人造湖に
1
お、ける重金属の分布と挙動
魚梁瀬ダム底泥中の重金属の分布
今 井 嘉 彦*・北 条 正 司*・大 橋 秀 昭** (*理学部環境化学研究室.**東洋電化工業株式会社)Distribution and Behavior of Heavy Metals in a Dam
1.Distribution of Heavy Metal in the Yanase Dam Sediments
Yoshihiko I MAI *
, Masashi HOJO* , and Hideaki OHAsHI**
(Laborator-y of E几uiroamental Chemistry, Faculty 0/ Science*. Toyo Denka Kogyo (::o. * *)
Abstract
Sediment samples were collected from 29locations of the Yanase Dam in Kochi prefec-ture of Japan. Fine particles under 76μm diameter were sieved. Then, the samples were treated by four different methods, (1) aqua regia, (2) 0.5 N-HCl, (3) 0.1 M− EDTA, and
(4) 2 M-CH COONH . The dissolved metal ions, Fe, Co, Ni, Zn, Cd, Cu, Cr, and Pb
as well as organic carbon and nitrogen were analyzed. The results are as f0110ws:
Every sample contained almost the same amount of organic carbon and nitrogen. The concentrations of heavy metals in the sediments tend to increase with beoming from the
upper stream down to the dam. The metals, Co, Ni, Cr, and Pb, did not dissolved into 2 M-CH COONH solution, however, other metals can dissolve with any treatment method.
1 は じ め に 人造湖は電力および都市用水の水源をはじめ多目的な利水をはかるなど多数存在するが,近年水 質汚濁や底泥堆積の増加がみられるなど,その保全に大きな関心がもたれている. ・. 高知県下でも大小19ケ所2)の人造湖があるが.魚梁瀬ダムなど7ケ所で赤潮が発生し,環境保全 或は利水上社会的な問題となっている.本研究では重金属をとりあげ,人造湖がその水系の化学的 環境に及ぼすインパクトの,質と量を評価することを目的とした.この報告では,高知県下で最初 に建設された魚梁瀬ダム湖において採取した29点の底泥試料について重金属を測定し,分布上の特 徴について考察を行った.また,重金属の存在状態に関し種々な溶液で溶出を行い,金属相互の関 係についても検討しか. 2.魚梁瀬ダムの概況 魚梁瀬ダムは高知県東部の奈半利川水系に属する人造湖で, 1962 (昭和37)年4月着工, 1965年 6月に完成した中央土質遮水壁型ロックヒルダムである.堤高115 m, 堤長202 m,有効貯水量 7,250万m3の諸元をもつ.下流には久木ダムおよび平鍋ダムを調整池として配備し利水をはかる と共に,最大出力36,000 KW 時の発電が行われているこダ’ム湖は,小石川谷,東川,中川.東 又谷および西又谷からの流入を貯水しており,堪水面積は約2.91 km^ , 総貯水量」0,462.5万m3 である.上流域には特定の汚染源はないが,崩壊などによる濁水の長期化や淡水赤潮の発生を見る
186 高知大学学術研究報告 第35巻( 1986)自然科学
(A) ・I ム ,
