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随想西行遍歴歌

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Academic year: 2021

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(1)

(春) (春) (2)の歌 J 、― (4)の歌 .‘.

春) 吉野山を遠望 て梢の桜樹を見ての作である。語法的には、 ・・・より・・・(に)な る」 つまり、 起点ー結果という明快な語法であ る。 身より心があくがれ出るという心情は、 激しい自然探訪への うづきであろう。 「見し・身にも.にき」というナ 行音の多 用もその旅情の深切さを高めていろ。 (春) 四十才壮年期の作か。 「ほとけ 」と「後の世」 が迎動し、西行 自身の成仏後の影像が志向されていろ。 「たてま つれ」は謙譲語 だが、 自己を客観化していて面白い。 7�三句と四 ・五句の倒屈 は類型的だが 生涯、月・旅そして花を愛し続けた歌人だけに、 「桜の花を(供えてほしい)」との望 みは、 もっともな切望とい えよう。

烏羽院に下北面の武士として仕えた青年佐藤義清が、失恋か政 争かその因はわからぬものの、 二十三オにして突如出家返世した。 以下、 彼は、半世紀にわたって、 高野・平泉•四国などを姻僧と て遍歴の旅を祝けるが、 ここでは、 その足跡に沿っ うま まに選んだ二十首について自由に感想をまとめてみた。 (1)の歌

随 .

西行逼歴歌

韻律上、 第四句の「て・ ・て·と」のTU音の重暦感が すばらしい。桜花への執若、 その芙への妄執がすべての煩悩をこ えたはずの わが身に更に残ろ、 そうした自己発見への驚嘆がいと おしく想い起されていろ。 (3)の歌

(2)

さ そ ふ 夜 (秋) まず、 これも中年の四十代の作らしい。 「面はくは」という譜虚な顧望に心打たれる。 しても、 とに一風変っ た表現を持つ。 「花のした、 きさらぎ の、 もちづきの」と迎体格「の」 の三連対は、 読者の心を大きく 揺ろ。 しかも、時は春二月の桜の万開時、 しかも夜、 望月がその 紅粧をいろ どろ。 その頃に、 釈迦の入滅に日を併せて死なんとい う。月・花の上に死を葵で んとした遊楽僧西行 の面目がいかにも 躍如とした秀歌である。 以上四首を”起 “の編 する。 (5)の歌 ヽ» カ こ それに 構図から入る。 おほか たの(野づら一面におく)露にはー何が なったのか。 それに対して、 恋に破れた袂に宿ったのは1(ほか ならぬ)わが涙であ する。 叙景と叙情の対殴・触合が見事に 一首に形 象され ていろ。前句のつなるな らん」 いう独白潤、後句の「 ・・・な りけり いi詠嘆をこめた確認の隣べも注目したいとこ ろで ある。 (6 ) の歌 (秋) 自分の性情を西行 う告臼する。 でさえ、 心が浮遊し、 放浪の衝動しきり、 その自分を更に秋の夜の月が、 愁いの園に、 悲しみのまどいへと自分をいざ なう 僧体の浅慮の反省か、 余りにも美しい自然英へ の哀訴か、 いず れにしても、 二律の背反に苦しむ生身(しょうじん)を赤裸々に 開陳する姿はわれわれを打つ。 (7)の歌 出家直後の作という。財カ・美ぼうに恵まれた二十三オの佐藤 義消は、 一躍‘ 悟適の達人に身を変じたわけではなかった。 この 歌に も「捨てて去った」「憂き世」「留ま ろ心」と綿々たる俗世 への未純が渦巻いている。 この時の西行には、 浮世への執着が色 濃く残 てい ろ。 それ故、 名月 よ冴え渡ろなかれと いう は、 彼にとって宗教的イデーであり、 花は 芸術的イデーだといわれる が、 この歌ではその月 そ、 き世を最も慕わしく想起させ ろ媒 介なのであっ た。 (8)の歌 (秋) 宇宙の心音に耳澄ます詩人の本領が この歌には ある。 陰暦七・ 八・九の秋の日々 を来る日も来る日も作者はき りぎりすやこおろ ぎの嗚き声と共に過として きた。 だが、 長月 も二十日過ぎの今日

i

ら 月

(秋)

(3)

