ニュージーランドにおける成人期きょうだい支援プログラム : Second Generation Workshopについて
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(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第48号(平成28年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.48(2016):69-80. ニュージーランドにおける成人期きょうだい支援プログラム ― Second Generation Workshopについて ― 阿 部 美穂子1 1. 北海道教育大学釧路校特別支援教育研究室. The Support Program for Adult Siblings of Children with Disabilities in New Zealand ― Second Generation Workshop ― ABE Mihoko1 1. Department of Special Education, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education. 概要 本研究では、ニュージーランドにおける、障害のある子どもとともに育ってきた成人期の兄弟姉妹(以下、 「きょうだい」 と表記)のための支援プログラムである、Second Generation Workshopについて調査し、その目的、内容を明らかにする とともに、 Second Generation Workshopがきょうだいにもたらす効果とその意義、 および課題について考察した。 その結果、 Second Generation Workshopは、きょうだいが家族の一員として、家族成員の「グッドライフ」実現に向け、積極的に社 会参加を果たすライフステージへと、自ら移行するための支援プログラムであると考えられた。また、本ワークショップ に参加することは、能力前提主義から理想追求主義へと、きょうだいの人生観そのものを転換するきっかけとなり、自分 と家族の生活をマネージメントする、責任ある主体者への変貌を促すとともに、親との新しいコミュニケーション関係を 得て、親子の相互理解を深める貴重な機会を得るものであると考えられた。一方、課題としては、学童期支援プログラムと の接続の問題及び、プログラム提供者の資質確保の問題が挙げられた。また、Second Generation Workshopは、ニュージー ランド政府の障害者施策と深く結びついた内容となっており、そのままのスタイルで日本に導入することは難しく、その 意義を踏まえて、我が国の成人期きょうだいのニーズに応じた、新しい支援プログラムの検討が求められるものである。. Ⅰ 問題の所在と目的. 支援プログラムの内容としては、国内外を問わず、きょ. 近年、障害のある子ども(以下、 「同胞」と表記)の兄. うだい同士が集まって交流するレクリエーション中心の活. 弟姉妹(以下、 「きょうだい」と表記)の抱える成長上. 動が多く実践されている(柳澤,2007)。プログラム実践. の問題が明らかにされてきており(平川,2004;川上,. 者は、大人になったきょうだい当事者、障害児・者の親の. 2009;阿部・神名,2011) 、その支援の必要性が指摘され. 会、大学等の研究機関などである。学齢期きょうだい支援. るようになった。中でも、きょうだいにおける、自己評価. プログラムの代表的なもののひとつが、Sibshopである。. や自尊感情の低さ(吉川 2002) 、 友人関係構築の難しさ、. これは、米国シアトルで、きょうだい支援プロジェクトの. 自己非難(遠矢,2004)などの心理的適応上の課題が顕著. 中心プログラムとしてMeyer & Vadasy(1994)により開. であることから、主として学齢期にあるきょうだいを中心. 発された。きょうだいが主役となって楽しむ集団活動で. に、心理的開放体験を提供し、適応を高めることを主眼に. あり、ゲームや製作、運動などのレクリエーションを軸. 置いた支援プログラムが開発されてきている。日本では、. として、仲間意識を育て、きょうだいの日ごろの悩みやス. きょうだい支援は、いまだ有志によって様々なパイロッ. トレス、不安などをきょうだい同士で話し合うことで軽減. ト的な取り組みが積み上げられている段階であるが、欧米. し、心理的適応性を高め、エンパワメントを図るもので. では、障害児・者と暮らす家族のための支援の一つに、障. ある(阿部,2013)。Sibshopは、本来、学齢前期の限られ. 害のある本人支援、親支援と並んできょうだい支援が位置. た年齢期にあるきょうだいを対象としているが(小林・. づけられており、療育センターなどの公的機関で事業化さ. 阿部,2011)、現在ではより幅広い年齢にわたる学齢期. れ、定期的に実施しているケースもある(小林・阿部,. きょうだいに適用可能とされている(The Sibling Support. 2011;阿部・小林,2012) 。. Project,2016)。また、Sibshopのプログラム内容は、プ. - 69 -.
(3) 阿 部 美穂子 ログラムを運営するためのトレーニングを受けたファシリ. to Parent New Zealandのオークランド支部とウエリン. テーターによって、 地域の実情や、 参加きょうだいの実態、. ト ン 支 部( い ず れ も、 組 織 内 で 最 近Second Generation. スポンサーとなる団体のニーズ等に応じて、柔軟にアレン. Workshopを開催した支部である)を訪問し、実施したプ. ジされて提供されるものである(阿部,2013) 。このよう. ログラム構成と参加者に配布した資料の提供を受けると. な特質により、Sibshop型のきょうだい支援プログラムは. ともに、インタビューを実施した。インタビュー対象者. 米国のみならず、世界的に実践されるようになり、日本で. は、オークランド支部の運営者であるElaine Gutteridge. も導入例がみられる(平山・井上・小田2003、井上・平山・. 氏、ウエリントン支部の支援コーディネーターであるSue. 小田2003) 。. Trueman氏、同支部運営者であるSharyn Heathcote氏で. 学齢期のきょうだい支援においては、Sibshopのような. ある。また、メールによる情報提供者は、ウエリントン. モデルプログラムが開発されているのに対し、学齢期を過. 支部がきょうだい支援プログラムを実践するにあたり、. ぎた18歳以上のきょうだいに対しては、モデルとなる支援. ファシリテーターを委嘱しているビクトリア大学のGrant. プログラムとなるものがほとんど見あたらない。Sibshop. Morris博士である。. の 開 発 者 の 一 人 で あ るMeyerが 主 催 す るThe Sibling. 調査時期は2016年3月であった。調査で得られた情報、. Support Projectにおいても、学齢期以上のきょうだいた. 及び、提供された資料等を筆者が邦訳及び要約して、筆者. ちのための、年代別ネットワークが組織されているが、決. の判断で学会発表や学術論文に使用することについて、口. まった支援プログラムが実施されているわけではなく、相. 頭、及びメールで各情報提供者から許可を得た。. 互の情報交換や交流が活動の中心である。日本でも、大人 期のきょうだいたちが、 セルフヘルプ・グループを形成し、. Ⅲ 調査結果. 定期的に集まって活動していることが報告されているが、. 1 Parent to Parent New Zealandについて. 活動内容としては、きょうだいのみの交流会を持ち、相互. Parent to Parent New Zealandは、障害のある人ととも. に心理的サポートを行ったり、対障害者施策を行政に働き. に暮らす家族をサポートするピア・サポート組織であり、. かけたり、きょうだいの現状に関する対外的啓発を行った. 1983年から活動を開始している。日本でいうところの「親. りすることが中心であるとされている(藤井,2007)。. の会」「家族会」組織に相当するものである。