日米医学協力研究会寄生虫専 門部会
1972年 度 研究報告抄録集
1973年 1月 29日 30日,東 京 目 次 1. 尾 辻 義 人 ・原 田隆 二 ・中 島 哲 ・片 峰 大 助 ・青 木 克 巳 ・中 島康 雄 ・佐 藤 淳 夫 ・多 田 功 韓 国済 州 島 に お け る マ レー 糸 状 虫 症 の治 療 に 関す る研 究 166 2. 和 田 義 人: 蚊 に よ るバ ン ク ロ フ ト糸 状 虫 の伝 搬 頻 度 166 3. 末 永 斂: シ ナハ マ ダ ラ カ の 犬 ブイ ラ リア感 受性 に つい て 167 4. 片 峰 大 助 ・青 木 克 巳: 糸状 虫仔 虫 の 微 細 構 造 に関 す る研 究 167 5. 末 永 斂: 沖 繩 本 島 に お け る犬 フ ィ ラ リア の 浸 淫 状 況 につ い て 168 6. 村 上 文 也 ・石 崎 驍: 乳糜 尿 症 の リンパ 管 造 影 に つ い て 168 7. 頓 宮廉 正,村 主 節 男,作 本 台五 郎,板 野 一 男,稲 臣成 一: Brugia malayiの ミ ク ロフ ィ ラ リア の 微 細 構 造 169 8. 稲 臣成 一,村 主 節 雄,作 本 台 五 郎,頓 宮 廉 正,板 野 一 男: Aedes togoi の複 眼 の微 細 構 造 169 9. 林 滋 生 ・山 本 久: バ ンク ロフ ト糸 状 虫 の 非 流 行 地 にお け る免 疫 反 応 に っ い て 170 10. 神 谷 正 男 ・江 下 優 樹 ・田 中寛: コ トン ラ ッ トフ ィ ラ リアの ゲ ル 内 沈 降 反 応 の研 究 170 11. 田 中寛 ・高 岡 正 敏 ・江 下 優 樹 ・佐 々学: Diethylcarbamazineの 作 用 に対 す る 脾 細 胞 の 関 与 とALSの 影響 17112. 松 田肇 ・田 中 寛: ス ナ ネ ズ ミに感 染 したDipetalonema, Litomosoidesに 対 す るDECの 効 果 171 13. 佐 々 学: フ ィ ラ リア病 の疫 学 と駆 除効 果 判 定 の 統 計 的 解 析 171 14. 佐 藤 英 毅 ・佐 々 学 ・和 田芳 武: 徳 島市 に蚊 の 天 敵 と し て移 植 した カ ダ ヤ シ の成 績 172 15. 和 田芳 武 ・神 田錬 蔵 ・白坂 昭 子: 実 験 動 物 に お け るマ レー 糸 状 虫 ミク ロ フ ィ ラ リア の 出現 性 172 16. 大 島慧 ・田 中英 文 ・上 原 久 美 子 ・田所 昇: 抗 フ ィラ リア 剤 な らび に抗 住 血 吸 虫剤 の ス ク リー ニ ング方 法 に つ い て 172 17. 大 森 南 三 郎: 1964年 か ら始 ま り1972年 に終 った大 久 保 部 落 で の フ ィ ラ リア撲 滅 の成 果 173 18. 栗 原 毅: ア カ イ エ カ発 生 源 対 策 に お け る グ ッ ピー利 用 の 基 礎 的 研 究 173 19. 神 田錬 蔵 ・小 熊 譲 ・只 野 長 夫: Anopheles hyrcanus群 の 進 化 遺 伝 学 的 研 究 日本 南 部 台湾 韓 国 A. sinensis の に つ い て 174 20. 沢 田利 貞 ・佐藤 久 美 子 ・武 井一 利: フ ィ ラ リア症 皮 内反 応 抗 原FST 3-1の 物 理 化 学 的 性 状 及 びPCA反 応 に よ る抗 原 性 につ い て 174 21. 塘 晋 ・中島 敏 郎: 日本 住 血 吸 虫 性肝 線 維 症 に関 す る研 究 175 22. 倉 田誠 ・井 上 卓 ・古 賀 道 衛 ・橘 川 博 英: 日本 住 血 吸 虫 感 染 に よ る腹 部 諸 組 織 の 164
炎 症 性 反 応 にお け る内 臓 神 経 の役 割 176 23. 阿 久 沢 実 ・古 田美 穂: Immunoadsorbent 法 に よ る住 血 吸 虫 の 特 異 抗 体 の精 製 に つ い て 176 24. 岡部 浩 洋 ・平 田瑞 城 ・阿 久 沢 実: 免 疫 電 気 泳 動 に よ る 日本 住 血 吸 虫 の雌 雄 間 に お け る抗 原 系 につ い て 176 25. 岡部 浩 洋 ・阿 久 沢 実 ・古 田美 穂: 日本 住 血 吸 虫 症 にお け る二 次 免 疫 反 応 につ い て 177 26. 野 島 尚 武 ・片 峰 大 助: 宮 入 貝 卵 子 の濾 紙 上 飼 育 につ い て 177 27. 川 島 健 治 郎: 日本 住 血 吸 虫 の生 物 的 防 除 に 関 す る研 究 177 28. 辻 守 康: 片 山地 方 にお け る免 疫 学 的 調 査 成 績(3) 178 29. 岩 永 襄 ・辻 守 康: 硅 藻 類 餌 料 に よ る 宮入 貝 の 室 内 飼 育 に関 す る基 礎 的 研 究 178 30. 佐 藤 重 房 ・鈴 木 登 志 子: 日本 住 血 吸 虫罹 患 動 物 に お け る血 中 細 胞 よ りの ヒス タ ミ ン遊 離 に つ い て 179 31. 横 川 宗 雄 ・佐 野 基 人 ・荒 木 国 興 ・岡部 浩 洋 ・阿 久 沢 実 ・木 船 悌 嗣 ・古 田美 穂 ・平 田瑞 城: 久 留 米 長 門石 地 区 に お け る 日本 住 血 吸 虫 症 の調 査 成 績 179 32. 横 川宗 雄 ・佐 野 基 人 ・荒 木 国 興 ・小 林 仁 ・篠 原 信 賢 ・時 田 賢 ・飯 島利 彦 ・見 目道 子 ・ 五 十 場 一 子 ・久 津 見 晴 彦 ・薬 袋 勝 ・三 木 阿 い子 山梨 県 敷 島 町 に お け る 日本 住 血 吸 虫 症 の調 査 成 績 180 33. 多 田 富雄 ・奥 村 康 ・近 藤 洋 一 郎 ・横 川宗 雄 ・佐 野 基 人:
日本 住 血 吸 虫 感 染 サル に お け るImmuno complex disease の 発 生 180 34. 石 崎 達 ・熊 田三 由 ・加 藤 桂 子 ・保 阪 幸 男:日 本 住 血 吸 虫抗 原 に よ るマ ウ ス組 織 マ ス ト
細 胞脱 顆 粒 現 象 181
35. 安 羅 岡 一 男 ・保 阪幸 雄 ・児 玉 邦 子: Endod (洋種 ヤ マ ゴ ボ ウPhyrtolacca dodencandra)
のButanol extract の ミヤイ リガ イ に対 す る殺 貝 効 果 の 実 験 室 内検 討 181 36. 田 中寛 ・松 田肇: レイ テ 島 に お け る手 指 採 血 に よ る住 血 吸 虫免 疫 反 応 の 方 法 181 37. 井 内正 彦 ・木 谷 健 一: 甲府 市 立 病 院 に お い て 観 察 され た慢 性 日本 住 血 吸 虫 症 の病 態 182 38. 久 津 見 晴 彦 ・薬 袋勝 ・梶 原徳 昭: 山梨 県 にお け る 日本 住 血 吸 虫 症 の 既 往 歴 と皮 内 反 応 陽 性 率 182 39. 久 津 見 晴 彦 ・薬 袋勝 ・梶 原徳 昭: 感 染 貝 検 出 地 区 にお け る 日本 住 血 吸 虫 症 患 者 の検 索 183 40. 大 家 裕 ・林 文 子 ・青 木 孝: マ ン ソ ン住 血 吸 虫 の リ ンゴ酸 脱 水 素 酵 素 に 対 す る金 属 イ オ ンの 影響 183 41. 福 島 英 雄 ・水 上 惟 文 ・津 山 新 一 郎: バ ン ク ロ フ ト糸 状 虫症 の集 団 治 療 184
(1) 韓 国済洲島に おけるマ レー糸状 虫症 の治療 に関する研究
鹿 児島大学医学部第二 内科 尾辻 義人 ・原田 隆二 ・中 島 哲
長 崎大学熱帯医学研究所 片峰 大助 ・青木 克己 ・中島 康雄
鹿 児島大学医学部医動物学教 室 佐 藤 淳夫 ・多 田 功
済 州 島 は古 来 マ レー 糸状 虫 症 の 流 行 地 とし て有 名 で あ り,私 共 の成 績 で もか な り濃 厚 な 流行 地 で あ っ た。 発 見 され たMicrofilariaは 何 れ もBrugia malayiで あ っ た。
マ レー糸 状 虫 陽性 者 にDiethylcarbamazine (DEC と略 す)を 投 与 す る と高 率 に(35例 中31例,88.6 %)発 熱 が み られ た が,発 熱 の程 度 は バ ン ク ロ フ ト糸 状 虫 の 場 合 に比 較 して高 熱 を発 す る者 が 多 か った 。 われ われ は 副 腎皮 質 ホ ル モ ン剤 を これ らの 副 作 用 防 止 のた め試 用 し,著 明 な発 熱 抑 止 作 用 を 認 めた 。 な お副 腎皮 質 ホ ル モ ン剤 を併 用 して もDEC のMf 減 少 作 用 に は何 等 の 影 響 も与 えな か っ た。 (2) 蚊 によるバ ンクロフ ト糸状虫 の伝搬 頻度 長崎大 学医学部医動物学教室 和 田 義 人 長 崎 県 福 江 島 長 手 部 落 に お い て,蚊 の 駆 除 の み に よ る バ ン ク ロ フ ト糸 状 虫 症 の 撲 滅 実 験 を1962年 以 降 行 な っ て き た が,そ の 間 に 得 られ た 仔 虫 陽 性 者 数 の 推 移,伝 搬 蚊 の 密 度 な ど の 資 料 を 基 に し て,実 験 開 始 直 前 に住 民 が1年 間 に 糸 状 虫 の 感 染 幼 虫 保 有 蚊 か ら吸 血 さ れ て い た 頻 度 を 推 定 し た 。 先 ず,1年 間 に 仔 虫 陰 性 者 が 陽 転 す る率 をa,陽 性 者 が 陰 転 す る率 をbと す る。 人 の 体 内 で 糸 状 虫 成 虫 が 仔 虫 を 出 し 続 け る 期 間 は 約7年 と推 定 され て い る の で,b= 1/7= 0.1429と な る。 長 手 町 で の1961年 の 仔 虫 陽 性 率 は15% で あ っ た の で,1年 間 に 仔 虫 陽 性 か ら 陰 性 に な る 人 の 長 手 町 全 体 で の 率 は,陽 性 率 ×b= 0.15× 0,1429= 0,0214で あ る。 も し も,長 手 町 で の 糸 状 虫 症 浸 淫 が 安 定 し た 状 態 に あ る と す る と,こ の 率 は,1年 間 に 仔 虫 陰 性 か ら 陽 性 に な る 人 の 全 体 で の 率 に等 し い 筈 だ か ら,0,0214= 陰 性 率 × a,従 っ て0,0214= 0.85× a,こ れ か らa= 0.0252を 得 た 。 ま た,長 手 町 で の 主 伝 搬 蚊 ア カ イ エ カ は1戸 当 り平 均11.1個 体 採 集 さ れ た 。 