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地域住民コホート研究からみた高尿酸血症の重要性

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はじめに これまで,高尿酸血症は,尿酸塩沈着による痛 風関節炎や痛風腎の原因として治療の対象であっ たが,近年は様々な生活習慣病とそれに続く心血 管疾患や死亡との関連から,これらの疾患・イベ ントの予測因子,リスク因子としても認識されるよ うになってきた.さらに,日本人の食事や生活習 慣の変化に伴い,一般住民,特に成人男性の高尿 酸血症の頻度が 20~25%まで増加していることも あわせて1),高尿酸血症への関心は,以前に比べ て高まっている.成人男性において痛風の頻度は1 ~ 1.5%であることから2),高尿酸血症の大部分は 無症候性と考えられ,健診などで初めて指摘され ることも多い.本稿では,主に健診受診者を対象 としたコホート研究の結果をもとに,日本人地域 住民における高尿酸血症の重要性について述べる. 1. コホート研究で血清尿酸値との関連が報告 されている疾患・イベント コホート研究により,血清尿酸値と関連が報告 されている主な疾患・イベントを表1に示す(表1)3) 以前より血清尿酸高値との関連が知られている痛 風に加え,近年は,腎臓病,冠動脈疾患,脳卒 中,高血圧などの発症や総死亡との関連について も報告が増えている.しかし,これらの関連性の 根拠・エビデンスの強さは疾患により異なってお り,高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第 3版 では,腎障害との関連については,複数の観察研 究や介入研究が同様の傾向を示すことからエビデ ンスは中程度,心血管疾患,高血圧,死亡との関 連については,メタ解析では関連性を示すもの の,介入研究の数が少なく結果も一定していない ためエビデンスは弱い,としている4).ただし, このガイドラインは,2017 年までの研究成果を もとにしているため,直近の研究成果は含まれて いない. 一方,血清尿酸値低値で高い発症率を示す疾患 として,多発硬化症5),パーキンソン病6),アル ツハイマー病7)などの報告がある.しかし,これ らの報告は観察研究のメタ解析であり,結果の ばらつきがある点,介入研究がない点から,その エビデンスは弱い. これらの報告の多くは海外のコホート研究によ るもので,国・地域によって,遺伝素因,食事生 活習慣,高尿酸血症の基準や治療の考え方が異な るため,これらの結果を日本人に当てはめる際に は注意が必要である. 表1. 血清尿酸値との関連が報告されている 疾患・イベント(文献3より引用) ·血清尿酸値高値と関連  痛風,腎臓病,心血管疾患,高血圧,総死亡 ·血清尿酸値低値と関連  多発硬化症,パーキンソン病,アルツハイマー病 山形大学大学院医学系研究科 公衆衛生学・衛生学講座  Tsuneo Konta キーワード:コホート研究, 高尿酸血症, 生活習慣病, 腎臓病, 心血管疾患 連絡先:今田 恒夫 〒990-9585 山形県山形市飯田西 2-2-2       山形大学大学院医学系研究科 公衆衛生学・衛生学講座

地域住民コホート研究からみた高尿酸血症の重要性

今田 恒夫

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2. 日本人における高尿酸血症の頻度と生活習慣 病との関連 我々はこれまで,日本人地域住民健受診者を 対象としたコホート研究を行い,高尿酸血症の 頻度や生活習慣病との関連について報告してき た.2008 年に特定健診を受診した 27 道府県の 476,165名(39~74 歳,男性 40.6%)を対象とし た検討では,血清尿酸値の平均値±標準偏差は, 男 性 6.0±1.3 mg // dL, 女 性 4.6±1.1 mg // dL で, 高尿酸血症(血清尿酸値 >7 mg // dL)の頻度は, 全体で 9.1%(男性 19.4%,女性 2.1%),年代別 では,男性では 40-49歳代で最も高く加齢ととも に低下傾向,女性では加齢に伴い増加傾向であっ た(図 1)8).この結果は,高尿酸血症の状況は, 性別・年齢などの背景により大きく異なること を示している. 次に,高尿酸血症と生活習慣病の関連について は,血清尿酸値が高いほど,メタボリックシン ドローム(MetS)の発症が増加することから,高 尿酸血症は MetS 発症のリスク因子と考えられて いる4).また,高尿酸血症が高血圧の新規発症の リスクとなることも,特に若年者,肥満者,女性 で報告されている9, 10).我々の特定健診受診者に おける検討では,高尿酸血症の人の中で,腹囲, 血圧,血糖,脂質などの項目から判定した MetS 該当者と MetS 予備群該当者の割合は,29.4%, 17.2%で,両者の合計は 46.6%であった.これら の人は,それぞれ,積極的支援,動機付け支援な どの特定保健指導の対象となるが,残りの約半数 の高尿酸血症は介入の対象外となる(図2)8) 同様に,健診受診者で高尿酸血症を呈する人の 中で,高血圧は38.7%,糖尿病は10.9%,脂質異 常症は62.5%にみられた.これらの結果から,高尿 酸血症の約半数は様々な生活習慣病を合併するが, MetSや生活習慣病を伴わない高尿酸血症も少な くないことが示された. 図1. 健診受診者における血清尿酸値の分布と 高尿酸血症(>7mg/dL)の頻度 (文献8より引用) 図2. 健診受診者におけるメタボリックシンド ローム(MetS)と高尿酸血症の分布 (文献8より引用) 頻 度(%) 血清尿酸値(mg/dL) 0 10 20 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 高尿酸血症  全体の9.1%   (男性の19.4%    女性の 2.1%) ■男性 ■女性 24.5 24.7 21.8 18.8 17.2 0.9 1.1 1.8 2.0 2.6 0 10 20 30 頻 度(%) 年齢(歳) 70 74 30 39 40 49 50 59 60 69 ■男性 ■女性 高尿酸血症 9.1% 腹囲過大 34.0% MetS該当 13.0% MetS予備群 9.1%