全国組織であ. きょうだいの抱える課題は、そのライフステージに応じ. り、ニュージーランド全土に11の支部を持つ。本部はハミ. て変化するものであり(笠井,2013) 、そのステージごと. ルトン市にある。企業等の資金提供を受けて運営されてお. に支援の内容や方法も変えていく必要がある。よって、成. り、 支援団体の中には日本企業の現地法人も含まれている。. 人期を迎えたきょうだいについて自助的な活動が主流とな. 活動の柱は大きく分けて4つある。1つ目は“Connecting. るのは自然なことであると考えられる。しかしながら、成. Parents(親同士の関係つくり)”で、これは障害のある子. 人期にあるきょうだいが直面する課題を常にインフォーマ. どもを育てることとなった親を、似たような障害のある子. ルなピア・サポートのみで解決できるとは考えにくい。きょ. どもを育てている先輩の親に紹介するものである。紹介さ. うだいの抱える課題は個人的な要因が大きく、成人期きょ. れる先輩の親は、“Support Parents”と呼ばれ、他の親の. うだいであればなおさら、個々のニーズに応じて、幅広い. 悩みを聞き、相談に乗る。適切なアドバイスやサポートが. 選択ができる支援資源が用意される必要があると考える。. できるよう、トレーニングを受けている親である。. そこで、筆者が調査したところ、ニュージーランドの障害. 2つ目は“Information(情報提供)”で、子どもが生ま. 児・者の家族支援組織であるParent to Parent New Zealand. れる前の胎児期から成人期に至るあらゆる機会に、親が問. が、18歳 以 上 の き ょ う だ い を 対 象 にSecond Generation. 題を抱えた場合、要請があれば、その解決に必要な情報を. Workshopというパッケージ型支援プログラムを独自に展. 要請者の個人状況に応じて調査し、提供するものである。. 開していることが明らかになった。そこで、本研究では、. 医療、教育、福祉、行政や法律などの各分野の専門家とタ. この大人のきょうだいのための支援プログラムについて調. イアップしている。. 査し、 その内容を明らかにすることを目的とする。 そして、. 3つ目は、“Education(教育)”で、障害のある人ととも. いまだ、きょうだい支援に対する組織的な取り組みがなさ. に暮らす家族に対する啓発、教育活動である。いくつかの. れているとは言いがたい我が国の現状に鑑み、学童期から. パッケージ化されたトレーニング・プログラムを持ってお. 成人期に至るライフステージを見通したきょうだい支援プ. り、ファシリテーターと呼ばれる指導者が全土にわたって. ログラムの開発と支援体制整備のための一助とする。. 巡回し、そのプログラムに基づいて研修会を開催する。新 しい仲間と出会う機会としての地域別集会や、先に述べた. Ⅱ 調査方法. “Support Parents”になるためのスキルアップ研修など. きょうだい支援の実際について、Parent to Parent New. が行われる。. Zealandのホームページから情報を収集するとともに、. そして4つ目が、“Sibling Support(きょうだい支援) ”. メールで直接主催者に問い合わせた。さらに、Parent . である。2013年~ 2014年までの活動報告書によれば、8回. - 70 -.
(4) ニュージーランドにおける成人期きょうだい支援プログラム のきょうだい支援事業が実施されている、まず、8歳から. に、きょうだいと親がともに将来に向けての話し合いの途. 18歳までの学齢期きょうだいに対しては、Sib Day(きょ. につくこと、第2に、きょうだいに、同胞の生活における. うだいが集まって、ゲームや話し合いなどで楽しく過ごす. 自らの役割について、よく考える時間を提供すること、第. 日)やSib Camp(2 ~ 3日間のキャンプ施設を利用した宿. 3に、家族成員で共有できる将来のビジョンを策定するこ. 泊活動)が行われる。これらはいずれもきょうだいのみを. と、第4に、障害のある家族メンバーにとっての「グッド. 対象とし、大人のきょうだい当事者がファシリテーター. ライフ」を実現していくための、確実な将来計画作りを開始. として、子どものきょうだいを預かりSibshopを基本にア. すること、第5に、法律上の問題に関して、家族が考えたり. レンジした支援プログラムを実施するものである。そし. 計画したりすることに役立つ情報を提供することである。. て、18歳以上の学齢期を過ぎたきょうだいに対しては、 Second Generation Workshopが実施されている。Morris. (2) 概要. 博士は、 「本活動は、きょうだいのためのきょうだいによ. ワークショップは金曜日の夕方から、日曜日の午後にか. る活動であることが重要だ」と述べており、年長者あるい. けて行われる。食事やティータイムを挟み、1時間前後か. は先輩の立場のきょうだいが自らの経験を生かして、年少. らなるセッションを展開していく。講義、VTRの視聴、 ディ. 者あるいは後輩の立場のきょうだいを支援する仕組みの有. スカッション、ロールプレイングなど多様な活動が含まれ. 効性を強調していた。提供された“SIBSUPPORTNZ ”. る。また、セッションのテーマによって、きょうだいと親. の案内チラシにも“For siblings by siblings”の文言が記. が別々に、あるいは一緒に活動する。. され、きょうだいの自律的な運営によるものであることが. 全体進行と活動内容の提供は、ピア・サポーターである. 強調されている。. 「先輩」きょうだいスタッフが行う。取り上げる内容に応. TM. じて、一部のセッションでは、専門的知識を持つ講師を招 2 Second Generation Workshopについて. いたり、体験談を話してくれるゲストを招いたりする。. (1) 目的. 開催にかかる費用は、先に述べた企業からの寄付金や各. 主催者のParent to Parent New Zealandによれば、本. 種財団のグラントの獲得によってまかなわれる。そのた. ワークショップは、 「きょうだいと障害児・者の親とが一. め、各年度の開催回数は資金の調達の程度による。. 緒になって、自分の家族の障害のあるメンバーのよりよい 将来設計をつくるための活動」とされる。 「多くのきょう. (3) 内容. だいが同胞の人生に積極的にかかわりたいと切に願ってい. 2015年にオークランド市及びクライストチャーチ市で行. る。それゆえ、本ワークショップでは、家族成員間の効果. われたワークショップのプログラム資料及びインタビュー. 的な意見交換、及び家族成員のための将来にわたる包括的. から、その内容を調査した。ワークショップの流れを. 家族生活計画の立案を促進する。 」と、説明されている。. Table 1に示す。両会場とも内容は同じである。各活動内. そして、5つの活動のゴール(目的)が示されている。第1. 容の要点を以下に示す。. Table 1 ワークショップの主な内容 日程 1日目 2日目. 3日目. 分 30 60 15 45 45 30 30 45 60 75 15 20 60 50 60 60 30 35 15. 内容(※は、きょうだいと親が分かれて行う) イントロダクション 家族のポートレート作り 打ち合わせ 各々の「グッドライフ」に関するビジョン作り 同胞の生活に関するビジョン作り※ 作成した同胞の生活に関するビジョンの共有 2人のゲストによる、体験談の視聴 ロールプレイングエクササイズ 人がもつ「役割」の重要性に関する講義の視聴 各家族成員がもつ役割とその社会的価値の発見演習※と家族での共有 交流ディナー 打ち合わせ これまでの振り返り 障害のある人と共に暮らす、ある家族のDVD視聴 障害のある人の将来にわたる「支援の輪」についての講義 ゲストによる、政府の障害者家族支援に関する講義 ゲストによる、障害者後見人制度、及び家族の財産管理に関する義務についての講義 将来に向け、今自らがすべきことについての協議※ 家族別に、今後の家族のライフスタイルについての協議 各家族から自分の家族の将来に関する考えの発表と共有 まとめと本活動に関する評価. - 71 -.
