中学校における絵画指導の想像と技能に関する研究
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(2) 目 次 はじめに. 1. 一一一一一・・一一・・一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一…. 第1章. 4. 学習指導要領の変遷にみる中学校絵画表現の課題一一…一一一. 第1節. 戦後の学習指導要領の改訂にみる中学校絵画表現の. 目指した学力 ・……一…一一一’一’t一一”’一一一’一一一“’一一一一一一‘一’一’一暉. 4. 1、昭和22年(試案)にみる絵画表現の目指した学カー一’. 5 5. (1)図画工作科の目標から. 8. (2)絵画表現の目指した学力から. 2.. 昭和26年年試案にみる絵画表現の目指した学カー一…12. (1)図画工作科の目標から (2)絵画衰現の目指した学力から. 一一一一一一一一一一・。一一一一一一一一一一一一一一・. P2. 一一一一一一一一一一一一 15. 3s 昭和33年度改訂にみる絵画表現の目指した学カ…一・21 (1)美術科の目白から (2)絵画裏現の目指した学力から. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. @21. 一一一一一一一一一一 24. 4、昭和44年改訂にみる絵画表現の目指した学カー一……27 (1)美術科の目標から (2)絵画表現の目指した学力1から. 5s. Q7. 一一一一一一一一一一一一一一一一 30. 昭和52年改訂にみる絵画表現の目指した学カー一……34. (1)美術科の目角から (2)絵画表現の目指した学力から. 6.. 一一一一一一.一騨覇輌一一一一一一一一』.一零辱岬一一“一一’. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・ 34. 一一”一一”一一一e”一’ 37. 平成元年改訂にみる絵画表現の目指した学カ…一……. (1)美術科の目標から (2)絵画表現の目指した学力から. 40. 4e. 44. 第2節. 学習指導要領の変遷にみる中学校絵画表現の課題一・一一一……47 1、絵画表現の目標に関する課題一一一一一一一。一一一・一・・一一一一一一一一・一…47. 2、絵画表現の教材(題材)の設定に関する課題。一一一一・一…・55.
(3) 3絵画表現の学習内容に関する課題・一一一一一一一・一・・一一一一一一一・一一・63. 第2章. 絵画表現の持つ課題を解決する上での理解とその方向一一’71. 第1節. 美術科(絵画表現)に関する意識調査に関して 一一・一…一一一一一・73. 1、調査のねらい …一一…一一……一…一一一一一………一一……・73. 2、調査の方法 …………一一……一………一一一…一一…・73. 3、対象 ………………。。一……一……一……一一……73 4、調査の実施と回収幽”一’一“一一e一’”一薗…。一一一一’”一…一…噂・73. 5、調査の内容・一……………一。。一。……一一一一一一一一…一。一一一・74. 第2節. 調査の分析と考察一一…一d一…一……一一一一一一・一・・一一一一一一・一d一…76. 1、絵画表現の目標に関わる生徒の期待と学カ 一一・・一一一一一…76 (D生徒の絵画表現への期待く調査!から). 曙一一一一一一一噂鹸.一一甲匿一… 76. (2)生徒の絵画表現の学ぶ目的意識く調査2から〉 (3)今後の絵画衰現に向けて. (4)これからの絵画裏現の方向. 一一一一一一一’・ 一一一一一一P一’82. “一一一t一一一一一“‘p一一”一一一一一一一一一一一一89. ’一一一一曹−一層『騨一}一一一一一一−… 91. 2、絵画表現の教材・題材に関わる生徒の期待 一一一一一一一一一一一一一94 (1)生徒の絵画表現の題材に関する好み(調査3から) 一一一一一一一一一一一一一94 (2)生徒の絵画表現の好みの方向(調査3周目). 一一一一一一一一一一一}一’99. (3)生徒の主題選択の余地への好み(調査3から). 一一一一一層一哺冒一… 99. 3、絵画表現の学習内容に関する生徒の意識一一一一一一一一一一一一一E102 (1)生徒の絵画表現lc対する楽しさ・困難さの意識(鋼査4.5から)一一一一一一一102. (2)生徒の絵画表現に対するプラス意識(調査4から) 一一一一一一一一一一105 (3)生徒の絵画表現に対するマイナス意識(調査5から) 一一一一一一一一一一一一 一.一107. (4)生徒の絵画表現におけるマイナス意識の方向(SU査 5から)一一一一一一一109.
(4) 第3節. 絵画表現の持つ課題を解決する上での視点と構想……一・一一i112 1、絵画表現の目標に関わる視点と構想 一一一一一一一一 ‘’ 一一一’”一一 112. 2、絵画表現の教材、題材に関する視点と構想一一・一……一 117 3、絵画表現の学習内容に関する視点と構想…一一一一一…。一130. 第3章. 生徒の心情を中核とした絵画表現の検証授業一一一……一130. 第1節. 検証授業の概要…一一一一…一一一一一一一一一一一…一130. 1、検証授業の対象一一一……一………一一一一一…一一一…… 130. 2、検証授業の設定の意図一…………。……一……… 131. 第2節 検証授業の提示と分析一……一………133 1、想像に関わる学力を重点に置いた「人物画」題材事例133 (1)「変身した宙分を描いてみよう」一……一……… 133 ①検証日時. 一’一一一一“’一‘’一一一曜…一…一一,一.一’一一一一一一一’一’e− 133. ⑫検証学級. ’.一一一”一’一一一一一一一一一一一一 “’ 一一一一p甲需一一一一一一一 133. ㊥題材. 一一一一・一一一・一t・一一一一。一一一・一一一一一一・一一一・・一・・一一一一一一一一一一 133. @目. 標. ◎検証授業の構想 ㊨材料・用具. ⑦学習の展開 ◎検証授業の分析. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一;一一一一一一一一一一一一. @ 133. 一一}一層一一一一一’ 一一一 一■層−.}一’一一一働,響−警 133 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・一一一一一一一・一一…一一・・。 134. 一一’”一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・・一一一一一一 135 一一価一冒一一.一働一一一 ”’ 一一一一一 一一一一一一一一一一一一一 136. ◎検証授業の作品の分析. 一聯一一一一一”一一一“’一一一一一’ ’P ” ” 一 t− 138. 〈2)「2人の自分を描いてみよう」………一一一…一一… 142 ①検言正臼8寺. .一.一一聯一一曽一一一一一一一一冒一一隔一一一一一■口,疇一一一一一一一. ⑫検言正学SK. 一一一一一一一一一一一一一一。一・一一一一喚一一一一一一一一。一.一一一一一. 142 142.
(5) ③題 材. 一一一一一一一一一一一一一一“一一一一’ ’“ ‘一 一一一一一一 ”’ 一一 一’一一’”一一. @目 標. 一一 ” ”’ 一一一一一一一’一’b一一 ”一一一 一b一一一一一一一一一一一一’. ⑤検証授業の構想. 一一一一一一。一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. ⑥材料・用具 ⑦学習展開. 9一一一,,一一一一単一 甲,,一一一一一一一騨一』 騨一一一畠匿一一一一一一一一‘’一一一b一一一一一一一一.’一一一’. ⑥検証授業の分析. 卿一一一一騨騨一噂一一一一一一一瞳一一一一一一一一響’. ⑨検証授業の作品の分折. .暫一一一一一一寧一一卿層一一一一一一一’. 142 142 i42 143. 144 145 147. 2、技能に関わる学力を重点に置いた「人物画」題材事例一・ 151 「私の好きな服(自作の絵の具で描いてみよう)」 ①検証日時. 151. ㊧検証学級. 151. ◎題 材. 151. ④目 標. 151. ⑤検証授業の構想. 151. ⑤オオ‡#.用具. 153. ⑦学習の展開. 154. ◎検証授業の分析. 155. ◎検証授業の作品の分析. 159. 第3節. 生徒の心情を中核とした絵画表現の可能性と課題…一…一・163. 終わりに. 舳一一一一,”一一一一p”“’;’一一“響一一一一一一一一一 “’ 一一一一一一一一一一一一一”…. 169. 一注記一 一一一一一一一一・一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一…. 171. 一参考文献及び参考資料一一…一一一一一一一一一。一一一一一一…一一一一一一一一一…・. 174.
