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職業選択の自由をめぐる司法消極主義と積極主義 (5)

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職業選択の自由をめぐる司法消極主義と積極主義(5)

中 谷   実

目次 Ⅰ はじめに  ―以上,南山法学 42 卷 3・4 号(2019)― Ⅱ 消極主義のアプローチ 《消極主義Ⅰ》 (1)「法律上の争訟に当たらず不適法」アプローチ (2)「訴えの利益の事後喪失」アプローチ 《消極主義Ⅱ》 αタイプ (1)「申請時の法令の定める許可基準/処分は違法」アプローチ (2)「裁量権の範囲を逸脱/処分は違法,無罪」アプローチ βタイプ (1)「罰条の違憲性を上告趣意で初めて主張するのは不適法/有罪」アプローチ (2)「抽象的に違憲違法を主張するのは不適法/処分は適法」アプローチ (3)「処分は適法,有罪」アプローチ  ―以上,南山大学アカデミア社会科学編 17 号(2019)― 《消極主義Ⅲ》 (1)「公共の福祉に基づく制限/処分は適法,有罪」アプローチ (A)概要 (B)裁判例  ―以上(3),南山大学アカデミア社会科学編 19 号(2020)― (C)このアプローチを支える思想  ―以上,南山法学 43 巻 3・4 号(2020)―  以下,本号 (D)このアプローチをめぐって  以下,上記判決のうち,主要な判決について,学説の対応を見ておく。 【い医業関係】 ◎医業類似行為  S―35.1.27〔い医業関係/禁止(類似行為)/刑〕最大判は,医業類似行為の中にも人の健康に

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有害なものと無害なものがあり,あん摩師,はり師,きゆう師及び柔道整復師法によって「禁止さ れているのは,人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為に限定される」としたが,反対意見は,有 害の虞の有無をとわず医業類似行為を画一的に禁止した趣旨と解した。石坂反対意見の「正当な医 療を受ける機会を失わせるおそれテーゼ」(前出(C)(2)【い医業関係】◎医業類似行為イ)参照) について,「原審判決と同様,立法時の公の資料にあらわれた積極・消極の弊害につき,十分の考 慮を払った意見であり,多数意見に比すると,憲法判断に関連性のあるあらゆる立法事実をふまえ た判断といういみで,説得力」がある104)という好意的コメントの他,「医業類似行為を画一的に禁 圧することにより,将来,単に有害の虞がないばかりでなく,明らかに有効であり,かつそれを裏 づける学理上の根拠のあるような医業類似行為が事実上成立しても,法上許されないことになる が,それもいたしかたないかどうかについては,議論の分れるところ」105)というコメントもある。 ◎保険医療機関  H―17.9.8〔い医業/指定拒否(保険医療機関)/取消〕最 1 判は,「医療法における知事の勧告 の趣旨は良質かつ適切な医療を法効率的に提供するためテーゼ」(前述(C)(2)【い医業関係】◎ 保険医療機関ア)参照)でもって,保険医療機関指定拒否処分を適法とした。本判決の規制目的の 捉え方について,「医療保険財政の適正化・効率化はわが国の医療政策において重要な課題という ことができ,少なくとも以上の目的について,不当なものとはいいがたいように思われる」としつ つ,「規制の性質・程度」については,「そもそも指定は,申請者の職業活動の基礎となる法律関係 を構築するものということができ」,「指定拒否は,職業活動そのものへの重大な制約をも含意する 点には留意する必要があろう」とし,指定の必要性・合理性については,「本判決は,立法事実と して,医療において供給が需要を生むという相関関係を前提に,指定拒否の必要性・合理性を説 く」,「医療費抑制等は高度な専門技術的考察と政策的判断を要し,裁判所による立法事実の把握に は限界もある点で,立法裁量の余地が大きいと判断されたもののようである」,「これまでこの種の 問題に適切な手段を欠いてきた点で,本件のような規制もやむをえない面もあり」,「規制の『必要 性』は首肯しうるようにも思われる。が,この医師誘発需要仮説には問題も指摘され」,「規制の論 拠として充分であったのか,疑問もないではない。また,どの医療機関の病床が過剰な需要を惹起 するかの判断は一般に困難であるところ,その責めを常に新規参入者に負わせることが合理的とは いいがたく,需要誘発の具体性・程度については慎重な検討を要しよう」,「さらに,既存開業者の 権益を保護する制度運用は本来の規制目的から逸脱するものであって,その合憲性は極めて疑わし い」106)との批判の他,本件では,健康保険法 43 条ノ 3 第 2 項の指定拒否の要件に―明確な法的根 拠なしに―病院開設中止勧告に従わない場合を含むと解釈された点について,「指定拒否が国民皆 保険の下では病院開設者の職業活動の自由に大きな制約を課すものであるとすれば,侵害留保の原 則の立場でも法律の根拠がなければならないはずである。本判決よりも後に出された」,H―25.1.11 〈い医薬品(ネット販売)/禁止/権利確認〉最 2 判「では,医薬品のネットでの販売の規制が職 業活動の自由を相当程度制約するものである以上,法律の諸規定から省令への授権の趣旨が明確に 読み取れることを要するものとしている。本判決が国民皆保険の下における指定拒否の法的意義と いう視点を最後まで貫いていたならば,これと同様に,法律の明確な根拠のない営業規制は許され ないとの判断が示されていた可能性がある」107)とのコメントがある。 【う運送関係】 ◎自家用有償運送(無免許)  S―38.12.4〈う運送(自家用)/無免許(有償)/刑〉最大判は,「免許制は道路運送の総合的な

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発達を図るテーゼ」(前述(C)(2)【う運送関係】◎自家用有償運送ア)参照),「自家用自動車の 有償運送行為放任は免許制度崩壊のおそれテーゼ」(前述(C)(2)【う運送関係】◎自家用有償運 送イ)参照)でもって,自家用自動車を有償運送の用に供することを禁止した道路運送法の規定を 憲法 22 条に違反しないとした。本判決について,「白タクが『社会的需要に応じて発生し,社会の 要望にこたえている』もので,『公共の福祉の増進に役立っている』とすれば(これは当時の実態 では,ある程度否定できない事実であった),立法の必要性ないし合理性を,立法事実との関連に おいてもう少し具体的に説明することが,妥当な憲法判断のあり方だ」108)という批判がある。 ◎バス事業免許申請  S―50.5.29〔う運送(バス)/免許申請却下/取消〕最 1 判は,「適性手続テーゼ」(前述(C)(1) 【う運送関係】ア)参照)をいい,運送事業の免許に関する運輸審議会の公聴会における審理手続 について比較的厳しい対応をするものの,審理手続における瑕疵が運輸大臣のした免許拒否処分の 取消事由にならないとして請求を斥けた。この点,「第 1 審判決は,免許申請の審査などという行 政手続について,実定法の定めをオーバーして一つの理想像をえがき,これに基づいて具体的事件 の処理のやり方を批判したもので,実定法の解釈としてはいささか行きすぎ」であり,「第 2 審判 決の考え方」が「妥当」,「今回の最高裁判決は」,「第 2 審判決の考え方をおおむね支持しており, 妥当」としつつ,最高裁判決が,「運輸審議会における公聴会などによる審理手続」について,「運 輸審議会の決定(答申)が直ちに運輸大臣を法的に拘束するものではないにしても」,「その決定(答 申)自体に,法がこの審議会の諮問を経ることを要求した趣旨に反すると認められるような瑕疵が あるときは,これを経てなされた処分も違法として取消しを免れないことになるものとしている点 は,事理上当然のことながら,注目すべき点である」との好意的コメント109),他方,本判決が,「専 ら道路運送法以下の法令解釈によって公正手続の実定法性を承認し,憲法 31 条が行政手続にも適 用されるか,という争点についての判断を回避し」,「手続的アプローチを,結果として,たんなる 公聴会審理手続における公正さの要請に矮小化してしまった」,「ここに,行政手続法形成史ないし 行政の判断過程の司法審査史上における,本件最判の限界がある」110)という批判がある。 【か会計士】  S―50.9.26〔か会計士/登録抹消/取消〕最 2 判は,公認会計士が廃業した場合,その身分(地位) を失う時期について,「廃業時説(廃業届出の時)」をとる後述 1 審,S―45.2.23〔か会計士/登録 抹消/取消〕東京地判を否定し,前出,2 審と同じく,「公認会計士の地位は業務の公共性,社会 的重要性ゆえ登録により大蔵大臣及び協会から監督を受けるテーゼ」(前述(C)(2)【か会計士】ア) 参照)でもって「抹消時説(登録が抹消された時)」を採用し,訴えを斥けた。この点,「公認会計 士法及びその周辺の法規の解釈としては,廃業時説,抹消時説いずれも成り立ちえないものではな く,条文上の根拠としていずれかの説の決定的根拠となりうるようなものはないと思われる。した がって,いずれの説をとるのがより法の趣旨,目的に合致するかという観点からその選択が行われ るべきこととなる。上告審判決は,抹消時説がより法の趣旨,目的に合致するものであるとして, これを採用した」111),「仮に」,原告「の主張するように届出書の提出により当然に公認会計士の地 位喪失があると解釈すれば,本来であれば業務停止または懲戒処分を受けたことにより欠格条項(法 4 条 6 号・7 号)に該当し,一定期間公認会計士の地位を取得できないはずの者であっても,これ を回避するために自発的に業務を廃止することを可能にするという結果を招来することになりかね ず,これは法の趣旨,目的に合致するところでない」112)等のコメントがある。

