日 本 未 病 シ ス テ ム 学 会 雑 誌14(2): 310-313, 2008 研究論文●43
プ ラ イ マ リ ー ケ アへ の ホ メ オ パ シ ー
導 入 に よ る 地 域 医 療 の 質 の 向 上 へ の
有 効 性 調 査(実 践 事 例 と意 識 調 査)
由 井 寅 子1)宮 崎 日 出 子2)高 橋 和 子3)灘 目的
欧 米,イ ン ドで は ホ メ オパ シー に よ る セ ル フ ケ ア,プ ラ イ マ リー ケ アへ の 応 用 に よる 自 己責 任 で の 健 康 管 理 が 進 ん で お り,代 替 医 療 と して 様 々 な場 面 で ホ メ オパ シー が 活 用 され て い る 。 日本 で もホ メ オパ シー を応 用 す る こ とで,産 科 医 や 小 児 科 医 の不 足 や,地 域 医 療 の 格 差 な ど の 問題 に 対 して の 貢 献 が 期 待 で き る こ とか ら,そ の 有 効 性 を利 用 者 意 識 調 査 と実 践 事 例 を通 じて 検 証 す る 。2.方法
(1)日本 ホ メ オ パ シー 医学 協 会 に よ り,ホ メ オ パ シー 利 用 者 や ホ メ オ パ シー 講 演 会 参 加 者 へ の ア ン ケ ー ト用 紙 送 付 に よ る2008年 ホ メ オパ シー 利 用 者 意 識 調 査 を 実 施 。 (2)熊 本 市 宮 崎 助 産 院 を利 用 す る妊 産 婦 の 健 康 管 理 指 導 で の ホ メ オパ シー 利 用 者 意 識 調 査 を 実 施 。 (3)医 師 が 常 駐 し な い離 島,静 岡 県 熱 海 市 初 島 で の ホ メ オ パ シー 家 庭 用 キ ッ ト配 置 に よ る応 急,救 急 ・救 命 ケ ア へ の 貢 献 可 能性 調 査 を実 施 。3.結果
(1) 2008年 ホ メ オ パ シ ー 利 用 者 全 国 実 態 調 査(中 間 報 告) の 結 果 の 要 約 を 図1に 示 す(回 答 者 数:853人)。 1.回 答 者 の プ ロ フ ィ ー ル 年 齢=29歳 以 下:6%,30∼39歳:50%,40∼49歳: 図1ホ メ オ パ シ ー キ ッ トの 緊 急 ・応 急 対 応 へ の 貢 献 (2008年 ホ メ オパ シー利 用 者全 国 実態 調 査(中 間 報 告)よ り) 31%,50∼59歳:8%,60∼69歳:4%,70∼79歳:1% 性 別=男 性:4%,女 性:96% 2.ホ メ オ パ シ ー の レ メ デ ィ ー を 利 用 し た こ と が あ り ま す か? は い:98%,い い え:2% 1)「 は い 」と答 え ら れ た 方 に お う か が い し ま す 。 ・レ メ デ ィ ー は ど れ く ら い の 期 間,利 用 し て い ま す か? 半 年 以 内:15%,1年 以 内:10%,2年 以 内:17%, 3年 以 内:19%,5年 以 内:22%,5年 以 上:18% 1)日 本 ホ メ オ パ シー 医 学 協 会2)宮 崎 助 産 院3)日 本 ホ メ オパ シ ー セ ン タ ー 静 岡 熱 海164(310)
日 本 未 病 シ ス テ ム 学 会 雑 誌Vol.14 No.2 2)「 い い え 」と 答 え ら れ た 方 に お う か が い し ま す 。 ・今 後 利 用 し た い と 思 わ れ ま す か? は い:94%,い い え:6% 3.ホ メ オ パ シ ー の セ ル フ ケ ア の た め の キ ッ トを お 持 ち で す か? は い:89%,い い え:11% 1)「 は い 」と 答 え ら れ た 方 に お う か が い し ま す 。 ・キ ッ トは 緊 急 対 応 ,応 急 対 応 に役 立 ち ま した か? は い:98%,い い え:2% ・「は い 」と 答 え ら れ た 方 ど ん な 場 合 に 役 立 ち ま し た か?