(6) はじめに 我国の児童・生徒の成績が、IEA(学力国際比較調査*1>)で、 トップであったことは、教育界でも話題になったことである。 日本の児童・生徒の学力は、「世界一」だと言われ、 「日本に学 べ」というかけ声も聞こえてきた。. しかし、この調査で、計算力や記憶を中心とした問題に強いが、 その反面、応用力や理解力を必要とする問題には、弱いという指摘 もなされた。. 一方、中学生を取り巻く環境や実態に目を向ければ、進学・受験 という言葉に代表されるように、このような計算力や記憶を中心と した学力のイメージが、一般に定着し、塾産業等ますます加熱化の 傾向を示している。. また、中学生の実態として、 「いじめ」や「登校拒否」などに象 徴される生徒の心に関わる数々の問題も取りだたされている。. このような教育の動向に対して、マスコミを始めとして「知育偏 重の教育」だとする批判が高まる中、平成元年古版学習指導要領が 示された。. この学習指導要領のねらいとするところは、このような教育の現. 状を鑑み、これからの教育の方向を示すものであるが、以下の4点 がその指針として示されている。*2>. o心豊かな人間の育成 ()基礎・基本の重視と個性を生かす教育の充実 ○自己教育力の育成. ○文化と伝統の尊重と国際理解の推進. また、この指針を受けて美術科においては、次のような改訂の要 点が示された。. 一1一.
(7) 「造形活動を一層重視し、表現と制作の能力を伸ばすとともに、鑑 賞の活動を一層重視すると改めた*3)」と示されている。. この事は、今までの教育の反省に立ち、これからの教育の方向を 示すものであるが、「心豊かな人間の育成」や「個性を生かす教育 の充実」、「自己教育力の育成」の文言にみられるように、生徒の 心や態度を重視していこうとするものである事がわかる.。. また、美術科においては、「活動を一層重視し」の文言にみられ るように、生徒の活動を重視していこうとするものである事がわか る。. このような点から、今日の美術科の現状をみた場合、学習の主役 である生徒の心や態度を重視した学習展開がなされているかという 点では、いささか疑問が残る。. 具体的には、表現技術の定着が重視され、教え込み(作品主義) による、表現技術・技能の習熟を第一とする学習展開や逆に、想像 力を高めるという自由放任の学習展開が見られる点である。. この事は、学習指導要領に示された「生徒の心や態度を重視した これからの美術科の目指す方向」が、とらえにくく、難解である点 や教師の意識の変革がなされていないという見方もできるのではな いだろうか。. 言い換えれば、美術科における目指す学力(身につけたい力・育 てたい力)が、曖昧になっているということである。. 美術科の場合、芸術的側面というやや難解なとらえどこのない面 を有している為か、このような形に陥りやすさはあるが、今日の美 術科の目指す学力(身につけたい力・育てたい力)について今一度、 問い直してみる必要があると考える。. 本研究は、このような点で、生徒の心や態度を重視したこれから の美術科の目指す学力の方向を探りたいと考えたものである。 しかし、美術科の全領域(絵画分野、デザイン分野、彫刻分野、 工芸分野、鑑賞分野等)を網羅する事は不可能に近い。 その為、本研究は、絵画分野に焦点を当て検証してみる事にした。 一2一.
(8) また、本研究は、この目指す学力の方向を旧来の教師サイドの視 座でなく、生徒の視座で問い直し、これからの絵画表現(美術科の 教育)の方向を探ってみたいと考えたものでもある。 本研究の進め方として、次のような視点で考察を進める事にした。. 1、 戦後の美術科の教育、絵画表現の歩みの中から、その時代々 々に目指した絵画表現の学力の方向を探り、今日の絵画表現の. 持つ課題や問題点を明らかにする。 2、 美術科・絵画表現に対する生徒の意識を調査し、その分析結 果を基に、絵画表現の持つ課題や問題点を解決するための糸口 を導き出し、これからの絵画表現の方向を学力の視点で構想す る。. 3、 この構想を基に、検証授業を行い、その可能性や今後の課題 を検討する。. 以上のような視点に基づいて、研究を進める。. 3.
(9) 第1章 学習指導要領の変遷にみる中学校 絵画表現の課題 本章においては、戦後の絵画表現の歩みの中から、今日の絵画表 現の持つ課題や問題点が、どのような経過で生まれ、現在どのよう な事が、指摘できるのかを明らかにしたいと考える。 その手だてとしては、戦後の学習指導要領の改訂を手がかりに、 その時代毎1こ、美術科の教育・絵画表現が、どのような事を目指し ていたのか探ってみる事にする。. 更に、その戦後の絵画表現の歩みの中から、その時代毎に、中心 的な役割を果たしてきた事柄を抽出し、吟味・検討する事により、. 絵画表現の持つ課題(目標、教材、学習内容に関わる課題)を明ら かにしたいと考える。. 第1節 戦後の学習指導要領の改訂にみる 中学校絵画表現の目指した学力 まず、第1節では、戦後の学習指導要領に示された美術科及び絵 画表現の目標を手がかりに、その時代喧々に求めた絵画表現の身に つけたい力・育てたい力(学力)は、何かを探りたいと考える。. 更に、この絵画表現においては、どのような教材と指導に重点を 置き、この目指した目標を達成しようとしていたのかを探りたいと 考える。. 一一. @4一.
(10) 1、昭和22年(試案)にみる絵画表現の目指した学力. (1)図画工作科の目標から 昭和20年8月、日本が無条件降伏してから4,5年の間は、連 合軍の占領政策が押し進められ、日本の教育に大きな変化をもたら した事は、承知の通りである。. 美術科の教育においては、昭和22年3月31日に学校教育法、 同年5月23日に学校教育法施行規則が公布され、戦前の「図画」 と「工作」が統合されて、 「図画工作科」が誕生した。. また、それに併せて昭和22年3月20日に、学習指導要領(試 案)一般編、続いて、同年の5月21日に図画工作編が公布され、 「教科課程,教科内容及びその取扱い」の基準が、戦後初めて示さ れた。. 具体的には、昭和22年度版学習指導要領(試案)の一般編で、 次のように示されている。. 「これまでの教育では、その内容を中央で決め、それをどんな所で も、どんな児童・生徒にも一様に当てはめて行こうとした。だから どうしても、いわゆる画一的になって教育の実際の場での創意や工. 夫がなされる余地がなく、教育の生気をそぐようになっていた。 (中略)これからの教育では、このような点から改めなければなる まい*4>」. この事は、従来の知識注入主義の教育の反省に立ち、問題解決学 習を中心とする経験主義的な指導理念の転換を意味した内容*5>であ り、図画工作教育に於いても同様であったと思われる。. それでは、この当時の図画工作科は、どのような事を目指してい たのであろうか。. 昭和22年度版学習指導要領(試案)図画工作編を手がかりに三 一5一.