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【ぎ技術士】  S―40.3.5〈ぎ技術士/禁止(称号)/国賠〉最 2 判は,S―37.10.24.24〈た宅建/登録取消/無効 確認〉最大判を援用し,訴えを斥けた。この点,「新たに立法事実を何ら認定しないまま4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4,事案の 全く異なる」「事件の判決要旨を引いただけで技術士法改正の合憲性を認めたのは,最近の判例で も最高裁のしばしば用いる手法であるけれども,はたして妥当な憲法判断のあり方といえるかどう か疑わしい」113)との批判がある。 【こ公衆浴場関係】  S―30.1.26〈こ衆浴場/無許可/刑〉最大判は,「設立を業者の自由に委せると偏在・濫立・経営 の不安定・衛生的設備の低下テーゼ」(前出(C)(2)【こ公衆浴場関係】ア)参照)でもって距離 規制を合憲とした。このテーゼについて,「営業の性質上国の独占とされたものを除いては自由競 争による経済の自律性によっておのずから配置の適正化がもたらされることを期待しているという べきである。また公衆浴場が乱設されると『無用の競争』によって衛生設備の低下が生ずるという のであるが,逆に競争によって衛生設備の向上が見られることになる場合もあり得る。さらに,も しも衛生設備の低下が生じたときには許可の取消という手段によって対処することができる」「か ら,あらかじめ設置の距離制限を定めることは不必要である。また,もしもこの判決のような見解 をとるならば,公衆浴場に限らず国民の衛生に関連する日常生活に不可欠な営業や,競争の激しい 営業のすべてについて距離制限を加え得ることとなり,憲法の保障する営業の自由の原則が否定さ れることとなるおそれがある」,「要するに,自由営業の弊害は,許可制・届出制・公衆衛生上の取 締などの制度を設けることで必要且つ充分であり,それら以上に配置の適正化のために距離制隈を 行うことまでをも公共の福祉の要求であるとすることは許されない」,「もしも公衆浴場営業に対し て,公衆衛生上の規制以上に規制を加える必要があるとするのであれば,それは公衆浴場営業の公 共性な確保し,併せてその経営を保護育成するという観点からなされるべきものであると考えられ るが,この判決は,これらの点についての検討を欠いている」114),「この判決は,配置の適正を保 つため必要な措置を講じないと,公衆浴場の偏在(公衆の浴場利用の不便),濫立による無用の競 争(既設浴場の経営不合理化と衛生設備の低下)を招来し,『国民保健及び環境衛生の上から』好 ましくないというが,このような―当初から違憲の疑いがあったにもかかわらず,既存の業者の圧 力に押され議員立法として成立した条項の提案理由説明をほとんどそのまま引用した―立法事実の 認定は,立法事実の本質的論点について眼を掩ったものとすら評することができる」115)他,多くの 批判が見られた。  他方,このような批判に対して,「事案は公衆浴場業の特性に注目して思考するを要し,それが 国民の保健衛生上不可欠であるにもかかわらず,自由競争になじむかどうかを検討すると,①その 入湯料は国民の容易な利用を可能にするため低廉であるを要し,現に知事の認可制となっている, ②サービスを向上しても遠隔地から常客を確保しうるといった事業ではなく,顧客が地域的に固定 される,③経営者は通常大資本家ではなく,彼らにとって施設に多額の費用を要するのに,経営競 争に敗れた場合,他に転用ができないという事情がある。そのため,公営政策をとらない限り,距 離制限制による経営保障には合理性があり,合憲とすべき」116)というように,公衆浴場の公共的性 格を強調し,距離制限を肯定する立場もあった。  H―1.3.7〈こ公衆浴場/不許可/取消〉最 3 判に先立つ,H―1.1.20〈こ公衆浴場/無許可/刑〉最 2 判は,後述するように,(3)「積極目的・著しく不合理であることが明白でない/処分は適法, 有罪」アプローチを用いて合憲としたが,本判決は,「国民保健及び環境衛生の確保・既存公衆浴

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場業者の経営の安定を図ることにより,自家風呂を持たない国民にとって必要不可欠な厚生施設で ある公衆浴場を確保テーゼ」(前出(C)(2)【こ公衆浴場関係】イ)参照)をいい,S―47.11.22〈こ 小売市場/無許可/刑〉最大判を援用せず,「適正配置規制は右目的を達成するための必要かつ合 理的な範囲内の手段」とした。この点,「第 3 小法廷は公衆浴場法を消極目的と積極目的が混在し ているケースとして扱ったように思われる」,「とまれ同一の法律に関するこうした小法廷間の判断 枠組みのずれは最高裁が 2 分論の射程範囲の理解について未だに統一した見解を持ちえていないこ とのあらわれ」117)とのコメントがある。 【し職業紹介】  S―25.6.21〈し職業紹介/禁止(有料)/刑〉最大判は,「労働者に不利益な契約を成立せしめた 事例多く,弊害も甚しかったテーゼ」(前出(C)(2)【し職業紹介】ア)参照)をいい,憲法 22 条に違反しない,とした。本判決について,「公共の福祉による『営業の自由』の制限を承認した 初期のリーディング・ケースとして注目に値する」,「本件判示は,職業安定法による有料職業紹介 事業の一般的禁止の,合憲性を抽象的な『公共の福祉論』ではなく,実態的・経験的な判断によっ て理由づけている点が特徴的である」118)との評価もあるが,「判決が判断しているのは,職業安定 法の立法目的の一応の合理性と,有料職業紹介自由化のもたらす弊害の存在のみである。本来なら ば,なぜそうした立法目的を達成するために一般的禁止という強力な規制が行われる必要があった のか論証すべきであった」119)とする批判がある。 【ふ風俗関係】  H―28.12.15〈ふ風俗(案内)/禁止/営業権確認〉最 1 判は,「風俗案内所の特質及び営業実態 に起因する青少年の育成や周辺の生活環境に及ぼす影響テーゼ」(前述 C)(2)【ふ風俗関係】◎そ の他ア)参照)をいい,規制目的は「公共の福祉に適合」し,「目的達成のための手段として必要性, 合理性がある」とした。本判決は,S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判を援用するが, 同判決の用いた明白の原則を用いない(なお,後述,1 審,H―26.2.25〈ふ風俗(案内)/禁止/営 業権確認〉京都地判は規制を違憲とし,後述,2 審,H―27.2.20〈ふ風俗(案内所)/禁止/営業権 確認〉大阪高判は薬事法判決を援用しつつ,合憲とした)。本判決が,S―47.11.22〈こ小売市場/ 無許可/刑〉最大判を援用している点について,「本件条例の規制目的は『風営法 1 条と共通する 消極的,警察的目的のみならず,環境保全的な意味合いの積極的な目的をも含んでいる』といわれ ていたものの,『積極的な社会経済政策』目的とはいいがたかった。小売市場事件判決の射程をこ れほどまで拡大してもよいのか。この点で異論を呼ぶであろう」120),「小売市場の距離制限を積極 目的規制として合憲と判断した判決に徴して,風俗案内所の営業禁止の合憲性が導き出されるとい う判断も簡単には受け入れることができない」121)等の批判がある。 【ほ法務関係】 ◎司法書士  H―12.2.8〈ほ法務(司法書士)/禁止(登記申請)/刑〉最 3 判は,「登記制度は国民の権利義 務等社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすテーゼ」(前出,(C)(2)【ほ法務関係】◎司法書士 ○禁止(登記申請)ア)参照)をいい,登記申請代理業務を司法書士の専業とした司法書士法の規 定を合憲とした。その際,S―34.7.8〈し歯科(技工士)/禁止(印象採得)/刑〉最大判,S― 50.4.30〈い医薬品関係(薬局)/不許可/取消〉最大判を援用した。この点,目的 2 分論で消極目 的と捉える立場から,司法書士法の規制は,「登記申請業務を,それを取り扱うにふさわしい知識, 経験等を有する者に集中させようとしたものであるから,従来の判断枠組みでいえば,消極的,警

