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幼稚園教育実習後のボランティア活動の意義について

Educational meanings of volunteer activities after teaching practice at the kindergarten 吉 岡 良 介*

      荻 原 ひろみ*

YOSHIOKA Ryosuke   OGIHARA Hiromi

要約:本研究では,山梨大学教育学部附属幼稚園で,教育実習を行った学生を対象に 行っている『環境構成ボランティア活動』に参加した学生にアンケート調査を行い, 活動した内容と,結果として学べたことや感じたことの分析をした。分析の結果,学 生自身が主体的に取り組む活動としての教育実習後におけるボランティア活動の意義 として,以下2点が明らかとなった。1点目は,刻々と移り変わる現場で,その時々 に必要とされる活動にボランティアとして自ら携わることにより,学生は,実習中に は培うことができなかった応用力を培うことができるということである。2点目は, 子どもの育ちを願いながら3週間共に過ごしてきた指導教員と実習生は,継続的なボ ランティア活動を通して,子どもの育ちを共有する関係となりうるということである。 そこには,指導教員と学生とが,子どもの育ちを実際に共有してきた体験があるから こそ見出すことができる,育ちをみとる喜びがあるということが明らかになった。 キーワード:ボランティア活動,幼稚園,教育実習,教職への意欲

Ⅰ.問題

1.学生の現状  澤登 (2019) は,『教育学部学生の進路希望の推移と教職支援活動』の調査の中で,「最も特徴的な のは,教育実習を経験した3年次(個人面談は1年次と2年次は5~6月に実施し,3年次は後期 教育実習終了後の 10 月に実施)に教職希望割合が大きく減少することである」と述べている。また, 同調査内(澤登,2019)で,「教育実習(3週間ずつ)を経験して,教えることや子どもたちと関わ ることの楽しさを知り,厳しい中にもやりがいを感じて,教育実習前よりも教師を目指そうという 意欲が高まった学生は多い。逆に,教育実習を通じて,『自分は教師に向いていない』『教師として の資質がない』『子どもの成長に関わる責任の重さを感じた』『子どもとの関わりが大変だと感じた』 『子どものために一生尽くしていけるか疑問を感じた』等々,教師への道のりの厳しさを大きく受け 止め,自分には適性がないと判断したり自信をなくしたりする学生が増えているのではないか」と 学生が教育実習を経験することによって教職への意欲をなくしてしまう傾向について分析している。 教育実習中の学生は,日々の課題に追われるが故に,教職に対する過酷さや大変さを強く感じやす くなり,教職に対する意欲を低下させてしまうこともある。しかし,現場における経験は,学生に とって,自分自身の進路を見つめ直す機会としてはとても貴重な時間でもある。 2.ボランティア活動の企画とそのねらいについて  教育実習での実践や活動が,教師が行っている仕事の全てではない。学生自身が,教育実習生と * 附属幼稚園

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は違った立場で現場にかかわり,教育実習だけでは知り得なかった教師という仕事の新たな側面を 知る機会があることによって,教職に対する考えを見つめ直す機会や,教師を志す学生の意欲を引 き出すことができると考えられる。  例えば,掃除一つとってみても,「やらなければならないこと」として取り組むことと,「子ども が遊びやすいように工夫しながら行うもの」として取り組むこととでは,やりがいや気持ちに大き な差が現れる。学生にとって,『学生ボランティア』という立場を利用することは,教職に対するや りがいを感じたり,新たな一面に気付きや発見を見出したりすることにつながると考えられる。  そのような考えのもと,山梨大学教育学部附属幼稚園(以下,本園)では,2018(平成 30)年度 から本園で教育実習を行った学生を対象に『環境構成ボランティア』を企画した。内容としては, 保育終了後の,園内の環境整備や教材準備などである。