(11) 討を加えてみる事にする。. 昭和22年の学習指導要領(試案)図画工作編は、小学校・中学 校合本という形で示され、その冒頭で「図画工作の指導をする者が 心得ていなければならない最も大切な事は、図画工作教育は、何故 必要かという事である。*6)」と問われている。. また、「発表力の養成」 「技術力の養成」 「芸術心の啓培」「具. 体的・実際的な活動性の助長」の4項目が示めされ、次の3点が、 図画工作科の目標として示された。 1、自然物や入工物を観察し、表現する能力を養う。. 2、家庭や学校で用いる有能なものや美しいものを作る能力を養う 3、実用品や芸術品を理解し、鑑賞する能力を養う。. また、その具体的な養いたい能力として、次の16項目が示され た。. 1、「自然物や人工物を観察し表現する能力を養う。」に関して (1)記憶や想像により、各種の描画材料叉は粘土その他を使っ て自然や人工物を表現する能力。 (2>写生により、各種の描画材料叉は粘土その他を使って自然 や人工物を表現する能力。 (3)新しい造形品を創作し、構成する能力。 (4)豊かな美的情操。. (5)形や色に対する敏感な感覚。 (6>自然美の理解。. 2、「家庭や学校で用いる有能なものや美しいものを作る能力を 養う」に関して (1)家庭や学校で必要なものの設計・図案・装飾・製作の能力 (2)普通の工具・材料・設備を使いこなし、また、それを良好 な状態に保持する能力。 (3)環境の諸要素を最も有効に用いる能力。 (4)創作能力. (5)科学的・研究的・実践的態度 (6)有用なものや美しいものを作る際に、手まめに働き、誠実 に仕事をする態度。 (7)有用なものや美しいものを作る際に、共に働き、共に楽し む態度。 6一.
(12) 3、「実用品や芸術品を理解し鑑賞する能力を養う。」に関して (1>生活に必要な物品の実用価値や美的価値を理解し、また物 品相互の調和に注意し、適当に選択し、採りあわせる能力 (2)造形的な物品の賢明な使用者となる能力。 (3>絵画・彫刻・建築等を鑑賞する能力。 (4)豊かな美的情操。. その他、学習、発達、材料・用具、指導法など細部にわたり示さ れている。. それでは、この当時、図画工作教育に、どのような事が求められ ていたのか、この教科の目標を手がかりに検討してみることにする。. まず、一つめとして、図画工作教育の目標より、実生活に密着し た表現技術・技能を身につける力を重視していた点が考えられる。 具体的には、 「自然物や入工物を観察し、表現する能力を養う」. の大目標の内容にみられるように、表現する能力(表現技術・技能 の習得)を高める事に、重点が置かれていたものであったと考える。 また、 「家庭や学校で用いる有能なものや美しいものを作る能力. を養う」の大目標で扱われているように、直接実生活に役立っ力を 養う事が、求められていたと考える。. この事は、図画工作教育の果たす役割として、操作を中心とした 技能の習熟をねらいとした技術や技能を身につけ、「手まめに働く、. 誠実に仕事をする」など文言にみられるように、態度を強調したも のであると考える。. この背景としては、戦災による物資の不足・食料事情の極度の悪 化など、戦後の国内事情の混乱を配慮したのものである考える。. また、基本的な理念として、新教育制度の発足による「デューイ を中心とする経験主義の実質陶冶の学力を目指す教育思潮*7>」が根 底に流れているものあると考える。. 二つめとして、昭和22年試案における図画工作教育は、観察を 主とした描画の学習に、重点を置いたものであったと考える。 具体的には、 「自然物や人工物を観察し、表現する能力を養う。」. 一7一.
(13) の大目標で扱われているように、この当時の美術教育は、観察を主 とした描画を中心としたものであった事がわかる。. この描画を主とした図画工作教育の背景としては、まず、昭和2. 2年度版学習指導要領(試案)図画工作編は、戦前の国民学校の 「図画」と「工作」を統合したものであった。. しかも、それは、短期間の内に、充分検討がなされないままの公 布となり、内容的には、戦前からのものをを受け継ぐ形のものであ った点が挙げられる。卑ω. また、戦後の混乱期の中、国民は、物不足と貧困のどん底にあり、. 新教育制度が発足したと言えども、青空教室、すしづめ教育、壊れ た教室、設備の荒廃、資料不足など教育を取り巻く環境は、最悪の 状態でもあった。. このような状況下では、黒板とチョークで済む教科に主軸が置か れ、材料や用具を必要とする図画工作教育は、国民にとっても負担 が多く、実施するのに困難な状況であったと思われる。 このような点で、自然と紙と鉛筆による描画を主とする学習内容 がその中心的な役割を果たすものになっていった経過があったと考 える。. (2)絵画表現の目指した学力から 前述の「昭和22年度版学習指導要領(試案)図画工作編」の目 標項目を手がかりに大枠ではあるが、 「実生活に密着した表現技術. ・技能を身につけるための図画工作教育」と「描画を主とした図画 工作教育」であった事が予想された。. それでは、この当時の絵画表現は、どのようなことを目指そうと していたのか考えてみることにする。. 以下の内容は、昭和22年度版学習指導要領(試案)図画工作編 の中学校図画工作科の絵画表現に関わる指導内容*9>を示したもので 8一.
(14) ある。. (第7学年) 単元一描画. 1、指導目標. (1)主として静物描写によって、明暗・陰影について正しく、. 確実に表現する能力を養う。 (2)静物画の構図について研究させ、美的構成力を養う。 (3)細写によって、精密正確な観察力と描写力を養う。 (4)創痕によって、要点をつかむ力と、簡明な描写力を養う。 (5)創造力と美的情操とを養う。. 2、教材例 幾何刑体・紙辺・布・学用品(筆箱、絵の具箱など) 食器類及び炊事用品(茶碗、土瓶、やかん、鍋など) 遊具類・びん及びつぼの類・果物類・野菜類・草花・ 昆虫・魚貝の類・剥製の鳥・その他 3、描画材料 鉛筆・水彩絵の具を主とする。 4、指導方法 1、明暗・陰影の指導(1)(2)(3)詳細は略 2、構図の指導(1)(2)(3)(4)(5)(6)詳細は略. 3、細写・略写の指導(1)〈2)詳細は略. (第8学年) 単元一描画. 1、指導目標. (1)主として静物・風景の描写によって、陰影による色の変化. 遠近による形と色との変化を観察し、表現する力を養う。 (2)風景画の構図について研究させ、美的構成力を養う。 (3)省略について指導し、要点をとらえる力と描写力を養う。 (4)自然美を観察し、理解させる。 (5)創造力と美的情操とを養う。. 2、教材例 色紙・布・色彩の鮮明な単色の器物など. 建築物を主とした風景 並木・線路などのある風景、遠景・中景・近景の見える風 景、樹木その他 3、描画材料 鉛筆・水彩絵の具を主とする。 4、指導方法 一9一.
(15) 1、陰影による色の変化の描写 (1)(2)(3)詳細は略 2、遠近による形と色の変化の描写(1)(2>(3)(4)詳細は略 3、風景画の構図を研究する。(1)(2)詳細は略. 4、省略についての指導 5、鉛筆または水彩絵の具で、多数のスケッチをして、表現 力を次第に高める。. (第9学年) 単元一描画. 1、指導目標 (1)各種の基本練習を総合した描写練習をさせ、観察力と表 現力を養う。 (2)人物・動物などの描写練習もさせる。 (3)自然美を観察し理解させる。 (4)創造力と美的情操とを養う。. 2、教材例 静物・風景・建築物・植物・人物など 3、描画材料 鉛筆・水彩絵の具・毛筆と墨・ペン・その他 版画を課すのもよい。 4、指導方法 1、生徒の活動は生徒の程度、生徒の希望、土地の状況、学校 の設備等により、次のいずれかとする。 (1)題目・描写材料・描写様式等を一定して、研究練習する. (2)共同で研究練習する。 (3)各自任意に研究し練習する。. 2、各種の描写練習を色々と変えることをせず、類似の練習を 相当期間続ける。 3、鉛筆画・木炭画・鉛筆淡彩画・水彩画・毛筆画・版画・ス ケッチ・エチュード・絵画的表現・説明的表現・静物画・ 風景画・動植物画・人物画など実状に応じて取拾し、なる べく深く練習する。 この描画単元の内容項目から、以下のような事が考えられる。 まず、学年の発達段階を考慮し、観察を主とした描画を通して、表. し方に関する基礎・基本(表現技術・技能)を段階的に身につけさ せようとした目標であったものと考える。. 具体的に、次に示した第7学年の描画単元の「明暗・陰影に関す 一10一.