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3. 日本人における高尿酸血症と臓器障害,生命 予後の関連 1 )腎障害 高尿酸血症が腎障害のリスク因子であること は,井関らの報告をはじめとして11),多くの観察 研究やそのメタ解析12)で確認されている.高尿酸 血症・痛風の治療ガイドライン第 3版では,研究 間の異質性はあるものの同じ傾向を示しているこ とから,腎機能低下の抑制を目的とした治療介入 を条件付きで推奨している4).しかし,女性では, 男性よりも低い血清尿酸値から腎障害リスクが上 昇すること11),また,高尿酸血症の基準となる血 清尿酸値7 mg//dLよりも低い正常高値でも腎機能 低下が速いこと(図 3)13)などが報告されており, 腎保護を目的とした場合に,男女で異なる目標値 とするか,どこまで低下させるべきかなどの問題 が残されている.これらの点は,今後の介入研究 の結果により明らかにしていく必要がある. 2 )心疾患・脳卒中 高尿酸血症と心疾患の関連に関しては,血清尿 酸値が高い程,心疾患による死亡率が高く,その 傾向は女性で顕著であることが海外の観察研究の メタ解析で示されている14).日本人を対象とした 我々の検討でも,高尿酸血症と心血管死亡の関連 は認められており,女性においてより強い関連が みられている15, 16).また,高尿酸血症と心房細動 発症についても関連を示すメタ解析があり17) 日本人の集団でも同様の結果が得られている18) 脳卒中との関連でも,高尿酸血症が,強くはな いものの,新規脳卒中発症の独立したリスクと なることがメタ解析の結果から示されている19) ただし,日本人約 15万人を対象とした検討では, 非致死性脳卒中の発症リスクは,血清尿酸値高値 だけでなく,低値でも上昇傾向を示すJ字型で あったことから20),両者の関係は直線的ではない 可能性がある(図4). 3 )死亡・がん 高尿酸血症と死亡の関連については,背景因子 の違い,基準値の違いなどで様々な異なる結果が 報告されているが,それらの報告をまとめたメタ 解析では,高尿酸血症は,男女とも総死亡の有意 なリスクであることを示しており,他疾患と同様 に,女性においてより強い相関がみられる14).日 本人を対象とした検討でも,ほぼ同様の結果であ る15, 16, 21, 22).日本人特定健診受診者を対象とした 解析では,女性では,男性よりも低い血清尿酸値 から総死亡や心血管死亡のリスクが上昇し,女性 では高尿酸血症の基準となる血清尿酸値 7 mg//dL よりも低い正常高値でもこれらのリスクが上昇す ることが示されている22) 我々は,高尿酸血症の生命予後への影響を他の 図3. 健診受診者における血清尿酸値と2年間 の腎機能変化(文献13より引用) 図4. 健診受診者における血清尿酸値と非致 死性脳卒中の新規発症リスク (文献20より引用) -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 † † † eGFR2年変化 (mL/min/1.73m 2) † P < 0.05 vs. Q1 血清尿酸値(mg/dL) Q1 M:≦4.9 F:≦3.7 Q2 M:5.0-5.6 F:3.8-4.3 Q3 M:5.7-6.2 F:4.4-4.8 Q4 M:6.3-7.0 F:4.9-5.4 Q5 M:≧7.1 F:≧5.5 M:≦4.9 F:≦3.7 M:5.0-5.6F:3.8-4.3 M:5.7-6.2F:4.4-4.8 M:6.3-7.0F:4.9-5.4 M:≧7.1F:≧5.5 補 正 ハ ザ ー ド 比 血清尿酸値(mg/dL) 1.12 1.07 1 1 1.26 1.12 1.09 1 1.04 1.21 0.5 1 2 ■男性(M)  女性(F) Q1 Q2 Q3 Q4 Q5

