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窒素固定の遺伝生態

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(1)

窒素固定の遺伝生態

著者

東北大学遺伝生態研究センター

雑誌名

IGEシリーズ

19

ページ

1-77

発行年

1994-03

URL

http://hdl.handle.net/10097/49105

(2)

□6匿シLJ-ズ可惨***

窒素固定の遺伝生態

lG〔

東北大学遺伝生態研究センター

(3)

I GEシリーズの発刊にあたって

地球上の環境は,今,かつてない大きな問題に当

面しております。世界各地で進行している生態系の

急速な変化のなかには,人間生活に深刻な影響をも

たらす可能性のあるものが,多数含まれています。一

方,人間の活動が宇宙空間へと拡がるにつれ,地球

外生態系の構築が,新しい課題として登場しつつあ

ります。生態系の崩壊を防ぎ,より豊かな環境を創

造するための科学的努力が,今日ほど強く求められ

ている時はありません。

本研究センターは, DNA分子技術を中心に遺伝

子的段階にまで到達した生物研究の諸成果を生か

し,生態系における生物の生活を一一一一層深く解明し,新

たな人間環境の創造に貢献することを目指しており

ます。いうまでもなく,この課題はきわめて学際的

であり,多分野の研究者との相互交流と協力によっ

て,はじめて達成されるものであります。本研究セ

ンターでは,ワークショップによる研究者間の討論

と意見交換を重視するとともに,その成果をより多

くの方々にご利用いただく出版活動にとり組んでお

り ます。こ こに発刊しますIGE(Institute of Genetic Ecologyの略)シリーズも,こうした努力

(4)

の一環であります。

本シリーズの内容は,多岐にわたる可能性をもっ

ておりますが, 3つのタイプに大きく類別されるだ ろうと考えております。すなわち, (i)特定のテー マ,又はトピックについての解明に関するもの(* 印を付します), (ii)特定のテーア又はトピックに

関する最新の文献,実験法の紹介に重点をおくもの

(**印),そして(iii)新しい可能性を求める学際的 交流,対話を試みるもの(***印)であります。

このIGEシリーズが,多方面の方々のお役に少し

でも立つことを願って,発刊の辞とします。

1989年3月

東北大学遺伝生態研究センター

(5)

はじめに 服部  勉---窒素固定微生物の多様性とその利用

渡辺  巌 熱帯のBradyrhizobium属根粒菌の

遺伝的多様性

安藤象太郎・友岡 憲彦・村上 敏文 横山  止

熱帯と温帯のダイズ根粒菌根粒形成遺伝子の特性比較

横山  正・安藤象太郎・村上 敏文---窒素固定関連遺伝子とニトロゲナーゼの

活性発現とその調節

魚住 武司 共生窒素固定菌のMolecular Ecologyをめぐって -Hさんへの手紙-南沢  究 65

(6)

はじめに

服部  勉

人気中o)窒素ガスの固定は,土壌微生物のもっとも注E=jlべき働きと考 えられ,研究されてきた。こうした働きを営む微生物は,研究方法の制約 もあ-)て,長い間ごく限られたもcj)だと考えられがちであった。しかし今 世紀後半アセチレン還元法が考案され,さらにnlf一遺伝fU)存在をDNA プローブにより検Hけるノj法が開発されるに至り,窒素固定能をも-)微生 物o)リストは,急速に拡大した。そJ-)結果,地球卜でU)′f=.物進化過程にお ける生物的窒素固定J)意味が,より人きな意味をもつようになった。光合 成と窒素同定とは,生命進化の初期の微生物において, i)-)とも普遍的に みられた同イヒ過程ではなかったかという考えも論議の対象とff:'ている。 一万, mf一遺伝子や根粒菌U)共生関連遺伝子に関する研究から,最近種々 の生息地域に特異的なDNA塩基配列構造の存在が,注目されている。この 事美は,マクロ的牛物分類学において生態型とよばれる分化との間に何ら かU)関連件を想定させる。勿論,これらu)諸問題は今後U)より精密,より 広範な什事から結論づけられるもU)である。 本研究センターは,生態系における′ト物生活の基礎を遺伝f構造との関 連で解明することを,ひと//)の目標においている。こうしたFj標に沿うも のとして,今回U)ワークショップを企画した。また,その成果をより多く a)方々にお伝えすることを願って, IGEシリーズ本Pj・を出版するもU)であ る。

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窒素固定微生物の多様性とその利用

渡 辺   巌

1.微生物の多様性とは

1992年ブラジルで開かれた国連環境会議で採択された生物学的多様性

保護条約は生物学的多様性の保全とその持続的利用という基礎および応用

生物学者に関心のある目的に加えて遺伝資源から得られる利益の公正で公

平な分配という政治的経済的な目的もあげている(第一条)。生物学的多様 性とは単に生物の多様性のみならず,生物を養う環境の多様性も意味して いる。微生物は遺伝子資源として重要であり,条約(第十九条)でいうバ イオテクノロジーの扱いとその成果の分配に深くかかわってく-るであろ う。微生物学的多様性という場合も,微生物の多様性のみならず,微生物 のすむ環境の多様性も意味している。臼で見える生物の多様性はとらえ易 いが,目で見えない微生物の多様性は"見方"の多様性によって決まってく る。 (図1) 本来多様だが, "見方"が多様でないとあたかも単純であるかのように みえる。培養方法,生理特性の検索法によってとらえられる多様性は異なっ てくる。さらに最近人気のあるDNAの塩基配列から多様性を見る場合は どんな遺伝子または配列を見るかによって多様性の結果は異なってくる。 この点を微生物の多様性を考えるにあたって注意しておく必要がある。 三毛入学生物資源学部

(9)
(10)

窒素固'jiZ微生物の多様性とその利用  5

2.窒素固定菌はあまねく存在する。

1888年マメ科植物o)空中窒素固定作用がある種の生き物によることが Helriegel & Wilfathによって見付けられてから50年くらいは代表的窒 素固定菌は好気性のAzolobacler,嫌気性のClostridiumにらん藻,光合成 細菌くらいであったが, 1960年無細胞系による窒素固定が可能になり,つ いでニトロゲナーゼによるアセチレン還元が窒素固定の測定法に使われて から,窒素固定菌のリストはどんどん増えた。いまでは100以上の属でみ られるようになった。したがって窒素固定蘭は原核生物と古細菌に広く存 在するというのが今日の常識となっている1・2)0 アセチレン還元法とともに無酸素または1%以卜の低い酸素ガス濃度で

窒素固定活性を測定したのが窒素固定能力を多種類の細菌で検出できた原

因である。従来は無窒素培地で生えてくるもののなかから窒素固定菌を分 離していたが,窒素を含む培地で生育してきたものをかたっぱしから拾い その窒素固定能力を調べると言う方法を試みたところ水稲の根圏から分離 される南の90%近くが窒素固定菌であった3)0 窒素固定歯が特殊な細菌と考えるのは"EscheriLh'a colt"中心主義とも いうべきで1),窒素固定能力の検定(極めて易しい)が通常の生理テストに 入っていないので窒素固定菌をかなり見落しているのではないかと Y。ungはいっている1)。 16SrRNAの塩基配列による細菌の系統発牛樹の family15のうち少なくとも10のfamilyに窒素固定菌が見られる(図2)。 窒素固定の遺伝J'・,とくにニトロゲナーゼの人きな蛋白(dinitr()gen reductase)のαサブユニット,βサブユニット,小さな蛋白(dillitrogenase reductase)をコードする/mfD, mfK, mf H,さらに窒素固定遺伝子オ ペロンの調節遺伝子nlfAO)塩基配列を比較したところそcJ)類縁関係は 16SrRNAの塩基配列による細菌の系統発生関係ときわめて相似する関係 にあることがわかり,ニトロゲナーゼの遺伝子は細菌の系統発乍進化にと もなって進化してきたといえそうである1・4)。

(11)

green nonsulfer

Deinococcietc.