こ の 値 と,同 時 に 行 な っ た 人 を お と り と し た 二 重 蚊 帳 採 集 の 成 績 と か ら,1人 が1日 に ア カ イ エ カ か ら吸 血 され る 頻 度 は22.2乃 至111程 度 で あ ろ う と推 定 され た 。 別 の 研 究 か ら,仔 虫 陽 性 率15%の 部 落 の 人 家 内 で 採 集 さ れ る ア カ イ エ カ の 中 で 感 染 幼 虫 を持 っ て い る も の の 率 は0,00235, 1年 間 で 感 染 が 起 る 期 間 は100日 と い う値 が 得 ら れ て い る の で,長 手 町 で1人 が1年 間 に 感 染 幼 虫 保 有 蚊 か ら 吸 血 され て い た 頻 度 は,22.2乃 至111に0,00235× 100を 乗 じ て,5.217乃 至26。085と 推 定 さ れ た 。 糸 状 虫 症 の 伝 搬 能 率 が, (仔 虫 陰 性 者 の 陽 転 率)÷(1人 が1年 間 に 感 染 幼 虫 保 有 蚊 か ら吸 血 され る 頻 度)で 表 わ され る と す る と, そ れ は0.0252÷ 5.217= 4.83× 10-3乃 至0.0252÷ 26.085= 9.66× 10-4と 計 算 され る。 一 方,Hairston & Meillon (1968)は,ラ ン グ ー ン で の 調 査 成 績 か ら,バ ン ク ロ フ ト糸 状 虫 症 の 伝 搬 率 と し て4.78× 10-5乃 至6.71× 10- 5の 値 を示 し た 。 こ の よ う に 小 さ な 伝 搬 能 率 が 得 ら れ た の は,彼 等 が 年 齢 別 仔 虫 陽 性 率 か ら Mueuch のcatalytic model を 用 い て 計 算 し たaの 値 を,誤 っ て1年 間 に 仔 虫 陰 性 者 が 陽 転 す る 率 に 等
(3) シ ナ ハ マ ダ ラ カ の犬 フ イラ リア感 受 性 に つ い て 長 崎 大 学熱 帯 医学 研 究 所 衛 生 動 物 学 研 究 室 末 永 斂 わ が国 にお け るシ ナ ハ マ ダ ラ カの 犬 フ ィ ラ リア 幼 虫 に対 す る 感 受 性 に つ い て は 井 上(1937)の 報 告 が あ り,こ の 蚊 が 感 染 犬 か らの吸 血 に よ っ て摂 取 した フ ィ ラ リア 仔 虫 を感 染 幼 虫 に ま で 発育 させ 得 る可 能 性 が示 唆 され た 。 著 者 は 長 崎 市 内 の 水 田 を含 む 地 区 に多 い この シ ナハ マ ダ ラカ に つ い て犬 フィ ラ リア感 染 実 験 を行 な った の で そ の成 績 に つい て報 告 す る。 水 田地 帯 の牛 舎 へ 吸 血 に飛 来 した未 吸 血 の雌 蚊,お よ び既 に牛 か ら吸 血 した もの を採 集 し,25℃ 室 内 で 飼 育 産 卵 させ た後 の 雌 蚊 を材 料 と して,25℃ 室 内 で感 染 犬 か ら吸 血 させ,こ の蚊 が摂 取 す る仔 虫 数,糞 と共 に排 泄 す る仔 虫数,25℃ に お け る 幼 虫 の 発 育 状 況,お よ び各 発 育 期 幼 虫 に よ る蚊 の感 染 率 等 を調 べ た 。 供 試 蚊 の 吸 血 率 は約30%,1♀ 平 均 吸 血量 は約3.0mm3で あ っ た。 吸 血 開始 直 前 に お け る犬 の耳 朶 血60mm3中 の 仔 虫 数 は133隻 で あ っ た。 蚊 が摂 取 した 仔 虫 数 は1♀ 平 均8.8隻 で,吸 血 直 前 に お け る犬 の 耳朶 血 中 の仔 虫 数 と蚊 の 吸 血 量 とか ら算 出 した 予 想 摂 取 仔 虫数7.9隻 よ り幾 分 多 か った が,各 蚊 が摂 取 した仔 虫数 は か な り異 な り,最 多20隻,最 少1隻 で あ った 。本 種 は 吸 血 に よ って摂 取 した 仔 虫 の 約42%を 糞 と共 に排 泄 す る。排 泄 の 時 期 は25℃ で は 吸 血 後5日 目 まで で あ るが,大 部 分 は3日 目 に排 泄 され る。 マ ル ピギ ー氏 管 に侵 入 した フ ィ ラ リア仔 虫 は揃 って 発育 を開 始 し,か な り多 くの もの が約15日 間 で感 染 幼 虫 にな る。 す な わ ちう 各 発育 期 幼 虫 に よ る こ の蚊 の 感 染 率 は1期 で67.3%,II期 で60.7%,IIIb期 で44.3%と 共 に か な り高 率 で あ っ た。 感 染 蚊1♀ 当 りの 保 有 幼 虫数 はIIIb期 で4.6隻 で あ った 。 この蚊 の体 内 で 発育 した 感 染 幼 虫 の体 長 は平 均1016.9μ で,既 報 の トウ ゴ ウヤ ブ カ体 内 で 発育 し た感 染 幼 虫 の体 長 よ り幾 分 短 か か った 。 以 上 の成 績 か ら,シ ナ ハ マ ダ ラカ は感 染 犬 か らの 吸 血 に よ って 摂 取 した仔 虫 のか な り多 くを 排 泄 す る が,過 半 数 の 仔 虫 を マル ピギ ー氏 管 に侵 入 させ,発 育 を完 了 させ るの で,感 染 幼 虫 に よ る こ の蚊 の感 染 率 は,最 も感 受性 が 高 い トウ ゴ ウヤ ブ カ の感 染 率 に次 ぐ高 率 で あ る こ とが わか っ た。 (4) 糸 状 虫 仔 虫 の微 細 構 造 に 関 す る 研 究 長 崎 大 学 熱 帯 医学 研 究 所 寄 生 虫 部 片 峰 大 助 ・青 木 克 己 著 者 は走査 型 電 子 顕 微鏡 を用 い て各 種 糸 状 虫 仔 虫 の体 表 微 細 構 造 の 比較 研 究 を 行 な つ てい るが,今 回 はDiroflaria immitis, Brugia pahangi 仔 虫 に つ い て報 告 す る。D. immitis, B . pahangi 仔 虫 とも に 頭 端 尾 端 を除 い て体 表 は 平滑 で,虫 体 の 長 軸 に ほぼ 直 角 で等 間 隔 に走 る多 くの 輪状 溝 が み られ る。 しか し側 線 等 は み られ ず脊 腹 面 は不 明 で あ る。 輪 状 溝 の 数 はD. immitis で 約300,B. pahangiで 約450あ り,B. Pahangi の 輪 状 溝 間 の距 離 はD. iumitis に比 し短 い。 両種 の 最 も重 要 な相 違 点 は頭 部 で あ る。 頭 端 部 は と もに半 球状 を呈 し,そ の 一端 に先 端 の尖 っ た楔 様 の 鉤 が み られ る。 そ の長 さはB. Pahangi で は0.7∼1.1μ でD. immitis の約0。3∼0.5μ に比 べ て長 い。D. immitis で は 頭 端 中央 部 と鉤 の対 側 に 各 々一 個 の小 孔 が認 め られ るが,B. Pahangiで は頭 端 の中 央 部 に短 形 の陥 凹 がみ られ,こ の陥 凹 と鉤 の 中 間 に径 約0.2μ の 小 孔 が認 め られ る。 この よ うな 小 孔 お よび 短 形 の陥 凹 は あ る 器 官 の 開 口部 と 思 われ るが,現 在 の とこ ろ不 明 で あ る。 ま た両 種 と も第 一 体 環 は鉤 の あ る側 が他 側 よ り狭 い が,B. pahangiの 第 一体 環 広 側 にD. imuitis に はみ られ な い 長 さ0.5∼0.8μ の3ヶ の棘 が み られ る。 排 泄 孔 はD. imm-itisで は頭 端 よ り90番 目前 後 の体 環 の 中央 に 開孔 して い る がB. Pahangiで は150番 目前 後 に 開孔 し,そ
の形 はD. immitis とほ ぼ同 様 円形 で あ るが,一 般 にB. pahangiが 大 きい よ うで あ る。 肛 門 孔 はD. immitis で は尾 端 よ り95番 目附近 の体 環 中央 部 に開 孔 し緋 泄 孔 よ り大 き く類 円 形 を呈 す が,B. pahangi で は確 認 に まで 至 っ て な い。D. immitisで は 尾 部 に近 づ くに従 って徐 々 に細 くな り,こ の部 の体 環 は数 珠 状 の つ らな りと して み られ る、 これ よ り長 さ4∼5μ の 棒 状 を呈 す尾 端 に 移 行 す る。 こ の 棒 状 部 に は 輪 状 溝 は 明 らか で な い。B. pahangiの 尾 端 に は 特 有 の 球 状 の 膨 み が み られ る,こ れ よ り急 に細 くな って 棒 状 の尾 端 部 に移 行 す る。 この棒 状 部 は6∼7μ でD. iumitisの それ よ り長 く末端 まで 明 か な輪 状 溝 が み られ る。 (5) 沖 繩 本 島 に お け る 犬 フ ィ ラ リア の 浸 淫 状 況 に つ い て 長 崎 大 学 熱 帯 医 学 研 究 所 衛 生動 物 学 研 究 室 末 永 斂 1972年9月 に,那 覇 市 内 に あ る沖繩 県 犬 管 理 所 に 捕 獲 抑 留 され てい た 野 犬 に つい て フィ ラ リア 仔 虫保 有 状 況 を調 べ,検 血 犬 はす べ て解 剖 してDirofilariaimnitis成 虫 がい るか ど うか を 調 べ た 。 調 査 した 131頭 の 中17頭 が末 梢 血 液 中 に フ ィ ラ リア仔 虫 を 保 有 してい た が,仔 虫 の 種 類 はす べ てDiPetalonema reconditwnで あ っ た。 犬 の解 剖 結 果 は,わ ず か に1頭 が心 臓 にDir. immitisの 雄 成 虫3個 体 を 保 有 し て い た だ け で あ っ た。 今 回 は,Dip. reconditum 成 虫 の 検査 は で き なか った 。 駐 沖 繩 米 陸 軍 獣 医 部 隊 提 供 の 資 料 に よ り,同 部 隊 所 属 の軍 用 犬113頭 につ い て は徹 底 した健 康 管理 が 行 な わ れ て い て,フ ィ ラ リア 仔 虫保 有 犬 は 皆 無 で あ る こ とが わ か った 。
今 回 の調 査 に よ り,日 本 復 帰 後 間 もない 沖 繩 にはDir. immitis 感 染 犬 は極 め て少 ない が,Dip. recon-ditun感 染 犬 は か な りい る こ とが 明 ら か に な っ た。 こ のDip. reconditwn は米 軍 人 あ るい は 軍族 の ペ ッ