(16) る具体的な指導内容*ユω」は、その一例と見る事ができる。. 具体的な明暗・陰影の指導 (第7学年) (1)明るさ暗さについての感覚を鋭敏にし、描写力をつけるた. めに、鉛筆の濃淡によって、明度を段階的にかき現す練習 をする。. ・ (2)幾何形体、紙で作った多面体的のもの及び曲面からなるも. の、布しわ等を鉛筆で写生して、明暗・陰影の表現練習を する。この時、前に作った鉛筆による明度段階と、実物の 明るさ暗さとを比較対照して、明暗を観察する助けとする こともある。. ・ (3)以上の基礎練習をしてから、各種の対象について、描写練 習をする。 この学習内容は、明暗・陰影の指導の段階を示したものである。 このように、明暗・陰影を段階的に提示し、表現技術(表現力)を 確実に身につける学習展開がなされていた。. また、教材(題材)や学習内容において、第7学年では、描画の 内容を静物描写(明暗・陰影・構図)としている。. 第8学年では、静物・風景描写(陰影・遠近・構図)としている。 第9学年では、各種の基本練習を総合した描写としている。 この事は、この教材(題材)や学習内容が、どのように表したら よいかという表し方に関する描画の基礎的な造形要素の学習や表現 技術・技能の習得に重点が置かれているものであると考える。. また、これらは、描画の基礎・基本を段階的に練習し、応用へと 進む過程をたどる配列になっているものであると考える。. 以上の点から、この当時の絵画表現の目指した目標は、基礎・基 本を重視した訓練的な要素の強い教師主導のものであり、知的理解 や技術の習得、技能の習熟を第一の目的とした学力構造であったと みることができる。. 一11一.
(17) 2、昭和26年年試案にみる絵画表現の目指した学力. (1)図画工作科の目標から 昭和25年朝鮮戦争勃発以降、目本の景気は上向き、目ざましい 復興を遂げ、社会生活全体も向上しはじめた。それと共に戦時中、. 厳しい統制化にあった言論や出版の自由が認められ、数多くの出版 物や研究会が、各地で催され、教育界に置いても目ざましい進展が あった。. 特に、図画・工作教育に置いては、各種の教育研究団体が旗揚げ し、図画・工作教育分野では、まず「描画教育を中心とする美術民 間教育運動*iユ)」が盛んになり、全国各地で数多くの研究会や集会 が盛んに催されれるようになった。. このような時代背景の基、昭和26年改訂版学習指導要領(試案) が公布された。. この昭和26年改訂版学習指導要領(試案)図画・工作編のなか で、図画・工作教育の目標として、 「日常生活に必要な衣・食・・住. ・産業や造形文化についての基礎的な理解と技能とを得て、生活を 明るく豊かに営む能力・態度・習慣を養い、個人として、また社会 人としても、平和的、文化的な生活を営む資質を伸ばすことにおく *12). vの視点が示された。. また、これまでの表現技術・技能の習得を目指した図画工作教育 に、「生徒を個人としてできるだけ完成する手助けとして美術教育」 と「社会人及び公民としての完成の助けとしての美術教育*i3)」の 視点が示されたものでもある。. それでは、この当時の美術教育が、どのような事を目標として、 改善を図ろうとしていたのか考えてみる事にする。. 以下の内容は、 昭和26年改訂版学習指導要領(試案)図画・工 12 一.
(18) 作編「図画工作教育の一般目標*14)」の内容である。. 1、次の要項の指導によって生活に必要な造形品を選択する 能力を養う。. 1)色や形に対する感覚を鋭敏にする事 2)造形品を構成している材料の良否、構成方法の適否を判 断ずる事 3)造形品の美しさを理解する事 4)造形品の用と美との関係を理解する事. 2、次の要項の指導によって造形品を有効に使用する能力を 養う。. 1)造形品の用と美との関係を理解する事 2)色や形に対する感覚を鋭敏にする事 3)手を器用にする事 4)造形品を用、美両面から見て巧みに配置配合する技能を 持つ事 5)実験、実習を通して均衡・変化・統一・調和等を理解し これを実際のものに適応する技能を持つ事 6)公共物を大切に扱う態度・習慣を養う事 3、次の要項の指導によって造形品を創造する力を養う。 1)観察力を発達させる事 2)色や形に対する感覚を鋭敏にする事 3)創造力を発達させる事 4)美意識を発達させる事 5)表現の材料、用具の使用や表現方法を理解する事 6)表現技術を発達させる事 7)研究的、実践的態度を養う事 8)共同して仕事をする場合よく他人と協調する態度を養う 事. 9)資源を愛護する態度を養う事 10)表現活動の人生に対する意義を理解する事. 4、次の要項の指導によって、創造的な表現力を適応する能 力を養う。. 1)情緒の過度の緊張を和らげる事 2)余暇を有効に過ごす助けとする事. 5、次の要項の指導によって自然のよさや造形品を鑑賞する 力を養う。. 1)色や形に対する感覚を鋭敏にする事 2)美的情操を発達させる事 3)作品を構成する材料の良否、構成方法の良否を判断する 事. 4)自然のよさや作品に対して、そのよさを味わう態度を養 う事. 5)造形品を愛好し、よくできた作品や優れた技術を尊敬す 一13一.
(19) る態度を養う事 6)わが国の過去の美術作品を研究し、鑑賞して、色々な時 代の文化を理解する能力を養う事 7)外国の美術作品を研究し、鑑賞して、外国の文化を理解 する能力を養う事 以上の5っの目標は、互いに有機的な関連を持っているの で、個々独立したものではない。. まず、この昭和26年改訂版学習指導要領(試案)図画・工作編 「図画工作教育の一般目標」を教科の目標に示された「生徒の個入. としてできるだけ完成の手助けとしての美術教育」と「社会人及び 公民としての完成の手助けとしての美術教育」の視点で、検討して みることにする。. まず、個人の完成の手助けとしての美術教育の視点では、「色や 形に対する感覚を鋭敏にすること」の文言にみられるように感覚を 陶冶する目標が、強調されている事がわかる。. この事は、表し方を中心とした、これまでの表現する能力を養う 事を目標にした教育(表現技術・技能の習得)以外に、生徒の見方 ・感じ方などの美に対する感覚を陶冶する新たな目標が、示された ものと考える。. 次に、社会人及び公民としての視点では、今までの経験を主とし た実質陶冶を目指した目標から「情緒の過度の緊張を和らげる事、 余暇を有効に過ごす助けとする事」などの文言に見られるように、. 図画工作教育の目標が、一過性のものでなく生涯を通じて大切なも のであるとする人格形成の為の目標が、示されたと考える。. この目標が設けられた背景としては、戦後の日本経済の復興に伴 う社会生活の向上や民間美術教育運動の高まりや子供の描画発達な どの研究等*15)が、進んだ事によるものと考える。. しかし、この事は、先駆け的なものであり、一台目標の中身自体、. 昭和22年度版の学習指導要領(試案)図画工作編の内容を受け継 いだ内容も多く、図画工作教育の目標の中心は、表現力を高める為 の技術・技能の習得を目指したものであったと考える。 14 一.