-108-こ (冬) 遁世時、つまり 二十三オの冬か。雛俗の道は広き門にあらず、 それは苦悩と憂愁に彩られた 冬の季節であっ た. 「わりなしゃ」、せんないことだ、 わり切りたいが、 辺理の弁 別にもとるとする初句の詠瑛にまず注意しよう。 竹を割って連ねた寛の水、 それはすぺなく氷り切ってしまった。 春来れ ば開花を待ら、花咲かば風情を惜しんで散 るをいとった 慕わしい俗世/ええままよ、 その浮世に未錬を持つまいと一旦は れし この頃、 その数はへり、 めっきり声音も弱くなってき た。 自分にと とっての今年の秋の日々は、思えばこ の虫た と共にあったのだ、 そのまさにと絶えんとすろ今、 自分の生命のあり方を虫の生命と等 置して思い覺っていろ。 (9)の歌 昔、 山岳部顧問に就任時、 類似の体験があった。 山中ー薄明ー 時雨ばら つく杉林の中で、 次第につのりいく嵐の 音を聞いた この幽陪の林間で夜を迎えるのかとの寂蓼感と雨滴 の音以外にない静寂さが深く心をおお った。 その追体験をもって この歌の評に代える。 (10)の歌 (冬) リズムの清澄さは、歌柄の余情をも支配する。 下句の「・・・あ らば」「…すらん」のひびき、 上句の「…れつる

...

すなり 」の^ーモニイが、 全体を晏一色の気品あろ歌閲IC染 め上げている。 今宵一夜、 あの晩鐘の音が聞けるか、・・・ああかすかに聞えてき た…明日までわが命保てば、 又明日も・・・と、 わが魂の延引をひそ かに希うのである。 この歌にモンテーニュの随想録の小節を想起 するのは、筆者のみではあるまい。 (12)の歌 (雑) 新古今のあまたの歌との相OOを迎想さす歌だ が、 カラフルな暮 (雑) (ll)の歌

`•

契った自分、その自分 が、寛の氷が 解けぬ限り春は来ぬ、早くこ の結氷を解かして春が・・・とつい浮世人なみに春を待たんとする。 人間の弱さ、 修行の優柔さ・・・それらを断ずる前に\人間的なぁ まりに人閥的な苦行僧西行の風ぽうをこの歌に見て、” 承“の編 六首の結びとする。

(4)

刈田の地面にそれと目立たぬ茶色っぼい鶉も餌を あさ る。 刈株 から うす青いひこばえがわずかに延びる。それを照らす三日月の 月明もほのかである。荒廃 と生存、 無相と有相の混在した純叙景 の秀歌である。 (13)の歌_

二十六才頃の第一.回奥州紀行の歌とされる 0 もる(洩るー守る) の掛詞、 「留むる」の「関」との緑語など知的技巧に伴う修辞が 目立ち、後年の同旅行の秀歌「年たけて ... 」などの品位に乏しい。 彼の理想の歌境が、 「対 象詠法でなく、対象に迫る 自己の心 映像」とさ れる が、そうした片鱗はこの歌には ない。 荒廃した無人の関を月 が守るー人心を、名歌吟に思わず足を留 めさす・・・そう した言葉の表面にある感懐が、 かえ って読者の共鳴 損な うといった若年ゆえの技柄不足をよみとってもよい。 (14)の歌 関 む 見 分 屋 色にあふれて いろ。 を 心 (護) (雑) 二十五オの作とされる。 衣川に西行 は何を見たのか。 サスベンスもどきの興味をよぷが、 義経滞在期ともダプり、 奥州藤原氏一族の繁栄、更に前九年の役(雑) 五十代前半の作 か。讃岐で崇徳院の跡地、善通寺の弘法大師遺 跡などを経て、 その傍に草隠 を作 り、更に土佐行脚を思い立って (こ れは果さず)作ったとされる作である。 西行 にとって旅と は何であ ったか。 芭蕉の場合と同様、余りに もロマン的に過ぎるとらえ方も現実をとらえて ないが、 型僧(ひ じりそう)としての仏道行脚だったことの ほかに、 月・花さらに 断ちがたい人 閻性を求めての精神祐径だったことも事実であろう。 「府並ぺん 冬の山里」と別の歌に読んだこの歌人は 得の 孤愁を いと土胸人愛の歌 人だった ともいえ よう。「松はひとりに :.」には、 人間愛の極致に近い心情 がただよう。 「ここをまた」、今までも再三再 四、 しば らくの交流、 数年の 逗留でのいつくしみ合いも不本意に終っ たが、 又又 今回もといっ r-松 に な ら と す の舞台など、歴史的景物(スペクタル)は多かったにちがいない。 下句の「・・・しも」に典型され る詠嘆調も やや 生硬だ し、その他、 「凍みー染み」「衣・・・箱たる」「河…渡たる」など修辞遊びの傾 向が散見されると思う。 それに しても、 「取りわきて

1

ぞ…渡る、 ー来たる・・・しも」の接点に多く徴される、 男性的量感がこ の歌を 丈(たけ)高い印象深い作としている。 (15)の歌 を ら か

(5)