(5) 阿 部 美穂子 1)家族のポートレート作り これは、最初のグループセッションで、きょうだいと親 がともに集まり、同胞を含めた家族写真を見ながら、家族 成員について「好きなところ」 「賞賛したいところ」など を紹介しあうものである。単なる家族紹介に終わらず、自 らの家族観について改めて問い直す内容となっている。具 体的には、 「家族の名前、年齢、好きな色を紹介しよう」「同. と、雇用されること、家や家族を持つこと、社会的活動 に参加することなど、同じようなライフステージにある 人々と同じ機会を持つ。 5 つ目は、 「特別な支援に先立つ統合への支援」である。 障害のある人は、障害のある人のためだけに用意された 特別なサービスを受ける前に、まずは障害のない人々が 利用しているものと同じサービスを使うことができるよ. 胞と一緒に楽しんで過ごせる時間、特に家族の絆を本当に. うに支援される。. 感じる場面について1分間の紹介をしよう」 「同胞のことで. 6 つ目は、「本来持っている能力の向上」である。障. 感じる葛藤や誇りに思っていることをひとつずつ挙げてみ. 害のある人とその家族が持っている能力や貢献できる力. よう」 「家族成員が持っている2つの才能、少なくとも2つ. は、認められ、尊重されるものである。. のできることを挙げよう」 「同胞が周りにもたらしている. 7 つ目は、「利用しやすい支援」である。障害のある. 素晴らしいことを3つの言葉でまとめよう」 「家族成員が自. 人には、使いやすく、柔軟なサポートが提供される。. 分の人生で、次に何をしたいか話しているだろうか」とい. 8 つ目は、「関係者とのネットワーク構築」である。. う問いかけがファシリテーターからなされる。1人当たり5. 障害のある人とその家族、そしてコミュニティの関係性. ~ 6分で、意見を述べる。同時にそれらを付箋に書いて紙. を構築し、強化するための支援がなされる。. に貼っていく。. (ニュージーランド政府による啓発用パンフレット. 2) 「グッドライフ」に関するビジョンつくり. “Enabling Good Lives”より、筆者要約). このセッションは、2日目の午前中に行われる。障害の. ファシリテーターは、セッションを進めるにあたり、こ. ある同胞とともに生きる家族にとっての「グッドライフ」. の“Enabling Good Lives”パンフレットを配布してその. とはどのようなものかを考え、それぞれがその実現に向. 理念を示し、参加者に対し、「グッドライフ」とはどんな. け、ビジョンを持つことを目的としている。ただし、将来. 人にとっても、自ら決定し、実現するべきものであるこ. に関する疑問の解決や、明確な理解に至るのではなく、ま. とを示す。そして、自分と同じような年代や文化的環境に. ずは、参加者が共通の立場で、話し合いの途に就くことを. ある人々がしていることを参考にしながら、自分にとって. 意図している。. 「グッドライフ」はどのようであったらよいかを考え始め. この「グッドライフ」ビジョンを持つため、 参加者はファ. られるように励ます。この場合に大切なことは、参加者が. シリテーターから、基本となる考え方である、 “Enabling. 自分の同胞や家族にとっての「もっと良い状態」について、. Good Lives”について学ぶ。これは、2011年に示され、その. 想像力を十分働かせることである。. 後さまざまに発展・展開されてきたニュージーランドにお. そこで、ファシリテーターは、まず障害のある人のより. ける障害者団体と政府機関による協定であり、 障害のある人. 良い生活を想像する妨げ(バリア)となっている観念が、実. とその家族自身が、 自らの生活のありようと支援を選択する. は自分自身の中にあることに気づくよう促す。本セッショ. ことを保障するためのものである。 “Enabling Good Lives”. ンで手持ち資料として参加者に配布される『もっと良い状. には、8つの理念が示されている。概要を以下に示す。. 態について話そう』では、以下のように指摘されている。. 1 つ目は、 「自己決定」である。障害のある人は、自. 障害のある人に活動への参加を妨げているバリアと. 分の生活を自らのコントロールの下に置く。. は、私たち自身が選んだものである。それは、私たちが. 2 つ目は、 「早期からの支援」である。障害のある子. 彼らの希望や夢に対して設けた限界である。しかしなが. 供とその家族に、以下のサポートのために公的資金が提. ら、世界中を見渡すなら、数多くの障害のある人々がよ. 供される。すなわち、障害のある子供の能力の向上、障. り良い生活を実現しているのであり、私たちがこれまで. 害のある子どもが地域で自然なサポートを受けられるた. 考えていた以上に、より豊かで価値の高い生活を送って. めのコミュニティづくり、そして、障害のある子どもが、. いる実例がある。そして、そのような事例に限界はない。. 将来、危機的な状況になってから必要な支援を使うとい. もし、限界があるとしたら、それは私たちの「もっと良. うことに陥らないように、自立するための支援である。. い状態を想像する力」にこそ限界があるということであ. 3 つ目は、 「個人ニーズ中心」である。障害のある人は、. る。障害のある人の「グッドライフ」をはっきりと思い. 個々のニーズや、目標に合うように仕立てられたサポー. 描くことができるとは、彼らがすべての人々が持ってい. トを得る。ばらばらな支援の寄せ集めではなく、生活全. るのと同じ種類の、当たり前の毎日に関する希望、生活、. 体を視野に入れた統合的支援として利用する。. そして夢を持つ権利があると想像できることである。そ. 4 つ目は、 「普通の生活の実現」である。障害のある. れは、彼らもまた、他の人々と同じような種類の人生に. 人は、いつもの生活をいつもの場所で送ることができる. おける「機会」を必要としていると信じることを意味して. ようサポートされる。彼らは一市民として、学習するこ. いる。障害のある人の生活にかかわる活動や場所、そし. - 72 -.