Spirochaetes

庶『思思皿一STn且正麿『

Bacteroides/Flavobacter

Chlamidiae

Planctomycetes

『e『皿且取乱電位e『且乱 T血乳皿皿⑬勉乳e仕e『豆乳 Ⅲem⑬勉乱C態度『且乱

Megasphera

ey乳皿⑳勉乳如思『且乱

6乳皿TPy且⑬払乱離e『 野『朗㊤⑥b El威旭血巴 [対2 貞17・:細菌の16SrRNAによる系統発年分類と窒素固定繭の分布.卜線を 付けたグループに窒素同定菌が分布する。 Young`1'より訂If.作成。

(12)

窒素同左微生物U)多様性とその利用  7

3.窒素固定菌の多様性

(エネルギー獲得様式の多様性)多様性はまずエネルギー獲得様式から

みられ,好気性対嫌気性;独立栄養性対従属栄養性;化学合成対光合成と

微生物のエネルギー獲得様式のあらゆる形式で窒素固定菌がみられる。最 近Aeschynomene (クサネム属)の茎粒からの根粒菌が好気性光合成細菌 (らん藻も好気性光合成細菌であるが光化学系ⅠⅠをもっている)であるこ とがわかった5)。どんな様式であれ,エネルギーがえられれば,そのエネル ギーは窒素同定に使われるということである。 (酸素ガス耐性機構の多様性)酸素ガスに敏感なニトロゲナーゼが酸素 ガスで活性が失われないために好気性窒素固定歯はいろいろな方法で酸素 ガスから窒素固定系を保護している。嫌気的な反応である窒素ガス還元に エネルギーが必要で,好気的なほどエネルギーの生産効率がよいという矛 盾を微生物は色々な方法で解決してきた6)。 1)酵素転写での制御-低酸素下でmfAが転写され,ついで他の窒素 固定に関する 一連の遺伝子のオペロンが転写される。 mf Aは低アンモニ ウム下でも転写されるが,根粒菌のnlfAはアンモニウムにはあまり感じ ず,酸素によく感じるようになっている。 2)酵素の活性の制御一光合成細菌, A20Sf,irillum,おそらく一部のらん 藻ではニトロゲナーゼのアデ二ル化(不活性),脱アデニル化(活性)が酸 素ガスの水準で支配され,低酸素下で活性が現れる。 3)細胞内酸素濃度を下げる-そのほかいろいろな方法でニトロゲナー ゼが酸素で失活しないように細胞内の酸素濃度を卜げてし)る。 a)窒素固定暗にと/(に高い酸素f:で酸素呼吸を盛んにする (Azol()bacter ) 0 b)根粒組織中の共生的窒素固定薗-根粒菌と 一部のFrankiaでは菌 を取巻く宿主細胞中にヘモグロビンがあって共生歯に低い濃度の酸 素を供給する。 C)酸素の侵入の防壁となると思われる厚い膜で細胞表面を覆う(らん 藻の-テロシスト, Frankiaのvesicle)。

(13)

d)根粒では根粒の皮層細胞層に酸素の根粒内部への拡散を制御して

いる数層の細胞があるという。 4)酸素からの回避機構t)働いているo Azospirillumは柔らかい寒天培 地では表面より数ミリ下に生育する。また高い酸素下では好気性窒素固定 菌はしばしば凝集体を作り,細胞集団内部の酸素圧を下げる。 5)酸素発生をする光合成と窒素固定の両方をやらねばならないらん藻 では窒素固定の対酸素戦略はとても複雑なようである。基本的には両過程 を空間的,時間的に遮断することで矛盾を解決している。 ヘテロシストを持つらん藻では光化学系ⅠⅠのないへテロシストで窒素 固定を,酸素を発生する栄養細胞で光合成を行う。単細胞のらん藻は口中 光合成を夜間窒素固定をやる。また単細胞のらん藻のSynechococcusでは 細胞周期の段階で両者を分ける7)0 多細胞の非へテロシスト性らん藻Tricodesmiumでは細胞集団で窒素 固定をする・菌糸と光合成をする菌糸が分かれている。 非へテロシスト性らん藻ではまだ良く判らない事が多くこれからの課題 であろう。

4.共生的窒素固定系の多様性

原核生物の古典的3人グループ(Proteobacteria),らん藻(Cyanobacter-ia),放線菌(Firmibacleria)のなかには植物と共生をするものがあるo 細

菌では根粒菌(Rhizobium, Bradyrhizobium, A20rhizobium),放線菌では

Frankia,らん藻ではNostocに代表されるヘテロシスト性らん藻が共生的

窒素固定菌である。いずれも好気性窒素固定菌である。嫌気性窒素固定菌

で共生しているものはない8)0 相手となる宿主は根粒菌ではマメ科植物とニレ科のPwasponiaで,なぜ ParasponhIのような飛び離れた分類位置にある植物に根粒ができるのか わからないが,これをのぞけば,宿主の幅は狭い。Frankiaの宿主となるの は被子植物の8科24の属にまたがっている9)。らん藻では宿主となるのは 地衣類からコケ,シダ(アゾラ),ソテツ,それに被子植物のガンネラと植 物界のいろいろな位置にある植物が宿主となる。根粒菌, Frankia,らん藻

(14)

窒素固定微生物の多様性とその利用  9 捌釦こ共生の特異性が減少しているようである。これは共生機構にもみら れ,根粒菌,Frankiaでは共生歯の宿主侵入によって共生菌をかかえこむ特 殊な組織ができ,菌は宿主細胞内に侵入する。1種類の菌の宿主となる植物 の幅は根粒菌で一一一番狭い。らん藻と植物の共生の場合は菌をかかえこむ組 織構造は菌がなくてもあるし,ガンネラを除いて宿主細胞の外で共生をし ている。被子植物のガンネラでは共生菌の存在で宿主の組織にいくらかの 変化(細胞o)増殖促進)がみられ,歯は細胞内に侵入するなど被子植物の 他の共生系の方向に変化しているといえよう川)。

(共生南と宿主植物の進化)マメ科植物と根粒菌の関係では菌の系統発

生と宿主植物の系統発生に関連がみられるが,他の共生系では関連はうす いようである.宿主範囲からFrankiaはいくつかのグループに分けられ, これと菌の遺伝的関係はあるていど見られる。アゾラの類縁関係と共生ら ん藻の類縁関係にはかなりの一致がある11)。アゾラの共生らん藻は絶対共 生薗(宿主から離れた生活がない)であるということから共進化を支持す るむきもあるが,本来の宿主でない他のアゾラの種に人工的に共生させる ことができたので12),この人工的接種がアゾラのいろいろな種の間で行わ れないうちは断言はできない。

しかし宿主植物の遺伝子からみた系統進化の研究が菌のほうの系統発生

の知識におよばないので,全体像が判るまでもうしばらくの時間を要する であろう。現在では共生の両パートナーの共進化を全面的に支持するだけ のデータはない。

Rhizobium (Fast grower)はもっぱら温帯のマメ科植物からBrady-rhiZ()bium (Slowgr()wer)は熱帯のものからと考えられて一いたが,調査が 進むにつれFast growerは系統発生関係や生息地の異なったマメ科植物 の根粒から分離されることがわかった13)。従って根粒菌のこの2大グルー プとマメ科植物の系統発生とは関係ないといえる。もっともそれぞれの根 粒菌の種とその限られた宿主との間にはいくらかの系統発生との並行関係 がみられるが。根粒菌の宿主特異性に関与するnod遺伝子のうち構成的遺 伝子であるnod Dの塩基配列の類縁性はmf遺伝子ほど根粒菌の系統発 生分類とあまり関係していないので, nod遺伝子は根粒菌が分化したのち

(15)

