〈Original Papers〉四半世紀に及んだ政治改革および政治主導の帰結とその展望--民主党政権崩壊の省察から
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(2) 18. MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.32(2013). を促 す た めの 政 治 改 革 に あ っ た とい え る。 そ して 、政 治 改 革 の進 展 か ら生 成 変 化(becoming)す. るかたち. で 案 出 され た の が 、 政 治 主 導 の確 立 とい うコ ンセ プ トで あ った 。 政 治 主 導 の 確 立 こそ 、 旧い 政 治 か ら新 し い 政 治 ヘ チ ェ ン ジす るた めに 必 要 不 可 欠 な 政 治 的 ア プ ロー チ で あ る と考 え られ た 。 しか しな が ら、 政 治 主 導 の確 立 に 「 情 熱 」 を注 い だ 民 主 党 で あ った が 、鳩 山 由紀 夫 の 表 現 を一 部 拝 借 す れ ば 、「 官 僚 の官 僚 に よ る官 僚 の た め の」官 僚 主 導 に対 峙 す る か た ち で政 治 主 導 を位 置付 け つ つ も、官 僚 支 配 を排 す る余 り、 政 治 主 導 を政 治 家 主 導 に綾 小 化 す る側 面 も あ った 。 また 、 首 相 官 邸 前 の 脱 原 発 デ モ が 盛 り上 が りを見せ る 中、 脱原 発 に傾 く民 意 を逆撫 で す るか の よ うに、 野 田佳 彦 首 相 は 大 飯 原 発 の 再 稼働 が 必 要 で あ る と判 断 した が 、 そ の 大 飯原 発 再 稼働 とい う野 田首 相 が 示 した 「 判 断 力 」 の 行使 こそ が 政 治 主 導 の 発 露 で あ る と ま で 喧伝 され るに 至 っ た。 官 僚 た た きや 民 意 と齪 齪 を き た す 民 主 党 の 政 治 主 導 の 在 り方 が 2012年 の衆 院 選 の結 果 に反 映 され た こ とは 間違 い な い で あ ろ う。 「 堅 い板 」を く り貫 く際 に 、 ウェ ーバ ー を して駆 使 す べ き で あ る と指 摘 した 、 「 情 熱 」 は独 り相 撲 の観 を 呈 し、他 方 、 「 判 断力 」は脱 原 発 の 流 れ 止 め よ うとす る原 子 カ ム ラ に配 慮 す る一 方 で 民 意 か ら離 反 す る判 断 に 帰 着 した 。結 局 、民主 党 政 権 で は 、「 堅 い 板 」 を く り貫 き新 しい 政 治 を拓 く とい う歴 史 的 使 命 を果 た す こ とが で きな か った 。そ の理 由 を 、 「 野党 慣 れ 」 してい た民 主 党 の政 権 運 営 能 力 の欠 如 に求 め た と して も 、そ の よ うな 総 括 か ら生 産 的 な 教 訓 を得 る こ とは で きな い で あ ろ う。 本 稿 は 、 民 主 党 政 権 の崩 壊 を省 察 しな が ら、 ま た そ れ を手 掛 か りと しな が ら、 冷 戦 終 結 後 、 お よそ 四半 世 紀 に 及 ん だ 政 治 改 革 、 お よび そ の 政 治 改 革 が 生 成 変 化 す る過 程 で 案 出 され た 政 治 主 導 の 確 立 と は、 一 体 何 だ っ た の か 、 この 点 に つ い て省 察 を加 え る もの で あ る。 そ こで 、 ま ず 始 め に、 民 主 党 政 権 の 崩 壊 を決 定 付 けた2012年12.月. の 衆 院 選 は 、 どの よ うな 政 治 的 意 味 を もつ もの な の か 、 そ の 点 につ い て の 分 析 を試 み. る。 次 に 、 四 半 世 紀 に及 ん だ 政 治 改 革 お よび 政 治 主 導 の 確 立 にっ い て 政 治 史 的 な振 り返 りを交 え なが ら、 ま た この 間 に お け る政 治 改 革 の 言説 を リー ドして きた21世 紀 臨 調 の 提 言 を交 え なが ら、連 綿 と続 い て きた 政 治 改 革 の延 長 と して 登 場 し、 官 僚 主 導 に 対 峙 す る政 治 主 導 の 確 立 を唱 導 した 民 主 党 政 権 の 政 治 史 的 な位 相 を確 認 した 上 で 、 民 主 党 政 権 が 失 敗 した 政 治 主 導 の 在 り方 につ い て省 察 す る。 最 後 に、 四半 世 紀 に及 ん だ 政 治 改 革 お よび 政 治 主 導 とは 一 体 何 だ っ た の か 、 そ の 帰 結 を総 括 す る とと も に、 今 後 を展 望 す る次 第 で あ る。. 2.政. 権 再 交 代:新. し い 政 治 か ら再 び 旧 い 政 治 へ. 冷 戦 終 結 後 の 約 四 半 世 紀 を顧 み る とす れ ば 、 わ が 国 に お け る 重 要 な 政 治 課 題 の 一 つ に 考 え られ て き た の は 、 政 治 改 革 で あ っ た 。 そ の 政 治 改 革 の 目的 は 、 グ ロ ー バ ル 化 が 進 展 す る 冷 戦 後 の 新 しい 政 治 の 世 界 に 対 応 す る た め に 、 新 た な 政 治 制 度 を構 築 し、 就 中 、 政 治 的 リー ダ ー シ ッ プ が 発 揮 し え る 、 政 治 主 導 の 確 立 を 饗 導 す る こ と で あ っ た 。 政 治 改 革 の 成 果 は 、2009年9.月. に 、 「新 しい 政 治 」 の 実 現 を 標 榜 す る 民 主 党 政 権. の 誕 生 と い うか た ち で 一 定 の 結 実 を 見 た 。 しか し な が ら 、 旧 い 政 治 を 担 っ て き た 自 民 党 政 治 に 辟 易 した 有 権 者 の 期 待 を 一 身 に 背 負 っ て 誕 生 した 民 主 党 政 権 で は あ っ た が 、周 知 の 通 り、そ の 政 権 運 営 能 力 は 乏 し く 、 政 治 主 導 の 確 立 に 失 敗 し、 期 待 外 れ に 終 わ っ た 。 そ の 代 償 は 民 主 党 に と っ て 大 き く 、2012年12.月. の 衆 議 院 選 挙 が 民 主 党 に 対 し大 変 厳 しい 懲 罰 選 挙 と な. り、 こ れ に よ っ て 民 主 党 は 、 結 党 以 来 は じ め て の 大 惨 敗 を 喫 す る こ と に な っ た 。 他 方 、 政 権 再 交 代 に よ り 発 足 し た 安 倍 晋 三 自 民 党 政 権 は 、 旧 い 自 民 党 政 治 を 超 克 し、 新 しい 政 治 に 相 応 しい 自民 党 と して 再 生 し、 か っ ま た 民 主 党 を超 え る 新 しい 政 治 を 指 向 して い る とは とて も 言 い 難 い 。 そ こ で 、 本 節 で は 、 民 主 党 政 権 の 崩 壊 を 決 定 付 け た2012年12月. の 衆 議 院 選 挙 の 結 果 に つ い て 分 析 しな が ら、 「 新 し い 政 治 」か ら 旧 い 政 治. へ 反 転 した 政 権 再 交 代 の 意 味 を 考 え て み た い 。.
