環境経済効果に基づいた浄水汚泥と砂質土の混合利用
12
0
0
全文
(2) 土木学会論文集C Vol.66 No.4,788-799,2010.11. 工事の規模を想定した資材のストックが課題となる. 浄水汚泥の供給力を補うため,既往の研究においては, 浄水汚泥と一般の土質材料との混合利用が検討されて きた.古河らは,浄水汚泥とまさ土を混合した結果を4), 蛭田らは,関東ロームと混合した結果を報告している9). 砂質土との混合は浄水汚泥の脱水を促し,粘性土との混 合では,浄水汚泥が粘性土の改良材として機能する効果 が認められており,力学的側面から混合利用の有効性が 示されている.その一方で,廃棄物と一般の土質材料を 混合することにより,構造物解体後に天然資材までも廃 棄物として分類される可能性が生じることには言及さ れていない.浄水汚泥と一般の土質材料の混合利用を適 切に実施するためには,資源の有効活用や廃棄物の削減 等の循環型社会の理念を正しく反映させた評価手法ま たは判断基準が必要がある. そこで,本研究では,浄水汚泥と砂質土を混合利用し たときの環境経済効果に着目し,環境負荷を貨幣的尺度 を用いて定量評価する手法を提案した.本提案手法の特 長は,第一に浄水汚泥を利用することの環境負荷低減効 果を環境価格として定義したこと,第二に単体利用と混 合利用の差異を環境価格を用いて表現し,適切な混合割 合について考察したことである.前者に関しては,浄水 汚泥を使うことで保全される資源の価値を積算するこ とで定量的な尺度を設けた.後者については,実験事実 が許容する範囲内で混合割合の異なるシナリオを設定 し,環境価値の累積値の経年的な変化を追った.混合割 合の設定では,浄水汚泥と砂質土を混合したときの力学 特性をCBR試験により調査し,浄水汚泥単体としての品. (環境コスト)を導入している10).これは,建設事業の中 から生じた環境への負荷が,事業領域(ここでは空間的 領域)の外部の環境にも負荷を及ぼすこと,すなわち, 外部性の考えに基づいており,外部の環境に与えられた 負荷を解消するためのコストも建設事業内で一括して 取り扱おうとするものである.この考え方を浄水汚泥の 価格設定に応用すると,式(1)で浄水汚泥の全体価格CT は定義される.. CT = C M + C E. (1). ここに,CMは浄水汚泥の材料価格(円)であり,一般の土 質材料と同様に浄水汚泥が有する強度や性質に応じて 決定される値と解釈する.CEは浄水汚泥の環境負荷低減 効果を反映した価格(円) (以後,環境価格と記述する)で ある.すなわち,材料本来の価格に環境負荷低減に必要 な分としての価格を付加した.なお,本研究における環 境価格とは材料単価の一部であるため,建設事業全体の コスト計算に包括される環境コストとは本質的な差別 化を図り,用語を独自に定義した. 一般的な環境コストの項目としては,文献11), 12)を参考 にすると,森林等の伐採に伴う公益的機能の消失,生態 系への影響,居住環境の悪化,地価下落,材料・設備等 の製造に伴う環境負荷などが挙げられ,それぞれについ て原単位を用いて計算しなければならない.より多くの 項目について適切な原単位を用いて計算を行えば,きわ めて有意義な総合コストの比較や検討が行える.しかし, 本研究では,浄水汚泥の単価に焦点を当てており,環境 に対する良い影響や悪い影響を品質として解釈し,価格 設定に反映させることを目指している.そこで,次の前 提を設け,環境価格は式(2)より求めることにする.. 質基準および適切な混合割合を決定した.. 2. 浄水汚泥の有効利用における環境経済効果. ・浄水汚泥は従来工法で用いられていた天然資材の代替 材として用いる.(一件の建設事業の中で材料の変更の みを考える.). 本研究では,天然資材と産業廃棄物最終処分場の埋立 て容量に着目し,浄水汚泥の有効利用における環境負荷 低減効果を考慮した浄水汚泥の環境価格を定義した.浄 水汚泥と砂質土の混合利用では,浄水汚泥の混合率をパ ラメーターとして取り入れることで環境価格の定義を 拡張した.. ・従来工法と同じ施工方法で浄水汚泥を代替材として利 用することができる. ・天然資源の節約と産業廃棄物最終処分場埋立て容量の 節約を環境に対する良い影響とし,それらは浄水汚泥 の単価を下げる方に作用する. ・浄水汚泥の単価を上げる要因として,環境問題を未然 に防ぐための投資や,従来工法で用いられていた天然 資材より過度な製造プロセスを考える.. (1) 環境負荷低減効果を考慮した環境価格の定義 廃棄物を有効利用する場面では,健康被害および土壌 汚染の解決や前処理などに関係する負の経済効果と,最 終処分量の削減や天然資源の節約などに関係する正の 経済効果が考えられる.土木事業では,こうした環境負 荷低減に関連する経済性を適正に評価するため,総合コ ストの算出過程において直接工事に関係する内部コス ト(建設コスト)に加えて環境負荷に関係する外部コスト. C E = c1 + c2 + c3 − c4 − c5. (2). ここに,c1は浄水汚泥を使うことによる土壌汚染または 植生被害の拡大を予防するための費用(円)である.c2は 浄水汚泥を脱水または前処理するために要する費用(円) である.c3は浄水汚泥の運搬や保管に要する費用(円)で. 789.