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察的目的の規制に属するものと解される」,「その合憲性審査は」,「より厳しい審査基準によるぺき ことになるが,右の規制目的が合理的なものであることについては,さほど異論がないものと思わ れる。また,その手段は,司法書士となる者の資格を,①司法書士試験に合格した者,②一定の官 職に「一定期間在職するなどして,法務大臣が必要な知識,能力があると認めた者に限定するとい うものであり,専ら本人の能力を問題とするものであって,本人の力ではいかんともなし得ないよ うな要件を付加するものではないから,比較的容易に合理性を肯定できる」122)とする好意的なコメ ントがある。他方,本判決を,「当該行為が自由な職業活動として行われる結果として社会公共に もたらす弊害を防止するための消極的・警察的措置である,と位置づけた」と捉えつつ,「昭和 50 年判決にしたがえば,消極的・警察的規制である司法書士法 19 条 1 項の合憲性は厳格にその合理 性を審査する必要があったはずであるが」,本判決のいう「『国民の権利義務等社会生活上の利益に 重大な影響を及ぼす』というのは抽象的一般的である」,「昭和 50 年判決は少なくともいわゆる消 極的・警察的規制についてはある規制をめぐるさまざまな利益を『具体的に』比較検討することを 求めているといってよい」,「したがって本件についても,登記主体である本人の利益はもとより, 登記による国民一般の取引の安全の確保さらには登記の事務の処理上の便宜のためといったさまざ まな利益をも視野において何がどこまで保護されるべき利益であるのかを具体的に考え,代理行為 を特定の者に限る規制が合理的かどうか述べられるべきであった」123)という批判もある。その他, 「判決は,職業の自由の規制に係るいわゆる消極・積極目的 2 分論を採らずに,『社会生活上の利益 に重大な影響を及ぼす』職業活動規制を包括的に合憲とする『公共の福祉』アプローチを採ったの であろうか。しかし,かかる理由の規制が認められれば,殆どの職業を資格制とし,無資格者の営 業を禁止することができてしまう」124)との指摘がある。 ◎弁護士会  H―4.7.9〈べ弁護士会(懲戒)/取消〉最 1 判は,S―34.7.8〈し歯科関係(技工士)/禁止(印象 採得)/刑〉最大判(以下,34 年判決と呼ぶ)を援用して,弁護士会の強制加入制度を合憲とし た(2 審,H―1.4.27〈ほ法務(弁護士)/業務停止/裁決取消〉東京高判は,「弁護士自治テーゼ」(前 出(C)(2)【ほ法務関係】◎弁護士ア)参照)をいい,「弁護士会の強制加入制が憲法 22 条に違 反するということはでき」ない,としていた)。この点,34 年判決の趣旨について,「職業が高度 の専門性・公共性をもつ場合に,一定の資格要件を満たした者のみがその職業に従事できるという 法規制は,その資格要件の定めが合理性を有するものである限り,憲法 22 条 1 項の許容するところ」 と解した上で,「本判決の趣旨は,弁護士が国民の基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし, その職務に高度の専門性と高い職業倫理を要求されることに鑑み,弁護士会への加入を含む一定の 資格要件を満たしたものに弁護士業務を限定することは,職業選択の自由を侵害しない,というこ とであろう。しかしながら」,34 年判決「の事案は,歯科医師の資格をもたない者が,法律によっ て歯科医師のみに認められた施術を行った事案であって,そこには何らかの組織への加入強制とい う問題は含まれていない。したがって」,34 年判決「の趣旨によって正当化できるのは,弁護士法 4 条から 6 条までの弁護士資格の限定,あるいはせいぜい 8 条の登録要件までではないか,9 条, 36 条 1 項の加入強制はそれでは正当化できないのではないかという疑問が残る」125) という批判が ある。

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(2)「立法政策/処分は適法」アプローチ (A)概要  これは,法令が違憲であるとの主張について,立法政策の問題として合憲とし,法令の適用も適 法とするアプローチである。このアプローチは,若干,職業選択の自由にコミットするが,職業選 択の自由制限へのコミットは強い。 (B)裁判例 (1)S―43.2.22〈う運送(個人タクシー)/申請却下/取消〉東京地判昭和 43 年 2 月 22 日(訟月 14 巻 3 号 300 頁)は,原告の主張―少なくとも個人タクシーについて道路運送法が免許制を採用 したことは憲法 22 条に違反する―について,「道路運送法 1 条に掲げる法の目的と現在のわが国の 交通及び道路運送の実情テーゼ」(後述(C)(2)【う運送関係】ア)参照)をいい,「この種の事業, ことにタクシー事業について免許制をとるか,あるいはいわゆる許可制をとるかは結局において立 法政策の問題であって」,道路運送法が「自動車運送事業一般につき免許制を採用したことをもっ て直ちに憲法 22 条 1 項に違反するということはできない」としつつ,「免許の許否は国民の職業選 択の自由にかかわるテーゼ」(後述(C)(1)【う運送関係】ア)参照),「あらかじめ審査基準を設 けて適格者を判定テーゼ」(後述(C)(1)【う運送関係】イ)参照)をいい,「もし右基準の定立 やその適用において不公正や不合理があれば,そのような手続によって行なわれた処分は違法であ る」とする。そして,原告の免許申請が運転歴と年令において被告の審査基準に適合せず,同法 6 条 1 項 4 号の要件をみたさなかったとし,「被告の本件処分は正当である」,として請求を棄却する。 (C)このアプローチを支える思想 (1)職業選択の自由への若干のコミット 【う運送関係】 ア)免許の許否は国民の職業選択の自由にかかわるテーゼ  S―43.2.22〈う運送(個人タクシー)/申請却下/取消〉東京地判は,「タクシー事業について免 許制をとること自体が違憲でないにしても,その免許の許否が国民の職業選択の自由にかかわるも のであることは否定しがたい」という。 イ)あらかじめ審査基準を設けて適格者を判定テーゼ  S―43.2.22〈う運送(個人タクシー)/申請却下/取消〉東京地判は,「その免許基準を定めた」 道路運送法「6 条 1 項各号の規定がきわめて抽象的・多義的であることにかんがみると,多数の申 請者の中から少数特定の者を選択して免許の許否を決定する行政庁としては,申請の審査に先だ ち,あらかじめ内部的にもせよ右各号の趣旨をある程度具体化した審査基準を設けて,その公正か つ合理的な適用によって適格者を判定すべきことが要請される」という。 (2)職業選択の自由制限への強いコミット 【う運送関係】 ア)道路運送法 1 条に掲げる法の目的と現在のわが国の交通及び道路運送の実情テーゼ  S―43.2.22〈う運送(個人タクシー)/申請却下/取消〉東京地判は,上記テーゼをいう。 (3)司法哲学 【う運送関係】  S―43.2.22〈う運送(個人タクシー)/申請却下/取消〉東京地判は,「結局において立法政策の 問題」と捉え,強い立法府尊重の司法哲学といえる。