(3) 19. 表2-1.は2000年. 以 降 に 行 わ れ た 、衆 参 合 わ せ て9回. も の で あ る 。2012年. の 衆 院 選 の 結 果 は 、2009年. うに 、 自民 党 の 圧 勝(ll9議. 席 →294議. 席)と. の 国 政 選 挙 の 結 果 を 、 自 民 党 と 民 主 党 と で 比 較 した. の 衆 院 選 と 比 較 す れ ば 、そ の 数 字 が 雄 弁 に 物 語 っ て い る よ. 民 主 党 の 大 惨 敗(308議. 席 →57議. し て お き た い の は 、 自民 党 と 民 主 党 の 議 席 占 有 率 の 差 で あ る 。2012年 61.2%に. 対 し 民 主 党 はll.9%で. あ り、 実 に5.1倍. 民 営 化 選 挙 」 の2005年. の 衆 院 選 は 、 自民 党 の 議 席 占 有 率 が. い う衆 議 院 議 席 占 有 率 を 獲 得 した が 、 そ れ で も. あ っ た こ と に よ り 、 両 党 の 議 席 占 有 率 の 差 は2.6倍. で あ っ た 。 ま た 、 「郵 政. の 衆 院 選 で 、 民 主 党 は 惨 敗 を 喫 し た が 、 こ の 時 で も 、議 席 占 有 率 は 自 民 党 が61.7%. で あ っ た の に 対 し民 主 党 が235%に を も た ら した2005年. あ っ た。 こ こ で注 目. と い う大 差 で あ っ た 。 「政 権 交 代 選 挙 」 と な っ た 前 回2009. 年 の 衆 院 選 で 、 民 主 党 は 衆 院 史 上 最 多 記 録 とな る64.2%と 自 民 党 の 議 席 占 有 率 が24.8%で. 席)で. 留 ま っ た た め 、 そ の 差 は2.6倍. の 「郵 政 民 営 化 選 挙 」(自 民 党 勝 利)と2009年. で あ っ た 。 そ うす る と 、 地 滑 り的 勝 利 の 「 政 権 交 代 選 挙 」(民 主 党 勝 利)は. 、. 議 席 占 有 率 で 見 る と 、勝 敗 結 果 は 逆 に な る が 、両 党 の 差 が2.6倍. とい う振 り幅 に 収 ま っ て い た わ け で あ る 。. と こ ろ が 、2012年. にま で 広 が った こ とが わ か る。. 表2-1.2000年. の 衆 院 選 で は そ の 振 り幅 は ほ ぼ 増 幅 し5.1倍. 以 降 の 国 政 選 挙 の 結 果(自. ①②の合計 年 2000. 2001. 2003. 2004. 2005. 2007. 2009. 2010. 2012. 衆参. 政党. 衆議院. 自民 党. 233. 48.5%. 民主党. 127. 自民 党. 参議 院. 衆議 院. 参議 院. 衆議 院. 参議 院. 衆議 院. 参議 院. 衆議 院. 議席 数 議席 占有率. 民 党 と民 主 党). ①衆院小選挙区/参 院選挙区 議席 数. 得票率. ②比例区. 議席 率. 得票数. 議席数 議 席率. 得票数. 177. 59.0%. 2496万41.0%. 56. 31.1%. 1694万. 28.3%. 265%. 80. 26.7%. 1681万27.6%. 47. 26.1%. 1507万. 25.2%. 64. 52.9%. 44. 60.3%. 2230万41.0%. 20. 41.7%. 2111万. 38.6%. 民主党. 26. 215%. 18. 24.7%. 1006万185%. 8. 16.7%. 自民 党. 237. 49.4%. 168. 56.0%. 2609万43.9%. 69. 38.3%. 2066万. 35.0%. 民主党. 177. 36.9%. 105. 35.0%. 2181万36.7%. 72. 40.0%. 2210万. 37.4%. 自民 党. 49. 405%. 34. 46.8%. 1969万35.1%. 15. 31.2%. 1680万. 30.0%. 民主党. 50. 41.3%. 31. 42.3%. 2193万39,1%. 19. 39.6%. 2114万. 37.8%. 899万. 得票率. 16.4%. 自民 党. 296. 61.7%. 219. 73.0%. 3252万47.8%. 77. 42.8%. 2589万. 38.2%. 民主党. 113. 23.5%. 52. 17.3%. 2480万36.4%. 61. 33.9%. 2104万. 31.0%. 自民 党. 37. 30.6%. 23. 31.5%. 1861万31.6%. 14. 29.2%. 1654万. 28.1%. 民主党. 60. 49.6%. 40. 54.8%. 2401万405%. 20. 41.6%. 2326万. 39.5%. 自民 党. 119. 24.8%. 64. 21.3%. 2730万38.7%. 55. 26.7%. 1881万. 26.7%. 民主党. 308. 64.2%. 221. 73.7%. 3348万47,4%. 87. 48.3%. 2984万. 42.4%. 自民 党. 51. 42.1%. 39. 53.4%. 1950万33.4%. 12. 25.0%. 1407万. 24.1%. 民主党. 44. 36.4%. 28. 38.4%. 2276万39.0%. 16. 33.3%. 1845万. 31.6%. 自民 党. 294. 61.2%. 237. 79.0%. 2564万43.0%. 57. 31.7%. 1662万. 27.6%. 11.9%. 27. 9.0%. 1360万22.8%. 30. 16.7%. 963万. 15.9%. 民主党. 57. 各 政 党 の 実 力 は 、 通 例 、 他 党 の 選 挙 協 力 の 程 度 が 低 い と思 わ れ る比 例 区の 得 票 数 で 推 し量 られ る。 と言 うの も、 特 に 自民 党 の 場 合 、 公 明 党 の 選 挙 協 力 に よ り、 衆 院 小 選 挙 区や 参 院 選 挙 区 にお い て 公 明 党 か らの.
(4) 20. MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.32(2013). 票 の 上 積 み が あ る か ら で あ る 。 そ こ で 、2000年. 以 降 行 わ れ た9回. の 国 政選 挙 の 中か ら、比 例 区 の得 票 数 を. 合 計 し 、 そ の 平 均 を 計 算 し て み る 。 す る と、 自 民 党 が1兆6744万 万 票(平 均1884万. 票(平. 均1860万. 票)、 民 主 党 が1兆6952. 票)、 と い う よ う に 、奇 し く も 両 党 は ほ ぼ 互 角 の 数 字 で あ る こ と に 気 付 く。 こ の よ う に 、. 自 民 ・民 主 両 党 の 実 力 を 比 例 区 の 得 票 数 で 推 し量 っ た と き 、世 紀 を 跨 い だ こ の10数. 年 間 の ス パ ンで 見 るか. ぎ り、 か つ て の 自 民 党 に よ る 一 党 優 位 体 制 は 終 わ り、 自 民 党 と 互 角 の 実 力 を も つ 民 主 党 とい う二 大 政 党 が 拮 抗 し た 状 態 に あ っ た と い え る(1)。 そ うす る と 、 民 主 党 か ら す れ ば 、 民 主 党 が 自 民 党 との 拮 抗 状 態 を 維 持 す る た め に は 、 少 な く と も 、 比 例 区 得 票 数 の 平 均 値(1884万. 票)を. で は 平 均 値 の 約 半 分 で あ る963万 し て3年4ヶ.月. 大 幅 に 下 回 っ て は な ら な い わ け で あ る 。 しか しな が ら、2012年. の衆 院 選. 票 に 激 減 した 。 平 均 値 が 半 減 した 意 味 が 奈 辺 に あ る か とい え ば 、 与 党 と. の 期 間 、 政 権 を 担 当 した 民 主 党 の 統 治 能 力 に 対 し、 有 権 者 に よ る 極 め て 手 厳 しい 業 績 評 価. が 込 め ら れ て い る と い う点 に あ る。こ の 点 こ そ が 今 回2012年. の 衆 院 選 にお い て 民 主 党 に対 す る懲 罰 選 挙 と. な っ た核 心 部 分 な の で あ る。 ま た 、2012年. の衆 院選 で 民 主 党 に とっ て 問題 な の は 、そ の選 挙 で の負 け方 で あ る。若 干 遡 るが 、惨 敗 を. 喫 した2005年. の. 「郵 政 民 営 化 選 挙 」 に お い て 、 民 主 党 は 比 例 区 の 得 票 数 で2104万. 民 党 の2589万. 票 に 対 し、 そ の 差 は 約485万. 票 で し か な か っ た 。 そ の 後 、2007年. 票 と巻 き 返 し に 成 功 し 、 政 権 交 代 を 果 た し た2009年. の 参 院 選 比 例 区 で2326万. の 衆 院 選 比 例 区 で は 民 主 党 史 上 最 高 の2984万. 得 した 。 と こ ろ が 、 政 権 を 担 うや い な や 民 主 党 は 、 瞬 く 間 に 失 速 し始 め 、2010年 首 相 の 唐 突 な 消 費 税 増 税 発 言 も あ っ て 、 そ の2984万 そ して 、2012年 し た2021万. の 衆 院 選 比 例 区 で は 、2009年. 票 を 獲 得 して お り、 自. 票 か ら1139万. の2984万. の参 院選 比例 区 で は 、菅. 票 も 減 ら し、1845万. 票 か ら 実 に2021万. 票 を獲. 票 に落 ち込 ん だ 。. 票 を も失 うに 至 っ た 。 こ の 喪 失. 票 が 、 民 主 党 に 対 す る有 権者 の 期 待 外 れ の 大 き さ を物 語 って い る。. そ れ に し て も 、 注 意 しな け れ ば な ら な い の は 、2021万 の 平 均 値(1845万 は あ る が 、i)無. 票)を. 票 と い う失 わ れ た 票 数 が 、 民 主 党 の 比 例 区 得 票 数. も上 回 る 膨 大 な も の で あ る 、 とい う点 で あ る 。 こ の 点 に つ い て は 、 推 察 の 限 りで. 党 派 層 の 多 く が 民 主 党 か ら離 れ た こ と 、i)2009年. 投 票 し た と い う、 政 党 支 持 と投 票 行 動 と の 乖 離 状 況 が 、2012年. の 選 挙 で は 自民 党 支 持 層 が 民 主 党 へ. の 選 挙 で は 縮 小 した こ と に 加 え 、ii)反. に 民 主 党 支 持 層 の 多 く が 他 の 政 党 へ 投 票 した こ と の み な らず 、iv)民. 対. 主 党 の 組 織 票 す ら一 部 瓦 解 した こ と. が 容 易 に 想 像 で き る 。 も しそ うな ら ば 民 主 党 の 負 け 方 は 、 極 め て 深 刻 で あ る とい え る で あ ろ う。 尚 、2012年. の 衆 院 選 比 例 区 に お け る 民 主 党 が 獲 得 し た963万. 票 は 、民 主 党 に残 され た 堅 固 な組 織 票 、お. よ び 踏 み 止 ま っ た 「忠 誠 票 」 と 「寛 容 票 」 と い え る で あ ろ う。 尚 、 こ こ で 言 う、 「忠 誠 票 」 と は 、 民 主 党 と い う政 党 ブ ラ ン ドへ 忠 誠 心 を 示 し投 票 す る 有 権 者 の 票 で あ り、 「寛 容 票 」 と は 、そ も そ も 一 度 の 政 権 交 代 く ら い で は 所 期 の 成 果 を 上 げ る こ と な ど 出 来 ず 、 寛 容 に も 、 継 続 し て 投 票 す る 有 権 者 の 票 で あ る 。2012年 衆 院 選 で 残 っ た963万 し2013年. の. 票 と い う票 の 意 味 は 、 民 主 党 の い わ ば 最 終 ラ イ ン で は な い か 。 そ うだ とす れ ば 、 も. の 参 院 選 に お い て963万. 票 を 大 幅 に 下 回 る 事 態 に 至 れ ば 、大 半 の 組 織 票 を は じ め 「忠 誠 票 」・「寛. 容 票 」を も失 い 、民 主 党 は 解 党 の 危 機 に 瀕 す る こ と に な る で あ ろ う。尚 、オ ー ソ ド ッ ク ス な 議 論 で あ る が 、 今 後 、民 主 党 は 議 会 内 に お い て 「 反 対 の た め の 反 対 」 に よ り第 二 党 と して の 存 在 感 を 回 復 す る の で は な く、 「政 府 の 政 策 に た い して は っ き り と した 、 そ して 見 る か ら に 十 全 で 見 通 しの き い た 代 案 を つ く る 以 外 に 世 論 を 納 得 さ せ る 方 法 は な い 」 の で あ り、 「反 対 党(opposition)」 あ る(ヨ. と して の. 「 鍛 え 直 し」 が 求 め られ る 次 第 で. ネ ス ク ・マ ダ リア ー ガ1983:152-154)。. 他 方 、 自民 党 は2012年. の 選 挙 で 圧 勝 し た も の の 、そ れ は あ く ま で も 民 主 党 に 対 す る 相 対 的 な 意 味 で の 勝. 利 で あ り、 よ く 見 る と 選 挙 結 果 の 内 実 は 厳 しい も の が あ る 。 自 民 党 は2012年 1662万. 票 で し か な か っ た 。 自 民 党 の 比 例 区 に お け る 平 均 得 票 数 が1860万. の 衆 院 選 比 例 区の 得 票 数 が. 票 で あ る か ら 、 そ れ よ り も198.
