stage of recovery Part- A(千葉,2008) 7.日 本 語 版Self-identified stage of recovery Part- B(千葉,2008) 倫理的配慮 対象者に研究の目的や方法および研究に 伴う負担や個人情報の保護などが書かれた説明書を配 布し,法人の職員を通して同意を得た。 【結果と考察】 質問紙 対象者18人に質問紙調査を実施した。対象者 の基本属性,各尺度の評価得点(平均±SD)をTable 1に示した。結果から,セルフスティグマが低い人は 自己肯定感が高く,セルフスティグマが高い人は自己 肯定感が低かった。これは両者に負の相関関係がある 可能性を示唆している。また,自己肯定感が高く,セ ルフスティグマが低い人ほど,リカバリーの得点が高 くなっていたことから,自己肯定感とセルフスティグ マがリカバリーの重要な要因である可能性も考えられ

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-83 285 -る。 統合失調症患者を対象とした先行研究と比較する と,入院中の当事者に比べ,対象者は自己肯定感が低 かった。これは成果が目に見えてわかる社会を知り, 自分の能力や技術を痛感する場面が多いことや履歴 書・職務経歴書等で自分について考える機会が多いこ となどが原因であると考えられる。また社会福祉施設 の当事者に比べ,対象者はセルフスティグマが高かっ た。これは就職活動における面接や企業実習での人間 関係等の経験によるものであると考えられる。このよ うに,これから社会に出ていく段階にある特有の困難 があるのではないだろうか。 インタビュー 対象者18人の中から許可を得ることの できた 2 人(以下, A と B )にインタビュー調査を実 施した。 2 人の基本属性,各尺度の評価得点をTable 2に示した。インタビューから, 2 人に共通すること としてまず,『サポート資源の重要性』があった。応 援してくれる家族や信頼できる友達がいることは体調 や気分に影響しており,自己肯定感・リカバリーにも 大きく影響を与えていると考えられる。また,『趣味』 は対象者 2 人にとって重要な位置にあり,これらの成 功や評価はセルフスティグマに良い影響を及ぼす可能 性が考えられる。統合失調症の症状である幻聴が体調 や気分に大きく影響していることもわかった。質問紙 の得点が純粋な思いだけによるものではなく,疾患に よる症状の影響もあるということも忘れないようにし なければならない。今回,質問紙という形をとった が,これは体調変動の波の一時点を反映しているにす ぎず,この状態が常時ではない。一時点の状態を見る のではなく,体調や気分変動の波を長期的に追ってい く必要がある。 これらのことはWebシステムを通じたセルフモニタ リングの介入可能性を感じさせる結果である。当事者 の体調や気分変動を長期的にグラフ化することで,一 時点では表れなかった特徴をみつけることができる。 また,Webシステム内のネットワークは当事者にとっ てのサポート資源となり,自己肯定感・リカバリーを 向上させる要因となりえる可能性も考えられる。 【今後の展望】 今後はWebシステムを通じたセルフモニタリングが 就労移行支援事業所に通所する統合失調症患者のセル フスティグマ,自己肯定感及びリカバリーに与える効 果を検討する予定である。本研究で明らかとなった統 合失調症患者の特徴,Webシステムによるセルフモニ タリングの介入可能性を踏まえて,就労支援の一助と したい。

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