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https://dspace.jaist.ac.jp/ Title オフショア開発の知識マネジメントを支える人事・教 育制度 -グローバルIT企業C社の事例研究-Author(s) 中里, 成実 Citation Issue Date 2016-03Type Thesis or Dissertation Text version author
URL http://hdl.handle.net/10119/13581 Rights
修 士 論 文
オ フ シ ョ ア 開 発 の 知 識 マ ネ ジ メ ン ト を 支 え る 人 事 ・ 教 育 制 度
- グ ロ ー バ ル I T 企 業 C 社 の 事 例 研 究 -
1350356 中 里 成 実 主 指 導 教 員 神 田 陽 治 審 査 委 員 主 査 神 田 陽 治 審 査 委 員 梅 本 勝 博 伊 藤 泰 信 白 肌 邦 生 北 陸 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 知 識 科 学 研 究 科 平 成 28年 2月目 次
第 1 章 序 論 ... 1 第 1 節 研 究 の 背 景 ... 2 第 1 項 IT 開 発 の 歴 史 ... 2 第 2 項 日 本 に お け る IT 開 発 ... 3 第 3 項 日 本 に お け る IT 開 発 の 課 題 ... 4 第 4 項 IT 開 発 拠 点 の 変 化 ... 5 第 5 項 オ フ シ ョ ア 開 発 の 進 展 ... 6 第 6 項 日 本 に お け る オ フ シ ョ ア 開 発 の 現 状 ... 6 第 7 項 日 本 企 業 が 考 え る オ フ シ ョ ア 開 発 の 課 題 ... 9 第 2 節 研 究 の 対 象 ... 10 第 3 節 IT 企 業 の ビ ジ ネ ス モ デ ル ... 14 第 4 節 研 究 の 目 的 ... 15 第 5 節 リ サ ー チ ク エ ス チ ョ ン ... 15 第 6 節 研 究 方 法 ... 16 第 7 節 論 文 の 構 成 ... 16 第 2 章 文 献 調 査 ... 17 第 1 節 グ ロ ー バ ル IT 企 業 の 業 績 の 変 化 ... 17 第 1 項 各 社 売 上 高 と 従 業 員 推 移 ... 18 第 2 項 従 業 員 一 人 あ た り 売 上 高 ... 22 第 3 項 収 益 性 と 配 当 ... 24 第 4 項 定 性 的 な 記 載 事 項 ... 25 第 5 項 人 材 育 成 ... 29 第 2 節 先 行 研 究 調 査 ... 30 第 1 項 グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン ... 30 第 2 項 知 識 マ ネ ジ メ ン ト ... 32 第 3 項 グ ロ ー バ ル リ ー ダ ー に 必 要 な 属 性 ... 34 第 4 項 異 文 化 理 解 ... 35第 5 項 グ ロ ー バ ル 人 事 制 度 ... 37 第 3 章 仮 説 設 定 ... 38 第 4 章 事 例 研 究 ... 39 第 1 節 研 究 対 象 と す る IT 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト ... 39 第 1 項 対 象 と な る プ ロ ジ ェ ク ト と 担 当 領 域 ... 39 第 2 項 C 社 の 概 要 ... 40 第 3 項 当 プ ロ ジ ェ ク ト の 特 異 点 ... 41 第 2 節 調 査 の 方 法 ... 42 第 1 項 概 要 ... 42 第 2 項 質 問 の 仕 方 ... 43 第 3 項 質 問 項 目 と 意 図 ... 44 第 5 章 調 査 結 果 と 調 査 結 果 か ら の 考 察 ... 47 第 1 節 調 査 結 果 ... 48 第 2 節 調 査 結 果 の 考 察 ... 57 第 1 項 ア ン ケ ー ト 結 果 の 概 要 ... 57 第 2 項 仮 説 に 対 す る 調 査 結 果 ... 58 第 3 項 日 本 の IT 開 発 と の 差 異 ... 60 第 3 節 他 の IT 企 業 へ の 調 査 ... 61 第 1 項 Cognizant 社 ... 61 第 2 項 NTT デ ー タ 社 ... 66 第 6 章 リ サ ー チ ク エ ス チ ョ ン に 対 す る 回 答 と 結 論 ... 69 第 1 節 リ サ ー チ ク エ ス チ ョ ン に 対 す る 回 答 ... 69 第 1 項 SRQ1 に 対 す る 答 え ... 69 第 2 項 SRQ2 に 対 す る 答 え ... 70 第 3 項 SRQ3 に 対 す る 答 え ... 71 第 4 項 MRQ に 対 す る 答 え ... 72 第 2 節 結 論 ... 73 第 1 項 理 論 的 含 意 ... 73 第 2 項 実 務 的 含 意 ... 74
第 3 項 将 来 研 究 へ の 示 唆 ... 74
第 7 章 参 考 文 献 ... 76 第 8 章 謝 辞 ... 80
図 目 次