(5) 21. 万 票 少 な い 。 しか も 、2009年. の 衆 院 選 比 例 区 の 得 票 数1881万. 自 民 党 と して み れ ば 、 む し ろ 政 権 を 奪 わ れ た2009年. 票 よ り も219万. の 衆 院 選 の 方 が2012年. ま して や 、 小 泉 旋 風 が 巻 き 起 こ り 「郵 政 民 営 化 選 挙 」 に 圧 勝 した2005年 か ら927万. 票 少 な い 。 と言 うこ と は、 よ りも善 戦 した こ とに な る。. の 衆 院 選 比 例 区 得 票 数2589万. 票. 票 を も減 ら して い る 。 こ の よ う に 、 自 民 党 の 実 力 は 、 間 違 い な く 低 落 傾 向 に あ る と指 摘 す る こ. と が で き る 。そ れ が 、何 故 に 、2012年 の 衆 院 選 で 、自 民 党 が 圧 勝 し え た の か 。そ の 理 由 は 、小 選 挙 区 で43.0% の 得 票 率 に 対 し79.o%の. 議 席 率 を 得 て 地 滑 り的 な 勝 利 を も の に した か ら に ほ か な ら な い 。 ち な み に 、2005. 年 の 衆 院 選 で 、自 民 党 は 小 選 挙 区 で47.8%の. 得 票 率 に 対 し73.0%の. 議 席 率 で圧 勝 を引 き寄 せ た の で あ るが 、. 小 選 挙 区 に お け る 得 票 率 と そ の 議 席 率 と を 対 比 さ せ る と 、2012年. の 方 が 余 計 ドラ ス テ ィ ッ ク な 勝 利 結 果 を. 引 き 寄 せ た と い え よ う。 尚 、 小 選 挙 区 比 例 代 表 並 立 制 と い う選 挙 制 度 は 、 一 方 で 少 数 政 党 に も 配 慮 した 比 例 代 表 制 に よ っ て 、 各 政 党 の 実 力 が 如 実 に 明 らか に な る と と も に 、 他 方 に お い て 政 権 交 代 の 緊 張 感 が 漂 う小 選 挙 区 制 に よ っ て 、 選 挙 戦 に 勝 利 した 政 党 に 実 力 以 上 の 議 席 数 を 与 え 、 時 に 地 滑 り的 な 勝 利 や 劇 的 な 政 権 交 代 を 演 出 す る 、 と い うユ ニ ー ク な 制 度 設 計 が な さ れ て い る 。 但 し、 こ う した ユ ニ ー ク さ が 民 意 を 忠 実 に 反 映 した と は い え な い 選 挙 結 果 を 招 く 恐 れ が あ る 点 に 注 意 しな け れ ば な らな い 。 こ う して 、2012年 民主党の. の 衆 院 選 で 政 権 奪 取 を 果 た し た 自 民 党 で は あ る が 、3年4ヶ. 月 にお よぶ 野 党 時 代 に、. 「新 し い 政 治 」 を超 え 、 新 しい 政 治 の 世 界 に 相 応 す る 政 治 的 ア イ デ ィ ア お よ び 政 策 ア イ デ ィ ア を. 練 り上 げ た か と い う と 、 必 ず し も そ うで は な か っ た 。 そ こ で 選 挙 結 果 を 踏 ま え 安 倍 が 選 択 した ポ ジ シ ョ ン は 、祖 父 で あ る岸 信 介 政 権 時 代 の 「政 治 の 季 節 」 か ら、 「経 済 の 季 節 」 へ 国 民 の 関 心 を チ ェ ン ジ した 池 田 勇 人 政 権 に よ る 「国 民 所 得 倍 増 計 画 」 を 学 習 した か の よ う に 、 経 済 成 長 を 指 向 す る ア ベ ノ ミ ッ ク ス を 打 ち 出 す こ と に よ っ て 、 人 び と を 「ふ ん わ り」 と 包 み 込 み 、 デ フ レか ら脱 却 し、 再 び 経 済 成 長 の ト リ ク ル ダ ウ ン に 遍 く 預 か れ る か の よ うな 期 待 感 を 抱 か せ る こ と に あ っ た 。 しか し、 こ れ が 功 を 奏 し、 安 倍 政 権 は 発 足 以 降 高 い 支 持 率 を 維 持 し て い る 。 こ う して 日本 社 会 は 、3.llを. 契 機 に 昂 揚 した. 「絆 」 とい う社 会 的 連 帯 意 識. を 基 軸 に 据 え な が ら 持 続 可 能 な 福 祉 社 会 を 構 想 し え る 立 ち位 置 を 得 な が ら も 、 民 主 党 政 治 に 辟 易 した リア ッ ク シ ョ ン も 重 な り、 「当 座 の カ ネ に 目 が く らむ 」 が 如 く 再 び 利 益 誘 導 政 治 の 渦 中 へ 、 引 き 戻 され た か の よ うな 情 勢 に あ る とい え よ う。 ア ベ ノ ミ ッ クス へ 陶 酔 す る大 勢 に向 けて 、 寺 島 実 郎 は. 「か く も 日本 人 は 軽 薄 だ っ た の で あ ろ うか 」 と 憤. り を 隠 せ ず 、 「歴 史 は ア ベ ミ ッ ク ス に 、呪 術 経 済 が 践 雇 し た 時 代 と い う評 価 を 与 え る で あ ろ う」 とカ を 込 め る(寺. 島2013a:34、. 寺 島2013b:36)。. な る ほ ど確 か に 、 民 主 党 政 権 の 失 敗 が 四 半 世 紀 に お よ ぶ 政 治 改 革. や 新 し い 政 治 の 幻 想 を 消 し去 る と 、 一 転 し て 、 喪 失 した 故 郷 へ 舞 い 戻 る か の よ う に 、 安 定 的 な 自 民 党 政 権 へ の 回 帰 を 指 向 しつ つ 、 あ た か も ア ベ ノ ミ ッ ク ス と い う妖 怪 に 取 り慧 か れ 、 経 済 成 長 に 期 待 を 膨 ら ま せ て い る時 代 風 潮 が 漂 って い る。 思 うに 、 安 倍 政 権 の ス タ ン ス は 、 旧 い 政 治 へ. 「日本 を 取 り戻 す 」 こ と を そ の ミ ッ シ ョ ン と し、 原 発 の 再. 稼 働 や 輸 出 に 熱 心 で あ り、 ナ シ ョナ リズ ム と 新 自 由 主 義 お よ び. 「土 建 国 家 」 を 重 ね 合 わ せ た 、 い わ ゆ る 自. 民 党 右 派 政 権 に位 置 す る と 考 え られ る 。 す で に 政 界 か ら 引 退 して い る 野 中 広 務 で は あ る が 、 そ の 安 倍 政 権 に 対 し、 「尖 閣 を め ぐ る 中 国 と我 が 国 の 対 立 は 国 民 に 非 常 に 不 安 感 を 与 え て い る 。近 隣 諸 国 との あ り方 よ り も 、 イ ン ド、 ア フ リカ に 手 を 伸 ば し、 原 子 力 の トッ プ セ ー ル ス マ ン の よ うな こ と を や る の は 、 ア ジ ア の 周 辺 諸 国 の 平 和 を 保 つ た め に 大 変 恐 ろ しい 」 と批 判 した と 伝 え ら れ て い る(『 朝 日新 聞 』2013年6.月5日)。 安 倍 が 従 軍 慰 安 婦 問 題 の 河 野 談 話 や 植 民 地 支 配 と侵 略 戦 争 に 関 す る 村 山 談 話 を 否 定 しつ つ 、 日米 同 盟 の 再 強 化 を 唱 え ア メ リカ に 対 す る 依 存 度 を 深 め る 姿 勢 は 、 白井 聡 が 指 摘 す る 、中 韓 に は 「 敗 戦 の 否 認 」を 続 け 、 米 国 に は 従 属 す る と い う 「永 続 敗 戦 」 の 体 現 に ほ か な ら な い(白. 井2013)。.