Ⅱ.目的

 本人の希望により参加した学生が,保育終了後の,園内の環境整備や教材準備などのボランティ ア活動に取り組むことでどのような成果を感じ取ることができたのか,活動の内容とその理由を分 析することで,ボランティア活動を行うことの意義について明らかにすることを目的とする。その 際,園側では,学生が達成感をもちやすい活動を選択し,活動内容の意義や意図を事前に説明する ことによって,学生が自ら行うことに対してやりがいを感じることができるよう配慮していく。そ うした取り組みの中で,明らかにされた事項に基づき,今後の教育ボランティアとして活動する学 生への向き合い方についての具体的な改善策を検討する。

Ⅲ.方法

1.対象  山梨大学教育学部学校教育課程幼小発達教育コース(幼稚園教諭免許と小学校教諭免許の取得が 卒業要件)に在籍する学生のうち,前期教育実習(5月8日~5月 28 日)を本園で行った3年次生 12 人。(内2人は参加希望をしなかったため10人(A~J))が研究の対象となった。 2.期間や日時  2019 年6月3日(月)から,本園1学期終了の7月 18 日(木)までとした。学生の活動希望日を 図1で収集した。

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3.活動内容  花植え・絵本整理・砂場道具掃除・保育室掃除・保育参加準備・未就園児見学会場片付け・運動 能力測定準備・窓拭き・短冊作り・樋掃除・大型積み木移動・田んぼ整地・ペットボトルシャワー 作り・公開案内発送準備・ボイラー室整理・太鼓移動・大型絵本修復・黒板清掃・お知らせはんこ 付き・年少組制作物づくり・プール空気入れ・短冊にモールをつける・七夕製作用折り紙切り・年 少プール準備・人工芝片付け・プール片付け・誕生会準備・教材室整理片付け・七夕短冊を笹から 外す・職員室廊下清掃整理・年長組アルバム表示消し・七夕台紙貼り・教材室整理 図1 学生の活動希望日に関する調査用紙

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4.調査方法

 活動後,『ミニ調査』と題した簡易のアンケート調査(図2参照)を行い,2つの項目に記入をす る。

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(1)その日に行ったボランティア活動に対し,以下の3つの観点から1つにチェックを入れる。 ①「教職に対する強い情熱」に関係すること ②「教育の専門家としての確かな力量」に関係すること ③「総合的な人間力」に関係すること  この3つの観点は,中央教育審議会の 2006(平成 18)年の「今後の教員養成・免許制度の在り方 について」(答申)の「教員に求められる資質能力」をそのまま引用した。 (2)今日の成果(学べたことや感じたことなど)について,簡潔に記入する。 5.倫理的配慮   『環境構成ボランティア』は任意であること,『ミニ調査』の目的等については,対象の学生に口 頭および文書で説明した。

Ⅳ.結果と考察

1.対象学生の参加時間  延べ参加時間については,45 時間であった。学生別の時間数の内訳を表1に示す。あくまでも自 由意志に基づく活動のため,少ない学生と多い学生とで3倍の差があった。 図3 ボランティア活動で得たこと(3つの観点からの選択) 表1 活動時間の学生別内訳(単位:時間) 対象学生 A B C D E F G H I J 時間数 3 5 6 5 3 5 6 5 5 2 2.チェック項目の内訳について  チェック項目の内訳を図3に示した。「①教職に対する情熱」に関係すること,「②教育の専門家 としての確かな力量」に関すること,「③総合的な人間力」に関係すること,の3つの項目を立て, 調査を行ったが,「①教職に対する情熱」に関係することが全体の 45%,「②教育の専門家としての 確かな力量」に関係することは42%であった。このことから,学生はボランティア活動を重ねる ことで,教職に対する意欲を高めたことがわかる。