-110-F \ 宿 (恋) 主題は秘恋 に属そう。天井はるかかなたで無縁の世界で 輝い いた月光。 なんとそれが、 実らぬ恋のために袂 どにぬらし 雲 ペ し 恋) まず上の句。 初句は恋 の呻吟への嘆声である。 更に、接読詞「 よしゃ 「あらばあれ 」の放任形、など 語の階調をこ

そ IC 見し月の あはれあはれ この世は よしゃ

(17)の歌 なほ止( とど)まらじ (雑) 出家前の、 二十才過ぎの眉目秀麗のも ののふ西行の騎馬行とさ れるが、 その疾走感覚、 スピード感は一続してまことに快く、私 の好きな歌の一っである。 伏見|宇治の岡の屋( ええ 、ここで 思案したが)ー日野(まで思 い切って疾駆しよう。) 今度求め この駒、 なかなか元気だ、駒乗試しにはもってこい。 「過ぎぬ、 ... 止まらじ、・・・行きて、・・・試みん」傍点の助辞に留意されたい。 その律動感、 その青年武者の吐く呼吸、 山家集中に珍しい流動感 溢るる秀句と評して、 以上六首の”転“の編を結 ぶことにする。 た深い嘆息が聞えてくる。 更に、 「うか れ(い.づ)る心」は、 彼の本性 とで もいうべき用語だが、出家僧としての自卑・自嘲の ひびきが痛ましくこもってい るよう に思えてな らない。 自己の弱 点を知る者こ 、十全のヒューマニストたりう るという とばを この歌の注解のヒントに付しておく。 (16)の歌 恋) これは、又まこ とに屈折した恋情の表白で ろう。 まず、我を 数なら ぬ身と規定する。 つまり、 高貴な女性に類いせ 身と する そして、及ばぬ恋と は思いつつ も、懸想なし あきらめ、恋情自 体をわが罪とはすまいという。 次に、 情を相手に思い切ってぷ っつけ よう 、で 、最後に 、それが届かぬ恋に終れば、 嘲笑されよ うと、わが身の不運としてあきらめようという のである。 ここには、 身分違いの相手への恋を、 はじめか ら、下賤な身の 及ばぬ恋とはせず、 懸想の心情を相手にぶつけ、まともな対応を 得られねば あき ようという、 自主的積極的な恋の姿勢がある。 下句の係り詞の使用も大胆である。 (19)の歌 を し さもあらばあれ

も ・つ

てしまったわが涙に影を映していたとは・・・という だ。 結局の「 ... は」が初五に応じてい る。 この歌、 題詠歌ら く、 年、例の百人一首に も入っている「 なげけと て月やはもの を…」と 組み合わされている秀歌である。 (18)の歌

(6)

けれど (雑) 上句は 、まさに新古今の妖艶の色胴であろう 。恋しい人と契る と見た夢、その夢は とはに党めないでくれという。 下句は、 法にいう「長夜の眠り」をよみこんでいる。 いつま でも悟りえない惰眠がこれで、 理非の分かぬ境界に迷・いこんでい ては 出家として申し訳けないという。 全体に、 仏法の背理への自省と わが本能に快い恋の燃焼への甘 いいざないとの葛藤である。 かくして、 恋の歌中心の四首をもって”結"の編も終わり、 て二十首に及ぷ西行遍歴歌のアンソロジーも一応終結し たが、 四季.恋・雑の歌すべてを通じて、今より八百年前 世勁乱期 を生きた 西 行ー義消の、自然・旅情.恋愛・信仰などの錯綜した、 和歌に形象された人生へ 発問は、 時代と共にいよいよ大きく、 逢 ふ と り 見 は ・し わしての、 恋の痛苦への受容が前半で ろう。 下句 の「かくや」の「ゃ」を反語 取るか、疑問乃至詠嘆に取 るかで、後半の世界が決定する。 諸資料によると、 安易な反語に は取りがたく、来世も恋の苦業より逃れがたいが、現世 のそれは 地双の資め苦を思わせる シンイ(※いかり)のほむらを党悟せ ねばならぬとする。 遁世の佃 が、かかる 人間性の悲しさを三十 一文字に詠んでいる姿に 、西行 歌の位相の奥深さを思うのである。 (20)の歌 党めであれな 語文 国文臼百合 国文研究と教育 第十八号(都留文科大学) 第四号(佐賀竜谷短期大学) 第二十七集(竜谷大学) 第二十集(山梨大学) いよいよ店らか に現代人 耳染を打ち続けていろといえる。 西行の、 陸奥•四国への週歴は、彼の人生道捏の深化の半世紀 り、われわ れも又、各自の人生の角角で、数多の西行の歌に 耳傾けていきたいと思う。 (S五七・七・ニ三 1Jヽ'94r\,J,\rt9,1J9ート\',tートーしr卜�,4tr、’,94ー'J\,’�/1卜4,’卜4,i�9トート;9ー �9,9t9.94.rヽJ\'_,`’

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