(6) 22. MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.32(2013). も し、安 倍 が 主 張 す る よ うに 、96条 の憲 法 改 正 規 定 を緩 和 し、 い わ ば 憲 法 の 外 堀 を 埋 め た 上 で 、本 格 的 な 憲 法 改 正 に 着 手 し、 自民 党 の 「日本 国 憲 法 改 正 草 案 」 を コ ピー した 新 憲 法 に よ って 基 本 的 人 権 を制 約 ・ 規 制 す る もの な らば 、 そ こに 四半 世 紀 とい う時 間 をか けた 政 治 改 革 が 、 予 期 せ ぬ 歴 史 の 逆 説 を招 来 す る こ とに な りか ね な い 。 政 治 改 革 は 、 自民 党 政 治 を超 克 し、 二 大 政 党 が 切 磋 琢 磨 し競 い 合 い な が ら、 新 しい 政 治 の 世 界 を拓 く こ と を志 向 した。 しか しな が ら、 そ の 改 革 が 、 い わ ば 旧い 政 治 へ 右 旋 回 す る とい う誠 に皮 肉 な帰 結 に至 る公 算 は決 して 低 くな い 。 も し、 四半 世 紀 に及 ぶ 政 治 改 革 が 国 家 権 力 に よ る人 権 の 制 約 に帰 着 す る な らば、 こ れ ま で に 費 や した 政 治 的 努 力 は 徒 労 に終 わ る とい え るで あ ろ う。. 3.政 治 改 革 お よ び政 治 主 導 に お け る 民 主 党政 権 の位 置 民 主 党 政 権 が 主 唱 した 政 治 主 導 は 、2009年 の 政 権 交 代 の 際 に民 主 党 の イ ニ シア テ ィブ に よ って 始 ま った もの で は な い。 そ の 端 緒 を開 い た の は 、 長 期 政 権 を維 持 して きた 自民 党 で あ った 。 そ の 起 点 を顧 み る と、 奇 しく も冷 戦 が 終 結 す る1989年 で あ った 。それ 以 降 、グ ロー バ ル 化 の 進 展 とい う国 際 政 治 経 済 上 の環 境 変 化 に 、 主 権 国 家 的 に対応 す るた め に重 ね られ て きた 、 政 治 改 革 の議 論 お よび そ の 具 体 的 な 取 り組 み の 中か ら、 政 治 主 導 の確 立 とい う課 題 が 迫 り上 が っ て き た とい え る。 そ う した政 治 改 革 の 流 れ(stream)に. 乗る. か た ちで 、 民 主 党 の 唱 え る政 治 主 導 の確 立 が位 置 す るわ けで あ る。 本 節 は 、 民 主 党 政 権 の 崩 壊 が 政 治 改 革 と政 治 主 導 の確 立 に如 何 な る帰 結 を もた ら した の か 、 この 点 につ い て省 察 す る。. 3.1.小 選 挙 区 制 と い う経 路 依 存 性 政 治 改 革 は 小 選 挙 区 制 の 導 入 か ら 始 ま っ た 。 小 選 挙 区 制 と い う選 挙 制 度 改 革 こ そ 、 政 治 改 革 の 起 点 と な り、 そ の 後 の 政 治 改 革 の 方 向 性 を 規 定 して い く と い う意 味 で 、 振 り返 れ ば 理 解 で き る よ う に 、 四 半 世 紀 に 及 ぶ こ と にな る政 治 改 革 に一 定 の 筋 道 、 す な わ ち経 路 依 存 性 を与 え る もの で あ った 。 小 選 挙 区 制 導 入 と い う問 題 提 起 は 、選 挙 制 度 改 革 を 実 現 した 細 川 連 立 政 権 に 遡 り、1988年 ク ル ー ト事 件 と い う贈 収 賄 事 件(い. わ ゆ る 「政 治 と カ ネ 」 の 問 題)が. に 発 覚 した リ. 直 接 的 な 契機 とな った 。 リクル ー ト. 事 件 が 自民 党 に与 えた シ ョッ クは 大 きか っ た 。 立 件 され た藤 波 孝 生 元 官 房 長 官 以 外 に も、 竹 下 登 首 相 は じ め 、 宮 沢 喜 一蔵 相 、 小渕 恵 三 官 房 長 官 、 小 沢 一 郎 官 房 副 長 官 、 安倍 晋 太 郎 自民 党 幹 事 長 、 渡 辺 美 智 雄 自民 党 成長 会 長 、 中 曽根 康 弘 元 首 相 、 橋 本 龍 太 郎 元 運 相 、森 喜 朗 元 文 相 、 お よび 加 藤 紘 一 元 防 衛 庁 長 官 な ど、 自 民 党 の 大 物 議 員 ヘ リ ク ル ー ト株 が 譲 渡 さ れ て い た こ と が 明 ら か に な っ た 。 ロ ッ キ ー ド事 件 に も 比 肩 す る 贈 収 賄 事 件 に 発 展 した リ ク ル ー ト事 件 の 衝 撃 を 受 け 、 自 民 党 は 、1989年5.月23日. 、 『政 治 改 革 大 綱 』 を 発. 表 し、 「リ ク ル ー ト疑 惑 を き っ か け に 、 国 民 の 政 治 に た い す る 不 信 感 は 頂 点 に 達 し、 わ が 国 議 会 政 治 史 上 、 例 を み な い 深 刻 な 事 態 を む か え て い る 」(自 民 党1989:3)と. い う危 機 意 識 を 持 ち な が ら、『政 治 改 革 大 綱 』. を 通 じ 政 治 改 革 を 提 起 した 。 そ の 『政 治 改 革 大 綱 』 の 発 表 か ら 四 半 世 紀 が 経 過 し た 時 点 で 、佐 々 木 毅 は 改 め て 、 「政 治 倫 理 問 題 を 政 治 家 個 人 の 問 題 に 限 定 す る そ れ ま で の 議 論 か ら、 選 挙 制 度 の 改 革 とい う制 度 論 へ と展 開 し、 しか も 政 治 資 金 制 度 の 大 改 正 と 一 体 で 処 理 す る と い う重 要 な ア ジ ェ ン ダ ・セ ッ テ ィ ン グ を 行 っ た 」 と評 価 して い る(佐 木2013:12-13)。. 々. 以 下 に 引 用 す る 『政 治 改 革 大 綱 』 の 一 節 は 、 少 々 長 く な る が 、 そ の 後 の わ が 国 の 政 治 改. 革 の 方 向 性 が 、 中 選 挙 区 制 を 見 直 し、 代 わ っ て 小 選 挙 区 制 の 導 入 に 踏 み 切 る とい う選 挙 制 度 改 革 か ら着 手 さ れ る こ と に な る の で 、 今 日の 時 点 で 改 め て 読 み 返 す と 、 大 変 興 味 深 い と こ ろ が あ る 。. 政 治 改 革 の 柱 とな る主 要 課題 お お くは 、 い ず れ も 中選 挙 区制 の 見 直 しと分 か ちが た い 関係 に あ る。 し.
(7) 23. た が っ て わ れ わ れ は 、政 治 改 革 の根 本 に この 問題 をす え、現 行 中選 挙 区制 の抜 本 的 な見 直 しをお こ ない 、 あ らた な 選 挙 制 度 へ の移 行 をめ ざす 。 中選 挙 区 制 下 にお い て は 、 政 党 本位 で は な く個 人 中心 の 選 挙 とな りが ちで あ る。 多 数 党 を め ざす か ぎ り、 同 じ政 党 の な か で の 同 士 打 ちは さ け られ な い 。 この こ とは 、 日常 政 治 活 動 や 選 挙 運 動 の 重 点 を政 策 以 外 に お く傾 向 に拍 車 をか け、利 益誘 導 の 政 治 や 、 後 援 会 組 織 の 維 持 と膨 大 な有 権 者 へ の 手 当の た め、 多額 の金 が か か る選 挙 を生 む 原 因 とな っ た 。 さ らに、 これ らが 高 じ、 政 治 腐 敗 の 素 地 をま ね くな ど、 国 民 の 代表 と して行 動 す べ き政 治 家 の 資 質 、 活 動 の か な りの 部 分 をそ こな うにい た っ て い る。 一 方 で 、 この 制 度 に お け る与 野 党 の 勢 力 も永 年 固 定 化 し、 政 権 交 代 の 可 能 性 を見 い だ しに く く して い る。こ うした 政 治 にお け る緊 張感 の 喪 失 は 、党 内 にお い て は派 閥 の公 然 化 と派 閥 資 金 の肥 大 化 を さそ い 、 議 会 に お い て は 政 策 論議 の 不 在 と運 営 の硬 直 化 をま ね く な ど、 国 民 の 視 点 で な され るべ き政 党 政 治 をほ ん らい の 姿 か ら遠 ざけ て い る。 選 挙 区制 の 抜 本 改 革 は 、 現 行 制 度 の な か で 永 年 過 半 数 を制 して きた わ が 党 に と って 、 痛 み を ともな う もの で あ る。 しか しわ れ わ れ は 、 国 民 本位 、 政 党 本位 の 政 党 政 治 を実 現 す るた め、 小 選 挙 区制 の 導 入 を 基本 と した選 挙 制 度 の 抜 本 改 革 に と りくむ 。 そ の さい 、 少 数 世 論 も反 映 され る よ うに比 例 代 表 制 を加 味 す る こ と も検 討 す る」(自 民 党1989:7-8)。. この よ うに 、『政 治 改 革 大 綱 』は 、ロ ッキー ド事 件 や リクル ー ト事 件 に ま で発 展 す る 自民 党 の 金 権 腐 敗 体 質 を払 拭 す るた め には 、 選 挙 制 度 の 改 革 が 不 可 欠 で あ る と認 識 し、 政 治 改 革 の 柱 に、 従 来 の 中選 挙 区制 を 見 直 し、小 選 挙 区制 の導 入 を提 唱 した の で あ る が 、そ れ が発 表 され て ま もな く、1989年6月3日. 、竹 下 登. 内 閣 は 総 辞職 した 。 竹 下 の 後継 に 宇 野 宗 佑 が 指名 され た もの の 、 宇 野 首 相 の 女 性 問 題 を追 及 され 、7.月 の 参 院選 で は 、 土 井 た か 子社 会 党 委員 長 が 「山が 動 い た 」 と表 現 した よ うに社 会 党 の 圧 勝 、 自民 党 の 惨 敗 と い う選 挙 結 果 とな り、8.月10日. 、 わ ず か69日. 間 の短 命 で 宇 野 内閣 は 総 辞 職 した 。 そ の後 を継 い だ 海 部 俊. 樹 は 、 当 時47歳 の 小 沢 一 郎 を 自民 党 幹 事 長 に抜 擢 した 。 「 剛腕 幹 事長 」 と 目 され た小 沢 一 郎 こそ 、爾 来 、政 治 改 革 を担 う政 治 家 の 中 心 に位 置 す る こ とな る(2)。 「 普 通 の 国 」 を称 揚 す る こ とで 物議 を醸 した 『日本 改 造 計 画 』 の 中で 、 小 沢 は 「 冷 戦 の 終 結 は 日本 政 治 の 総 談合 構 造 の崩 壊 を意 味 す る」 と記 しつ つ 、 政 策 を競 い 合 う二 大 政 党 制 が確 立 しや す くな り、 ま た 政 権 交 代 が 起 きや す くな る利 点 の あ る小 選 挙 区制 の 導 入 を提 起 しつ つ 、「日本 の 政 治 が 抱 えて い る ほ とん どの問 題 は 、 小 選 挙 区 制 の 導 入 に よっ て 解 決 で きそ うだ 」(小 沢1993:66,69)と. 持 論 を 開 陳 した。. そ の 後 、 宮 沢 内 閣 の 不信 任 議 決 に賛 成 し、 自民 党 を離 党 した 小 沢 は 、 新 生 党 を結 成 して そ の 代 表 幹 事 に 就任 した 。 さ らに 、1993年8月9日. 、小 沢 は細 川 護 煕 非 自民連 立政 権 を誕 生 させ る と、選 挙 制 度 改 革 に取. り組 ん だ が 、 そ の過 程 で 小 選 挙 区比 例 代 表 並 立 制(300議. 席 の小 選 挙 区 と200議 席 の 比 例 代 表 、 そ の後 比. 例 代 表 は180議 席 へ 削 減)を 導 入 す る に至 っ た 。 尚、 小 沢 は、 死 票 な どの 「 小 選 挙 区制 の 欠 点 を補 う意 味 で 、 比 例 代 表 制 的 な 要 素 を加 味 した 小 選 挙 区比 例 代 表 制 の 採 用 を考 慮 して もい い だ ろ う」 と述 べ 、 小 選 挙 区 比 例 代 表 並 立 制 を容認 して い た(小 沢1993:70)。 こ う して 、 宮 沢 内 閣 へ の 不信 任 議 決 と 自民 党 の 分 裂 に連 動 す るか た ちで 、 ハ プ ニ ン グ的 な 政 権 交 代 が 起 こ り、俄 に成 立 した 細 川 政 権 にお い て 、1994年 に政 治 改 革 関連4法(公. 職 選 挙 法 の 一 部 を改 正 す る法 律 、. 衆 議 院議 員 選 挙 区画 定 審議 会 設 置 法 、 政 治 資 金 規 正 法 の 一 部 を改 正 す る法 律 、 お よび 政 党 助 成 法)が 成 立 し、 政 治 改 革 の 焦 点 で あ った 選 挙 制 度 改 革 が 実 現 し、 衆 議 院 は 中選 挙 区制 を廃 止 し、 小 選 挙 区比 例 代 表 並 立 制 へ 変 っ た の で あ る。 公 職 選 挙 法 が 改 正 され 小 選 挙 区 比 例 代 表 並 立制 に 基 づ く初 め て の 衆 院 選 は1996 年 で あ っ た 。2000年 代 に な る と、小選 挙 区 比 例 代 表 並 立 制 下 で 、 自民 党 と民 主 党 が 競 う二 大 政 党 制 の時 代.