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(D)このアプローチをめぐって (1)【う運送関係】  S―43.2.22〈う運送(個人タクシー)/申請却下/取消〉東京地判のコメントではないが,同旨 の判決について,「特許企業規制が典型的に妥当するのは,自然独占的性質を内包し,公衆の便益 に密接な関係をもつ事業分野である」,「それ以外の場合には,既存業者の利益擁護に偏し,社会的 需要の変化に適合しない結果を生ずるおそれがある。道路運送法に基づくハイヤー・タクシー業の 規制の如きはその意味で問題で,ことに,法人企業を優遇し,個人タクシーを過度に制限すること に対しては,個人の職業選択の自由に対する不当な侵害として,違憲の疑いもあるといわざるを得 ない」1)とのコメントがある。 (3) 「積極目的・必要かつ合理的な範囲・著しく不合理であることが明白でない/処分は適法,有罪」 アプローチ (A)概要  これは,法令が,憲法 22 条の職業選択の自由に反し無効であり,それにもとづく有罪の訴追, 行政処分は無効であると主張される場合において,規制目的を消極目的,積極目的と 2 分した上で 当該規制を積極目的と捉え(「憲法は消極目的規制のほか国の責務として積極的な社会経済政策を 予定テーゼ」(後述(C)(2)イ)参照,もっとも後述のように,「社会経済政策分野」を「積極的 な国の財政政策(税)分野」と限定する判決(後述(C)(2)【全体】イ)参照)もある)をいい, 著しく不合理であることが明白である場合に限り違憲とすべきとし(以下,明白の原則と呼ぶこと がある),本件の場合は,著しく不合理であることが明白でなく,適用も適法とするアプローチで ある。このアプローチは,次に述べる,S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判―以下,47 年小売市場判決と呼ぶことがある―をもって嚆矢とするが,以下で扱う諸判決は,同判決を構成す る全てのテーゼや判断基準を備えているわけではない1)。このアプローチの職業選択の自由へのコ ミットは弱く,職業選択の自由制限へのコミットは強い。 (B)裁判例 (1)S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判昭和 47 年 11 月 22 日(刑集 26 巻 9 号 586 頁, ①→ S―43.9.30〈こ小売市場/無許可/刑〉東大阪簡判,②→ S―44.11.28〈こ小売市場/無許可/刑〉 大阪高判)は,被告人の主張―小売商業調整特別措置法の許可制を定める規定は憲法 22 条に違反 する―について,「営業の自由テーゼ」(後述(C)(1)【全体】ア)参照)をいうが,「公共の福祉テー ゼ」(後述(C)(2)【全体】ア)参照),さらに,「憲法は消極目的規制のほか国の責務として積極 的な社会経済政策を予定テーゼ」(後述(C)(2)【全体】イ)参照),「個人の精神的自由等に関す る場合と異なるテーゼ」(後述(C)(2)【全体】ウ)参照)をいい,「社会経済全体の均衡のとれ た調和的発展を図る」「目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り,許されるべきで あって,決して,憲法の禁ずるところではない」という。さらに,「規制には一定の限界テーゼ」(後 述(C)(1)【小売】ア)参照)をいいつつ,「社会経済政策分野での立法府尊重の司法哲学」(後 述(C)(3)ア)参照)をいい,「当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合 に限って,これを違憲として,その効力を否定することができる」とする。そして,「許可規制は 中小企業保護政策の一方策テーゼ」(後述(C)(2)【こ小売市場】ア)参照)をいい,「目的にお いて,一応の合理性を認めることができないわけではなく,また,その規制の手段・態様において も,それが著しく不合理であることが明白であるとは認められない」とし,憲法 22 条に違反しな

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い「ことは明らか」として,上告を棄却する2)。 (2)S―58.6.28〈し酒類/免許拒否(経営・需給)/取消〉青森地判は,原告の主張―経営の基礎 が薄弱であると認められる場合,酒税の保全上酒類の均衡を維持する必要がある場合,酒類の販売 業免許を与えないことができるとする酒税法 10 条 10 号,11 号の規定は憲法 22 条に違反する―に ついて,本件申請は酒類の販売業免許を与えないことができる場合だとする。そして,「憲法は消 極目的規制のほか国の責務として積極的な社会経済政策を予定テーゼ」(後述(C)(2)【全体】イ) 参照),「財政政策(税)分野での立法府尊重の司法哲学」(後述(C)(3)イ)参照)をいい, S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判を援用し,「立法府がその裁量権を逸脱し,当該法 的規制措置が著しく不合理であることが明白である場合に限って,これを違憲としてその効力を否 定することができる」とする。そして,「免許制度は国家財政上重要な酒税収入の確保を図るテーゼ」 (後述(C)(2)【し酒類販売関係】ア)参照),「経営能力要求テーゼ」(後述(C)(2)【し酒類販 売関係】イ)参照),「適切な需給関係の維持テーゼ」(後述(C)(2)【し酒類販売関係】ウ)参照) をいい,酒税法 10 条の「規制措置は,いずれもその立法目的との関連で一応の合理性を肯認する ことができないわけではないから,右法的規制措置が立法府の裁量権を逸脱して著しく不合理であ ることが明白であるとは断定し難い」とし,憲法 22 条に違反せず,本件処分は適法であるとして 原告の請求を棄却する。 (3)S―59.3.13〈た煙草小売/不指定/取消〉青森地判昭和 59 年 3 月 13 日(行集 35 巻 3 号 219 頁, ②→ S―59.8.10〈た煙草小売/不指定/取消〉仙台高判)は,原告の主張―たばこ専売法の製造た ばこの販売の専売制,小売人制度の規定は憲法 22 条に違反する―について,本件は,「営業所の位 置又は設備が製造たばこの小売業を営むのに不適当と認められる場合」(法 31 条 1 項 3 号),「製造 たばこの取扱の予定高が公社の定める標準に達せず,その他著しく不適当と認められる場合」(法 31 条 4 号)に該当するという。そして,たばこ専売制等の合憲性について,「たばこの専売制は国 の財政上の重要な収入を図るとともに,一般国民の日常生活における必要に応ずるテーゼ」(後述 (C)(2)【た煙草販売】ア)参照)をいう。そして,S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大 判を援用し,「財政政策(税)分野での立法府尊重の司法哲学」(後述(C)(3)(イ)参照)をいい, 「立法府がその裁量権を逸脱し,当該法的規制措置が著しく不合理であることが明白である場合に 限って,これを違憲としてその効力を否定できる」とし,「製造たばこの販売等について専売制を 採用することは,国の財政収入の確保という立法目的との関連で合理性が肯認でき,著しく不合理 であることが明白であるとはいえ」ず,専売制の規定は,憲法 22 条に違反しないとする。そして, 「製造たばこの販売を一般国民の自由に委ねた場合に予想される弊害を未然に防止テーゼ」(後述 (C)(2)【た煙草販売】イ)参照)をいい,小売人指定制の規定は憲法第 22 条に違反しないという。 また,「小売人の指定をしないことができる」場合を規定する,31 条 1 項 3 号(「営業所の位置又 は設備が製造たばこの小売業を営むのに不適当と認められる場合」),同 4 号(「製造たばこの取扱 の予定高が公社の定める標準に達せず,その他著しく不適当と認められる場合」)については,「国 の財政収入の確保を図り,併せてたばこの品質及び価格を一定に保ち,国民一般の需要を均等に満 たそうとするテーゼ」(後述(C)(2)【た煙草販売】ウ)参照)をいい,「立法目的との関連でそ の合理性を肯認できるうえ,規制の手段態様も著しく不合理であるとはいえ」ず,憲法 22 条に違 反せず,本件処分は適法であるとして,原告の請求を棄却する。 (4)S―59.6.29〈ゆ輸入(繭糸)/制限/国賠〉京都地判昭和 59 年 6 月 29 日(訟月 31 巻 2 号 207 頁, ②→ S―61.11.25〈ゆ輸入(繭糸)/制限/国賠〉大阪高判,③→ S―2.2.6〈ゆ輸入(繭糸)/制