(3) 土木学会論文集C Vol.66 No.4,788-799,2010.11. ある.c4は浄水汚泥を利用することによる最終処分費用 の削減分(円)である.c5は浄水汚泥を利用することによ り従来購入していた土質材料の節約費用(円)である. c1は,既往の研究7)より,溶出試験の結果が「土壌の汚 染に係る環境基準」を満足し,かつ,Al3+が植生に及ぼ す影響として「水道法第4条に基づく水質環境基準」を. されると仮定している.この仮定の根拠として,第一に 数年後または数十年後の浄水汚泥の力学特性を説明で きる測定値や実験値が無いこと,第二に文献14)より浄水 汚泥を繰返し利用した場合にCBRは低下することが分 かっているため,解体後の再利用は必ずしも可能ではな いこと,第三に茨城県日立市の事例より,埋設管工事の ような比較的小規模の施工では,発生土に対する力学試 験を行うより,発生土を購入土で入れ替える方が費用対 効果は高いことが挙げられる.ただし,本研究において は,固化処理については考えておらず,一般的な締固め 管理のみで実施できる有効利用を対象としている.式(3). 満足することで環境適合性は高いことが認められるた め,実質的に0円とみなせる.c2は浄水汚泥の脱水で機械 的な脱水設備や造粒機などを利用する場合に考慮する 必要があり,天日乾燥のみの利用であれば0円とみなせ る.c3は従来工法において用いていた天然資材の運搬経. より,浄水汚泥の混合率が小さいほど,より多くの天然 資材が廃棄されるため,全体のコストは高くなることが 予想される. 廃棄物の有効利用に関する市場の仕組みは,一般的な 市場と同様に需要と供給の法則に基づき,需要が変動す ると市場均衡も変動すると考える15).このとき,浄水汚. 路に対して,浄水場から建設現場への経路が距離的に大 きく異ならない場合には0円とみなせる.c4とc5は前述し た正の経済効果に相当するため,本来,支払うはずであ った処分費用が削減された分は浄水汚泥の価格を低下 させるものと考え,マイナスの符号を付けた.したがっ て,c4とc5の増加はCEを小さくする方に作用し,CEは小 さいほど環境負荷低減効果が高いと解釈できる. 環境の価値は,環境を実際に利用したことに由来する 利用価値(use value)の他に,非利用価値(non-use value)も. 泥を有効利用する場合には,工事の時期と規模をあらか じめ設定できることから,需要は固定して考えることが できる.しかし,供給に関しては,浄水汚泥の排出量に 限りがあるため,需要がある一定量を超えて設定される と超過需要となり,混合利用により供給力を増大させる 必要性が生じる.ここで,混合割合を力学的側面と環境 経済的側面から決定することが重要となる.前述した浄 水汚泥の全体価格CT,材料価格CM,環境価格CEの中で, 混合利用に直接関係する項目はCEに限定できるため,浄. あると言われている13).非利用価値には,オプション価 値(option value)と呼ばれる,将来的に必要が生じた時の ために環境を利用するオプションを残すために支払わ れる金額に相当するもの,さらに,利用する見込みはな くとも環境を残しておくことに支払い意思が生じる場 合に定義される存在価値(existence value)がある13).これ らは潜在的便益としての環境の価値であり,本研究にお いて重要視している天然資源や最終処分場容量の節約 は特にオプション価値としての意義が強い.c4とc5の増. 水汚泥の環境経済効果すなわち環境負荷低減効果を見 積もるためにはCEを算出すればよい.ただし,以上の考 え方で環境負荷低減効果を算定するには,浄水汚泥単体 の品質が,従来使用されていた土質材料と同等以上であ り,従来の土質材料の価格をCM’としたとき,CM=CM’を. 加により浄水汚泥の単価が減少することは,環境の利用 可能性を将来に残すためのイニシアチブをとることに 結びつくと考えられる.. 成立させることが必要条件となる.. 3. 浄水汚泥の道路構成材料としての力学特性と 品質基準. (2) 浄水汚泥と砂質土との混合利用における環境負荷低 減効果の解釈と環境価格の定義の拡張 前節に示した内容は浄水汚泥を単体で利用する場合 の環境経済効果の定義である.次に,浄水汚泥の混合利 用における環境経済効果を定義する.混合利用時の環境 負荷は天然資材の損失と考え,式(2)の環境価格CEを式 (3)に拡張した. p C E = (c1 + c2 + c3 − c4 − c5 ) + cnVn 1 − mix (3) 100 . 浄水汚泥を他の土質試料と混合利用するためには,浄 水汚泥の品質が代替材料としての基準を満足しなけれ ばならない(CM=CM’).そこで,浄水汚泥の単体利用を想 定して,道路構成材料としての力学特性を締固め特性と CBR強度の二つの観点から調査し,CM=CM’の条件を満 足するための品質基準値を設定した.. 3. ここに,cnは一般の土質材料の1m あたりの価格であり, 例えば山砂などの購入土の価格(円)である.Vnは一般の 土質試料の使用量(m3),pmixは浄水汚泥の混合率(%)であ る.ただし,0<pmix≦100である.ここでは,浄水汚泥が 混じった一般の土質材料は土構造物解体後に最終処分. 790. (1) 使用した試料 本研究では,茨城県日立市森山浄水場の天日乾燥床か ら採取した浄水汚泥を使用した.森山浄水場では原水を 一級河川の久慈川下流域から取水している.浄化処理で.
