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〈論文〉大学生の疲労に及ぼす要因の検討―ストレスコーピングとレジリエンスの観点から―

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〈論  文〉

大学生の疲労に及ぼす要因の検討

ストレスコーピングとレジリエンスの観点から

― A Study of Factors Affecting Fatigue in the University Student ― Stress Coping and Resilience ―

山 本 春 香

1) YAMAMOTO Haruka 要旨  疲れは日常的に誰もが感じる身近な感覚であり,38.7%の人が半年以上続く慢性的な疲労を感じてい ることが報告されている(谷畑・倉恒,2014)。大学生においては,59.2%が慢性的に疲労を感じてい ることが明らかとなっている(赤澤ら,2001)。このように多くの人が疲れを訴えていることから,疲 れは日常生活を心身共に健康に送る上で重要なテーマといえるだろう。疲れへの自覚と適切な対処法 を社会人になる前に身につけておくことは,労働者が就労を継続すると共に,心身の健康を維持する 上で非常に意義があると考える。そこで本研究では疲労の緩和法を探るため,大学生を対象にストレ ス・コーピングとレジリエンスに焦点を当て,疲労への影響を検討した。その結果,疲労の促進要因 としてストレス・コーピングの「自責」とレジリエンスの「他者心理の理解」が抽出された。一方, 疲労の抑制要因にはストレス・コーピングの「積極的認知対処」とレジリエンスの「統御力」「自己理 解」が抽出された。これらの結果から,物事の原因を複数の視点で考える方法を取り入れたり,他者 と同様に自分を尊重する人間関係を築くことが疲労を緩和する効果的な方法として示唆された。 キーワード:大学生,疲労,ストレス・コーピング,レジリエンス Ⅰ.問題と目的  「ストレス社会」と称される現代では,子ど もから高齢者まで幅広い年代で日常的に疲れ を感じている。2004年に実施された疫学調査 では55.9%の人が疲労を自覚していており,そ のうち39.3%の人が半年以上続く慢性的な疲労 を体験していると報告している(箕輪・谷畑, 2005)。その後,2012年に実施された疫学調査 では,38.7%の人が半年以上続く慢性的な疲労 を感じており,そのうち2.1%の人には日常生 活に支障をきたすような慢性的な疲労が見られ たと報告している(谷畑・倉恒,2014)。この ように半数以上の人が疲労を感じていることか ら,疲れは誰もが感じる身近な感覚であると同 時に,慢性化することで日常生活に影響を与え ることもあるため,非常に重要なテーマともい えるだろう。  疲労の原因には,ストレス,遺伝的背景,感 染症,免疫異常,内分泌系異常,脳・神経機能 異常など複数の要因が関与しているとされる。 1) 近畿大学心理臨床・教育相談センター 相談員 Kindai University, Center for Clinical Psychology