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限/国賠〉最 3 判)は,原告の主張―生糸の一元輸入措置および生糸価格安定制度を内容とする繭 糸価格安定法を改正する立法行為は憲法 22 条に違反する―について,「国会の立法行為に関し国が 国賠法 1 条 1 項に基づいて損害賠償責任を負うか否かについては判例学説の分かれているところで あるが,当裁判所としては,右の点をおいて,本件立法行為の違法性に関する検討からはじめる」 とする。そして,「職業選択の自由テーゼ」(後述(C)(1)【全体】ア)参照)をいうとともに,「公 共の福祉テーゼ」(後述(C)(2)【全体】ア)参照),「憲法は消極目的規制のほか国の責務として 積極的な社会経済政策を予定テーゼ」(後述(C)(2)【全体】イ)参照)をいい,「国が,積極的に, 右保護政策として,立法により,個人の経済活動の自由に対し一定の規制措置を講ずること」が「右 保護政策の目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り,許される」という。そして, S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判を援用し,「立法府がその裁量権を逸脱し,当該法 的規制措置が著しく不合理であることが明白であるときに限って,これを違憲とすることができる」 とする。さらに,「養蚕農家のための保護政策テーゼ」(後述(C)(2)(ア)【ゆ輸入関係】参照) をいい,「諸般の事情を総合的に考慮すると,本件一元輸入措置及び価格安定制度に関する本件立 法は,原告ら絹織物生地製造業者の経済的活動の自由を規制するものではあるが,右保護政策の目 的達成のために必要かつ合理的な範囲を逸脱したものということができない。少くとも,それは, 国会がその裁量権を逸脱し,法的規制措置が著しく不合理であることが明白である場合にあたると 解することはできない」とし,請求を棄却する。 (5)S―59.7.19〈し酒類/差押(無免許)/取消・無効確認〉東京地判(行集 35 巻 7 号 969 頁, ②→ S―62.1.22〈し酒類/差押(無免許)/取消・無効確認〉東京高判)は,原告の主張―酒税法 の酒類販売業の免許制の規定は憲法 22 条に違反する―について,S―47.11.22〈こ小売市場/無許 可/刑〉最大判を援用し,「憲法は消極目的規制のほか国の責務として積極的な社会経済政策を予 定テーゼ」(後述(C)(2)【全体】イ)参照),「精神的自由等に関する場合と異なるテーゼ」(後 述(C)(2)【全体】ウ)参照)をいう。そして,「社会経済分野での立法府尊重の司法哲学」(後 述(C)(3)(ア)参照)をいい,「立法府がその裁量権を逸脱し,当該法的規制措置が著しく不合 理であることの明白である場合に限って,これを違憲として,その効力を否定することができる」 とする。そして,「免許制度は国家財政上重要な酒税収入の確保を図るテーゼ」(後述(C)(2)【し 酒類販売関係】ア)参照),「致酔性は付随的効果テーゼ」(後述(C)(2)【し酒類販売関係】エ) 参照))をいい,酒類販売業免許制度は,「その目的において一応の必要性と合理性を認めることが でき」,「その規制手段においても,同法の関係諸規定並びに関連の酒税法施行令及び国税庁長官通 達に徴し,それが著しく不合理であることが明白であるとは認められ」ず,憲法 22 条に違反せず, 本件差押処分も違法,無効でないとして請求を棄却する。 (6)S―59.8.10〈た煙草小売/不指定/取消〉仙台高判昭和 59 年 8 月 10 日(行集 35 巻 8 号 1265 頁, ①→ S―59.3.13〈た煙草小売/不指定/取消〉青森地判)は,前出,1 審と同旨で棄却する。 (7)S―62.1.22〈し酒類/差押(無免許)/取消・無効確認〉東京高判昭和 62 年 1 月 22 日(行集 38 巻 1 号 1 頁,①→ H―59.7.19〈し酒類/差押(無免許)/取消・無効確認〉東京地判)は,前出, 1 審と同旨で控訴を棄却する。 (8)H―1.1.20〈 こ 公 衆 浴 場 / 無 許 可 / 刑 〉 最 2 判 平 成 1 年 1 月 20 日( 刑 集 43 巻 1 号 1 頁, ①→ S―60.11.25〈こ公衆浴場/無許可/刑〉大阪簡判,②→ S―61..28〈こ公衆浴場//無許可/刑〉 大阪高判)は,被告人の主張―適正配置を定める公衆浴場法,大阪府条例の規定は憲法 22 条に違反 する―について,「公衆浴場業者が健全で安定した経営を行えるように種々の立法上の手段をとり,

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国民の保健福祉を維持するテーゼ」(後述(C)(2)【こ公衆浴場関係】ア)参照)をいい,これは, 「まさに公共の福祉に適合するところであり,右の適正配置規制及び距離制限も,その手段として 十分の必要性と合理性を有している」とする。そして,「積極的,社会経済政策的な規制目的に出 た立法については,立法府のとった手段がその裁量権を逸脱し,著しく不合理であることの明白な 場合に限り,これを違憲とすべきである」という。そして,「適正配置規制及び距離制限」は「そ の場合に当たら」ず,このことは,S―30.1.26〈こ公衆浴場/無許可/刑〉最大判「に徴し明らか」 とし,上告を棄却する。 (9)H―2.1.26―79〈た煙草小売/不許可/取消〉大阪地判平成 2 年 1 月 26 日(REX / DB,②→ H―3.4.16 〈た煙草小売/不許可/取消〉大阪高判,③→ H―5.6.25〈た煙草小売/不許可/取消〉最 2 判)は, 原告の主張―製造たばこの小売販売業の許可制を定めるたばこ事業法 22 条,許可の基準として営 業所の位置が製造たばこの小売販売を業として行うのに不適当である場合を定める 23 条 3 号,同 法施行規則 20 条 2 号等は憲法 22 条に違反する―について,S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉 最大判を援用し,「社会経済政策分野での立法府尊重の司法哲学」(後述(C)(3)(ア)参照)を いい,「立法府がその裁量を逸脱し,当該規制措置が著しく不合理であることが明白である場合に 限って,これを違憲として,その効力を否定することができる」とする。そして,「激変回避(社 会福祉的な配慮)テーゼ」(後述(C)(2)【た煙草販売】エ)参照)をいい,「許可制の目的は, 右の社会経済政策的見地に基づくものであり,公共の福祉に適合する」という。さらに,たばこ事 業法 23 条 3 号,同法施行規則 20 条 2 号等の合憲性について,「過当競争から零細小売業者の経営 規模が縮小し,経営の悪化,共倒れすることを防ぐテーゼ」(後述(C)(2)【た煙草販売】オ)参照) をいい,「たばこ事業法 23 条 3 号,同法施行規則 20 条 2 号が,右判断を一定の範囲を限定して大 蔵大臣の合理的な裁量に委ねたことも合理的な措置」であって,憲法 22 条 1 項に違反せず,本件 処分は適法であるとし請求を棄却する。 (10)H―2.2.6〈ゆ輸入(繭糸)/制限/国賠〉最 3 判平成 2 年 2 月 6 日(訟月 36 巻 12 号 2242 頁, ①→ S―59.6.29〈ゆ輸入(繭糸)/制限/国賠〉京都地判,②→ S―61.11.25〈ゆ輸入(繭糸)/制 限/国賠〉は,原告の主張―前出,1 審参照―について,最 1 判昭和 60 年 11 月 21 日(在宅投票 制度訴訟最高裁判決,民集 39 巻 7 号 1512 頁)を援用し,「賠償の責に任ずべきは例外的な場合の 司法哲学」(後述(C)(3)ウ)参照)をいい,S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判を援 用して,「憲法は消極目的規制のほか国の責務として積極的な社会経済政策を予定テーゼ」(後述(C) (2)【全体】イ)参照)をいい,「裁判所は,立法府がその裁量権を逸脱し,当該規制措置が著しく 不合理であることの明白な場合に限って,これを違憲としてその効力を否定することができる」と する。そして,改正後の繭糸価格安定法 12 条の 13 の 2 及び 12 条の 13 の 3 は,「営業の自由に対 し制限を加えるものではあるが,以上の判例の趣旨に照らしてみれば,右各法条の立法行為が国家 賠償法 1 条 1 項の適用上例外的に違法の評価を受けるものではないとした原審の判断は,正当」と して,上告を棄却する。 (11)H―2.3.29〈ゆ輸入(石油)/登録拒否/取消〉東京地判平成 2 年 3 月 29 日(行集 41 巻 4 号 813 頁,②→ H―6.4.18〈せ石油/登録拒否/取消〉東京高判,③→ H―8.3.28〈せ石油製品輸入(登 録拒否)/取消〉最 1 判)は,原告の主張―登録要件を定める特定石油製品輸入暫定措置法の規定 は憲法 22 条に違反する―は,「国民経済の発展と国民生活の向上を目的とする石油業法を補完テー ゼ」(後述(C)(2)【ゆ輸入関係】イ)参照),「公共の福祉テーゼ」(後述(C)(2)【全体】ア) 参照)をいい,S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判を援用し,「憲法は消極目的規制の

