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1980 年から2020 年の日本におけるいじめ研究の動向と課題

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(1)

向と課題

著者

坂本 一真, 小岩 広平

雑誌名

東北大学大学院教育学研究科研究年報

68

2

ページ

197-214

発行年

2020-06-30

URL

http://hdl.handle.net/10097/00128388

(2)

 本研究は,いじめ研究の研究動向を整理し,今後の課題を示すことを目的として,日本における いじめ研究のシステマティック・レビューを行ったものである。研究の特徴を示すため,5つの変 数に関して,各研究をコード化した。分析の結果,いじめ研究は2000年以降に急激に増加しており, 相関研究が中心的な研究法であった。研究対象者としては,中学生が最も多かった。また,91.9% の研究は測定したデータを,離散化せず連続変数として扱っていた。また,被害者研究が最も多く 行われていることが示された。これらの結果から今後のいじめ研究の方向性について考察した。 キーワード:いじめ,コード化,システマティック・レビュー

1.問題と目的

 いじめ問題は1980年代のいじめ自殺事件の多発によって社会問題として広く注目されるように なった(森口,2007)。2013年にはいじめ防止対策推進法が公布され,いじめの防止措置および重大 事態への対処が,学校の責務として定められた。いじめの認知件数は,2013年のいじめ防止対策推 進法の公布とともに,急激な増加傾向を示し2018年度にはいじめの認知件数は54万3933件と過去 最多となった(文部科学省,2019)。この認知件数の増加は,教育現場におけるいじめ問題への関心 の高まりや,取り組みの改善を示していると考えられる(久保,2014)。しかし,いじめ問題は未だ 児童生徒にとって,身近で根深い問題であることに変わりはない。例えば,文部科学省(2016)による, 小学校および中学校の児童生徒を対象とした縦断調査からは,小学校4年生から中学校3年生まで の6年間の間で,いじめに何らかの形で関与したことがある生徒は全体の9割に登ることが示された。 加えて,文部科学省(2019)の調査によると,2018年の重大事態に当たるいじめの発生件数は602件 であり,いじめ防止対策推進法施行以降で最多となった。以上のように,いじめは深刻な学校な問 題であり,有効な対策を講じることが急務である。  近年のいじめの様態として主流なものは,軽い暴力や無視・仲間外れ,からかい・いじりなどの “ コ ミュニケーション系 ” のいじめである(森口,2007;内藤,2009;文部科学省,2019)。コミュニケー ション系のいじめに対するものとして,激しい身体的暴力や金銭を奪うなどの “ 暴力系 ” のいじめ

1980年から2020年の日本におけるいじめ研究の動向と課題

坂 本 一 真

小 岩 広 平

* *教育学研究科 博士課程後期

(3)

がある(森口,2007;内藤,2009)。いじめに関心が持たれ始めた1980年代は校内暴力が深刻な学校 問題として注目されており,“ 暴力系 ” のいじめが注目されていた(向井,2010)。2000年以降にな ると,コミュニケーションツールの発達と友人関係の変容ともに,“ コミュニケーション系 ” のい じめが増加し注目されるようになった(向井,2010)。このように,いじめの様態は社会動向に伴い 変化している。よって,いじめ問題への有効な対策を講じるためには,いじめの様態および研究動 向の変化を捉えた上で,知見の蓄積し対応の検討をする必要があると言える。  国外では,いじめに関する実証的研究が多数蓄積され,メタ分析やシステマティック・レビュー の論文によって,研究動向が整理され研究課題が示されてきた(例:Cook et al, 2010;Hong, & Espelage, 2012;Barlett, & Coyne, 2014;Vivolo-Kantor, Martell, Holland, & Westby, 2014;Zych, Ortega-Ruiz, & Del Rey, 2015)。国内では,いじめに関する実証的研究は多数蓄積されているのに 対して,レビュー論文は少ないのが現状である。加えて,国内におけるいじめ研究のレビュー論文は, ナラティブ・レビューによるものである(小林・三輪,2013;下田,2014;久保,2014;長田・相澤, 2018)。すなわち,国内では,一定のトピックに関する知見は統合されてきたものの,いじめ研究全 体の動向については,未だ明らかにされていない。そこで本研究では,今後のいじめ研究の方向性 を示すためにも,年代ごとの研究数,研究法,研究対象者,分析方法,研究焦点者,いじめとの関連 のある変数について整理し,今後の研究課題について示すことを目的とする。