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 また,「③総合的な人間力」に関することも全体の 13%であったことから,教職という意識以上に, 「社会人」として,また生活を営む一個人としての意識をもって取り組んでいたことがわかる。  これらの結果からは,活動内容は同じでも,学生によって感じ方が異なるということもわかった。 例えば6月3日,4人が同日に「花植え・絵本整理」の活動を行ったが,「①教職に対する情熱」に 関係することと,「②教育の専門家としての確かな力量」に関係することに2人ずつチェックを入れ ている。  ①は,「子どもがより多くの自然に触れることができるようにしていると感じた」(1A)(数字は整 理番号でアルファベットは対象学生の記号 以下,同様)②は,「テントのところにプランターを置 くことで安全面も配慮していた」(2B)とある。このことから,活動内容に限らず,個々人で活動に 対して見出す意義が異なるということが読み取れる。 3.自由記述について  アンケート調査で記述された内容の分析を行ったところ,参加した学生にとって,以下のような ことが学びにつながったと分かる。 (1)「①教職に対する情熱」  「私の教育実習中に行われていた田んぼ作りがどんどん発展しているのだなと嬉しくなった。子ど もたちが楽しく活動できるように環境を作っていきたいと感じた」(15H)や,「実習の時と比べて願 いや思いがより大きくなっている様子を見ることができて嬉しく思いました」(31G)とあるように, 実習後の子どもたちの姿を,直接的ではないが,遊んでいた形跡や保護者へのお知らせから知った り,教師から聞いたりしていく中で,『子ども』への愛情を深めている様子が捉えられる記述が見ら れた。  また,「もう卒園の準備が始まっていくのかと驚き,月日の流れの速さを感じた。短冊を貼る作業 では,一人一人のお願いを見ながら,元気かな?〇〇ちゃんは大人になったらこんな仕事をしたい のか!などと思いながら,ついじっくり見てしまうことも多く,とても楽しかった」(39H)とあるよ うに,作業をしながら思わず手を止めてしまうほど,子どもたちの書いた短冊から思いを馳せ,子 どもたちが日々考えていることに魅力を感じ,喜びを見出していることも記述から捉えられた。  「子どもたちがいかに安全で清潔な環境で生活できるかを1つ1つ考えることが必要」(5E)や, 「普段使っている雨樋であっても,やはり汚れているため,いつも水に濡れているからとかではな く,細かいところまで意識し,環境整備をしていくことが大切」(13E)という記述からは,日々保 育を行っていく上で,細部まで意識し,安全・安心な園生活を送ることができるようにしていくこ との大切さを感じている様子も捉えることができた。  そして,「3人で分担しながら効率よく作業することができた」(43G)とあるように,1人では行 うことが困難な活動も,分担をしていくことで,子どもに対する愛情を感じながら,教職という仕 事に対する責任を感じている様子が伺えた。 (2)「②教育の専門家としての確かな力量」  実習期間中,様々な現場での体験を行い,環境整備についても,ほぼ毎日のように保育環境を整 えてきた。しかし,前期実習期間中である5月の体験はできたとしても,実習期間では,その他の 月に行われている子どもたちの様々な活動については体験することができない。例えば,「プールを 用意するだけでなく,下に芝を敷いたり,熱中症にならないような対策(テントなど)をしたりと, 常に子どもの安全を守れるような工夫が必要だと思った」(25C)とあるように,7月に行われるプー

