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〈原著〉Guillain-Barre症候群における、抗ガングリオシド抗体の新たな測定法が陽性率におよぼす効果の検討 : フォスファチジン酸添加あるいは、ガングリオシド複合体を用いた抗体測定法

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Academic year: 2021

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(1)ぎ を 近 畿 大 医 誌 仙dJK i n k iU n i v )第 相 号 制 サ 9 62 0 0 8. 2 9 1. G u i l l a i nB a r r e症候群における,抗ガングリオシド抗体の 新たな測定法が陽性率におよぼす効果の検討: フォスファチジン酸添加あるいは,ガングリオシド 複合体を用いた抗体測定法 金田明子 近畿大学医学部内科学教室(神経内科部門). 抄 録 G u i l l a i n B a r r e症候群 (GBS)の急性期には,約 6割でガングリオシドに対する抗体の存在を認め,有用な血清 診断として利用されている.近年,既知の抗体に加え,フォスファチジン酸 ( P A )を添加することによる抗体活性 の充進や,重症化の指標となる,ガングリオシド複合体に対する抗体の存在が報告されている.そこでこれら新た な抗原に対する抗体を測定することにより,陽性率がどれくらい上昇するかを検討した.その結果, PA添加によ り,一部抗体活性が低下する症例・変化のない症例を認めたものの,全てのガングリオシドで,抗体陽性率は上昇 し,また,ガングリオシド複合体抗体の測定も陽性率を上昇させた. PAによる抗体活性増強のメカニズム・ガン グリオシド複合体抗体陽性例での重症化のメカニズムの詳細はまだ不明であり,今後の検討が必要であるが,これ らの測定法により抗体陽性率の上昇が確認され,今後の GBS診断に有用な検査法である.. Keywords:ガングリオシド, Gu 日l a i n B a r r e症候群 ( G B S ),抗ガングリオシド抗体,フォスファチジン酸 ( P A ), 抗ガングリオシド複合体抗体. 緒 言. (以下抗 GSCs抗体)が存在することが報告されて いる.. 己免疫性疾患であり,急性期には約 6割でガングリ. PAによる抗ガングリオシド抗体活性の増強は, Freddoらが IgMパラプロテイン血症を伴うニュー. オシドに対する抗体(特に IgG抗体)が検出され. ロパチー患者において,血中モノクローナル IgM. G u i l l a i n -Barre症候群は末梢神経を標的とする自. るlヘガングリオシドは,糖鎖構造にシアル酸を含む. が,ガングリオシドや PA単独ではわずかに反応す. スフィンゴ糖脂質であり,神経組織に多く含まれ,. るのみだが,ガングリオシドと PAを混合させると,. 主に細胞膜上に存在する.細胞膜はリン脂質が主体. 反応性が著明に充進するということを報告したのが. となった脂質二重層からなっており,ガングリオシ. 最初であるに次いで Kusunokiらは GBSの IgG抗. ドなどの糖脂質は,ラフトを形成してその中に浮か. ガングリオシド抗体についても同様の効果があるか. ぶ形で存在しているつまり,ガングリオシド分子. を,抗 GM1抗体について検討した.その結果,抗. は周囲をリン脂質に固まれ,また複数の分子種のガ. GM11gG抗体では多くの例で PA添加により抗体. ングリオシドが共存する形で存在している.近年,. 価増強を認め, PA添加による検査法が, GBSの血. 抗ガングリオシド抗体の活性は,それら共存するリ. 清診断に有用である可能性を示唆したこの場合の. ン脂質の影響をうけること 4ヘ 複 数 の ガ ン グ リ オ シ. PA添加による抗体活性の増強機序としては,(1). ドの糖鎖により形成される新たなエピトープであ. GM1と PAが形成する新たなエピトープに特異性 をもっ抗体が存在するという可能性と, (2)PAの添. る,ガングリオシド複合体を特異的に認識する抗体. 大阪府大阪狭山市大野東 3 77-2 ( 干5 8 9 8 5 1 1 ) 受 付 平 成2 0年 8月2 9日 , 受 理 平 成2 0年 1 0月2 8日.