2.方 法

対象となる学術誌および研究の抽出  まず,対象となる学術誌の抽出を行った。1980年から2020年に発行された,臨床心理学関連の学 術誌を調査対象とした。対象雑誌は,Table1に示した11誌である。学術誌は,CiNii-Books を用い て選定した。学術誌の選定基準は,⑴雑誌名に以下のキーワードが最低1つ含まれていること:心理, カウンセリング,⑵当該学術誌を購読している図書館が100館を超えることとした。加えて,紀要 や研究所における報告書は,査読の過程を経ていない場合が多いため,調査対象外とした。  次に,対象となる論文の抽出を行った。1980年から2020年に発表された,臨床心理学関連の論文 を調査対象とした。CiNii-Articles を用いて選定した。論文は,対象とした学術誌から,いじめにつ いて研究している論文を抽出するために,収集基準を論文のタイトル,キーワード,要約のいずれ かに “ いじめ ” の単語が含まれていること,とした。加えて,シンポジウムの報告,展望論文などは 研究手順の記述が不足しているため,調査対象外とした。これらの手続きにより,11の学術誌から, 51編のいじめ研究を収集した。検索は2020年3月2日に行った。 コード化  抽出した研究について,研究の特徴を捉えるため,奥村・亀山・勝谷・坂本(2008)を参考に,以下 の5変数についてコード化を行った:⑴研究法,⑵横断/縦断研究,⑶研究対象者,⑷分析方法,⑸ 研究焦点者。

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研究法  各研究ごとに研究法を⑴事例研究,⑵質的研究,⑶実験研究,⑷尺度構成,⑸相関研究,の5つにコー ド化した。 横断/縦断研究  同一対象に対して,2時点以上でデータをとっている研究を “ 縦断研究 ”,それ以外を “ 横断研究 ” とコード化した。ただし,事例研究についてはコード化を行わなかった。 研究対象者  調査実施時の対象者の属性から,⑴小学生,⑵中学生,⑶高校生,⑷大学生,⑸未就学児,⑹専門 学校生,⑺教員,にコード化した。複数の対象者に調査を行っている場合には,1つの研究に対して 複数コード化した。事例研究および,調査実施時の対象者の属性が不明の場合や新聞記事などをデー タとした研究には,コード化を行わなかった。 分析方法  連続変数の離散化の有無,および離散化している研究については離散化の方法(平均値,四分位, クラスタ,カットオフ,理論的群分け)についてコード化した。事例研究および,質的研究には,コー ド化を行わなかった。 研究焦点者  各研究の研究目的を元に,焦点化しているいじめの立場についてコード化した。各研究ごとに⑴ 被害者,⑵加害者,⑶傍観者,⑷教員,⑸集団,⑹親,にコード化した。複数の立場に焦点化してい る場合には,1つの研究に対して複数コード化した。焦点化しているいじめの立場について明記さ れていないものについてはコード化しなかった。

3.結 果

対象雑誌と研究法  対象雑誌内のいじめ研究の論文数および,研究法の利用頻度と割合を Table1に示した。研究法 別に見ると,相関研究が28研究(54.9%)で最多である。続いて,事例研究が10研究(19.6%),実験 研究が7研究(13.7%),質的研究が4研究(7.8%),尺度構成が2研究(3.9%)の順で多かった。よって, いじめ研究の中心的な研究方法は相関研究であることが明らかになった。  加えて,いじめ研究が多く掲載されている学術誌は,多い順に,カウンセリング研究,教育心理学 研究,心理臨床学研究であることが明らかになった。また,学術誌ごとに用いられる研究法に特色 があり,カウンセリング研究では事例研究と相関研究が,教育心理学研究では相関研究と実験研究 が,心理臨床学研究では事例研究と相関研究が多いことが明らかとなった。

