【その他:研究報告】
授乳を行っている母親間のピア・サポートの実態とその特徴
相澤 千絵
1)1)
兵庫県立大学看護学部要
旨
【目的】 本研究の目的は,授乳を行っている母親同士が行っているインフォーマルなピア・サポートの実態とその特徴を明らかに し,ピア・サポート支援の課題を検討することである。 【方法】 月齢1か月~12 か月の乳児を持つ母親 147 名を対象とし,自記式質問紙により希望栄養法,2 週間時や 6 か月時の栄養方 法とその満足度,友人数,物理的・情緒的・情報的ピア・サポートの人数等を調査し,郵送法にて回収した。 【結果】 一般の母親同士のネットワーク規模は個人差があり,ピアから受けていると認識しているサポートは情緒的・情報的サポ ートが多く,物理的サポートは少なかった。第 2 子以上の母親,初回妊娠時に授乳場面を見学した経験がある母親は物理的・ 情緒的・情報的サポートを多く得ていた。妊娠出産後の友人がいる母親は情緒的・情報的サポートを多く得ていた。栄養方 法とその満足度について,2 週間では栄養方法に満足している母親は多くの物理的サポートを得ており,1~5 か月までの栄 養方法に満足していない母親は多くの情報的サポートを得ていた。6 か月以降の混合栄養の母親は,母乳栄養の母親に比べ, 多くの情報的サポートを得ていた。 【考察】 授乳を行っている母親間で行っているインフォーマルなピア・サポートの実態とその特徴が明らかとなった。専門家は母 親同士の出会い場面の創設や母親が情報の取捨選択ができる素地を体得できるよう援助する必要がある。 キーワード:ピア・サポート,母親,栄養方法,乳児期 責任著者:相澤 千絵 Email:[email protected] 受付日:2020 年 2 月10 日 受理日:2020 年 5 月 12 日Ⅰ.諸 言
1989 年に WHO/UNICEF は「母乳育児の保護,推進,支
援―産科医療施設の特別な役割」を発表した。「母乳育児成
功のための 10 か条(Evidence for the ten steps to successful
breastfeeding)」(WHO/ UNICEF, 1998)は,この共同声明を
要約したもので,これを基に母乳のみでの授乳が推進され ている。産科医療施設入院中は 10 か条に基づいたケアを受 けるが,入院期間中に授乳が母乳のみで確立することは生 理学的に難しく,土江田(2005)は,出産後 3 か月間の母親 の授乳体験から,退院後の母親は試行錯誤を繰り返し,母乳 や人工乳の補足も含めた自分なりの授乳方法を徐々に身に つけていくと報告している。また,藤木ら(2013)は,産後 4 か月の初産婦において,授乳方法に関わらず,授乳の満足 感と育児困難感との間にやや強い負の相関が認められたと 報告している。これらより,退院後の育児において,母乳の みで授乳ができることだけでなく,満足感をもった授乳が できることが重要であるといえる。 退院後の母親への継続的な支援として,「母乳育児成功の ための 10 か条」(WHO/UNICEF,1998)では,保健医療者 が地域にある母親同士のサポートグループと連携すること を推奨している。この母親同士といった仲間,対等,同等の 者,同僚,同輩といった人々のことをピアと呼ぶ。ピア・サ ポートとは「仲間同士の支えあいの営みのすべて」であり, 「インフォーマル(制度化されていない非公式)で自然発生 的な仲間同士の支えあいの意」と「フォーマル(制度化され た公式・公的)で意図的な(時には仕事としての)支えあい の意」の両者が含まれている(相川,2013)。ピア・サポー トに関する研究は,トレーニングを受けたサポーターがサ ポートをするフォーマルなピア・サポートを題材として障 害者福祉や教育,青少年支援の分野から始まり,近年は看護 の分野でも行われている。その中で,サポートを受ける側に 「自己効力感の高まり」「知識の増加」「仲間づくり」「不安 解消」といった効果が得られ,サポートをする側に「自身の 悩みや孤独感の解消」「満足感」「充実感」「自信」「自己成長 の場」という点で効果がある(福島ら,2009;池田ら,2007; 前田,2008;小野ら,2007;大坂ら,2016;篠崎ら,2007; 時山ら,2017;山崎ら,2005;弓削,2006)ことが明らかと なっている。授乳においても,トレーニングを受けたピア・ カウンセラーによる電話や訪問の早期開始と繰り返しの介 入により,母乳のみで授乳ができる母親の割合を高め,母乳 のみを与える期間が延長すること,授乳に対する満足感を 高めることが RCT の手法を用いて明らかとなっている (Burton et al., 2018; Dennis, 2002; Johnson et al., 2017; Srinivas