(2) 2 9 2. 金田明子. 加により抗体が GM1に結合しやすくなるという可. p h e n y l e n e d i a m i n e溶液を加えて発 に 3回洗浄後 o. 能性の二つが考えられる. PAのみに対しては抗体. 色させ, 4N硫酸を加えて反応をとめた. 4 9 2nmに. h o s p h a t i d y l . の反応がないこと, PA以 外 に も p. o p t i c a ld e n c i t y:OD値)を測定し, おける吸光度 (. s e r i n eなどの酸性リン脂質の添加でも抗体の反応性. 対照とするガングリオシドを固相化していないウェ. 2 )の が上昇すること,などから(1)の可能性は低く, (. ルの OD値を減じて修正 OD値を算出した.既報及. 可能性が高いと考えられている.今回我々は,既に. び今回の検討において,正常血清及び疾患コントロ. 0種類のガング 報告されている GM1・GQ1bを含め 1. ールにおける各抗ガングリオシド抗体価が0 . 1未満. リオシドについて, PA添加抗原に対する IgG抗体. . 1以上を (結果7)であったことより,修正 OD値 0. 価を測定し,単独のガングリオシドに対する IgG抗. 抗体陽性と判断した.. 体価との比較・陽性率へ与える影響について検討し. 2)混合抗原を用いた ELISA法 PA添加抗原に対する抗体測定:ELISA用マイ クロプレート上に各ガングリオシド 0 . 1ぃ gに PA 0 . 1ぃ gを添加した抗原,及び各ガングリオシド単独 . 2いgを固相化し, ELISA法にて IgG抗体測 抗原0 定をし,その OD値を測定した PA添加による反応性の変化は以下の基準で分類 した.正常及び疾患コントロールでは, PA添加によ . 1未満であったことより(結果7), る抗体価増強が0. た.. また,抗 GSCs抗体の一つである, GD1aと GDl b の混合抗原に対する抗体(以下抗 GD1a/G Dlb抗 体)は,人工呼吸器装着が必要な重症例で陽性にな ることが多く,重要な抗体である 8 が,このガングリ オシド複合体に対する抗体を測定することにより, 抗体陽性率にどのような影響を与えるかについても 検討した. 材料と方法 1)血清サンプル 対象は, 2 0 0 7年 1月から 2 0 0 8年1 1月の聞に,当科 に抗体検査依頼のあった検体のうち, Asbury & C o r n b l a t h9 らの診断基準の必要条件である,① 2肢. PA添加抗原に対する各抗体の OD値が,単独抗原 . 1以上高い場合 に対する各 IgG抗体の OD値より 0 を反応性上昇とし, 0 . 1以上低い場合を反応性低下, それ以外を不変とした. ガングリオシド複合体に対する抗体測定:GDla と GDl bを各0 . 1阿 混 合 し た 抗 原 ( 以 下 GDla /. 以上の進行性筋力低下②臆反射の消失または低下を. GDlb抗原)を固相化し,上記の ELISA法で IgG抗. 0 0例とした.また,対照として, 満たす急性期血清,4. 体活性を測定し, GDla.G Dlb単独抗原0 . 2阿 に 対. 6 例 , GBS以外の神経疾患4 7 例:慢性炎症 正常血清 1. する抗体活性と, OD値で比較した. GDlaおよび. 性脱髄性多発ニューロパチー. 1 6 例,多巣性運動ニ 1 0 例,筋萎縮性側索硬化症 5例 , ノfーキンソン病 3例,多発性硬化症 6例,重症 筋無力症 4例,その他 3例,も対象とした. b, 検体について, GM1,GM2,GM3,GD1a,GDl GD 3 , GT1b,GQ1b ,Ga1NAc-G Dla,GT1aの1 0 種類の糖脂質抗原を用いて, IgMクラスと IgGクラ スの抗体活性を e n z y m e . l i n k e d immunosorbent a s s a y(ELISA)法で測定した .IgG抗体については, PAとの混合抗原に対する抗体活性,および GDla / GDlbガングリオシド複合体に対する抗体も測定し. GDlbのいずれにも反応がみられない場合は,. ユーロパチー. GD1a/G Dlb抗原に対する修正 OD値 が0 . 1以上の 場合に陽性とした .G Dlaあるいは GDlbに対する 抗体活性がみられたときには, Kaidaらの基準に従 い,混合抗原に対する補正 OD値が各単独抗原に対 するものより 0 . 2以上大きい場合に, 2種類のガング リオシド (G Dlaと GDlb )の形成する新たなエピト. た. ELISA法は従来の方法に従って施行した 10 すな わち,ガングリオシド 0 . 2~g を ELISA プレートに 固相化し, 1%ウシ血清アルブミン (BSA) を含む PBS( p h o s p h a t eb u f f e r e ds a l i n e )溶液を加えて非 特異的反応をブロックした.室温で3 0分静置し洗浄 後 , 1% BSA-PBS溶液にて 1:4 0で希釈した患者. ープに特異性をもっ抗体が存在すると判断した 単独抗原のみに対する抗体陽性率, PA添加した 場合の抗体活性の変化及び抗体陽性率,抗 GSCs抗 体の陽性率を算出し,これら新たな測定法の,抗体 陽性率に及ぽす影響を検討した. 結 果 1)患者背景 診断基準の必要条件を満たす, GBS及び GBS疑 い患者 4 0 0人の急性期血清を集めた. 患者の平均年齢は 45歳(1歳~89歳)で,男女比. 時間反応させた. 0.1%BSA-PBS 血清を加えてl.5. はl.7 : 1であった.先行感染を約8 割の患者に認め. で 3回洗浄してその後ペルオキシダーゼ標識抗ヒト. た(図1).. IgG抗体を添加し, l .5 時間室温で反応させた.同様. 2)各単独ガングリオシドに対する抗体陽性率.