水平伝達されたのではないかと思われる4)。ダイズ根粒菌Bradyrhizobium

jaf)onicumとRhizobium frediiが同じ構造の根粒形成因子(Nod

factor-fucose残基をもったacetyl-glucosamine重合体)を作ることもnod遺伝 子の水平伝達を支持しているようである14)0

(根粒菌とマメ科植物の多様性)マメ科植物と根粒菌の研究は人為淘汰

の進んだ栽培植物,とくに温帯産のものが中心に研究されているので,共 生関係の特異性が拡大されてみえてしまい,われわれの根粒菌の共生の知 識を偏ったもの'にしている。 マメ科植物(Leguminosae)はCaesalpinoideae, Mimosoideae, Papilionoideaeの3亜科に分かれる。マメ科植物の進化は Caesalpinoideae, Mimosoideae, Papilionoideaeの順におこったとい

う13)。根粒を形成する植物の割合はPapilionoideaeが90%, Mimosoideae では約80%, Caesalpinoideaeでは20%にしかすぎない2)。根粒形成が調 べられた種は全体の種の数のうちの1割くらいで,大多数のマメ科植物の 根粒形成がどうなっているのかよくわからない。熱帯に広く存在する Caesalpinoideaeの根粒の構造や根粒形成過程が調べられるにつれ,この なかには根粒形成の原始的な段階を反映すると思われるものがあることが 判ってきた。

教科書には根粒形成過程として根毛への根粒菌の付着,根毛の先の湾曲

と菌の侵入,感染糸の伸長,皮層細胞の分裂肥大,根粒組織の肥大と維管 束の分化,根粒菌の感染糸からの放出, Peribacteria membraneに囲まれ たバクテロイド形成,窒素固定の開始という順が書いてあるけれど,これ はよく研究されている温帯の作物について見られるもので,これ以外にい ろいろな型の根粒形成過程がある2・15)。根粒菌の細胞侵入からみると表皮細 胞の割れ目(枝根が表皮を突き抜けたところにできる場合が多い)からの ものや(ラッカセィ,水性マメ科植物の茎の表面にできる茎粒),根毛のな い表皮細胞の表面からのものがある2)。いずれも熱帯産のマメ科植物にみ られる。同じ根粒菌でも宿主によって侵入方式が違ってくるので侵入方式 は宿主によって決まるといえる。

(16)

根粒菌の感染糸から宿主細胞への放出もPwasponiaやCaesalpin-窒素固定微生物の多様性とその利用 11 oideaeのなかで根粒形成頻度の高いChamaecrisla属の根粒では明瞭でな

い16)。

(根粒菌の分類)最近16SrRNAの塩基配列, DNA-DNA hybridiza-tion, mf nod遺伝子の塩基配列などの分子生物学的手法を用いることに

よって生理的性質や宿主特異性からは判断が不明だった根粒菌の同定が容

易になり次々と根粒菌の新種が記載されるようなった17)。今後も新種の記 載は増えるかもしれない。宿主範囲の狭い菌が新種として名がつけられて いる傾向がある。いままであまり研究されていない植物や栽培作物のあま り研究されていない熱帯産のcultivarの根粒菌の研究が進めば,いろいろ な新種がでてくるであろう。しかしVtgna属をはじめParasponiaを含め 宿主範囲の広いByladyrhizobiumはcowpea miscellanyとされたままであ り, Fast growerで宿主範囲の広い菌はRhizobium sp. NGR234 (MPIK

3030)とされたままである。

とすると根粒菌の種は宿主の特殊化(栽培化)や環境の特殊化(熱帯一 温帯,乾燥一湿潤)によって宿主範囲の広い菌から特化したものだといえ

よう。このシンポジウムの横山,安藤らの報告はこの考えを支持するよう である。

最近Rhizobium sp. NGR234のつくるnod factorの一一一部の構造が解明

された18)。面白いことにこの菌はすでにわかっているアルファルファ(soヰ 残基あり),エンドウ(SO。残基なし),ダイズ(fucose残某あり)に対す

るnod factorの構造と似た多種のnod factorの混合物を作る。この菌の 宿主範囲が広いのはいろんな植物が感知できるnod factorを多種つくる からで,ある植物との結び付きが強まって根粒菌の分化が進むと関係ない nodfactorを作らなくなすてしまうと考えることができる。 根粒菌とマメ科植物の共生はいま知られているより多様で,エンドウ,ア ルファルファ,ダイズなど主に温帯の栽培作物中心にして発達した知見は 片寄ったものであるといわねばならない。しかし片寄っているが,知見は 深まっている。これはCentralDogma-エンドウ,アルファルファ,ダイ ズ中心主義ともいえよう。

(17)

5.熱帯は微生物の宝庫

微生物の多様性はむしろ探索範囲を広げることで明瞭になってくる。窒 素同定菌について最近明らかになった面白い例をあげてみよう。

a)セネガルに自生するSesbania rostrlataの茎粒から独立窒素固定も するAzorhi20bium calLlinodansを分離したo このS. roslralaは生

育が早く窒素固定能力の高い緑肥として広く使われるようになっ た19・20)。 b)やはりセネガルに自生する水生マメ科植物Aeschynomene属の茎 粒から分離した根粒菌のなかにはBacteri()chlorophyllを持つもの があった5)。 C)サトウキビの窒素固定を研究していたDtibreinerらはサトウキビ の茎と根の内部から30%oもの高い濃度のシュクロースに生育する 窒素固定菌Acelobacferを分離した21)0

d)パキスタンの塩類土壌に生育するKarall grass (Lef'lochloa fu∫ca)

の椴の組織内部からAz()arcusという窒素固定蘭を分離した22'。こ の菌が根の窒素固定に関与していることについては否定的だが,培

養のある条件卜で,菌の細胞内に窒素固定酵素が局在する特殊な膜

構造ができ,きわめて高い窒素固定活性をあらわす。 いずれの場合も熱帯の植物からの分離である。このシンポジウムの小柳 悼,横山,安藤らの報告も熱帯産植物の共生根粒菌の多様性を扱っている。 熱帯は窒素固定微生物の宝庫であるが,研究にあたり冒頭で述べたように

生物学的多様性保護条約で定める遺伝子資源から得られる利益の公正で公

平な分配に注意しなければならない。残念ながら日本の研究者の間ではこ の点の配慮に足りないところがあるようだし,研究資金援助も利益の公正 で公平な分配に注意した使用ができるようにはなっていない(文部省科学 研究費で熱帯の研究者と仕事できそうなのは海外学術調査であるが,これ は発展途上国との研究協力ではない)。

(18)

1.アゾラ

2.らん藻

窒素lrq定微生物の多様性とその利用 13

表1 1RRI Biofertilizer Germplasm C。11ections

すべての種    528 コレクション 8属        204 ストレイン

3.水生マメ科植物とその根粒菌

水生マメ科植物(Sesbania, Aeschy10mene, Neptunia〕 35種.    86 コレクション

その根栽菌       23 宿主種    104 ストレイン (好気的光合成細菌・ Aeschynomene B71adyrhizobiumを含む) 4.稲板圏からの窒素固定細菌       25 ストレイン 表2 IRRIアゾラ・コレクション(1993年1月現在) 種     無らん藻a異種  有性雑種有性繁殖突然変異 計 らん藻もつ     からできた A. filict)loi des A. mexicana A caroli血aLna A.micrt)phyu a A. rubra A. pinnata var. inbricata A. piJuata Vat. fhnnala A. nilotica 未分類 計 2 0 0 つー0   0   0 0 0 4 --仰。抑仰。仰 仰。Hi= 一l    l 1 I ′1 3       つi l       つ▲ 4 12799 10  0  00 3 1 7 -QU 7 7 9 0    0    0 0 つ▲ 3 1 つー   4       0 1 往 a:かっこ内は有性繁殖からできたもの 1 205 372294 1 2348 0ノ    4    1 つー 1      5 8 0 0 1 0   0   0 0 2 1 _      っー