et al., 2015)。フォーマルなピア・サポートは,母親の授乳に とって効果的な手段であるといえる一方で,インフォーマ ルなピア・サポートの実態やその効果は明らかとなってい ない。 これらより,インフォーマルなピア・サポートに着目し, 人工乳を与えている母親も含めた授乳中の母親のピア・サ ポートの実態や,授乳とピア・サポートの関連を明らかにし, インフォーマルなピア・サポートへの支援を検討すること を目的とした。母親同士の日常のサポートの実態が明らか になることは,母親同士の関わりをより効果的にするため の支援に繋がると考える。 Ⅱ.方 法 本研究では,ピア・サポートとは,授乳中の母親が認識し た授乳中の子どもを持つ母親からのインフォーマルなサポ ートと定義する。 1.対象 A 市において乳児対象とした 4 か月児健診,10 か月児健 診,子育てふれあい教室,離乳食教室,保健相談に訪れた授 乳中の母親を対象に実施した。 2.調査期間 2010 年 5 月~6 月 3.データ収集方法 調査対象者個々に無記名・自己記入式の質問紙と切手を 貼った返信用封筒を配布した。質問紙は自宅で自由な時間 を使って回答してもらい,郵送法による回収とした。 4.調査内容 1)基本的情報:年齢,職業の有無,家族構成,子どもの数, 現在授乳中の子どもの月齢,初回妊娠時に授乳場面を見学 した経験の有無 初回妊娠時に授乳場面を見学した経験は,板谷ら(2007) の調査において知識や情報を得る場面の一つであるとされ ており,調査項目とした。
2)授乳に関する情報:今回の妊娠中に希望した栄養方法, 子どもの月齢が産科入院施設からの退院後早期である 2 週 間時・離乳食開始頃の 6 か月時および調査時の栄養方法と その満足度 3)母親同士のサポート状況:妊娠前および妊娠・出産後に できた友人の人数,ピア・サポートの支援者数 妊娠前および妊娠・出産後にできた友人の人数は,「日頃 よく関わりがある授乳中の子どもをもつ友人」の人数を尋 ねた。ピア・サポートの支援者数は,荒巻ら(2003)の分類 を参考にし,「日常的に子供の面倒をみてもらえる」「日常的 に家事をしてもらえる」「いざというときに子どもの面倒を みてもらえる」「いざというときに家事をしてもらえる」「子 育てについての悩みや愚痴を聞いてもらえる」「子育ての大 変さをわかってもらえる」「子育てで心配なとき,相談・ア ドバイスが受けられる」の 7 項目に対して,各々の支援者 の人数を尋ねた。これらの項目は,House(1981)の情緒的, 物理的,情報的,評価的サポートの 4 つの下位概念を母性 看護領域に適した内容に改訂した Cronenwett(1985)のソー シャル・サポートの分類を用いて,「日常的に子供の面倒を みてもらえる」「日常的に家事をしてもらえる」「いざという ときに子どもの面倒をみてもらえる」「いざというときに家 事をしてもらえる」の 4 項目を物理的サポート,「子育てに ついての悩みや愚痴を聞いてもらえる」「子育ての大変さを わかってもらえる」の 2 項目を情緒的サポート,「子育てで 心配なとき,相談・アドバイスが受けられる」を情報的サポ ートとした。ソーシャル・サポート分類ごとに支援者数を合 計し,各項目数で割った項目当たりの平均支援者数をサポ ート分類ごとの支援者数とした。 5.分析方法 分析には IBM SPSS Statistics 24 を使用した。各変数の基本 統計量を算出した。 1)サポート分類ごとの支援者数は Kruskal-Wallis 検定およ び Bonferroni の方法にて比較した。 2)母親の年齢,子どもの数,職業の有無,子どもの月齢, 授乳の見学経験,よく関わる母親の有無,子どもの月齢(2 週間,1~5 か月,6~12 か月)における栄養方法の満足度を 従属変数とし,サポート分類ごとの支援者数を目的変数と する Mann-Whitney U 検定を行った。授乳の満足度は「ほぼ 満足」「満足」を「満足群」,「不満足」「やや不満足」を「不 満足群」とした 2 群間で比較した。 3)子どもの月齢(2 週間,1~5 か月,6~12 か月)毎の栄 養方法を従属変数とし,サポート分類ごとの支援者数を目 的変数とする Kruskal-Wallis 検定を行い,多重比較は Bonferroni の方法を用いた。有意水準は 0.05 とした。 6.倫理的配慮 対象者には,個別に研究の趣旨,依頼内容について文書を 用いながら口頭で説明し,協力の意思を示した対象者のみ に調査用紙を配布した。研究の協力の可否は対象者の意思 を尊重した。質問紙は個人が特定されないように無記名と し,研究協力依頼文書には,研究内容および結果の公表にお いて対象者の不利益や負担が生じないことを明記した。ま た,質問紙の返送を持って研究への同意とすることを明記 した。回収した質問紙は,データ入力後にシュレッダーにて 廃棄,データはパスワードを設定して管理した。