(6) ニュージーランドにおける成人期きょうだい支援プログラム て人々について考える場合、障害のある人の希望や機会 に関するこのような考えを持ち続けることが大切である。 (Talking about imagining better“Introduction”より筆 者要約). 以上の考え方を踏まえて、参加者は、ファシリテーター. さらに、 ファシリテーターは、 参加者が自分の同胞の 「もっ. なるカードが示され、各自が共感できるものを選んで、グ. と良い状態」 を想像することの重要性を理解するよう促す。. ループで自分の考えを紹介し合う。ファシリテーターは、. 家族は、同胞の側に立って、願う未来を表明する。誰. Table 2の上段に示すような質問を投げかけ、参加者が自. もが価値を認める、ごく基本的なありとあらゆる良いこ. 分のビジョンを持つことができるように助ける。. と、例えば、良い教育を受けること、生涯にわたって続. その後、ティータイムを挟んで、きょうだいグループと. く愛情に満ちた人間関係を得ること、自分の家をもつこ. 親グループに分かれ、今度は同胞(親の立場の場合は、障. と、やりがいのある仕事に就くこと、経済的な安定を得. 害のある子供を指す、以下同様)の生活についてビジョン. ること、生活の大部分を自分の意思で決定できることな. を持つためのセッションを行う。1人ずつ白紙のカードが. どである。もし、このような誰もが当たり前に期待する. 渡され、きょうだい、あるいは親が同胞のために抱いてい. 内容でさえも、周囲の人々(家族を含む)が障害のある. る、あるいは、同胞自身が自分のため抱いているときょう. 人には難しい課題に違いないと考え、彼らに何も期待し. だいや親が信じる希望や夢をすべてカードに書き出すよう. なければ、障害のある人たちは、ごく当たり前のことを. 求められる。その際、Table 2の下段に示すように、自分. 成し遂げる機会を制限されてしまうことになるだろう。. 自身の「グッドライフ」に関して描いたと同じ質問を、今. 大切なのは、できるだけ早期に考え、計画し始めるこ. 度は同胞に置き換えて、自分の考えをまとめる。. とである。実現に向けた問題をどう克服するかを想像で. 家族が同胞の「グッドライフ」に関するビジョンを考え. きなかったら、可能であるはずの希望や夢は、しばしば. るにあたり、ファシリテーターが強調するのは、障害のあ. 頓挫してしまう。私たちがもし「より良く」想像すること. る人が持っている弱点や困難さに注目するのではなく、そ. ができるなら、資金のことや、施設環境のことや、支援. の人の強みや興味など、すでに持っている能力に着目して. のことなど、すべてをどうすればよいかが分かるように. 考えることの重要性である。. なる。それなのに私たちは、自分たちが達成したいこと. そのために、ビジョンを思い描く際の4つのキーポイン. や実現したいことを本当に理解する前に、もう対策を決. トが示されている。要約すると以下のとおりである。. から、まず自分自身の「グッドライフ」についてビジョン を持つように促される。自分の生活がどのようになると 嬉しいかなど、いくつかの「グッドライフ」のヒントと. めてしまっている。一旦何かを決めてしまうと、障害の. 第 1 点目に、同胞の現在の状態をスタート地点とし、. ある子どもたちは将来のことであれ、すぐ先のことであ. まだ未開発な能力や、同胞が本当に必要としていること. れ、 それをもっと良くする選択ができなくなってしまう。. が何かに焦点を当てる。その人のできないことに集中す. 私たちがビジョンを持ち続けることは、決してつまら. るのは避ける。. ないことではない。ビジョンは挑戦し続ける生活の力強. 第 2 点目に、将来、コミュニティでどんなタイプの生. いツールとなる。希望は金銭よりも重要で、素晴らしい. 活をしたいのかを明確にする。. ものである。. 第 3 点目に、他の人々との関係性に焦点をあてる。ビ. (Talking about imagining better“Introduction”より筆. ジョンを他の人々と共有する。自分の力で「もっと良い 状態」を想像することが難しいなら、事例を探す。. 者要約). Table 2 「グッドライフ」のビジョンを持つために役立つ質問. 自分自身の「グッドライフ」の ビジョンを持つ. ・あなたの生活の中で、一番大切だと思うものを5つ挙げましょう。 ・あなたの生活の中で、最も重要な人々の名前を挙げましょう。 ・生活の中で実現したいこと、あなたの希望や夢を特定しましょう。 ・あなた自身の生活において、あなたの夢を実現する過程で妨げとなると考えられる ことがらは何ですか? ・それらの妨げを乗り越えるのに助けとなると考える方略や行動は何ですか?. 同胞(親の立場の場合は、 障害のある子供、以下同様) の「グッドライフ」の ビジョンを持つ. ・あなたの同胞のために、最も重要だと思うものを5つ挙げましょう。 ・同胞の生活において、もっとも重要な人々の名前を挙げましょう。 ・同胞が自分の生活において最も手に入れたいと望んでいるとあなたが感じているも の、彼らの希望や将来の夢を明確にしましょう。 ・同胞の生活において、彼らの夢を実現する過程で妨げとなると、あなたが考えるこ とがらは何ですか? ・それらの妨げを乗り越えるのに助けとなると考える方略や行動は何ですか? ・自分の家族と、カードの内容を紹介し合いましょう。. - 73 -.
(7) 阿 部 美穂子 第 4 点目に、思い描いたビジョンにどうやって到達す るかを心配してはいけない。希望や夢の大部分は、まず 粗々としたもので始まり、共有した人々に助けられて形 になっていき、より現実的なものになっていく。 (Talking about imagining better“Key point in imagining better”より筆者要約). に関して話し合う。. このようなポイントを押さえて、参加したきょうだいと. かち合う。. 親は、まず別々のグループになって「グッドライフ」カー. ファシリテーターは、参加者が、同胞が生活において果. ドを記入した後、家族ごとにそれを持ち寄り、分かち合う. たしている社会的な価値のある役割の重要性を知ることが. 時間を持つ。考えの共通点や差異を確認し合う。その後、. できるように励ます。以下に示す手順で、同胞に関する役. さらに複数の家族で大きなグループになり情報交換をす. 割リストをきょうだい(及び、親)にチェックするように. る。家族でどんな共通点が見つかったか、また、自分自身. 提案する。. の「グッドライフ」に関するビジョンと同胞の「グッドラ. 最初は、 「10の力」を挙げることである。本ワークショッ. イフ」との違いが何だったかなどについて話す。. プの最初のセッションで作成したポートレートを使って、. また、 「グッドライフ」のビジョンを実現可能なものと. 同胞が持つ才能や技術、強みなど、同胞の持つ役割をチェッ. するため、ファシリテーターは、参加者にさらに以下の6. クしてみる。少なくとも10個の新しい価値ある役割をリス. つの視点を示す。. トアップするようにする。それらは、支援してもらうこと. まず、最初に、デモンストレーションとして、参加者の 中から1人を選び、全体でその人の持つ役割について考え てみる。次に、きょうだいと親グループに分かれ、それぞ れ自分の家族が持つ社会的に価値ある役割を考える。そし て、最後に家族ごとに集まり、それぞれが考えた内容を分. 第 1 点目に、あなたとあなたの家族にとっての「グッ. ができれば、やれるようになるかもしれないものを含む。. ドライフ」とは何かを、なるべく明確に考え、文字化. 次に、それらの役割を果たすために同胞が必要としてい. して書き留める。そして、定期的に何度も考え、何を. る方略やサポートは何かを考える。. するかについて自分に問い続けるようにする。. さらに、同胞の役割ときょうだい自身が持っている役割. 第 2 点目に、 「グットライフ」を達成し、また継続す. を比べてみる。. るために不可欠なものが何かをはっきりさせる。. 最後に、家族ごとで、その内容を分かち合う。. 第 3 点目に、家族として動く。 「グッドライフ」とは、. このようにして出来上がった役割リストを翌日、複数の. 家族全員のためのものである。家族の特定の人間の生. 家族が集まるもっと大きなグループで、発表し合うことを. 活が、他の家族成員の負担にならないようにする。そ. 予告し、セッションは終了する。. のためには、定期的な話し合いを欠かさない。. 4)「支援の輪」とそのつくり方の理解. 第 4 点目に、夢を大きく持つ。. 「支援の輪」とは、将来にわたり、障害のある人と友好. 第 5 点目に、ビジョンを他の人と共有する。. な関係を持ち、支援する目的をもって集められた人々の集. 第 6 点目に、そのビジョンを描き出し、現実のもの. まりを指す。このセッションは、3日目の午前中に行われ. にする。. る。「支援の輪」とはどのようなもので、どのように運営. (Talking about imagining better“Making a start” よ り筆者要約). するのか、また、その「支援の輪」にどのようにして人々 を招き入れるのかについて、ファシリテーターから話を聞. 3)家族成員がもつ役割とその社会的価値の発見. く。「支援の輪」の事例を示した映像資料なども参照する。. このセッションは、2日目の午後に行われる。誰もが自. さらに、支援の輪に誰を加えたらよいかを明確にするため. らの能力をもって社会的な価値のある役割を担いつつ生き. に、障害のある人に関連して影響を及ぼす人々との「関係. ることを踏まえ、同胞のもつ能力を見直し、その能力を生. 性マッピング」を行う。. かして、家族成員が「グッドライフ」を送るために、どの. このセッションでは、参加者に『あなたの周りの支援に. ような価値ある役割を果たせるのかについて考えることを. ついて話そう』という手持ち資料が示される。これは、 きょ. 目的としている。. うだいや親が、支援者とのネットワークを発展させていく. 参加者は、小規模事業に関する映像資料の視聴を手掛か. ため、どうしたらよいかを検討するために役立つ資料であ. りに、人々はそれぞれ「大切な役割」を持っていることを. り、実際に「支援の輪」を作るための具体的方法を示すもの. 確認する。そして、その役割がその人自身にもたらすもの. である。 この資料は以下の考えに着目して作成されている。. が何かを話し合う。この「役割」は「活動」そのものと何. 第 1 点目に、身近なコミュニティには、誰かほかの人 の生活にかかわりたいという意欲及び、有意義な貢献能 力を持っている人がいる。しかし、そのような人々は、 どうやって支援に加わったらよいかを知らない。だから、 我々は彼らを招き入れる方法を学ぶ必要がある。 第 2 点目に、障害のある人は、もっと人間関係を拡大. が違うのかについて話す。特に、強調されるべきポイント は、人が持つ役割とは、人間関係のつながりにおいて強め られるものであるという点である。 「役割」という概念について共通理解した後、ティータ イムを挟んで、今度は参加者の同胞が持つ「大切な役割」. - 74 -.