(3) 2 9 3. GBSにおける抗ガングリオシド抗体の新たな測定法. 3 4 . 0 弘 11 . 7 %. 2 8 . 2 %. 25 20 (訴). 口消化器 ロ呼吸器 ・消化器・呼吸器 ロその他. 1 5. ~不明. 10. ・なし. 5 O. 図 1 先行感染の内訳 約 8割に先行感染を認めた. GFddP40 。ぷぷぷグぷぷ _ r f -. n u u 内 nununununununu. 987654321 (車). J 0 ' ". 図 3 PA添加によ る各ガング リオシド抗体陽性率 全ての抗ガングリオシド抗体で,混合抗原に 対する抗体測定により,陽性率は上昇した . 6 0. U. 内. 50. 〆dpdbd:vdFFP③ぷ. 40. GFddF. u. J. 0 ' ". 図 2 PA添加による抗体反応性変化 全ての抗ガングリオシド抗体は,混合抗原の 方が強い反応性を示す傾向であった. 特に抗 GMl抗体で,反応性の上昇は著明で あった. 各ガングリオシドに対する抗体陽性率を(図 3) に示している.最も陽性率が高いのは,抗 GM1抗体 で , 1 4.7%であった .次い で,抗 GDlb抗 体 10%,. GDla抗 体 9.7%であった.最も陽性率 抗 Ga1NAcが低かったのは抗 GM2抗体で 0.2%であった . 3) PA添加による抗体活性の変化. ~. 30 20. 1 0. 。 1 .0単独 何. 4 0 . 8. 図 4 各抗体測定追加による陽性率変化 I gG単独抗原に対する抗体陽性率は 40.8%, 混合抗原に対する抗体測定追加により陽性率 は45.3%に上昇し,複合体抗体測定追加では 陽性率は 46.5%であった.これら 3者の測定 では陽性率は 50.9%であった . これら 3者に gM単独抗原に対する抗体測定を追 加えて, I 加す るこ とにより,陽性率は 57%にまで上昇 した. 抗 G M1抗体価はほぼ全例で, PA添加による抗体. 4 ) .. 価上昇がみ られた.その他 9種類の抗体に関しでも,. ( 図. 抗体価の上昇する例を多数認めた(図 2)が,一方. 5)抗 GSCs抗 体. で,抗体価に変化のない例 ・低下する例も認めた.. GBS及 び GBS疑い症例 4 0 0例中, GDla/GDlb抗. 4) PA添加による各抗ガングリオシド抗体陽性率. 体陽性例は3 8例 9.5%であった.そのうち, GDla/. 変化. GDlb抗体単独陽性例は 2 3例 5.7%であった.ガング. 抗ガングリオシド抗体の抗体価は, PAを抗原に. リオシド単独抗原に対する IgG抗 体 陽 性 率 は 4 0 . 8. 添加することにより一般に上昇する例が多かった. %であり, GDla/GDlb抗体測定により,抗体陽性率. が,抗原ごとにその程度は様々であった(図 3).最. は46.5%に上昇した(図4). も陽性率が向上したのは抗 G M1抗 体で,単独抗原. 6)各測定法追加による抗体陽性率変化. に対する抗体陽性率 14.7%から, PA添加抗原に対. 上述の通り, PA添 加 抗 原 に 対 す る 抗 体 測 定 -. する抗体陽性率 23.5%に上昇した.その他 GDlbや. GDla/GDlb抗体測定を施行することにより,単独. GalNAcGDlaに対する抗体でも, PA添加により. のガングリオシドに対する抗体測定と比較し,いず. 抗体価が上昇する例が多かったが, GQ1bに対する. れも陽性率は上昇し,これら 3者すべてを測定する. 抗体では PA添加により活性の増強する例は滅弱す. と,陽性率は 50.9%であった.さらに IgM抗体測定. る例をわずかに上回る程度であった .. を追加すると,陽性率は 57%となった. ( 図 4). 全体での陽性率は,単独抗原に対する抗体のみの. 7)正常血清及び疾患コン トロール. 0.8%であったが, PA添加抗原に 測定では陽性率 4. 正常血清及び GBS以外の神経疾患について,単. 対 す る 抗 体 測 定 に よ り 陽 性 率 は 45.3%に上昇した. 独のガングリオシド・ PA添加抗原に対する抗体価.