なお,本研 究は研究計画書の段階で,京都府立医科大学医学倫理審査 委員会の承認(E-192)を受けて実施した。 Ⅲ.結 果 調査用紙は 307 名に配布し,147 名(回収率48.0%)から 回収した。そのうち,データ欠損のあった 3 名を除いた 144 名(有効回答率 98%)を分析対象とした。 1.対象者の属性 対象者の平均年齢は 33.0(SD 4.3)歳,20 歳から 45 歳の n = 144 項目 人数 % 年齢 20-24 歳 4 2.8 25-29 歳 25 17.4 30-34 歳 64 44.4 35-39 歳 42 29.2 40-45 歳 9 6.3 平均±SD 33.0 ± 4.3 就労状態 専業主婦 92 63.9 有職者 52 36.1 (内訳)パートタイム 6 4.2 自営業 3 2.1 フルタイム 4 2.8 育児休業中 39 27.1 家族構成 核家族 3 世代同居家族 134 10 93.1 6.9 子どもの数 1 人 77 53.5 2 人 53 36.8 3 人 13 9.0 4 人 1 0.7 授乳の 見学経験a) あり 110 76.4 なし 34 23.6 a) 初回妊娠時に授乳場面を見学した経験の有無 表 1.対象者の属性
範囲であり,5 歳ごとの年齢分布では30-34 歳が64 名(44.4%) と最も多かった。5 歳ごとの年齢分布を表 1 に示した。子ど もの数は,1 人 77 名(53.5%),2 人以上67 名(46.5%)で, その内訳は 2 人 53 名(79.1%),3 人 13 名(19.4%),4 人 1 名(1.5%)であった。 調査時の就労状態は,育児休業中を含む有職者 52 名 (36.1%),専業主婦 92 名(63.9%)であった。出産の場所 は全員が産科施設であった。家族構成は,核家族 134 名 (93.1%),3 世代同居家族 10 名(6.9%)であった。初回妊 娠時に授乳場面を見学した経験がある者は110名(76.4%), ない者 34 名(23.6%)であった。属性は表 1 に示した。 2.授乳に関する状況 1)現在授乳中の子ども 調査時の授乳中の子どもの平均月齢は 5.9(SD 3.0)か月 で,1~5 か月までが 79 名(54.9%),6~12 か月までが 65 名(45.1%)であった。子どもの月齢を表 2 に示した。 表 2.調査時の子どもの月齢 n = 144 月齢 人数 % 1 か月 1 0.7 2 か月 16 11.1 3 か月 16 11.1 4 か月 32 22.2 5 か月 14 9.7 6 か月 11 7.6 7 か月 2 1.4 8 か月 8 5.6 9 か月 15 10.4 10 か月 26 18.1 11 か月 1 0.7 12 か月 2 1.4 2)妊娠中に希望した栄養方法 「母乳が出れば母乳で育てたい」72 名(50.0%),次いで「ぜ ひ母乳で育てたい」59 名(41.1%)であり,91.1%の人が母 乳で育てることを希望していた。人工乳で育てたいと回答 した者はおらず,10 名(6.9%)は「特に考えなかった」と 回答した。 3)栄養方法 栄養方法について,2 週間時は 144 名中,母乳栄養 71 名 (49.3%),混合栄養 70 名(48.6%),人工栄養 3 名(2.1%), 6 か月時は 65 名中,母乳栄養 43 名(66.2%),混合栄養 16 名(24.6%),人工栄養 6 名(9.2%)であった。また,1~5 か月の子どもを持つ者は母乳栄養 54 名(68.4%),混合栄養 19 名(24.0%),人工栄養 6 名(7.6%),6~12 か月の子ども を持つ者は母乳栄養43名(66.2%),混合栄養13 名(20.0%), 人工栄養 9 名(13.8%)であった。 4)栄養方法の満足度 栄養方法への満足度について,2 週間時は満足群 92 名 (63.9%),不満足群 52 名(36.1%),6 か月時は満足群 55 名 (84.6%),不満足群 10 名(15.4%)であった。また,1~5 か月の子どもを持つ者は満足群 67 名(84.8%),不満足群 12 名(15.2%),6~12 か月の子どもを持つ者は満足群 58 名 (90.6%),不満足群 6 名(9.4%)であった。 3.母親同士のサポート状況 1)母親同士の関わり 母親同士の関わりがあると回答した者は135名(93.8%), 関わりがないと回答した者が 9 名(6.3%)であった。日頃 の関わりについて,妊娠前からの友人がいると回答した者 は 101 名(74.8%),いない者が 34 名(25.2%)で,関わり のある人数の平均は 2.6(SD 2.5)人(範囲 0~10 人)であ った。妊娠・出産後にできた友人がいると回答した者は 103 名(76.2%),いない者は 32 名(23.7%)で,平均人数は 4.0 (SD 4.3)人(範囲 0~25 人)であった。 