図 2: 日 本 に お け る 一 般 的 な シ ス テ ム 開 発 フ ロ ー ... 4 図 3: ビ ジ ネ ス イ ノ ベ ー シ ョ ン 推 進 上 の 課 題 ... 5 図 4: オ フ シ ョ ア 開 発 を 始 め る 理 由 ... 7 図 5: オ フ シ ョ ア 開 発 の 対 象 業 務 範 囲 ... 8 図 6: 一 般 的 な シ ス テ ム 開 発 の 各 工 程 ... 8 図 7: 日 本 に お け る IT 開 発 体 制 ... 9 図 8: オ フ シ ョ ア 開 発 の 課 題 ... 10 図 9: 情 報 サ ー ビ ス 産 業 の 業 務 種 類 別 売 上 高 の 割 合 (H21) ... 11 図 10: グ ロ ー バ ル IT 企 業 の 売 上 高 推 移 ... 19 図 11: グ ロ ー バ ル IT 企 業 の 従 業 員 推 移 ... 20 図 12: 国 別 IT 技 術 者 供 給 数 ( 各 国 の Mathematics/Computer Science 系 学 士 過 程 卒 業 者 数 ) ... 21 図 13: グ ロ ー バ ル IT 企 業 の 従 業 員 一 人 あ た り 売 上 高 推 移 ... 23 図 14: 日 本 の IT 企 業 に お け る 人 材 育 成 投 資 ... 29 図 15: グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン の 道 筋 に お け る 各 段 階 ... 31 図 16: SECI モ デ ル ... 33 図 17: 世 界 で 通 用 す る 人 材 の 条 件 ... 34 図 18: 標 準 的 な IT 開 発 工 程 ( V モ デ ル に よ る ) ... 39 図 19: 当 プ ロ ジ ェ ク ト に お け る 地 理 的 位 置 関 係 ... 42 図 20: グ ロ ー バ ル IT 企 業 の 成 長 モ デ ル ... 73表 目 次
表 1: 代 表 的 な グ ロ ー バ ル IT 企 業 ... 12 表 2: イ ン ド 系 グ ロ ー バ ル IT 企 業 上 位 5 社 の 従 業 員 数 ... 18 表 3: グ ロ ー バ ル IT 企 業 の 売 上 高 推 移 ... 19 表 4: グ ロ ー バ ル IT 企 業 の 従 業 員 推 移 ... 20 表 5: グ ロ ー バ ル IT 企 業 の 従 業 員 一 人 あ た り 売 上 高 推 移 ... 23 表 6: グ ロ ー バ ル IT 企 業 の 売 上 高 利 益 率 ... 24 表 7: グ ロ ー バ ル IT 企 業 の 一 株 あ た り 配 当 額 ... 25 表 8: ア ン ケ ー ト 対 象 者 ... 43 表 9: ア ン ケ ー ト 項 目 と 質 問 の 意 図 ... 44 表 10: 調 査 結 果 ( 質 問 1 ) ... 48 表 11: 調 査 結 果 ( 質 問 2) ... 48 表 12: 調 査 結 果 ( 質 問 4) ... 49 表 13: 調 査 結 果 ( 質 問 5) ... 50 表 14: 調 査 結 果 ( 質 問 6) ... 50 表 15: 調 査 結 果 ( 質 問 8) ... 51 表 16: 調 査 結 果 ( 質 問 9) ... 52 表 17: 調 査 結 果 ( 質 問 10) ... 52 表 18: 調 査 結 果 ( 質 問 11) ... 53 表 19: 調 査 結 果 ( 質 問 12) ... 53 表 20: 調 査 結 果 ( 質 問 13) ... 54 表 21: 調 査 結 果 ( 質 問 17) ... 55第 1 章
序 論
は じ め に
本 研 究 ではオフショア開 発 の知 識 マネジメントを支 える人 事 ・教 育 制 度 について論 究 していく。 IT 開 発 は 、 20 年 前 で あれ ば 顧 客 の 拠 点 に シ ス テ ム エ ン ジ ニ アが 赴 き 、 開 発 作 業 を 進 めてきたが、顧 客 企 業 の様 々なニーズ、例 えばITに関 する専 門 的 な知 識 の提 供 やコスト の効 率 化 などに対 応 するため、グローバルIT企 業 は最 適 解 をもとめ世 界 各 地 にデリバリ ーセンターを開 設 しサービスを提 供 している。また、市 場 規 模 も拡 大 中 である。このビジ ネスモデルは一 般 的 にグローバルデリバリーと呼 ばれているが、高 度 なオフショア開 発 で ある。一 方 、日 本 企 業 はこのようなビジネスモデルに出 遅 れた感 があり、市 場 規 模 は海 外 ほど拡 大 していない。 世 界 的 なIT系 の調 査 会 社 であるGartnerの定 義 によれば、グローバルデリバリーとは、 顧 客 の世 界 各 地 の拠 点 に対 し、サービスプロバイダー(グローバルIT企 業 )が世 界 各 国 の拠 点 からアウトソーシングサービスを提 供 することとされている。実 際 、オフショア開 発 自 体 は20年 以 上 も前 から世 界 中 で実 践 されてきており、その結 果 、オフショア側 にも相 当 量 の知 識 ・経 験 が蓄 積 され、その知 識 ・経 験 を元 にSDLC(System Development Life Cycleの略 。コンピュータシステム開 発 の方 法 論 )に基 づいた各 社 独 自 の方 法 論 の整 備 、 ITIL(Information Technology Infrastructure Libraryの略 。ITサービスマネジメントにお けるベストプラクティス集 )やCMMI(Capability Maturity Model Integrationの略 。能 力 成 熟 度 モデル)といったITマネジメントフレームワークの適 応 も着 々と進 んできている。 日 本 におけるIT開 発 においてオフショア開 発 を行 う場 合 、日 本 (オンサイト)側 が作 成 したシステム仕 様 とシステム方 法 論 を元 にシステム開 発 の一 部 をオフショア側 で行 うケー スが大 半 であり、オフショア側 の位 置 付 けは協 力 会 社 の一 員 に過 ぎなかったが、オフショ ア企 業 も今 や日 本 のプライムベンダー並 みの知 識 ・経 験 を身 につけるとともに、グローバ ルデリバリーを円 滑 に行 うための方 法 論 やフレームワークの構 築 、ツール類 の作 成 など を行 うとともに、組 織 体 制 や人 事 ・教 育 体 制 を整 えてきている。 しかしながら、グローバルIT企 業 は一 夜 にしてグローバルデリバリーモデルを構 築 した わけではない。なぜならばIT開 発 が行 われる場 所 と使 用 される場 所 が異 なるということは、異 なる言 語 、文 化 、歴 史 を持 つ人 たちが協 業 することであり、デリバリーを進 める中 では、 バックグラウンドの違 いから認 識 齟 齬 が発 生 しやすいからである。さらに、一 部 自 動 化 は 進 みつつあるが、IT開 発 のほとんどの作 業 は人 がプログラムを一 行 一 行 書 いていく作 業 であり、開 発 規 模 が大 きくなれば大 量 の人 が動 員 されて作 業 を進 めていくので、個 々人 のスキルやマインドセットがデリバリーの成 否 に大 きく関 係 する。こうした背 景 から、本 研 究 では、グローバルIT企 業 のビジネスモデルを支 える人 に焦 点 を当 て、さらに人 を支 え る人 事 ・教 育 制 度 について論 究 していく。