゛ (B) ’ Fig. 1. Sampling sitesin the Yanase dam
人造湖における重金属の分布と挙動・(今井・北条・・大橋) ようになり,そのため1980年に表面取水の設備が施工されている. 187 3.試料および分析操作 底泥試料の採取地点をFig. 1に示す.試料は, 1979年2月に, RGSグラビティ・コアサン プラー(採泥管内径36 mm, 長さ0.5m)を用いてボート上よ’り採取した.分析用試料は底泥を風乾 後,軽く粉砕しよく混合し200メッシュ(孔径76μm)のふるいにかけ,砂やゴミを除去して得た.ヽ 風乾した底泥試料5gを採取し,王水30 ml を加え,ホットプレート上で2・時間加熱環流し た.その後濃硝酸10 mlを加え,さらに1時間加熱分解を続けた.ほぼ乾固するのを待って放冷 したのち,脱イオン水で希釈し,ミリポアフィルター(0.45μm)でろ過した.ろ液は硝酸濃度を 2規定になるように調整して100 m1の定容となし,金属の濃度に応じて適宜希釈し,フレーム原 子吸光光度計(日立208型)で鉄,マンガン,コバルト,ニッケル,亜鉛,銅,クロムおよび鉛の 8種重金属を測定した.またカドミウムのみはゼ=マン原子吸光光度計(日立170−70型)で測定 した.この方法で得られた測定値を底泥中の重金属全量とした.一般に底泥中の重金属の全量を測 定するには,アルカリ溶融やフッ化水素酸分解によってケイ酸塩を分解する必要がある.したがっ て本法での重金属量はその総量を完全に抽出するものではない.しかし,人為的汚染に由来する重 金属が酸処理によって溶けやすいこと(イ尹藤, 1975):いや,都市汚濁河川の底泥に適用して良い 結果を得ている(福島ら, 1985) "'ことなどから本法でも汚染の評価には充分であると考えた. 一方人為的汚染に由来する重金属を検討するため・に,一定濃度の酸やEDTAなどの溶液で抽 出し,重金属の存在状態を推定するなどの試み(C.W.RANDALLら,1985)5)もある.し かし,人為的に汚染された重金属のみを評価する方法としてはなお検討の余地があるように思われ るが,底泥の重金属の存在を知る手がかりとしては,これらの方法は有用であり注目される. 本研究では, (1)0.5規定の塩酸, (2)0.1 M, EDTA (塩酸およびアンモニア水でpH=5 に 調節), (3)2規定酢酸アンモニウム(調整時のpH=7)の各溶液100 m1 にそれぞれ底泥試料の 5gを秤取して加え,定温で24時間振とうを続け,溶出した重金属量を前記と同様の装置と方法で 測定した.なお底泥の性状をみるため,コールタエカウンターによる粒度分布(中央値の粒径で示 す), COD,有機態炭素,有機態窒素および強熱減量を測定した.このうち有機態炭素と窒素は 1規定塩酸を加えて7夜放置し,遠心分離によって無機炭素を除いたのち柳本CHN分析器 (MT−2)で測定した.その他は底質調査方法(環境庁, 1973)'''によった. 4●結果と考察 魚梁瀬ダム底泥中のCOD,有機炭素と窒素強熱減量の分析結果および粒径の調査結果を Table l に示した.底泥の粒径は全体的に微細であり,ほとんどシノジト(63μm以下)以下の粒 径で占められているが,地点, 18, 25および26ではやや大きかった.これらの地点は支川からの流 入点に当る.重金属以外の性状について各地点間の類似性を検討するために,粒径, COD および強熱減量を三成分とする三角ダイアグラムをFig. 2に示した.図から明らかなように,一 部を除き,ほぼ同じ座標に集中しており,その性状は互に類似したものになっていることがわかる. 次に重金属の分析結果をとりまとめてTable 2 に示した.また,自然界のうち火成岩および 土壌の平均的な分析値と,岡山県6)および長野県7)の土壌の分析値をTable 3 に示し比較検討 した. 魚梁瀬ダム湖底泥中の重金属は,火成岩や土壊の分析値の平均値で比較すると,マンガン,コバ
188 高知大学学術研究報 ( 1986)自然科学
ルト,亜鉛,カドミウム,銅および鉛がやや高い値を示し,逆にこツケルおよびクロムが低い値を 示した.しかし全体的にはほぼBowen8)らが示した値の範囲内であった.