2)ピア・サポートの支援者数 物理的サポートとして,「日常的に子どもの面倒をみても らえる」は,0.2(SD 0.8)人,「日常的に家事をしてもらえ る」は 0 人,「いざというときに子どもの面倒をみてもらえ る」が 0.7(SD 1.3)人,「いざというときに家事をしてもら える」が0.2(SD 0.6)人であった。情緒的サポートとして, 「子育てについての悩みや愚痴を聞いてもらえる」が 4.5 (SD 3.6)人,「子育ての大変さをわかってもらえる」が 4.9 (SD 4.0)人であった。情報的サポートとして,「子育てで 心配なとき,相談・アドバイスが受けられる」が 4.5(SD 3.9) 人であった。サポート分類ごとの支援者数は,「物理的サポ ート」は 0.4(SD 0.6)人,「情緒的サポート」は 4.7(SD 3.7) 人,「情報的サポート」は 4.5(SD 3.9)人であった。「物理 的サポート」の支援者数は「情緒的サポート」,「情報的サポ ート」に比べ有意に少なかった(図 1)。 3)サポート分類ごとの支援者数に関連する要因 サポート分類ごとの支援者数に関連する母子の背景を検 討した。2 人以上の子どもを持つ者や授乳の見学経験がある 者は「物理的サポート」,「情緒的サポート」,「情報的サポー ト」の支援者数が有意に多かった。妊娠・出産後にできた友
2 週間時 1~5 か月 6~12 か月 満足群 不満足群 満足群 不満足群 満足群 不満足群 (n = 85) (n = 50) (n = 60) (n = 12) (n = 56) (n = 6) 物理的 サポート人数(人) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 * (0.0-0.0) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 (0.0-0.4) 情緒的 サポート人数(人) 4.0 (2.0-6.5) 4.5 (3.0-6.0) 3.0 (2.0-6.0) 5.3 (3.8-7.8) 4.0 (2.1-6.4) 5.3 (2.3-7.0) 情報的 サポート人数(人) 3.0 (2.0-6.0) 3.0 (2.0-5.5) 3.0 (2.0-5.0) 5.5 * (4.6-6.8) 3.3 (2.0-6.0) 4.0 (2.5-6.6) Mann-Whitney U 検定 *: p < .05 中央値(四分位範囲) 2 週間 1~5 か月 6~12 か月 母乳 混合 人工 母乳 混合 人工 母乳 混合 人工 (n = 67) (n = 65) (n = 3) (n = 49) (n = 18) (n = 5) (n = 42) (n = 13) (n = 8) 物理的 サポート人数(人) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 (0.0-0.4) 0.0 (0.0-0.0) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 (0.0-0.4) 0.0 (0.0-0.5) 0.0 (0.0-1.2) 0.0 (0.0-0.3) 情緒的 サポート人数(人) 3.8 (1.9-6.0) 4.5 (2.9-7.0) 4.0 (0.0-4.0) 4.0 (2.0-7.5) 4.0 (2.0-5.0) 4.4 (1.5-7.6) 3.5 (1.8-6.0) 5.5 (3.3-10.0) 3.5 (1.5-6.0) 情報的 サポート人数(人) 3.0 (2.0-5.6) 3.5 (2.0-6.0) 3.0 (0.0-3.0) 3.0 (2.0-6.0) 3.0 (2.0-5.0) 5.0 (1.5-5.6) 3.0 (1.8-5.0) 6.0 (4.0-10.0) 2.0 **a) (1.0-4.3) Kruskal-Wallis 検定,Bonferroni 補正 **: p < .01 中央値(四分位範囲) 母乳は母乳栄養,混合は混 合栄養,人工は人工栄養を示す。a) 多重比較:混合栄養>人工栄養(p = .012),混合栄養>母乳栄 養(p = .016) 母親の年齢 子どもの数 職業の有無 子どもの月齢 授乳の見学経験 妊娠前からの友人 妊娠出産後の友人 平均未満 平均以上 1 人 2 人以上 有職者 専業主婦 1~5か月 6~12 か月 あり なし あり なし あり なし (n = 78) (n = 61) (n = 76) (n = 63) (n = 51) (n = 88) (n = 79) (n = 65) (n = 106) (n = 33) (n = 101) (n = 34) (n = 103) (n = 32) 物理的 サポート人数(人) 0.0 (0.0-0.0) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 (0.0-0.0) 0.3 ** (0.0-0.7) 0.0 (0.0-0.6) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 ** (0.0-0.0) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 (0.0-0.3) 0.0 (0.0-0.7) 0.0 (0.0-0.3) 情緒的 サポート人数(人) 3.9 (2.0-5.5) 5.0 (2.8-7.5) 3.0 (2.0-5.0) 5.0 ** (3.0-9.0) 3.0 (2.0-6.0) 4.0 (2.0-6.9) 4.0 (2.0-6.0) 4.0 (2.0-6.0) 4.5 (3.0-7.1) 2.0 ** (0.5-5.0) 4.8 (2.5-7.0) 4.0 (1.6-5.0) 5.0 (3.0-7.5) 2.8 ** (1.1-4.3) 情報的 サポート人数(人) 3.0 (2.0-5.1) 3.0 (2.0-6.0) 3.0 (2.0-5.0) 4.0 * (2.0-8.0) 3.0 (2.0-6.0) 3.8 (2.0-5.9) 3.0 (2.0-5.9) 3.0 (2.0-6.0) 4.0 (2.0-6.0) 2.0 ** (1.0-4.0) 4.0 (2.0-6.0) 3.0 (2.0-5.0) 4.8 (2.4-6.0) 2.5 ** (1.0-3.8) Mann-Whitney U 検定 *: p < .05 **: p < .01 中央値(四分位範囲) Kruskal-Wallis 検定,Bonferroni 補正 **:p < .01 n = 144 図 1.ソーシャル・サポート分類ごとのピア・サポート支援者数の比較 表 4.各時期の栄養方法によるソーシャル・サポート分類ごとの支援者数の比較 表 5.各時期の栄養方法の満足度によるソーシャル・サポート分類ごとの支援者数の比較 表 3.母子の背景によるソーシャル・サポート分類ごとの支援者数の比較 0.4 4.7 4.5 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 物理的サポート 情緒的サポート 情報的サポート ** (人) **
人がいる者は「情緒的サポート」「情報的サポート」の支援 者数が有意に多かった。母親の年齢や職業の有無,子どもの 月齢による違いはなかった(表 3)。 サポート分類ごとの支援者数に関連する栄養方法を検討 した。6 か月以降の子どもを持ち混合栄養をしている者は, 母乳栄養をしている者に比べて「情報的サポート」の支援者 数が有意に多かった(表 4)。また,サポート分類ごとの支 援者数に関連する栄養方法の満足度を検討した。2 週間時点 での栄養方法に満足していなかった者は「物理的サポート」 の支援者数が有意に多かった。1~5 か月の子どもを持つ栄 養方法に満足していない者は「情報的サポート」の支援者数 が有意に多かった(表 5)。 Ⅳ.考 察 本研究では,生後 1 か月~12 か月の乳児を養育中の母親 を対象に,授乳を行っている母親間で行われているインフ ォーマルなピア・サポートの実態について検討する。 1.対象者の特徴 今回調査した地域は都市近郊のベッドタウンである。対 象者の約 92%が核家族であり,専業主婦が約 64%を占めて いた。国民生活基礎調査(厚生労働省,2019a)によると, 児童のいる世帯に占める核家族の割合は2018 年には83.3% を占めており,調査した集団は核家族の割合が高い集団で あった。授乳に関する妊娠中の考えは「母乳がでれば母乳で 育てたい」「ぜひ母乳で育てたい」の順に多く,90.5%が母 乳で育てたいと考えていた。母乳で育てたいと考える母親 は,平成 17 年度では 96%,平成 27 年度では 93.4%であり (厚生労働省,2016),概ね全国的なデータと同様の傾向を 示している。 出産施設を退院して間もない2 週間時は,母乳栄養49.3% と混合栄養 48.6%でほぼ同率であったが,6 か月時の母乳栄 養は 66.2%,混合栄養 24.6%となっている。平成 27 年度乳 幼児栄養調査(厚生労働省,2016)では,母乳栄養 53.8%, 混合栄養 27.3%であり,比較すると母乳栄養率が高い。妊娠 中に約 90%の母親が母乳で育てたいと考えており,約 90% の母親が継続して母乳を与えていることから希望していた 栄養方法に近い授乳ができている集団であると言える。 2.ピア・サポートの実態 1)ピア・サポートが担う役割 本調査で,他の母親との関わりを持たない者が 6.3%いる 一方で,20 人と関わりを持つ者もおり,母親同士のネット ワークには個人差が大きいことが明らかとなった。