ト犬 と共 に米 国 か ら移 入 され た もの と思 わ れ る。 (6) 乳 び 尿 症 の リンパ 管 造 影 に つ い て 長 崎 大 学 熱 帯 医 学研 究 所 内 科 村 上 文 也 ・石 崎 驍 乳 び尿 の 発生 機 序 の詳 細 に つ い て は 未 だ 不 明 の 点 が少 な くな い。 著 者 らは 乳 び尿 の 病 因 を 解 明 す る 目 的 で,1967年 よ り1971年 ま で に長 大 附 属 病 院 熱 研 内科 に入 院 した フ ィ ラ リア性 乳 び尿 患 者45例 を 対 象 と し てKinmonth法 に よ っ て リン パ 管 造影 を実 施 し,次 の成 績 を え た。 1) リンパ 管 造 影 所 見 の 中 で最 も高 頻 度 にみ られ た の は腎 リンパ 逆 流像 で,45例 中44例(97.8%)に 証 明 され た。 部 位 別 で は両 側 に み とめ るの が28例 で最 も多 く,9例 は左 側 の み,7例 は右 側 のみ に み ら れ た 。 この 逆 流 像 は腰 部 本 幹 下 部 お よび 中 央 部 附 近 よ り直 接 腎 周 囲 に 網 状 に拡 が る もの が 多 くら 上 部 乳 び槽 附近 か らの 逆 流 像 は1例 もみ られ な か った.督 周 囲 に逆 流 した 造 影 剤 は 他 部 の リンパ 管 影 が 消 失 し て も残 存 す る傾 向 が あ りま た造 影 後 早 い 時期 に膀 胱 へ の 造 影 剤 の 流 入 が み られ る こ とが あ るの で,こ の 逆 流像 は リンパ 管 と腎 盂 との交 通 を示 して い る もの で乳 び尿 の診 断 上 最 も特 異 的 な 所 見 と考 え られ る。 2) 胸 管 に は拡 張,蛇 行,壁 の不 整 な どの所 見 が45例 中8例 に存 在 した が,明 か な 閉塞,狭 窄 の像 は 1例 もみ られ ず,従 って 乳 び尿 の発 症 に は胸 管 は 直接 関 与 し てい ない と思 われ る。 3) 旁 大 動 脈,骨 盤 腔 内,そ け い部 な どの リン パ 節 は 一 般 に小 さ くな り,数 も減 少 す る 傾 向 がみ られ る。 時 に は造 影 剤 の と りこみ が 少 な くspongyな 外 観 を呈 す る もの な ど もあ る。 この よ うな リンパ 節 の 変 化 は病 歴 の長 い もの に顕 著 で あ っ た。 4) 旁 大 動 脈,腸 骨,骨 盤 腔 内 リンパ 管 の拡 張,網 状 増 殖 は全 例 に み と め られ るが,こ の 変 化 も病歴 168
の 長 い もの に著 明 にみ られ る。 5) 乳 び尿 症 の 内科 的治 療 法 には 未 だ 確 実 な もの が な い現 状 で あ る。 著 者 らは 乳 び 尿 の診 断 の た め に リンパ 管 造 影 を実 施 してみ る と,施 行 後 乳 び尿 が 消 失 乃 至軽 快 す る こ と を 認 め る こ とが あ る の で,本 法 の治 療 へ の応 用 につ い て も検 討 を行 な っ た。 す な わ ち リン パ 管造 影 を実施 した45例 中13例(31%)に 乳 び尿 が 完全 に停 止 した。 こ の率 は時 々 み られ る 自然 寛 解 の 頻度 を上 廻 る もの と 考 え られ る。 そ の原 因 に つ い ては 明 か で ない が,造 影 剤 中 に含 ま れ る ヨー ドの 薬理 作 用 に よ る もの か 或 は造 影 剤 が 油 性 で あ る た め リンパ 瘻 に栓 塞 を生 じ た りまた 炎 症 をお こ して 内腔 を閉塞 す る こ とな どが推 測 され る。 (7) Brugia malayi の ミク ロ フ ィラ リア の微 細 構 造 岡 山 大 学 医 学 部 寄 生 虫 学 教 室 頓 宮 廉 正 ・村 主 節 雄 ・作 本 台 五 郎 板 野 一 男 ・稲 臣 成 一 B. malayiの ミ ク ロ フ ィ ラ リアは 韓 国 済 州 島 の 自然 感 染 した男 性 よ り分 離 した。mfのsheathは 厚 さ 約200Aの 電 子 密 度 の低 い膜 で,そ の膜 上 にdenseな 顆 粒状 物 質 が付 着 してい る.虫 体 とsheathの 問 に は しば しば排 泄 腔 内 と同 様 の 物 質 がみ られ る。 角 皮 に は規 則 的 なstriationが 存 在 し,角 皮 はexternal cortical, internal cortical, fibrous layer に分 た れ る。 頭 部 先 端 に は 複 雑 な切 れ 込 み が あ り,少 な く と
も1本 のspineが 後 方 に 向 っ て生 え て い る。 この 先 端 に は 中 にcillia様 の 微 細 管 構造 を 持 った1対 の cephalic channelとcentral canal (phamyngeal thread)が 開 孔 し てい る。phamyngeal thread は さ ら に後 部 のinner body に まで の び てinner bodyの 内 部 と通 じて い る。 筋 細 胞 は細 長 い紡 錘 形 で神 経 環 付 近 では 横 断 像 でみ る と4つ の グ ル ー プ に 分 た れ る。 大 小2種 類 の フ ィ ラメ ン トか らな り,フ ィ ラ メ ン ト存 在 部 は 角皮 側 に細 胞 質 は内 側 に位 置 して い る。 神 経 環 部 に は核 が 存 在 せず 中心 に 神 経 繊 維 状 の も の が錯 綜 して い るが神 経 細 胞 は 明確 で な か った。 排 泄 腔 は体 外 に開 孔 してお り,内 腔 面 に拡 微 絨 毛 様 の突 起 が密生 して い る。 排 泄 腔 と連 続 した排 泄 細 胞 は大 き な細 胞 で,細 胞 質 内 には 粗 面 小 胞 体 が非 常 に 良 く 発達 して い る。innerbodyは 排 泄 細 胞 の後 方 か らG1細 胞 にま で の び た 非 常 に細 長 い 電 子 密 度 の比 較 的 高 い不 定形 の物 体 で,虫 体 によ っ て は 内腔 が大 小 様 々 な顆 粒 状 に な っ てみ られ る。 このinner bodyが 何 個 の細 胞 か ら構 成 され るか は 今 の と ころ 明確 では な い 。G1細 胞 は 非常 に大 きな 細 胞 で,横 断 像 で み る と虫体 の ほ ぼ全 体 を 占 めて い る。R 2-4細 胞 は 肛 門 に近 く核 は 他 の 細 胞 と異 な り核 小 体 が 明 瞭 に 中央 にみ られ る。 肛 門 はや は り体 外 に開 孔 部 を持 ち,内 腔 面 に は 多数 の微 絨 毛 様 の 突 起 を 持 っ てい る。 しか し排 泄 腔 の もの に較 べ て よ り太 くよ り短 い。 さ らに尾 部 にはcephalic channelと 同 じよ うな1対 のcaudal channelが 存 在 し,中 に は電 子 密 度 の高 い物 質 が み られ る。 そ して こ のchannelも や は り体 外 に開 孔 し て い るの が み られ る。 (8) Aedes togoi の 複 眼 の微 細 構 造 岡 山 大 学 医 学 部 寄 生 虫 学 教 室 稲 臣 成 一 ・村 主 節 雄 ・作 本 台 五 郎 頓 宮 廉 正 ・板 野 一 男 トウ ゴ ウヤ ブ カの 複 眼 を走 査 電 子 顕 微 鏡 な らび に 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 で観 察 した 。 トウゴ ウヤブ カの複 眼 は 左 右 そ れ ぞ れ400な い し500個 の六 角 錐 状 の個 眼 の 集 合 体 で あ る。 これ らの 個 々 の外 表 面 に は低 倍 率 で観 察 す る と顆 粒 状 構造 を呈 し,さ らに拡 大 す る と これ ら 顆 粒 状 構 造 物 が 無 数 の乳 頭 状 突 起 で あ る こ とが明 らか に な っ て来 る。
これ ら複 眼 の超 薄 切 片 を透 過 型 電 子 顕微 鏡 で観 察 す る と,個 眼 外 表 面 には 角 膜 レン ズ が あ り,そ の直 径 は約1.5μ で,電 子 密 度 の高 い層 と,低 い 層 とが 交 互 に配 列 し,層 状 構 造 を呈 して い る。 これ をそ の横 断 像 で み る と渦 巻 状 を呈 して い る。 この 角膜 レンズ の外 表 層 に は約1.2μ 程 の厚 さの 電 子 密 度 の 高 い 層 が あ る。 こ の層 の表 面 に は高 さ200mμ 直 径160mμ 程 の 乳頭 状 突起 が み られ,そ の頭 頂 間 距 離 も約200A で,こ れ らが規 則 正 し く配 列 して い る。 これ らの突 起 は角 皮 性 で無 構 造 で あ る。 角 膜 レン ズ の 内下 層 に は胞 体 に とん だ 晶子 体 が あ り,こ れ らの 細胞 の 周 囲 は 色 素 細 胞 に よ り取 りか こ まれ て い る。 以 上 の よ うな レンズ 装 置 の下 側 には視 細 胞 が 集 合 して お り,そ の 中心 軸 に は 直 径860A位 の一 定 方 向 に走 行 す る所 の 自由 突起 が 無数 に密 生 して ラブ ドー ム を構 成 して い る。 (9)バ ン ク ロ フ ト糸 状 虫非 流 行 地 に お け る免 疫 反 応 に つ い て 横 浜 市 立 大 学 医 学 部 寄 生 虫学 教 室 林 滋 生 ・山 本 久 1972年8月 か っ てバ ン ク ロ ク ト 糸状 虫 症 の 流行 地 で あ った と され る茨 城 県 北 部 の 大 子 町 周 辺 の2部 落 を調 査 す る機 会 を得 た 。皮 内 反 応(ST),間 接 赤 血 球 凝 集 反 応(HA),補 体 結 合 反 応(CF)お よ び ミク セ フ ィ ラ リア(Mf.)の 検 索 を行 な っ た。 そ の 目的 は 全 地 区 に現 在 なお バ ン ク ロフ ト糸 状 虫 の流 行 が あ る の か ど うか,流 行 が停 止 した と考 え られ る場 合 に 上 記 の よ うな 免 疫 反 応 が ど うな っ て い るか な ど を 知 る こ と にあ った 。 大 子 町 周 辺 は 古 くか ら 乳 糜 尿,陰 嚢 水 腫 が 見 られ た地 区 で,近 くは 林 ら(1955)の 調 査 で も これ らの有 症 者 が 確 認 され た が,Mf.は 全 員 陰性 で あ った と され て い る。 今 回 の調 査 で 血 乳糜 尿 の 患 者1名 を確 認 した外 大 子 町 保 健 所 の話 で は 別 に1名 の 乳 糜 尿 患 者 が あ る との こ とで あ った。 調 査 は 同 町 芦 ノ倉(203名)お よ び塙(139名)の2部 落 の 合 計342名 につ い て行 な っ た。 