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ほか国の責務として積極的な社会経済政策を予定テーゼ」(後述(C)(2)【全体】イ)参照),「精 神的自由等に関する場合と異なるテーゼ」(後述(C)(2)【全体】ウ)参照),「社会経済政策分野 での立法府尊重の司法哲学」(後述(C)(3)(ア)参照)をいい,「当該規制措置が著しく不合理 であることの明白である場合に限って,これを違憲としてその効力を否定することができる」とす る。そして,1 号要件について,「供給不足に対処テーゼ」(後述(C)(2)【ゆ輸入関係】エ参照)を, 3 号要件について,「品質管理テーゼ」(後述(C)(2)【ゆ輸入関係】オ参照)をいい,両要件とも, 「制定理由は本件登録制度の規制目的に適合するものであって,公共の福祉に合致するものであり」, 「規制目的を達成する手段として著しく不合理であることが明白であるとはいえ」ず,憲法 22 条に 違反しない,とし,処分の適法性を肯定し,請求を棄却する。 (12)H―3.4.16〈た煙草小売/不許可/取消〉大阪高判平成 3 年 4 月 16 日(訟月 37 巻 11 号 2087 頁, ①→ H―2.1.26―79〈た煙草/不許可/取消〉大阪地判,③→ H―5.6.25〈た煙草/不許可/取消〉最 2 判は,前出,1 審と同旨で控訴を棄却する。 (13)H―5.6.25〈た煙草小売/不許可/取消〉最 2 判平成 5 年 6 月 25 日(判時 1475 号 59 頁,① → H―2.1.26―79〈た煙草小売/不許可/取消〉大阪地判,②→ H―3.4.16〈た煙草小売/不許可/取消〉 大阪高判)は,原告の主張―前出,1 審参照―について,S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉 最大判を援用し,「激変回避(社会福祉的な配慮)テーゼ」(後述(C)(2)【た煙草販売】エ)参照) をいい,「許可制の採用は,公共の福祉に適合する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる 措置」であり,たばこ事業法 23 条 3 号,同法施行規則 20 条 2 号及びこれを受けた大蔵大臣依命通 達」「による製造たばこの小売販売業に対する適正配置規制は,右目的のために必要かつ合理的な 範囲にとどまるものであって,これが著しく不合理であることが明白であるとは認め難」く,憲法 22 条に違反しないとし,上告を棄却する。 (14)H―13.9.14〈ゆ輸入(繭糸)/制限/刑〉神戸地判平成 13 年 9 月 14 日(裁判所ウェブサイト) は,被告人の主張―生糸・繭の輸入制限措置は憲法 22 条や営業の自由に反するゆえ被告人会社の 行為は違法なものとはいえず少なくとも関税法違反の可罰的違法性はない―について,H―2.2.6〈ゆ 輸入(繭糸)/制限/国賠〉最 3 判のいう「憲法は消極目的規制のほか国の責務として積極的な社 会経済政策を予定テーゼ」(後述(C)(2)【全体】イ)参照)をいい,被告人の主張は「その前提 を欠いて」おり,「被告人会社の本件関税ほ脱行為は可罰的違法性がないとは,到底いうことがで きない」,として有罪とする。 (15)H―15.11.20〈た煙草小売/無許可/刑〉福岡高宮崎支判平成 15 年 11 月 20 日(裁判所ウェブ サイト)は,被告人の主張―製造たばこの小売販売業の許可制を定めるたばこ事業法の規定は憲法 22 条に違反する―について,H―5.6.25〈た煙草小売/不許可/取消〉最 2 判を援用し,「激変回避(社 会福祉的な配慮)テーゼ」(後述(C)(2)【た煙草販売】エ)参照)をいい,「公共の福祉に適合 する目的のために必要かつ合理的な範囲に止まる措置」とする。そして,「適正配置規制もまた, 上記の目的のために必要かつ合理的な範囲に止まるものというべく,これが著しく不合理であるこ とが明白であるものとは認め難く」,憲法 22 条に違反しないとし,被告人の無許可販売行為を有罪 として控訴を棄却する。 (16)H―20.5.23〈た煙草小売/不許可/取消〉東京地判平成 20 年 5 月 23 日(裁判所ウェブサイト, ②→ H―20.10.30〈た煙草小売/不許可/取消〉東京高判)は,被告人の主張―製造たばこの小売販 売業に対する適正配置規制を定めるたばこ事業法 23 条 3 号及び施行規則 20 条 2 号等が憲法 22 条 に違反する―について,「本件不許可処分が本件既設営業所を施行規則 20 条 2 号所定の最寄りの小

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売販売業者の『営業所』に該当すると認めてされたことに違法はない」とした上で,「激変回避(社 会福祉的な配慮)テーゼ」(後述(C)(2)【た煙草販売】エ)参照)をいい,H―5.6.25〈た煙草小 売/不許可/取消〉最 2 判を援用し,「許可制の採用は,公共の福祉に適合する目的のために必要 かつ合理的な範囲にとどまる措置」であり,「製造たばこの小売販売業に対する適正配置規制は, 上記目的のために必要かつ合理的な範囲にとどま」り,「著しく不合理であることが明白であると は認め難い」とし,憲法 22 条に違反しないとして請求を棄却する。なお,「最高裁平成 5 年判決以 降,適正配置規制の立法の基礎を成す事実が著しく又は明白に変化したものと認めることはできな いテーゼ」(後述(C)(2)【た煙草販売】キ)参照)もいう。 (17)H―20.10.30〈た煙草小売/不許可/取消〉東京高判平成 20 年 10 月 30 日(裁判所ウェブサイト, ①→ H―20.5.23〈た煙草小売/不許可/取消〉東京地判)は,前出,1 審と同旨で棄却する。 (C)このアプローチを支える思想 (1)職業選択の自由への弱いコミット 【全体】 ア)職業選択の自由(営業の自由)テーゼ  S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判は,「憲法 22 条 1 項は,国民の基本的人権の一つ として,職業選択の自由を保障しており,そこで職業選択の自由を保障するというなかには,広く 一般に,いわゆる営業の自由を保障する趣旨を包含し」,「ひいては,憲法が,個人の自由な経済活 動を基調とする経済体制を一応予定している」という。S―59.6.29〈ゆ輸入(繭糸)/制限/国賠〉 京都地判は,S―50.4.30〈い医薬品関係(薬局)/不許可/取消〉最大判を援用しつつ,憲法 22 条 1 項,29 条 1 項は,「職業選択の自由及び財産権行使の自由を保障しており,何人も,原則として, 自由な市場で形成された価格で,各自の欲する場所から,その欲する量の原料を購入して生産活動 を営むことができる自由が右保障の範囲に包含される」という。 【こ小売市場】 ア)規制には一定の限界テーゼ  S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判は,「個人の経済活動に対する法的規制は,決し て無制限に許されるべきものではなく,その規制の対象,手段,態様等においても,自ら一定の限 界が存する」という。 (2)職業選択の自由制限への強いコミット 【全体】 ア)公共の福祉テーゼ  S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判は,「憲法は,個人の経済活動につき,その絶対 かつ無制限の自由を保障する趣旨ではなく,各人は,『公共の福祉に反しない限り』において,そ の自由を享有することができるにとどまり,公共の福祉の要請に基づき,その自由に制限が加えら れることのあることは,右条項自体の明示するところ」という。S―59.6.29〈ゆ輸入(繭糸)/制 限/国賠〉京都地判3),H―2.3.29〈ゆ輸入(石油)/登録拒否/取消〉東京地判は同旨。 イ)憲法は消極目的規制のほか国の責務として積極的な社会経済政策を予定テーゼ  最高裁を見ると,S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判は,憲法 22 条 1 項「に基づく 個人の経済活動に対する法的規制は,個人の自由な経済活動からもたらされる諸々の弊害が社会公 共の安全と秩序の維持の見地から看過することができないような場合に,消極的に,かような弊害 を除去ないし緩和するために必要かつ合理的な規制である限りにおいて許される」,「のみならず,