第 1 節
研 究 の 背 景
は じ め に
そもそもシステム開 発 は高 度 な知 識 創 造 、暗 黙 知 と形 式 知 の往 還 による知 的 労 働 で あるとされる。具 体 的 には、顧 客 側 企 業 のユーザー部 門 ・システム部 門 、受 注 側 IT企 業 の間 で暗 黙 知 と形 式 知 が相 互 に往 還 運 動 を繰 り返 しながらより良 いシステム開 発 を行 っていくとされる。ところで往 還 運 動 は、言 語 、つまり文 書 や会 話 を通 して行 われるが、言 語 はそ の 言 語 を 使 う 人 々 の 文 化 や 歴 史 、 習 慣 を 反 映 し た も の で あ る。 よ っ て 、 グローバ ルデリバリーモデルのように顧 客 の世 界 各 地 の拠 点 に対 してサービスプロバイダー(グロ ーバルIT企 業 )が世 界 各 国 の拠 点 からアウトソーシングサービスを提 供 する場 合 には、 多 国 籍 かつ多 言 語 の環 境 となり、そのプロジェクトに参 加 するそれぞれの国 の人 がそれ ぞれの文 化 を背 景 に会 話 するとすれば、当 然 認 識 相 違 が発 生 する。グローバルIT企 業 は顧 客 のコスト最 適 化 や最 新 技 術 の導 入 といった要 望 に基 づき、グローバルデリバリー を進 めているが、従 来 のIT開 発 ではあまり発 生 しなかったコミュニケーションリスクを抱 え たITデリバリーでもある。そこでこの節 ではIT開 発 の歴 史 とIT開 発 拠 点 の変 化 およびオ フショア開 発 の現 状 について議 論 する。第 1 項 IT 開 発 の 歴 史
現 代 は誰 もがコンピュータを持 ち歩 く時 代 であるが、コンピュータが発 明 された当 時 は 非 常 に高 価 な製 品 であり、その適 用 範 囲 も計 算 が主 であった。そこで利 用 範 囲 を拡 大 するため、手 作 業 で行 われていた業 務 を IT 化 し、業 務 の効 率 化 を目 指 すこととなった。
例 え ば 、 手 書 き で 作 成 され た 伝 票 を 元 に 手 計 算 で 集 計 を 取 る と い っ た 業 務 を 、 記 載 さ れた内 容 をシステムに取 り込 むことで自 動 的 に集 計 を行 う、といったことである。こうした 時 代 には、現 在 行 われている業 務 プロセスをそのまま IT 化 するだけで効 率 化 が果 たせ た時 代 であると言 える。また、その当 時 は現 代 のように他 システムとの連 携 を図 る必 要 も なく、また業 界 標 準 的 な業 務 用 パッケージソフトなどもなく、ユーザー部 門 の求 める仕 様 に基 づき個 別 にシステムが構 築 された時 代 である。 図 1 : 情 報 シ ス テ ム の 歴 史 的 変 遷 (佐 藤 敬 (2003) 『情 報 社 会 を理 解 するためのキーワード :2』を元 に著 者 が作 成 ) その後 オンライン処 理 やデータベース技 術 、ネットワーク技 術 といった様 々な技 術 革 新 が 進 み 現 代 で は 世 界 中 の コ ン ピ ュ ー タ が ネ ッ ト ワ ー ク を 介 し て つ な が る 時 代 と な り 、 ま た 標 準 化 も図 られるようになったが、業 務 用 アプリケーションは企 業 内 に 閉 じ て いることが 多 いため、従 来 の開 発 スタイル同 様 に、ユーザー部 門 の求 める仕 様 に基 づき IT 化 され ることが多 い。 第 2 項 日 本 に お け る IT 開 発 このユーザー部 門 とシステム部 門 の関 係 性 であるが、例 えば、遥 か昔 に開 発 されたシ ステムが今 も現 役 として稼 働 していたり、ユーザー部 門 の IT 化 に対 する考 え方 が旧 態 依
然 であったりすることなどから、日 本 における企 業 内 のシステム化 は、ユーザー部 門 で発 案 され、その内 容 がユーザー要 件 書 としてシステム部 門 に提 出 され、さらにシステム部 門 から受 注 側 IT 企 業 に伝 達 され IT 開 発 が行 わるといった一 方 通 行 の関 係 で行 われるこ と が 多 い 。 言 い 換 え る と 、 顧 客 側 の 仕 様 通 り に シ ス テ ム は 構 築 さ れ 、 シ ス テ ム 部 門 や 受 注 側 IT 企 業 の知 識 ・経 験 は技 術 的 な側 面 にのみ終 始 し、本 当 の意 味 でのプロジェクト 参 加 者 全 員 による知 識 創 造 はあまり行 われて来 なかったと言 える。 図 2 : 日 本 に お け る 一 般 的 な シ ス テ ム 開 発 フ ロ ー (一 般 的 な業 務 アプリケーション開 発 の情 報 のフローについて著 者 が作 成 ) 第 3 項 日 本 に お け る IT 開 発 の 課 題 この一 方 通 行 となる理 由 は様 々ある。まず発 注 側 の状 況 であるが、図 3は(社 )日 本 情 報 システム・ユーザー協 会 が 2008 年 に発 表 した調 査 資 料 (第 14 回 企 業 IT 動 向 調 査 2008 ) の 一 部 で あ る 。 