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研究法および縦断/横断研究の年代別推移  研究数の年代別推移を Figure1に示した。研究数は2000年代以降急激に増えており,特に2010 年以降に全体の約半数の論文が発表されていることが明らかとなった。  研究法の年代別推移を Table2に示した。事例研究は2000−2009年の間に最も多く発表されてお り,2010年以降は減少傾向にあることが明らかとなった。質的研究は2000年以前は発表されてお らず,2000以降に発表され始めているが,全体としてその数は少ないことが明らかとなった。実験 研究は,1980年代から発表が維持されていることが明らかとなった。尺度構成研究は,1990−1999 Table1 11の学術誌におけるいじめ研究数と研究法 論文数 研究法 事例 質的 実験 尺度構成 相関 カウンセリング研究 15 6 (60.0) 1 (25.0) 1 (14.3) 1 (50.0) 6 (21.4) 教育心理学研究 13 0 (0.0) 0 (0.0) 3 (42.9) 1 (50.0) 9 (32.1) 心理臨床学研究 7 3 (30.0) 0 (0.0) 1 (14.3) 0 (0.0) 3 (10.7) 実験社会心理学研究 4 0 (0.0) 0 (0.0) 2 (28.6) 0 (0.0) 2 (7.1) 社会心理学研究 3 0 (0.0) 1 (25.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 2 (7.1) 発達心理学研究 3 0 (0.0) 1 (25.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 2 (7.1) 犯罪心理学研究 2 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 2 (7.1) 応用心理学研究 1 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 1 (3.6) 家族心理学研究 1 1 (10.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 質的心理学研究 1 0 (0.0) 1 (25.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 臨床心理学 1 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 1 (3.6) 合計 51 10(19.6) 4 (7.8) 7 (13.7) 2 (3.9) 28(54.9) ※( )内は% Figure1 いじめ研究数の年代別推移

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年代に1報,2010−2020に1報の2報の発表のみであった。本邦ではいじめ現象を測定する尺度の 開発が送れている可能性が示された。相関研究は,1990−1999年から発表され始め,2000−2009 年は発表がなく,2010年以降急激に研究数が増加したことが示された。  縦断/横断研究の年代別推移を Table3に示した。事例研究10報については縦断/横断のコード 化を行わなかったため,全41報が抽出された。縦断/横断研究の累計を見ると,横断研究が35報, 縦断研究が6報であり,本邦におけるいじめ研究では横断研究が中心的な研究法であることが示さ れた。加えて,縦断/横断研究ともに年代ごとに研究数が増加していることが示された。 いじめ研究の研究対象者  続いて,調査対象者を研究法ごとに Table4に示した。対象者の累計は多い順に,中学生,大学生, 小学生,高校生,未就学児,教員,専門学校生であり,中学生を対象とした研究が全体の41.8%,大 学生を対象とした研究が全体の23.6%であった。本邦におけるいじめ研究の主な対象者は中学生で あることが示された。  研究法ごとに対象者の特徴を見ると,実験研究および相関研究は全体の傾向と同様に中学生を対 象とした研究が最も多く,次に大学生を対象とした研究が多いことが示された。。一方で,質的研究 では中学生を対象とした研究はなく,未就学児および大学生を対象とした研究のみであることが確 認された。尺度構成研究では,小学生および中学生を対象とした研究が1報ずつ発表されているこ とが示された。 Table2 研究法の年代別推移 1980−1989 1990−1999 2000−2009 2010−2020 合計 事例 0 (0.0) 1 (12.5) 6 (33.3) 3 (12.5) 10 質的 0 (0.0) 0 (0.0) 1 (5.6) 3 (12.5) 4 実験 1 (100.0) 2 (25.0) 2 (11.1) 2 (8.3) 7 尺度構成 0 (0.0) 1 (12.5) 0 (0.0) 1 (4.2) 2 相関 0 (0.0) 4 (50.0) 0 (0.0) 15 (62.5) 28 合計 1 (2.0) 8 (15.7) 18 (35.3) 24 (47.1) 51 ※( )内は% Table3 横断/縦断の年代別推移 1980−1989 1990−1999 2000−2009 2010−2020 合計 横断 1 (100.0) 6 (85.7) 10 (83.3) 18 (86.0) 35 縦断 0 0.0 1 (14.3) 2 (16.7) 3 (14.0) 6 合計 1 (2.4) 7 (17.1) 12 (29.3) 21 (51.2) 41 ※( )内は%