(4) 2 9 4. 金田明子. を測定した.その結果,単独の各ガングリオシドに. PA添加による抗体価増強のメカニズムについて. 対する抗体価は, mean土 3SD<O.lであった .PA添. は,緒言でも述べたように, GMlと PA添加の検討. 加による各抗体価の上昇は, mean土3SD<O.lであ. から, PAの存在により抗体に認識されやすくなる. った.. と考えられている.. 考 察 本研究により, PA添加抗原についての抗体活性. さらに, Hirakawaらは,抗 GQlb抗体について も同様の検討をした結果,抗 GMl抗体は PA添加 で抗体活性が増強する例が大部分であったのに対し. 測定と抗 GSCs抗体測定を加えることで, GBSにお. て,抗 GQlb抗体については PA添加による抗体活. ける抗糖鎖抗体の陽性率が上昇し,診断検査として. 性の増強は約半数にみられるのみであることを報告. の有用性が高まることが確認された.どちらの測定. したそこで今回我々は, GMl・ GQlbを含めその. 法においても,正常および疾患対照において血中抗. 他 8種類のガングリオシドについて, PAによる抗. 九 体はみられないことは既に報告されているが4一. 体活性の変化を検討し, GBSの血清診断として PA. PA添加については GMl・ GQlbのみでしか検討さ れていない.従って,今回改めて, GMl.GQlb以. 添加による抗体測定は有用な方法であるかを検討し. 外のガングリオシドについて,正常対照および疾患. も PAによる抗体価増強効果はみられず,単独の各. IgG抗 GMl抗体は既に報告されている通t)4,ほ とんどの例で PAによる抗体価上昇を認め,陽性率 の上昇の程度も最も高かった.その他 GD1bや G a l D1aに対する抗体でも, PA添加により抗体 NAc-G. ガングリオシドに対する I gG抗体も検出されない. 価が上昇する例が多かった.また例数は少ないが,. ことも改めて確認した.また従来,単独のガングリ. GM2,GM3,GD1aなどに対する抗体も PA添加の. 対照の血清での PAによる抗体価上昇の有無につい て検討した.その結果,いずれのガングリオシドで. た.. オシドを抗原としてしらべた際の GBSにおける抗. 抗原を用いることにより抗体価が上昇する頻度が高. ガングリオシド抗体の陽性率は約 6割と報告されて. かったが, GQlbに対する抗体では H irakawaらの. おり,今回の約 4割はそれと比べてかなり下回るが,. 報告と同様に PA添加により活性の増強する例と減. それは今回対象とした血清の多くが rGBS疑い」と. 弱する例の頻度に大きな差はなかった.. して診断の一助とするために送付されてきており,. PA添加により抗 GMl抗体では抗体価の上昇す. GBS以外の疾患も多数混入している可能性がある. る例が大部分であるのに対して抗 GQlb抗体では. ためと考えられた.. 上昇する例が少ないということについてのメカニズ ムはまだ不明であるが,現時点で考えられている理. GMl Ga 1s1 ・ 3Ga 1 N A cs1 4Ga 1s1 ・ 4G l cs1 -1 'C e r 3 α2 Ne uA c. 由は以下の通りである .GMlはシアル酸をひとつし か持たないが, GQlbはシアル酸の二個つながった ジシアロシル基を二個,計四個持っている.抗原の もつ電荷は抗体の反応性に強く影響を与える.陰性 荷電の弱い GMlは,負電荷をもっ PAが共存する ことによる抗体反応の増強効果の影響を受けやす. GQlb Ga 1s1 ・ 3Ga 1 N Acs1 ・ 4G a 1s1 ・ 4G l cs1 ・ l 'C e r 3. 3. α 2 α 2 Ne uAc 8 ・ 2αNe uA c Ne uA c 8・2αNe uA c GDlb Ga 1s1 3Ga 1 N Acs1 ・ 4G a 1s1 ・ 4Glcβ1-1 'C e r 3 α2 Ne uA c8-2αNe uA c 図 5 GM1/GQlb/G Dlbの糖鎖構造 G a l ::ガラクトース, G l u :グルコース, G a l NAc:Nーアセチルガラクトサミン, NeuAc:N アセチルノイラミン酸(シアル 酸 ) , C e r :セラミド. い.一方もともと陰性荷電の強い GQlbは PAの共 存による影響をうけにくいと考えられる.この仮説 は抗 GD1 b抗体についての以下の実験により支持 される. GD1 bは Gal-GalNAc基 を 有 す る 点 で GMlに共通し,ジシアロシル基を有する点、で GQlb と共通する.抗 GD1 b抗体には, Gal-GalNAc基を 認識して GD1 b,GMl,GAl全てに反応する抗体と, bを単独に認識す ジシアロシル基を認識して GD1 る抗体があるが,この 2者について PA添加の影響 を比較した.その結果,ジシアロシル基を認識する 抗体では PAによる増強効果は乏しく, G a l G a l -. NAc基を認識する抗体には PAによる増強効果が 認められた.つまり同じ GD1bを認識する抗体であ っても,陰性荷電の強いジシアロシル基が抗体の認.