また,サ ポートの分類別に支援者数を比べると,情緒的サポートや 情報的サポートに比べて物理的サポートの支援者数は有意 に少なく,平均でも 1 人に満たないという実態が明らかに なった。物理的サポートは子どもの面倒や家事といった母 親の直接的な代理を示すサポートであることから,ピア・サ ポートが担う役割としては小さいと考える。 2)ピア・サポートを多く得ている母親の特徴 母子の背景とサポート分類ごとの支援者数との関連をみ ると,第 1 子の母親よりも第 2 子以上の母親の方が,物理 的・情緒的・情報的サポートの支援者が有意に多いという結 果であった。都築ら(2001)は,第 1 子の母親は「親」「友 人」の順で育児情報を得るが,第 2 子以上の母親は「友人」 が一番目の情報入手先であったと報告しており,第 2 子以 上の母親では,友人が重要なサポート源であるといえる。さ らに,落合(1989)は,都市部では同年齢やそれに近い年齢 の子どもをもつ母親同士が自発的かつ自然発生的に生み出 した地域育児ネットワークが,大きな役割を果たすことを 報告している。本調査でも,母親の年齢や職業の有無,子ど もの月齢に関係なく,妊娠・出産後にできた友人がいる母親 は情緒的・情報的サポートの支援者が有意に多いという結 果であった。子どもを産み育てる過程で新しく母親同士の 関係が結ばれ,その関係がピア・サポートとして機能してい ることが示唆される。 初回妊娠時に授乳場面を見学した経験がある母親は,物 理的・情緒的・情報的サポートの支援者が有意に多かった。 大城(2010)は,母乳育児をしている母親と児の姿を見慣れ ている環境で育っていると,自分の妊娠・出産・育児をする 時に母乳を与えるというイメージを持ちやすく,自然に母 乳育児を選択しやすいと述べている。他の母親が行ってい る授乳場面を見ることは出産後の自分の授乳イメージの具 体化に繋がる。また,授乳を見せることができる母親同士の 関係性は近しいものであると考えられ,他人の授乳を見る ことができる環境は母親同士のサポートを受けやすい環境 であると推測される。 3)栄養方法とピア・サポートとの関連 子どもの月齢別に栄養方法の満足度とサポート分類ごと
の支援者数の関連をみると,2 週間時は,栄養方法の満足度 が高い母親で物理的サポートの支援者が多かった。前述の 通り,ピア・サポートにおいて物理的サポートの役割は少な いが,2 週間という産科施設を退院して間もない時期は,情 緒的・情報的なサポートよりも直接的な支援が重要である といえるであろう。1~5 か月の児を持つ母親では,栄養方 法に満足している母親よりも満足していない母親のほうが, 情報的サポートの支援者が多かった。すなわち,栄養方法に 満足していない母親はより多くの母親から情報を得ること ができる環境にいる。情報源が多いことは,様々な角度から の多種多様な情報の入手につながる一方で,その情報が母 親のニーズと一致していない場合,情報過多による混乱を 生じる可能性が考えられる。重田ら(2003)は,子どもの疾 患の症状や病気に関する情報源に関する調査で,母親が 様々な情報源から得た知識について 4 人に 1 人が満足して いなかったと報告しており,情報を多く得ていても得られ た情報の内容次第では母親の栄養方法の認知に対して否定 的に働くことが示唆された。また,自分と他人の授乳状況を 比較することが自らの栄養方法の満足感を低下させている 可能性も考えられる。 栄養方法とサポート分類ごとの支援者数の関連をみると, 6 か月以降の混合栄養の母親への情報的サポートの支援者 数が,人工栄養の母親や母乳栄養の母親と比較して多かっ た。「授乳・離乳の支援ガイド」(厚生労働省,2019b)では, 離乳の開始は生後5~6 か月頃が適当であり,離乳の完了は 生後 12~18 か月頃としている。平成 27 年乳幼児栄養調査 (厚生労働省,2016)によると,「6 か月」に離乳を開始し, 「13~15 か月」に離乳を完了する人が最も多い。すなわち, 6 か月以降は子どもの栄養方法に離乳食が加わり,授乳と離 乳食のバランスのとり方に迷いを生じやすい時期である。 混合栄養の母親は,母乳と人工乳を併用していることから, 母乳栄養や人工栄養のみを与えている母親に比べると,迷 う項目が多いことが推測される。A 市では10 か月健診の際 に保健師に相談することができる。しかし,1741 市町村の うち約 500 市町村は 9~10 か月健診がなく,3~4 か月健診 の後は 1 歳 6 か月健診まで専門家が関わる機会がない(国 立成育医療研究センター,2018)。したがって,この時期の 母親にとって,ピア・サポートが重要な情報源の一つとなっ ていると考えられる。 母親が地域で子育てをしていくにあたり,インフォーマ ルなピア・サポートが日常的な情緒的・情報的なサポートと して機能しており,特に栄養方法に関しては専門家からの 助言が受けにくい時期の重要な情報源となっていることが 明らかとなった。