(4) 土木学会論文集C Vol.66 No.4,788-799,2010.11. 表-1 浄水汚泥の物理的・化学的性質 試料. A. B. C. D. E. F. G. 採取時期. 2006年6月. 2006年10月. 2007年6月. 2007年11月. 2007年11月. 2008年6月. 2008年11月. 257.4. 293.1. 242.1. 99.2. 208.1. 63.5. 212.4. 土粒子の密度(g/cm ). 2.540. 2.360. 2.400. 2.449. 2.514. 2.575. 2.582. 液性限界(%). 測定していない. 312.3. 248.2. 116.1. 221.4. 82.6. 224.2. 塑性限界(%). 測定していない. 236.7. 165.4. 68.9. 144.6. 59.5. 144.5. 塑性指数. 測定していない. 75.6. 82.8. 47.2. 76.8. 23.1. 79.6. 強熱減量(%). 18.10. 18.19. 18.22. 12.41. 18.51. 8.98. 22.30. 3. は凝集剤としてポリ塩化アルミニウムを使用している. 浄水汚泥の性状は原水水質に依存して変動すると考え られるため,はじめに,複数の試料の物理的・化学的性 質を調査した.表-1に浄水汚泥の物理的・化学的性質 を示す.採取時の含水比は63.5~293.1%と幅広い値とな っている.これは,浄水場の天日乾燥床において脱水さ れた期間と時期がそれぞれ異なるためである.土粒子の 密度と強熱減量はそれぞれ日本工業規格JIS A 1202:1999, JIS A 1226:2000に準拠して測定した.浄水汚泥の表面に 植物が繁茂している場合には,表面を削り取り,植物の 根が混入しない部分を使用した.液性限界・塑性限界は, 採取時の含水比から加水もしくは天日で脱水する過程 において測定し,試料の状態管理を除いてJIS A 1205:1999に準拠した.浄水汚泥Dと浄水汚泥Fの採取時 の含水比は液性限界より低く,強熱減量も他より小さか った.これは,天日乾燥に6ヶ月以上の脱水期間を要し. 100 採取時の含水比 w0=242.1(%). 通過質量百分率(%). 採取時の含水比(%). 80. 60. w0=212.4(%). w0=208.1(%). w0=63.5(%). 40. w0=99.2(%) 浄水汚泥C(2007年6月) 浄水汚泥D(2007年11月) 浄水汚泥E(2007年11月) 浄水汚泥F(2008年6月) 浄水汚泥G(2008年11月). 20. 0 0.001. 0.01. 0.1. 1. 10. 粒径(mm) 図-1 浄水汚泥の粒径加積曲線. たことで有機物の分解が進んだためと考えられる.採取 時の含水比が低いほど液性限界と塑性限界は小さくな った.これは浄水汚泥に含まれる凝集剤の化学的な固結 力が進んだためと考えられる.この試験結果は文献4)と. モールド内径は15cm,突固め層数は3層,一層あたり突 固め回数は92回とした.試料の粒径は,9.5mmふるい通 過分とした.なぜなら,浄水汚泥には直径10~1000mm の団粒が不均一に含まれており,大きい団粒ほど破砕し やすく,その度に粒度分布が変化し,再現性を得にくく なるためである.また,加水して含水比を調整した試料 と脱水過程の湿潤状態の試料の両方を準備した.以後, 各試料を用いて行った試験をそれぞれE-b法 (乾燥―非 繰返し法), E-c法(湿潤―非繰返し法)と記述する.E-b. 一致した傾向である.浄水汚泥の粒径加積曲線を図-1 に示す.粒度試験方法はJIS A 1204:2000に準拠した.試 料は湿潤状態であり,採取時の含水比に概ね等しい.団 粒化した試料は手で解きほぐした後に,2mmふるいで水 洗いした.採取時の含水比が低いほど粒度分布は砂質土 に類似する傾向が認められた.脱水に伴い団粒化が進ん でいたことが推察される.6%の過酸化水素水とヘキサ. 法では,加水後,24時間養生してから試験で使用した. CBR試験はJIS A 1211:1998に準拠して実施した.供試. メタりん酸ナトリウム飽和溶液を用いて前処理したに も関わらず団粒が維持されていたことから,ポリ塩化ア ルミニウムによる強い団粒化であったと考えられる.. 体は締固め試験で得られた最適含水比を含む20~140% の範囲に調整し,各層92回,3層に分けて突固めて作製 した.CBR試験においてもE-b法とE-c法の両方で作製し. (2) 試験方法 浄水汚泥の道路構成材料としての力学特性を調査す るため,突固めによる土の締固め試験とCBR試験を行っ た.突固めによる土の締固め試験はJIS A 1210:1999に準 拠した.突固め条件はE法であり,ランマー質量は4.5kg,. 791. た供試体を使用した.貫入ピストンと供試体表面の接触 面では,常に一定の接触条件とするため,貫入ピストン に0.05 kNの荷重をかけた状態を初期状態として,試験を 開始した.その後,貫入ピストンが供試体に1 mm/min の速さで貫入するように載荷し,貫入量が0.5 mm,1.0.
(5) 土木学会論文集C Vol.66 No.4,788-799,2010.11. mm,1.5 mm,2.0 mm,2.5 mm,3.0 mm,4.0 mm,5.0 mm, 7.5 mm,10.0 mm,12.5 mmにおける荷重を記録した.. より,浄水汚泥と一般の土質材料との混合では,混合時. 1.6. (3) 試験結果 図-2に浄水汚泥の締固め曲線を示す.E-b法(図-2(a) 参照)では含水比34~42 %の範囲で最大乾燥密度1.07~ 1.14 g/cm3が得られた.締固め曲線はなだらかな山型の. 浄水汚泥A(2006年6月) ゼロ空気間隙曲線 浄水汚泥C(2007年6月) ゼロ空気間隙曲線 浄水汚泥D(2007年11月) ゼロ空気間隙曲線. 乾燥密度 (g/cm3). 1.5. 形状を呈しており,含水比の変化に対する乾燥密度の変 化は小さいため,施工時における締固め度の変動は小さ いものと予想できる.その一方で,E-c法(図-2(b)参照). 1.4 1.3 1.2 1.1 1. では含水比の低下に伴い乾燥密度は一方的に増加し,外 気温で脱水できる範囲ではピーク値として判別するこ とはできなかった.そこで,脱水から加水までの一連の プロセスに着目し,E-c法とE-b法による試験結果を合成 した(図-2(c)参照).これより,E-c法で得られた乾燥密 度の最大値はE-b法における最大乾燥密度とは異なるこ とが明らかである.この試験結果は文献4)とも整合して. 0.9. 乾燥-非繰返し法…加水して含水比を上昇させる過程で測定. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 含水比 (%). (a) E-b 法(乾燥-非繰返し法) 1.6. 浄水汚泥A(2006年6月) ゼロ空気間隙曲線 浄水汚泥C(2007年6月) ゼロ空気間隙曲線 浄水汚泥D(2007年11月) ゼロ空気間隙曲線. 乾燥密度 (g/cm3). 1.4. いる.浄水汚泥には凝集剤が含まれており,この凝集剤 の化学的な固結状態が脱水の前後で異なるため,E-c法 とE-b法では,締固め具合が不可逆的になると推察され る.図-3にE-c法とE-b法における浄水汚泥の締固め特. 1.2 1 0.8 0.6. 性の差異を推察した模式図を示す.浄水汚泥の団粒が形 成されるメカニズムに寄与しているのは凝集剤ポリ塩 化アルミニウムによる架橋結合である.高分子が粒子間 を橋渡しする働きが架橋作用であり,粒子と接触してい ない高分子は溶存状態で親水性を呈する16).この親水性. 0.4. 湿潤-非繰返し法…浄水汚泥を脱水する過程で測定. 0. 50. 100. 150. 200. 含水比 (%). (b) E-c 法(湿潤-非繰返し法) 1.8. に起因して蓄えられた水分が脱水過程では減少する.そ の結果,溶存状態であった高分子は粒子と接触しやすく なり,より安定した団粒が形成されていくと考えられる. したがって,脱水に伴い団粒の強度は変化し続けるため, 締固め時に明瞭な最大乾燥密度は得られなかった.それ に対し,乾燥状態の浄水汚泥では,脱水は概ね完了し, 団粒としての状態は安定していたと考えられる.この場 合,加えた水は養生24時間以内に団粒内部に浸透する.. 浄水汚泥A(E-c法). 1.6. 浄水汚泥A(E-b法). 乾燥密度 (g/cm3). ゼロ空気間隙曲線. 1.4 1.2. 形成された団粒に水が浸透し その水量が締固まりやすさ (破砕性や流動性)に寄与する過程 ⇒最大乾燥密度が得られる. 1 0.8 脱水に伴い団粒が 形成されている過程. 0.6 0.4. そして,団粒は破砕しやすくなることで,突固め時に団 粒の破砕と再配列が起こり,締固め曲線にピークが表れ たと考えられる.以上の実験事実と締固めのメカニズム. 0. 50. 100. 150. 200. 含水比 (%). (c) E-b 法と E-c 法の試験結果の合成 図-2 浄水汚泥の締固め曲線. E-b法(乾燥ー非繰返し法)における浄水汚泥. E-c法(湿潤ー非繰返し法)における浄水汚泥 「脱水に伴い団粒強度が変化するため締固めのピークが得られない」. 加水. 凝集さ れた粒子 拡大. 湿潤状態の浄水汚泥. 「水が団粒となじむことで破砕性や流動性が変化する」. 親水性のある部分 ⇒脱水過程ではこの部分に 付着した水が抜けて団粒が 形成されていく. 乾燥状態の浄水汚泥. ポリ塩化アルミニウムによる架橋結合. ※乾燥収縮はイラスト上で は考慮しない. 図-3 E-b 法と E-c 法における浄水汚泥の締固め特性の推察. 792. 破砕し,団粒の配列が変わる ⇔湿潤状態では破砕することな く 団粒が変形した.