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憲法の他の条項をあわせ考察すると,憲法は,全体として,福祉国家的理想のもとに,社会経済の 均衡のとれた調和的発展を企図しており,その見地から,すべての国民にいわゆる生存権を保障し, その一環として,国民の勤労権を保障する等,経済的劣位に立つ者に対する適切な保護政策を要請 している」,「このような点を総合的に考察すると,憲法は,国の責務として積極的な社会経済政策 の実施を予定している」,「右社会経済政策の実施の一手段として,これに一定の合理的規制措置を 講ずることは,もともと,憲法が予定し,かつ,許容するところ」「であり,国は,積極的に,国 民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し,もって社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図 るために,立法により,個人の経済活動に対し,一定の規制措置を講ずることも」,「決して,憲法 の禁ずるところではない」という。H―1.1.20〈こ公衆浴場/無許可/刑〉最 2 判は,「積極的,社 会経済政策的な規制目的に出た立法」という表現を使う。H―2.2.6〈ゆ輸入(繭糸)/制限/国賠〉 最 3 判は,S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判を援用して,「積極的な社会経済政策の 実施の一手段として,個人の経済活動に対し一定の合理的規制措置を講ずることは,憲法が予定し, かつ,許容するところ」という。  下級審を見ると,S―59.6.29〈ゆ輸入(繭糸)/制限/国賠〉京都地判4),S―59.7.19〈し酒類/差 押(無免許)/取消・無効確認〉東京地判5),H―2.3.29〈ゆ輸入(石油)/登録拒否/取消〉東京 地判は,「憲法は消極目的規制のほか国の責務として積極的な社会経済政策を予定テーゼ」を共有 するが,S―58.6.28〈し酒類/免許拒否(経営・需給)/取消〉青森地判6),S―59.3.13〈た煙草小売 /不指定/取消〉青森地判7),S―62.1.22〈し酒類/差押(無免許)/取消・無効確認〉東京高判8)は, 「積極的な社会経済政策の分野」を「積極的な国の財政政策(税)分野」に限定する。 ウ)精神的自由等に関する場合と異なるテーゼ  S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判は,「個人の経済活動の自由に関する限り,個人 の精神的自由等に関する場合と異なって,右社会経済政策の実施の一手段として,これに一定の合 理的規制措置を講ずることは,もともと,憲法が予定し,かつ,許容するところ」という。 H―59.7.19〈し酒類/差押(無免許)/取消・無効確認〉東京地判,H―2.3.29〈ゆ輸入(石油)/登 録拒否/取消〉東京地判は同旨。 【こ公衆浴場関係】 ア) 公衆浴場業者が健全で安定した経営を行えるように種々の立法上の手段をとり,国民の保健福 祉を維持するテーゼ  H―1.1.20〈こ公衆浴場/無許可/刑〉最 2 判は,「公衆浴場法に公衆浴場の適正配置規制の規定 が追加されたのは昭和 25 年」「の同法改正法によるのであるが,公衆浴場が住民の日常生活におい て欠くことのできない公共的施設であり,これに依存している住民の需要に応えるため,その維持, 確保を図る必要のあることは,立法当時も今日も変わりはない。むしろ,公衆浴場の経営が困難な 状況にある今日においては,一層その重要性が増している。そうすると,公衆浴場業者が経営の困 難から廃業や転業をすることを防止し,健全で安定した経営を行えるように種々の立法上の手段を とり,国民の保健福祉を維持することまさに公共の福祉に適合する・・・・」という。 【こ小売市場】 ア)許可規制は中小企業保護政策の一方策テーゼ  S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判は,小売商業調整特別措置法は,「立法当時にお ける中小企業保護政策の一環として成立したものであり,本法所定の小売市場を許可規制の対象と しているのは,小売商が国民のなかに占める数と国民経済における役割とに鑑み,本法 1 条の立法

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目的が示すとおり,経済的基盤の弱い小売商の事業活動の機会を適正に確保し,かつ,小売商の正 常な秩序を阻害する要因を除去する必要があるとの判断のもとに,その一方策として,小売市場の 乱設に伴う小売商相互間の過当競争によって招来されるのであろう小売商の共倒れから小売商を保 護するためにとられた措置であると認められ,一般消費者の利益を犠牲にして,小売商に対し積極 的に流通市場における独占的利益を付与するためのものでないことが明らかである。しかも,本法 は,その所定形態の小売市場のみを規制の対象としているにすぎないのであって,小売市場内の店 舗のなかに政令で指定する野菜,生鮮魚介類を販売する店舗が含まれない場合とか,所定の小売市 場の形態をとらないで右政令指定物品を販売する店舗の貸与等をする場合には,これを本法の規制 対象から除外するなど,過当競争による弊害が特に顕著と認められる場合についてのみ,これを規 制する趣旨である」,「これらの諸点からみると,本法所定の小売市場の許可規制は,国が社会経済 の調和的発展を企図するという観点から中小企業保護政策の一方策としてとった措置ということが でき」る,という。 【し酒類販売関係】 ア)免許制度は国家財政上重要な酒税収入の確保を図るテーゼ  H―59.7.19〈し酒類/差押(無免許)/取消・無効確認〉東京地判は,「酒税法は,酒税がわが国 の租税収入中に重要な地位を占めていることから,国家財政上の重要な収入の確保を図ることを主 たる目的として,酒類の製造及び酒類の販売業について等しく免許制度を採用している」,「このよ うに,酒税の納税義務者である酒類製造者についてのみならず,酒類販売業者についても免許制度 を採用したのは,酒税が一般的に極めて税率の高い間接消費税であり」,「酒類販売業者が酒類製造 者と担税者である消費者とを結ぶ役割を担っていること」「にかんがみ,酒類の流通過程を通じて 酒類販売代金の円滑な回収を図らしめ,もって酒税の消費者への転嫁を容易ならしめることによ り,酒税収入を安定的かつ効率的に確保することを企図した」という。本判決以前の,S―58.6.28〈し 酒類/免許拒否(経営・需給)/取消〉青森地判は同旨。 イ)経営能力要求テーゼ  S―58.6.28〈し酒類/免許拒否(経営・需給)/取消〉青森地判は,国家財政上重要な酒税収入 の確保を図る「目的を達成するためには,酒類が製造されてから消費されるまでの間における酒類 の流通及び代金の回収が円滑に行なわれることが重要であり,これを無視すれば酒税の確保に大き な影響を与える。そして,製造者から販売業者を経て消費者への酒税の転嫁をスムースにして積極 的に酒税の確保を図ることを目的とする免許制はある程度の経営能力がある者を対象とすることが 要求される」,酒税法 10 条 10 号は,「免許を付与するための要件として,申請者に対し物的,人的, 資金的な面から経営能力があることを要求した」という。 ウ)適切な需給関係の維持テーゼ  S―58.6.28〈し酒類/免許拒否(経営・需給)/取消〉青森地判は,「一定地域内における酒類に 対する需要量は,当該地域に存在する販売場の数にかかわりなくほぼ一定していると考えられるこ とから」,酒税法 10 条 11 号は,「適切な需給関係を維持し,もって酒税収入の安定的な確保を図ろ うとした」という。 エ)致酔性は付随的効果テーゼ  S―59.7.19〈し酒類/差押(無免許)/取消・無効確認〉東京地判は,「免許制度を採用した結果, 致酔飲料としての酒類の販売に対する規制が加えられ,飲酒運転及び飲酒による交通事故等の防 止,アルコール中毒者の発生・増加の防止並びに未成年者の飲酒の禁止等社会秩序の維持,国民保

