ニシンの乗網と風の関係について
著者
高橋 淳雄
雑誌名
鹿児島水産専門学校研究報告
巻
1
ページ
34-40
別言語のタイトル
On the Relation between Catch of Spring
Herrings and Wind.
34 鹿 児 島 水 窪 専 門 学 校 研 究 報 告 . 第 一 程
ニ シ ン の 乗 網 と 風 の 関 係 に つ い て
高 橋 淳 雄 OntheRelationbetweenCatchofSpringHerrmgsandWind. TadaoTAKAHASHI 緒 言 、二シ吾/の漁獲については第一に佃遊が問題であるが,ニシシが沖に来ていても漁獲につ いてはその時の風が大きく影響していると云われている。この問題に関して調査されたも のも幾つかあるが(註’),何れも有意性の検定がしてないのみならず,得られた数値や資 料のとり方の催件がはっきり示してないので,北海道西岸の春ニシンについて昭和,4年 ∼23年迄の10年間の資料により調べてみた。 相 関 表 風は地点によるちがいがかなりあるので,漁場附近の等座線の走向を以て漁場の風を代表 さ せ る こ と と し , 次 の 6 つ の 型 に 分 け た 。 ’ . ①素厘傾度が北東象限に向っているとき ② 〃 北 西 〃 ③ 〃 、 南 西 〃 ④ 〃 南 東 〃 ⑤素睡傾度が非常に小で①∼④のどjれ,とも判定し難いとき⑥不連続線が通っていて①∼④のどれとも判定し難いとき
但し等厘線の曲率が大なる時の様に隣り合う象限のどちらに入れるか問題に芯る様薩時に
は’等座線の走向が漁場附近で実測されている風向に近い方逓とった,用いた天素図は中
央気象台印刷天気図の朝のものである(註2),朝の天気図をとった理由は,ニシンの乗網
は一般に夜から朝にかけてが多く,それが日中沖揚記録されることが多いからである。
( 註 1 ) 例 え ば 練の習性,水産調査報告16,17,18冊,北海道水産試験場 岡部五郎:北海道日本海岸に於ける春肺漁に及ぼす風の影響 日 本 水 産 学 会 誌 , 6 巻 1 号 藤田孝男:賊の漁獲と低気圧,応用気象1巻1号 太田芳夫,伝法宏:練漁と気象,応用気象2巷1号 (註2)昭和14∼20年は6時,21∼23年は3時但 し こ の 分 け 方 が 正 し い か ど う か の 検 定 は し 高橋一ニシンの乗網と風の関係について 一こ (註3).識計科学研究会,、統計数値表釧:Iによ為 X 2 に よ る 検 定 第1表にx2検定を行う(註3)鴬に,等座線型の④と⑥髭一つの級にして相関表を書 き換える,④と⑥を一しよにしたのは百分率が比較的似ていることと,度数の多い①②③ の差異に比すれば度数の少い④⑥の差異は,たとえあったにしても吟味するだけの意味が ないからである,書き換えた相関表と検定の結果とを第2表に示す。 不谷 ︸稚内
漁獲の方は北海道水産試験場,北海道水産物検査所,北海道庁水産課の3ケ所の資料に
よった,ニシンが沖合に全然いない期間は勿論問題とならないので,初めて5石以上漁獲
のあった日から最後に5石以上漁獲のあった日迄を漁期日数とした,従って年によってこ
の日数は異る訳である,その期間中で100石以上漁獲のあった日遼「漁獲のあった日」と
定義し,10年間の漁期日数の合計約300日に対して等厘線の6つの型と漁獲の有無との
定性的相関表を,作るのであるが,これ注漁業会別にやると分類した各組の数があまり小と
なるので似ているだらうと想像される近隣数ケ所を一まとめにして,そめ地区内の何れか
の地点で上の惟件を充す日遼とり,相関表は地区別に作った(第I表),地区の別け方は