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このうちストレスに関しては,ストレスの原因 であり,ストレスを引き起こす外部環境からの 刺激のことをストレッサーと呼ぶ。ストレッ サーには人間関係に起因する心理的ストレッ サーのみならず,猛暑や騒音などの物理的ス トレッサー,ウィルス感染や炎症などの生物的 ストレッサー,そして公害物質や薬物などの化 学的ストレッサーが存在する。疲れを感じてい るときは,これらのストレッサーが複合的に影 響していることが多いと考えられる。ストレッ サーが短期的であれば,休息や気分転換による 疲労回復がのぞめるが,長期間持続することで 疲労が蓄積し,慢性化に至る。また疲労は,発 熱,痛みとともに,身体のホメオスタシスの乱 れを知らせる3大アラームの一つであるが,発 熱や痛みと比べて症状が漠然としていることか ら,「病気ではない」と軽視されることも少な くない。そのため疲れを感じながらも適切なケ アや治療を行わず,知らず知らずのうちに慢性 化しやすいという特徴も持ちあわせている。  近年では,労働者の過労死や過労自殺も深刻 な社会問題となっていることから,疲れを自覚 し,自ら適切な対処を行うことへの重要性も 高まっている。平成29年版過労死等防止対策 白書(厚生労働省,2017)では,2010年1月~ 2015年3月に精神疾患で労災認定された人のう ち,368人が過労自殺していると報告している。 年代別に見ると,女性に関しては29歳以下が 最多であり,若い世代についても過労自殺が大 きな問題となっている。このような現状から, 疲れへの自覚と適切な対処法を社会人になる前 に身につけておくことは,労働者が就労を継続 するとともに,心身の健康を維持する上で非常 に意義があると考える。そのためには,学生時 代に心身の健康管理の術を学習し,実践するこ とが求められるだろう。  実際,大学生においても59.2%が慢性的に疲 労を感じていることが報告されている(赤澤 ら,2001)。実に半数以上の学生が慢性的な疲 労を訴えていることから,すでに学生時代から 疲れが課題となっている状況がうかがえる。女 子学生を対象とした調査では,「このところ毎 日眠くてしょうがない」「朝起きたときでも疲 れを感じることが多い」「一日の疲れがとれな い」などの自覚的疲労症状の訴えが4割以上の 学生で見られた(光岡ら,1998)。大学生は進 学に伴う生活スタイルの変化が大きく,学業に 限らず,アルバイト,サークル活動,就職活動 など活動の幅が広がることで,ストレッサーが 新たに増加したり,質的に変化すると考えられ る。特に,アルバイトを実施している大学生は 63.7%にも上り,1週間あたりの実施日数の平 均は2.9日,実施時間は14.3時間と報告されて いる(Benesse教育研究開発センター,2008)。 大学学部生における奨学金の受給率が48.9% (日本学生支援機構,2018)と約半数を占めて いることからも,アルバイトの背景には学費や 生活費などの工面のためもあるだろう。そのた め,時間的に余裕の少ない生活を送っている大 学生が半数程度存在すると考えられる。中には 学業やアルバイトを無理して頑張り,十分な休 息をとることができず,慢性的に疲れを感じて いたり,強い疲労感のために日常生活や学業に 支障をきたすこともありえる。  疲れの対処法を検討する上で,疲れそのもの にアプローチする方法と,疲れの原因となるス トレッサーにアプローチする方法の2つが考え られる。疲れそのものにアプローチする方法に は,疲労の回復と効果に関するアンケート調査 において,入浴,コーヒー,マッサージ,笑 いなどが挙げられている(倉恒ら,2004)。ま た,科学的に疲労回復効果が明らかとなって いるものには,軽い運動,栄養補給,脳に働 きかける緑の香りや音楽などがある(倉恒ら, 2004)。一方,疲れの原因となるストレッサー にアプローチする方法については,ストレス・ コーピングの観点から研究されている。赤澤ら (2001)は,大学生の慢性疲労の自覚とコーピ

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ング方略の関連を検討し,情動焦点型のコーピ ングを用いる大学生ほど慢性疲労が自覚されに くい傾向にあった。この研究結果から,疲労の 自覚が出来事そのものよりも,その出来事に対 する捉え方によって左右されることが示唆され た。また,ストレス・コーピングを内容によっ て「Positive(望ましい)」「Negative(望まし くない)」に分類した研究では,Negative対処 優位な大学生はPositive 対処優位な大学生より も疲労度が高い水準にあった(鈴木ら,2014)。 疲れの疾患である慢性疲労症候群を対象とした 調査では,健康な人と比べて慢性疲労症候群の 患者では回避の対処法を多く用いることが明ら かとなっている(Blakely et al., 1991)。双生児 研究においても,慢性疲労症候群の双生児はそ うではない双生児よりも回避の対処法を用いて いると報告されている(Afari et al., 2000)。さ らに慢性疲労症候群の患者における回避の対処 法は,疲労感,社会生活上の障害,そして心理 社会的な混乱と強く関連していることが見出さ れている(Ray et al., 1997)。このように,疲 労とストレス・コーピングの関係が指摘されて いることから,適切なストレス・コーピングを 用いることで疲労感の緩和につながると考えら れる。  ストレス・コーピング以外に,ストレッサー に対処できる能力としてレジリエンスが挙げら れる。レジリエンスは,困難な状況にさらさ れ,ネガティブな心理状態に陥っても重篤な精 神病理的な状態にはならない,あるいは回復で きるという個人の心理面の弾力性のことを指す (無藤ら,2004)。ストレス・コーピングがスト レッサーに対処するために学習して身につけた ものである一方,レジリエンスには楽観性や社 交性など本人が有する資質が含まれている点で 異なる。また,レジリエンスは広義のコーピン グの一部であるが,回復に関する心理特性であ り回復に導く行動として現れることから,回復 に着目しているという点でストレス・コーピン グとは異なるとされている(石毛ら,2006)。 ストレッサーへの対処という点で,ストレス・ コーピングとレジリエンスは非常に近しい概念 であるが,疲労とレジリエンスの関連について は詳しく研究されていない。  そこで,本研究では大学生の疲労の緩和法を 探るため,ストレス・コーピングとレジリエン スに焦点を当て,疲労への影響を検討した。ス トレス・コーピングやレジリエンスが疲労を促 進,あるいは抑制することを見出すことができ れば,疲労のコントロールに役立てることがで きると考える。 Ⅱ.方  法 1. 調査対象  大学生205名。全回答を得られたのは178名 で,回答率は86.8%であった(心理学専攻30 名,教育学専攻31名,社会学専攻117名,2年 生82名,3年生94名,4年生2名,男性112人, 女性66人,平均年齢20.8歳(SD=2.3))。 2. 調査手続き  調査は,2017年7月と2018年1月に実施した。 大学の講義終了後,学生に研究内容を説明し, 同意が得られた者に質問紙を配布し,記入後に 回収を行った。 3. 調査票の構成 (1)フェイスシート(調査対象者の学年,性別,   年齢) (2)質問紙尺度 ・ Checklist Individual Strength(CIS) 日 本 語版(Aratake et al., 2007)  「主観的疲労」「集中力低下」「意欲低下」「活 動量低下」の4つの下位尺度から構成され,合 計得点が疲労の程度を示す。慢性疲労は,CIS の合計得点≧79とされている。 ・ Ways of Coping Checklist(WCCL)日本語 版(Nakano, 1991)  ストレス・コーピングを「問題解決」「積極