(20) (2)絵画表現の目指した学力から. 前述の「昭和26年度版 学習指導要領(試案)図画工作編一丁 目標」を手がかりに大枠ではあるが、この当時の図画工作教育の新 たな目標の視点として、感覚を陶冶する見方や人格形成の為の見方 が生まれっつある事を示した。 それでは具体的に中学校図画工作科、絵画表現においては、どの ようなことを目指そうとしていたのか検討してみることにする。. 以下の内容は、昭和26年度版 学習指導要領(試案)中学校の 図画工作教育の目標*16)を示したものである。. 1、生徒を個人としてできるだけ完成する手助けとして 1)絵や図を描いたり、意匠を創案したり、物を作ったりする 創造活動を通して生徒の興味・適性・能力をできるだけ発. 展させる。 ①観察力を鋭敏にする事 ②色・形・質・量に対する感覚を鋭敏にする事 ◎美的情操を豊かにする事 ④表現の材料・用具・方法に対する理解を発展させる事 ⑤表現技能を展開させる事. a情緒の安定に役立っためとして b言葉では表現できない思想や感情を表現する手段として 2)日常生活を営むに必要な、造形品の実用価値や美的価値を 判断し、有効なものを選択する能力を発展させる事 ①造形品の色・形・質・量などが、その造形品そのものの存 在目的に一致しているかを判断する能力を発展させる事 ②造形品がよい材料で作られているか、構成方法が適当であ るかを判断する能力を発展させる事 ◎造形品が生活を明るく豊かにするための美しさを備えてい るかを判断する能力を発展させる事 ④新しく選択する造形品が、自分の持っている他の造形品と 調和するかどうか判断する能力を発展させる事 ⑤造形品の用と美との関係を理解する能力を発展する事 3)造形品を有効に使用する技能を発展させる。 ①生活に必要な造形品をその使用目的に十分合致するように 使いこなす技能を発展させる事。. 一15一.
(21) ㊧造形品の手入れ・保存・修理の技能を発展させ、造形品を 大切に使う態度や習慣を養う事。 ③造形品を巧みに配置配合する技能を展開する事。 4)美術品及び自然のよさを鑑賞する能力を発展させる。 ①美術品及び自然のよさを楽しむ態度を養う事 ㊧美的感受性を発展させ、豊かな情操を発展させる事 ◎美に没入し、一層高尚な美を鑑賞する能力を発展させる事 ④美術品や自然の美しさを大切にし、それを愛護する態度を 養う事. 5)前の各項と関連して、余暇を有効に過ごす為の興味や技能 を発展させる。. 2、生徒を社会人及び公民としての完成の手助けとして 1)創造的な表現力を社会生活に活用する技能を発展する。 ①創造的な表現力を家庭生活の美化・改善に活用する技能を 発展させる事。例えば、家具類の配置配合がよくできる事 、室内装飾ができる事、家の設計や模型を作る事、家具や 調度等の考案・制作ができること、家庭生活を能率的にし かも美しく送ることができる事など ②創造的な表現力を学校生活の美化・改善及び他教科その他 の学習活動の手助けとして活用する技能を発展する事。 例えば、校地や校舎を美化する事、学習用具を製作したり 美化する事、学校用具を改善する事、他教科やその他の学 習の助けとなる絵や図を描いたり物品を製作する事など ◎創造的な表現力を地域社会の美化・改善に活用する技能を1 発展する事。例えば、地域社会の美化・改善のための計画 を立てたり、その模型を作ったり、公園や緑地の設計をす る事など ④創造的な表現活動を対人関係の思想・感情の伝達技能とし て発展する事。例えば、社会生活上必要な絵やポスターを 描くこと、案内図を描く事、絵や製作物によって思想・感 情を表現する事など。. 2)人間の造形活動の意味を理解し、その価値を理解する能力 を発展する。. ①人間は、自然物にどのような加工をし、それを利用して生 活を明るく豊かにしているかの理解を発展する事 ㊤消費者の立場に立って、親切に作られたものに対する尊敬 の情を発展させる事。 ◎優れた作品や優れた技術を尊敬する情を発展させる事。 ④東西の過去及び現在の優れた美術品を通して国際の理解を 発展させる事。. 一16一.
(22) ⑤地域社会及び国としての美術文化の施設と美術作品保護の ための施設についての理解を発展させ、関心を高める事 3)造形の用具材料及び造形品の使用を通して公民として必要 な態度を発達させる。 ①造形品に必要な材料を資源として大切に使う態度を発達さ せる事 ⑪造形に必要な用具を公私の別なく大切に扱う態度や習慣を 養う事。. ◎共用の用具及び一般造形品を他人と協調して使う態度や習 慣を養う事。. 4)生徒の職業的な興味・適性・技能と経済的生活の能力を発 展させる助けとして ①生徒自身が美術的職業に対する適性や興味があるかを発見 したり、また美術に非常な興味と資質を持っている生徒が その技能をできるだけ伸ばすようにする事。 ◎造形作品の経済的価値に対する理解を発展させる事。 ◎商業美術、例えば、レッテル・ポスター・看板、店頭・店 内の装飾、包装などについて理解と技能とを発展させる事 ④商品の展示方法についての理解と技能とを発展させる事 ⑤誰にも必要な表現の有効な方法としての技能を発展させる 事。例えば、スケッチするとか、計画を簡便に図示表現す る事等(これはいかなる職業でも有用なものである). 以上、中学校における図画工作科の目標を挙げたが、これらの 諸目標は互いに有機的な関連を保っているもので、個々に独立 しているものではない。. 前述の「図画工作科の一般目標」でも触れたが、新たな視点とし て、感覚を陶冶する見方や人格形成の為の見方が生まれようとして いた。. それでは、絵画表現においては、どうであろうか。. まず、この絵画表現の目標項目から、生徒の興味・関心・適性・ 能力を考慮する見方がある事がわかる。. 具体的には、1)の目標で扱われている「創造活動を通して、生 徒の興味・関心・適性・能力をできるだけ発展させる」の文言にみ られるように、生徒の見方や感じ方を表現の中に取り入れる姿勢が 伺える。. 17 一.
(23) また、昭和22年試案においては、 「観察し表現する能力を養う」 と示されていたものが、今回の改訂では「観察力を鋭敏にすること」 の文言に見られるように、表現技術・技能の習得を目標とした能力 以外に、感覚を陶冶する目標が示されている事がわかる。. しかし、これは、先の一般目標でも触れたが、昭和22年試案の 示した表現技術・技能の習得を目指した絵画表現の学力の上に立っ ての改善である。. 従って、この目標項目全体は、昭和22年試案内容を受け継いだ ものであると考える。. 具体的には、絵画表現の目標項目の中に、 「表現の材料・用具・ 方法に対する理解を発展させる事、表現技能を展開させる事、造形. 品を有効に使用する技能を発展させる事、創造的な表現力を地域社 会の美化・改善に活用する技能を発展する事」などの技術や技能の 習得を目指す文言が多く見られ、表現技術や技能を主とする目標が、 その中心的な位置を占めている事によるものである。. それでは、具体的な絵画表現の学習内容においては、どのような 事が求められていたのか検討してみることにする。 以下の内容は、第1学年の絵画表現の学習内容*17)を示したもの である。. 第1節 表現教材. 「1描画」. 1、目 標 (1)描画の学習では、観察力を養い、色、形、質、明暗、陰影 、量などに関する感覚を鋭敏にする。 (2)描画の学習によって造形的な創造力を発展させ、言葉では 表現できない思想や感情を表現する手段を得させる。描画 の応用として、説明的、記録的に表現(構図)する能力を 展させる。 (3)描画の学習によって得た表現力を個人の生活や社会生活に 役立てるようにする。例えば、描画能力を余暇を有効に過 ごす助けとするとか、描画によって養われた美的操作を、 家庭生活・学校生活・社会生活などの環境の美化・改善に 役立てるようなものにする。 (4)美術的職業への興味と適性とを持つものには、これを伸ば 18 一.