6. IRRI Biofertilizer Germplasm Collections

IRRI (国際稲研究所)での筆者の研究テーマだった水円の窒素固定を進 めて行くうちに,水田に生育するいろいろな窒素固定微生物が集まり出し た。水田の窒素固定微生物とその共生宿主は, a)田面にいる独立生活の

(19)

らん藻, b)還元土壌および稲の根圏,茎のF部にいる細嵐 C)田面に生 えるらん藻と共生しているアゾラ, d)稲作付け前に主に栽培される水生 マメ科植物-Sesbania, Aeschynomeneの4グループに大別される。これ らの窒素固定微生物とその共生宿主の多数のコレクションを収める実験研 究棟の建設を計画したところIRRIの理事から微生物コレクションを保存 するGermplasm Bank (遺伝子銀行)は必要でないと批判された。

(遺伝子資源の喪失と偏在性)作物では環境の破壊と開発によって従来

存在していた身性種や在来品種が失われていっている。この現象を geneticerosion (遺伝子資源の喪失)といっている。これを防ぎ,貴重な 資源を保存するために遺伝子銀行が必要とされ, CGIAR (Consultative Group of International Agricultural Research)傘下の研究所(IRRIも

そのひとつ)に重要な作物の遺伝子銀行が作られている。微生物はどこに でもいて(偏在性),遺伝子資源の喪失のおそれはないから永久保存の必要 性はうすいというわけである。アゾラや水生マメ科植物は熱帯の湿地が開 発によって失われるか富栄養化して喪失するおそれは考えられるが,微生 物の遺伝子資源の喪失は考えにくい。なかなか痛いところをつかれたと 思った。昔いた微生物が今はいなくなってしまったという報告を私は知ら ない。例えば伝統的な醸造法で用いられていた酵母がいなくなってしまっ

たとか。この点は生物学的多様性保護に関連して微生物学者が考えなけれ

ばならないことであろう。 幸い実験研究棟の建設は日本政府の資金援助で1992年に完成し,窒素同 定微生物とその共生宿主の多数のコレクション(Irri Biofertilizer

Germ-plasm Collections)がここに収められた23)0

IRRI Biofertilizer Germplasm Collectionsの内訳は表1の通りである。

なかでもアゾラと水生マメ科植物のコレクションは他にはないもので貴重 だと考える。ここではアゾラのコレクションについて述べておこう。 (アゾラ,コレクション) 1975年にフィリピン,ルソン島南部ビコール 地方から集めたのを皮切りに世界各地からアゾラを集め, 1993年現在で約 520近いストレイン(秩)が保存されている24'。種子を保存するのと違い, 栄養繁殖を続ける個体を水耕液で25oC, 10,000ルックスの人工栽培箱内で

(20)

窒素同定微生物の多様性とその利用 15 育て, 2-3過ごとに植え継ぐ手間は大変である。いまでは,大部分は茎の端 頂郡を切り出し表面殺菌したのち寒天に植えるshoot tip cultureで保存 している。この方法だと,年に3回ぐらい植え継ぐだけでよい。世界でこ れだけのアゾラのコレクションを持っているのはIRRIしかない。ただ損 失にそなえて,中国福建農業科学院のアゾラ研究センター,ベルギーのルー ヴェンカトリック大学(ルーヴェン・ラヌーーヴ)のVanHoveの研究室で 同じものを保存して貰っている。採取地の内訳はアジアオセアニア56%, 北中南米24.8%,アフリカ7.8%,ヨウロツパ4.2%となっている。アジア 採取としたものの47%は, IRRI,中国福建農業科学院,フイリッピン大学 で育てた雑種やF.世代とアジアにはなかった外来アゾラの再採取ストレ インである。種別のストレインの数とその内訳を表2に示す。雑種は母親 の種で分類してある。 これだけの数のコレクションは,世界各地の研究者の協力の結果だが,な かでもハワイ大学Lampkin氏(現ワシントン州、IF_大学),ルーヴェンカト リック大学のVanHove氏から多くのコレクションが贈与された。種の同 定は某本的には採取者の記載により,その後同定が誤っていたことが判っ たときには種の名を変えた。しかしアゾラの種,特に,ラテンアメリカ座 のアゾラの同定には怪しいところがあり,また種の同定の鍵となる生殖器 官は一部のアゾラでのみしか出来ないという困難があった。そこでアゾラ の化学分類をワシントン州立大学のZimmerman氏と協同して行った25)0 まずアイソザイムで調べたところ, A.jiliculoidesはA. rubylaと明瞭に区

別され,ともにA. mexicana, A microphylhz, A. carolinianaの三種とは区

別されたが, A. mexz'cana, A. micy10Phylla, A. caroliniana.の一二種はお互い

にはっきりと区別されなかった。日本産のオオアカウキクサ(A.japonica

Nakai)はアイソザイムのパターンからA.jiliculoidesにはかならなかっ

た。その後Zimmerman氏はDNAのフィンガープリンナングによる分類

を試みたが, A. mexi'cana, A. microphylla, A. carolinianaの三種の区別は

できなかった26)。形態的にもこの三種の区別は難しく,どうやらこの三種は ひとつの種にまとめたほうがよさそうである。

(21)

行ったが,やはりA. mexicana, A. microphylla, A. carolinianaの三種の区

別は出来なかった27)。この3種の間では交雑が簡単でFl世代の生殖器官は

正常でF2世代もできた0 -万, A. microphyllaとA.jiliculoidesの雑種の

Fl世代は不稔であった28)。 A. mexicana, A. microphylla, A. cwolinianaの

3種の間の性的障壁はなく,このことも3種のひとつにしてよいことを裏 付けている。多数のストレインが得られなければ,分類の系統的再検討は できないo現在はアイソザイムとDNAのフLンガ-プリンチングによる アゾラの戸籍作りを進めている。 IRRIから配布されたアゾラの優良系統は世界各地で広がっており,ア フリカでは在来のA.pinnataよりも生育がよい導入種が広がっている。広

く生育したのはパラグアイ産のA. micr()I,hylla (IRRIの番号MI4018,

MI4510), USA産のA・ caroliniana (CA3001), A. microphyllaとA.

jilicul()idesの雑種(M14030,MI4087)などである。アゾラの系統の同定方 法が確立したら世界各地の導入系統の同定をやってみたい。 残念ながらIRRIは私が去ったあとはアゾラや水旧縁肥作物の研究をや めておりコレクションの損失が懸念される。

7.窒素固定菌の利用の拡大

残念ながら日本の窒素固定の研究は世界的に見て遅れている。研究者の 数が圧倒的にすくないからで,これは窒素固定というテーマが日本ではあ まり研究資金供給者の関心を呼ばないからであろう。窒素肥料はたくさん ある。いまさら窒素固定でもあるまいという感じであろう。発展途卜国を 含んだ国際農業と省エネルギーを考えれば,窒素固定は大変大事な研究 テーマであるが,残念ながらu本の研究者も研究資金供給者もまだ国際的 視野が狭い。 (水素発生と窒素固定菌)ここでは窒素固定薗のもうひとつの役割につ いて注意しておこう。水素ガスはクリーンなエネルギー源として今日注目 されているo いろいろな微生物がニトロゲナーゼまたはヒドロゲナ-ゼで 水素ガスをつくるoニトロゲナーゼはアンモニア生産にともなってつねに 水素ガスを発生する。アンモニア生産からみると水素ガス発生は無駄であ

(22)

笥素同定微牛物の多様性とそcr)利用 17 るU)で,窒素同定の研究者は水素ガス発生を少なくすることを考えてきた が,逆に水素ガス発生の立場からみると,アンモニアの生成が少ないほう がよい。現在知られている生物的水素生産でもっとも効率のよいのは光合 成細菌によるもので,水素ガス生成はニトロゲナーゼによっている。つぎ に効率的なのはらん藻によるものでやはりニトロゲナーゼによっている。 こう見ると窒素固定菌による水素ガス生産はもっと研究,利用してもよい のではないかと思われる。ここに窒素固定研究の新しい水平線があるよう だ。くわしいことは筆者の小論を見ていただきたい29)0