(6) 土木学会論文集C Vol.66 No.4,788-799,2010.11. 70 1.15. 乾燥密度 (g/cm3). 50. CBR (%). 1.2. 浄水汚泥A(2006年6月) E-b法 浄水汚泥D(2007年11月) E-b法 浄水汚泥C(2007年6月) E-c法 浄水汚泥D(2007年11月) E-c法. 60. 40 30. 1.1. CBR(95). 1 浄水汚泥A(2006年6月) E-b法 浄水汚泥D(2007年11月) E-b法. 0.95. 20. 0.9. 10 0. CBR(95). 1.05. 48 20. 25. 30. 35. 40. 45. 50. 55. 60 0. 10. 20. 20. 40. 60. 80. 100. 120. 140. 40. 52 50. 60. 70. CBR (%). 含水比 (%). 0. 30. 図-5 E-b 法による修正 CBR 試験の結果と締固め曲線との関係. 含水比 (%). 図-4 E-b 法と E-c 法により作製した浄水汚 表-2 95%修正 CBR を用いた各都市の埋戻し基準. 泥供試体の CBR と含水比の関係. (文献 17)をもとに作成). の含水比管理が重要であり,それに留意すれば,締固め 度の変動は小さくなるものとして浄水汚泥を利用でき る. 図-4に浄水汚泥の含水比とCBRの関係を示す.E-b法 では,含水比が56%から47%に至る過程において,E-c 法では,含水比が45%から56%に至る過程においてCBR は急激に増減する傾向が認められた.そして,最適含水 比に相当する含水比36~40 %の範囲において,CBRの最 大値58~61 %が得られた.古河ら4)は品質基準を「CBR ≧10 %」に設定している.本研究においてもこの値を満. 都市名. 適用箇所. 埋戻し条件. 札幌市. 下層. 修正 CBR30%以上. 横浜市. 路盤. 修正 CBR20%以上. 名古屋市. 路床. 修正 CBR20%以上. 京都市. 全体. 修正 CBR20%以上. 大阪市. ‐. 修正 CBR20%以上. 全体. 修正 CBR15%以上. 仮設路盤. 修正 CBR20%以上. 路盤. 修正 CBR80%以上. 上層. 修正 CBR80%以上. 北九州市. 足するためには,図-4より含水比を55%以下にしなけ. 福岡市. ればならない.なお,膨張比は全ての試験条件において 1 %未満であった.. 下層 路床. 図-5にE-c法による修正CBR試験の結果を締固め曲 線を並列して示す.また,文献17)を参考に作成した埋戻. 修正 CBR 砕石:30%以上,砂 20%以上 修正 CBR20%以上. 4. 浄水汚泥と砂質土の混合割合の決定. し材の品質基準を表-2に示す.表中の値は締固め度 95 %に対する修正CBR値である.道路の路床材料として 修正CBRは20%以上必要であると考えると,浄水汚泥の 場合,図-5より十分な修正CBRが期待できる.E-c法に 基づいた試料の準備方法であれば,浄水汚泥は従来の材 料の代替材として十分な品質を有することがわかった. 以上二つの実験事実より,本研究においては含水比 55 %以下まで脱水し,CBRを10 %以上確保することを品 質基準とする.最適含水比以下まで脱水した場合には, 最適含水比付近に含水比調整することで必要な品質は 確保されると考える.茨城県日立市における水道管埋設 工事の埋戻し事例では,従来の埋戻し材料として山砂が 用いられていたが,上記した脱水条件を満足することで, その代替材料として浄水汚泥を使うことは十分に可能 であると考えられる.その際,浄水汚泥の材料価格CM は山砂の価格と同等とみなすことができる.. 793. 浄水汚泥の供給量を増やすことを目的として,一般の 土質材料との混合利用について検討した.ここでは,茨 城県日立市において水道管埋設工事の埋戻し材に山砂 を用いていることを参考に,浄水汚泥と砂質土を混合し, 品質基準値を満足できる混合割合を明らかにした. (1) 使用した混合材料 本研究では浄水汚泥との混合材料に相馬硅砂(3号:平 均粒径: 1.7 mm,土粒子の密度: 2.634 g/cm3)を使用した. 相馬珪砂は福島県相馬市で採取された.図-6に相馬珪 砂の粒径加積曲線を示す.水道管埋設工事で使われる山 砂の土質は産地ごとに異なるのに対し,相馬珪砂は粒径 が整っており,砂質土混合の実験をする上では効率的な 材料であると考えた.相馬珪砂の最適含水比と最大乾燥 密度はそれぞれ6.3%と1.617g/cm3であった..