(8) ニュージーランドにおける成人期きょうだい支援プログラム していくことが可能である。現状では、多くの障害のあ る人々は、彼らの家族及び、有償サービススタッフとの みつながっている。しかし、実際の家族ではなくても、 障害のある人を親身に世話してくれ、障害のある人と、 有意義で、双方にとって有益な関係を持つ人々を仲間に 入れることはできる。 第 3 点目に、個人及びその家族は、一般的に、個人的. 望や夢をほかの人々と分かち合う意思があるかどうかが問 われるものである。また、後者については、家族が人を信 頼するというステップを歩みだすことができるかどうかが 問われるものである。 この2つの問題を乗り越えるなら、その後の「支援の輪」 つくりのためにしなければならないことは、わずかである と述べられている。具体的には、「将来に関するビジョン. なニーズを理解してくれ、生涯にわたり良きにつけ悪し. をつくり、それを持ち続けること」「『支援の輪』が果たす. きにつけサポートしてくれる人々とつながっているとき. 目的を明確にすること」「障害のある人や自分たち家族に. に、よりうまく事を運ぶことができる。. 連なっている人々との関係性を表したマップをその人たち. 第 4 点目に、公的支援システムでは、障害のある人々. の名前を書き込んで作ること」「誰に『支援の輪』に参加. と近隣の人々やコミュニティ、及び市民仲間との親身な. してくれるように誘うかを決定すること」「参加して欲し. 関係をつくる場合、限界がある。特に、障害のある人の. い人に個人的に声をかけること」 「メンバーが集まったら、. 主たる支援者、すなわち家族を支援するという点では、. 最初のミーティングをすること」「『支援の輪』を取りまと. 公的支援システムがうまく機能していないようである。. めるファシリテーター役を決めること」である。. (Talking about surrounding yourself with support. 特に、 「『支援の輪』が果たす目的を明確にすること」につ. “Introduction”より筆者要約). いては、 以下に示すように多くの目的例が挙げられている。. また、 同資料は 「支援の輪」 を以下のように説明している。. ・障害のある人の社会的ネットワークを拡大すること. 「支援の輪」の役割は、障害のある人の利益を守り、. ・障害のある人がコミュニティにおける社会的役割を獲. 障害のある人が個人的に目指していることがらを達成. 得すること. できるように助けることである。 「支援の輪」に連なる. ・ほかの市民とともに、クラブや会合、グループ活動に. 人々は、いわゆる公的支援システムとは別のところか. 参加すること. ら集められており、誰も報酬を受けない。そのような. ・親の家を出て、自分自身の家に引っ越すこと. 人々は、 この「支援の輪」が何を達成するためのものか、. ・施設を離れて、自分の家を持つこと. どのように機能するか、また、 「支援の輪」に参加する. ・有償サービス提供者を采配すること. メンバーが、障害のある人の世話をするという唯一の. ・財産の管理者やアドバイザーを勧誘すること. 目標のために集まることがなぜ重要なのかを共有する. ・虐待やネグレクトから守ること. ことによって、輪の仲間に入るよう誘われる。 「支援の. ・コミュニティにおける主体的な立場をとること. 輪」は定期的なミーティングを行い、障害のある人と. ・障害のある人の家族が心配せずに休みをとれるように. その家族を取り巻く自然なサポートネットワークとし. すること. て活動する。できる限り障害のある人自身が 「支援の輪」. ・文化活動、レクリエーション、宗教やスポーツに関す. を調整し、理想を言えば、誰を「支援の輪」に招き入れ、. るプログラムなどに参加すること. 何に焦点を置いて活動するかを方向づける。 「支援の輪」. ・誕生祝や、そのほかの祝賀行事をすること. を有することは、障害のある人の生活を大きく変化さ. ・障害のある人の夢や向上のため、彼らの考えやコミュ. せ得る。コミュニティの「お飾り」的な生活ではなく、 統合と参加のある生活をもたらす。そして、障害のある 人の有意義な将来のための最も強力な基盤となる。「支 援の輪」を形成することは、 家族成員の「より良い生活」 をつくり始めるために、そして、あなたがいなくなっ てしまったあとの家族の将来を守るために、あなたが できる最重要事項の 1 つである。 (Talking about surrounding yourself with support “What is a Circle Support ?”より、筆者要約). ニティにおけるつながりを適用していくこと ・雇用先開拓や仕事のサポート調整をすること ・重要なイベントについて、情報や食事、移動手段を共 有すること ・健康とサービスの経過観察をすること ・法的、医学的、金銭的、個人的な事項に関して法的な 代理人として決定に携わること ・趣味や興味関心を分かち合うこと ・家族に心の平安を提供すること. この「支援の輪」を形成しようとすると、家族はたいて. (Talking about surrounding yourself with support. い2つの障壁に突き当たり、それを克服する必要に迫られ. “Clarifying the purpose of the Circle”より筆者要約). ることが指摘されている。1つは、 「自分たちの生活に他人. さらに、 「参加して欲しい人に個人的に声をかけること」. を受け入れる覚悟はできているか」 、もう1つは「もし、拒. に関しては、家族にとって声をかけた相手に否定されるこ. 否されたらという恐れを脇に置く覚悟ができているか」で. とへの恐れが大きくなる。そのような場合には、他の人を. ある。前者に関しては、家族が同胞について抱いている希. 介して依頼する方法や、現在は家族から離れている身内の. - 75 -.