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いじめ研究の分析方法  いじめ研究ではどのような分析方法が用いられているのかを示すため,実験研究・尺度構成研究・ 相関研究の37報の論文を対象に分析方法について分類を行った(Table5)。その結果34報(91.9%) の論文は変数を連続変数として扱い,3報(8.1%)の論文で変数を離散変数として扱っていた。加え て,離散変数として扱っている3報はすべて理論的中央値によって離散化を行っていることが示さ れた。本邦では,変数を離散化せず連続変数として扱う分析方法を用いた研究が中心であることが 示された。 いじめ研究の研究焦点者  本邦のいじめ研究において,焦点化されているいじめの立場を明らかにするため,各研究の研究 焦点者についてコード化を行った。1つの研究で複数の立場に焦点化している場合には,複数コー ド化した。その結果66件のコード化が行われた。研究焦点者は多い順に,被害者,加害者,傍観者, 集団,教員,親であった。被害者・加害者・傍観者を焦点者とした研究が全体の87.9%を占めること が明らかとなった。よって,本邦におけるいじめ研究の中心的な研究焦点者は,被害者・加害者・傍 観者であることが示された。  年代ごとの研究焦点者の推移を見ると,被害者研究は1990年以降に発表され始め,2000年以降に 急激に増加していることが示された。加害者研究は,2000年以降に急激に増加していることが示さ れた。傍観者研究は,1980年代から発表されており,2010年以降急激に増加していることが示された。 Table4 いじめ研究の対象者 小学生 中学生 高校生 大学生 未就学児 専門学校生 教員 合計 質的 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 1 (7.7) 1 (50.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 2 実験 0 (0.0) 4 (17.4) 0 (0.0) 3 (23.1) 0 (0.0) 0 (0.0) 1 (50.0) 8 尺度構成 1 (12.5) 1 (4.3) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 2 相関 7 (87.5) 18(78.3) 6 (100.0) 9 (69.20) 1 (50.0) 1 (100.0) 1 (50.0) 43 合計 8 (14.5) 23(41.8) 6 (10.9) 13(23.6) 2 (3.6) 1 (1.8) 2 (3.6) 55 ※( )内は% Table5 いじめ研究の分析方法 研究数 % 離散化あり 平均値 0 (0.0) 四分位 0 (0.0) クラスタ 0 (0.0) カットオフ 0 (0.0) 理論的中央値 3 (8.1) 離散化なし 34 (91.9) 合計 37 (100.0)