こ の 年 の 調 査 で は 、 重 点 テ ー マ と し て ビ ジ ネ ス イ ノ ベ ー シ ョ ン へ の 挑 戦 を掲 げ、イノベーション推 進 上 の課 題 を考 察 している。特 にイノベーションを推 進 す るための人 材 、スキルなどに関 する課 題 では、「人 材 に業 務 部 門 (ユーザー部 門 )と IT 部 門 が互 いに相 手 の領 域 への相 互 理 解 不 足 。ビジネスモデルを理 解 して IT を適 用 で きる人 がいない。」としている。 ((社 )日 本 情 報 システム・ユーザー協 会 :広 域 情 報 化 に代 表 される経 営 ・情 報 化 環 境 の変 革 に対 応 するために、ユーザーの立 場 での産 業 情 報 化 の推 進 を目 的 とし、特 にユ ーザー側 (発 注 側 )システム部 門 を代 表 する協 会 である。)
図 3 : ビ ジ ネ ス イ ノ ベ ー シ ョ ン 推 進 上 の 課 題 (日 本 情 報 システム・ユーザー協 会 (第 14 回 企 業 IT 動 向 調 査 2008)より転 載 ) IT 部 門 に業 務 を理 解 した要 員 が不 足 していれば、IT 部 門 から情 報 提 供 を受 ける受 注 側 IT 企 業 も顧 客 の業 務 の本 質 を理 解 できる要 員 が不 足 する。さらに、日 本 独 自 の IT 開 発 体 制 である、受 注 側 IT 企 業 の多 重 構 造 (外 部 業 者 に頼 るシステム開 発 体 制 )がこ れに拍 車 をかけることとなる。 こうした状 況 を踏 まえれば、単 にシステム開 発 要 件 が一 方 通 行 となるだけでなく、ユーザ ー部 門 →システム部 門 →IT 企 業 →IT 企 業 の協 力 会 社 へとシステム開 発 要 件 が伝 達 さ れるごとに、その中 身 の正 確 性 が落 ちていくことになる。 第 4 項 IT 開 発 拠 点 の 変 化 次 にIT開 発 を行 う拠 点 について考 察 する。IT開 発 拠 点 は、歴 史 的 には顧 客 企 業 の拠 点 を中 心 に行 われてきた。具 体 的 には顧 客 企 業 の拠 点 にIT企 業 がエンジニアを派 遣 し、 顧 客 企 業 のカウンターパートとともにシステムを構 築 してきた。PMBOKにおいてもプロジ ェクトを推 進 する際 の拠 点 はプロジェクトメンバーが一 箇 所 に集 まることを推 奨 している。 これはコミュニケーションロスを極 力 少 なくするためであると考 えられるし、現 在 のように通 信 インフラが整 わない時 代 にはそれ以 外 に方 法 がなかったとも言 える。日 本 でも多 くの 25 25
人材
人材確保の
確保の
対策は、
対策は、
即戦力となる
即戦力となる
「外部コンサ ル ・アウトソースの
「外部コンサ ル ・アウトソースの
活用」
活用」
・
・
「中途採用」
「中途採用」
と
と
「既存要員の育成」が
「既存要員の育成」が
拮抗
拮抗
ビジネスイノベーション人材不足への対策 (経営企画部門の回答) 26 26 26ビジネスイノベーション推進上の課題
ビジネスイノベーション推進上の課題
(インタビューより)
(インタビューより)
26 26 IT IT IT CIO CIO IT IT IT IT IT IT IT IT IT SE IT IT IT IT IT場 合 IT企 業 のエンジニアが顧 客 企 業 の拠 点 に常 駐 し、IT開 発 を進 めている。海 外 にお いても、2000年 問 題 が盛 んに言 われた1990年 代 後 半 、特 にアメリカではエンジニア不 足 による要 員 不 足 が深 刻 化 し、これを解 消 するために大 量 のインド人 エンジニアがオンサ イトに招 聘 され、2000年 問 題 を乗 り切 ったと言 われている。当 時 のインドは現 在 ほどIT教 育 が盛 んだったわけではないが、イギリス連 邦 に属 していた歴 史 から英 語 を話 す国 民 も 多 く、また一 部 のインド人 は英 国 で職 に就 くなど他 国 に比 べて欧 米 文 化 を受 け入 れや すい素 地 があったと言 える。また、この時 期 はインド経 済 が計 画 経 済 から自 由 化 する時 期 とも重 なる。 第 5 項 オ フ シ ョ ア 開 発 の 進 展 この2000年 対 応 のために欧 米 に渡 ったインド人 エンジニアの多 くは、対 応 終 了 後 に母 国 に帰 国 したが、対 応 期 間 中 に欧 米 企 業 と築 いた良 好 な関 係 、単 に人 間 関 係 だけで なく、知 識 ・経 験 に裏 打 ちされた信 頼 関 係 、を元 に今 度 は母 国 から欧 米 企 業 のIT開 発 を開 始 した。もちろんオフショア開 発 自 体 はそれ以 前 から行 われていたが、成 長 が加 速 したのはこの2000年 問 題 対 応 が契 機 であると言 われている。経 済 原 則 に従 えば、同 一 労 働 同 一 賃 金 にいずれは収 斂 していくものと思 われるが、少 なくとも現 時 点 では国 や地 域 の物 価 水 準 はそれぞれ異 なるため、現 実 的 な賃 金 格 差 が国 ごとに発 生 しており、特 にインドのIT企 業 はこれをビジネスチャンスととらえ、オフショア開 発 を推 進 していった。 第 6 項 日 本 に お け る オ フ シ ョ ア 開 発 の 現 状 一 方 、日 本 ではバブル崩 壊 後 の失 われた20年 の間 に、顧 客 企 業 からのコスト削 減 要 請 に基 づき中 国 を主 なオフショア先 としてオフショア開 発 が開 始 された。中 国 をオフショ ア 先 に 選 定 し た 理 由 は 、 時 差 が 1 時 間 し か な い こ と 、 中 国 国 内 に お け る 日 本 語 教 育 が 盛 んになった時 期 であったこと、つまりコミュニケーション言 語 を日 本 語 としやすかったこ と、および歴 史 的 文 化 的 に近 いことなどがあげられる。