(9) 阿 部 美穂子 誰かを介して依頼する方法、また、難なくほかの人を誘う. 滞、または、これらの重複障害の状態が少なくとも6か月. 能力を自然と身に着けている人とつながり、その人を介し. 継続しており、その結果、自立機能が低下し、継続的支援. て依頼してもらう方法などが紹介されている。. を必要としていると判断される」状態を評価し、公的支援. また、 「メンバーが集まったら、最初のミーティングを. に適合するかどうかの判断を行う。. すること」で、強調されているのは、ホスピタリティ、す. 第2の機能は、対象者に適したアセスメントの実施によ. なわち、 「支援の輪」に参加した人々に対するもてなしの. る支援ニーズの把握である。アセスメントには、支援ニー. 心遣いである。ミーティングでは、 「支援の輪」が目指す. ズアセスメント、再アセスメント、早期アセスメントと再. 目的、メンバーの使命、無償であること、いつ、何回ぐ. 検討、自己アセスメントなどが含まれる。対象者の支援ニー. らいミーティングの機会を持つかなどが話し合われるが、. ズに関する情報を幅広く収集して、支援の必要性を明らか. メンバーが歓迎され、もてなされる環境を作り出すことに. にするものである。特に、対象者にとって切実なニーズで. よって、お互いの結びつきを強くすることができる。それ. ある、孤独感や孤立、活動や参加の機会の欠如などの問題. が、グループとしての活動を大きく助けることになる。こ. をも含めたアセスメントが重要とされる。. のホスピタリティは、最初のミーティングだけでなく、そ. 第3の機能は、支援サービスの調整である。NASCは、. の後のミーティングにおいても同様に重要であり、すべて. 対象者の支援ニーズのうち、政府による公的支援による対. のミーティングの中心的要素であるといえる。. 応に合致するものと、ほかのタイプの支援の可能性を探る. そして、最後の「 『支援の輪』を取りまとめるファシリ. ほうが良いものとを判断する。ほかのタイプの支援とは、. テーター役を決めること」に関しては、ファシリテーター. 地域ネットワークや近隣住民、コミュニティ、あるいは任. としての力量をもった人材を確保することが重要となる。. 意の支援者とのつながりによるものなどを含んでいるが、. その際に考慮すべきこととして、ファシリテーターとなる. NASCが実際にそのような非公的支援に関する調整までを. 人は、コミュニティにおいて、自然にそして容易に人と人. 行うことはまれで、主たる機能は、公的支援の対象である. をつなぎ、関係性を構築することができる人であることが. か、そうでないないかの判断にある。. 求められる。パーティなどで、顔見知りでない人同士を紹. 第4の機能は、支援のための予算管理である。NASCは. 介し、その人々に(歓迎され、仲間になれた)と感じさせ. 保健省の年間予算で、支援に必要な費用をどのように割り. ることができるような人である。家族がファシリテーター. 振るかについて検討、決定する責任を負っている。. を求めるなら、まず大切なことは、家族の価値観を分かち. このNASCの機能を明確に理解することは、障害のある. 合える人を探すことである。ほかの人の話の良い聞き手で. 人と暮らす家族にとって「グッドライフ」を実現するため. あり、人の長所に着目し、コミュニティの持つ豊かさを信. の重要事項といえる。セッションでは、NASCが持つ機能. じる人を探すようにするのがよいとされる。. の可能性と限界を客観的に評価し、NASCをどのように効. 5) 政府による障害者家族支援、及び後見人制度等の. 果的に活用するのがよいかや、「グッドライフ」の実現に. 法律制度の理解. 向け、公的支援ではニーズに対応しきれない場合に、家族. 「支援の輪」作りに関するセッションの後、ティータイム. がその実現のチャンスを増やすために何を学ぶ必要がある. を挟んで、2人のゲストを招き、政府による障害者家族のた. のかなど、支援システムの利用者として意識向上を図るた. めの公的支援制度、及び、障害者後見人制度や家族の財産. めの論点が示される。. 管理に関する義務について学ぶセッションが展開される。. また、セッションでは、Individualised Funding(略称. こ の セ ッ シ ョ ン で は、 ま ず、Needs Assessment and. IF、個人基金)の活用についても併せて説明される。IF. Service Coordination services( 略 称、NASC) に 関 す る. とは、障害のある人が支援サービスを購入するための基. 説明がなされる。NASCとは、ニュージーランド保健省の. 金であり、ニュージーランド保健省によって提供されてい. 委託を受け、障害のある人とのその家族のために障害のあ. る。NASCの査定により、障害のある人とその家族にIF資. る人の支援ニーズを調査し、公的支援サービスのコーディ. 金が割り当てられると、個人的に支援サービスを購入した. ネートをする業務を請け負っている機関である。ニュー. り、IFエージェンシーとともにその支援サービスを運営. ジーランドでは、障害により支援が必要な場合、必ず. したりすることができるようになる。. NASCに相談しなければならない。ニュージーランド保健. これまでのサービスモデルは、サービス提供事業者側に. 省のホームページによれば、2016年2月現在で、全国15か所. 財源管理が任されていたので、障害のある人及びその家族. に設置されている。 NASCが対象とするのは、 65歳未満の年. は、サービス提供事業者からあらかじめ示されているサー. 代層であり、 どの地域にあっても同じ4つの機能を果たす。. ビスメニューの中から選択することを余儀なくされてい. 最初の機能は、要支援資格の査定である。これは、支援. た。しかし、IFにより障害のある人及びその家族自身が. を申請してきた対象者が、健康省が定めるどの要支援階層. サービス財源を管理できる立場になると、サービス提供の. に該当するかを決定するものである。健康省が示す、「身. 主導権は障害のある人及びその家族側に移動することとな. 体障害、精神障害、知的障害、感覚障害、あるいは発達遅. る。こうして、障害のある人とその家族が、それぞれのニー. - 76 -.