(8) 24. MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.32(2013). とな っ た が 、 そ の 選 挙 結 果 は 前 節 で 見 た 通 りで あ る。 で は 、 小 選 挙 区比 例 代 表 並 立 制 と して 結 実 した 選 挙 制 度 改 革 が 、 実 際 の 政 党 政 治 に どの よ うな影 響 を及 ぼ した の か 、 そ の 点 を整 理 して み よ う。 第1に 、300の 小 選 挙 区 に出 馬 す る 自民 党 の候 補 は、 党 執 行 部 が 公認 した1名. に限 られ る ので 、 中選 挙. 区 制 時 代 の よ うな 「 同 士 打 ち」 が な くな り、 そ の 結 果 、 確 か に 自民 党 内 にお け る派 閥 間 抗 争 の 火 種 の 一 つ が 消 えた とい え る。 第2に 、 自民 党 内 に お い て 、 小 選 挙 区の公 認 候補 を人 選 す る際 に、 政 党 助 成 制 度 に 基 づ く政 党 交 付 金 の 配 分 も関 連 して 、 執 行 部 と りわ け党 首 で あ る総裁 の 権 限 が 強 化 した 。 この こ とは、 小 泉 純 一 郎 総 裁 が 不 退 転 の決 意 を もっ て 、郵 政 民 営化 に反 対 す る 自民 党議 員 を 、2005年 の 衆 院 選 にお い て 自民 党 の公 認 候 補 とせ ず 、 しか も造反 議 員 が 無 所 属 で 立候 補 す る もの な ら、 そ の 選 挙 区 に刺 客 候 補 を擁 立 して ま で 選 挙 戦 をた た か うとい った 峻 烈 な 行 動 を可 能 と した 。 これ を き っか け に、 自民 党 内 にお い て 、 執 行 部 に対 立 す る 「 反主 流 派 」 の 形 成 は 影 を潜 め た 。 第3に 、 小選 挙 区制 の 下 に お い て 、 自民 党 に対 抗 し、 か つ ま た 政 権 を奪 取 す るた め には 、 複 数 の 少 数 政 党 が 分 立 す るの で は な く、自民 党 に 匹敵 す る大 政 党 の 出現 が求 め られ る次 第 で あ る が 、1996年9月28日. 、. 市 民 政 党 と して 結 党 され た 民 主 党 は 、前節 で 見 た よ うに 、2000年 代 に大 政 党 と して 着 実 に成 長 した わ けで あ るか ら、 小選 挙 区制 は 二 大 政 党 制 の 成 立 を促 した ともい え る(3)。 第4に 、 小選 挙 区制 は 、 各選 挙 区で 相 対 的 多 数 を 占 めた 候 補者 が 勝利 す る と ともに 、 も ち ろん そ の 選 挙 区 の議 席 を独 占す るた め 、 全 体 と して 極 端 な 選 挙 結 果 とな りが ちで あ るが 、 と りわ け 「 風 が 吹 く」 か の よ うに 時 の 民 意 を捉 え る こ とに 成 功 す る と、圧 倒 的 な 地 滑 り的勝 利 を もた ら し、2009年 の民 主 党 の政 権 交 代 に つ な が った。2012年 の衆 院 選 にお け る 自民 党 の政 権 再 交 代 を含 め る と、な る ほ ど確 か に小 選 挙 区制 が 政 権 交 代 を可 能 と した 選 挙 制 度 で あ る とい え よ う。 少 な く とも、 中選 挙 区制 時 代 には 選 挙 を通 じて 政 権 交 代 は 起 こ らな か っ た わ けで あ るか ら、 この 現 実 的 な 違 い につ い て は真 摯 に受 け止 めな けれ ば な らない で あ ろ う。 但 し、 附 言 す れ ば 、 小 選 挙 区制 と違 い 比 例 代 表 制 は 政 権 交 代 の 起 こ りに くい 選 挙 制 度 で あ るか の よ う な 一般 定 理 を導 くの は 、 比 例 代 表 制 を採 用 して い る ヨー ロ ッパ 諸 国 の 選 挙 結 果 を見 れ ば、 い さ さか 勇 み 足 で あ る点 を注 意 して お きた い 。. 3.2.小 選 挙 区制 の 政 治 的思 考 とそ の逆 説 な るほ ど確 か に 、 小 選 挙 区 制 導 入 とい う選 挙 制 度 改 革 が 政 党 政 治 に 相 当の 影 響 を与 えた こ とは事 実 で あ る。 制 度 改 革 が 政 治 に変化 を与 え、 そ の 制 度 に基 づ く政 治 過 程 が繰 り返 し再 生 産 され る と、 パ ター ン化 し た 政 治過 程 が今 度 は 制 度 を支 え続 け、制 度 に粘 着 性 を賦 与 す る こ とに な る。過 剰 代 表 や 死 票 の多 さに加 え、 投 票価 値 の 格 差 に対 す る違 憲 判 決 の 続 出な ど、 小 選 挙 区制 の 問 題 点 が 指 摘 され る 中、 小 選 挙 区制 を廃 止 し 中選 挙 区 制 へ 戻 す べ きで あ る とい う議 論 も あ るが 、 当面 、 粘 着 性 に担保 され た 小 選 挙 区制 が 廃 止 され る気 配 は 薄 い 。 但 し、既 に政 界 を引 退 した 自民 党 の 長 老 議 員 は 、 小 選 挙 区制 の 導 入 は失 敗 で あ る と手 厳 しい 。 例 えば 、 小 選 挙 区制 導 入 で 細川 連 立 政 権 と合 意 した 当時 の 自民 党 総裁 で あ る河 野 洋 平 は、 小 選 挙 区制 導 入 を 「 大 失 敗 」 と総 括 し、小 選 挙 区制 が 民 意 を切 り捨 て 、 自民 党 内 か ら多 様性 を奪 った と指 摘 す る(「朝 日新 聞 」2013年6月13日)。. ま た 、森 喜 朗 元 首 相 は小 選 挙 区制 に よ り派 閥 の教 育 機 能 が失 われ た こ とを 嘆 く(「朝. 日新 聞 」2013年6月16日)。 こ こで省 察 の姐 上 に 上 げ るべ きは 、 小 選 挙 区制 を先頭 に 置 い て 展 開 す る政 治 的 思 考 で あ る。 先 に触 れ た よ うに 、小 選 挙 区制 は 、 「 風 が 吹 く」 が ご と く民 意 を捉 え る と、獲 得 投 票 数 に比 べ 過 剰 な選 挙 結 果 とな る可 能性 を もつ 制 度 で あ る。 そ れ こそ オ セ ロゲ ー ム の よ うに、 白黒 が は っ き りとつ きや す い 制 度 で も あ る。 こ う した 小 選 挙 区制 とい うア リー ナ にお い て 政 党 が 生 き残 るた め に、 少 数 政 党 は 合 体 し大 政 党 を形 成 し、 雌.