(5) 2 9 5. GBSにおける抗ガングリオシド抗体の新たな測定法. 識に関っている場合には増強効果が乏しく,電荷を. b複合体に対する抗体以外にも, GMl/GD1 aや GD1. もたない Gal-GalNAc基を認識する抗体の場合は,. GD1 b/GTlbに対する抗体も報告されているこれ. PAの影響をうけて反応が強まることが示. らは,いず、れも末端の糖鎖が Gal-GalNAc基のもの. 負電荷の. されたわけである 11. PA添加による抗体価上昇の程度に差はあるもの の,一般的には陽性率が上昇し,正常血清や疾患コ. と sialosyl-galactosyl基 の も の の 組 み 合 わ せ で あ り,この組み合わせが抗体の認識に重要であること が示唆される.. PA添加による抗体価増強がみられ なかったことから, PA添加による抗体測定は,特異. けではなしこの抗体のみが重症化の原因であるの. 度を下げることなく, GBS診断における抗体測定の. か,その他の現象があわさった時に重症化するのか,. 感度を向上させる検査法であるといえる.一方で,. など,その理由については,まだ判明していない.. PA添加による抗体測定により抗体価の減弱する例 もあることから, PA添加抗原に対する抗体だけで. 伝達機能に強い影響を与える可能性があるが 12 細. なく,単独抗原に対する抗体も併せて測定すること. 胞膜上の糖鎖を介した様々な反応について,今後も. が必要である.. 検討を重ねる必要がある.今回検討した抗 GD1a /. ントロールでは. 抗 GDla/GD1 b抗体陽性例全例で重症化するわ. GSCsは単独ガングリオシドよりも細胞内シグナル. また,近年,重症化の指標とされている,ガング. GD1b抗体以外の複合体抗体についても,今後さら. b複 リオシド複合体抗体の一つである GD1a/GD1. に症例を蓄積し,臨床的意義や,陽性率への影響を. 合体抗体の存在は, Kaidaらにより報告され,臨床. 検討し, GBSにおける血清診断の有用性を高めてい. 的に重要な抗体である複合体抗体は,単独のガン. く必要があると考える.. グリオシドにはほとんどあるいはまったく反応しな いが. 2種のガングリオシドを 1つの ELISA用 プ. レート上のウェル内で混合させた場合に初めて強い 反応を示す抗体であるこの反応特性は精製前の粗 ガングリオシド分画を用いた薄層クロマトグラム (TLC)免疫染色にでも確認された.すなわち, TLC. に GD1aや GD1 b単独をそれぞれ別のレーンに展 開して血清を反応させても反応はみられないが,両 者を同じレーンに展開して免疫染色すると,両者の 重なった部分のみに強い反応がみられた.このこと から,この抗体の標的は, 2つのガングリオシドの 糖鎖が相互作用して形成する新たなエピトープであ ると考えられる.そこで, GBSにおいて,この抗 GD1 a/GD1 b複合体抗体陽性例に特徴的な臨床像が. あるかを検討したところ,特に人工呼吸器を装着す るような重症例で陽性になりやすいという結果であ っ た こ の 結 果 を ふ ま え て , 当 科 で は GBSでは GD1 a/GD1 bに対する抗体をルーチンに測定するこ. ととしている.今回はこの抗 GDla/GD1 b抗体測定 により,陽性率がどのように変化したかを検討した. その結果,単独抗原に対する抗体測定では陽性率が 40.8%であったものが,抗 GD1 a/GDlb抗体のみ陽. 性である症例が2 2例 5.7%あり,この測定により陽性 率は 46.5%へと上昇した.従って,単独のガングリ オシドに対する抗体測定のみでは抗体陽性とならな かった症例を,抗 GD1a/GD1 b抗体測定により検出 できる,すなわち偽陰性例を減少させることができ, 複合体抗体測定は,臨床的な指標になるのみならず, 抗体検出率をあげる上でも意義のある検査であるこ とがわかった. GBSでは,今回検討した GD1a/. 謝. 辞. 稿を終えるに当たり,ご指導ならびに御稿聞いただいた近 畿大学医学部神経内科学教室楠進教授,三井良之准教授に深 謝申し上げます.