(10) ニュージーランドにおける成人期きょうだい支援プログラム ズに応じて、必要な支援サービスを柔軟にアレンジして、. さらに、IFを障害のある人とその家族の「グッドライ. 利用することができるようになった。. フ」実現に向け、最大限に活用するため、同資料では、以. 本セッションでは、IFを活用することは、障害のある. 下の方略を使うことが有効だとしている。. 人及びその家族が、自ら支援サービスシステムを動かす主. 1 IFをうまく使っている人や家族とつながりを持つこ. 体となることを指すものであり、その判断に責任を負うよ. と。彼らと相談して、IF運用にかかる実際的で有効な示. うになるものであることが強調される。参加者に配布され. 唆を得ること。. る手持ち資料『個人基金について話そう』には、IFによ. 2 NASCの調査員やサービスコーディネーターと相談. る財源管理移行に伴って生じる責任について、以下の5点. すること。. が示されている。. 3 IFに本来備わっている、責任について考え、全部の. 第1点目は、 「グッドライフ」に関する明確な考えを持. 責務を引き受ける自信がないからといって、IFを選択肢. つ責任である。IFの仕組みそのものは、個々の障害のあ. から除外しないこと。多くの人が、適正にIFを使用する. る人と家族の「グッドライフ」及びその支援ニーズにつ. ようにその管理を助けてもらっている。. いて何ら判断もしないし、責任も持たない。よって、利. 4 「グッドライフ」の明確化を支援してもらう過程や、. 用者である個々の障害のある人と家族自身が,どのよう. IFの活用過程そのものにも、資金を活用すること. な生活を実現したいのか、そのための問題は何かを明確. 5 もし、IFの活用に移行しようと思っても、まだ全体. に把握した上で、初めてIFを利用することができる。. として準備が整っていないと感じたら、段階的に進める. 第2点目は、支援サービスをデザイン・計画する責任. 方法を考えること. である。それは以下の4つを含む。. (Talking about Individualised Funding“How to get. ・ 「計画・デザイン」 :どのような支援内容が、個人的ニー. the best out of Individualised Funding”より筆者要約). ズに対応しているか. 6) 将来に向かってなすべきことについての話し合い. ・「支援者募集」 :広告、名簿登載、インタビュー、経. 本セッションは、最終日である 3 日目の午後に行われる。. 歴照会、雇用契約、仕事内容など. それぞれの家族が、これまでのセッションの成果から家族. ・ 「人的資源管理」 :支援スタッフへの助言、観察・管理、. の在り方に関する考えを共有し、今後の自分たち家族がど. 就任、オリエンテーション、継続的訓練・育成、年次評. のように行動すべきか、その計画を立てることを目的とし. 価と賃金交渉、管理上の問題に関する業績、休暇時補填、. ている。. バックアップ体制作りなど. 参加者は、まずきょうだいグループと親グループに分か. ・「給与管理」 (これについては、多くの人が外部契約. れて話し合い、自分の考えをまとめる。その後家族ごとに. を選択している) これまでサービス提供事業者が行ってきたあらゆる業 務が、利用者である障害のある人とその家族の責任とな る。もし事が思うように運ばなかったとしても、もはや サービス提供事業者のせいにはできない。 第3点目は、技能を磨くことと時間を割く責任である。 IFの利用に伴い、利用者は不慣れな運用業務をこなすた めの技能が求められ、また時間も割かれることとなる。 第4点目は、必要なときのアシスタントを探す責任で ある。もし、費用支払い方法としてIFを利用する場合、 決定権を得ると同時に、問題が起きたときの解決責任も ついて回ることとなる。自分が創造的で、問題解決力の ある人間だとしても、時々はアシスタントを探す必要が あるかもしれない。 第5点目は、共同で動く仲間に関することである。IF を利用することで、関係者が「仲間」として一緒になる 機会が得られる。仲間のネットワークが、個人が自分の サービス体制をつくる責任をなし遂げる際の助けとなっ てくれる。 (Talking about Individualised Funding“What are some of the responsibilities associated with the shift?”より. 集まり、きょうだいと親が一緒になって、お互いの考えを 出し合い、今後の計画を立てる。自分たち家族のライフス タイルをつくり上げることが重視される。 セッションの中の家族ごとの話し合いの時間は、家族が ひとつになるための「時間の贈り物」と名づけられてい る。各自がこの3日間を通して考えたこと、話し合ったこ と等々、活動を通して得られた結果に基づき、今後どう行 動したいのか、取り組もうとしている計画や考えに焦点を 置いて、家族で分かち合う時間である。家族で自分の思い 描く「グッドライフ」のビジョンを分かちあい、そのビジョ ンを確かなものにするために共にどのように動くかを話し 合うため、各セッションで使ったいろいろな図や教材、個 人ポスターなどを使って考えを深めてもよい。 家族単位で話し合った後、必要に応じてティータイム休 憩を挟み、まとめの全体会へと移る。 全体会では、家族単位で分かち合った家族や同胞の将来 像について発表し合う。 最後に、本ワークショップに対する評価とまとめが行わ れる。その際には、地域における様々な活動の情報提供や、 仲間と情報交換ができる場所や機関の紹介などがなされる。. 筆者要約). - 77 -.
(11) 阿 部 美穂子 Ⅳ 考察. 本ワークショップで、きょうだいは同胞の生活を支える役. 1 Second Generation Workshopの位置づけ. 割を担うように導かれるが、それは単なる同胞の世話役割. ニュージーランドにおけるきょうだい支援は、 学齢児きょ. ではなく、同胞とその家族が積極的に社会参加し「グッドラ. うだいを対象としたプログラムと、18歳以上の成人期きょ. イフ」を実現するための役割である。よって、きょうだい. うだいを対象としたプログラムの2つが用意されているが、. は、この「グッドライフ」とはいかなるものかを何度も繰. この2つのプログラムは、目的を異にしている。前者は楽し. り返し考えるように迫られる。その過程で、 きょうだいは、. い活動をベースに同じ立場にある者同士が出会って人間関. これまでの同胞の能力を低く見積もり、 同胞の「できない」. 係を深めることと、きょうだいが直面する課題に関して、. ことにばかり目を向けてきた同胞観から離れ、「できる」. きょうだい同士で話し合うことを目的とする。 これは、きょ. ことや、強みを生かして社会的な価値ある役割を果たしう. うだいの心理的適応を高め、 エンパワメントを図るSibshopの. る存在としての同胞観を獲得することとなる。さらに、同. 持つ目的をそのまま継承するものである。筆者がTrueman. 胞の能力ではなく、その希望や夢に基盤を置いて、生活像. 氏とHeathcote氏に行ったインタビューによれば、その展開. を思い描き、実現のための方法を考える体験を繰り返すこ. スタイルもSibshopのものをそのまま導入している。2人は、. とで、能力前提主義から理想追求主義へと、きょうだいの. 学齢児きょうだいの活動プログラムには、親は参加しない. 人生観そのものを転換することとなる。このように、 本ワー. ことが重要であるとし、その理由として、きょうだい児が. クショップは、同胞のより良い生き方の模索の中で、 支援者. 親の前では決して本音を語らないこと、また、親からの心. としてのきょうだいを育成するのみならず、きょうだい自. 理的圧迫を感じ思い切り自由に遊ぶことができず、支援プ. 身の生き方そのものにも影響を及ぼすものであるといえる。. ログラムの本来の目的を達成することが困難となることを 挙げた。さらに、彼らの印象では、ウエリントン支部が関. (2)主体者としての自己決定と責任意識の醸成. 与する地域では、まだ自閉症スペクトラム障害などの発達. 本ワークショップでは、障害のある人とその家族自身が. 障害に対する理解啓発が十分とはいえず、学齢期にある. 「グッドライフ」を実現するために必要な支援を選択し、. きょうだいにとって、発達障害のある同胞との間に起こる. マネージメントする主体者であることが繰り返し述べられ. トラブルや、周囲の同胞に対する評価はストレスフルなも. る。保健省が提供する公的サービスであれ、「支援の輪」. のになっていると述べ、この時期のきょうだいにおける、. のように支援を目的に無償で集まった人々のネットワーク. Sibshop型の心理解放プログラムの重要性を指摘している。. であれ、活動やサービス内容の選択、支援体制の組織化は、. これに対し、これまで明らかにしてきたように、後者の. 障害のある人とその家族が責任を持って行う。すなわち、. Second Generation Workshopは、全く異なる活動スタイ. 支援サービスは受けるものではなく、個人の目的に応じて. ルをとっている。本ワークショップは、将来にわたり、自. 主体的にその内容を決定するもの、むしろ、支援を必要と. ら同胞の人生に積極的に関わろうとする意思のあるきょう. する立場にある者が新しく創造していくものであることが. だいが参加するプログラムであり、その目的とするところ. 示されている。. は、きょうだいが家族の一員として、親と、そして同胞と. このような考え方は、自らの意思にかかわらず、障害の. 力を合わせて、家族成員の「グッドライフ」実現に向け、. ある人の家族として生まれ、その影響に巻き込まれて生き. スタートを切るための力を獲得するためのものである。家. ることを余儀なくされたきょうだいの自己意識に新しい視. 族の一員であることが強く意識づけられる本ワークショッ. 点をもたらすものである。Meyer & Vadasy(1994)が示. プでは、きょうだいは親とともに家族の「グッドライフ」. すように、良しにつけ悪しきにつけ、幼少期からきょうだ. を実現する協働者であり、同胞にとっての重要な支援者と. いは同胞の存在から常に影響を受けて育ってきた。きょう. 見なされる。よって、プログラムには、親も共に参加して. だいは常に「受ける側」であり、 「二の次感を持つ」 (笠井,. おり、きょうだいと親は全く同じ活動を行う。. 2013)という指摘に見られるように、家族の一員として存. このように、Second Generation Workshopは、きょう. 在感を味わったり、自己決定したりする機会はなかなか得. だいが、その人生において、障害のある人の家族の一人と. られない状況であったといえる。そして、Sibshopのような. して、積極的に社会参加を果たす新しいステージへと自ら. 支援プログラムに見るように、心理的メンテナンスのため. 移行する、その第1歩を踏み出すための支援プログラムと. に、むしろ家族から離れて活動する機会を与えられる必要. 位置づけることができるであろう。. があった。しかし、本ワークショップでは、きょうだいは家 族の中にあって、自分に影響を及ぼす様々な要素を選び、. 2 Second Generation Workshopの特徴ときょ. 自らの生活を「コントロールする側」であることを学び取る. うだい支援における意義. ことができる。きょうだいは、同胞と同じ家族の一員とし. (1) 「グッドライフ」の明確化とその追求. て、自分たち家族がどのように生きたいかを自己決定し、. 本ワークショップでは、 繰り返し家族成員の明確な「グッ. 「グッドライフ」 を追求する主体者となることが示される。. ドライフ」のビジョンを持つことの重要性が指摘される。. さらに、「グッドライフ」追求の主体者には、責任が伴. - 78 -.