(9) 25. 雄 を決 す る 二 大 政 党 制 が 出 現 しや す く な る も の と 措 定 さ れ る 。 そ して 、 二 大 政 党 が 政 権 獲 得 を 目指 し、 互 い に 競 い 合 い 、 緊 張 感 が 漂 う政 権 交 代 可 能 な 政 治 的 状 況 が 生 ま れ る 。 二 大 政 党 の 競 い 合 い は 、 殊 に 政 策 面 で の 競 争 が 重 要 とな り、 そ れ 故 に 民 意 を 捉 え る 政 策 を 提 示 し え た 政 党 が 選 挙 を 制 す る こ と に な る の で 、 政 策 は マ ニ フ ェ ス トに 集 約 さ れ 、 そ の マ ニ フ ェ ス トが 有 権 者 に 提 示 さ れ る の で 、 選 挙 は マ ニ フ ェ ス ト選 挙 と い う性 格 を 帯 び る 。 有 権 者 は 、 二 大 政 党 の マ ニ フ ェ ス トを 比 較 検 討 し、 い ず れ の 政 党 へ 投 票 す る か 合 理 的 な 判 断 を 下 す 。 そ して 、 選 挙 に 勝 利 し国 会 で 多 数 を 占 め た 政 党 が 主 権 者 か ら信 託 さ れ 政 権 を 担 当 す る 。 そ し て 、 有 権 者 か ら信 託 さ れ た 与 党 政 権 は 、 選 挙 を 通 じて マ ニ フ ェ ス トの 実 現 に 正 当 性 を 得 た も の と看 倣 さ れ 、 政 治 主 導 を 発 揮 しつ つ 官 僚 機 構 を 統 括 し、 マ ニ フ ェ ス トで 公 約 した 政 策 を 実 施 す る 。 尚 、 次 回 の 選 挙 に お い て 与 党 政 権 の 業 績 が 有 権 者 に評 価 され 、 そ の 評価 が 低 けれ ば 政 権 交 代 とな る。 こ の よ うに 小 選 挙 区 制 を 先 頭 に 置 き 一 連 の 要 素 が 関 連 し合 うの が 小 選 挙 区 制 の 政 治 的 思 考 な の で あ る 。 そ れ を 喩 え て 言 うな ら ば 、あ た か も 政 治 改 革 とい う名 の10両 i)二. 大 政 党 制 、ii)政. 権 交 代 の 可 能 性 、iv)政. 面)有. 権 者 の 合 理 的 選 択 、 面)主. 編 成 の 列 車 が 、i)小 選 挙 区 制 を 先 頭 車 両 に 、. 策 本 位 の 選 挙/政. 権 者 の 信 託 、ix)正. 党 選 択 選 挙 、vi)マ. 当 性 に 基 づ く 政 治 主 導 、x)業. ニ フ ェ ス ト選 挙 、 績 評 価 、 と い う車 両. が 連 結 し走 っ て い る よ うな も の で あ る 。 尚 、 後 に 触 れ る 「国 会 内 閣 制 」 の 論 理 は 、 主 権 者 の 信 託 に 基 づ い て 政 治 主 導 を 導 出 す る と い う点 で 、 こ の 小 選 挙 区 制 の 政 治 的 思 考 と 符 号 して い る 。 そ れ で は 、 何 故 に 、 政 治 改 革 の た め に 、 政 権 交 代 の 可 能 性 も 秘 め て い る 比 例 代 表 制 で は な く、 小 選 挙 区 制 を選 択 した の か 。そ れ は 、比 例 代 表 制 の 場 合 、少 数 与 党 を 基 軸 に した 連 立 政 権 が 誕 生 す る 可 能 性 が 残 り、 そ の 結 果 、 少 数 与 党 は 連 立 を組 む 他 の 政 党 の 意 向 に も 配 慮 しな け れ ば な らな い 。 そ の た め 、 政 権 党 の 政 治 的 リー ダ ー シ ッ プ が 攣 肘 さ れ る 政 治 状 況 は 、 決 して 少 な く は な い と 判 断 す る か らで あ る 。 ま た 、 比 例 代 表 制 の 場 合 、 調 整 と妥 協 の. 「コ ン セ ン サ ス ・デ モ ク ラ シ ー 」 に 落 ち 着 く 可 能 性 が あ り、 そ れ は ス ピ ー デ ィ ー. な 政 治 主 導 と い う要 請 に 齪 謡 を き た す か も 知 れ な い と考 え る 。 そ れ よ り も 、 小 選 挙 区 制 下 の マ ニ フ ェ ス ト 選 挙 で 雌 雄 を決 した 大 政 党 が 単 独 政 権 を 形 成 し、 民 意 と い う正 当性 を 権 力 基 盤 と しな が ら、 政 治 主 導 と り わ け 首 相 の 強 い リー ダ ー シ ッ プ を発 揮 す る こ と が 期 待 で き る と 考 え る か らで あ る 。換 言 す れ ば 、「単 独 政 党 過 半 数 政 権 、 下 院 に 組 織 さ れ た 中 央 集 権 、 小 選 挙 区 制 、 二 大 政 党 制 」 と い う4つ ト ミ ン ス タ ー ・モ デ ル 」(小 堀2012:9)へ. の 要 素 か らな る 「ウ ェ ス. の接 近 で あ る。. と こ ろ で 、 小 選 挙 区 制 の 政 治 的 思 考 は 、 一 種 の 政 治 的 な 物 語(politicalnarrative)で. あ る に過 ぎ な い。 こ. の 物 語 が 余 り に も 出 来 過 ぎ て い る こ とか ら 、 物 語 の 展 開 が 余 り に も 合 理 的 か つ 理 性 的 に 構 成 さ れ て い る こ と が わ か る 。 し か し な が ら 、 こ の 物 語 は 逆 説 に 満 ち て い る。 中 で も 、2009年 に 対 す る 業 績 評 価 が 、2012年 民 党294議. に 政 権 交 代 を 果 た した 民 主 党. の 衆 院 選 に お い て 厳 し い 懲 罰 的 な 結 果 と し て 現 れ た が 、 先 に 見 た よ うに 、 自. 席 に 対 し民 主 党57議. 席 で あ り、 そ の 差 は5倍. 以 上 の 開 き と な っ た 。 これ で は 、小 選 挙 区 制 が 二. 大 政 党 制 に よ る 政 策 的 競 争 を促 す と い う よ り、 む し ろ 小 選 挙 区 制 が 二 大 政 党 制 の 崩 壊 に 連 動 した とい え よ う。 敢 え て 早 計 な 判 断 を 一 つ 示 す と 、 四 半 世 紀 に 及 ぶ 政 治 改 革 は 終 着 駅 に 到 着 した か の よ う に 、 日本 の 政 党 政 治 は 、 実 際 問 題 と して 、 民 主 党 の 再 生 は 当 面 難 し く 、 政 権 交 代 の 可 能 性 が な い 、 か つ て の 自 民 党 一 党 優 位 体 制 へ 逆 戻 り して しま っ た 、 と い うの は 過 言 で あ ろ うか 。. 3.3.選 挙 制 度 改 革 と民 主 党 の政 治 主導 早 計 な判 断 は 差 し当た って 棚 上 げ とす る と して 、 次 に、 政 治 主 導 の確 立 を唱 えた 民 主 党 に とって 、 選 挙 制 度 改 革 は 政 治 主 導 の確 立 に どの よ うに作 用 した の で あ ろ うか 、 この 点 につ い て 取 り上 げ て み よ う。 第1に 、 小選 挙 区導 入 とい う選 挙 制 度 改 革 は 、 民 主 党 に 政 権 交 代 の 政 治 的 チ ャ ンス を提 供 した もの の 、 国 政 に お け る政 治 主 導 の確 立 を 目指 す た め に不 可 欠 な 条 件 とな る民 主 党 内 にお け る政 治 的 リー ダー シ ップ.
(10) 26. MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.32(2013). の 確 立 に 連 動 す る も の で は な か っ た 。 こ の 点 、小 沢 が 言 うほ ど 、小 選 挙 区 制 の 導 入 が 起 点 と な り 、 「日本 の 政 治 が 抱 え て い る ほ と ん ど の 問 題 」、 こ の 場 合 、党 内 に お け る 政 治 的 リー ダ ー シ ッ プ の 確 立 と政 治 主 導 の 確 立 と い う2っ. の 課題 が 簡 単 に は 成就 しえた わ けで はな い 。. 小 選 挙 区 制 下 に お い て 自 民 党 に 対 抗 し え る 二 大 政 党 の 片 翼 と して 成 長 す る た め に 、 民 主 党 は 市 民 政 党 か ら 国 会 議 員 の 政 党 へ 変 わ っ て い っ た(中 挙で. 北2012b:83-84)。. 民 主 党 は 他 の 政 党 や 政 治 家 を 吸 収 し、 ま た 選. 「生 え 抜 き 」 の 議 員 を加 え な が ら党 勢 を 拡 大 して き た 。 そ の た め 、 民 主 党 は 新 自 由 主 義 か ら社 会 民 主. 主 義 ま で 、 様 々 な 政 治 的 立 場 の 人 び とが 、 自 民 党 か ら政 権 を 奪 取 し、 政 権 交 代 を 実 現 す る こ と を 旗 印 に 糾 合 す る か た ち と な り、 そ の 結 果 、 議 員 間 に 理 念 の 共 有 を 欠 き 、 民 主 党 とい う党 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ や ミ ッ シ ョ ン お よ び レ ー ゾ ン デ ー トル 、 並 び に 基 本 政 策 の 方 向 性 を 示 す 党 綱 領 の 作 成 に 至 ら か っ た(上 2011:16)。. ま た 、党 内 に 自 民 党 の 派 閥 に 近 似 す る 複 数 の グ ル ー プ(鳩. 神 ・堤. 山 由 起 夫 グ ル ー プ 、菅 直 人 グ ル ー プ 、. 野 田佳 彦 グ ル ー プ 、 小 沢 一 郎 グ ル ー プ 、 羽 田 孜 グ ル ー プ 、 旧 社 会 党 系 の 横 路 孝 弘 グ ル ー プ 、 川 端 達 夫 ら 旧 民 社 党 系 の 友 愛 グ ル ー プ 、 前 原 誠 司 グ ル ー プ 、 原 ロ ー 博 グ ル ー プ 、 お よ び グ ル ー プ に 所 属 しな い 岡 田 克 也 等)が 一見. 勢 力 を築 き、 そ の 地 歩 を固 めた 。 小 選 挙 区 制 の 下 にお い て 政 権 交 代 を実 現 す るた め に、 民 主 党 は 、 、 各 グ ル ー プ が 大 同 団 結 し 自 民 党 に 対 抗 して い る か の よ う に 思 え た が 、 実 は 、 党 首 の 政 治 的 リー ダ ー. シ ッ プ が 確 立 で き ず 、 ま た 確 固 た る 党 内 ガ バ ナ ン ス お よ び 党 内 民 主 主 義 の 確 立 が 成 就 す る ま で に も 至 らな か っ た(4)。 但 し 、 マ ニ フ ェ ス トこ そ が. 「民 主 党 政 権 の 生 命 線 」 と な り、 「多 様 な 国 会 議 員 か ら構 成 さ れ 明. 確 な 理 念 を 欠 く 民 主 党 に と っ て 、政 策 的 な 一 体 性 を 確 保 す る ほ ぼ 唯 一 の 手 段 」で あ っ た(中 北2012b:172)。 