また,終始ご協力いただきました神経内科学 教室員各位に感謝申し上げます. 文 献. 1 . Kusunoki S ( 2 0 0 0 ) A n t i g l y c o l i i d a n t i b o d i e s i n c i3 1 9 :2 3 4 2 3 9 G u i l l a i n . B a r r es y n d r o m e . AmJMedS .YukiN ( 2 0 0 2 )P e r i p h e r a ln e u r o p a t h i e s 2 .W i l l i s o nH J anda n t i g l y c o l i p i da n t i b o d i e s .B r a i n1 2 5 :2 5 9 1 2 6 2 5 k o n e nE ( 19 9 7 )F u n c t i o n a lr a f t si nc e l l 3 . SimonsK,I membranes. Na t u r e3 8 7 :5 6 9 5 7 2 M o r i t aD, OhminamiS, Hit o s h iS, Kanaz. 4 . KusunokiS, awa1( 2 0 0 3 )B i n d i n go fi m m u n o g l o b u l i nGa n t i b o d i e si n G u i l l a i n B a r r esyndromes e r at oam i x t u r eo fGM1and ap h o s p h o l i p i d :p o s s i b l ec l i n i c a li m p l i c a t i o n s . Muscle Nerve2 7 :3 0 2 3 0 6 o r i t aD,T s u j iS,KusunokiS ( 2 0 0 5 ) 5 . HirakawaM,M E f f e c t so fp h o s p h o l i p i d s on a n t i g a n g l i o s i d ea n t i b o d y 5 9 :1 2 9 1 3 2 r e a c t i v i t yi nGBS. JNeuroimmunol1 o r i t a D,Kanzaki K,Kamakura K, 6 . Kaida K,M MotoyoshiK,HirakawaM,KusunokiS ( 2 0 0 4 ) Gang l i o s i d ecomplexa snewt a r g e ta n t i g e n si nG u i l l a i n . B a r r e s y n d r o m e . AnnN e u r o l5 6 :5 6 7 5 7 1 HaysA, N i c k e r s o nG, S p a t zLMc, L indaS, 7 . FreddoL, McginnisS,L i b e r s o nR, V e d e l a rA, ShyE, GambettiL, G r a u s sC, P e t i t oF, C h e s sL, LatovN ( 1 9 8 6 )Monoclonal anti-DNAIgMxi nn e u r o p a t h yb i n d st om y e l i nandt oa c o m f o r m a t i o n a le p i t o p eformedbyp h o s p h a t i d i ca c i d 3 7 :3 8 2 1 3 8 2 andg a n g l i o s i d e s . Jimmunol1 8 . Kaida K,M o r i t a D,Kanzaki M,Kamakura , K MotoyoshiK, HirakawaM, Kusunol 王i S( 2 0 0 7 )A n t i g a n . g l i o s i d ecomplexa n t i b o d i e sa s s o c i a t e dw i t hs e v e r ed i s 苧.