(24) 第1学年(第7学年). 静 物 画. 〈静物画題材〉. 幾何模型・器物・器具・遊具・文房具・野菜・果物・花その 他を生徒の身辺から適宜選択させ、それを単独または組み合わ せて描く く表現材料〉. 鉛筆・コンテ・木炭などのような素描材料と水彩絵の具など のような彩画材料から、描くものに応じて適当なものを選ぶ。 〈表現様式その他〉 洋画風・写実風の表現様式を主とする。遠近による形の変化 や色の変化をある程度表現できるようにする。物の明暗・陰影 をある程度正しく表現する経験をさせ、物の質感表現にも注意 を向け始めるようにする。静物画の構図を変化があり統一があ るようにする幾らかの経験を得させる。 〈備考〉. 実際の学習に於いては、理解教材・技能熟練の教材との関連 を取り、ばらばらのものにならないようにする。 以下略. この内容以外に、描画の具体的な指導内容として「風景画」 「人 物画」 「動植物画」「説明的な描写」の5項目が学年の発達段階に 応じて指導内容が示されている。. この学習内容は、当時の絵画表現が求めた学力の方向を示すもの であると考えるが、以下のような事が考えられる。. その一つめとしては、観察を基にして、絵画表現の基本的な造形 要素の学習や表現技術の学習を通して感覚の陶冶を目指そうとして いたものと考える。. 具体的には、前回の昭和22年試案では、第1学年の静物画題材 において、鉛筆で明度段階を作り、それを実際の明暗の表現に生か すなどの系統的な学習過程を取っていた。. その点、今回の改訂は、「生徒の身辺から適宜選択させ、それを 単独叉は組み合わせて描く」の文言に示されているように、生徒の 興味関心を取り入れる教材(題材)設定をしている点がみられる。. ・一. @19 一.
(25) しかし、この教材内容は、 「理解教材」や「技能熟練の教材」の. 位置づけとなっており、基本的に、昭和22年試案の図画工作教育 を継承する形を取っているものと考える。 また、表現方法においては、 「洋画風・写実風の表現様式とする」. の文言にみられるように、様式が限定されたものなっている。. この事は、造形要素の理解や表現技術・技能の習得を表現様式で 固定することにより、目指す方向を明確に示そうとするねらいがあ るものと考える。. 以上の点で、この昭和26年度版試案における絵画表現は、生徒 の興味・関心を題材に取り入れた教材(題材)の設定がなされてい るが、これは、あくまでも絵画の基本的な造形要素の理解や表現技 術・技能を身につける手段としての位置づけであると考える。. 二つめとして、絵画表現が、人格の完成に貢献するものであると する見方が生まれてきている点が挙げられる。. 前回の昭和22年度版の試案においては、戦後の混乱期の中、時 代の要請もあり、実生活に役立っ「手先の器用さ」や「まめに働く」 などの直接的なものであった。. しかし、今回の試案の内容では、描画の目標にも示されているよ うに、 「描画の学習によって得た表現力を個人生活や社会生活に役. 立たせるようにする。例えば、描画能力を余暇を有効に過ごす助け とするとか、描画によって養われた美的情操を家庭生活・学校生活 ・社会生活などの環境の美化・改善に役立てる*18)」となっている。. この事は、将来にわたり生かす能力(資質)として扱われている ものであると考える。. 以上の点から、今までの絵画表現の学習内容(観察を主とした表 現技術・技能の習得を目指す学習や造形要素の学習)以外に、表現 活動を通して、豊かな情操を養うなどの人格形成のための見方が、 新たに生まれたものと考える。. 一20一.
(26) 3、昭和33年度改訂にみる絵画表現の目指した学力. (1)美術科の目標から 昭和33年に学校教育施行規則と戦後、第2回目の学習指導要領 の改訂が告示された。. この改訂は、今までの占領時代のものとは一変し、教育の理念や 教育の方法にわたり大幅な改訂が行われたものであった。. この背景としては、昭和31年(1956年)10月にソビエトの世界 初人工衛生スプートニク成功による、いわゆるスプートニクショッ クと呼ばれる科学技術教育の遅れを取り戻す*19>ことから始まり、. わが国の教育体制そのものを根本から変革するというものでもあっ た。. その具体的な現れとして、これまで中学校あった、図画・工作科 が廃止されて、新たに、美術科と技術・家庭科が生まれ、美術教育 にとって種々の転機を迎えることになった。 この事は、日本の産業の成長に即応する科学技術教育の向上を考 えての設置としているが、この新設に伴い美術科の教育は、学校教. 育法施行規則により最低授業時数の2.1.1とするものになり、 美術科の教育は、この期を境に大変やりにくくなり、工作教育の事 実上消滅など、大きな波紋を投げかけることになった。 また、今までの学習指導要領は、試案という形で示されていたが、. 今回の戦後、2回目のこの改訂は、法的拘束性を備えたものであり、 授業時間数を始めとして、学習内容等、大きな転機となった。 この改訂で、美術科の目標は、 「芸術性・創造性を主体とした表 現や鑑賞の活動に関するものに重点を置く*20)」と改められ、 「図. 法製図」や「工作」は、原則として省かれた。 それでは、この教科の目標を手がかりに、この当時の目指したも 一21一.
(27) のは何かを検討してみることにする。. 以下の内容は、昭和33年度版、中学校学習指導要領、教科の目 標及び各学年の目ec*21》を示したものである。. 教科の目標 1、絵画や彫塑などの表現や鑑賞を通して、美術的な表現意欲を 高め、創作の喜びを味わわせる。 2、色や形などに関する学習を通して、美的感覚を洗練し、美術 的な表現能力を養う。 3、わが国及び諸外国のすぐれた美術作品を鑑賞させ、自然に親 しませて、美術や自然を愛好する心情や鑑賞する力を養う。 4、美術の表現や鑑賞を通して、情操を豊かにするとともに、美 術的な能力を生活に生かす態度や習慣を養う。 以上の目標の各項目は、相互に密接な関連を持って、全体と して美術科の目標をなすものであるから、指導に当たっては 、この点を常に考慮しなければならない。. 各学年の目標及び内容 〈第1学年の目標〉 (1)小学校における学習経験の基礎の上に、一層美術的な創造性 を養う。 (2)小学校に引き続いて自由な構想力を伸ばすと共に、写生的な 表現力もあわせて養う。 (3)色や形などを美術的に処理する能力やデザインの能力の基礎 を養う。 (4)我国及び諸外国の絵画や彫刻などすぐれた作品に親しませ、 表現能力を養う事に役立たせると共に、すぐれた作品によさ を味わい楽しむ態度や能力を養う。 〈第2学年の目標〉 (1)第1学年における学習経験の基礎の上に、更に美術的な創 聴力を伸ばすと共に、基礎的な表現力や鑑賞力を養う。 (2)写生的な表現力を一層伸ばすと共に自由な構想力を伸ばす。 (3)第1学年における色や形などの基礎練習や美術的デザインの 学習経験を基にして、更に意図的に自分の構想をまとめ、こ れを表現する能力を養う。 (4)身近な生活環境を美術的に処理する態度や能力を養う。 (5)我国及び東洋諸国の絵画、彫刻、建築、工芸などの伝統的な 作品のよさや美しさを楽しむ鑑賞力を養うと共に、美術文化 に対する興味や関心を持たせる。 〈第3学年の目標〉 (1)第2学年における学習経験の基礎の上に、表現や鑑賞の力を 充実すると共に生活と美術ちの関係について関心を高める。 一22一.