(7) 土木学会論文集C Vol.66 No.4,788-799,2010.11. 表-3 浄水汚泥と相馬珪砂の混合条件. 100 相馬砂(3号). 浄水汚泥の. 通過質量百分率 (%). 80. 100. 混合率(%). 65. 50. 浄水汚泥の. 60. 混合土の 含水比(%). 20. 30. 63.5. 含水比(%) 40. 40. 63.5. 30.1. 18.6. 15.3. 10.6. 2.575. 2.581. 2.584. 2.600. 2.613. 8.98. 6.36. 4.44. 3.83. 1.41. 混合土の 0 0.01. 0.1. 1. 土粒子の密度. 10. 粒径 (mm). 3. (g/cm ). 図-6 相馬珪砂の粒径加積曲線. 混合土の 強熱減量(%). 浄水汚泥の混合率,均等係数Uc,曲率係数Uc'. 80. 浄水汚泥30% 浄水汚泥40% 浄水汚泥50% 浄水汚泥65% 浄水汚泥100%. Uc=1.7,Uc'=1.0 Uc=58.3,Uc'=29.8 Uc=77.9,Uc'=38.1 Uc=130.0,Uc'=55.6. 2. 60. 1.8. 40. 乾燥密度(g/cm3). 通過質量百分率(%). 100. 20 0 0.001. 0.01. 0.1. 1. 10. 粒径(mm). 浄水汚泥40%. 1.6. 浄水汚泥65%. 浄水汚泥30%. 1.4. 混合直後. 1.2. 浄水汚泥50% 混合してから風乾した. 1. 図-7 浄水汚泥混合土の粒径加積曲線. 浄水汚泥100%(未混合). 0.8. (2) 混合土の物理的性質および力学特性 浄水汚泥と相馬珪砂を表-3に示す条件で混合した. 浄水汚泥は表-1に浄水汚泥Fと示される試料である.浄. 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. 含水比(%). 図-8 浄水汚泥混合土の締固め曲線. 水汚泥の混合率は湿潤質量比で算出してある.混合時の 浄水汚泥の含水比は63.5 %であり,3. (3)節に示した品質 基準を満足する含水比55 %より高い.混合時の含水比を 高く設定した理由は,浄水場において含水比55 %まで天. 60 浄水汚泥混合率30% 浄水汚泥混合率40% 浄水汚泥混合率50% 浄水汚泥混合率65%. 50. 日乾燥する時間を十分に確保することは困難であり,早 い段階で砂質土と混合することで,浄水汚泥と空気の接 触を促し,脱水期間を短縮するためである.したがって, 本研究では,浄水汚泥に砂質土を混合後,約5日間で含 水比を8~10 %低下させ,所定の含水比付近に至るまで の力学特性を調査した. 浄水汚泥の混合割合が小さいほど,すなわち,相馬珪 砂をより多く混合するほど含水比と強熱減量は減少し, 土粒子の密度は増大した.混合後の含水比と強熱減量か らは,短時間で浄水汚泥の含水比を低下させ,かつ,単 位体積当たりの有機物含有量を減少させることが砂質 土混合の利点であることがわかる.図-7に浄水汚泥混 合土の粒径加積曲線を示す.浄水汚泥は広い粒径幅を有 していたが,砂質土を混合することで砂分が増し,均等 係数が小さくなり,粒径が揃う結果となった.. 794. CBR (%). 40 30 20 本論文で規定する埋戻し材としての品質下限. 10 0 10. 15. 20. 25. 30. 35. 40. 含水比 (%). 図-9 浄水汚泥混合土の CBR と含水比の関係. 図-8に混合土の締固め曲線を示す.浄水汚泥と相馬 珪砂を混合後,さらに含水比を低下させ,含水比の低下 に伴う乾燥密度の変化を調査した.混合直後に実施した 実験結果は図-8中に矢印で示した.浄水汚泥混合率の 増加に伴い,含水比は低下し,乾燥密度は増大した.相 馬珪砂の最適含水比と最大乾燥密度はそれぞれ6.3%と.
(8) 土木学会論文集C Vol.66 No.4,788-799,2010.11. 1.617 g/cm3であったことを考慮すると,浄水汚泥を混合 したことで相馬砂の間隙が浄水汚泥で充填され,乾燥密 度は1.6 g/cm3以上まで増加したと考えられる.また,混 合直後から含水比を低下させることで乾燥密度はさら に増加した. 図-9に浄水汚泥混合土のCBRと含水比の関係を示す. 含水比の低下に伴いCBRは増加する傾向が認められた. 本論文で規定した埋戻し材としての品質基準「CBR≧ 10%」を満足したのは,浄水汚泥の混合率が30 %と40 % のケースであった.浄水汚泥の混合率40%のケースでは CBR≧10%の条件を満足したのはプロット一点のみで あったが,前述したとおり,砂質土を混合してから含水 比を低下させることを必要な前処理と考えているため, 含水比15%におけるCBRが10%を超えたことが重要であ る.浄水汚泥の混合率が50 %と65 %のケースでは,CBR は3.8 %以下であり,砂質土を混合したことによる有効 な強度改善は認められなかった.したがって,浄水汚泥 の混合率が40 %以下となるように砂質土と混合するこ. 一致するとは限らないことを考慮し,排出総量に対する 浄水汚泥の利用率を0~100%の範囲で変化させた.ケー ス5,ケース7,そして,ケース9では,混合土の量を埋 戻し量3000 m3に一致させるため,浄水汚泥の利用率を それぞれ90%,60%,30%とした. 以上のシナリオIは浄水汚泥を最初に利用する段階で の極めて短期的なシナリオである.しかしながら,実際 には浄水汚泥を継続的に利用するときのコストパフォ ーマンスが重要であり,長期的な環境負荷低減効果を評 価する必要がある.そこで,継続的な浄水汚泥の有効利 用による環境価格を算定するため,埋設管工事の頻度と 山砂の繰返し利用を考慮し,図-11に示す利用シナリオ IIを作成した.日立市の事例を参考に埋設管の改修工事 を三年に一度,建設現場を3箇所と設定し,1年目は現場 Aに,2年目は現場Bに,3年目は現場Cに浄水汚泥を供給. 3000m 3. 最終処分. (1000-X)m3. 3. 埋設管の掘削. とが重要であることが示された.すなわち,式(3)におけ る浄水汚泥の混合率pmixは40以下の範囲をとる.. (4000-X)m. 発生土. 浄水汚泥. 3000m 3. 浄化処理. 1000m3. 山砂. 建設現場. (3000-X)m3. 3000m 3. Xm 3. 混合条件と埋戻し量 から50~100%の範囲で 適切な値をとる. 5. 混合利用による環境経済効果の算定. ←. 混合条件 ・混合率100%(単体利用) ・混合率40% ・混合率30% ・混合率20%. 図-10 混合利用のシナリオ I. 4章では,浄水汚泥を従来材料の代替材料とするため の品質基準を確認し,浄水汚泥と砂質土を混合する際の 適切な混合割合を実験的に求めた.本章では,その結果 を用いて浄水汚泥の混合利用シナリオを作成し,環境負 荷低減効果を貨幣価値に換算した.