(6) 2 9 6. 金田明子. a b i l i t yi nGBS. JN e u r o l1 8 2 :2 1 2 2 1 8 o r n b l a t hDR( 19 9 0 )A s s e s s m e n to fc u r 9 . AsburyAK,C r e n td i a g n o s t i cf o rG u i l l a i n B a r r es y n d r o m e . Ann Neurol27・S21-S24 1 0 . KusunokiS,ChibaA,KonK,AndoS,ArisawaK, Tate A,Kanazawa I ( 1 9 9 4 ) Na c e t y l g a l a c t o s a m i n y l GD1a i sat a r g e tm o l e c u l ef o r serum a n t i b o d yi n G u i l l a i n B a r r es y n d r o m e . AnnN e u r o l3 5 :5 7 0 5 7 6 1 1.楠 進,平川美菜子,佐田昌美,森田大児.免疫性ニユ ーロパチーにおける血中の抗糖脂質抗体活性に及ぼすリン. 脂質の影響. (免疫性神経疾患に関する調査研究班,平成 1 6 年度班会議. 2 0 0 5年 1月2 6日 一2 7日,東京) 免疫性神経疾. 患に関する調査研究(H1 4 -難治一 1 6 )平成 1 6年度. 総括・分. 担研究報告書 pp1 6 3 1 6 4;2 0 0 5 a n t o sJN,HandaK,Hakomori 1 2 .T o d e s c h i n iAR,DosS S I( 2 0 0 8 )G a n g l i o s i d eGM2/GM3complex a f f i x e d on s i l i c an a n o s p h e r e ss t r o n g l yi n h i b i t sc e l lm o t i l i t yt h r o u g h CD82/cMet-mediatedp a t h w a y . P r o cN a t l Acad S c i USA1 0 5 :1 9 2 5 1 9 3 0.

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F1+2 やTATが上昇する病態としては,DIC および肺塞栓症,深部静脈血栓症などの血栓症 がある.

averaging 後の値)も試験片中央の測定点「11」を含むように選択した.In-plane averaging に用いる測定点の位置の影響を測定点数 3 と

そのうち HBs 抗原陽性率は 22/1611 件(1.3%)であった。HBs 抗原陰性患者のうち HBs 抗体、HBc 抗体測定率は 2010 年 18%, 10%, 2012 年で 21%, 16%, 2014 29%, 28%, 2015 58%, 56%, 2015

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値

「かぼちゃ玉」、「ニンニク玉」などがあり、測定する表面によって使い分けている。図3はタ

国内の検査検体を用いた RT-PCR 法との比較に基づく試験成績(n=124 例)は、陰性一致率 100%(100/100 例) 、陽性一致率 66.7%(16/24 例).. 2

(図 6)SWR 計による測定 1:1 バランでは、負荷は 50Ω抵抗です。負荷抵抗の電力容量が無い