な お,STの 抗 原 は FST抗 原,HA,CFに 用 い た抗 原 は犬 糸 状 虫 成 虫 の生 理 食 塩 水 抽 出 抗 原 で あ る。 検 査 の 方 法 は 従 来通 りで あ る。342名 中血 清 を利 用 出来 た の は101名 で あ っ た 。Mf.は 全 員 陰 性 で あ っ た。ST.は 芦 ノ倉27.09 %,塙51.80%で あ っ た 。ST陽 性 率 や膨 疹 の 年 齢 別 分 布 な どは 山梨 県 下 部 町周 辺 の 古 い 流 行 地 で の わ れ われ の 調査(1966)に 類 似 して い た。 年齢 分 布 は 大 子 地 区 で は0∼9歳 群6.25%,下 部 地 区 の そ れ は 3.85%,10∼19歳 群 は夫 々20.00%で 若 年 齢 層 で は 陽 性 率 は 奄美大 島 な どの 流 行 地 の それ と く らべ て 低 い。 年 齢 が高 くな る につ れ て 陽 性 率 も 上 昇 す る が,流 行 地 の 成 績 よ りも 陽 性 率 は明 らか に低 か った 。 以 上 よ り大 子 町 周 辺 で は現 在 バ ン ク ロフ ト糸 状 虫 の 流 行 は 停 止 した もの と推 測 され た 。CFは 全 員 陰性 で,さ きに 報 告(1970)し た沖 繩 か ら移 住 した 集 団34名 に つ い て の結 果 と同 じで あ っ た。HAに 関 して は,本 地 区 とは 別 に本 学 病 院 に入 院 して い る フ ィ ラ リア症 で な い 神 奈 川 県 在 住 の患 者191名 の血 清 に つ い て併 せ て検 討 した 。 入 院患 者 血 清 のHAで は稀 釈 倍 数8倍 以 下37.7%, 32倍 40.84%, 128倍21.47%と い う結 果 で512倍 以 上 は1例 もなか っ た 。 全 くの 健 康 人 血 清 で な い とい う点 で な お 問題 が 残 る が 当 教 室 で 行 な っ てい る犬 糸 状 虫成 虫 を抗 原 とす るHAで は稀 釈 倍 率128倍 ま で は正 常人 で 反 応 が 見 られ る と考 え られ る。 仮 に これ を基 準 に とれ ば,今 回 の調 査 地 区 で は512倍 の もの は4名(3.96%)で20歳 群 に1 名,50歳 群 に1名60歳 群 に2名 認 め られ た。 (10) コ トン ラ ッ トフ ィラ リア の ゲ ル 内 沈 降 反 応 の研 究 東 大 医科 学 研 究 所 寄 生 虫研 究 部 神 谷 正 男 ・江 下 優 樹 ・田 中 寛 コン トラ ッ ト糸状 虫(Lc)を 抗 原 と して コ トン ラ ッ ト血 清 の ゲ ル 内沈 降 反 応 を行 な った。 感 染 後11週 170
の血 清88例 中86例 に1∼4本 の沈 降 線 が み られ,非 感 染82例 は反 応 が な か った 。 こ の感 染 血 清 中8例 は 犬 糸 状 虫抗 原(Di)に 対 し1∼2本,7例 は広 東 住 血線 虫(Ac)抗 原 に対 し1∼2本 の 沈 降 線 が み られ た が,非 感 染 血 清 は反 応 を示 さな か った 。 類 属 反 応 を 示 した8例 の血 清 を用 い,3抗 原 間 の 抗 原 性 を比 較 した結 果,Lcに のみ反 応 す る もの と,Lc, Di, Acに 共 通 に出 現 す る沈 降 線 を認 めた 。 免 疫 電 気 泳 動 法 で は3抗 原 に共 通 な沈 降 線 は 陽 極 側 の原 点 附 近 に あ らわれ,Lcに の み 出 現 す る線 は陰 極 側 原 点 に近 く 現 われ た。 後 者 の位 置 は コン トラ ッ トの感 染 初 期 に認 め られ る線 の位 置 にS一致 して い た 。 (11) Diethylcarbamazine の 作 用 に 対 す る 脾 細 胞 の 関 与 とALSの 影 響 東 大 医 科 学 研 究 所 寄 生 虫 研 究 部 田 中 寛 ・高 岡 正 敏 ・江 下 優 樹 ・佐 々 学 抗 フ ィ ラ リア剤Diethylcarbamazine(以 下DEC)の 作 用 機 序 に 関 して 脾 細 胞 の 関 与 に つ い て実 験 を 行 な った 。 胸 腔 か と得 られ た ミ ク ロ フ ィ ラ リア(以 下mf)を 非 感 染 コ トン トッ トの腹 腔 に移 入 し,血 中 にmfの 出現 した 時 期 に感 染 コ トン ラ ッ トの脾 細 胞 を静 脈 内 に注 入 してDECの 効 果 を検 討 した 。 脾 細 胞 注入 後 のmfの 変化 は2週 頃 よ り減 少 し は じ め4週 で全 く消 失 した 。 脾 細胞 を注 入 しな か っ た 検 体 で は6週 間 を経 過 し て もな おmfの 存 在 を認 め てい る。 脾 細 胞 注 入 後2日,1週,2週,3週 後 にDEC (200mg/kg)を 投 与 した結 果,2日 後 と3週 後 にDECの 効 果 が認 め られ た。HAに よ る 抗 体 価 は脾 細 胞 注 入 後1日 目 よ り上 昇 を認 め た。 ま たALSを 投 与 した コ トン ラ ッ トに お い て はDECの 効 果 は抑 制 され た 。 (12) ス ナ ネ ズ ミ に 感 染 したDipetalonema, Litomosides に 対 す る ジ エ チ ル カ ル バ マ ジ ン の 効 果 東大 医科学研 究所 寄生虫研究部 松 田 肇 ・田 中 寛 L.carinii感 染 コ トン ラ ツ トの ミ ク ロ フ ィ ラ リ ア に 対 し,DECの 効 果 は 著 明 で あ る 。 し か し, D. witei感 染 ス ナ ネ ズ ミ のmfに 対 し て は 効 果 が 全 く認 め られ な か っ た 。 ス ナ ネ ズ ミ に 両 種 の 単 独 或 は 混 合 感 染 を さ せ,DECの 効 果 を 観 察 し た 。L. carinii単 独 染 感 で はDEC200mg/kg投 与 直 後 にmfは
一 過 性 の 減 少 を 認 め た が,6時 間 後 に は 急 激 に 増 加 し 投 与 直 前 の70%に 回 復 し た 。 生 理 食 塩 水 を 注 入 し た 例 で も 直 後 に は 一過 性 の 減 少 が 認 め ら れ た 。 ま た 両 種 の 混 合 感 染 で もL. cariniiのmfは DEC投 与 直 後 に減 少 す る が 直 ち に 回 復 し た 。 一 方D. witeiのmfに 対 し て はDECの 効 果 は 全 く 認 め ら れ な
か っ た 。 以 上 の 如 く,宿 主 の 変 化 に よ りLitomosoidesに 対 す るDEC効 果 に 差 異 が 生 じ,DECの 効 果 は 宿 主 側 の 要 因 に よ っ て 決 め られ る も の と考 え られ た 。
(13) フ ィラ リア 病 の 疫 学 と駆 除 効 果 判 定 の統 計 的解 析 東 大 医科 学 研 究 所 寄 生 虫研 究 部 佐 々 学
マ レ ー お よ び バ ン ク ロ フ ト糸 状 虫 のmfの 定 期 出 現 性 の 量 的 表 現 の 指 標 を 案 出 し た 。 こ れ は 一 定 時 間 毎 の 定 量 検 血 に よ っ て 得 たmf数yを 単 純 な 波 動 式y=m〔1+1.347D cos15 (h-k)° 〕 に あ て は め(mはmf数 の 平 均 値,hは 採 血 時 刻,Dはy値 の 分 散 系 数,kは ピ ー ク時 刻),kとDで 定 期 出 現 性 を 示 す もの で あ る 。
ま た,地 域 住 民 の 検 血 成 績 か ら,媒 介 蚊 の ブ ィ ラ リ ア感 染 率 を推 定 す る式 を案 出 した 。 こ れ は 地 域 住 民 の 理 論 的 な 蚊 感 染 能iをi= Σ 〔k(m) (1-e-m)〕/N(k(m)はm個 のmf数 を 持 つ 住 民 数,Nは 人 口)か ら求 め る も の で あ る 。 こ の 式 か ら求 め た 西 サ モ ア,タ ヒ チ,セ イ ロ ン のi値 は,各 々13.4%, 22.7%, 2.52%で,実 測 の 媒 介 蚊 自 然 感 染 率jは 各 々8.35%, 13.2%, 1.63%で あ り3地 域 共i値 の 約 0.6倍 で あ っ た 。 (14) 徳 島 市 に蚊 の天 敵 と して 移 植 した カ ダヤ シ の成 績 東大 医科 学研究所寄生虫研究部 佐藤 英毅 ・佐 々 学 ・和 田 芳武 カダ ヤ シGambusia affinisは1916年 に 日本 に移 入 され東 京 周 辺 の汚 水 だ ま りな どに繁 殖 して い るが, これ を蚊 幼 虫 の天 敵 と して利 用 す る た め1969年4月 に徳 島市 に移 植 した 。 移 入 した カ ダ ヤ シは まず3カ 所 の 池 で一 た ん繁 殖 させ た後,さ ら に多 数 の蚊 幼 虫 発生 源 に二 次,三 次 の移 植 をお こな った と ころ,住 宅 地 周 辺 の池,湿 地,下 水 溝,廃 田 な どに著 し く繁 殖 しこ の魚 が す み つ い た水 域 で は い ず れ も蚊 幼 虫駆 除 効 果 が著 し く見 られ た 。 と くに海 岸 近 くの数 十 ヘ クタ ー ル にわ た る 湿 地 帯 に 毎 年 週 期 的 にセ スジ ヤ ブ カ,ア カ イ エ カ,シ ナ ハ マ ダ ラ カ,コ ガ タ ア カ イ エ カな どの大 発 生 が あ っ て住 民 の被 害 が い ち じ る しか った が,カ ダ ヤ シ導 入 の翌 年 か ら蚊 の発 生 が ま った くみ られ な くな った 。 (15) 実 験 動 物 に お け る マ レー 糸 状 虫 ミ ク ロ フ ィ ラ リア の 出 現性 東大医科学研究所寄 生虫研 究部 和 田 芳武 ・白坂 昭子 聖 マ リア ンナ医科大学病害動物 学教 室 神田 錬蔵 本 来 夜 間 弱 周 期 性 と され るマ レー シ ア 系 の マ レー 糸 状 虫 に 感 染 した ネ コお よ び ス ナネ ズ ミの 末 梢 血 を 2時 間 毎 に一 定量 採 血 し,mfの 数 を調 べ,佐 々 の 方 法 でmfの 出 現 の周 期 性 を検 討 した。 ネ コ で は,1匹 は午 前5時 頃,他 の1匹 は 午後10時 頃 に ピー ク を持 っ て お り,時 間的 ず れ が大 きい が, 周 期 性 は 比較 的 明 瞭 に示 され た 。 一 方 ス ナ ネ ズ ミ3匹 で は,周 期 性 は極 め て不 明瞭 な場 合 が 多 く,ピ ー ク が有 る とす れ ば,午 前4∼6時 頃 で あ つた。 (16) 抗 フ ィ ラ リア剤 な ら び に抗 住 血 吸 虫 剤 の ス ク リー ニ ング 方法 に つ い て 田辺製薬株式会 社生物 研究所 大 島 慧 ・田中英 文 ・上原久美子 田 所 昇 わ れ わ れ は,コ ッ トン ・ラ ッ トを 自家 繁 殖 し,イ エ ダ ニ を 介 し て コ ッ トン ・ ラ ッ ト ・ フ ィ ラ リァLito-mosoides cariniiを 感 染 さ せ,血 中 に ミ ク ロ フ ィ ラ リ ア が 出 現 し た も の を 用 い て 抗 フ ィ ラ リ ア 剤 の ス ク リー ニ ン グ ・テ ス トを 行 な っ て い る。 ま た,東 大 医 科 研 寄 生 虫 研 究 部 よ り,日 本 住 血 吸 虫 感 染 貝 を 定 期 的 に 提 供 い た だ き,そ の セ ル カ リ ア を マ ウ ス に 接 種 し て,成 虫 感 染 マ ウ ス を 作 り,そ れ に よ り抗 住 血 吸 虫 剤 の ス ク リ ー ニ ン グ ・テ ス トを 実 施 し て い る 。 こ れ ら2つ の ス ク リー ニ ン グ ・テ ス トの 方 法 に つ き 簡 単 に紹 介 し た 。 172