環境経済効果の算定 では,浄水汚泥を1回利用する場合と改修工事を繰返し. 毎年1000m3 利用し なかった分. 浄水汚泥 建設現場 混合土. 1年目…A 2年目…B 3年目…C. 山砂. 継続的に利用する場合のそれぞれについて検討した.最 終的に,浄水汚泥の排出から利用まで一連の評価フロー を示した.. 発生土(混合土) 発生土(山砂). 最終処分. 施工時の損失分0.2%. 浄水汚泥が含まれていない山砂は次回改修時に繰り越し. 図-11 複数の建設現場に対する浄水汚泥の利用シナリオ II. (1) 混合利用のシナリオ 本研究では茨城県日立市における水道管埋設工事を 参考に,図-10に示す混合利用のシナリオIを設定した. 工事の規模は年間掘削量3000m3とした.一方,浄化処理 過程では年間1000m3の浄水汚泥が排出される.従来は発 生土と浄水汚泥は共に最終処分されていたが,浄水汚泥 を埋戻し材として利用することで最終処分量は減少す る.また,従来は建設現場で必要となる埋戻し土として 山砂を購入していたが,浄水汚泥を利用する分だけ山砂 の購入量は減少する.想定した浄水汚泥の混合利用条件 の一覧を表-4に示す.浄水汚泥の混合率は100% (浄水 汚泥の単体利用),40 %,30 %,20 %,10%,0% (山砂 の単体利用)とした.ここで,浄水汚泥は日常的に比較 的少量ずつ排出されるため,必ずしも工期と排出時期が. 795. 表-4 環境価格の算定で想定した混合利用条件 ケース. 浄水汚泥の混合率(%). 浄水汚泥の利用率(%). 1. 100. 100. 2. 100. 50. 3. 40. 100. 4. 40. 50. 5. 30. 90. 6. 30. 50. 7. 20. 60. 8. 20. 50. 9. 10. 30. 10. 10. 20. 11. 0. 0.
(9) 土木学会論文集C Vol.66 No.4,788-799,2010.11. する.4年目は現場Aに浄水汚泥を供給することになる. 20,000,000. 以上のサイクルで浄水汚泥を継続的に利用した場合の 環境価格の累積値を表-4に示す混合利用条件ごとに比 較した.ただし,浄水汚泥混合土と山砂単体を同一現場 で使用した場合には,改修時にそれぞれを区別して掘削 し,山砂は繰返し利用できると仮定した.また,山砂の みを丁寧に掘削し,繰返し利用する作業には困難が伴う ため,山砂掘削時の損失率を20%/年として計算した.. A:浄水汚泥の最終処分費用の削減分(円) B:山砂の購入費用の削減分(円) A+B. 削減費用 (円). 15,000,000. 浄水汚泥を単体で利用したケース 浄水汚泥を混合率90%で利用したケース. 10,000,000. 5,000,000. 計算に使用した原単位は,浄水汚泥の最終処分費が 5000円/ton,発生土(泥土)の最終処分費が5000円/ton,そ して,山砂の単価が2000円/m3とした.浄水汚泥と山砂 の湿潤密度はそれぞれ1.457g/cm3,1.950g/cm3とした.そ れぞれ,最適含水比において締固め度90%に相当する湿 潤密度である.運搬に関する費用c3は,従来は最終処分. 0 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. ケース番号. 図-12 各混合条件における最終処分費用と山砂購入費用 の削減分(ケース番号は表-4 と一致している). やセメント原料として市内で処理していたのに対し,本 研究において想定した有効利用においても市内の工事 で利用しており,運搬距離に大差はないと考え,計算上 では考慮しないこととした.実際には,山砂の運搬距離 が大きいほど浄水汚泥を利用することによる環境負荷 低減効果が大きくなるため,c3を無視する今回の仮定は. 20,000,000 A:浄水汚泥の最終処分費用(円) B:山砂の購入費用(円) A+B. 費用 (円). 15,000,000. 環境負荷低減効果を小さく見積もる方に作用する. (2) 混合利用による環境経済効果の算定 浄水汚泥を一回のみ利用する場合(シナリオI)と,改修 工事を伴い浄水汚泥を継続的に利用する場合(シナリオ IIに関して,最終処分費用と山砂購入費用の削減分から. 10,000,000. 5,000,000. 0 1. 環境価格を算定した. はじめに,図-12にシナリオIに対する計算結果を示. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 11. ケース番号. 図-13 各混合条件における最終処分費用と山砂購入費用. す.ここでは発生土の処分については計算に反映させて おらず,環境価格とは本質的に異なった値を結果として 表示しているため,グラフの縦軸は削減費用と表示して いる.削減費用が大きいほど環境負荷低減効果は高いと 解釈する.ケース11は浄水汚泥を利用していない従来の. (ケース番号は表-4 と一致している). の処分については考慮していない. 次に,シナリオIIに対する計算結果を図-14に示す.3 箇所の建設現場において埋戻し材が7回入れ替わる21年. 工法であり,最終処分量や山砂購入費の削減はないこと を意味している.ケース1,3,5では環境価格が大きく 算出される結果となった.それらは浄水汚泥を単体利用 または混合率90%で利用したケースである.その一方で, 浄水汚泥の混合率が減少するほど環境価格も減少する 傾向がみられた.したがって,浄水汚泥を利用するほど 環境負荷低減効果は高いことがわかった.参考までに図 -13に各混合条件における最終処分費用と山砂購入費 用を示した.山砂購入費用の推移に比べて,浄水汚泥の 最終処分費用の推移の方が定性的に大きな変動を有し ており,浄水汚泥を一度だけ利用するのであれば,山砂 の購入量を削減することより,浄水汚泥の最終処分量を 削減するほうが環境価格に対する寄与は大きいと言え る.ただし,シナリオIでは,解体後の浄水汚泥混合土. 後までの累積環境価格を算定した.環境価格は小さいほ ど環境負荷低減効果が高いと解釈する.ここでは,茨城 県日立市においてシルト質の軟弱な発生土が排出され やすい事例を参考に,最初の3年間は,各建設現場の発 生土を全て処分すると仮定して計算した.また,浄水汚 泥を利用しない従来の工法であっても天然資材すなわ ち山砂の損失は考慮されている.そのため,ケース11で は,1~3年目の発生土の処分による費用が大きくなり, 利用初期段階では環境負荷が大きくなる結果となった. 3年目以降は山砂を20%/年の損失率で繰返し利用し,ま た,毎年の浄水汚泥の処分量と山砂の損失量が一定であ るため,ほぼ一定の傾きで環境価格の累積値は推移して いる.浄水汚泥を利用しない従来の工法を基準に考える と,浄水汚泥を単体で利用したケースが最も環境負荷低. 796.
