• 検索結果がありません。

対話で学びを深める遠隔授業の授業デザインについての一考察

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "対話で学びを深める遠隔授業の授業デザインについての一考察"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

対話で学びを深める遠隔授業の授業デザインについての一考察

A consideration of lesson design for distance learning that deepens learning through dialogue

山口 小百合 Sayuri YAMAGUCHI 阿久根市立尾崎小学校

Akune City Osaki Elementary School 【要旨】 本研究では,Web 会議システムを活用した遠隔授業において,他者との対話をどのように組み 込めば児童の学びが深まるかが検討されている。児童の感想やその変容結果から,児童と専門家 との対話では「目的と目標の明確化と単元全体の知識の構造化」,彼らと他校児童との対話では 「共通の課題設定と児童が主体的に進める学習活動の導入」などが遠隔授業デザインの肝所とな ることが示唆された。 【キーワード】 遠隔授業 主体的・対話的で深い学び 双方向対話型 授業デザインの五つの観点 小規模校

1. 目的

遠隔授業は,児童が気付きにくい点(他 本研究の目的は,離島小規模校での遠 地域と比較で特色を認識,他地域との関 隔授業において,児童が他者との対話を わり等),時間や費用等の制限で見学実施 通して学びを深める授業デザインの肝所 が難しい点を補うよう,専門家との対話 を提案することである。授業では専門家 と専門施設のバーチャル見学を設定した。 との対話と他校児童との対話を行った。 農家見学の成果の発表場面で県畜産振 興課の専門家と遠隔で質疑応答を行った。

2. 授業実践① 専門家との対話

伝える相手の存在は,いつも以上に学習 3・4年複式学級の3年生5名を対象 意欲を高めた。仕事の手順や子牛の体重, に,社会科「畜産農家の仕事」で現地の担 えさ等,個別の事実を比較・関連付け, 任とのT・Tで遠隔地から指導を行った。 島の畜産業の特色や意味を考えたり,生 まず,単元の目標と本単元で発揮する 活の既有知識と結び付けたりする姿が見 「社会的な見方・考え方」を明確にした。 られた。こうした姿は,概念的知識を形 次に,事実的知識と概念的知識を構造化 成する深い学びの表出と捉えられる。 した図(北 2001)を作成した。「畜産農家の 仕事」を通して社会の仕組みや働きへの

3. 授業実践② 他校児童との対話

認識を深めるために,社会的事象につい 種子島の 6 年生5名(5・6年複式) て考える視点や方法と知識の構造図を明 と奈良県の7名(単式)で3回授業を行 示する。これは,目標達成の手段として った。授業デザインの五つの観点「学習規 遠隔システムの機能や特徴を生かす場面 律の統一」「学習課題の設定」「接続場面の と方法を検討し,地域素材の教材化や問 選定」「教師の役割と分担」「学習活動・学 題解決的な学習過程を構想する軸となる。 習形態の工夫」を組み込んだ。(山口 2018) 日本デジタル教科書学会 発表予稿集 Vol.9, 2020 (第9回年次大会(京都大会/オンライン開催)) 1

(2)

1回目は,自己紹介と学校紹介クイズ。 まずは,事前計画に基づき教師主導の活 動を行った。 2 回目は,種子島側が総合的な学習の 時間で調べた屋久島の自然について,児 童が作成したスライドを発表した。質疑 応答後,まちづくりについて環境保全派 と観光推進派に分かれて討論を行った。 世界遺産を守るという点は,両校の共通 課題となった。また,普段のガイド学習 を取り入れて児童主体で進めた。結果, 発言回数も増え,話の流れを中断しない 対話となり,多様な考えとその理由に驚 き合い,納得し合いながら学びを進めて いた。両校児童は,環境保全が優先で, 環境に配慮した観光も推進すべきという 最適解を生み出していった。 3 回目は,奈良側が社会科で地域にあ る水平社について調べた成果を発表した。 質疑応答後,道徳において差別などの困 難に負けず,自分の信念を貫く生き方に ついて意見交換した。中学校に向けて自 分の生き方を考えるという共通の視点で のフリートークにしたことで,主体的に 関わり合う姿が見られた。 教師間の授業構想段階では,異なる文 脈にある両校が対話の必要性を感じ,共 通のこととして認識できる課題の設定に 悩んだ。教師を介さず自然な流れの主体 的な本音の語り合いについても議論した。 そこで,アイスブレイク→質疑応答→ 2派に分かれて討論→フリートークと, 自由度と主体性を段階的に取り入れた。 他校児童との対話後の感想は,つなが る楽しさから始まり,自身の学びのメタ 認知に資するなど,遠隔授業の有効性を 認識する記述へと変容していった(表1)。