(17) 1964年 か ら始 め て1972年 に 終 つ た大 久 保 部 落 で の フ ィラ リア 撲 滅 の 成 果 帝京大学医学部寄 生虫学教室 大 森 南 三 郎 大 久保 部 落 は長 崎 県 の離 島 宇 久 島 に あ る純 農 部 落 で 古 くか ら フィ ラ ア リが 高 度 に浸 淫 して い た。1963 年7月,県 の保 健 所 に よ る検 血(20cumm)で 被 検 者261名 中66名(25.3%)の 仔 虫 保 有 者 が発 見 され, 翌1964年3、 月 に総 量72mg/kgのDiethylcarbamazineが 仔 虫保 有 者 に 手 渡 され た。 過 半 数 の仔 虫保 有 者 は ほ ぼ完 全 に服 薬 を完 了 した よ うだ った が,若 干 の者 は一 部 分 しか服 薬 せ ず,他 の少 数 の人 達 は全 く服 薬 しな か っ た よ うで あ る。 治 療 剤 を手 渡 し てか ら5カ 月 後 す な わ ち1964年8月 に われ わ れ は60cummの 検 血 を全 部 落 民 につ い て行 な い,284名 中75名(26.4%)の 高 率 に 陽性 者 を発 見 した 。 ま た,仔 虫保 有 者 が一 人 以 上 発 見 され た家(以 後 患 家 と云 う)は 部 落 の全 戸 数54戸 の 内37戸(68.5%)と 非 常 に 多 か った 。 1964年 及 び それ 以 後 毎 年6月 下 旬 か ら8月 上 旬 にか け て4な い し5回,患 家群 の 屋 内 で 採 集 したC.p. pallensとAe.togoiの 自然 感 染 率 を 調 べ,8月 上 旬 蚊 の 自然 感 染 の 調 査 終 了 直 後 に 部 落 の 全 家 屋 内 お よ び畜 舎 に対 す て残 留 噴 霧 を1回 実施 した。 残 留 噴 霧 を 実施 す る、とそ の 後2カ 月 間 は蚊 に よ る 人 へ の フ ィ ラ リアの 伝 搬 は 防 止 で き る こ とが わ れ わ れ に よ って 確 め られ てい るの で,8月 上 旬 実 施 す れ ば,8月 中 旬 か ら9月 の 上 ま た は 中旬 迄 の間 す な わ ち実 施 後 は そ の年 は フ ィ ラ リア の 感 染 は完 全 に 防止 で き る。 上 述 の 治 療 と蚊 の成 虫対 策 とに よ っ て患 家 の率 と部 落 の仔 虫保 有 率 は 漸 減 して 行 き,1964年 には68.5% お よび26.4%で あ っ たの が1968年 に は43.6%お よび12.7%と な った 。1967年12月 か ら1968年8月 の 間 に 残 存 仔 虫 保 有 者25名 に スパ トニ ン総 量72mg/kgを1回6名 に は同 量 を2回 繰 返 して投 与 し,残 留 噴霧 を同 じ方 法 で引 き続 き実施 した結 果,患 家 数 率 お よ び 部 落 の 仔 虫 保 有 率 は 激 減 して 行 き,1969年 には 19.3%お よび5.4%で あ った の が1971年 に は夫 々3.8%お よ び1.2%と な り,1972年 には終 に 共 に0%と な った。 以 上 の8年 間 の内,初 め の1964年 か ら1968年 の5年 間 に得 られ た 部 落 の仔 虫保 有 率(x)と 患家 群 の屋 内 で 採 集 され た蚊 の 自然感 染 率(y)と の 関 係 を 吟 味 して,C.p.pallensの 場 合 に はy= 6x2, Ae.togoiの 場 合 に はy=8x3な る実 験 式 の 成 立 す る事 を発 見 した。1969年 か ら1971年 迄 の各 年 の 部 落 の仔 虫保 有 率 に対 す る両 種 蚊 の 自然 感 染 率 を求 め てみ る と加 速 度 的 にそ の値 が小 さ くな り,大 体 に於 て, 上式 で示 され る夫 々 の 曲線 に適 合 し,1972年 に は終 に両 種 共 に於 て そ の値 は0点 に到 達 した。 (18) ア カ イ エ カ発 生 源 対 策 に お け る グ ッ ピーPoecilia reticulata利 用 の基 礎 的研 究 帝 京 大 学 医 学 部 寄 生 虫 学 教 室 栗 原 毅 グ ッ ピー が,ア カイ エ カ幼 虫 を捕 食 す る効 率 は,幼 虫密 度 の 大 小 や,通 常 グ ッ ピ ー の餌 と して与 え ら れ て い た粉 末 餌 料 の添 加 に よ り大 き な影 響 を うけ る こ と が少 ない 。 グ ッ ピー の密 度 が高 い 時 は,ア カイ エ カの 蛹 に た い して も攻 撃 を し,殺 す 。 水 面 に浮 か ぶ卵 塊 も,こ れ を突 き崩 し て捕 食 す る。孵 化 後 の幼 虫 にた い して は,若 齢 の幼 虫 ほ どよ く食 う。 自然 界 で,2匹 の稚 魚 が,1日 に5卵 塊1200匹 相 当 に ダ メ ー ジ を与 え うる と推 定す る。 野 外 の発 生 源 に グ ッ ピー を放 し,殺 虫 剤 を共 用 した と こ ろ,そ の後 の 蚊 の 発生 を全 く抑 圧 した 。 殺 虫 剤 のみ で は,1∼2週 間 お き の散 布 が必 要 とな り,グ ッ ピー の み で は速 効 性 に難 点 が み られ た 。
(19) Anopheles hyrcanus群 の 進 化 遺 伝 学 的 研 究,日 本 南 部,台 湾 お よ び 韓 国 の An.sinensisに つ い て 聖 マ リア ンナ 医 科 大 学 神 田 錬 蔵 ・小 熊 譲 ・只 野 長 夫 AnoPheles horrcanus群 に含 まれ る集 団 の 中 に は,フ ィ ラ リァお よび マ ラ リア の 媒 介 者 の役 割 を なす も の が あ る こ と は,中 国 本 土 お よ び韓 国 の慶 北 道 な どに お い て知 られ て い る。 わ れ われ は,先 年 度 に 引 き 続 き今 年 度 は 主 に 日本 周 辺 地 域 の本 種 群 に分 類 学 的 に含 まれ る もの を対 象 に 進 化 遺 伝 学 的 に 検 討 し,と くに フ ィ ラ リア媒 介 蚊 の基 礎 遺 伝 学 的 研 究 を行 な っ てい る。 日本 南 部 の 石 垣 島,台 湾 北 部 とそ して韓 国 の 金 海,永 登 浦 お よ び安 東 地 区 か らのAn. sinensisの 形 態 的 特 徴 を もつ 集 団 と,日 本 の 本 種 の代 表 と し て実 験 室 内 維 持 を して い る鹿 屋 系 との 交 雑 実 験 を行 な っ た とこ ろ,交 雑F1の い ず れ の 系統 にお い て も妊 性 が認 め られ,雑 種 の繁 殖 に は特 別 の変 化 は み られ ず,交 雑F1の 唾 腺 染 色 体 は対 合 し,構 造 上 と くに変 化 はみ られ な か っ た。 次 に韓 国 安 東 の集 団 と,北 海 道 八 雲 のAn.lesteri(L)と の 交 雑F1で は,X染 色 体 は ほ ぼ全 長 対 合 が み られ た が,他 の 染 色 体 は全 長 に わた って不 対 合 で あ つ た。 このF1は 羽 化 困難 で 成 虫 を うる こ とが 出来 な か った 。 一方,鹿 屋 と八 雲Lと の間 で は,X染 色 体 も他 の 染色 体 同様 不 対 合 で あ る点 と比 べ,安 東 の集 団 は八 雲(L)に よ り近 い関 係 に あ る点 が注 目 され る。 同 じ く韓 国 永登 浦 の集 団 内 に は入 雲Lと の交 雑F1に お い て,X染 色 体 の対 合 して い る もの と 不 対 合 の もの とが 混 って い るこ とが知 られ た。 この場 合 他 の 染 色 体 はい ず れ も不 対 合 で あ っ た。 (20) フ ィ ラ リア症 皮 内 反 応 抗 原FST 3―1の 物 理 化 学 的 性 状 お よ びPCA反 応 に よ る 抗 原 性 に つ い て 群 馬 大 学 医学 部 寄 生 虫 学 教 室 沢 田 利 貞 ・佐 藤 久 美 子 ・武 井-利
ブ イ ラ リ ア症 皮 内 反 応 抗 原FSTか らDEAE sephadex column chromatographyお よ びdisc-elect-rophoresisに よ っ て 精 製 され た 抗 原FST 3-1は 既 にdisc・electrophoresis後 のdensitometryに よ り,