(28) (2)表現に工夫をこらし、自信と自由感をもって表現する能力を 養う。 (3)第1学年や第2学年の色や形などの基礎練習や美術的デザイ. ンの学習経験の基礎の上に、これらを一層伸ばすと共に、総 合的に応用する力を養う。 (4)地域社会の環境美化に関心を持たせる。 (5)西洋の絵画、彫刻、建築、工芸などすぐれた作品のよさや美. しさを楽しむ鑑賞力を養い美術文化に対する関心を高める。 前述の教科の大目標でもわかるが、今までの表現技術・技能を習 得を目指した目標から、大きく変わり「芸術性や創造性を主体とす る」の内容になり、新たな視点に立っての考えが示された。. この「芸術性や創造性を主体とする」目標内容とは、どのような ものであろうか。. それでは、教科の目標(特に絵画表現に関わるものに焦点を当て) を手がかりに、その中心的な役割を果たすと思われる項目を抽出し てみる事にする。. 各学年の教科の目標項目に「学習経験の基礎の上に、一層美術的 な創造性を養う」の文言が見られる。. この「学習の基礎の上」とは、造形要素の学習や表現技術・技能 を身につける学習を拠り所にしているものと思われる。. 先の昭和26年試案において、表現技術の習得を中心とした「技 能熟練教材」と「知的理解教材」を通して、対象の見方・感じ方な どの感覚を陶冶していこうとする見方が示された。. この点で、今回の改訂は、この表現技術の学習と造形要素の学習 を基礎としてとらえ、その上に立って、創造性を養うねらいがある ものと考える。. 具体的には、 「自由な構想力を伸ばす」の文言に見られるように、. 今までにない絵画表現の目標が示されている。. この自由な構想力は、先にも述べた「学習の基礎の上」に立つも のであるが、そのねらいとするところは、発想や着想などの想像性 を培うものである。. この背景には、スプートニクショックに代表される時代の要請や. 一23一.
(29) 発想や着想を主とする創造性を重視した教育研究*22)など様々な要. 因が考えられるが、表現技術を中心とした今までの目標以外に、こ. の昭和33年改訂から想像に関わる目標の位置づけがなされたと考 える。. しかし、 「写生的な表現力も併せて養う」の文言に見られるよう. に、今までの表現技術・技能の習得や造形要素の学習を基に、感覚 の陶冶を目指した学力も求められていた事がわかる。. 以上の点から、昭和33年改訂における美術教育は、発想力を高 めるための想像に関わる学力が、今までの表現力(表現技術・技能 の習得、造形要素の学習及び感覚の陶冶)を高める為の学力に組み 込まれたものと考える。. また、学習の領域として、新たに「形や色などの基礎練習」の学 習が設定された。これは、絵画や彫塑、デザインという枠を越えて、 造形に関わる色や形の基礎的な学習を行うものである。. この背景としては、時代の要請による科学性や合理性、技術性を 求めたこの改訂の新たな展開とみる事ができると考える。. (2)絵画表現の目指した学力から それでは、絵画表現において、どのような事が目指されていたの か検討してみることにする。. 以下の内容は、昭和33年度版、学習指導要領に示された絵画表 現の内容*23)についてのものである。. 2、内 容. A表現 〈第1学年の絵画表現の内容〉. (印象や構想などの表現). 印象や構想などの表現を、以下写生による表現と構想に よる表現とに分けるものとする。第2学年及び第3学年の 場合も同じとする。. 写生による表現の指導においては、対象を観察し、対象 一24一.
(30) 物から受けた感動をとらえて表現する能力を養う。第2学 年及び第3学年の場合も同じとする。 構想による表現の指導においては、外界の対象や生活経 験、物語、詩などをもとにし、記憶、想像、空想など自由 に表現する能力を養う。第2学年及び第3学年の場合も同. じとする。. 小学校における学習経験の基礎の上に、第1学年におい ては、構想による表現の指導にやや重点をおくものとする (1)写生による表現. 生徒の必要な興味によって身近な自然や入門物の中から 美しさを見いだし、その印象を率直に表現させたり、対象 の形色を精密に観察して表現させたりする。 ア、絵画 (ア)表現題材は、身近な風景、動植物、人工物などとする。 (イ)表現材料は、鉛筆、コンテ、木炭、墨などの素描材料、. 水彩絵の具、パス類などの彩画材料その他から適宜選ぶ ものとする。. (ウ)表現方法は、素描的表現、彩画的表現、その他(版画な ど)とする。 (2>構想による表現. 記憶、構想、空想などによって、構想を自由に表現させ る。 ア、絵画 (ア)表現題材は、生活体験に関連のあるもの、科学的なもの 文学的なものなどとする。 (イ)表現題材は、鉛筆、コンテ、木炭、墨などの素描材料、 水彩絵の具、パス類などの彩画材料その他から適宜選ぶ ものとする。 (ウ)表現方法は、素描的表現、彩画的表現、その他(版画な ど)とする。 以下、略. *第2学年及び第3学年においては、「第1学年・第2学 年における学習経験の基礎の上に写生による表現を主と し、構想による表現も指導する。」. 先にも述べたが、大枠としてこの改訂は、表現力を高める為の技 術や知識理解を身につける目標以外に、構想力(想像力)を高める 目標が、新たに絵画表現の目標として位置づけられた。. それでは、具体的に、絵画表現において、どのようなものである か検討してみることにする。. まず、「印象や構想などの表現」の文言に示すように、生徒の心 一25一.
(31) の中に形づくられる印象や構想を重視していこうとする点が見られ る。. この内容は、先の「芸術性・創造性を主体とした表現」の大目標 を受けてのものであるが、具体的な内容を見る事にする。 先の絵画表現の内容に「印象や構想などの表現を以下写生による 表現と構想による表現に分けるものとする」が、示されている。. この内容でもわかるが、絵画表現の内容を二つに分けて考えている 事がわかる。. 具体的には、写生による表現は、昭和26年試案の観察を主とし た絵画表現の目標を受け継ぐ学習内容を示すものであると考える。 また、構想とする表現は、 「外界の対象や生活経験、物語、詩な. どを基にし、記憶、想像、空想など自由に表現する能力を養う」と 示されているように、生徒の想像(イメージ)を養う表現内容を示 すものである。. その具体的な教材として、 「生活体験、物語、詩、記憶、想像、 空想など」と示されている。. この事は、今までの表現技術・技能の習得を目指したもの以外に、 生徒の発想や着想を基にした構想する能力(想像に関わる学力)を. 養う事を示したものであると考える。. 1. また、絵画表現の学習内容として、第1学年では、構想による表 現を重視し、第2学年からは、写生を基にした表現を重視すること が示されている。. 具体的には、この指導書の中に「第2学年からは、写生による表 現に重点を置き指導する。また、第1学年の基礎的な写生による表 現を基礎にし、その美しさを表現したり、造形的に画面を処理する 事を工夫させる。画面上の構図、形、明暗、色彩の取扱いはもとよ り、理論的なものを意味するものではない。感覚的に画面を経営す ることである。*24>」と示されている。. この事は、昭和26年試案における感覚を陶冶する絵画表現の目 標を受け継ぐものであると考える。 一26一.
(32) しかし、先の美術科の目標でも示したが、この改訂で、 「形や色 などの基礎練習」の学習内容が、新たな領域として生まれた。. この「形や色などの基礎練習」は、絵画や彫塑、デザインという 枠を越えた、造形の基礎を学ぶものであるが、この時期を境に、絵 画表現の学習内容から、この形や色の学習が、削減されていく経過 をたどるものであると考える。. また、この昭和33年改訂を境に、絵画表現の枠組みが、観察を 基にした表現と構想(想像)を基にした表現の二分した考えが、生 まれたものと考える。. 4、昭和44年改訂にみる絵画表現の目指した学力. (1)美術科の目標から 昭和43年7月、小学校学習指導要領改訂告示、翌年4月、中学 校学習指導要領改訂告示、戦後3回目の改訂が行われた。 この指導要領の冒頭に「科学技術の進歩、高度経済成長の社会に 対応するための教育の科学化・現代化を目指して行われたものであ る*25)」と示され、前回の昭和33年の改訂を弾力化・効率化が図 られた。. 具体的には、今までの年間授業日数と一単位授業時間を「最低」 から「標準」へと改あ、生徒の負担を考慮し、学校や生徒の実態に 応じて適切に定めるなどの改善がなされた。. このような弾力的な改善の措置は、戦後の旧態依然とした画一的 な教育に対する反省の上に立ったものであるが、いわゆる「落ちこ 一27一.