次の通りである。(右図に示す) 1 余 市 地 区 余 市 , 古 平 , 忍 路 , 小 樽 L p J 』 2 浜 益 〃 石 狩 , 厚 田 , 浜 益 3 増 毛 〃 雄 冬 , 増 毛 , 留 萌 4 羽 幌 〃 鬼 鹿 , 苫 前 , 羽 幌 5 天 売 〃 天 売 , 焼 尻 Dd7f寺 6 初 山 別 〃 初 山 別 , 遠 別 , 天 塩 7 仙 法 志 〃 鬼 脇 , 仙 法 志 , 沓 形 8 香 深 〃 駕 泊 , 香 深 , 船 泊9 稚 内 〃 稚 内 , 宗 谷 ‘ ル ヘ
利尻島鵬文島の6漁業組合を3つづつ 2組に分けたのは,各漁業組合毎の漁獲 記録を見ていると,利尻島のうち鬼脇, 仙法志,沓形が似ていて,鴬泊だけは澱 文島の方に似ている様に見えたからである, てない。 貼 沓 3536 鹿児島水産専門学校研究報告.第一巻 7 3 1 1 1 2 1 4 5 1 2 7 1 3 1 9 第 1 表 4 4 1 6 9 1 2 1 1 1 9 1 1 4 芯
舌
│
器
有 2 8 1 4 2 1 1 4 1 7 1 7 天 ① | ② | ③ | ④ | ⑤ ⑥ ’ 計2 9 1 4 1 1 1 4 1 5 1 , 7
有 3 1 9 9 稚 余 市 無一計一有 3 4 1 3 9 1 1 4 ‘ ’ 1 2 1 1 2 7 1 1 1 8 7 1 1 2 8 6 3 1 8 0 1 2 8 1 1 7 1 1 9 1 0 1 2 1 7 2 9 1 4 3 1 2 4 1 8 1 1 7 1 5 1 2 8 9 7 8 1 1 2 6 1 3 0 1 1 9 1 2 1 2 5 1 3 8 1 1 9 1 1 1 1 1 3 5 1 1 1 1 7 1 1 2 4 浜 益 j旺 0 0 , 、 5 3 1 7 7 1 2 1 1 1 8 1 7 7 1 1 8 3 2 5 1 6 1 1 1 2 1 1 0 1 9 香 深 8 1 1 6 5 計 7 8 1 1 1 5 1 4 0 1 2 9 1 2 0 1 2 1 2 9 4 5 3 1 6 5 1 1 8 1 9 1 1 2 8 0 1 1 2 3 1 3 9 1 2 3 1 2 5 計一有一無一計一有一無一計 3 7 1 5 7 1 2 5 1 1 5 1 1 9 5 1 1 0 3 3 3 . ’ 5 6 1 3 1 1 2 0 1 1 8 8 1 1 6 6 3 2 1 7 5 1 1 7 . 1 1 1 1 6 仙 法 志 増 毛 無一計一有一無 5 0 1 8 2 1 1 8 1 1 3 1 8 7 1 1 7 8 7 1 1 5 6 4 8 1 4 8 1 2 2 1 1 2 1 1 9 1 5 1 2 4 3 8 3 1 1 3 8 1 4 9 1 3 3 1 2 6 1 5 1 3 4 4 5 4 1 8 3 1 3 7 1 2 6 1 2 8 計一有一無 7 0 1 1 1 5 1 3 1 1 1 7 1 1 5 2 7 1 4 6 1 2 3 1 1 4 1 1 8 4 1 1 3 2 初 山 別 1 7 1 2 6 1 1 2 1 1 1 1 9 羽 幌 5 7 1 8 6 1 2 2 1 1 2 1 8 8 1 1 9 3 1 3 2 6 1 3 7 8 1 2 1 6 5 8 1 1 5 8暑
'
器
売 ’ 征 計一有一無 計 二 僧 8 4 1 1 3 2 1 4 5 1 2 6 1 2 6 1 2 1 3 2 5 4 2 1 7 3 1 1 7 1 1 0 1 8132 37 ③ ⑤ 良 ① ② 不 良
圭誰雨一飛来器畿
一脚一牌一陣一陣一価一い−伸一哩枠一牌一哩牌一陣|伸一牌一脚一価 一無一計一有一無一計一有一無一計一有一無一計一有一無一計一有一無一計 第 2 表 0.01>Pr 4 法 圭心 16唇356葱
’
等 圧 線 XO2 、 Pr〔x2>xo2〕|有意な差 稚①