ほ ぼ 単 一 なBandで あ る こ と が 証 明 さ れ,ま たFST3と ほ と ん ど 同 じ抗 原 活 性 を も つ こ と が 明 ら か に さ れ た 。今 回 はFST 3―1に つ い て2∼3の 物 理 化 学 的 性 状 お よ びPCA反 応 を 用 い て 抗 原 活 性 の 性 状 に つ い て 検 討 を 加 え た 。 ま ず 精 製 したFST 3―1に つ い て0.1M phosphate buffer, pH6.8中 で59,780 rpmに よ り超 遠 心 分 析 を行 な っ た と こ ろ 単 一 なpeakを 得,S=2.0で あ っ た 。 次 にsephadex G100を 用 い たgelfiltrationに よ り分 子 量 を 検 討 した と こ ろ,FST 3―1は soy-bean trypsin inhibitor (M. W.21,500)とmyoglobin (M.W.17,800)の ほ ぼ 中 間 に 溶 出 され る こ と が わ か っ た 。 従 っ てFST 3―1が 球 状 の 蛋 白 質 で あ る と仮 定 す れ ば 分 子 量 は お よ そ20,000で あ る と推 定 さ れ た が,こ の 値 は 超 遠 心 分 析 に よ る結 果 と も一 致 した 。 次 にphenol硫 酸 法 に よ り糖 の 含 有 量 を計 算 し た と こ ろ,glucose量 に 換 算 し て 約5%の 糖 を含 有 して い る こ と が わ か っ た 。 常 法 に よ るAmino酸 分 析 の 結 果18種 類 のAmino 酸 が 検 出 され 酸 性Amino酸 が 塩 基 性Amino酸 の 約2倍 量 含 ま れ て い る こ と が 明 らか に な っ た 。 次 に FST 3―1の 抗 原 性 を 検 討 す る た め,粗 抗 原FSを 用 い て 実 験 的 にratを 免 疫 しhomocytotropic antibodyを 作 り,そ のratにFSお よ びFST 3―1に よ る皮 内 反 応 を 試 み た と こ ろ,FSで の 蛋 白量 1μgで 陽 性 で あ っ た がFST 3―1で は10ngで 陽 性 で あ り,FST 3―1は 実 験 的 に も皮 内 反 応 抗 原 と し て 鋭 敏 で あ る こ と が わ か っ た 。 ま た,FST 3―1に つ い て100℃ で5分 間 熱 処 理 した 場 合 お よ び56° Cで30分 間 熱 処 理 した 場 合 の 抗 原 性 に つ い てPCA反 応 に よ り検 討 し た と こ ろ,未 処 理 のFST 3―1 174
に 比較 して抗 原 性 は幾 分 低 下 した にす き なか っ た。 こ の事 は皮 内 反 応 抗 原 か必 す し もnatlveな 蛋 白質 を 必 要 とあ る とは 限 らな い事 を示 唆 して い る。 (21) 日本住血 吸虫性肝線維症に関す る研究 久 留米大 学医学部第一病理学教 室 塘 普 ・中 島 敏 郎 I 実験 的肝 内 門脈 塞 栓 症 第1報 日虫 卵 の 肝線 維 症 形成 機 序 を(解明す る 目的 で,日 虫 卵 とほほ 同 大 の 各 種 粒 状 物 の浮 遊 液 を 家 兎 門脈 内 へ 反 復 注 入 し,そ れ に よ って 起 る肝 病 変 を病 理 組 織 学 的 に検 索 し た。 門 脈 注 入 に よ る肝 病 変 は合 成 樹 脂 粒,一 酸 化 鉛 粒,鉛 粒 て は軽 微 て,珪 石 粒 て は結 合 織 増 生 か強 く,毛 髪 細 片,鶏 卵粒 に対 して は組 織 反 応 が強 い か,日 虫 卵 に は及 はす,Pseudotubercle, Pseudoabscessを 作 る程 の変 化 は認 めな か った 。種 々 な粒 状 物 の反 復 門 脈 内 注 入 に よ り,あ る程 度 の肝 線 維 症, 瘢 痕 形 成 を作 る こ とか て きた 。 日虫性 肝 線 維 症 に お け る虫 卵 作 用 は単 純 な異 物 作 用 て な く,ま た異 種 蛋 白 の作 用 た け て もな く,栓 子 周 辺 に 壊 死 を起 す よ うな毒 性 を有 す る もの と思 わ れ る。 肝 内 門脈 枝 の大 小 な らひ に こ の 部 に塞 栓 す る 粒 状 物 の多 寡,栓 子 の刺 激 性 に応 し て遊 走 細 胞 の集 簇,結 合 織 増 生 の強 弱 の差 異 を認 め た。 種 々 な粒 状 物 を 家 兎 門 脈 内 に 繰 返 し注 入 す る と,肝 病 変 は 経 時 的 に進 行 した 。 II 同前 第2報 石 松 子 を栓 子 と して 実 験 的 肝 内 門脈 塞 栓 症 を起 さ せ,肝 を組 織 学 的 に観 察 した。 塞 栓 は2週 毎 に5回 ま で行 な い,全 経 過135日 まで 検 索 した 。 注 入 回数 の少 な い例 で は栓 子 は小 葉 問 静 脈 以 下 の門 脈 小 分 枝, 特 に そ れ等 の分 岐 部 に多 く塞 栓 した。 注 入 回 数 を重 ね る に従 っ て,塞 栓 は広 範 に波及 し,小 葉 間 静 脈, 葉 門脈 枝,葉 門脈 近 くま で発 見 され た。 また 古 い塞 栓 部 周 縁 の 拡 張 した類 洞 や塞 栓 門 脈 内 の再 疎 通 した 毛 細 血 管 或 は胆 管周 囲 毛 細 管 内 に新 しい 塞 栓 が形 成 され た 。 石 松 子 塞 栓 は 門脈 系 血 管 内 に 群 在 し て 塞 栓 様 式 が非 常 に よ く 日虫 卵塞 栓 の それ に類 似 して い るか,石 松 子 に対 す る生 体 の組 織 反 応 は 日虫 卵 に対 す る それ に比較 し て弱 い 。 石 松 子 結 節 に は壊 死 巣 が ほ とん どな い か,軽 微 て あ る。 侵 潤 した 細 胞 数 は 日虫 卵結 節 に比較 して少 な く,ま た細 胞 種 類 に して も組 織 球,巨 細 胞,淋 巴球 は か な り出現 し てい る か,好 酸 球,形 質 細胞 は僅 少 に過 ぎ ない 。 石 松 子 塞 栓 症 は組 織 反 応 の 微 弱 もあ っ て 塞 栓 血 管 お よ び そ の 周 囲 の 線 維 化 か弱 い 。 また 門脈 塞 栓 に よ っ て梗 塞 性 のPostnecrotic丘broslsを 起 す こ とか少 な い 。 石 松 子 の頻 回塞 栓 実 験 に よ り 日虫性 肝 線 維 症 に か な り類 似 した組 織 像 を作 り得 た が,こ れ に対 す る組 織 反 応 が弱 く, 日 虫卵 塞 栓 の場 合 の反 応 に及 は な か った 。 III プ エ ル ト ・ リコに お け る マ ン ソン住 血 吸 虫 症 の剖 検 例 につ い て
1967年1月 か ら1971年9月 ま で にDepartment of Pathology, Puerto Rico Medlcal Centerて 行 な わ れ た剖 検 例 を調 査,鏡 検 した。 組 織 標 本 内 に マ ン ソン 住 血吸 虫 卵 陽性 例 が83例 あ った。 罹 患 率 はそ の 年 の全 剖 検例 に対 して は18%か ら26%の 間 を変 動 し,平 均21%で あ った。2歳 未満 を除 外 す る と, 33%な い し45%,平 均38%。 性 別 は男 性64例,女 性19例 て あ っ た。 年 齢 層 分 布 は11歳 か ら70歳 まて の 各 年 齢 層 に 広 く分布 し,71歳 以 上 は減 少 した 。 各 年 齢 層 の剖 検 数 に対 す る 住 血 吸 虫 症 症 例 の 比率 は,11 歳 ∼20歳21歳 ∼30歳 の層 に最 も高 く,共 に117%て あ っ た。31歳 以後 の年 齢 層 て は漸 次 低 下 した。 本 症 症例 の人 種 別 は 白人60例,混 血 人16例,黒 人5例,不 詳(2例 で あ っ た。 本 症 の肝 病 変 の 程度 を分 類 す る と,軽 度44例,中 等 度20例,強 度4例,他 の 型 の肝 硬 変 症 との合 併7例,不 詳8例 で あ った 。各 臓 器 内 虫卵 陽性 頻 度 は肝 病 変 の 軽 度 の 群 で は83%,肺34%,大 腸32%,そ の他 の臓 器 の頻 度 は低 下 し た。 中 等 度 と強 度 の群 で は 一般 に軽 度 群 よ り高 く,肝100%,肺51%,小 腸35%で あっ た 。 肝 重 量 で は2,5009 を越 え た症例 は住 血 吸 虫 症 以 外 の合 併 症例 で あ り,1,0009以 下 の軽 い 肝 は ほ とん ど老 人 で あ っ た。 マ ン
ソン住 血 吸 虫性 肝 硬 変 と した4例 の肝 重 量 は800∼1,4509で あ っ た。 脾 重 量 で は4009以 上 あ る脾 は 白血 症,敗 血 症,心 不 全,合 併 症 を持 っ た症 例 に 多 く,住 血 吸 虫性 肝 硬 変症 の4例 で は3例 が 門脈 圧 亢 進 症 が あ って,そ れ ぞ れ610∼1,250gで1例 は200gで あ った 。 マ ン ソン住 血 吸 虫 の虫 卵 結 節 に お け る虫 卵 数 は,日 本 住 血 吸 虫症 の場 合 に比較 して驚 く程 少 な か った 。 そ して虫 卵 数 が 少 な い の に 拘 らず,門 脈 周 囲 の結 合 織 増 殖 が強 か った。 マ ン ソン 住 血 吸 虫 症 に は強 い 門脈 周 囲 炎 を起 して い た。 (22) 日本住血吸 虫感 染に よる腹部諸組織 の炎症性反応 における内臓 神経 の役割 久留米大学医学部倉 田内科 倉 田 誠 ・井 上 卓 ・古 賀 道 衛 橘 川 博 英 腹 部 組 織 の炎 症 性 反 応 と内臓 神 経 との 関 係 を 明 らか に せ ん と して,日 本 住 血 吸 虫 セル カ リア を内 臓 神 経 切 断 後2週 を経 た ウサ ギ に感 染 させ,6週 後 そ の組 織 反 応 状 態 を 観 察 す る と 共 に 組 織 内serotonin, histamine量 を測 定 し た。 両 側 内臓 神経 切 断 を行 な った ウサ ギ に 日虫 セル カ リア を 感 染 させ る と,肝 な どの 炎 症性 反 応 は対 照 非 切 断 ウサ ギ に較 べ て著 明 に抑 制 され た。 内臓 神 経 切 断 で 肝 な どの組 織 内serotoninは 減 少 す るが,そ の 際serotoninを 少 量 連 続 注 射 す る とそ の値 は尋 常 値 ま た は そ れ 以 上 に な る。 か か る ウサ ギ に 注 射 前 に 日 虫感 染 を起 こ させ る と炎 症 性 反 応 は健 常 非 切 断 ウ サ ギ 同様 の 反 応 を示 す よ うに な った 。 ウサ ギ で内 臓 神 経 切 断 に よ り腹 部 組 織 の 炎 症 性 反 応 が抑 制 され るが,そ の原 因 に つ い て は 色 々 考 え られ る。 そ の 一 因 と して 内 切 に よ る組 織 内serotonin量 の 減 少 も関係 あ る よ うに思 われ る。 この場 合histamineは たい し て 関係 な さそ うで あ る。 (23) Immunoadsorbent法 に よ る 日本 住 血 吸 虫 の 特 異 抗 体 の 精 製 に つ い て 久留米大学医学部寄 生虫学教 室 阿久沢 実 ・古 田 美 穂 最 近 の特 異 抗 体 の 精 製 につい て は,Immunoadsorbent法 が用い られ てい る。 