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的認知対処」「ソーシャルサポート」「自責」「希 望的観測」「回避」の6つの下位尺度によって 測定する。 ・ 二次元レジリエンス要因尺度(Bidimension-al Resilience Scale: BRS)(平野, 2010)  レジリエンスを資質的レジリエンス要因 (「楽観性」「統御力」「社交性」「行動力」)と獲 得的レジリエンス要因(「問題解決志向」「自己 理解」「他者心理の理解」)の2つに分類し,合 計7つの下位尺度によって測定する。 Ⅲ.結  果 1. 大学生の疲労状態  CISの 合 計 得 点 の 平 均 値 は,78.2点(SD= 21.27)であった。CISの下位尺度ごとの平均値 は,「主観的疲労」が30.83点(SD=9.90),「集 中力低下」が20.91点(SD=7.04),「意欲低下」 が13.31点(SD=4.68),「活動量低下」が13.15 点(SD=4.37)であった。 2. ストレス・コーピングとレジリエンスの関連  ストレス・コーピングとレジリエンスの概 念に類似と相違の双方が指摘されていること から,両者の関連を検討するため,WCCLと BRSの各下位尺度間で相関係数を算出した。 その結果,複数の下位尺度間で相関関係が見ら れた(Table 1)。 3. 大学生の疲労に影響を及ぼす要因  ストレス・コーピングとレジリエンスが疲労 に与える影響を検討するため,強制投入法によ る重回帰分析を行った。従属変数にCISの合計 得点を,独立変数にWCCLとBRSの各下位尺 度を投入した。その際,VIFが2.0以上の値を 示したWCCLの「問題解決」「希望的観測」と BRSの「行動力」「問題解決志向」は多重共線 性の可能性が疑われたため,独立変数から除外 した。その結果,R2=0.40であり,1%水準で 有意な値であった。独立変数を見ると,WCCL の「自責」(β=0.25)とBRSの「統御力」(β =-0.27)「自己理解」(β=-0.21)「他者心理 の理解」(β=0.21)が1%水準で有意であっ た。また,WCCLの「積極的認知対処」(β= -0.15)が5%水準で有意であった。 Ⅳ.考  察  以上の結果から,大学生の疲労の特徴につい てまとめた後,疲労の促進および抑制要因につ いて検討することで,疲労の緩和法の提案を行 う。 1. 大学生の疲労の特徴  本研究におけるCISの合計得点の平均値が 78.2点であったことから,大学生に慢性的な疲 労傾向が見られることが明らかとなった。赤澤 Table 1 WCCL と BRS の相関係数 BRS 楽観性 統御力 社交性 行動力 問題解決志向 自己理解 他者心理の理解 WCCL 問題解決 .35** .36** .38** .59** .59** .20** .38** 積極的認知対処 .08 .25** .19* .25** .09 -.12 .11 ソーシャルサポート .15* .11 .39** .18* .32** .05 .33** 自責 -.24** -.05 -.22** -.17* -.09 -.32** -.18* 希望的観測 -.19* -.33** -.28** -.31** -.06 -.22** -.33** 回避 .00 -.20** -.18* -.22** -.11 -.18* -.26** *p <.05, **p <.01