図 4 : オ フ シ ョ ア 開 発 を 始 め る 理 由 (総 務 省 (オフショアリングの進 展 とその影 響 に関 する調 査 研 究 2007)より転 載 ) 総 務 省 の調 査 によれば、米 国 企 業 も日 本 企 業 もどちらもオフショア開 発 の目 的 の第 1 位 に開 発 コストの削 減 をあげているが、第 2位 は日 本 が人 材 不 足 の補 完 であるのに対 し、 アメリカの場 合 は開 発 のスピードアップであり、オフショア開 発 に対 する見 方 の違 いが興 味 深 い。 次 にオフショア開 発 の対 象 業 務 範 囲 について見 てみると、日 本 企 業 はシステム開 発 プ ロセスのうち、詳 細 設 計 から単 体 テストといった製 造 工 程 のみをオフショアの主 な業 務 範 囲 と考 えているのに対 して、アメリカの場 合 はシステム開 発 の全 工 程 を業 務 範 囲 と考 え ている。言 い換 えれば、日 本 の場 合 はオフショアベンダーを協 力 会 社 の一 つとして一 部 工 程 の外 注 先 と考 えているのに対 し、アメリカの場 合 はオフショアベンダーであろうがな かろうが、IT開 発 のパートナーと考 えていることがわかる。
図 5 : オ フ シ ョ ア 開 発 の 対 象 業 務 範 囲 (総 務 省 (オフショアリングの進 展 とその影 響 に関 する調 査 研 究 2007)より転 載 ) 参 考 までに一 般 的 なシステム開 発 手 法 の各 工 程 は以 下 の通 りである。 図 6 : 一 般 的 な シ ス テ ム 開 発 の 各 工 程 (一 般 的 なウォーターフォール型 のシステム開 発 手 法 を元 に筆 者 が作 成 ) オフショア開発の対象としている業務範囲(複数回答)(日本:n=96、米国:n=106) 4.2% 12.5% 74.0% 93.8% 86.5% 39.6% 6.3% 19.8% 46.2% 58.5% 76.4% 69.8% 37.7% 38.7% 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% 要件定義 基本設計 詳細設計 プログラム作成 単体試験 結合試験 総合試験 日本 米国 オフショア開発の対象としているソフトウェア(複数回答)(日本:n=96、米国:n=106) 2.1% 25.0% 80.2% 15.6% 0.0% 31.3% 4.2% 0.0% 23.6% 30.2% 68.9% 39.6% 4.7% 23.6% 2.8% 0.9% 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% OS ミドルウェア アプリケーション(業務系) アプリケーション(パーソナル・ビジネス系) アプリケーション(ゲーム系) アプリケーション(組込み系) その他 無回答 日本 米国
この状 況 は日 本 のIT開 発 がプライムベンダーを頂 点 とし、その傘 下 に協 力 会 社 が連 なる 多 重 構 造 をそのままにし、オフショアベンダーを協 力 会 社 の一 社 として組 み込 んだことに 起 因 している。 図 7 : 日 本 に お け る I T 開 発 体 制 一 方 、アメリカにおいては受 注 側 企 業 が多 重 構 造 になることは少 なく、オフショアベンダ ーであっても顧 客 企 業 から直 接 受 注 していることもあり、参 画 範 囲 は上 流 工 程 からとなっ ている。 第 7 項 日 本 企 業 が 考 え る オ フ シ ョ ア 開 発 の 課 題 次 にオフショア開 発 を進 める上 での課 題 について、総 務 省 が実 施 した調 査 によると、 日 本 企 業 は、品 質 に対 する不 安 、人 件 費 の上 昇 、言 語 面 でのコミュニケーションといっ た点 を課 題 としてあげている。
図 8 : オ フ シ ョ ア 開 発 の 課 題 (総 務 省 (オフショアリングの進 展 とその影 響 に関 する調 査 研 究 2007)より転 載 ) 一 方 、グローバルIT企 業 は顧 客 ニーズに対 応 するためグローバルデリバリーモデルを構 築 しており、市 場 規 模 も推 計 ではあるが2008年 の$70Bnから2012年 には$120Bnへと成 長 を遂 げている。これだけ大 量 のグローバルデリバリーが行 われているということは、こうし た課 題 は克 服 されつつあると考 える方 が妥 当 であろう。
第 2 節
研 究 の 対 象
本 研 究 における研 究 対 象 は、業 務 用 アプリケーション開 発 を主 な業 務 としているグロ ーバル IT 企 業 とする。 まず「IT 企 業 」の定 義 であるが、IT 企 業 と一 言 に言 っても様 々な業 態 がある。例 えば Google や Yahoo といった検 索 エンジンを提 供 する会 社 も IT 企 業 であるし、Amazon など も小 売 業 と言 うよりは IT 企 業 に位 置 付 けた方 がいいかもしれない。大 きく分 類 するとす れば、サーバや PC などハードウェアの提 供 する企 業 、通 信 ネットワークを提 供 する企 業 、 Windows などの基 本 ソフトウェアを提 供 する企 業 、稼 働 後 のシステム運 用 を提 供 する企 20 よそ同じ傾向を示している。 