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ルでの水遊びの準備を行っていく中で,プールを出すという作業だけでない,安全対策の工夫や, 園児が怪我をしないようにするための環境構成について,ボランティア活動を通して学んでいるこ とがわかる。  また,「体力測定を今までやる側しか体験したことがありませんでしたが,実際に準備するのはか なり大変だと感じました」(6F)とあるように,これまでは,「子ども側」として体験してきた活動を, 「教師側」から行うことで,教師がやっていたことの大変さに改めて気付いているような記述が見ら れた。  実習期間中には気付くことができなかった発見をしている記述もあった。「実習中当たり前のよ うに見ていたテーブルクロスも,先生方が準備されて整えられていたということに気付きました」 (10D)とあるように,実習中は,子どもと日々真摯に向き合おうと必死に努力を積み重ねている。 3週間という短い期間では気付くことができなかった,「当たり前」のように準備されていたものが, 実は教師が意図して準備していたものであったという気付きをしていくことで,教師という仕事の 幅の広さだけでなく,子どもに向き合う際の環境構成の大切さを学ぶことができていた。 (3)「③総合的な人間力」  中央教育審議会答申では,「教師には,子どもたちの人格形成に関わる一人の人間として,豊かな 人間性や社会性,常識と教養,礼儀作法をはじめ対人関係能力,コミュニケーション能力などの人 格的資質を備えていることが求められる」と示されている。「気付いたところの掃除,本の修理など は教職にかかわらず,人として大切」(23D)や,「ボイラー室前からの廊下などを掃除しましたが, 結構ゴミがあり,1日でこんなに溜まる」(38E)とあるように,教職という仕事にかかわらず,一 人の人間として,豊かな人間性を培うことへの気付きが,ボランティア活動を通して感じている様 子を記述から捉えることができた。  また,「私が小学生の時に作った田んぼは池のように囲われている中に作ったため,ビニールシー トを入れて作るという考えはなかったので非常にすごいと感じました」(16F)のように,自分自身が 小さい頃に行った体験と現在を結びつけながら,新たな発見や気付きをしているような記述も見ら れた。   (4)(1)~(3)から見えてきたこと  活動後のアンケートを記入することが,学生にとって,自らの活動を振り返る機会となることが 感じ取れた。特に,自由記述の欄を設けたことにより,各自がやりがいを見出すことにもつながっ たことが捉えられる。  興味深いのは,「私の教育実習中に行われていた田んぼ作りがどんどん発展しているのだなと嬉し くなった。子どもたちが楽しく活動できるように環境を作っていきたいと感じた」(15H)や,「短 冊を貼る作業では,一人一人のお願いを見ながら,元気かな?〇〇ちゃんは大人になったらこんな 仕事をしたいのか!などと思いながら,ついじっくり見てしまうことも多く,とても楽しかった。」 (39H)からも見られるように,ボランティア活動において,実習中にかかわった子どもたちへの継続 的なかかわりによる「子どもの育ちの実感」が学生の達成感や意欲につながるということがわかっ た。顔が見える関係性の中で,具体的な「○○ちゃんの育ち」がフィードバックされたときに,自 分が何らかの形で子どもの成長にかかわっているという実感が生まれるのではないか。

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Ⅴ.まとめ

 本園での,教育実習は年少組には2人,年中,年長組に3~4人の学生を配属する。本園の指導 教員は,実習生の心身の健康に気を配りつつ,指導案や実習録の指導などに追われている。実習生 は,非日常的な状況の中,緊張しながらも自らの課題に懸命に向き合っていると感じている。そし て,3週間の教育実習期間を終える頃,ようやく子どもの実態が少し分かり,本園の指導教員と子 どもの育ちを共有しあえるようになっていく。  現在,教育現場では,教員として幅広い知識と質の高い実践力が求められている。今後,子ども を取り巻く状況が複雑化してくる中で,より一層「①教職に対する強い情熱」「②教育の専門家とし ての確かな力量」「③総合的な人間力」が要求されてくる。教育実習がその基礎を培うものであると するならば,刻々と移り変わる現場で,その時々に必要とされる活動にボランティアとして自ら携 わることは,学生にとっては,その基礎の発展として応用力を培うことになると考えられる。  また,子どもの育ちを願いながら3週間を共に過ごしてきた指導教員と実習生は,継続的なボラ ンティア活動を通して,子どもの育ちを共有する関係となりうると考えられる。そこには,指導教 員と学生とが,子どもの育ちを実際に共有してきた体験があるからこそ見出すことができる,育ち をみとる喜びがあるように思うのである。今後,こうした気づきをもとに,学生と本園の教職員に とって互恵性のあるボランティアの在り方を探っていきたいと考える。 【参考文献】 1)澤登義洋・角田修・ 秋山光永・田中勝,教育学部学生の進路希望の推移と教職支援活動,教育 実践学研究 24,pp.233-242 山梨大学教育学部附属教育実践総合センター,2019 2) 中央教育審議会,今後の教員養成・免許制度の在り方について(答申),文部科学省,2006 付記  この論文は,本園の園務分掌(教育実習)の一業務として,2018(平成 30)年6月上旬から開始 した『環境構成ボランティア』活動の 2019(令和元年)度前期分の取り組みをまとめたものである。 執筆の分担は,吉岡(実習主任)がⅠからⅣ,荻原(副園長)がⅤおよび全体調整,である。

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参照

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