Table 1. Concentrations of COD, organic carbon, organic nitrogen ignition loss,
andparticle size in the Yanase dam
* 12345 678910 い11 12 13 14 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 Q り 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 り 乙 -X - * COD 12.6 16.9 14.0 15.9 14.8 13.2 9.0 13.1 15.4 17.8 20.6 14.7 27.6 25.6 9.7 28.0 40.2 9.1 12.3 14.6 21.1 15.8 20.6 25.3 12.2 16.1 17.0 25.0 1.8 17.2±7.4 C (mg/g dry base) ! 16.5 28.8 21.5 28.3 19.5 17,1 33.4 29.1 15.9 19.1 16.4 6.2 13.5 14.4 14.4 】6.8 19.7 18.4 20.3 16.4 14.6 20.9 14.0 17.8 16.2 14.9 16.8 19、5 5.1 18.1±6.0 N t o C N ) 1 り 乙 1.8 2.0 2.6 0.4 2.1 1.8 C O U O 1 1 1.4 0.9 1.5 1.7 1.7 2.0 2.3 2.8 2.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.8 2.5 1.7 1.9 1.1 1.6±0.5
For location number refer to Fig.l. * Value of ignition loss
I.L?* (%). - 9.2 9.3 8.4 8.4 9.6 8.8 7.9 6.8 '・8.6・ 7.9 9.3 7.8 8.5 8.7 6.9 8.6 14.4 6.2 9」 11.4 7.9 9.4 8.3 ,8.8 H.3 6.8 9.4 7.8 4.0 -8.6±1.8 Particle size (mm) 0.008 0.015 0.008 0.006 0.007 0.005 0.005 0.008 0.009 0.008 0.0H 0.016 0.023 0.021 0.008 0.014 0.040 0.072 0.006 0.006 0.016 0.012 0.015 0.009 0.035 0.035 0.011 0.011 0.019
人造湖における重金属の分布と挙動(今井・北条・大橋)
I.L(?刄)−
rti'cle Sice (妬1・
Fig. 2. Triangular diagram of COD, ignition loss and particle size of the Yanase dam sediments.
Table 2. Concentrations of heavy metals in the Yanase dam sediments.
(ppm/dry base) 189
こよ二
* Fe Mn Co Ni Zn Cd Cu Cr Pb HC1-HN03  ̄又 S Maχ. Min. 36000 1500 23 31 96 0.90 48 32 38 5700 1000 6 7 14 0.20 16 7 7 45000 4000 34 45 120 1.20 78 46 48 26000 300 12 18 70 0.60 22 17 21 0.5N-HC1 − χ S Maχ. Min. 6400 650 8 3.5 12 0.30 14 1.3 23 3100 440 3 1.7 4 0.12 6 0.5 7 13000 1800 14 6.0 18 0.56 25 2.0 32 900 80 2. 1.0 6 − 4 0.4 5 O.IM-EDTA (pH=5) − χ S Maχ. Min. 1600 880 7 2.5 5.6 0.18 10 0.3 16 660 730 3 1」 1.8 0.07 4・ 0.2 5 3200 2700 13 4.8 9.2 0.33 20 0.5 .23 540 80 2 1.1 3.1 0.07 4 − 6 2N-CHぶ00NH4 (pH=7) − χ s Maχ. Min. 1.9 210 − − 1.3 0.12 1.1 − − 1.8 140 − − 0.5 0.06 0.5 − − 7.9 580 − − 2.3 0.24 2.1 − 一 一 30 − − 0.4 0.01 0.3 − − * y:mean values N=29, values.190 高知大学学術研究報告 第35巻(1986)自然科学
Table 3゛ A゛erage concentr‘ation of heavy metals in igneous rock
‘a“dSoiIS’(ppm)
Element Igneous rock
(Green) * 1 *2 Soil (Bowen) *3 Soil (Kobayashi) *4
Soil (Maki.et al.)
*5 Yanase dam、 Mn Cr Sr v Cu Ni Co Zn Pb Mo As Cd Sb Hg Se Fe ・1.000 117 350 90 70 100 18 80 16 1.7 2 0. 13 0.3 0.06 40 46, 500 850(100∼4,000 ) 100(5∼3,000) 300(50∼1,000) 100(20∼500) 20(2∼100) 40(10∼1,000) 8(1∼40) 50(10∼300) 10(2,200) 2(0.2∼5) 6(O』∼40) 0.06(0.0]∼0.7) −(2∼10) 0.03(0.01∼0.3) 0.2 (0.1∼2) 438 44.4 46.5 27.2 135.0 33.4 6.6 0.55 511 34.9 46. 1 19.5 103 21.9 8.91 0.49・ 0.267 3.41 % 1500 32 − − 48 31 23 96 38 − − 0.90 − − − 36, 000 Zn Cd *1 *2 *3 *4 申5
J. Green. Geol. Soc. America Bull., 70, 1127.
H.J.M. Bowen(1966);″Trace elements in biocねemistry≒
Acdemic Press, London, Now York
T.Kobayashi, et al., n973), J. Envi. Poll. Cont.9 , 10, 1013∼1017. S. Maki et al.,(1973), J. Envi. Poll. Cont. 9 , 5, 473-478.