│
②
│
③
│
④
⑥
1
0.20>Pr>0.10 仙'
−2
9
1
−4
'
'
'
−4
1
8
1
一'
3
4
1
3
9
1
1
4
1
'
9
’
4 0.20>Pr>0.10 有 4 4.612 0.50>Pr>0.30 余 市 1脈 一”一逓一妬一 一躯一均一瓢一 一m一謡一両一一僅僅牌一
一計一有一無一 香 ① ⑤ 良 ②不良 6.112 ⑤ 良 4 0.05>Pr>0.02 浜 猛 10.127'
'
'
5
1
4
0
4
1
2
0
1
5
6
1
3
,
2
s
'
s
294 4 193 0.01>Pr 山 4 内 166 ③ ⑤ 良 ①②不良 0.01>Pr 増 毛 8211812018 178 16.609 4 妬一喝−8 妃一聡一加 錫一詔一躯 畷一妬一部 344 別 I現 羽1111
|有一無一計一有 0.114 売 Pr>0.99 ”一町一弘一犯一銘一m|Ⅳ一釘−1111111
高橋一二シソの乗網と風の関係について 初 深 12 白 昭一釦一辺一”|虹一四一躯一W一町一Ⅳ一弘一通一認 4 15.921 381261325 1.176 天 0.90>Pr>0.80 4 6.1138 鹿児島水産専門学校研究報告.第一巻 193 第 3 表 24 計’86 101178 線麺一,一巧一”|翠一廻一虹一妬一理一蛤一妬一妬一蛇一狙一猫一鉦一皿一茄調一翠一Ⅳ|鉛
圧③一,一町一犯一u|犯一調一均一”妬一詔一迫一蛇一m・刻瓢逓虹諏廻Ⅳ妬
等②|師一坐一劃一虹一拠一唾一価一形一画一妬一郎一皿一“|銘一・哩妬詔一弘弱釦唖
1凝雪
①⑤|計
型 Xo2 nlPr〔X2>Xoz〕|有意な差 87 291304 161176 稚 内 0.5641410.99>Pr>0.9511一 有’32 26 有一無一計 有’34 6 1 9 9 3.57714 0.50>Pr>0.30 余 市 jmEl29 12 118 計 63 181217 131128 易、 羽 幌 289 29 81111 有 6.373 410.20>Pr>0.10 浜 益 無 51 111183 − 80 19 294 計 124 有一無一計 U割 27 有’40 161166 3.616 410.50>Pr>0.30 増 毛 無’47 2.429 344 計 天 売 仙 法 志 迩一詔一一超 8 16 132 ③⑤良 12.893 410.02>Pr>0.01 158 無’54 38 香 深 156 410.70>Pr>0.50 325 410,20>Pr>0.10 q-l
有
6.438 5 3 7 2 1 3 1 6 2 7 5 3 1 5 2 0 801252836 3 2 4 9 1 6 1 8万
6
6
2
7
1
元
7
4
1
1
5
,
4
3
1
4
3
11 29 5 103│ 志
│万
148 1.965 410.80>Pr>0.70 10 8 1 7 8 計’72 15 261 165 410.50>Pr>0.30 22 304 imEl42 有’14 19 初 山 別 3.788 39 271243 165 死一狸一釦一理 計一有一無一計 14高橋一ニシンの乗網と風の関係について 39
この結果によると,増毛,羽'幌,仙法志では0.01の有意水準で等塵線型式による蓬だ
有意な差が認められ,浜益では0.05の有意水準で有意な差が認められ,何れの場合も⑤
の型即ち風の弱い時は漁.獲に好都合である,i叉,増毛,羽幌では③即ち出し風が好都合で
①②は不良であるが,仙法志では①の型が良く②が不良である,それ以外の地域即ち余市,
天売,初山別,香深,稚内では等座線型による有意な差は認められ芯い,尚,初山別では
百分率が合いすぎている。 前日の風の影響:前節に於て有意な差の認められた地区ではどこでもみんな風の弱い時がいkと云うの