(複 数 回 答 可) 子 供 の 怪 我,事 故:415人,手 術 の と き:104人,旅 行 の と き:201人,突 然 の 病 気:563人,妊 娠 ・出 産 時:115 人,そ の 他:185人 4.ホ メ オ パ シ ー の レ メ デ ィ ー を 利 用 す る こ と で, 市 販 の 薬 の 使 用 頻 度 は ど う な り ま し た か? 大 幅 に 減 っ た:81%,少 し 減 っ た:10%,変 わ ら な い: 9%,増 え た:0% サ プ リ メ ン トの 使 用 頻 度 は ど う な り ま し た か? 大 幅 に 減 っ た:73%,少 し 減 っ た:11%,変 わ ら な い: 16%,増 え た:0.2% 5.ホ メ オ パ シ ー の レ メ デ ィ ー を 利 用 す る こ と で,医 療 機 関 に か か る 頻 度 は ど う な り ま し た か? 大 幅 に 減 っ た:71%,少 し 減 っ た:17%,変 わ ら な い: 12%,増 え た:0.1% 6.ホ メ オ パ シ ー の 健 康 相 談 会 を 受 け た こ と が あ り ま す か? は い:76%,い い え:24% 1)「 は い 」と 答 え ら れ た 方 に お う か が い し ま す 。 ・最 初 の 主 訴 は 改 善 し ま し た か? 大 き く改 善:44%,少 し改 善:40%,あ ま り改 善 な し: 10%,改 善 な し:5% ・主 訴 以 外 の 症 状 は 改 善 し ま し た か? 大 き く改 善:38%,少 し改 善:49%,あ ま り改 善 な し: 10%,改 善 な し:3% ・相 談 会 の 成 果 に 満 足 し て い ま す か? と て も満 足:51%,ま あ ま あ 満 足:41%,や や 不 満: 4%,不 満:3% 2)「 い い え 」と 答 え ら れ た 方 に お う か が い し ま す 。 ・今 後 ,健 康 相 談 会 を 受 け てみ た い で す か? 是 非 受 け て み た い:41%,問 題 が あ る と き に 受 け て み た い:29%,機 会 が あ れ ば受 け て み た い:29%,受 け て み よ う と は思 わ な い:2% 7.こ れ か ら も ホ メ オ パ シ ー を健 康 維 持 に 利 用 して い き た い で す か? は い:99.6%,い い え:0.4% 8.現 在,ホ メ オ パ シ ーの レメ デ ィ ー は,誰 で も利 用 す る こ とが で き ま す が,今 後 も その 形 が望 ま しい と思 い ま す か? は い:99%,い い え:1% 9.ホ メ オ パ シ ー が も っ と 日本 で 広 が れ ば 良 い と思 い ま す か? は い:100%,い い え:0% (2)宮 崎 助 産 院 を 利 用 す る妊 産 婦 の 健 康 管 理 指 導 で の 利 用 者 意 識 調 査 の結 果(要 約)(図2) (3)2004年 よ りホ メ オ パ シ ー の レ メ デ ィー を家 庭 内 に 導 入 を 開 始 し,住 民230名(2008年7月 現 在)に 対 し,現 在 は 6世 帯(12カ 所)に ホ メ オパ シー ・レメ デ ィー キ ッ トな ど を常 備 す る。 こ れ ら を用 い,島 民,特 に 妊 婦,乳 幼 児, 小 児 の セ ル フ ケ ア ・プ ラ イ マ リー ケ ア を 行 う。 ま た,観 光 客,特 に ダ イバ ー,釣 り客,海 水 浴 客 の 急 な病 気 ・怪 我 な どの セ ル フ ケ ア ・プ ラ イ マ リー ケ ア を行 う こ とに よ り,搬 送 前 の 応 急 対 応 や 緊 急 搬 送 で な く対 処 す る例 が 出 て くる 。 対 応 例 と して,小 学2年 女 子 。 