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BRCA1 を介した DNA 修復機能は頭蓋顎顔面領域の骨の発生に重要である

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Academic year: 2021

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学 位 研 究 紹 介

学 位 研 究 紹 介

BRCA1を介した DNA 修復機能は頭蓋顎

顔面領域の骨の発生に重要である

DNA repair via BRC1 is essential for

craniofacial bone development

新潟大学 大学院医歯学総合研究科 歯科矯正学分野

北見 公平

Division of Orthodontics, Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences

Kohei Kitami

【目   的】

 出生児の約3%-5%で何らかの先天異常がみられ, その約3割の疾患において,頭蓋顎顔面領域に症状が発 現する。全身のほとんどの骨が中胚葉に由来するのに対 し,顎顔面領域の骨は多能性幹細胞の集団である頭部神 経堤に由来する。したがって顎顔面領域の骨形成異常は 頭部神経堤細胞の異常に大きく起因していると考えられ るが,その細胞動態が多様な遺伝子制御機構によってど のように調節されているかは依然として不明な点が多 い。近年の大規模なプロテオーム解析により,DNA 損 傷修復機構が胎児発生過程において重要な役割を演じて いることが報告されている。しかしながら,頭蓋顎顔面 の形成過程において,DNA 損傷修復機構がどのように 機能しているのかは未だ明らかではない。本研究では, DNA 損傷修復の際に中心的な働きをしていることが知 られている Breast Cancer 1 (BRCA1)の機能を,頭蓋

顎顔面領域の骨形成過程において明らかにすることを目 的とした。

【方   法】

 Cre-loxP マウスシステムを用い,BRCA1 をコードす る遺伝子 Brca1 を神経堤細胞特異的に欠損するマウス を作製した。

【結   果】

 神経堤細胞特異的 Brca1 欠損マウス(以下 Brca1 欠 損群)は,出生時において頭部のサイズが小さく,出生 後 24 時間以内に死亡した。出生時の骨格染色より,上 下顎骨を含む神経堤細胞由来の頭蓋顎顔面領域の骨低形 成を示し,左右前頭骨間の開大を認めた。そこで,骨形 態形成における BRCA1 の機能を検討するため,前頭骨 の発生過程を解析対象とした。胎生 12.5 日に左右の眼 球と脳の間の間葉中に骨芽細胞前駆細胞が凝集すること で前頭骨原基が形成され,発生の経過とともに頭頂部方 向へと伸長しながら骨化が進行する。胎生 12.5 日の前 頭骨原基を形成する Runx2 陽性細胞を解析したところ, Brca1 欠損群では増殖能の低下と細胞死の増加が認めら れた。また前頭骨原基における DNA 損傷マーカーの増 加とそれに伴うアポトーシス経路の活性化が認められ た。修復が困難な DNA 損傷は,癌抑制タンパク p53 を 介して細胞死が誘導されることが知られているが, Brca1 欠損群の胎生期顔面領域においても p53 の産生増 加が認められた。そこで我々は Brca1 欠損群において さらに p53 を神経堤細胞特異的に欠損するマウスを作 105 図.Brca1 欠損による骨の低形成と,p53 欠損による表現型の回復  出生時頭部骨格染色をトレースした模式図。網掛け部は左右前頭骨間の非石灰化領域。Brca1 欠損による神経堤細 胞由来骨の低形成および左右前頭骨間の開大は,p53 のさらなる欠損により大幅に回復した。

(2)

新潟歯学会誌 47(2):2017 - 46 - 106 製した(以下 Brca1/p53 欠損群)。その結果,Brca1 欠 損群に見られた骨の低形成は p53 欠損により大幅に回 復し,Brca1/p53 欠損群の頭部骨格の前後径は対照群 と差がなかった。左右前頭骨間の距離および,胎生期前 頭骨原基に見られた細胞死についても,Brca1 欠損群と 比較して Brca1/p53 欠損群では顕著に減少していた。

【考   察】

 BRCA1 は DNA 修復機構の一つである相同組換え修 復の誘導や,修復する時間を確保するための細胞周期停 止機能など,DNA 損傷修復応答において中心的な働き をしていることが知られている。神経堤細胞において, BRCA1 が頭蓋顎顔面領域の骨の形成に関与しているこ とが確認された。さらに,Brca1 欠損による頭蓋顎顔面 領域の骨の低形成は,p53 を介した前頭骨原基における 細胞死の増加が関与していることが示された。本研究結 果 か ら, 頭 蓋 顎 顔 面 領 域 の 正 常 な 形 態 形 成 に は, BRCA1 を介した DNA 修復機能が必要であることが示 唆された。

参照

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