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ら(2001)の調査では大学生の約6割に慢性疲 労が生じていたが,時代にかかわらず大学生が 慢性的な疲労の問題を抱えていることが示され た。本研究では疲労をさらに詳しく検討してお り,疲労の自覚である「主観的疲労」がもっと も高く,次に「注意力低下」が続き,「意欲低 下」「活動量低下」は同程度であった。これら の結果から,大学生は具体的な症状よりも,漠 然とした疲れを感じやすいと考えられる。ま た,疲労の症状である「意欲低下」「活動量低 下」が比較的低い値であったことから,疲れを 感じながらも日常生活に大きな支障をきたして いないことが推測される。このように疲労の症 状が漠然としていることや,日常生活に大きな 影響が出ていないことによって疲労が軽視さ れ,適切なケアや治療につながることが少ない のではないかと考える。 2. 疲労の促進要因  重回帰分析の結果,ストレス・コーピングと レジリエンスの双方が大学生の疲労に影響を与 えていた。疲労を促進する要因としては,スト レス・コーピングの「自責」とレジリエンスの 「他者心理の理解」が抽出された。「自責」は, ストレスが生じるとその原因を自分自身に帰属 したり,上手く対処できなかった自分を責める などの対処法である。また,ストレッサーに対 して行動的あるいは精神的な努力は行わないた め,受動的な態度ともいえる。ストレッサーを 一人で抱え込み,自責や後悔の念にさいなまれ ることでマイナス思考に陥り,心身ともに疲弊 していくと考えられる。Nakano(1991)は,「自 責」を用いることで不安感や抑うつ感を増強さ せると指摘している。つまり,「自責」はスト レス反応を強める非建設的な対処法であり,不 安や抑うつなどの精神症状のみならず,疲労 を引き起こす要因であることが明らかとなっ た。もう一つの疲労の促進要因として抽出され た「他者心理の理解」は,他者の気持ちや考え を読み取り,思いやりをもって接する態度であ る。レジリエンスの中では,経験や学習などに よって身についたものであり,獲得的レジリエ ンスに該当する。「他者心理の理解」は対人関 係に肯定的に作用しそうだが,他者の気持ちを 敏感に察知することで気疲れも生じやすいと推 測される。また,相手の気持ちに配慮するあま り自分の考えや感情を抑えることで,ストレス が疲労となって蓄積していくとも考えられる。 3. 疲労の抑制要因  重回帰分析の結果,ストレス・コーピングの 「積極的認知対処」とレジリエンスの「統御力」 「自己理解」が疲労を抑制する要因として抽出 された。「積極的認知対処」は,自分自身の感 情をコントロールしたり,ストレス状況を肯定 的に考えたり,他の側面を見ようとする精神的 努力である。ストレッサーへの直接的な介入で はないため問題解決には至らないが,ストレス 状況を複数の観点から捉えることでマイナス思 考に陥ることを防ぐ役割があると考えられる。 「積極的認知対処」を用いることで疲労が低く なるという結果は,赤澤ら(2001)の結果と類 似している。つまり,「積極的認知対処」は情 緒中心対処ではあるものの,疲労を軽減する建 設的な対処法であり,「自責」の対処法とは逆 に疲労を抑制する働きがあることが明らかと なった。また中野(2005)は,「積極的認知対 処」を用いることで抑うつや不安感の軽減に効 果があると指摘しており,疲労だけでなく精神 症状にも肯定的に作用することが見出されてい る。次に「統御力」は,自分の体調や体力,お よび感情など心身をコントロールする能力であ り,心理的・身体的なストレッサーへの耐性と も言える。レジリエンスの中では,持って生ま れた気質と関連が強く,資質的レジリエンスに 該当する。つまり,生まれながらの「統御力」 が高いことによってストレスへの耐性が強くな り,結果として疲れが生じにくいと考えられ る。一方,「自己理解」は獲得的レジリエンス であり,自分自身の性格や自分の考えについて