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生活習慣病と比較するため,人口寄与危険割合と いう指標を用いた検討を行った.人口寄与危険 割合は,その疾患の頻度とリスクの強さの積で 算出される指標で,住民全体の死亡の何%がそ の疾患に起因するかを表す.全国の特定健診受 診者約 12 万人を 5 年間追跡し得られた各疾患の 総死亡への人口寄与危険割合は,糖尿病 4.8%, 高血圧8.9%,高尿酸血症は2.5%で,心血管疾患 死への人口寄与危険割合は,糖尿病 6.9%,高血 圧 37.5%,高尿酸血症 6.6%であった.この結果 は,計算上,健診受診者全体の死亡40例中の1例, 心血管死亡15例中の1例は,高尿酸血症に起因す ることを示す.高尿酸血症の頻度が高い男性にお いては,高尿酸血症の影響は大きくなり,死亡 22例中の 1 例,心血管死亡 7 例中の 1 例は高尿酸 血症に起因すると推測される23).高尿酸血症の人 口寄与危険割合の数値は,糖尿病の値に近いこと から,高尿酸血症の地域住民の生命予後への影響 は,糖尿病などの生活習慣病と同様に大きいこと が示唆された. 最後に,悪性腫瘍による死亡と血清尿酸値の関 連については,血清尿酸値高値が関連する,関連 しない,血清尿酸値低値が関連すると異なる報告 があり,メタ解析でも有意な関連を認めていない ことから,現時点では不明である24) 4.高尿酸血症に関するコホート研究の課題 コホート研究は,疾患のリスク因子の探索には 大きな力を発揮するが,尿酸による組織障害の発 症進行の機序を明らかにすることはできず,基礎 研究の結果をもとに推測することになる.また, 観察研究ではリスク因子とアウトカムの独立した 関連性を示すことができても,直接的な因果関係 を証明することはできないため,血清尿酸値の上 昇が直接の原因か,他の原因の影響を反映してい るだけなのか,また,治療の際にどこまで血清尿 酸値を低下させるかの目標値について判断する ことは困難である.これらの点は,介入研究の結 果に基づいて判断することになる. おわりに 以上のように,コホート研究により,日本人地 域住民における高尿酸血症の現状と生活習慣病, 臓器障害,生命予後との関連が明らかになってき た.しかしながら,まだ未解明の部分もあり,高 尿酸血症の適切な診療法を確立するために,基礎 研究,介入研究の結果とともに,検討を進めてい く必要がある. 著者の COI 開示 (講演料) 三和化学研究所,富士薬品,ファイザー, 帝人ファーマ,持田製薬 参考文献 1) 富田眞佐子,水野正一:高尿酸血症は増加し ているか?-性差を中心に . 痛風と核酸代謝 30 : 1-5, 2006. 2) 川崎 拓,七川歓次 : 住民健診による痛風の 疫学調査.痛風と核酸代謝 30: 66, 2006. 3) Kutzing MK, Firestein BL : Altered uric acid

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With the changes in diet and lifestyle, the prevalence of hyperuricemia in the Japanese general population, especially adult males, has been increasing. Previously, hyperuricemia has been treated to prevent the urate crystal deposition-induced diseases, such as gouty arthritis and gouty kidney. Recent cohort studies disclosed that hyperuricemia is associated with various lifestyle-related diseases such as hypertension, metabolic syndrome, kidney disease, coronary heart disease, atrial fibrillation, stroke and subsequent deaths. Similar associations have been confirmed in the Japanese health checkup participants. These observations suggest that hyperuricemia can be a predictor or a risk factor of

these diseases and events in general population. Furthermore, the cohort study also showed that the importance of hyperuricemia is comparable to those of other lifestyle related diseases in the prognosis of Japanese population. However, to understand the association between hyperuricemia and diseases, there are several issues to be clarified, such as the mechanism how uric acid induces organ damages without crystal formation, and the optimal values of serum uric acid to prevent various diseases. To establish the significance of hyperuricemia in clinical practice, further accumulation of information from cohort studies, as well as basic and interventional studies is necessary.

Yamagata University

Key words : cohort study, hyperuricemia, lifestyle-related disease, kidney disease, cardiovascular disease Tsuneo Konta

The significance of hyperuricemia based on the findings from

community-based cohort study

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