This work. ,
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・寸ヘーご`じ
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Si l a 7-14 St』5∼18 Si IS ?了St27∼29 lower← ― upper Fig. 3. Distribution of heavy metals degradatedwith nitricacid and hydrogen chloride of sediments.Fe Hn (0 1S
へ・づ,卜入
①<、ぐ`≒゜`
S17-H Si 15∼18 a 19-26 St2ト29 tower一 一・ upperFig. 4.・Distribution of heavy metals deぼradated with nitrir acid and hydrりgen chloride of sediments.
人造湖における重金属の分布と挙動(今井・北条・大橋)
Table 4. Correlation coefficients between elements in the Yanase dam sodiments. 〔A〕:HC1-HN03,〔B〕:0.5N-HC1,〔C〕:0.1M-EDTA(pH=5),〔D〕:2N-CH3 COONH4(pH=7) 〔A〕 191 Fe Mn nm002; M O O O Oh 0。90 * Co -0.89 0.88 * Ni -0.88 0.78 0.82 * Zn -0.93 0.86 0.89 0.92 * Cd -0.83 0n 0.85 0.75 0.77 * Cu -0.85 0.76 0.79 0.99 0.89 0.73 * Cr -0.81 0.63 0.79 0.82 0.81 0.76 0.81 * Pb -0.83 0.80 0.95 0.69 0.82 0.83 0.66 0ン78 * Fe らこ一 0 02: ts) o o o cu Mn 0。89 * Co -0.92 0.93 * Ni -0.76 0.74 0.77 * 〔B〕 一 一 Zn 0。88 0.81 0.84 0.74 * Cd -0.78 0.77 0.91 0.65 0.72 * Cu -0.78 0.84 0.86 0.80 0.88 0.81 * Cr -0.89 0.80 0.80 0.62 0.85 0.72 0.74 * Pb -0.90 0.83 0.92 0.68 0.88 0.86 0.86 0.87 * Fe hm002; N O O O Dm Mn -0.80 * Co -0.76 0.93 * Ni -0.48 0.73 0.85 * 〔C〕 一 一 Zn -0.69 0.76 0.76 0.83 * 〔D〕 Cd -0.51 0.65 0.71 0.73 0.54 * Cu -0.54 0.73 0.83 0.91 0.86 0.65 * Cr -0.57 0.31 0.35 0.20 0.22 0.40 0.28 * Pb -0.89 0.85 0.90 0.70 0.72 0.・63 0.82 0.44 *
192 高知大学学術研究報告 第35巻(1986) 然科学 ダム湖における重金属の分布を明らかにするため,流入水系ごとの消長をFig. 3に示した. 図において, St. No. 1∼14は西川水系から湖心までで, St. 15∼18は山谷川水系, St. 19 ∼26は東川水系およびSt. 27∼29は亀谷川水系を示す.図から明らかなように,いずれも,下 流(湖心)になるほど濃度が高くなる傾向がみられた.このことは,堆積物が定着する際に,底泥 粒子に吸着されるなど相対的にその濃度が高くなったものと見られるが,この堆積過程の挙動につ いてはさらに検討する必要がある. `次に王水で処理して溶けた量を全量とすると, 0.5 N塩酸の処理では重金属の種類によって溶 出するmが異る.たとえば平均値についてみると,鉛では全量の60%が溶出し,マンガンでは43%, ニッケル,カドミウムおよび銅ではそれぞれ30%,クロムは4%溶出した. 0.5 N塩酸の処理で 溶出する状熊は,人為的因子による挙動と関係が深いと考えられてその評価5)に用いられている が.地球化学的な要因としてもその挙動が注目される. 次に0.1 M EDTA (pH=5)の溶液で抽出した場合は全体的に溶出率が減少した.