4. 考察

遠隔授業における専門家との対話は, 単元の目標と知識の構造図を可視化した 上で,必要場面や方法を判断するのが効 果的であった。対話で学びを深めるには, 児童がある程度の知識を得た段階で専門 家との接続を設定するのが適すると考え る。また,児童の生活と関連付ける発問 や専門的知見と絡める発問が,対話を促 進する教師の働きかけとして重要である。 他校児童との対話は,自分事として捉 えられ,意見交換の必要性を感じる課題 の設定,論点の明示,書くこと(自己内対 話)による自身の学びの振り返りが効果 的であったと考えられる。また,教室内 の対話やガイドによる進行の活用も,主 体的な対話を促進することが分かった。 これらが,対話で学びを深める遠隔授 業の授業デザインの肝所と捉える。 1回目 クイズが楽しい。質問や感想が 返って嬉しい。もっと積極的に話したい。 2回目 観光推進をマイナスと見ないと いう思いつきもしない意 見が出た。自分 たちで進められて達成感があった。 3回目 差別問題について相手校は自分 たちより深く考えている ことに驚いた。 自分も人と関わる時に気 を付けたい 。フ リートークで本音で話せ て,共感してく れたので,聞いてもらってすっきりした。 表1 A 児の授業後の感想の変容

付記:

本実践は鹿児島大学教職大学院生 時に行った。授業に御協力いただいた鹿 児島県河原千夏教諭,奈良県上田悦代教 諭と谷本秀年教諭に深く感謝いたします。

参考文献

北俊 夫「社会 科学 力を つ くる『知 識 の構 造図 』何 が本 質か が 見え てく る教 材研 究の ヒン ト 」(明治図書.2001) 山 口 小 百 合 「 小 規 模 校 の 学 び の 質 を 向 上 さ せ る 遠 隔 授 業 の 授業デザインの一考察」(第 44 回全日本教育工学研究協議会)h ttp://www.jaet.jp/repository/ronbun/JAET2018_D-2-8.pdf 山 口 小 百 合 「 深 い 授 業 を 目 指 す 遠 隔 授 業 の 効 果 的 な 授 業 デ ザイ ン」(明治図書『社会科教育 10 月号』.印刷中) 日本デジタル教科書学会 発表予稿集 Vol.9, 2020 (第9回年次大会(京都大会/オンライン開催)) 2

参照

関連したドキュメント

供た ちのため なら 時間を 惜しま ないのが 教師のあ るべき 姿では?.

・学校教育法においては、上記の規定を踏まえ、義務教育の目標(第 21 条) 、小学 校の目的(第 29 条)及び目標(第 30 条)

子どもの学習従事時間を Fig.1 に示した。BL 期には学習への注意喚起が 2 回あり,強 化子があっても学習従事時間が 30

今回の SSLRT において、1 日目の授業を受けた受講者が日常生活でゲートキーパーの役割を実

指導をしている学校も見られた。たとえば中学校の家庭科の授業では、事前に3R(reduce, reuse, recycle)や5 R(refuse, reduce, reuse,

総合的なお話を含めていただきました。人口の関係については、都市計画マスタープラ

課題 学習対象 学習事項 学習項目 学習項目の解説 キーワード. 生徒が探究的にか