(10) 土木学会論文集C Vol.66 No.4,788-799,2010.11. 600,000,000. 500,000,000. 環境価値CE (円). 凡例内の数字A(%)-B(%)は A:浄水汚泥の混合率(%) B:排出量に対する浄水汚泥の利用率(%). 最初の3年間は3箇所の 建設現場の発生土を処分する. ケース1:100%-100% ケース2:100%-50% ケース3:40%-100% ケース4:40%-50% ケース5:30%-90% ケース6:30%-50% ケース7:20%-60% ケース8:20%-50% ケース9:10%-30% ケース10:10%-20% ケース11:0%-0%. 400,000,000. 300,000,000. 200,000,000. 浄水汚泥は利用しない(従来工法) 浄水汚泥を単体で利用したケース 最も環境負荷低減効果が認められる. 100,000,000. ※CEは小さいほど 環境負荷低減効果が高いと解釈する. 0 0. 5. 10. 15. 20. 25. 経過時間 (年) 図-14 複数の建設現場に浄水汚泥を継続的に供給した場合の環境価値の算定結果. 減効果が認められた.浄水汚泥を混合すると配合材料と して使われた山砂が改修時には廃棄され,天然資材の損 失分が環境負荷として計算されたためである.同じ混合 率について考察すると,浄水汚泥の混合率40%では,ス トック量に対する浄水汚泥の利用率が小さいほど,環境 負荷は小さいことがわかった.これは,混合率を固定し た条件でより多くの浄水汚泥を利用しようとするほど, 混合土の量も増え,その混合土が廃棄物となることが環 境負荷となる.同様の傾向が混合率30%,20%,10%の 条件でも確認できる.浄水汚泥を供給する実態としては, 年間供給量の1000m3を数回に分けて供給する方式が現 実的である.したがって,上述した利用率が小さいほど 環境負荷が小さくなるという結果は,実務的に好ましい ものであると考えられる. 以上の算定結果に基づき,天然資材の損失を考慮した ときに浄水汚泥の混合利用は必ずしも環境負荷低減に 結びつかないことが示された.今回の計算条件と計算結 果に基づけば,浄水汚泥を単体で利用し,改修時には浄 水汚泥と山砂を区別して掘削できる工法をとることが 最も望ましい.また,浄水汚泥を混合する場合には,本 論文においては混合率40%が最適であると言える.一般. 工事の種類と 規模の選定. 浄水汚泥の含水比調整 55%以下まで脱水. 埋戻し土の 総量を算出. 浄水汚泥のストック. 混合の有無もしくは 混合割合の決定. NO. 環境価格CEを 式(3)より算出. CBR試験. 環境負荷は 受容できる範囲か. CBRは10%以上. NO. YES. YES 施工. 図-15 浄水汚泥と砂質土の混合利用と環境負荷低減効 果の評価フロー. (3) 浄水汚泥と砂質土の混合利用と環境負荷低減効果 の評価フロー 図-15に浄水汚泥と砂質土の混合利用と環境負荷低 減効果の評価フローを示す.天日乾燥床を用いた浄水汚 泥の脱水は長時間を要するため,脱水とストックを継続 しなければならない.本研究では,脱水の目安は含水比 55%以下である.含水比管理と同時進行で工事の種類と. 的には,混合資材として利用する山砂量を減少させるこ とが重要である.ただし,天然資材の保全と最終処分場 残余容量の確保に対して,本研究では重みづけを行って いないため,それらの優先順位を経済評価に反映させる 方法については今後の課題である.. 規模を選定する.工事で必要な埋戻し量を決定すること が重要であり,埋戻し量から混合の有無,または,混合. 797.