オフショア開発を進める上での課題 インフラ整備不十分 為替リスク 契約後の 仕様変更 知財保護 社内への技術蓄積 高い技術力人材確 保困難 情報セキュリティ不 安 現地人件費上昇 品質不安、 品質管理困難 言語問題コミュニ ケーション不安 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0% 70.0% 80.0% [オフショア実施企業(n=96)] [オ フ シ ョ ア 非 実 施 企 業 (n =1 3 6) ] オフショア開発の実施状況別にみたオフショア開発を進める上での課題(複数回答) (オフショア実施企業:n=96、オフショア非実施企業:n=136) 2.1% 13.5% 15.6% 16.7% 25.0% 26.0% 33.3% 36.5% 54.2% 58.3% 62.5% -80.0% -60.0% -40.0%40.0% -20.0%20.0% 0.0%0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% オフショア開発実施企業 60.0% 80.0% 48.5% 8.8% 71.3% 21.3% 47.8% 28.7% 33.1% 6.6% 26.5% 11.8% 3.7% 9.6% 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 品質に不安がある、品質管理が難しい 現地の人件費が上昇している 言語問題でコミュニケーションが難しい 高い技術力を持つ人材の確保が難しい 情報セキュリティ等に不安がある 知的財産権等の保護に不安がある 社内に技術等の蓄積が行えなくなる 為替リスクが大きい 契約後の仕様変更等に対応できない インフラの整備が不十分である その他 無回答 オフショア開発非実施企業業 、業 務 用 アプリケーション開 発 を提 供 する企 業 などに分 けることができる。経 済 産 業 省 の業 務 分 類 とそれぞれの業 務 種 類 別 売 上 高 は以 下 の通 りであり、この中 で、最 も売 上 規 模 が大 きく、また、知 識 移 転 や知 識 創 造 が活 発 に行 われる業 態 は、受 託 ソフトウェア 開 発 である。そのソフトウェア開 発 内 容 の多 くは業 務 用 アプリケーションの開 発 であるか ら、この研 究 では業 務 用 アプリケーション開 発 を主 に行 っている企 業 にスポットを当 てて 進 めていくこととする。 図 9 : 情 報 サ ー ビ ス 産 業 の 業 務 種 類 別 売 上 高 の 割 合 ( H 2 1 ) (経済産業省商務情報政策局(情報サービス産 業 の現 状 2012)より転 載 ) 次 にグローバル IT 企 業 であるが、欧 米 に本 社 があり、オフショア開 発 以 前 から存 在 する企 業 とオフショア開 発 を武 器 にグローバル IT 企 業 に成 長 した企 業 の 2 つのカテゴリ ーに分 けることができる。そこでまず概 要 を把 握 するために、それぞれのカテゴリーの企 業 から数 社 ずつと、日 本 企 業 との比 較 のために、日 本 の代 表 的 な IT 企 業 2 社 を選 定 し た。(詳 細 は第 2 章 に記 載 ) 7%
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12.6 6.1 5.2 6.9 4.5 2.0 6.5 2.5 1.1 3.1 6.9 6.8 6.6 80% 90% 100% 52% 8% 4% 8% 8% 13%3
45.9 50.6 43.1 12.3 16.7 9.1 4.1 2.5 5.1 2.9 2.4 3.2 14.7 16.5 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% (N=157) 300 (N=67) 300 (N=88) BPO IT SaaS/ASP /表 1 : 代 表 的 な グ ロ ー バ ル I T 企 業 カテゴリー 企 業 名 欧 米 に本 社 があり、オフショア開 発 以 前 から存 在 するグローバル IT 企 業 • IBM • Accenture • Capgemini オフショア開 発 を武 器 にグローバ ル IT 企 業 に成 長 した企 業
• Tata Consultancy Services (TCS) • Cognizant 日 本 の代 表 的 な IT 企 業 • 富 士 通 • NTT データ これらの企 業 を選 定 した理 由 は、以 下 の通 りである。 IBM 社 ハードウェア・ソフトウェア両 面 において、コンピュータの黎 明 期 から IT 開 発 を世 界 的 にリードしてきた企 業 であることから対 象 企 業 とした。しかしながら、本 研 究 の中 心 課 題 である業 務 アプリケーション開 発 だけでなく、ハードウェア製 造 なども行 っているため、 一 部 の分 析 では対 象 外 としている。 Accenture 社 日 本 ではコンサルティング会 社 として有 名 であるが、世 界 的 に見 れば IT ベンダーであ り、実 際 に売 上 高 に占 める IT 開 発 の割 合 は過 半 数 を超 えている。Accenture 社 自 身 は比 較 的 新 しい企 業 であるが、その歴 史 を紐 解 くと、アンダーセンコンサルティングか ら枝 分 かれした企 業 であり、コンサルティング会 社 から IT ベンダーへと業 態 を変 化 させ た企 業 である。公 表 資 料 からは判 明 しないが、一 説 によれば従 業 員 の 1/3 はインドの オフショアセンター勤 務 であり、公 表 資 料 上 もグローバルデリバリーについて触 れてい ることから対 象 企 業 とした。 Capgemini 社 グローバルデリバリーを行 う IT ベンダーの多 くは、その本 社 をアメリカやインドに置 いて いるが、Capgemini 社 はヨーロッパ(フランス パリ市 )に本 社 を構 える企 業 であり、他 の グローバル IT ベンダー同 様 にグローバルデリバリーを重 要 な業 務 の一 つと位 置 づけて いる。また、業 務 用 アプリケーションの開 発 が売 上 高 の過 半 数 をしめていることや、創
業 が 1967 年 と比 較 的 古 いことから対 象 企 業 とした。 TCS 社 インドのタタ財 閥 が経 営 するグループ企 業 の一 社 であり、インド系 IT 企 業 で最 大 の売 上 高 を誇 る会 社 である。特 にアメリカ向 けオフショア開 発 では最 大 の規 模 を誇 ることか ら対 象 企 業 とした。 Cognizant 社