授乳・離乳支援ガイド(厚生労働省,2019b) では,母乳育児を継続するための支援のポイントとして専 門的支援や母子保健事業の紹介とともに仲間づくりを挙げ ている。授乳の状態を共感し,情報の伝達を受けることがで きる仲間同士の関係を妊娠・出産から育児を行う過程の中 で築くためには,専門家が母親の仲間づくりの契機となる 場面を数多く提示していくことが重要であろう。また, Dennis(2002)は,トレーニングを受けたピア・サポーター, すなわちフォーマルなピア・サポーターはサポートの受け 手に対して事前に学習した正しい知識に基づいた情報を提 供していることを明らかにしている。しかし,インフォーマ ルなピア・サポーターである母親からの情報は,母親個々の 経験や価値観に左右される可能性が高く,情報の正確性や 信頼性については疑問が残る。ある母親にとっては効果的 で適切な情報であっても,別の母親にとっては非効果的で 不適切な情報となりうる。母親仲間の関わりから得られた 情報に過度に振り回されず,安心して自らの栄養方法を続 けられるよう母親自身が情報を見極める力を養うことが必 要となる。専門家は,産科入院施設における栄養方法の習得 時から母親の意思を尊重し,自立を促す支援をより意識的 に行い,母親が情報の取捨選択ができる素地を体得できる よう援助する必要がある。 3.本研究の限界と課題 授乳は,日々の児との関わりの中で徐々に母親なりの方 法が確立していくため,月齢によって栄養方法は影響を受 ける。本調査では,対象者の月齢が幅広く,一時点での栄養 方法や満足度を十分に測定することができていない。振り 返りによる自記式回答であることから,想起バイアスが働 いている可能性がある。また,結果より「子どもの数」が交 絡因子となることが明らかとなったが,サンプル数より統 計的手法による交絡因子の除外ができなかった。交絡因子 を除外できるようサンプルサイズの検討を確実に行う必要 がある。調査当時から現在にかけて情報社会の発展が進み, 母親同士の関わりの手段が対面だけでなく,インターネッ トに拡大しているため,現在の母親のピア・サポートの実態 が十分に反映されていない可能性がある。手段の多様化に
よるピア・サポートへの影響を今後検討する必要がある。 Ⅴ.結 論 1.母親同士のネットワーク規模は個人差が大きく,ピアか ら受けていると認識しているサポートは情緒的・情報的サ ポートが多く,物理的サポートは少なかった。 2.第 2 子以上の母親,初回妊娠時に授乳場面を見学した経 験がある母親は物理的・情緒的・情報的サポートを多く得て いた。また,妊娠出産後の友人がいる母親は情緒的・情報的 サポートを多く得ていた。 3.2 週間では栄養方法に満足している母親は多くの物理的 サポートを得ており,1~5 か月では栄養方法に満足してい ない母親のほうが多くの情報的サポートを得ていた。6~12 か月は混合栄養の母親は母乳栄養の母親よりも多くの情報 的サポートを得ていた。 以上の結果から,授乳を行っている母親間で行っている インフォーマルなピア・サポートの実態とその特徴として, ピア・サポートは日常的な情緒的・情報的なサポートであり, 母親は情報源が多い場合には情報過多による混乱を生じる 可能性があることが明らかとなった。このことより,専門家 は母親同士の出会い場面を創設し,ピア・サポートの輪を広 げるとともに,母親が情報の取捨選択ができる素地を体得 できるよう援助する必要がある。 謝辞:調査にご協力いただきました皆様に感謝申し上げま す。また,研究実施にあたりご指導頂いた木村みさか先生, 眞鍋えみ子先生,本稿の執筆に際しご指導頂いた渡邉竹美 先生に心より感謝申し上げます。なお,本研究は京都府立医 科大学大学院保健看護研究科へ提出した修士論文の一部を 加筆修正したものである。本論文の要旨は The ICM Asia Pacific Regional Conference 2015(2015 年 7 月,横浜)で発表 した。 利益相反:本研究における利益相反は存在しない。 文 献 相川章子 (2013). ピアによるサポート活動. 精神科臨床サービス, 13, 180-181. 荒牧美佐子, 田村毅 (2003). 育児不安・育児肯定感と関連のあるソーシャル・サポートの規定要因. 東京学芸大学紀要6部門, 55, 83-93.
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Actual conditions and characteristics of peer support
among breastfeeding mothers
Chie Aizawa
1)1) University of Hyogo College of Nursing Art and Science
Abstract