私 達 は本 法 に よ っ て抗 日 本 住 血 吸 虫 ウサ ギ血 清 を材 料 と して本 虫 の特 異 抗 体 の 精 製 を実 験 した。 不 溶 性 ポ リマ ー に抗 血 清 と 日虫 抗 原 の結 合 物 を吸 着 させ る た め,ク ロマ ゲ ルA-2お よ びCNBr Act-ivated Sepharose4Bに つい て実 験 し,特 異 抗 体 の検 定 は ゲ ル 内 沈 降反 応 お よ び免 疫 電 気 泳 動 に よ っ て し らべ た 。 この 結 果,精 製 抗 体 は ゲ ル 内沈 降反 応 お よ び 免 疫 電 気 泳 動 と も沈 降線 が 鮮 明 に出 現 した。 ゲル 内反 応 で は抗 血 清 は,み だ れ た 不 鮮 明 の1本 の沈 降 線 に対 し精 製 抗 体 は,き わ めて 鮮 明 な1本 とほ か に2本 の 沈 降線 をみ とめ た。 さ らに精 製 抗 体 の免 疫 学 的性 状 に つ い て は現 在,検 索 中 で あ る。 (24) 免 疫 電 気 泳 動 に よ る 日本 住 血 吸 虫 の雌 雄 間 に お け る抗 原 系 に つ い て 久留米大学 医学部 寄生虫学教室 岡 部 浩 洋 ・平 田 瑞 城 ・阿久沢 実 日本 住 血 吸 虫 症 の免 疫 診 断 抗 原 と して は 本 虫 の 虫 体 物 質 や そ の精 製 され た もの が広 く用 い られ て い る 。 住 血 吸 虫 は 雌 雄 異 体 で あ る た め抗 原 組 成 に差 異 の あ る こ とが考 え られ,私 た ち は この 点 につ い て 免 疫 電 気 泳 動 法 に よ っ て検 討 した。 176
抗 原 は雌,雄 の凍 結 乾 燥 虫 体30mgを1mlの ベ ロナ ール 緩 衝 液(0.005M, pH8.6)で 抽 出 した もの を用 い,抗 血 清 は全 虫体 抽 出 液 を抗 原 と してFreund's complete adjuvantに よ って 免 疫 した 抗 ウサ ギ 血 清 を1/2に 濃 縮 した も の を用 い た。 こ の結 果,全 虫体 抽 出 抗 原 で は11本 の沈 降線 が み とめ られ,雄 で は全 虫体 とほ ぼ 同 様 の 泳 動 像 をみ と め た。 雌 の場 合9本 の沈 降 線 がみ とめ られ,雄 にお い て陽 極 側 に現 われ る 明 らか な 一本 の 沈 降 線 が欠 け て い るこ とをみ と め た。 (25) 日本 住 血 吸 虫 症 に お け る二 次 免 疫 反 応 に つ い て 久 留米大学 医学部寄生部学教室 岡 部 浩 洋 ・阿久沢 実 ・古 田 美 穂 日本 住 血 吸 虫 の感 染 を第 一 次 免 疫 と して,感 染 した ウサ ギ に対 し て 日虫 虫 体 を抗 原 と して 第 二 次免 疫 をお こ ない,こ れ に対 す る宿 主側 の免 疫 応 答 につ い て実 験 した。
重 層 法 に よ る結 果 は感 染1カ 月 後 にFreund's Complete adjuvantで 二 次 免 疫 す る と 抗 体 価 が 次第 に 下 り14日 後 に最 低 とな り以 後 上 昇 して28日 目頃 よ り二 次 免 疫 前 と,ほ ぼ 同 じ 抗 体 価 に もど る こ と 認 め を た。 日虫感 染 ウサ ギ の 免疫 電 気 泳 動 で は1∼2本 の 沈 降 線 を認 め,こ の ウサ ギ に 二 次 免 疫 を お こな うと, 非 感 染 ウサ ギ をComplete adjuvantで 免 疫 した場 合 約11本 の沈 降 線 が認 め られ るに対 して3本 認 め られ た 。 これ らの 結果 か ら,担 虫 体 ウサ ギ に対 して お こな った 第 二 次 免 疫 に よ る抗 体 刺 激 に宿 主側 の 免 疫 応 答 が,寄 生 虫体 に よっ て抑 制 され て い る もの と考 え られ る。 (26) 宮 入 貝 卵 子 の濾 紙 上飼 育 長崎大学熱帯医学研究所 寄生虫部 野 島 尚 武.片 峰 大 助 久 留 米 産 のO.nosophoraと 比 国 産 のO.guadrasiの 卵 子 を濾 紙 上 で 飼 育 して,良 い成 績 を納 めた の で 報 告 す る。 卵 子 を行 儀 よ く適 当 に水 を含 ませ た 濾 紙 上 に 置 き,適 温 に て飼 育 す る と高 率 に成 熟 卵子 に 発 育 す る。 こ の場 合 の最 適 温 度 は両 種 と も20∼25℃ 前 後 に あ るが,15℃ に於 け る 成 熟 率 はO.qua-drasiが 明 らか に劣 り,低 温 に弱 い こ とが窺 わ れ る。O.nosopheraの 卵 子 の 発育 は濾 紙 の水 分 が 軽 く湿 っ た程 度 の第2度(15cm径 の 円型 濾 紙 が3mlの 水 分 を含 む)以 上 あれ ば 成 熟 卵 子 に 発 育 す るが,O. guadrasiで は さ ら に多量 の 水 分 が必 要 で,水 浸 しの状 態 で な けれ ば ほ とん ど発育 が 障 害 され る。 土 壌 上 飼 育 の場 合 と異 な つて 両種 の 卵子 を 最 初 か ら水 浸 しの状 態 の濾 紙 上 で飼 育 す る と,両 種 と も よ く 発 育 し,孵 化 能 力 を持 つ に 至 った もの か ら順 次 孵化 す るの が観 察 され,高 率 に稚 貝 が 得 られ た。 (27) 日本 住 血 吸 虫 の 生 物 的 防 除 に 関す る を研 究 九州大学医療短大部医動物学研究室 川 島 健 治 郎 日本 住 血 吸 虫 の 生 物 的 防 除 に 関 す る 基 礎 的 研 究 の 一 部 と して,日 本 住 血 吸 虫 の ミ ヤイ リガ イ体 内 に お け る発 育 とそ れ に よ る変 化 を病 理 組 織 学 的方 法 に よ っ て研 究 した。 互 い に親 和 性 の な い 日本 住 血 吸 虫 の 系 統 と ミヤ イ リガ イ の 間 にみ られ る 変化 に つ い て は 既 に報 告 した
と こ ろ で あ る が,今 回 は,互 い に 親 和 性 の あ る 日本 住 血 吸 虫 の 系 統 と ミ ヤ イ リ ガ イ の 間 に み られ る 変 化 を,対 照 と比 較 し な が ら観 察 し た の で,そ れ に つ い て 述 べ る。 実 験 感 染 は,ミ ヤ イ リガ イ1個 体 当 り に 多 数 の 日本 住 血 吸 虫 ミ ラ シ ジ ウ ム を3∼6時 間 接 触 させ,そ の 後,カ イ を 飼 育 箱 に う つ し,経 時 的 に ガ イ を 固 定 し て 連 続 切 片 を 作 り,そ れ ら に つ い て 観 察 を 行 な っ た 。 染 色 は,主 と し てAzureII- eosin法 に よ っ た 。 ミ ラ シジ ウ ム の カ イ 体 内侵 入 に つ づ い て スポ ロ シ ス トの形 成 が み られ た。 ス ポ ロ シ ス トは 次 第 に そ の 体 内 に お け る胚 細胞 の増 大 につ れ て 発 育 し,そ の た め幼 虫体 の圧 迫 に よ る細 胞 の萎 縮,amebocyteの 活 動 化 とfibroblast化,時 に血 管 の 拡 張,或 い はamebocyteの 僅 か な 肥 大 を と もな っ た 鬱 血 な どがみ ら れ た。 また,部 位 に よ っ ては 上 皮 細 胞 の 圧 迫 緊 張 に と もな う膨 隆 が み られ,鰓 にお い て も 同様 な所 見 が 認 め られ た 。 さ らに経 過 がす す む と,各 種 組 織 の萎 縮 が み られ,核 の崩 壊,濃 縮,お よ びそ の 消 失 もみ られ た。 さ らに幼 虫 は肝 臓 な らび に生 殖 腺 域 に拡 散 し,発 育 増 殖 す るの で,肝 小葉 の破 壊,肝 臓 組 織 の 萎 縮,変 性,壊 死 な どが認 め られ た 。 幼 虫 の 発 育 に と もな って 生 殖 腺 の崩 壊 が著 明 とな り,雌 で は卵 細 胞 数真の減 少,あ るい は 発 育 停 止,雄 で は精 子 形 成 の 著 明 な阻 害 な ど が み られ た。 ま た,腎 域 に お け る幼 虫 の拡 散,発 育 お よび 増 殖 に とも ない 。 腎 組 織 の萎 縮 もみ られ た。 しか し,こ れ らの 変 化 は,す べ て の 感 染 ガ イ で認 め られ る もの で は な く,幼 虫 の寄 生部 位,発 育経 過,感 染 量 の程 度 との 関連 が深 く,上 に 述 べ た病 理 組 織 変化 の認 め られ る頻 度 も極 め て低 い もの で あ った 。 (28) 片山地 方にお ける免疫学 的調査成績(3) 広島大 学医学部寄生虫学教室 辻 守 康 片 山地 方 で 昭 和44年 か ら46年 の 問 に3,755名 につ い て皮 内反 応 を試 み た所,521名 (13.9%)が 陽性 を 示 し,こ の うち91名 が血 清 反 応 も陽 性 で あ った こ とは 既 に報 告 した。 今 年度 は昼 間 地 域 外 に働 き に 出 か け て い る人 達 を対 象 に夜 間 調 査 を行 な った が,そ の結 果 は216名 の受 診 者 中皮 内反 応 陽性 者 は41名 (19.0 %),血 清 反 応 陽性 者 は23名 で あ っ た。 そ の 内 訳 はCOP陽 性19名,Ouchterlony陽 性16名,免 疫 電 気 泳 動 陽性14名 (Specific band陽 性4名)で あ り, 3反 応 と も陽 性 で あ った者 は11名 で あ った 。 今 回 も これ ま で に10日 分 の 便 に つ い て検 査 を行 な っ た が 虫 卵 陽 性 者 は1名 も 見 出 され ず,今 月 中 に さ らに10回 の検 便 を予 定 して い る。 一 昨 年 迄 の 血 清 反 応 陽 性 者 の 中 で た ま た ま 肝 疾 患 で 入 院 した 人 の 中か ら 肝 穿刺 に よ り虫卵 を証 明 した 例 もあ り,以 上 の 調 査 成 績 を も とに こ れ ら 免 疫 反 応 殊 に 血 清 反 応 の意 義 に つ い て の私 見 を報 告 した い 。 (29) 硅藻類餌料 によ る宮入 貝の室 内飼育 に関する基礎的研究 広 島大学医学部寄 生虫学教 室 岩 永 襄 ・辻 守 康 宮 入 貝 の 室 内 飼 育 に お け る 基 礎 的 研 究 と し て 純 粋 培 養 し た 淡 水 産 硅 藻 類(Melosira sp. + Fraillaria sp. , Navicula sp. , Achnanthes sp.)と 従 来 の 餌 料 〔混 合 餌 料A(レ タ ス100.0g,マ イ ミ ー-ル5.0g,ド