観 光 で 島 を訪 れ た 際, 岩 場 で転 倒 し,外 傷,裂 傷,捻 挫 な どが 認 め られ た た め, ホ メ オ パ シー で応 急 対 応 した例 や,漁 業 や ダ イ ビ ング の 現 場 に お い て,海 で の 外 傷,海 洋 生 物 に よ る刺 傷 ・咬 傷, 日焼 け ・熱 中症,潜 水 に まつ わ る トラ ブ ル,船 酔 い な ど に ホ メ オ パ シ ー に よ る セ ル フ ケ アが 行 わ れ,こ の初 期 対 応 に よ りそ の 後 の 重 症 化 を未 然 に防 い だ ケ ー ス が 多 く報 告 さ れ て い る例,夜 間 の 子 供 の急 性 症 状(発 熱,熱 性 痙 攣, 感 染 症,流 行 性 疾 患)に 対 して,ま ず ホ メ オ パ シ ー に よる セ ル フ ケ ア を家 庭 で 行 う こ とで,漁 船 や ヘ リ コ プ ター で の 搬 送 回 数 が 減 少,そ して必 要 が あ れ ば 翌 日,定 期 船 を 用 い て 受 診 す る ケ ー ス が 多 くな っ た例,幼 稚 園 児 が 両 手 の 平 を ス トー ブ に よ り火 傷 し,ホ メ オパ シー キ ッ トで の 緊 急 対 応(初 島 か ら電 話 に よ る対 応 確 認 あ り)に よ り,皮 膚 移 植 の 必 要 もな く,重 症 化 せ ず 完 治 した 例 な どあ り, 成 果 が 上 が っ て い る 。
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日本 未 病 シ ス テ ム 学 会 雑 誌Vol.14 No.2 図2 (宮崎助 産 院(熊 本市)を 利 用 す る30家 族 の実 態 調査 よ り抜粋)
4.考察
(1)の ホ メ オ パ シ ー利 用 者 意 識 調 査 の 結 果 か ら,ホ メ オ パ シ ー キ ッ ト利 用 者 の98%が 救 急 ・応 急 対 応 に 役 立 つ と して お り,使 用 例 と して 子 供 の怪 我 ・事 故 や 急 病,旅 行 時 な どが 多 い こ とか ら,家 庭 で の 救 急 ・応 急 対 応 に は, ホ メ オパ シー の 普 及 が プ ラ イ マ リー ケ ア の役 割 を果 た す こ とが 十 分 可 能 と考 え る。 さ らに,ホ メ オ パ シー 利 用 者 に お い て 医 療 機 関 に か か る頻 度(大 幅 低 減71%,少 し低 減17%)や 市 販 薬 の 使 用 頻 度(大 幅 低 減81%,少 し低 減 10%)が 大 き く低 減 して い る こ とか ら,ホ メ オパ シ ー に よ る セ ル フケ アが 家庭 に浸 透 す る こ と に よ り,不 要 不 急 な医 療 機 関 へ の 依 存 が 解 消 さ れ,本 当 に必 要 とす る 人 が 必 要 な と き に必 要 な 医 療 を受 け られ る社 会 を築 く一 助 と な り,さ ら に高 齢 化 社 会 で の 医 療 費 負 担 増 の 解 決 につ な が る もの と考 え る 。 この こ とは(2)およ び(3)の利 用 者 意 識 調 査 と実 践 事 例 の 結 果 か ら も示 唆 され,助 産 院 とい う 「お 産 」に 関 わ る現 場 や い わ ゆ る 医 療 僻 地 とい わ れ る離 島 な どで ホ メ オパ シー が 普 及 す る こ とで,自 己 や 家 族 の 健 康 管 理 に 関 す る 意 識 向 上 を 図 る こ とが 可 能 と な り,医 療 機 関へ の 過 度 の依 存 状 態 を解 消 して い く こ とが で きる も の と考 え る。 代 替 医 療 と して の ホ メ オパ シー の 有 効 性 を検 証 す る た め に は,専 門 の知 識 と経 験 を 有 す る ホ メ オ パ シ ー療 法 家 (ホ メ オパ ス)に よ る健 康 相 談 で の 実 態 調 査 の 結 果 が そ の 判 断材 料 と な る。