(12) ニュージーランドにおける成人期きょうだい支援プログラム うことも示される。すなわち、きょうだいは、自分自身と. である本ワークショップでは、きょうだいは、自立した人. その家族成員が確実に「グッドライフ」の実現に向かって. 間として、家族とそれを取り巻く支援者をマネージメン. いるかを確認しつつ、家族を取り巻く「支援の輪」及び、. トする主体者となることに主眼が置かれている。このよう. IFの適正利用による支援体制が適切に機能するように、. に学童期と成人期の支援プログラムの目的には大きな差が. マネージメントを行う責任を負う。このことは、同胞だけ. あるといえる。これに対し、きょうだいがどのようにこの. でなく、きょうだい自身の生活の自立性を促進するもので. ギャップを埋めて児童期から成人期へ移行していくかに. あるといえる。. ついては、明確にされていない。児童期支援プログラムを. このように、本ワークショップを通して、きょうだい. 長期的に継続していくことでそれが可能となるのか、ある. は、 そ れ ま で の 家 族 か ら 疎 外 さ れ た 関 係 性(Meyer &. いは、両者の過渡期にあると考えられる思春期後期にある. Vadasy,1994)を脱却し、自分と家族の生活をマネージ. きょうだいに新たな支援プログラムが必要なのか、もしそ. メントする、責任ある主体者として、家族とともに生きる. うだとしたら、その内容はどのようなものであるべきか等. ためのスタートを切ることとなる。. について、さらに検討していく必要があると考えられる。. (3)親とのビジョン及び行動プランの共有. (2)プログラム提供者の資質確保の問題. 本ワークショップでは、3つの主たる話題について、順. SIBSUPPORTNZTMは、きょうだいのためのきょうだい. 次話し合う場面が設定されている。主たる話題とは、家族. による活動であると位置づけられているように、支援プロ. の「グッドライフ」ビジョンつくり、家族成員のもつ役. グラムのコーディネートや運営は、先輩きょうだいが行っ. 割とその社会的価値の発見、そして、将来に向けた行動. ている。Morris博士へのインタビューでは、キャンプ活動. 計画の作成である。参加した全員がこれらの3つを明確に. の専門的技術を持つスタッフ以外は、すべてきょうだい当. できることは、ニュージーランド福祉施策の中心理念で. 事者であるとのことであった。それでは、このようなきょう. あり、本ワークショップの理念でもある“Enabling Good. だい支援プログラムを運営するきょうだいには、どのよう. Lives”を参加者が理解し、その実践に向けて行動を開始. な専門性が必要となるのであろうか。Parent to Parent で. するために不可欠である。. は、しかるべきトレーニングを受けた親のみが、 “Support. この重要な話し合い場面では、必ず、まず参加者はきょ. Parents” と し て の 資 格 を 得 て、 他 の 家 族 の 支 援 者 と. うだいグループと親グループに分かれて、同じトピックに. な る シ ス テ ム が 確 立 し て い る。 し か し、Trueman氏、. ついて話し合う。そして、その後きょうだいと親が家族ご. Heathcote氏へのインタビューでは、きょうだい支援につ. とに集まり、お互いに自分の考えを述べて、共有する手順. いてはそのようなシステムがあるわけではなく、きょう. をとる。この手順を踏むことで、きょうだいは最初に親の. だい当事者であり、かつ、行政や法律に専門知識を持つス. 考えに影響されることなく自分の考えを明確にすることが. タッフが運営に携わっているとのことであった。日本でも. できる。また、家族の重要な話題について、自分自身で考. きょうだい自身によるきょうだい支援活動が展開されてい. えたことを親に伝え、検討するという親子コミュニケー. る(藤井,2007)が、それを運営するきょうだいにどのよ. ションを体験することとなる。吉川(2002)は、きょうだ. うな資質が必要であるかについては、十分検討されてきて. いの中には、家庭の中で、同胞に関する率直な思いや考え. いない。特にSecond Generation Workshopのように、きょ. を話題にしてはいけないという暗黙のルールを感じなが. うだいの主体者意識と自立を強く求める支援プログラムに. ら、本音を言えずに育つ場合があることを指摘している。. おいては、支援者に求められる資質とその育成要件につい. すなわち、同胞に関して自分の考えを持つことや、それを. て明確化していく必要があると考える。. 親と話し合うことを避けてきたきょうだいもあると考えら れる。そのようなきょうだいにとって、本ワークショップ. 4 本研究の限界と今後の課題. で、家族の大切な事項や気がかりについて自分の考えを明. これまで述べてきたSecond Generation Workshopに関. 確にし、それを親子で話題にする体験を繰り返すことは、. する本研究の調査成果は、関係資料と主催者へのインタ. 親との新しいコミュニケーション関係を得て、親子の相互. ビューに基づくものである。また、本ワームショップは、. 理解を深める貴重な機会となると考えられる。. 予算が確保できたときに不定期に行われるものであるた め、SIBSUPPORTNZTMの運営スタッフは専任者ではな. 3 Second Generation Workshopにおける課題. く、その都度募集される。そのため、今回取材した主催者. (1)学童期支援プログラムとの接続の問題. が把握していない情報もあり、内容のいくつかについて. 先にも述べたように、SIBSUPPORTNZTMの学童期きょ. は、資料から推測して判断せざるを得なかったものもあ. うだい支援プログラムは、きょうだいが同胞や親の影響を. る。今後、実際のワークショップに参加してその内容を確. 離れて、 仲間と出会い、 心理開放を体験することに主眼が置. 認する必要がある。. かれている。 これに対し、 成人期きょうだい支援プログラム. また、Second Generation Workshopは、ニュージーラ. - 79 -.
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