全量 に対する溶出率は,鉄が4.4%,マンガン59%,コバルト30%,・ニッケル8%‥亜鉛6%,カドミ ウム20%,銅20.8%,クロム0.9%および鉛42%であった.この処理方法で溶出する重金属は, 金属のEDTA錯体の安定度定数(pK)に支配される.主なpKの大きい順位はFe> Cu>Ni>Pb>Zn>Cd>Co>Fe>Mn.である.本研究の試料における溶出量の大きい順位 はMn>Pb>CO>Cu>Cd>Ni>Zn>Fe>Crであった.特徴的に pKと実際の溶出 率との順位に大きな差異のみられるのは鉄およびマンガンであって,これらは底泥中では弱い結合 の状態で存在することが推定された. さらに弱いキレート剤として2規定酢酸アンモニウム( 2 N - CH COONH)による溶出 率を調べた.その結果,鉄が1%,マンガン10∼20%,亜鉛1∼.2%であった.この結果からもマ ンガンおよびカドミウムが水中で比較的溶け易い状態で存在することがわかった. 試料から溶出する重金属の相互に溶出状態を検討するためにTable 4 にその相関係数を示した. [A]は王水処理による全量,[B]は0.5規定塩酸処理,[C]は0.1 M EDTA 処理,[D] は2N一酢酸アンモニウム処理による溶出量のケースであ芯. 相関係数0.7以上の高い相関を示しだのは,鉄−コバルト,鉄一・鉛,マンガンーコバルト,コバ ルトーカドミウムおよびコバルトー鉛であった.このように,鉄,マンガン,コバルト,亜鉛,銅, 鉛が他の重金属と相関が強く類似の挙動を示すものと思われる. また[B]の場合については,マンガンーコバルトが相関係数0.93を示し,ニッケルークロムで .(iO.62で低い相関係数を示したほかはいずれも相関係数0.7以上で高い相関が認められた. さらに[C]の処理では,マンガンーコバルトの相関係数0.93が最も高く,最低はニッケルー クロムの0.20であった. [D]の処理では,鉄,マンガン,亜鉛,カドミウムおよTび銅のみ定量され,その他はいずれも 検出できるほどの溶出をみなかった.マンガンー−カドミウムで0.76,マンガンー銅で0.72の相 関係数であった. 東京都多摩川の底泥について福島9)らはクロム,飼,亜鉛,カドミウムの間の相関が,相関係 数0.8以上であり,特に銅と亜鉛,亜鉛とカドミウムの=間は0.9以上の高い値となることを明らか にしているが,魚梁瀬ダム湖の底泥でもほぼ同様であるといえる.河川水から重金属が底泥に捕促 されるメカニズムについては,多くの議論10) ,田があるが,溶存状態の重金属が底泥に移行する 際に,粘土粒子や有機物,水酸化物などが吸着媒床として作用するcとが知られている. ダム湖の底泥は河川の底泥よりも一層長時間にわたる水相一固相聞の相互移行反応が積算され た結果であると見られるので,汚泥源からの流入というような短期的な現象を示すメカニズムとし
人造湖における重金属の分布と挙動(今井・北条・大橋) 193
て直ちに人為的要因を結びつけることは適当でない.しかし,底泥の存在状態を示すバックグラウ ンドとしての意義をもつものと考えている.
4.ま と め
高知県魚梁瀬ダム湖の底泥中の重金属9種(Fe, Mn, Co, Ni, Zn, Cd, Cu, Crおよ
びPb)を測定し,分布を明らかにすると共に, (1)酸可溶性の状態. (2)強い牛レート化剤に溶け る状態(3)弱いキレート化剤に溶ける状態のそれぞれについて検討を行った. その結果,どの重金属とも,その濃度は水系の上流から湖心になるほど増加する傾向がみられた. また各種の処理による溶出では鉄,マンガン,亜鉛,カドミウムおよび銅がいずれも溶出したが, コルト,ニッケル,クロムおよび鉛はpH=7の酢酸アンモニウム溶液の処理において溶出しな かった.また溶出した各重金属の相関についても検討を行い,鉄,鉛,コバルト,マンガンが相互 に高い相関係数を示す結果が得られた. おわりに試料採取に協力いただいた西日本科学研究所㈱の方々に謝意を表する次第である. 文 献 1) 環境庁(1984), *58年度全国公共用水域水質測定結果″ 2) 高知県(1986),高知県事業概要図 3) 伊藤和男,名古屋港水域の底質の重金属,公害と対策, 11, 650∼659. (1975) 4) 福島和夫・金武 隆・鈴木幼一・向井健一郎,都市汚濁河川における重金属の存在と挙動,地球化学, 19, 21-30 (1985)
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