アジ研ワールド・トレンド No.245(2016. 3)
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組織の研究成果物をインターネッ
ト上で提供する「機関リポジトリ」
の普及によって、学術情報の入手が
容易になってきている。その分野に
おいて、ブラジルは世界レベルでも
高水準の発展をみせている。
世界各国の機関リポジトリをラン
キ
ン
グ
形
式
で
紹
介
し
て
い
る
“Rank
-ing
Web
of
Repositories
”(
http://
www
.webometrics.info/
)
を
み
る
と、
アメリカ、イギリス、スイス、スペ
イン、フランスなどの先進国のリポ
ジトリが上位を占めるなかで、ブラ
ジルのものが上位一五件以内に二件
もランクインしている(日本の最高
位
は「
京
都
大
学
学
術
情
報
リ
ポ
ジ
ト
リ
」
の
四
四
位
)。
こ
の
ラ
ン
キ
ン
グ
は、
独自のドメインを持ち、科学的な文
献を主たるコンテンツとして収録し
ているリポジトリを対象とし、ウェ
ブ
ペ
ー
ジ
や
PDF
, DOC
(
X )
, PPT
(
X )
,
(
E )
PS
形
式
の
フ
ァ
イ
ル
の
Google
で
のヒット数、参照元ドメイン数、直
近
五
年
間
に
公
表
さ
れ
た
文
献
の
Google Scholar
でのヒット数といっ
た、アクセス開放性に重きを置いた
基準で評価を行ったものである。ス
ペインの「科学研究高等審議会」の
下部組織である「サイバーメトリッ
クス・ラボ」が主導してランキング
作成を行っており、機関リポジトリ
のランキングの他にも、世界の大学、
病院、ビジネススクール、研究セン
ターのランキングも公表している。
リポジトリのランキングの上位にラ
ンクインした二件は、サンパウロ大
学とリオグランデドスル連邦大学の
もので、いずれも名高い国公立大学
である。
ラテンアメリカのみのランキング
や、BRICSのみのランキングも
公表されているが、それぞれにおい
て、上位一〇件の半分以上をブラジ
ルの機関リポジトリが占めている。
上位にランクインしたリポジトリに
は、前述の二大学やサンタカタリー
ナ連邦大学、パラナ連邦大学、ブラ
ジリア大学といった国公立大学のも
のの他に、ブラジル農牧研究公社の
ものも含まれる。
多くの機関がリポジトリを提供す
るようになり、文献へのアクセス開
放性が向上しても、それらの文献を
必要とする人がその存在を知ること
ができなければ意味はない。そこで、
機関リポジトリ等で提供される文献
情報を集約し、一括で検索を行うこ
とができる「ポータル」サイトの存
在も、機関リポジトリと同様に重要
であるといえる。前述した機関リポ
ジ
ト
リ
の
ラ
ン
キ
ン
グ
で
は、
Google
や
Google
Scholar
と
い
っ
た
著
名
な
ポータルサイトとの連携度合を指標
として評価が行われているが、その
ランキングが提供されるサイト内で
は他に、学術情報に特化したポータ
ルサイトのランキングも公表されて
いる。
ポータルサイトのランキングにお
いても、ドイツ、アメリカ、スペイ
ン、フランスといった国から提供さ
れるサイトが上位を占めるなかで、
ブラジルの「科学電子図書館オンラ
イ
ン(
SciELO
)」
が
第
二
位
に
ラ
ン
ク
インしており、先進国と肩を並べて
いる(日本の最高位は科学技術振興
機
構
が
提
供
す
る
“J-ST
AGE
”の
四
二
位
)。
こ
の
“SciELO
”は、
サ
ン
パ
ウ
ロ
州研究支援財団とラテンアメリカ・
カリブ地域健康科学情報センターと
の協同で、ブラジル国立科学技術開
発審議会の支援を受けて設立された
ポータルサイトであり、五七万を超
える文献が収録されている。
地域的には、ラテンアメリカやカ
リブの各国の他、ポルトガルもカバ
ーしている。それぞれの国ごとに独
自のドメインが設けられており、さ
らにはそれらを集約するサイト(ポ
ータルのポータル)にも独自ドメイ
ンが与えられている。ポータルサイ
トのランキングにおいても、先に述
べたリポジトリのランキングと同様
に、独自のドメインを持っているこ
とが評価対象となるための条件であ
る
が
ゆ
え
に、“
SciELO
”は
ド
メ
イ
ン
ご
とに個別に評価されている。二位に
ランクインしているのはブラジルの
ページに与えられたドメインである
が、他にも一〇位にチリ、一五位に
アルゼンチン、一八位にメキシコ、
二〇位にコロンビアの各国のページ、
そして一四位には前述の「ポータル
のポータル」ページがランクインし
ており、それらを仮に一本化すれば、
一
位
の
“ResearchGate
(
ド
イ
ツ
)”
を
抜いて最もアクセス開放性の高いポ
ータルサイトと考えられるかもしれ
ない。
コンテンツとしては、カバーする
地域の各国で刊行される学術雑誌の
記事が主に提供されているが、加え
て
ブ
ラ
ジ
ル
に
つ
い
て
は、
学
術「
図
書」の電子提供も行われている。図
書も含め、提供されるコンテンツへ
のアクセスは基本的に無償で、ブラ
ジルにおける学術情報のオープンア
クセス化推進の大きな原動力となっ
ている。
ランキングをみても明らかである
が、日本は学術情報の公開について
は(先進国にしては)後れをとって
いる。最近になって、政府主導で研
究成果の公開を促進しているが、こ
の分野におけるブラジルの発展度合
は、日本にとってのモデルケースと
なりうるかもしれない(以上、ラン
キングの情報は一月七日現在)
。
(
の
り
た
け
り
ひ
と
/
ア
ジ
ア
経
済
研
究所
図書館)
オープンアクセス先進国・ブラジル
則竹
理人