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(24)

熱帯のBradyrhizobiuln属根粒菌

の遺伝的多様性

安藤象太郎*・友岡 憲彦**

村上 敏文*・横山  正**

1.熱帯のマメ科作物に根粒を形成する根粒菌

マメ科作物の根に根粒を形成する根粒菌には,茎粒を形成する根粒菌を

除くと, Rhizobium属根粒菌とBradyrhizobium属根粒菌との2属の根粒 菌がある。 Rhi20bium属根粒菌とBradyrhizobium属根粒菌とは多くの点 においてその性質が異なっているが,特にこの2属の根粒菌を分ける違い として,根粒形成遺伝子(nod)と窒素固定遺伝子(mf)とが, Phiz()bium 属根粒菌ではSymプラスミドと呼ばれる200-1,500kbの巨大プラスミ ド上にあるのに対し, Bradyrhizobllum属根粒菌では染色体上にある点が あげられる。イースト・マこトール寒天培地で培養すると, Rhizobl'um属 根粒菌は生育が速く酸を産生するのに対し, Bradyrhizobium属根粒菌は 生育が遅くアルカリを慮生することから,この2属の根粒菌を簡単に識別 することができる。 熱帯では多様なマメ科作物が地域の貴重なタンパク質供給源として栽培 されている。多くの地域で月巴料や農薬の施用が経済的に困難なので,共生 窒素固定の利用とそれによる地力の維持は重要であり,混作や間作といっ た様々な作付け体系の中でマメ科作物の使用頻度は極めて高くなってい る1)。熱帯で栽培されているマメ科作物に根粒を形成する根粒菌の人部分 はBradyrhizobium属根粒菌である。ササゲ,ラッカセィ,フジマメ,リョ '農林水産省国際農林水産業研究センター =農林水産省農業生物資源研究所

(25)

クトウ,ケツルアズキ,ライスピーン,モスピーン,シカクマメ,ヒラマ メ,キマメといった熱帯で栽培されているマメ科作物にBradyrhizobilLm 属根粒菌が根粒を形成する2)。ダイズは温帯で栽培されてきたマメ科作物 で,熱帯でU)生産適も近年増加している。ダイズに根粒を形成する根粒菌 はBrlzdyrhiz()bium属根粒菌であるが,ダイズの原産地である中国では Rhl'zobium frediiが優占してダイズに根粒を形成している. Bradyrhiz()bium属根粒菌はダイズに根粒を形成するB. jaPonl'cILmと, B. elkaniiとの2種だけが種として設定されており,それ以外の根粒菌は 皆B.sp.として未分類のまま残されている。筆者らはRFLP (制限酵素断 片長J-)多型)分析によって,熱帯で栽培されているマメ科作物に根粒を形 成する根粒菌の遺伝的多様性を調べている。なお,熱帯にはマメ科作物以 外にさらに多様なマメ科植物が存在しているが,それらにおける窒素固定 や,根粒を形成する根粒菌に関する情報は現在のところ極めて少ない。

2.温帯と熱帯のダイズ根粒菌のRFLP分析

ダイズ生産量世界第 一のアメリカ合衆国では,上着しているダイズ根粒 菌B.jaf,()nicumの生態学的調査が数多くなされてきた。合衆国にi二着し ているブイズ根粒菌に関して,アメリカ合衆国農務省(USDA)などが行っ た調査を図1にまとめた:i)o 各州でどの血清型の根粒菌が 一番多く分離さ れたかを示している。この図から明らかなように,南部では血清型が USDA31の根粒菌や血清型がUSDA76や94の根粒菌が優占しているの に対し,北部では血清型がUSDA123の根粒菌が優古している。 USDA123 型の根粒菌は他の根粒菌と比べると窒素固定能が低いが,他U)根粒菌と競 合した時の感染力は強い。そのため窒素固定能の高いUSDAll()や122を 接種してt),土着のUSDA123型の根粒菌が形成する根粒の割合が高く,ダ イズの収量を日デることができない4)。 こうした地理的な分布の違いに加えて, USDA123,110,122など0)グ ループとUSDA31,76,94などのグループとの間では,薗体外多糖の組成, リゾビトキシン生産能,インドール酢酸生産能および分解能,ヒドロゲナ-ゼ系による水素の取り込み能,抗生物質耐仲など様々な性質に違いがある

(26)

熱帯のBradyrhizobium属根粒菌の遺伝的多様性 21

優占する血清型

囚 USDA31 匝団 USDA76, 94 E≡ヨ USDA123

m USDA6,135

図1アメリカ合衆国各州で優占するダイズ根粒菌の血清型 ことが明らかになった。またDNA-DNAホモロジー分析と根粒形成遺伝 子や窒素固定遺伝子のRFLP分析との結果によりこの2つのグループ間 で明確な遺伝型の分離があることも明らかになり, USDA.31,76,94などの 血清型に含まれる根粒菌ぼ新種のB. elkaniiとして分割設定された5,6)o 沢田らは,日本に土着しているダイズ根粒菌85株を血清型から分類して いる7)。分類の結果を基に, USDA39,46,76,144の4つの血清と反応した株 をB. elkaniiとして,それ以外の血清と反応した株をB.jaPonicumとし て,筆者が図2に示したoこの図からもB. elkaniiが日本の南部で分離され 易いことがうかがえるo B.jaPonicumの中ではUSDAllOの血清と反応し た株が一番多く,日本で優占しているダイズ根粒菌は窒素固定能の高い優

(27)

九州・沖縄

≡ヨ: Bradyrhl'zob/'um JaPOn/'cum

- : Bradyrh/'zob/'um e/kan/I/'

図2 日本におけるBy.adyrhizobium属根粒菌の出現頻度 良株であるUSDAllO型の株であることが明らかにされた。 次に,タイやマレイシアといった熱帯の土壌から分離されたダイズ根粒 菌について,日本やアメリカ合衆国のダイズ根粒菌と比較するために RFLP分析を行った8)。日本,合衆国,タイ,マレイシアの土壌から分離さ れたダイズ根粒菌を制限酵素のダイゼッションパターンと血清型とからグ ルーピングし,代表的な28株を選んだ。これらのダイズ根粒菌から抽出し

(28)

熱帯のBfladyrhizubl'um属根粒菌U)退位的多様性 23

たDNAを4種類の制限酵素(BamHI, HindIII, PsII, EcoRI)で消化し,

ダイズ根粒菌USDAllO株の根粒形成遺伝子nodDABC 3.9 kbをプロー ブとしたサザンハイブリダイゼ-ションを行ったところ,14通りのRFLP パターンが出現した。ハイプリグイズしたバンドの菌株間での違いから,プ ローブとして使用したnodDABC遺伝子周辺の塩基置換度を推定し,それ を某にクラスター分析すると, 3つの主要なクラスターと3つのその他の クラスターとに分けられた(図3)0 日本と合衆国から分離されたすべての株は,クラスター1と2に含まれ た。会衆阿北部で優占している血清型がUSDA123の系列の株は,クラス ター1に含まれた。合衆国で優良株とされているUSDAllOやUSDA122 もクラスター1に属した。 u本で分離された多くのB.japonicumもクラス ター1に属した。このことからクラスター1が温帯のダイズ根粒菌のi:_要な クラスターであると考えられる。合衆国南部で優占している血清型が USDA31,76,94などのB. elkaniiは,クラスター2を形成したoクラスター 2はタイやマレイシアで分離された熱帯のダイズ根粒菌からも多く出現し た。このことからB.elkaniiは日本や合衆国だけでなく熱帯にも分布して いることが明らかになった。一方,クラスター3,4,5,6は熱帯の根粒菌だけ が含まれるクラスターで,これまで温帯のダイズ根粒菌からは出.現したこ とのなかったRFLPパターンを示した。クラスター2と3は熱帯のダイズ 根粒菌から多く分離され,熱帯のダイズ根粒菌の主要なクラスターである と考えられる。

3.リョクトウ根粒菌のRFLP分析

リョクトウは古くから広ノ(アジアにおいて栽培されてきたマメ科植物で ある。生育日数が短く間作や混作といった様々な作付体系に容易に導入さ れ,貰重なタンパク質供給源となってきた。しかし,熱帯におけるリョク トウの生産性は末だ低いレベルにとどまっており,共生窒素固定が卜分に 利用されていないと考えられる。そこで,これまでほとんど調べられてい ないリョクトウ根粒菌についてRFLP分析を行い,温帯や熱帯から分離さ

れたダイズ根粒菌との遺伝的類縁関係を検討した。

(29)

根粒菌根 クラスター

S....