(11) 土木学会論文集C Vol.66 No.4,788-799,2010.11. 割合の検討を行うことになる.埋戻し量と混合割合から は式(3)を用いて環境価格を算出する.本研究では,この. 参考文献. 環境価格が低いほど環境負荷低減効果が高いと解釈し ている.混合した試料に関しては,品質評価としての CBR試験を行い,CBR≧10%の条件と照合する.最終的 に,環境負荷と品質の両方の側面から浄水汚泥利用の可 否が判定される.環境負荷低減効果の判断基準を設ける ことは極めて困難であるが,計算結果は実務的な資金管 理に基づいているため,従来工法との比較から事業者が 各々の判断基準を設定することになる.. 6. 結論 本論文では,浄水汚泥の有効利用に際して一般の土質 材料と混合利用する必要性を需要と供給の観点から論 じ,最終処分量の変化や天然の土質材料の損失などを考 慮した環境経済効果の観点から混合利用の有効性を考 察した.本研究で得られた知見を以下に示す. 1) 浄水汚泥と砂質土との混合利用における環境負荷 は最終処分量や天然資材の節約量または損失量に 依存する量として解釈し,環境価格を定義した. 2) 浄水汚泥と砂質土の適切な混合割合を実験的に検 討した.CBR10%以上を確保するためには,浄水汚 泥を含水比55%まで脱水する,もしくは,浄水汚泥 の混合率を40%以下として,砂質土と混合する必要 があることを示した. 3) 浄水汚泥と砂質土との混合割合を変化させた条件 で環境価格を算定し,環境負荷低減効果について考 察した.天然資材の損失を考慮したときに浄水汚泥 の混合利用は必ずしも環境負荷低減に結びつかず, 浄水汚泥を単体で利用することが最も望ましいこ とを示した.浄水汚泥を混合する場合には,環境負 荷を出来る限り小さくするため,混合資材として利 用する山砂の量を減少させることが重要である. 廃棄物と一般の土質材料との混合利用においては力 学的側面や環境適合性に加えて環境負荷低減効果の観 点からも混合割合を決定することが重要である.本論文 で提案した手法では簡便に環境負荷低減効果を算定す ることができるため,浄水汚泥の処理の様に県や市など が個々で有効利用を検討する場面において,本研究の成 果は有効な判断指標となることが期待される.. 1) 厚生労働省:平成 15 年度水道事業環境対策手引書 3-4 資源 循環,pp.26-27,2002. 2) 厚生労働省:第 4 回水道ビジョン検討会,資料 6. 水道事業 に係わる環境対策,2003. 3) 厚生労働省:第 7 回水道ビジョンフォローアップ検討会, 参考資料 3. 水道ビジョンの主要施策と今後の課題,2008. 4) 古河幸雄,曾津大三,藤田龍之:浄水汚泥の地盤材料への 利用に関する研究,土木学会論文集 C,Vol.62,No.1, pp.67-78,2006. 5) 小林啓二,中村隆浩,関口高志,柴田靖,松山康二,小柳 津倫生,工藤稔:浄水場発生土を有効利用した法面緑化工 法の開発,第 8 回環境地盤工学シンポジウム発表論文集, pp.223-226,2009. 6) 海野修司,岡本正美,永渕正夫:浄水汚泥を用いたリン除 去技術,土木学会論文集,No.741/VII-28,pp.111-121,2003. 7) 渡邊保貴,小峯秀雄,安原一哉,村上哲,豊田和弘:浄水 汚泥のアルミニウム溶出に関する環境影響評価手法の提案, 土木学会論文集 G,Vol.65,No.3,pp.188-201,2009. 8) 環境省:廃棄物処理に関する統計・状況,産業廃棄物の排 出及び処理状況等(平成 18 年度実績)について,インターネ ット,http://www.env.go.jp/recycle/waste/sangyo.html (2009 年 8 月 24 日閲覧),2008. 9) 蛭田俊明,小峯秀雄,安原一哉,村上哲,渡邊保貴,ベジ ェヒョン,豊田和弘:現地発生土との混合による浄水汚泥 の有効利用法の提案と混合土の評価,第 8 回環境地盤工学 シンポジウム発表論文集,pp.83-86,2009. 10) 国土交通省:総合的な建設事業コスト評価指針(試案),外 部コストを組み入れた建設事業コストの低減技術に関する 検討委員会,pp.1-11,2002. 11) 落合英俊:都市ゴミ焼却灰の地盤工学的処理システムの構 築,平成 13 年度~平成 14 年度科学研究費補助金研究成果 報告書,pp.15-22,2003. 12) 大嶺聖,松雪清人:建設発生土および廃棄物の有効利用に おける環境経済評価モデル,土と基礎,Vol.55,No.1, pp.10-12,2003. 13) 植田和弘:環境経済学,pp.75-93,岩波書店,1996. 14) ベジェヒョン,小峯秀雄,安原一哉,村上哲,鹿志村清勝, 豊田和弘:繰返し使用による浄水汚泥の強度特性の変化, 第 43 回地盤工学研究発表会発表講演集(CD-ROM), pp.509-510,2008. 15) Mankiw, N. G.[著],足立英之,石川城太,小川英治,地主 敏樹, 中馬宏之, 柳川隆[訳]:マンキュー経済学 I ミクロ編, pp.90-119,東洋経済新報社,2002. 16) 足立泰久,岩田進午:土のコロイド現象,pp.217-219,学 会出版センター,2003. 17) 中村公亮,佐藤研一,山田正太郎,藤川拓朗,長浜武知, 木之下盛博:浄水汚泥を用いた粒状改良土の材料特性,第 40 回地盤工学研究発表会発表講演集(CD-ROM), pp.595-596, 2005. (2010. 1. 5 受付). 798.
(12) 土木学会論文集C Vol.66 No.4,788-799,2010.11. MIXING UTILIZATION OF DRINKING WATER SLUDGE AND SANDY SOIL BASED ON ENVIRONMENTAL AND ECONOMICAL EFFECTS Yasutaka WATANABE, Hideo KOMINE, Kazuya YASUHARA, Satoshi MURAKAMI, Bae JAEHYOUNG and Kazuhiro TOYODA Reusing drinking water sludge discharged during water purification is anticipated as a good use of waste materials as a geotechnical material. Mixing is certainly effective to improve the amount of supply materials. However, the effects of mixing on environmental economics have not been discussed. Therefore, such mixture must be examined from environmental and economical perspectives. This study defined the environmental value of drinking water sludge, with emphasis on the final disposal amount and the loss of natural soil. The environmental cost was estimated in various mixture conditions. Results show the benefits for geotechnical works of using drinking water sludge alone or decreasing the amount of mixed natural soils.. 799.
(13)
関連したドキュメント
(4S) Package ID Vendor ID and packing list number (K) Transit ID Customer's purchase order number (P) Customer Prod ID Customer Part Number. (1P)
対象地は、196*年(昭和4*年)とほぼ同様であ るが、一部駐車場が縮小され、建物も一部改築及び増築
現状と課題.. 3R・適正処理の促進と「持続可能な資源利用」の推進 自然豊かで多様な生きものと 共生できる都市環境の継承 快適な大気環境、良質な土壌と 水循環の確保 環 境 施 策 の 横
凡例及び面積 全体敷地 2,800㎡面積 土地の形質の変更をしよ うとする場所 1,050㎡面積 うち掘削を行う場所
23区・島しょ地域の届出 環境局 自然環境部 水環境課 河川規制担当 03-5388-3494..
土壌溶出量基準値を超える土壌が見つかった場合.. 「Sustainable Remediation WhitePaper
授業設計に基づく LUNA の利用 2 利用環境について(学外等から利用される場合) 3 履修情報が LUNA に連携するタイミング 3!.
「二酸化窒素に係る環境基準について」(昭和 53 年、環境庁告示第 38 号)に規定する方法のう ちオゾンを用いる化学発光法に基づく自動測