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教員研究は,1990年以降発表されているものの,その数は未だ少ないことが示された。集団に関す る研究は2000年以降に急激に増加していることが示された。親に関する研究は2000−2009年に1 報発表されたのみであった。  研究法ごとの研究焦点者を見ると,被害者研究では相関研究が17法(54.8%)であり中心的な研究 方法であることが示された。加えて,被害者研究では事例研究が9報(29%)であり,いじめの事例 研究の大半が被害者を対象としていることが示された。次に,加害者研究では,相関研究が15報 (83.3%)と中心的な研究方法であることが示された。傍観者研究では,相関研究が5報(55.6%),実 験研究が4報(44.4%)であり,他の焦点者と比較して実験研究が用いられる割合が高いことが示さ れた。教員研究は,相関研究によるものが2報(100.0%)であり,相関研究のみが行われていること が示された。集団研究では,相関研究が4報(80.0%),尺度構成が1報(20.0%)であり,相関研究が 中心的な研究報であることが示された。親研究では,質的研究が1報(100.0%)のみであり,量的な 研究は進められていないことが示された。 各研究焦点者に関連のある変数  いじめとの関連が検討されてきた変数について整理するため,浅井(2012)の方法を参考に,研究 焦点者ごとにこれまで関連が検討されてきた変数を “ 各立場が影響される要因 ” と “ 各立場が影響 を及ぼす要因 ” に分類し整理した。 Table6 いじめ研究の焦点者の年代別推移 被害者 加害者 傍観者 教員 集団 親 合計 1980−1989 0 (0.0) 0 (0.0) 1 (11.1) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 1 1990−1999 6 (19.4) 0 (0.0) 2 (22.2) 1 (50.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 9 2000−2009 13(41.9) 10(55.6) 0 (0.0) 0 (0.0) 2 (40.0) 1 (100.0) 26 2010−2020 12(38.7) 8 (44.4) 6 (66.7) 1 (50.0) 3 (60.0) 0 (0.0) 30 合計 31(47.0) 18(27.3) 9 (13.6) 2 (3.0) 5 (7.6) 1 (1.5) 66 ※( )内は% Table7 いじめ研究の焦点者(研究法ごと) 研究法 被害者 加害者 傍観者 教員 集団 親 合計 事例 9 (29.0) 1 (5.6) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 10 質的 1 (3.2) 1 (5.6) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 1 (100.0) 3 実験 3 (9.7) 1 (5.6) 4 (44.4) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 8 尺度構成 1 (3.2) 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 1 (20.0) 0 (0.0) 2 相関 17(54.8) 15(83.3) 5 (55.6) 2 (100.0) 4 (80.0) 0 (0.0) 43 合計 31(47.0) 18(27.3) 9 (13.6) 2 (3.0) 5 (7.6) 1 (1.5) 66 ※( )内は%

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 被害者に関連のある変数について Table8に示した。被害者研究では,被害に影響を及ぼす要因と, 被害が影響を及ぼす要因の両者について広く検討されており,特に被害が影響を及ぼす要因につい て検討した研究が多いことが示された。すなわち,“ いじめ被害経験は被害者にどのような影響を 及ぼすのか ” が中心的な研究課題であることが読み取れた。被害に影響を及ぼす要因としては,被 害者の “ 特性要因 ” が,被害が影響を及ぼす要因としては “ 精神的健康 ” について多く検討されて きたことが明らかとなった。精神的健康は,抑うつや自尊感情によって測定されることが多いこと が示された。 Table8 被害者に関連のある変数