(33) ぼれ」と呼ばれる学業不振児を更に効率的な系統的な学習展開によ り減少させようとするねらいがあったと思われる。. 一方、美術科において、この改訂は、特に授業時間の弾力的な扱 いが認められた事など、大きな意義を持つものであった。. それでは、このような昭和44年改訂における美術科の教育はど のようなことが求められていたのであろうか。. 昭和44年度版学習指導要領の目標を手ががりに検討してみる事 にする。. 以下の内容は、昭和44年改訂の教科の目標及び各学年の目標*2 6)を示したものである。. 美術科の目標 美術の表現と鑑賞の能力を高め、情操を豊かにするとともに、 創造活動の基礎的な能力を養う 各学年の目標 く第1学年の目標〉 (A)絵画表現を通して、美的直感や想像を素直に表現する能 力や態度を育てる。 (B)彫塑の表現を通して、立体的な美しさを味わわせ、それを 素直に表現する態度を育てる。 1. (C)デザインの学習を通して色や形などによる構成に必要な発 想力、美的感覚、デザインの基礎的な能力や態度を育てる (D)工芸の製作を通して、身近な材料を用いて手工芸品を製作 する楽しさ、使う楽しさを育てる。 (E)鑑賞の学習を通して、作品を素直に味わわせると共に自然 美や美術文化への関心を高める。. 〈第2学年の目標〉 (A)絵画表現を通して、美的直感や想像を一層効果的に表現す 能力や態度を育てる。 (B)彫塑の表現を通して、立体的な美しさを一層深く味わわせ それを効果的に表現する態度を育てる。 (C)デザインの学習を通して、計画的に色や形などによる構成 の能力を養い、用途に伴う条件を理解し、デザインする。 (D)工芸の製作を通して用途、材料、美しさを工夫して製作す る楽しさ、使う楽しさを育てる。 (E)鑑賞の学習を通して、作品の造形的な効果、作者の心情に 触れながら作品を見る能力や美術文化への関心を高める。. 一28一.
(34) 〈第3学年の目標〉. (A)絵画表現を通して、美的直感や想像を主体的に表現す能力 や態度を育てる。 (B)彫塑の表現を通して、立体的な美しさを主体的に表現する 能力や態度を育てる。 (C)デザインの学習を通して、計画的に色、形、材質などを総 合的に扱い、計画的に構成する能力を高め、デザインの社 会的意義を知り、デザインする。 (D)工芸の製作を通して、生活をより美しく豊かにするために 材料の特性を生かし、総合的に工夫して製作する。 (E)鑑賞の学習を通して、作品を主体的にみる態度や能力、生 活と美との関係に関心を持ち、美術文化への関心を高める. 前回の改訂では、教科の内容を「A表現」と「B鑑賞」の2領域 に大別してたが、この改訂では、 「A絵画」、「B彫塑」、「Cデ ザイン」、 「D工芸」、「E鑑賞」の5領域に再び分化され、版画 は、絵画領域に含む形となった。. このねらいとしては、前回の「印象や構想などの表現」や「色や 形などの基礎表現」、「美術的デザイン」では、領域が不明確であ り、色や形などの基礎表現などは、絵画やデザインにまたがり曖昧 になっている事への改善が図られたものと考える。 また、これまでの美術教育がともすれば、描画・デザインを中心 とした平面的なものに偏りがちであったことによる領域域の狭さや 新しく技術・家庭科が発足し、工作分野が中学校で削除されたこと による小学校の図画工作の教育課程との結びつきが薄れたことへの 改善が図られたものである。. このような点で、この改訂された昭和44年度版学習指導要領に 示された美術科の教育は、大目標の「創造的な基礎能力を養う」に 示されているように、前回の昭和33年改訂の内容を継承している ものと思われる。. また、領域を細分化し、目標を明確にしたねらいは、先に示した ように、前回の改訂では、不明確であった工芸分野の位置づけがな されたものと考える。 一29一.
(35) 一方、絵画表現において、この改訂は、造形要素の学習内容の点 で、大きな意味を持つものであると考える。 具体的には、前回の「色や形の基礎練習」の学習内容は、絵画、. 彫塑、デザイン等の枠を越えた基礎的な学習内容として位置づけら れていた。. しかし、今回の改訂は、この造形に関わる基礎学習を「デザイン 表現」の学習内容として位置づけがなされた。 この経過は、先にも述べた、学習内容の弾力化・明確化に伴い、 「色や形の基礎練習」の学習内容が、不明確な位置づけとなった事 によるものである。. この事は、デザイン表現と絵画表現との関連を図る中で、この色 や形などの造形要素に関する学習を行うもとしての位置づけである が、結果として、絵画表現の学習内容からこの色や形の造形に関わ る学習内容が、省かれていくものになったと考える。. (2)絵画表現の目指した学力から 前述のように、大枠ではあるが、この改訂は、各領域を分化し、. 何を学ぶのかを明確にするねらいあったと考えるが、それでは、絵 画表現においては、どのような事を求めていたのか検討をしてみる 事にする。. 以下の内容は、昭和44年度版学習指導要領、中学校美術編「各 学年の目標及び内容A絵画*27)」を示したものである。 各学年の目標及び内容 「A絵画」. 〈第1学年〉 (1)対象を観察して絵が描けるようにする。 ア、自然や身の回りのものの美しさを素直にとらえるようになる こと。 イ、対象の見方についてよく考え、表わし方の工夫をすること。 ウ、絵を描くことで、自然や身に回りの美しさをいっそう新鮮に 30 一.
(36) 感じるようになること。 (2)構想を基にして絵が描けるようにする。 ア、経験したこと、感じたこと、考えたことを基にして、豊かな. 発想をすること。 イ、主題をまとめ、考えを練り、表現したいことを鮮明にするこ と。 ウ、構想を生き生きと表し、表現の喜びを味わうこと。 エ、絵を描くことで、自分の感じや考えを確かめること。 (3)上記(1)及び(2)の事項の指導を通して、絵画表現の技能を伸 ばす。 ア、対象の形や色などをを全体と部分との関係でとらえて描くこ と。. イ、線や明暗、陰影によって、立体感や材質感を表すこと。 ウ、対象を大づかみに描き、また、精密に描くこと。 エ、表現の意図に応じて、材料や用具の特性を生かし、適切な表 し方を工夫して描くこと。. 〈第2学年〉 (1)対象を観察して絵が描けるようにする。 ア、対象の美しさを積極的にとらえるようになること。 イ、対象の見方についてよく考え、効果的に表す工夫をすること ウ、絵を描くことで、対象の美しさをいっそう明瞭に感じるよう になること。 (2)構想を基にして絵が描けるようにする。 ア、経験したこと、感じたこと、考えたことを基にして、豊かな. 発想をすること。 イ、主題を明確に決め、考えを練り、表現したいことの構想を鮮 明にすること。 ウ、表現の計画を立て、その成果を考えて、構想を明確に表すこ と。. エ、絵を描くことで、自分の感じや考えを明瞭にすること。 (3)上記(1)及び(2)の事項の指導を通して、絵画表現の技能を伸 ばす。 ア、対象の動勢をとらえて描くこと。 イ、形や色などの変化や統一を考えて、画面構成をすること。 ウ、表現の意図に応じて、材料や用具を選び、その特性を生かし. 、適切な表し方を工夫して描くこと。. 〈第3学年〉 (1)対象を観察して絵が描けるようにする。 ア、対象の美しさを主体的にとらえるようになること。 イ、対象の見方を深め、対象から受けた感情や考えを表す工夫を すること。 ウ、絵を描くことで、対象の美しさをいっそう深く感じるように なること。. 一31一.