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健衛生の確保に寄与するところがあることも,当裁判所に顕著な事実であるが,これは,右免許制 度を採用したことに伴う付随的効果として理解されるべき」という。 【た煙草販売】 ア) たばこの専売制は国の財政上の重要な収入を図るとともに,一般国民の日常生活における必要 に応ずるテーゼ  S―59.3.13〈た煙草小売/不指定(専 31 条 1 項 3 号 4 号)/取消〉)/取消〉青森地判は,上記テー ゼをいう(前出(1)「公共の福祉/有罪,処分適法」アプローチ(C)(2)【た煙草販売】ア)参照)。 イ)製造たばこの販売を一般国民の自由に委ねた場合に予想される弊害を未然に防止テーゼ  S―59.3.13〈た煙草小売/不指定/取消〉青森地判は,「製造たばこの販売を一般国民の自由に委 ねた場合に予想される弊害(たとえば,時と場所による販売価格の高低,業者の買占めによる価格 の高謄,製造たばこの集中,偏在等)を未然に防止して,製造たばこの販売等について専売制を採 用した趣旨,目的を円滑に推進するために必要不可欠の制度である」という。 ウ) 国の財政収入の確保を図り,併せてたばこの品質及び価格を一定に保ち,国民一般の需要を均 等に満たそうとするテーゼ  S―59.3.13〈た煙草小売/不指定/取消〉青森地判は,「予定営業所と既設のたばこ小売人の営業 所との距離について標準距離を設定してたばこ小売人の適正な配置を図るとともに,たばこ小売人 の規模を一定のもの以上に保ってその零細化を防ぐことによって,たばこの流通,販売等に要する 経費を節減し,たばこ販売等につき専売制を採用した主目的である国の財政収入の確保を図り,併 せてたばこの品質及び価格を一定に保ち,国民一般の需要を均等に満たそうとする」という。 エ)激変回避(社会福祉的な配慮)テーゼ  H―5.6.25〈た煙草小売/不許可/取消〉最 2 判は,「たばこ事業法 22 条は,たばこ専売法」「の 下において指定を受けた製造たばこの小売人には零細経営者が多いことや身体障害者福祉法等の趣 旨に従って身体障害者等についてはその指定に際して特別の配慮が加えられてきたことなどにかん がみ,たばこ専売制度の廃止に伴う激変を回避することによって,たばこ事業法附則 10 条 1 項に 基づき製造たばこの小売販売業を行うことの許可を受けた者とみなされる右小売人の保護を図るた め,当分の間に限り,製造たばこの小売販売業について許可制を採用することとした」という。  本判決以前の,H―2.1.26―79〈た煙草小売/不許可/取消〉大阪地判,H―3.4.16―79〈た煙草小 売/不許可/取消〉大阪高判,本判決以降の H―15.11.20〈た煙草小売/無許可/刑〉福岡高宮崎支 判,H―20.5.23〈た煙草小売/不許可/取消〉東京地判は同旨。 オ)過当競争から零細小売業者の経営規模がさらに縮小し,経営の悪化,共倒れすることを防ぐテーゼ  H―2.1.26―79〈た煙草小売/不許可/取消〉大阪地判は,「距離基準によるたばこ小売販売業への 参入規制は,たばこ専売法時代の小売人指定制のもとでも行われ(たばこ専売法 31 条 1 項 3 号等), たばこ事業法のもとでの小売販売業許可の欠格事由中の距離基準はこれを引継ぐものであり,たば こ事業法附則 10 条 1 項で,同法施行の際現に小売人である者は,施行日において同法 22 条 1 項の 規定による小売販売業者とみなす旨規定したことと相俟って,本件基準による小売販売業の許可制 限は,専売制度廃止に伴う激変を回避して,過当競争から零細小売業者の経営規模がさらに縮小し, 経営の悪化,共倒れすることを防ぐという」「小売販売業許可制の目的をもっとも直截に実現する ものと評価することができる」という。 カ) 最高裁平成 5 年判決以降,適正配置規制の立法の基礎を成す事実が著しく又は明白に変化した ものと認めることはできないテーゼ

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 H―20.5.23〈た煙草小売/不許可/取消〉東京地判は,H―5.6.25―79〈た煙草小売/不許可/取消〉 最 2 判「以降,本件不許可処分がされた時までにおいて,適正配置規制の立法の基礎を成す事実が 著しく又は明白に変化したものと認めることはできない」という。 【ゆ輸入関係】 ア)養蚕農家のための保護政策テーゼ  S―59.6.29〈ゆ輸入(繭糸)/制限/国賠〉京都地判は,「繭糸価格安定法は昭和 26 年に生糸の 輸出の増進及び蚕糸業の経営の安定に資するため繭及び生糸の価格の安定を図ることを目的として 制定され,本件条項もまた右目的を達成するための措置の一環として立法化されたものであって, 本件条項は外国製絹製品などの輸入圧力に対処するために,福祉国家的理想のもとに,養蚕業及び 製糸業,とりわけ自然的,経済的に悪環境下にあって,自助努力のみでは解決し得ない養蚕農家の ための保護政策としての法的規制措置であった」,「本件条項による一元輸入措置及び価格安定制度 の内容,程度,及びその影響に対する代償措置,特に本件条項立法後その運用面において絹業者に とって有利な改善が行われており,今後もなおその改善が行われる余地があること,しかも,わが 国の絹織物生産が輸入絹織物などの無秩序な圧迫により重大な損害を受け又,受けるそれがある場 合には,実際上はなかなかの困難を伴うであろうが,法的にはガツト 19 条による緊急措置として, 関税の引上げや輸入の制限,停止などができることになっている」という。 イ)国民経済の発展と国民生活の向上を目的とする石油業法を補完テーゼ  H―2.3.29〈ゆ輸入(石油)/登録拒否/取消〉東京地判は,特石法が「石油の安定的かつ低廉な 供給の確保を図り,もって国民経済の発展と国民生活の向上に資することを目的とする石油業法を 補完するものとして,特定石油製品の輸入を円滑に進めるための暫定措置を定めたものであること からすると,右暫定措置の一つである本件登録制度は,社会経済政策上の積極的な目的のための法 的規制措置である」という。 ウ)供給不足に対処テーゼ  H―2.3.29〈ゆ輸入(石油)/登録拒否/取消〉東京地判は,「1 号要件を定めた理由は,特定石油 製品の輸入に当たり,石油製品の連産品特性及び石油製品貿易市場が未成熟であることから生じる ことが予想される一部石油製品の供給不足の事態」「に対処することにある」という。 エ)品質管理テーゼ  H―2.3.29〈ゆ輸入(石油)/登録拒否/取消〉東京地判は,国会における 3 号要件の審議において, 「国内の品質基準に適合しない特定石油製品が輸入された場合,消費者が購入時に品質を判断する ことはその性質上極めて困難であり,それが国内に出回れば害悪が発生するおそれがあるが,輸入 に当たり品質の規制を行い,不適合品の輸入を制限し,適合品のみの輸入を認めるものとすると, 品質の異なる外国製品を排除することに終わってしまい,積極的に特定石油製品の輸入を図ろうと する特石法の目的を達成することができないので,特定石油製品の輸入を円滑に進めるため,輸入 すること自体を認めた上,輸入業者による品質の調整が行われるようにすることにより,国内の需 要として定着させることにした旨の説明がされ」た,という。 (3)司法哲学 ア)社会経済政策分野での立法府尊重の司法哲学  このアプローチは,S―47.11.22〈こ小売市場/無許可/刑〉最大判が,「社会経済の分野において, 法的規制措置を講ずる必要があるかどうか,その必要があるとしても,どのような対象について, どのような手段・態様の規制措置が適切妥当であるかは,主として立法政策の問題として,立法府

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