Cognizant 社 は、1994 年 に米 国 Dun and Bradstreet Corp. の IT サービス部 門 とし て設 立 され、1996 年 に独 立 企 業 として米 国 にて業 務 を開 始 。本 社 はアメリカにあり、 NASDAQ に上 場 しているが、従 業 員 の 3/4 はインドに駐 在 しており、売 り上 げの過 半 数 をオフショア開 発 による業 務 用 アプリケーション開 発 としていることや、近 年 、急 速 に 売 上 高 を伸 ばしていることから対 象 企 業 とした。特 に金 融 や医 薬 品 企 業 向 け IT 開 発 では、北 米 マーケットにおいて相 当 なマーケットシェアを獲 得 している。 富 士 通 社 IBM 同 様 にハードウェア・ソフトウェア両 面 において、長 年 にわたり日 本 の IT 開 発 をリ ードしてきた企 業 であることから対 象 企 業 とした。しかしながら、本 研 究 の中 心 課 題 で ある業 務 アプリケーション開 発 だけでなく、ハードウェア製 造 なども行 っているため、一 部 の分 析 では対 象 外 としている。 NTT データ社 業 務 用 アプリケーションの国 内 シェアはいずれの業 界 向 けにおいてもトップクラスのシ ェア誇 る日 本 を代 表 する IT 企 業 であり、また、ハードウェアの売 り上 げがないことから 業 務 用 アプリケーション開 発 専 業 に近 い業 態 であることから対 象 企 業 とした。 最 後 に当 研 究 における事 例 研 究 の対 象 企 業 として Capgemini(C 社 )を選 定 した。理 由 は、業 務 用 アプリケーションの開 発 が売 上 高 の過 半 数 をしめていることだけでなく、オ フショア開 発 の世 界 的 な広 がりをいち早 く理 解 し、ビジネスモデルを転 換 した企 業 である からである。そもそも欧 米 に本 社 があり、オフショア開 発 以 前 から存 在 するグローバル IT 企 業 は IT 業 界 では先 行 企 業 であり、オフショア開 発 を武 器 にグローバル IT 企 業 に成 長 した企 業 は新 規 参 入 企 業 である。新 規 参 入 企 業 はコスト優 位 性 を武 器 に先 行 企 業 の マーケットを奪 うことに成 功 したが、一 方 、多 くの先 行 企 業 がそのビジネスモデルを転 換 できずマーケットを失 った。よって、この企 業 の現 状 を理 解 することはグローバル IT 企 業
のビジネスモデルの変 化 を理 解 するための題 材 となると考 えるからである。
第 3 節
I T 企 業 の ビ ジ ネ ス モ デ ル
この節 では、業 務 用 アプリケーション開 発 を行 う IT 企 業 のビジネスモデルについて議 論 する。 業 務 用 アプリケーション開 発 を行 う IT 企 業 のビジネスモデルを一 言 で言 うと、顧 客 企 業 から業 務 用 アプリケーション開 発 を受 注 し、その IT 開 発 にふさわしいエンジニアを選 定 し IT 開 発 に従 事 させ、対 価 を得 るというビジネスモデルである。受 注 の仕 方 にもよるが 多 くの場 合 、対 価 は人 月 単 価 により決 まる。例 えば 1 人 のエンジニアが一 ヶ月 の開 発 を 行 う場 合 の単 価 が 100 万 円 とし、開 発 期 間 が 6 ヶ月 、毎 月 投 入 されるエンジニア数 が 10 名 とすると、売 上 は、100 万 円 x10 名 x6 ヶ月 で 6,000 万 円 となる。よって受 注 さえで きれば従 業 員 数 が多 い企 業 の売 上 高 が大 きくなることとなる。 ところで一 般 的 に企 業 の経 営 資 源 は、「人 ・物 ・金 ・情 報 」と言 われる。これを IT 企 業 に 当 てはめてみると、「人 」は上 記 の通 り売 上 のための原 動 力 であるが、顧 客 企 業 の要 望 は千 差 万 別 であるからそれぞれの要 望 に合 うスキルを持 ったエンジニアを育 成 する必 要 がある。よって、企 業 業 績 を向 上 させようと考 えれば、優 秀 なエンジニアを数 多 く雇 用 す る必 要 がある。もちろん、優 秀 なエンジニアを採 用 しようとすればそれなりの報 酬 を支 払 う 必 要 があるし、他 社 に転 職 されないよう従 業 員 満 足 度 を向 上 させる必 要 がある。 次 に「物 」であるが、製 造 業 と違 い IT 企 業 の設 備 コストは従 業 員 に支 給 するパソコンと ソフトウェア程 度 である。オフサイトで IT 開 発 を行 う場 合 は、以 前 は顧 客 企 業 の IT 開 発 環 境 と同 じ環 境 を構 築 する必 要 があったが、今 日 では通 信 技 術 が向 上 し、オフショアか ら VPN を利 用 しインターネット経 由 で顧 客 側 の IT 環 境 に直 接 アクセスし開 発 を進 めるこ とができる。通 信 コストは 20 年 前 に比 べて格 段 に下 がっているからこれも大 きなコストとな らない。もちろん従 業 員 が作 業 を行 うオフィスは必 要 であるが、これも所 有 する必 要 はな い。よって設 備 投 資 は売 上 高 に比 べて格 段 に小 さいものとなる。 「金 」については、「物 」がなくとも開 業 できる業 態 であるから、多 くの資 金 を必 要 としな い。もちろん顧 客 企 業 から受 注 するためにはエンジニアが必 要 であるから、受 注 の有 無 にかかわらず人 件 費 は発 生 する。よって、人 件 費 を上 回 る受 注 が必 要 である。 最 後 に「情 報 」であるが、IT 業 界 は新 技 術 開 発 が旺 盛 な世 界 であるから、IT 企 業 は新技 術 をすばやく習 得 し、顧 客 企 業 の価 値 向 上 に資 する提 案 を行 う必 要 がある。一 方 、 IT 業 界 は多 くの技 術 がオープン化 の方 向 にあるから、情 報 の鮮 度 により差 が出 ることは あまりない。もちろん、顧 客 企 業 にその技 術 を買 ってもらうためには、顧 客 企 業 や業 界 の 状 況 を正 しく理 解 する必 要 がある。 これらの考 察 から、IT 企 業 の業 績 を左 右 するものは、エンジニアの数 と質 であることが わかる。そして、そのエンジニアを確 保 するためには従 業 員 教 育 と人 事 制 度 が重 要 なフ ァクターとなる。