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理解し,それを他者に伝えることができる能力 である。また,ストレッサーが自己に及ぼす影 響を理解していることも含まれる。このように 「自己理解」を十分に得ていることで,自分が 感じやすいストレッサーを適切に把握すること ができ,その効果的な対処法を考えることが可 能となる。逆に「自己理解」が低い状態にある 場合,本人にとって何がストレッサーとなって いるかわからないままに疲労が蓄積していると いうことが考えられる。 4. 疲労の緩和法の提案  疲労の促進および抑制要因を検討してきた が,まず促進要因である「自責」の緩和法を提 案したい。「自責」は,物事の原因を自分自身 に帰属させる対処法である。そのため適度に用 いることができれば,自分自身の言動を顧みる 良い機会となり,心身の健康に肯定的に作用 する可能性があると思われる。しかし,過度 に「自責」を行う場合には,自分に非があると いう考えに縛られてしまい,自分を責め続ける ことになる。このような特徴はうつ病にも見ら れ,多くはマイナス思考から抜け出せず,他の 可能性や考えを見出すことが困難となる。その ため,物事の原因を自分だけに帰属させるので はなく,さまざまな要因を考えることが非常に 重要になってくるだろう。このことは,疲労の 抑制要因に「積極的認知対処」が抽出されたこ とからもうかがえる。つまり,物事を長所・短 所の両面から捉えたり,複数の可能性を考える ことで相対的に「自責」の割合を少なくし,結 果として疲労を緩和することにつながるだろ う。このようなストレス・コーピングの「自 責」の減少や「積極的認知対処」の増加には, うつ病の治療に効果的であるとされる認知療法 を活用することが有効であると考える。  疲労の促進要因には,「他者心理の理解」も 抽出されている。相手の立場に立って考えや気 持ちを推測することは,円滑な対人交流を行う 上で必要とされる社会的スキルである。日本社 会は協調性が重視される文化であることから, 「他者心理の理解」が高い水準で求められてい るとも言え,このことが対人関係における不安 や緊張を引き起こし,疲れにつながっているの ではないだろうか。一方,「自己理解」は疲労 の抑制要因であった。「他者心理の理解」を低 くすることは難しいかもしれないが,「自己理 解」を高めることによって,自他共に尊重する バランスのとれた対人交流を築くことができる ようになり,疲れが生じにくくなると考えられ る。また,「自己理解」を深めることによって, 対人関係におけるストレッサーに気づき,自分 にとっての他者との最適な距離感についても模 索することにつながるだろう。この最適な距離 感の実現には,自分の考えや気持ちを相手に適 切に伝えることが必要であり,アサーションや 断り方などの社会的スキルを学ぶことが役立つ と考えられる。  以上のことから,自分を責める態度や他者へ の配慮は古き良き日本文化の特徴とされてきた が,疲労を緩和するためには物事の原因を複数 の視点で考える方法を取り入れたり,他者と同 様に自分を尊重する人間関係を築くことが効果 的ではないかと考える。 5. 本研究の課題  本研究では大学生の疲労の緩和法を探るた め,ストレス・コーピングとレジリエンスが疲 労にどのような影響を与えるかを検討したが, いくつかの課題が見られた。まず,疲労の促進 および抑制要因が複数見出されたが,重回帰分 析の結果がR2=0.40であったことから,半分 以下しか説明することができないという限界が ある。つまり,疲労の促進あるいは抑制要因は まだ他に多く存在していることになり,今後の 研究ではストレス・コーピングやレジリエンス 以外の要因にも目を向ける必要があるだろう。 次に,今回見出された疲労の促進要因であるス トレス・コーピングの「自責」とレジリエンス の「他者心理の理解」,および抑制要因である

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ストレス・コーピングの「積極的認知対処」か らは,うつ病の特徴が示唆された。このことか ら,これらの要因に抑うつが介在している可 能性が考えられる。この点を明確にするため には,抑うつの影響を統制した上でストレス・ コーピングおよびレジリエンスが疲労に与える 影響を検討することが求められる。また,スト レス・コーピングについては柔軟性が精神的健 康を維持する上で重要であるとの指摘もある (加藤,2001)。つまり,複数のストレス・コー ピングを状況に応じて使い分けたり,ある対処 法が上手くいかない場合には他の対処法を用い ることができるかどうかも疲労に影響を与えて いるかもしれない。以上のように課題が存在す るものの,本研究で提案した疲労の緩和法を大 学生に実践することで,その効果を測定するこ とが何よりも望まれる。 引用文献 Afari, N., Schmaling, K.B., Herrell, R., Hartman, S., Goldberg, J., Buchwald, D.S.(2000). Coping strategies in twins with chronic fatigue and chronic fatigue syndrome.

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参照

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