3

2       1 41368088 61488132 T T T T T T T T

;篭2 4

mmmmmm温

2

10     5     0

根粒形成遺伝子周辺の塩基置換度(%)

図3 根粒形成遺伝子をプローブとしたRFLP分析によって作成したブイズ 根粒菌28株U)系統樹 U-USDA株,N: H本で分離した株,T:タイで分離した株,M マレ イシアで分離した株

(30)

熱帯のBradyrhizobium属根粒菌の遺伝的多様性 25 タイ各地で栽培されているリョクトウの根粒からB71adyrhizobium属根 粒菌を43株分離し,根粒形成遺伝子nodDABCをプローブとしたRFLP 分析を行ったところ, 13通りのRFLPパターンが出現した。 nodDABC周 辺の塩基置換度を推定し,それを基にクラスター分析すると, 3つの主要な クラスター(1,2,3)と5つのその他のクラスターとに分けられた(図4)。 クラスター1には17株が,クラスター2には14株が,クラスター3には 6株が属し,クラスター1と2がタイのリョクトウ根粒菌の主要なクラス ターであると考えられた。分離菌株数の近いクラスター1と2では,クラス ター1に属する根粒菌の方がより多くの地点から分離されており,クラス ター1に属する根粒菌がタイ各地に広く分布していると考えられた。タイ 国農業局根粒菌センターが優良株として保存していたリョクトウ根粒菌を 4株分析したところ,すべてクラスター2に属する根粒菌であった。 タイのダイズ根粒菌から出現したRFLPパターンと共通したRFLPパ ターンが,タイのリョクトウ根粒菌からも出現した。そこで,タイのダイ ズ根粒菌とリョクトウ根粒菌とから出現したRFLPパターンとを合わせ てクラスター分析し直したところ,全部で8つのクラスターに再分類され ■l (%)世聴旭梱gfQ)fEfEJ小出甥慧告.蛋 0 5 0

2

クラスター 図4 根粒形成遺伝子をプローブとしたRFLP分析によって作成したタイの リョクトウ根粒菌43株の系統樹

(31)

表1根粒形成遺伝子をプローブとしたRFLP分析によって分けられた8,) のクラスターに属する根粒菌数 クラスター 1   2   3   4   5 タイズ    1 3  4 8       2 リ ョクトウ 1 8 1 4 た(表1)。 クラスター1にはダイズ根粒菌のクラスター4とリョクトウ根粒菌のク ラスター1とが,また,クラスター2にはダイズ根粒菌のクラスター3と リョクトウ根粒菌のクラスター2とが,同一のクラスターにまとめられた。 クラスター5はダイズ根粒菌のクラスター1に相当し,日本やアメリカ合衆 国で分離されたダイズ根粒菌(B.japonicum)の多くが属する温帯のダイ ズ根粒菌の主要なクラスターであるが,タイのダイズ根粒菌からは2株分 離されただけでリョクトウ根粒菌からは全く出現しなかった。日本や合衆 国で最も多く分離されるこのタイプの株は,タイにはほとんどいないと思 われる.クラスター7はダ′イズ根粒菌のクラスター2(B・ elkanii)に相当し, 熱帯のダイズ根粒菌では数多く出現したが,リョクトウ根粒菌からは1株 しか出現しなかった。このグループの株はタイにいるのにリョクトウには 根粒を形成していないことになる。クラスター1と2はタイのダイズ根粒 菌とリョクトウ根粒菌とに共通して出現し,熱帯の根粒菌の根粒形成遺伝 子の主要なクラスターであると考えられる。特にクラスター1はリョクト ウから,クラスター2はダイズからタイの多くの地点で分離された。 クラスター1と2がダイズ根粒菌とリョクトウ根粒菌とに共通して出現 したことから,ダイズとリョクトウの両方に根粒を形成することができる 広い宿主域を持った根粒菌がタイに広く土着しているのではないかと考え た。そこで,ダイズから分離した根粒菌をリョクトウに,反対にリョクト ウから分離した根粒菌をダイズに接種し,根粒形成能を検討した。クラス ター2に属するいつくかの株はダイズとリョクトウの両方に根粒を形成

(32)

熱帯のB71adyrhizobium属根粒菌の遺伝的多様性 27 し,葉の色や根粒内のバクテロイドの色から窒素固定も行っていると考え られた。しかし,クラスター2に属する根粒菌がすべてダイズとリョクトウ の両方に根粒を形成できるわけではなく,片方にしか根粒をつけることが できない根粒菌もおり,今後さらにRFLPパターンと宿主域との関係を検 討する必要があると考えられる。 4. Ceratotropis亜属根粒菌のRFLP分析 Vl'gna属の7つの亜属のひとつであるCeralolrof,is亜属はアジアに広 く分布していることから,別名Asian l′なnaと呼ばれており, 5種類の栽 培種(リョクトウ,ケツルアズキ,モスピーン,ライスピーン,アズキ)を 含んでいる。これら5種類の栽培種と6種類の野生種とをタイ国チャイ ナ-ト畑作研究センターにて栽培し,着生した根粒から根粒菌を83株分離 したo この根粒菌について根粒形成遺伝子nodDABCをプローブとした

RFLP分析を行い,栽培種と野生種各々に根粒を着生した根粒菌の遺伝的

類縁関係を検討した。 83株の根粒菌から17通りのRFLPパターンが出現し, nodDABC周辺 の塩基置換度を推定し,それを基にクラスター分析すると, 6つのクラス ターに分けられた(表2)。ここでクラスター1,2,3は,リョクトウ根粒菌 の主要なクラスター1,2,3にそのまま相当する。クラスター2には39株と 最も多くの根粒菌が属し,リョクトウ,ケツルアズキ,モスピーン,ライ スピーンのいずれもクラスター2の根粒菌が最も多く出現した。タイのダ イズ根粒菌からもこのクラスターに属する多くの株が出現している。これ に対し,アズキ,アズキの野生種,ライスピーンの野生種か.らはクラスター 2は全く出現しなかったo i)ヨクトウ根粒菌では出現しなかった新しい7 通りのRFLPパターンが,アズキの野生種とライスピーンの野生種とから 出現し,宿主植物として野生種を利用することは,多様な根粒菌をスクリー ニングするために有効であることが示された。今後,クラスター2に属する 根粒菌を用いた接種試験などを行い,クラスター2に属する根粒菌の宿主 域をさらに調べる予定である。

(33)

衣2 根粒形成遺伝f.をプローブとしたRFLP分析によ-)て分けられた8つ のクラスターに属する根粒歯数

宿主植物   分離菌株数

クラスター

1 2  3  4  5 VJadI'ata (リョクトウ) V. mungo (ケツルアズキ) V. aconJ'tifoII'a (モスピーン)

V.radI-ata var. sublobata

(リョクトウ野生種) 24 7 8 5 2 8 5 8 3 ■■l ′ 3 1 V・号1;n,dirLaウ弛種) 2 V. umb e/lata (ライスピーン) V, angularis (アズキ) V.spec/lee B (ライスピーン野生種) V. n'ukiuensis (アズキ野生種) V. nakashI-ma a (アズキ里芋生種) V.specI-es D (アズキ野生種) 1 一 一■ ∴ 2 4 2 1  2 1 4 3 5 3 5.お わ り に