か く して 、 民 主 党 は 政 権 交 代 と い う一 点 の た め に 各 グ ル ー プ が 野 合 して 選 挙 戦 を た た か う とい う戦 略 面 で は 功 を 奏 した も の の 、 政 権 交 代 後 、 政 治 主 導 を確 立 す る た め の 基 礎 条 件 と い うべ き 、 身 内 で あ る 民 主 党 代 表 の リー ダ ー シ ッ プ 、 党 内 の ガ バ ナ ン ス お よ び 民 主 主 義 が 未 熟 で あ り、 こ の こ と が 災 い し、 党 内 抗 争 が 繰 り返 さ れ 、 そ して 小 沢 グ ル ー プ の 離 党 な ど党 の 分 裂 が 続 き 、 政 治 主 導 の 確 立 を 目指 す 民 主 党 政 権 に 著 し い 動 揺 を 与 え続 け て き た の で あ っ た 。 第2に. 、 民 主 党 は 、 中選 挙 区時 代 の. 「個 人 中 心 の 選 挙 」 か ら 、 小 選 挙 区 時 代 の 政 策 本 位 の 選 挙 へ 転 換 す. る た め に 、 全 国 共 通 の 政 策 公 約 す な わ ち マ ニ フ ェ ス トを 掲 げ 、 そ こ に 政 治 主 導 の 確 立 を 明 示 した が 、 そ れ を実 現 す るた めの. 「政 略 」 を 持 ち 合 わ せ て い た か 疑 問 で あ る 。. 民 主 党 が 念 願 の 政 権 交 代 を果 た す に は 、 自 民 党 と 雌 雄 を 決 しな け れ ば な らな い が 、 大 差 が 付 く 可 能 性 の あ る小 選 挙 区 にお い て 「 地 滑 り 的 勝 利 」 を 収 め る こ と が 選 挙 戦 上 、重 要 な ポ イ ン ト と な る 。 しか しな が ら、 そ の 小 選 挙 区 で は 、 自 民 党 候 補 者 を は じ め 「個 人 中 心 の 選 挙 」 の 色 合 い が 多 分 に 残 る と こ ろ で あ る 。 そ れ を 可 及 的 に 政 策 本 位 の 選 挙 へ 転 換 す る め に 、選 挙 戦 の ツ ー ル と して 打 ち 出 した の が マ ニ フ ェ ス トで あ っ た 。 小 選 挙 区 で は 「個 人 中 心 の 選 挙 」を 完 全 に 払 拭 す る こ と は で き な い も の の 、「 個 人 中 心 の 選 挙 」の 色 合 い に 、 マ ニ フ ェ ス トに よ っ て 、政 策 本 位 の 選 挙 の 色 を 、い わ ば 上 塗 りす る か た ち の 選 挙 戦 に 持 ち 込 む 。と こ ろ が 、 そ の マ ニ フ ェ ス トが 政 権 を 奪 取 す る こ と を 第 一 義 と す る 選 挙 至 上 主 義 に 基 づ い て 作 成 さ れ た 内 容 と な り、 中 で も 、 高 速 道 路 の 無 料 化 や 子 ど も 手 当 な どの よ う に 、 国 民 各 層 か ら支 持 を 受 け や す い 政 策 の 羅 列 とな っ た 。 政 治 主 導 の 確 立 も、 そ の 羅 列 の 一 つ で あ った 。 日本 で は マ ニ フ ェ ス トが 基 本 政 策 の 目標 数 値 、 そ の 目標 達 成 の 時 期 も し く は 期 限 、 お よ び 必 要 と さ れ る 政 策 コ ス トの 財 源 、並 び に 工 程 表 の4点 川2007)。. 尚 、21世. 紀 臨調 は. セ ッ トが 「標 準 装 備 」 と し て 明 記 す る か の よ うに 思 わ れ て い る(北. 「政 権 公 約(マ. て 直 し と 政 治 主 導 体 制 の 確 立 ∼ 」(2003年)で. ニ フ ェ ス ト)に 関 す る 緊 急 提 言 ∼ 新 政 治 改 革 宣 言 ・政 党 の 建 マ ニ フ ェ ス トに つ い て 次 の よ うに 考 え た 。. マ ニ フ ェ ス トと は 、 政 党 が 政 権 任 期 中 に 推 進 し よ う と す る 、 政 権 運 営 の た め の 具 体 的 な 政 策 パ ッ ケ ー.
(11) 27. ジ の こ と で あ り、 ① 検 証 や 評 価 が 可 能 で あ る か の よ うな 具 体 的 な 目標(数. 値 目標 、 達 成 時 期 、 財 源 的 な. 裏 づ け 等)、 ② 実 行 体 制 や 仕 組 み 、③ 政 策 実 現 の 工 程 表(ロ. で き う る か ぎ り明 確 な か た ち. ー ドマ ッ プ)を. で 示 した 、 「国 民 と 政 権 担 当 者 と の 契 約 」 に ほ か な ら な い(21世. 紀 臨 調2003)。. さ て 、 戦 略 と は 、 一 般 的 に 、 「選 択 と集 中 」 と して 理 解 さ れ 、 ま た 戦 略 は 工 程 表 に 基 づ く段 取 り的 な 道 筋 と して も イ メ ー ジ さ れ て い る が 、 そ の 戦 略(の. 工 程 表)を. 推 し進 め る 際 、 政 治 の 世 界 に お い て は 、 した た. か な 「政 略 」 が 必 要 と な る 。 す な わ ち 、 「選 択 と集 中 」 に 基 づ く戦 略 的 な 政 策(基. 本 方 針)を. 実 現 す るた め. に は 、工程 表 の み な らず 、 「 政 略 」を併 せ 持 っ て い な けれ ば な らな い。 「 政 略 」 と は 、 い つ ・ど こ で ・誰 が ・ 誰 に ・ど の よ うな 政 治 的 な 働 き 掛 け を 行 い 、 ど の よ うな 成 果 を 上 げ 、 そ の 成 果 を 基 に しな が ら、 次 に 如 何 な る働 き 掛 け を 行 い つ つ 、 そ れ こ そ 「堅 い 板 」 を 如 何 に く り貫 くべ き か 、 そ の よ う な 政 治 的 戦 術(political strategy)を 意 味 す る 。 換 言 す れ ば 、 「 政 略 」 は 、 関連 情 報 の収 集 の 上 に 、 緻 密 な作 戦 を組 み 立 て 、 然 るべ き 政 治 的 働 き か け を 重 ね 、 戦 略 的 な 政 策 を 実 現 す る た め の イ ン テ リジ ェ ン ス の 集 約 とい え る 。 民 主 党 が い く ら 政 策 本 位 の 選 挙 に 勝 利 し、 国 民 か ら高 い 支 持 を 得 て い る か ら と い っ て 、 か つ ま た そ れ で 政 治 的 正 当 性 が 担 保 さ れ て い る か ら と い っ て 、マ ニ フ ェ ス トに 書 か れ た 政 治 主 導 の 確 立 が 、「 政 略 」な し に 、自動 的 に 粛 々 と 実 現 で き る ほ ど政 治 の 世 界 は 甘 い も の で は な か っ た 。 第3に. 、 小 選 挙 区 制 下 の マ ニ フ ェ ス ト選 挙 に お い て 歴 史 的 な 勝 利 を 収 め た 民 主 党 は 、 そ の 余 韻 を 受 け 、. 「可 能 性 の ア ー ト(芸 術)と. して の 政 治 」 が 実 感 で き る よ う に 、 マ ニ フ ェ ス トに 記 載 した 政 策 転 換 を 試 み. た が 、 そ れ に 失 敗 した 場 合 、 民 主 党 の 政 治 主 導 が 脆 弱 で あ る こ と を 証 明 した 。 選 挙 に 勝 つ た め に は 、 マ ニ フ ェ ス トの 中 に 農 家 所 得 補 償 制 度 の よ う に 、 ラ イ バ ル で あ る 自 民 党 の 支 持 層 を 切 り崩 し、 そ の 票 を 民 主 党 へ 取 り込 む た め の 政 策 が 用 意 さ れ 、 ま た 子 ど も 手 当 や 高 校 授 業 料 無 償 化 の よ うに 、 子 育 て 世 代 な ど の 女 性 や 若 年 層 を 新 た な 支 持 層 と して 民 主 党 へ 取 り込 む た め の 政 策 が 提 示 され て い た 。 子 ど も 手 当 は 満 額 支 給 さ れ な か っ た が 、 こ れ らの 政 策 が 実 行 に 移 さ れ る と、 多 くの 人 び と は 政 権 交 代 を 通 じ 、 「コ ン ク リー トか ら人 へ 」、 確 か に 政 策 転 換 が 行 わ れ 、 正 に 「可 能 性 の ア ー ト と し て の 政 治 」 とい う も の 実 感 させ られ た 次 第 で あ っ た 。 「コ ク ク リー トか ら 人 へ 」 とい う政 策 転 換 の イ ン パ ク トは 、55年. 体 制 と い う枠 組 み の 中 で 定 着 し た 、 自. 民 党 政 治 の 本 質 とい うべ き利 益 誘 導 政 治 、 お よ び そ の ア ク タ ー で あ る 自 民 党 族 議 員 と官 僚 に と っ て 抜 き 差 し な ら ぬ 驚 異 と な っ た 。そ れ は 、利 益 誘 導 政 治 とい う名 の コ ン ク リー ト建 造 物 に 向 け られ た 破 壊 に 等 し く、 そ の 建 物 に 居 着 く 自 民 党 族 議 員 と 官 僚 に 強 制 退 去 を命 じ る に 等 しか っ た 。 利 益 誘 導 政 治 は 、 利 益=予. 算=カ. ネ を誘 導 しな が ら政 治 を 執 り行 う こ とで あ る が 、 そ の カ ネ が 違 法 な も. の で は な く、 あ くま で も合 法 的 に公 然 と流 れ るた め に、 予 算 配 分 の 仕 方 にお い て. 「裁 量 予 算 」 と い う工 夫. が 加 え ら れ て い た 。 「コ ン ク リー ト」 の 象 徴 で あ る道 路 や ダ ム な ど の ハ コ モ ノ は 、 どの 地 域 の ど こ に 建 設 す る か で 、 族 議 員 や 地 元 政 治 家 が 介 入 し働 き か け を 行 え る機 会 を 提 供 す る と と も に 、 立 法 化 に あ た っ て 細 か い 規 制 や 手 順 を 設 け る こ と で 、 開 発 官 庁 の 官 僚 が 介 入 し裁 量 権 を ふ る え る よ う に した 。 こ う して 公 共 事 業 は 、 そ の 必 要 性 よ り も 、 い ま で は 地 域 経 済 や 雇 用 お よ び 所 得 保 障 の た め に 「造 る た め 造 る 」 と認 識 さ れ て い る が 、 も う少 し掘 り下 げ て み る と 、 公 共 事 業 に 政 治 家 の 権 力 や 官 僚 の 裁 量 権 限 を 再 生 産 す る 役 割 を 発 見 す る こ と が 理 解 で き る 。 そ して 、 ハ コ モ ノ の 建 設 は 関 係 業 界 に ビ ジ ネ ス ・チ ャ ン ス を も た らす が 、 そ の バ ー タ ー と して. 、 政 治 家 に 対 して は 選 挙 の 際 に 票 の 取 りま と め 、 官 僚 に 対 して は 天 下 り先 が 用 意 さ れ る 。 こ. う して 、 利 益 誘 導 政 治 は 自 民 党 と 官 僚 に と っ て 再 生 産 さ れ な け れ ば な らな い 構 造 で あ り、 した が っ て ま た 「コ ク ク リー トか ら 人 へ 」 と い う政 策 転 換 の 流 れ は 死 活 問 題 に 発 展 しか ね な い 驚 異 と感 じ られ た 次 第 で あ る。.