[Purpose] The purpose of this study is to clarify how breastfeeding mothers help each other and to examine issues surrounding informal
peer support during breastfeeding.
[Methods] The subjects were 147 mothers with infants aged one to 12 months, and a self-administered questionnaire was used. The
questionnaire inquired about mothers’ desired feeding methods and the reality of their actual feeding methods and their satisfaction at two weeks, six months, and at the time of the questionnaire. The questionnaire also asked how many of the subjects’ friends with children offered instrumental, emotional, or informational support.
[Results] Mothers’ network sizes varied greatly from individual to individual while emotional and informational support were found to
be significantly more prevalent than instrumental support. Mothers with two or more children and those who had witnessed breastfeeding prior to attempting to breastfeed themselves had significantly more instrumental, emotional, and informational support. Mothers with friends who had gone through pregnancy had significantly more emotional and informational support. At two weeks, mothers who were satisfied with their method of nutritional delivery were found to have had significantly more physical support, and those who were not satisfied with their method of nutritional delivery for the one to five months had significantly more informational support. Mothers who were “breastfeeding with supplementary formula feeding” had significantly more informational support than those who were “exclusively breastfeeding” for the six to twelve months.
[Conclusion] The results have made clear the characteristics of informal peer support among feeding mothers. Experts need to help
mothers find opportunities to meet each other and develop the ability to assess information through peer support in addition to fostering the effective functioning of peer support systems.
Key Words: Peer support, Mothers, Nutritional method, Suckling stage
Correspondence author: Chie Aizawa Email: [email protected] Received: February 10, 2020; Accepted: May 12, 2020