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 次に,加害者に関連のある変数について Table9に示した。加害者研究では,加害傾向に影響を及 ぼす要因についてのみ検討されており,“ 加害行為につながる要因を明らかにすること ” が中心的 な研究課題であることが読み取れた。また,加害に影響を及ぼす要因として加害者の “ 特性要因 ” について多く検討されてきたことが明らかとなった。  次に,傍観者に関連のある変数について Table10に示した。傍観者研究では,傍観傾向に影響を 及ぼす要因についてのみ検討されており,“ どのような場合に傍観行動が生起するのか ” について 検討することが中心的な研究課題であることが読み取れた。また,傍観行動に影響を及ぼす要因と して,傍観者の “ 特性要因 ” について多く検討されてきたことが明らかとなった。 要因 具体的な変数 影響 論文 集団規範 否定的集団規 範 否定的な集団規範は、加害傾向に負の効果を持つ。 大西(2007) 大西・黒川・吉田(2009) 大西・吉田(2010) 共感性 共感性は、加害傾向への負の直接効果と、いじめへの否定 的な集団規範意識を媒介した加害傾向への負の間接効果を 持つ。 本間(2003) 大西・吉田(2010) 誇大的自己愛 傾向 誇大的自己愛傾向は、いじめ否定的な集団規範意識を媒介 し、正の間接効果を持つ。 大西・吉田(2010) 不機嫌・怒 り・無力感 不機嫌・怒り・無力感は加害傾向に、正の効果を持つ。 岡安・高山(2000) 仮想的有能感 仮想的有能感が高い者は、いじめ加害・被害経験ともに多 い。 松本・山本・速水(2009) 攻撃性 加害経験のある者は、攻撃傾向が高い。 内海(2010) 村山ら(2015) 排他性 排他性は、加害傾向に正の効果を持つ。 三島(2003) 社会的スキル 社会的スキルは、男子においてのみ加害傾向に負の効果を 持つ。 三島(2003) ADHD傾向 ADHD傾向が高い者は、加害傾向が高い。 田中ら(2015) 非行性 いじめ加害および被害の両方を経験しているものは、強い 非行性を持つ 村山ら(2015) 道徳性 道徳性はいじめ停止に正の効果を持つ。 本間(2003) 自己像の不安 定さ 自己像が不安定であり、いじめ被害を経験したものは、加 害経験が多い。 大西・黒川・吉田(2009) 関係性の良好 さ 教師との関係が良好でない場合に、加害傾向が高い 岡安・高山(2000) 教師の指導 教師による指導が、加害の停止に影響する 本間(2003) 教師認知 「受容・親近・自信・客観」の教師認知は、いじめへの否 定的集団規範および、いじめに対する罪悪感の予期を媒介 し、加害傾向に負の間接効果を持つ。「罰」の教師認知 は、いじめ加害傾向に正の直接効果を持つ。 大西・黒川・吉田(2009) インターネッ ト使用時間 ネットいじめの加害・被害を両方経験しているものは、そ うでない者に比べて、夜の携帯でのインターネット使用時 間が有意に長い。 内海(2010) 村山ら(2015) 被害経験 被害経験があり、自己像が不安定なものは、加害経験が多 い。 大西・黒川・吉田(2009) 加害に影響 を及ぼす要 因 特性 教師との関 係性 環境 Table9 加害者に関連のある変数

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 次に,集団に関連のある変数について Table11に示した。集団研究では,集団規範の形成に及ぼ す要因および,集団規範が影響を及ぼす要因の両者について広く検討されており,特に集団規範が “ 加害傾向 ” に及ぼす影響について検討した研究が多いことが示された。

Table10 傍観者に関連のある変数

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 最後に,教員に関連のある変数について Table12に示した。教員研究では,教員が影響を及ぼす 要因についてのみ検討されてきたものの,研究数は2報と少なく十分な検討には至っていない。