(12) 28. MemoirsofTheFacultyofB.0.S.T.ofKinkiUniversityNo.32(2013). 「コ ク ク リー トか ら 人 へ 」 を 象 徴 す る 子 ど も 手 当 や 高 校 授 業 料 無 償 化 な ど の た め に 計 上 さ れ た 予 算 は 、 通 常 、 政 治 家 の働 きか けや 官 僚 の裁 量 権 が 介 入 で きな い した. 「プ ロ グ ラ ム 予 算 」 を 、 自 民 党 は. 「プ ロ グ ラ ム 予 算 」 と呼 ば れ る も の で あ る 。 こ う. 「バ ラ マ キ 」 と語 気 を 強 め て 非 難 した の も 、 頷 け られ よ う。. さ て 、 無 駄 な 公 共 事 業 の 象 徴 の 一 っ が 八 ッ 場 ダ ム の 建 設 で あ っ た 。 民 意 に 信 託 さ れ た 政 権 交 代 とい う追 い 風 を 背 に 受 け 、 政 治 主 導 に よ る 「可 能 性 の ア ー ト」 と 思 わ せ た 、 前 原 誠 司 国 土 交 通 大 臣 の 八 ッ 場 ダ ム 建 設 中止 と い う判 断 は 、 結 局 の と こ ろ 撤 回 さ れ 、 つ い に 前 原 は 建 設 中 止 を 断 念 した 。 八 ッ 場 ダ ム の 場 合 、 既 に 建 設 途 上 に あ り、 既 成 事 実 が 積 み 上 げ ら れ 、 利 害 関 係 者 の 強 い 反 対 に 合 い 、 断 念 せ ざ る を え な く な っ た 。 八 ッ 場 ダ ム 建 設 中 止 に 奔 走 した 地 元 群 馬 県 選 出 の 元 民 主 党 議 員 の 中 島 政 希 は 、 八 ッ 場 ダ ム 建 設 中 止 を 打 ち 出 しな が ら、 結 局 、 建 設 中 止 を 断 念 した 前 原 国 交 大 臣 に つ い て 、 次 の よ う に 評 し て い る 。 「前 原 氏 は 、然 る べ き ポ ス トに 就 い て 上 か ら指 導 す れ ば 、下 部 は 自 ら従 う も の だ と信 じて い る か の よ うだ っ た 。 だ か ら彼 の 政 治 手 法 に は 、 目的 の た め に 根 回 し を 行 う と か 、 関 係 者 に 絶 え ず 気 配 り し良 好 な 人 間 関 係 を 作 っ て お く と か 、 そ こ こ こ に 必 要 な 仲 間 を 送 り込 ん で お く とか 、 日本 的 な 政 治 手 法 に は 全 然 関 心 が な い か の よ う に 見 え た 」(中 島2012:120)。. 要 す る に 、 た と え 民 意 か ら信 託 さ れ た マ ニ フ ェ ス ト と. 錐 も 八 ッ 場 ダ ム 建 設 推 進 者 を 納 得 さ せ る こ とは 難 し く 、 した が っ て ま た 建 設 中 止 へ 転 換 す る 政 治 主 導 が 如 何 に 難 しい 課 題 で あ る こ と 、 そ して こ の よ うな 課 題 は 日本 的 な イ ン テ リ ジ ェ ン ス が 必 要 で あ る こ と、 こ う し た こ と が 理 解 さ れ て い な か っ た と い う次 第 で あ る 。 これ は 前 原個 人 の 問題 とい うよ りも、 民 主 党 が 政 治 主 導 を確 立 しよ うに も、 そ の 手 法 が未 熟 で あ る こ と が 判 明 した 。 民 主 党 は 、 政 策 の 現 場 や 地 域 の 状 況 に 疎 く 、 「『論 理 』 を 中 心 に 政 策 を 語 る 」 こ とが 多 い と 指 摘 さ れ て い た(佐. 道2012:231)。. も し、 「論 理 的 に 正 しい こ と は 合 理 的 で あ る 」 とい う論 理 命 題 を 、 政 策. に 適 応 し、 「 論 理 的 に 演 繹 さ れ た 政 策 は 合 理 的 で あ る 」 と し て 、政 策 の 正 当 性 を 導 出 す る の な ら ば 、そ の 政 策 思 考 は 、余 り に も 政 策 コ ン サ ル タ ン ト的 な マ ニ ュ ア ル 通 り の 発 想 で あ る 。 「 論 理 的 に 正 し こ と は 、必 ず し も 現 実 的 に 正 し く な い 」 と い う経 験 則 こ そ 、 妥 協 と 調 整 を 必 要 とす る 政 治 の 世 界 に お け る 鉄 則 で あ り、 論 理 性 や 合 理 性 以 外 に 、 「可 能 性 の ア ー ト」 を 具 現 す る イ ン テ リ ジ ェ ン ス が 求 め られ る 。 さ て 、 マ ニ フ ェ ス トの 中 身 が 選 挙 の 行 方 を左 右 す る と 考 え ら れ る こ と か ら、 マ ニ フ ェ ス トは 選 挙 に 勝 つ た め の ツ ー ル と して の マ ニ フ ェ ス トで あ ら ね ば な らな く な り、 こ こ か らマ ニ フ ェ ス トと 選 挙 至 上 主 義 と い う思 惑 が 合 体 し た と こ ろ の 、 い わ ば あ る(5)。2009年. 「マ ニ フ ェ ス ト選 挙 至 上 主 義 」 へ とマ ニ フ ェ ス ト自 身 が 昇 華 した の で. の 衆 院 選 に お け る 民 主 党 の マ ニ フ ェ ス トは 、 そ の よ う な 色 合 い を 濃 く し た 。 中 で も 、 地. 球 温 暖 化 防 止 と 齪 齪 を き た す 高 速 道 路 無 料 化 が そ の 代 表 格 で あ り、 こ れ に は トラ ッ ク な どの 運 送 業 界 の み な らず 、 一 般 有 権 者 に お い て も 飛 び 付 き た く な る よ うな 公 約 で あ っ た 。 こ う して 、 選 挙 に 勝 つ こ と を 至 上 命 題 と す る 党 執 行 部 の 意 向 、 お よ び トッ プ ・ダ ウ ン で ま と め た マ ニ フ ェ ス トに 対 して 、 候 補 者 が 面 従 腹 背 の 忠 誠 を 誓 う と い う構 図 が 出 来 上 が り、 反 対 に 、 ボ トム ・ア ッ プ 的 な 党 内 民 主 主 義 を シ ョー ト ・カ ッ ト し た た め 、 政 権 交 代 後 、 マ ニ フ ェ ス トに 記 載 さ れ た 各 政 策 に 対 し、 当 選 議 員 間 で 思 惑 が 異 な り、 こ の 結 果 、 政 党 と して の 凝 集 性 を 欠 き は じ め 、 や が て マ ニ フ ェ ス トを め ぐ る 党 内 抗 争 に 発 展 し民 主 党 の 分 裂 を 導 く こ と に な る の で あ る 。 皮 肉 に も 、 選 挙 に 勝 つ た め の マ ニ フ ェ ス トが 、 党 内 抗 争 の ツ ー ル と 化 し、 次 回 の 選 挙 を敗 北 へ 導 くた めの 先 導役 とな るの で あ った 。. 3.4.旧. い 自民 党 政 治 を超 克 す べ き 民 主 党 の 政 治 主 導. 民 主 党 は 、 これ ま で の 政 治 改 革 の 政 治 的 遺 産 、 と りわ け橋 本 行 革 や 小 泉 政 権 の 官 邸 主 導 を通 じ確 立 しっ つ あ っ た 政 治 主 導 とい う遺 産 を継 承 し、 か つ ま た 政 権 を獲 得 す る こ と に よ って 、 政 策 転 換 を果 た せ るポ ジ シ ョン を手 に した(6)。 但 し、 民 主 党 が狙 っ た 政 治 主 導 の確 立 は 、橋 本 行 革 や 小 泉 の官 邸 主 導 の 地 平 か ら.
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