は,実はニシンが前日の風によって接岸乗網したものを,風が穂かになってから沖揚され
記録されているからであるという議論もあるので,次に前日の型式と今日の漁獲の有無を
調べた,叉,有意な差の認められなかった地区についても同様な考から一緒に調べたj④
.⑥を一緒にして書き換えた相関表と検定結果を第3表に示す。
この結果によると,前日の等座線型式による有意な差は羽幌にのみ認められるが,有意
水準が当日の型の0.01.に対して前日の型では0.02になっていて,好都合な型は当日の
場合と同様⑤③である,詞I幌以外の地区ではすべて有意な差は認められず,注目すべきこ
とは当日の型で有意な差の認められた浜益,増毛,仙法志でも前日の型では有意な差は認
められないことである,従って漁獲記録が乗網から1日ずれていて昨日の風によるという
考え方は具合が悪いことになる。 結 論以上の検討から次のことが言える。
ニシンの漁獲は特にどん芯風の時がいL,と言うことは全般的には云え嫁い,但し,浜益,
増毛,羽幌即ち石狩から羽幌の間特に雄冬岬から羽幌の間では,風穏か芯時がよく,叉,
出し風の時が梢よく,俗にいLと云われている西寄りの風はよくない,西寄りがいLと云
われるのは西寄りの風で漁獲のなかった日を考慮せず,漁獲のあった日だけを数えるから
である。又,利尻島では北側以外では風穏かな時及びオホーツク海方面が低墜部になっている時
がよく,沿海州方面が低座部になっている時はよくない。特に羽幌地区では前日の風についても当日の場合と同様のことが云えるが,一般には,
当日の風には有意な差があっても前日の風には有意な差はない。、 これらの地区以外の所では,此処に用いた賛料からはどんな時が特にいLということは 云えない。この様に風の影響が地域によって相違するのは,,実はニシンが風に流参熱るのではなく鯵
40 鹿児島水窪専門学桟研究報告.第一巻 海の状態淀ニシンの乗網に好都合な或る惟件にする風が地域によって相違するからである と考えられる,,風の影響の認められない地域は地形的に,「或る特定な風向が,海の状態を =シシの乗網に特に好都合な惟件にする」と云う様なことのない地域である,有意な差の 出なかった地域で各型の百分率が合いすぎる場合が出ているのは,以上の考察から,・幾つ かの篠件の異なる場所を組合せたことによるものと解釈される。 従って間接的影響をもつ風をではなくて,直接的な海の状態を吟味すれば,どこにも通 用する像件が見出されるかも知れない,これについては後に調査する予定であるが,根本 篠件が見出される前に,どんな風の時にその様な好催件を期待してよいかと云うことが既 に有用な事柄である。 .、本調査に際し札幌管区気象台守川康太郎調査課長には特別の御取計いを煩わし’‘叉同台 十河精也君からは繁雄芯資料の整理に際し援助を受けた,北海道大学元田茂教授並びに北 海道水産試駒場平野譲見,吉田喜一両技官からは御助言注賜わり,鹿鬼島大学金森政治教 授には原稿の御校閲を賜わった,ここに記してこれらの方疫に感謝の意を表する。 筒との論文の一部分は昭和24年4月札幌管区気象研究会に「北海道西岸に於けるニシ ンの漁獲と素象」と題して発表した。 R 6 s u m 6 BytheuseoftheweatherchartsoftheCentralMeteorologicalObservatory andofthefishingdiariesofunionsoffisheriesonthewestcoastofHokkaido, windconditionsfavourablefor‘‘Catch,,ofspringherringsarestudiedfrom thestatisticalpointofview. 日