マメ科作物根粒菌を接種する場合,そのマメ科作物の栽培歴がない圃場

では接種によって明らかに収量が増加するが,栽培歴がある圃場では窒素 固定能の低い土着菌によって多くの根粒が形成されてしまい,期待した窒 素固定能を得られないことが多い。こうした土着菌との競合を回避し接種 効果を上げるためには,次の2つの戦略が考えられる。

① 土着菌の中から窒素固定能と根粒形成能とが共に優れた菌を選択

し,接種菌として利用する。

② 窒素固定能が低い土着菌による根粒形成を抑制する品種を選択し,

窒素固定能の高い,土着菌か接種菌によって根粒を形成させる。

(34)

熱帯のBradyrhizobium属根粒菌の遺伝的多様性 29

根粒菌と宿主作物との効率的な共生系を成立させ共生窒素固定を有効利

用するためには,どこにどんな根粒菌がいるかを知る研究,すなわち土着 している根粒菌相を明らかにする生態研究がこれからも重要である。

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(35)
(36)

熱帯と温帯のダイズ根粒菌根粒

形成遺伝子の特性比較

横山  正*・安藤象太郎**・村上 敏文**

1.は じ め に マメ科植物はタンパク質,脂肪や各種ミネラル等重要な栄養素の供給源 としてだけでなく,熱帯地域に広く分布する低肥沃度土壌の窒素肥沃度を 向f二させるためにも,極めて重要と考えられているo そのため,東南アジアの諸国はマメ科作物の収量増加を図る試みをi:_と して育種的手法を用いて行なってきた。これはマメ科作物に限らずイネ科 の主要作物や野菜でも同様で費用があまりかからず,効果も大きいと考え られているためである。しかし,国際研究機関やそれぞれの国の-研究所で

行われているマメ類の育種は多収性,日長不感応性,耐病虫性等の付与が

中心であり,根粒菌との共生強化を目的としたものは極めて限られている。 ところで,根粒菌を対象とした研究は(1)分類(根粒菌の生態・遺伝的 多様性・血清学的特性等) , (2)マメ科植物との共生状況の評価(窒素固 定能の評価・マメ科植物との親和性の評価等・感染機構の解明) , (3)遺 伝子レベルでの有用遺伝子の機能解析(窒素固定遺伝f・ ・頒粒形成遺伝丁 等の構造と機能の解析) ,て4)根粒菌の有効利用に向けた接種試験,等に 分けられる。また,各種根粒菌の研究中心地域はそれぞれ異なっており, R. melilotii (アルファルファ菌) ・R. leguminosarum (インゲン菌・ソラマメ 菌)等に関してはヨーロッパ諸国を中心に, B.jaPonicum (ダイズ菌)に 関してはアメリカ合衆国を中心に,またR.trlfolii(クローバー菌)に関し '農林水産農業生物資源研究所 =農林水産省国際農林業研究センター

(37)

てはオーストラリアを中心に研究が行われてきた。マメ科牧草に共生する 根粒菌等を牧畜の盛んなヨーロッパとオーストラリアが良く研究し,ダイ ズの大生産地であるアメリカ合衆国でダイズ根粒菌の研究が多数行われて いるというように,根粒菌の研究は各地域で特徴的に栽培されているマメ 科植物に根粒を着生する根粒菌を研究対象としたものが大部分である。そ のため,熱帯に生息する根粒菌に関する研究は欧米では殆どなされていな い。 熱帯マメ科作物(ダイズ,マングピーン,グランドナッツ,カゥピー,ピ ジョンピー等)にはBradyrhizobium属根粒菌が根粒を形成するが,熱帯圏 に広く分布するこれら熱帯Bradyrhizobium属根粒菌の研究はRhizobium 属根粒菌や温帯のダイズ根粒菌等に比べてかなり遅れており,十分な分類 体系すらできていない。

この様に熱帯に特有な根粒菌の特徴づけや有用遺伝子(根粒形成遺伝

子・窒素固定遺伝子等)の構造・機能の違いに基づく分類,およびマメ科

植物と根粒菌との共生実態の解明や共生関係の強化に関する研究は著しく

立ち後れており,このことが根粒菌のローカルストレインの有効利用や効 率的な窒素固定を実現するためのボトルネックになっている。 そこで,農林水産省熱帯農業研究センター(覗,国際農林水産業研究セ ンター)では上記課題の解決をめざし1987年より,特に,マメ科植物と根 粒菌の共生窒素固定反応を利用して,効率的に空気中窒素を固定し,マメ

科作物の収量増を図ると共に土壌の窒素肥沃度を向上させる技術の開発を

目的としたプロジェクトを発足させ,タイ農業局土壌部根粒菌センターや タイ国農業局チャイナ-ト畑作試験場と協同研究を開始した。 私共は上記プロジェクトに参加し,熱帯に生息するBradyrhizobium属 根粒菌を遺伝的形質の違いに基づいて分類し,さらに,熱帯Brady-rhizobium属根粒菌とマメ科植物の共生機構を解明することを目的に研究 を開始した。

2.タイ国での根粒菌の採取

タイ農業局土壌部根粒菌センターはハワイ大学に本部を置くNifTAL

(38)

熱帯と温背のダイズ根粒Lif根粒形成遺伝J'-0)特性比較 33 の全面的援助により設立されたもので,ダイズ根粒菌を中心に各種根粒菌 を収集し,窒素固定能の高い薗株の選抜を行っている。選抜した菌株は,別 棟に設けられた大型の培養プラントにより大屋培養されピートと混合後, 袋詰めされ農家に配布されている。 筆者が根粒菌センターに短期出張した時,共同研究者の一人である,村 上敏文博上がこのセンターに長期滞在(1987年∼1992年)しマングピーン (縁豆)と根粒菌の共生(特に,窒素固定の評価)に関する協同研究を開始 していた。村上博士とタイの研究者の協力に助けられ,タイ11ヶ所のダイ ズ畑(図1)から根粒と土壌の採取を行い,さらに,根粒菌センターでそれ ら採取した根粒と卜壌から多数のダイズ根粒菌を分離し,日本へ持ち帰っ た。

3.タイのダイズ根粒菌の血清学的特徴′

ダイズ根粒菌の血清学的特徴はアメリカ合衆国を中心に研究され,ダイ ズ根粒菌は幾つかの血清学的に異なったグループに分かれること,理由は 分からないが,地域毎に優占的な血清グループが存在すること,各血清グ ループのダイズ根粒菌とダイズとの共生成立過程には違いがあるらしいこ と等がわかっているト6)0 日本に於いては,農水省,農業環境研究所の土壌微生物利用研究室にお られた沢田泰男室長(覗,雪印種苗技術研究所)が日本全土のダイズ畑で 分離した85株のダイズ根粒菌の血清学的特徴をUSDAのセロタイプスト レイン7)より作成した血清を用いて凝集反応試験で調べ(表1)8), 61株 (72%)はUSDA株から作成した血清と反応し,そのう.ち53 (62%)は UsDAのセロタイプストレインと全く同一の血清学的反応を示したこと, 23株がUSDAllOより作成した血清と1対1の反応をし,これが日本に生 息するダイズ菌の優占タイプであること等を明らかにした。 この様に,温帯に生息するダイズ根粒菌の血清学的特徴に関しては多数 の研究があると共に,それらの研究の蓄積から,ある菌が持つ血清学的特 徴を調べることにより,その菌のダイズに対する根粒形成能や窒素固定能 も類推が可能と成っている。