ラ イ ミ ル ク2.5g,エ ビ オ ス2.5g,ア ル ギ ン 酸 ソ ー ダ5.0gに 純 水500mlを 混 じ た 固 型 餌 料),混 合 餌 料B (離 乳 食No.1お よ びNo.2を 各5.0gず つ,レ タ ス50.0g, エ ビ オ ス2.5g, ア ル ギ ン 酸 ソ ー ダ5.0gに 硅 藻 類2∼ 5× 1010ce11sを 含 む 分 離 用 培 地500m1を 加 え た 固 型 餌 料)〕 の 比 較 検 討 を 行 な っ た 。 投 餌 料
は 混 合 餌 料Aお よ びBで は4∼5日 で 無 く な る程 度 を与 え,常 に 槽 内 に 餌 料 が あ る よ う に 心 掛 け,硅 藻 類 餌 料 で は 貝1個 当 り2∼ 5×107cellsを 毎 日 与 え た 。 そ の 結 果 最 も成 長 が 良 か っ た の は,Melosira
sp.+ Fragillaria sp.投 与 群 で,以 下Navicula sp. ,混 合 餌 料B, Achnanthes sp.混 合 餌 料Aの 各 投 与 群 の1頂 で あ っ た 。 (30) 日本 住 血 吸 虫 罹 患 動 物 に お け る血 中 細 胞 よ りの ヒス タ ミ ン遊 離 に つ い て 名 古 屋 市 立 大 学 医 学部 医 動 物 学 教 室 佐 藤 重 房 ・鈴 木 登 志 子 日本 住 血 吸 虫 セル カ リア5,000隻 を経 皮 感 染 した 家 兎(体 重3kg)12羽 の急 性 期 に お け る プ ラス マ 中 に 遊 離 され た ヒス タ ミ ン量 の変 動 につ い て観 察 した 。 成 虫 体 よ り純水 で抽 出 され た 粗 抗 原1μg(蛋 白質), 0.2mlを 家 兎 のヘ パ リン加 血 液2.5mlに 添 加 した の ち,プ ラス マ 中 に 遊 離 され た ヒス タ ミン をShoreら の 方 法 に よ っ て測 定 した 。 セル カ リア感 染 後2週 間 で は6羽(50%), 5週 間 で は全 例 に そ れ ぞ れ 遊 離 ヒ ス タ ミン量 の増 加 を認 め た。7週 間 で は 遊 離 ヒス タ ミン量 が さ らに増 加 した もの2羽(16.7%) ,増 加 状 態 が不 変 の もの4羽(33.3%),再 び減 少 した もの6羽(50%)で あ った 。 遊 離 ヒス タ ミン量 が 急 速 に減 少 した6羽 の 中2羽 は間 もな く斃 死,4羽 は一 般 状 態 の 悪 化 が 認 め られ た の で剖 検 した。9週 間 で は生 存 して い た6羽 全 例 に再 び 遊 離 ヒ ス タ ミン 量 の減 少 が認 め られ た。 感 染 初 期(2∼ 5週 間)に 認 め られ た遊 離 ヒス タ ミン 量 の 増 加 は ヒス タ ミン 遊 離 に 関与 す る抗 体 の 出 現 を 示 唆 して お り, 7∼9週 間 に認 め た遊 離 ヒス タ ミン 量 の 減 少 は ヒ ス タ ミン 遊 離 に 関 与 す る抗 体 産 生 の 減 弱 ・反 応 系 の阻 害,ヒ ス タ ミ ン含 有 細 胞 量 の 減 少 等 が考 え られ た。 (31) 久 留 米長 門 石地 区 に お け る 日本 住 血 吸 虫症 の 調 査 成 績 千 葉 大 学 部 医 学 部 寄 生 虫 学 教 室 横 川 宗 雄 ・佐 野 基 人 ・荒 木 国 興 久 留 米 大 学 医学 部 寄 生 虫 学 教 室 岡 部 浩 洋 ・阿 久 沢 実 ・木 船 悌 嗣 古 田 美 穂 ・平 田 瑞 城 長 門石 地 区 は,筑 後 川 流 域 の約20ヘ クタ ー ル の 四方 を堤 防 に か こ まれ,き わ め て 限局 した水 田地 域 で, 人 口 は約1,000足 らず で あ る。 当地 区 は1950年 頃 まで は,も っ と も本 症 の濃 厚 まん え ん地 と し て知 られ て い た 。 しか し,1950年 以 来 本 地 域 で宮 入 貝 の撲 滅 の た めに, PCHが わ が国 で は じめ て使 用 され,ま た か ん が い 溝 の コン ク リー ト鋪 装 も実 施 され て来 た。 そ の結 果,最 近2∼ 3年 間 は 全 く本 症 患 者 の 発生 は な く,当 地 区 か らは 日本 住 血 吸 虫 症 は撲 滅 した もの と 考 え られ て い るが,詳 細 な 調 査 は な され て い な い。 そ こで著 者 らは,1972年4月 下 旬 よ り,こ れ まで 他 地 域 で行 な っ て来 た調 査 と全 く同 じ 方 法 で,当 地 区 の疫 学 的調 査 を行 な っ た。 そ の結 果 は 以 下 の如 くで あ った 。 1) 皮 内反 応 検 査 結 果 の反 応 陽性 者 は467名 中201名(43.0%)で あ った が,こ れ を 年 齢 別 に み る と, 19歳 以 下 の 青 少年 に は反 応 陽性 者 はほ とん どみ られ な か っ た。 2) 皮 内 反 応 陽性 者187名 の血 清 につ い て,CFTお よ びCOP-Tを 行 な った 結 果,CFT陽 性 者 は81 名(43.3%), COP-T陽 性 者 は36名(19.2%)で あ った 。 3) CF-T或 い はCOP-T陽 性 者 につ い て は5回 の 連 続 検 便 を行 な った と こ ろ,75名 中6名 に 日本 住 血 吸 虫 卵 陽性 者 が 見 出 され たが,こ れ ら陽 性 者 は何 れ も40歳 以 上691歳ま で の 年齢 層 で あ った 。 な お 皮 内 反 応 陽性 者 に つ い て は,γEの 測 定 も行 な った が,虫 卵 陽 性 者 に γEが 特 に高 い と云 う傾 向 は み られ な か っ た。
(32) 山梨 県 敷 島 町 に お け る 日本 住 血 吸 虫症 の 調査 成 績(予 報) 手葉 大 学 医 学 部 寄 生 虫 学 教 室 横 川 宗 雄 ・佐 野 基 人 ・荒 木 国 興 小 林 仁 ・篠 原 信 賢 ・時 田 賢 杏 林 大 学 医 学 部 寄 生 虫 学 教 室 飯 島 利 彦 ・見 目 道 子 ・五 十 島 一 子 山梨 県衛 生 研 究 所 地 方 病 科 久 津 見 晴 彦 ・薬 袋 勝 ・三 木 阿 い 子 山 梨 県 の 日本 住 血 吸 虫症 は 最 近 急激 に 減 少 しつ つ あ るが,山 間部 で は なお か な り濃 厚 な感 染 地 域 がみ られ る とこ ろ もあ る。 今 回 調 査 を行 な っ た 地 区 は,か つ て は も っ と も濃 厚 に本 症 が ま ん え ん して い た 山 間 部 の地 区 で あ る。 調 査 方 法 は,従 来 と同 様,先 ず皮 内反 応 を実 施 し,反 応 陽 性 者 につ い て は そ の血 清 に つ い てCF-T, COP-Tを 実 施 した。 そ の結 果 皮 内反 応 陽 性 者 は,374名 中195名(52.1%),CRT陽 性 者 は,151名 中57名(37.7兆)(抗 補 体 作 用 の た め不 能38名 を の ぞ く),COP-T陽 性 者 は195名 中45名(23.07%)で あ った 。CF-T,或 い は COP-T陽 性 者 の検 便 に つ い て は,連 続10回 実 施 の予 定 で あ る。 なお,皮 内 反 応 の抗 原 と して従 来 のVBS抗 原 の他 に 沢 田博 士 よ り分 与 され た,所 謂 精 製 抗 原 の 両 者 を同 時 に用 い,比 較 した が,ほ ぼ同 様 な傾 向 が み られ た。 ま た,皮 内反 応 陽 性 者 の γEに つ い て も測 定 した。
(33) 日本 住 血 吸 虫 感 染 サ ル に お け るImmune complex diseaseの 発 生 千 葉 大 学 医 学 部 病理 学 教 室 多 田 富 雄 ・奥 村 康 ・近 藤 洋 一 郎 千 葉 大 学 医 学 部 寄 生 虫 学 教 室 横 川 宗 雄 ・佐 野 基 人 日本 住 血 吸 虫症 で は,寄 生 虫 お よび 虫 卵 由来 の抗 原 に対 す るhostの 免 疫 反 応 に よ っ て,多 彩 な病 変 が 発 生 す る こ とが報 告 され てい る。 演 者 らは カ ニ ク イザ ル に 本 症 を発 生 せ しめ,主 と して免 疫 病 理 学 的 観 点 か らそ の病 態 を追 求 し よ うと し てい る。 本 報 告 で は,感 染 サ ル にお け る 腎病 変 と 抗 体 産 生組 織 の反 応. につ い て述 べ る。 二 頭 の カ ニ クイ ザ ル に,そ れ ぞれ300お よび500の セ ル カ リア を感 染 させ,時 期 を 追 って 血 清 中の抗 体 を検 索 す る と と も に;12週 後 に解 剖 して,そ の組 織 につ い て螢 光 抗 体 法 に よ る検 索 を行 な った 。 VBS抗 原 に よ るP-K反 応 は,1頭 で は4週 後,他 の1頭 で は6週 後 に 陽転 した が,12週 にお け る最 高 の抗 体 価 は,た か だ か1:32に す ぎな か った 。 12週 にお け る病 理 組 織 学 的所 見 は,定 型 的 な,肝,消 化 管,肺,リ ンパ 節 等 に お け る虫 卵 に よ る肉 芽 腫 形 成 の ほ か に,脾 の鬱 血 を伴 な う腫 大 と,と くに腸 間 膜 リンパ 節 の 著 明 な濾 胞 形 成 に よ る腫 大 が 認 め られ,さ ら に腎 で は,メ サ ン ギ ウム基 質 の 増加 と軽 い細 胞 増 生 の あ る糸 球 体 腎炎 の 発生 が 二 頭 と もに 見 られ た。 螢 光抗 体 法 に よ れ ば,リ ン パ 節,脾 にお い て,一 部 の膿 胞 にIgEが 強 く染 色 され,か な り多 数 のIgE 産 生 プ ラス マ細 胞 が 証 明 され た。 腎 で は,主 と して メ サ ン ギ ウム 域 に,IgM, IgG, IgA,お よびIgEが か な り高 度 に沈 着 し,同 一 部 位 には 補 体(β1c)の ほ か に虫 体 由来 の抗 原 の局 在 も 証 明 され た。 これ らの 所 見 は,い わ ゆ るImmune complex腎 炎 の それ に一 致 す る が,と くにIgEの 局 在 は従 来 の報 告 に はな. い 知 見 であ る。
以 上 の結 果 を考 察 す る と,日 本 住 血 吸 虫症 で は,虫 体 お よ び 虫卵 由来 の抗 原 の持 続 的 なな 遊 離 が あ り,