4.考 察

 本研究では,国内の51編のいじめ研究に関する先行研究を元に,年代ごとの研究数,研究法,研 究対象者,分析方法,研究焦点者,いじめとの関連のある変数について整理を行った。 年代ごとの研究数の推移と研究法,調査対象者  本研究で示した年代ごとの研究数の推移から,いじめ研究が進展したのは2000年以降であり,と くに2010年以降急激に増加していることが明らかとなった。いじめ問題は1980年代から注目され ていたが,いじめ研究は近年になって進展したものであるといえる。これは,2013年にいじめ防止 対策推進法が公布されたことで,いじめ問題への取り組みが急速に進められた事と関連していると 考えられる。また研究法の変化を踏まえると,2000−2009年では,事例研究や質的研究を中心に仮 説生成が進められ,2010年以降に尺度構成や相関研究などの統計的手法を用いた,実証的研究が進 められてきたと考えられる。  その一方で,本邦では尺度構成研究が少ないことが明らかになった。本研究で抽出された尺度構 成研究は,河村・田上(1997)による “ いじめ被害・学級不適応児童発見尺度 ” と,伊藤・宇佐美(2017) による “ 新版中学生用学級風土尺度 ” の2報のみであった。尺度作成の研究が不足していることか ら今後の研究において,現代的ないじめの様態を踏襲した上で,いじめ被害を発見するための尺度 を開発する必要があるだろう。近年のいじめの様態については,“ コミュニケーション系 ” のいじ めが主流となっており(文部科学省,2019),被害者が精神的苦痛を表明せずに迎合的な反応をとる ことが指摘されている。この知見は,“ コミュニケーション系 ” が,“ 暴力系 ” のいじめよりも発見 が困難となっていることを示している(森口,2007)。したがって,いじめ被害を発見するための尺 度を作成する際には,近年主流となっているコミュニケーション系いじめの測定について,検討を 重ねる必要がある。また,いじめの認知件数が最も多いのは小学生であり,重大事態に当たるケー スが最も多いのは中学生である(文部科学省,2019)。今後は,いじめ問題が深刻である小学生・中 学生を対象として調査可能な尺度を開発していく必要があるだろう。  本邦におけるいじめ研究では,横断研究がほとんどであり,縦断研究は少ないことが明らかになっ Table12 職員に関連のある変数

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た。いじめ被害による影響は長期に渡ることが多くの研究で明らかになっている(坂西,1995;水谷・ 雨宮,2015)。いじめによる長期的な影響について詳細に検討するため,縦断研究による知見の蓄積 が求められるだろう。  また,本研究では本邦のいじめ研究では中学生が対象者となることが多いことが示された。重大 事態に当たるケースが中学生で最も多いことを鑑みると,調査対象者として中学生を選択すること は妥当であると考えられる(文部科学省,2019)。しかし,いじめの認知件数が最も多いのは小学生 である(文部科学省,2019)。本研究から,小学生を対象としたいじめ研究は,大学生を対象とした 研究よりも少ないことが明らかになった。今後は,小学生を対象としたいじめ研究を蓄積していく 必要があるだろう。 いじめ研究の分析方法,研究焦点者,関連のある変数  いじめ研究の分析方法に関しては,91.9%の研究が変数を離散化せずに連続変数として分析して いることが明らかになった。連続変数を離散化することにより,検出力および分散説明率が減少し, 研究結果が歪められる可能性があるため(MacCallum, Zhang, Preacher, & Rucker,2002),本邦の いじめ研究における分析方法の傾向は望ましいと考えられる。  本邦のいじめ研究では,被害者・加害者・傍観者に関する研究が多く,教員・集団・親に関する研 究は少ないことが示された。先行研究からは,いじめの停止に教員は重要な役割を果たし(若島, 2007),教師との関係性は加害者の加害行為に関連することが示されている。また,いじめに否定的 な集団規範はいじめの発生を抑制することが明らかになっている(大西・吉田,2008;大西・吉田, 2010;武蔵・河村,2015)。他方で,いじめ加害傾向には共感性や非行性が関連することが示されて いるが,子どもの共感性や非行性には親子関係が関連することが示されている(松井,2002;八越・ 新井,2007;大西・吉田2010)。いじめ問題の解決に資するため,教員・集団・親に関する研究も今 後蓄積していく必要があるだろう。  また被害者研究において主に検討されてきたこととして,いじめの被害経験が精神的健康に与え る影響があることが示された。これらの研究は,いじめの被害者への支援の重要性を示唆するもの であり,必要な研究であるといえる。一方で,いじめが被害者の精神的健康に負の影響については, そのプロセスの中で,ストレス認知や対処行動などの変数が媒介していることも考えられる。とく に,近年のいじめに関する知見では,被害者が精神的苦痛を表明せずに迎合的な反応行動を取るこ とが明らかになってきているが,これは被害者が選択した対処行動であると考えられる(森口, 2007)。そのため今後の研究では,被害者の対処行動選択に影響を及ぼす要因について検討する必 要があるだろう。また,精神的健康,ストレス反応などの他の変数を媒介し最終的に規定される変 数ではなく,いじめに対するストレス認知などの,よりいじめ被害経験によって直接的に規定され る変数から被害者の精神的苦痛を測定していく必要があるだろう。  加害者研究では,加害行為につながる要因について主に検討されてきた。これらの研究は,いじ めの発生予防や予測に必要な知見であるといえる。一方で,これらまでの研究では,いじめのコミュ