(1)の利 用 者 意 識 調 査 の 結 果 で は,ホ メ オパ シー 利 用 者 の76%が ホ メ オ パ シ ー健 康 相 談 を経 験:し て お り,経 験:者の 中 で 「主 訴 」に つ い て は 「大 き く改 善」 「少 し改 善 」を合 わせ る と全 体 の84%が,「 主 訴 以 外 の 症 状 」も「大 き く改 善 」 「少 し改 善 」を合 わ せ 全 体 の87%が 改 善 傾 向 を示 して い る こ とか ら,日 本 に お い て もホ メ オパ シ ー が 補 完 ・代 替 医 療 と して 大 き な可 能 性 を有 す る と判 断 され る。 こ こ で 最 も重 要 な こ と は,医 療 現 場 や 地 域 の 人 々 と しっ か り と結 びつ い た 形 で,ホ メ オパ シ ー の 教 育 と実 践 を進 め て い くこ とで あ り,正 しい ホ メ オパ シー 療 法 の 普 及 活 動 と,現 代 医学 と どの よ うに 補 完 ・代 替 体 制 を 築 い て い くか を検 証 しな け れ ば な ら ない 。 今 後 の 課 題 と して は,ホ メ オ パ シ ー療 法 家 へ の相 談 窓 口 の整 備 や 医 療 機 関 と の提 携,代 替 医療 や 予 防 医 学 な ど各 関 連 分 野 と の 学 術 交 流 な ど,実 績 を積 み 重 ね て い くこ とが 大 切 で あ る と考 え る。 日本 で は 高齢 化 社 会 の急 速 な進 展 に よ り,社 会 保 障 国 民 会 議 の 試 算 で も,2025年 度 に は 医療 ・介 護 費 が90兆 円 を 超 え る と され て お り,「 自分 の 健 康 は 自分 で 守 る」と い うホ メ オパ シー ・セ ル フケ アが 根 づ くこ と に よ り,国 民 の 健 康 レベ ル の 意 識 向上 に つ なが り,結 果 と して 医 療 ・166 (312)
日 本 未 病 シ ス テ ム 学 会 雑 誌Vol.14 No.2
介 護 費 が 適 正 な水 準 に抑 制 され,活 力 あ る 国 民 生 活 の 維 持 につ な が る。 そ の た め に ホ メ オ パ シ ー療 法 が 担 う役 割 は極 め て 大 きい と考 え る。
文 献
1) Riley, D., Fischer, M., Singh, B. et al.: Homeopathy and conventional medicine: an outcomes study comparing effectiveness in a primary care setting. J. Altern. Com-plement. Med. 7(2): 149-159, 2001.
2) Skinner, S. E.: An Introduction to Homeopathic
Medi-cine in Primary Care, Jones & Bartlett, Sudbury, MA,
USA, 2001. 3) 鴫 原 操:ホ メ オ パ シ ー を 陣 痛 ・産 痛 緩 和 に 利 用 し て. ペ リ ネ イ タ ル ケ アNo .302: 31, 2005. 4) 由 井 寅 子:ホ メ オ パ シ ー 的 妊 娠 と 出 産,ホ メ オ パ シ ー 出 版,東 京, 2007. 5) ミ ヒ ャ エ ル ・ ト イ ト,ヨ ハ ネ ス ・ ヴ ィ ル ケ ン ス:脳 卒 中 の た め の ホ メ オ パ シ ー,p.16,ホ メ オ パ シ ー 出 版,東 京, 2008.
6) Witt, C. M., Ludtke, R., Mengler, N. et al.: How healthy are chronically ill patients after eight years of homeo-pathic treatment?•\Results from a long term observa-tional study. BMC Public Health 8(1): 413, 2008.
7) Gemmell, D. M.: Everyday Homoeopathy, Beaconsfield Publishers, Beaconsfield, UK, 1997.