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図1タイでのダイズ根粒菌の採取場所 それとは逆に,熱帯のダイズ根粒菌の血清学的特徴は殆ど調べられてお らず,熱帯のダイズ根粒菌がどの様な血清学的特徴を持っているのか全く 分かっていなかった。そこで,タイで採取したダイズ根粒菌120株と15株 のUSDAのセロタイプストレインより作成した血清を反応させ, USDA

株より作成した血清が熱帯のダイズ菌の血清学的特徴付けにどの程度利用

可能かどうか調べた。 その結果, 106株(88%)がUSDA株から作成した血清と反応した。し かしながら, 106株中45株(42%)は自己凝集性が有り,連続した希釈倍

率の血清中で菌の凝集反応を観察する非常に簡単な凝集反応テストでは血

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熱帯と温帯のダイズ根粒菌根粒形成遺伝子cl)特性比較 35

表1 USDAセロタイプストレインより作成した抗血清に対

する反応性の違いに基づくFl本棟(85株)の血清学的分

類(沢田ら Soil S°i Plant Nuti., 35, 281-288, 1989)

血清グループ        菌株数 4 6 3 1 4 6 6 2 9 9 7 2 2 2 1  1  1 一一一 2 3 5 2 2 2 1  1  1 U n k n o w n 3 3 4 6 3 3 2   7 2 8 2 活タイプが決定できなかった。この現象はインドネシアで分離された多数 のダイズ菌にも出現し,自己凝集性は熱帯ダイズ根粒菌が持つ特性の一つ と考えられた。そこで, ELISA法でタイのダイズ菌120株の血清タイプを 決定した(表2)。 2株だけUSDA124株から作成した血清と1対1の反応 を示した。残り104株は非常に複雑な交差反応を示し,特に, USDA124株 より作成した血清に反応する表層抗原が多数のタイ株(102株, 85%.)に共 有されていた。更に,この/102株中57株(56%)はUSDA4,110株から作 成した血清と反応する表層抗原をも保持していた。この様な現象は温帯の 菌では全く認められず,タイのダイズ根粒菌に固有な血清学的特徴の一つ と考えられた。一方,温帯では出現頻度が高いUSDA122,123,76,そして 94等の株より作成した血清と反応する表層抗原を持つタイ歯は殆ど見出 されなかった。 この様に,タイのダイズ根粒菌が所有している血清芋的特徴は日本株や

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熱席と温背のダイズ根粒蔚根粒形成遺伝fの持件比較 37 USDA株が持っている性質とは大きく異なっていることが明らかになっ た。 タイのダイズ根粒菌がUSDA株より作成した血清となぜこの様に複雑 な交差反応パターンを示すのかは全く不明であるが,タイ株は, USDA株 より作成した血清に対する反応性の違いに基づいて,一応は,区分できる ことが分かった。

4.タイのダイズ根粒菌の全DNAの制限酵素による切断パ

ターン

前にも述べたが,米国や日本のダイズ根粒菌の場合,ある歯の血清タイ

プが分かると,その株の根粒形成能や窒素固定能のある程度の類推が可能

である。これは,例えば, USDAllOより作成した血清と反応する両群の遺 伝的特徴がUSDAllOのそれに非常に良く似ているという前提に基づいて いる。米国では近年,上着ダイズ根粒菌の遺伝的解析が進展し,この前提 がある程度成り立っていることが分かってきた9-14)0 そこで, 15株のUSDAセロタイプストレインより作成した血清と反応 したタイ株(106株)と血清の作製親株であるUSDAセロタイプストレイ ン(15株)のDNA断片の泳動パターンを比較し,遺伝的類縁関係を調べ た(表3)。レファレンス株としては,沢FTlらが分離した日本株を用いた。 ダイズ根粒菌より抽出した全DNAの制限酵素によるダイジェションパ ターンに基づくと,例えば,USDAllO株から作成した血清と反応した日本 の18株は, USDAllO株と細胞上の表層抗原の構造やDNA断片の泳動パ ターンが同一であることを示している0 .万,例えば,USDA4株から作成 した血清と反応したEl本e),3株は細胞上の表層抗原の構造はUSDA4と同 一であるがDNA断片の泳動パターンはUSDA4とは異なっていることを 示している。 結果的には, USDA株から作成した血清と反応した口本の61株中46株 (750/o)の表層抗原の構造とDNAの泳動パターンは対応するUSDAセロ タイプストレインのそれらと一致し,リファレンスとして用いた日本株は 対応するUSDA株と血清学的・遺伝的にも近縁関係にあることが示され

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(N) 6N I I C N T  (S) ヽ-0 I T  (e) N g ■ (N) f-9'(堆e) 寸ト]・S蕉tP:岬二1£叫伽!g港旬QiJ・6JJtPQB2f】り1光S TQり★★ / 中軸a)延引楚TP舟聾cPVCE S n ★ ¢ 〇一      Yへ 9 T Z C g N T 9      枯E3 6N t トN 1 S N 1 T7N 1 C N I N N 1 S I T 0 1 l 寸6 9ト N9 9T, T e g,I, #鋸lJ

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熱帯と温背のダイズ根粒歯根粒形威遺伝子a)特性比較 39 た。 一一一万,タイ106株においては, USDA31株より作成した血清と反応した 34株(32%)がUSDA31株と非常に類似したダイジェションパターンを示 した。しかし,残り72株(68%)はどのリファレンス株やUSDA株とも 一致しなかった。 これらの結果より,タイ株は日本株やUSDA株とは血清学的にも遺伝的 にも遠い関係にあること,また,タイ株はUSDA株より作成した血清に対 する反応性の違いに基づいて分類することは可能であるが,表現された血 清タイプからそれらの共生に関する遺伝的特性の推定は殆ど不可能である こと等が分かった。

5.タイと日本のダイズ根粒菌のRFLP解析

根粒菌の最大の特徴は,マメ科植物に根粒を形成し,その根粒中で空気 中の窒素をアンモニアに変換し,マメ科植物へ供給することにある。根粒 菌の根粒形成や窒素固定に関与する遺伝子群に関しては米国,スイスの研 究グループが温帯のダイズ根粒菌であるUSDAllO株からこれら遺伝子を 単離し,構造と機能の解析を進めているが,熱帯のダイズ菌のそれら遺伝 f・に関しては殆ど手がつけられていない。 今まで述べてきたように,タイの人部分のダイズ根粒菌は血清学的反応 性やダイジェションパターンがリファレンスとして用いたu本株や USDA株と類似性が無かった。これらの予備試験より,タイのダイズ根粒 菌の根粒形成遺伝子の構造や機能はリファレンスとして用いた日本株や USDA株のそれらとは違っているのではないかという予想が生まれた。そ こで,各ダイズ菌の根粒形成遺伝子のRFLP解析を行った。

図2にマメ科植物と根粒菌の根粒形成遺伝f-群間の相互作用の概略を示

した。根粒形成遺伝子はコモンnod遺伝子や宿主特異生に関わるhLm遺伝 子群等多数存在する。私共が研究を開始した時点ではこのコモンnod遺伝 f群の機能はまだ解明されておらず,ただ,根粒菌間で非常に保存性の高 い領域であることは分かっていた。このコモンnod遺伝子領域は根粒菌の 非常に重要な機能を担っていこるとが予想され,かつ,根粒菌間で互いに

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F7hizobium / BradPi2;Obium

I

●●●●●●●●●

て才丁 I

mR"th70...e.C.

(NodA NodB NodC protein・-・etc)

各種xodタンJtクによるTJボオlJゴ サッカライドの生合成 1 ,。均N

-鞠。嵐。掌もo恥-富  叫  ⊂、 恥 :::;:;:;::一冬T Nod Factor ●●●●●●●●●● ポリサッカ ライド / れ以外の作用は? 図2 マメ科植物と根粒菌間のシグナル交換作用の概念図 (①∼④はNod Factorが宿主に与える効果の概略) ①:根毛の変形, ②:感染糸形成過程への影響 (杏:皮層細胞の分裂開始 ④:フラボノイド化合物生合成過程の促進

参照

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