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ニケーションによって加害者が受ける影響については検討されていないことが明らかになった。傍 観者研究でも,同様に傍観行動につながる要因について主に検討されてきており,傍観者が受ける 影響については検討されていない。近年主流である “ コミュニケーション系 ” のいじめと密接に関 連する “ からかい ” や “ いじり ” では,それぞれの児童生徒が集団内の役割である “ キャラ ” を自覚 しながら,それに見合った行動をとっていくことが望まれており,それを遂行できない場合には “ 空 気を読めない人物 ” として,集団から阻害される可能性があるとされる(土井,2008;土井,2009; 向井,2010)。そのような中で,加害者や傍観者として位置づけられる児童生徒は,自身の役割に適 応するために加害行為や傍観行動を行っている可能性がある。そのため,今後の研究で,いじめが もつ加害者・傍観者にとっての機能について明らかになれば,いじめ以外の代替手段を提案するよ うなアプローチも可能になると考えられる。このようなことから,いじめが加害者・傍観者とされ る児童生徒にどのような影響があるのかについて検討していく必要があるだろう。

5.本研究の限界

 本研究では論文の検索方法として,CiNii-Articles を使用し論文の抽出を行った。しかし,本研 究では抽出されなかったいじめに関する論文も存在する。また,今回は紀要論文や研究所における 報告書,学術書についてはレビューの対象としなかった。すなわち,本研究の結果は抽出された51 編の研究動向だけを示したものであり,対象となった学術誌以外に一般化することはできないだろ う。しかし,臨床心理学分野における主要な学術誌を選択し,いじめ問題が注目され始めた1980年 以降の論文をすべて収集しているため,本邦のいじめ研究の動向は一定の水準で捉えられていると 考えられる。  いじめ問題は1980年代以降,深刻な学校問題として注目されてきたが,いじめ研究が進展したの は2000年以降で,特に実証的研究が進展したのは2010年以降である。本邦におけるいじめ研究は 未だ十分であるとは言えない。いじめは社会動向に伴いその様態を変化させているため,今後はい じめの様態の変化を把握しながら,基礎的研究を繰り返し,その時代に合わせたいじめ研究を行っ ていく必要があるだろう。 【引用文献】(分析に用いた論文と重複する論文は引用文献では割愛した) 浅井継悟(2012)日本における過剰適応研究の研究動向 東北大学大学院教育学研究科研究年報,60⑵,283-294. Barlett, C., & Coyne, S. M.(2014)A meta-analysis of sex differences in cyber-bullying behavior: The moderating

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The purpose of this study is to sort out the research trends of studies on bullying, and to show the research subjects. In this study, we conducted a systematic review of studies on bullying in Japan. Five variables were coded to clarify the characteristics of the study. Studies on bullying have grown exponentially since 2000. The main research method was correlation research. Junior high school students were the most selected as research subjects. 91.9% of studies used variables as continuous variables. In Japan, the most studies were on victims. From these results, we discussed the prospect of studies on bullying.

Keywords:Bullying, Coding, Systematic review

Review of Studies on Bullying Conducted in Japan

from 1980 to 2020

Kazuma SAKAMOTO (Graduate Student, Graduate School of Education, Tohoku University)

Kouhei KOIWA (Graduate Student, Graduate School of Education, Tohoku University)

参照

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