第 4 節
研 究 の 目 的
このような背 景 から本 研 究 の目 的 は、グローバルIT企 業 のビジネスモデルの変 化 を支 え る「人 」に 焦 点 を あ て 、 人 に ま つ わ る 人 事 ・ 教 育 制 度 に つ い て明 らか に す る こ と で 、 日 本 のIT企 業 がグローバル化 する際 の具 体 的 な提 言 を行 うことである。 日 本 国 内 においてもオフショア開 発 に関 する研 究 は多 く存 在 するが、そのほとんどは 日 本 側 (発 注 側 )からの視 点 が主 であり、グローバル IT 企 業 側 (受 注 側 )からの視 点 の 研 究 や、グローバル IT 企 業 のビジネスモデルを支 える人 事 ・教 育 制 度 に着 目 した研 究 は少 ない。 また、技 術 力 で見 ればいまや新 興 国 (インド、中 国 )の技 術 力 は急 速 に向 上 しており、そ の優 秀 で低 コストの技 術 力 やノウハウを日 本 における IT 開 発 にも活 用 すべきである。こ のことは、日 本 の IT 技 術 者 不 足 を補 うだけでなく、IT 産 業 が提 供 するサービス価 値 を向 上 させることにつながる。またオフショア開 発 を成 功 に導 くためのノウハウといった直 接 的 な利 点 だけでなく、顧 客 企 業 のグローバル化 や、国 内 の IT 企 業 全 体 のグローバル化 に 資 すると考 える。第 5 節
リ サ ー チ ク エ ス チ ョ ン
本 研 究 が明 らかにするメジャー・リサーチ・クエスチョン(MRQ)およびサブシディアリー・ リサーチ・クエスチョン(SRQ)は以 下 の通 りである。 MRQ: グローバル IT 企 業 のオフショア開 発 における知 識 マネジメントを支 える人 事 ・教育 制 度 はどのようなものか? SRQ1: グローバル IT 企 業 はプロジェクトで得 られた知 識 ・経 験 をどのように生 か しているのか? SRQ2: グローバル IT 企 業 はどのような人 事 ・教 育 制 度 を採 用 しているのか? SRQ3: 日 本 の IT 企 業 と何 が違 うのか? これらの問 いは、より一 層 グローバル化 する IT 開 発 において、グローバルビジネスで成 功 を収 めるための方 法 を明 らかにするものである。
第 6 節
研 究 方 法
まず、前 述 のグローバル IT 企 業 群 の現 状 を公 表 資 料 等 から明 らかにする。次 に現 在 C 社 が日 本 において実 施 中 のプロジェクトを対 象 とする事 例 研 究 を採 用 する。更 に調 査 結 果 の検 証 のため他 のグローバル IT 企 業 と日 本 の IT 企 業 にインタビューを実 施 し、調 査 結 果 の検 証 を行 う。 • 書 籍 、IR 情 報 、論 文 、プロジェクトドキュメントなどを元 にした文 献 調 査 • プロジェクトに参 加 しているオフショアメンバーに対 するアンケート調 査 • 他 のグローバル IT 企 業 および日 本 の IT 企 業 に対 するインタビュー調 査第 7 節
論 文 の 構 成
第 1章 では、研 究 の背 景 と目 的 、研 究 の対 象 、リサーチクエスチョン、および研 究 の方 法 について述 べた。 第 2章 では、本 研 究 に関 連 する文 献 調 査 を行 う。 第 3章 では、文 献 調 査 から得 られた知 見 から仮 説 を設 定 する。 第 4章 では、C 社 のグローバルデリバリー事 例 を元 に調 査 を実 施 する。 第 5章 では、調 査 結 果 の考 察 と仮 説 の検 証 を行 う。 第 6章 では、リサーチクエスチョンに対 する回 答 、理 論 的 含 意 、実 務 的 含 意 、本 研 究 の 結 論 を述 べる。第 2 章
文 献 調 査
は じ め に
本 章 では、まずグローバル IT 企 業 の業 容 を把 握 するために、各 社 の公 表 資 料 等 を元 に現 状 を概 観 する。次 に、グローバルデリバリーに関 係 のある、グローバル化 、グローバリ ゼーションを支 える人 材 、異 文 化 理 解 、グローバル人 事 制 度 について先 行 研 究 レビュー を行 う。第 1 節
グ ロ ー バ ル I T 企 業 の 業 績 の 変 化
第 1 章 で述 べたように本 研 究 における研 究 対 象 は、業 務 用 アプリケーション開 発 を主 な業 務 とするグローバル IT 企 業 とする。それらの企 業 は、欧 米 に本 社 があり、オフショア 開 発 が始 まる以 前 から存 在 する企 業 (以 下 、先 行 企 業 )とオフショア開 発 を武 器 にグロ ーバル IT 企 業 に成 長 した企 業 (以 下 、新 規 参 入 企 業 )の 2 つのカテゴリーから数 社 ず つを、また、日 本 企 業 との比 較 のために、日 本 の代 表 的 な IT 企 業 2 社 の業 績 の変 化 を 公 表 資 料 から整 理 する。 【代 表 的 な グ ロ ー バ ル IT 企 業 】(再 掲 ) カテゴリー 企 業 名 欧 米 に本 社 があり、オフショア開 発 が始 まる以 前 から存 在 するグロ ーバル IT 企 業 (先 行 企 業 ) • IBM • Accenture • Capgemini オフショア開 発 を武 器 にグローバ ル IT 企 業 に成 長 した企 業 (新 規 参 入 企 業 )• Tata Consultancy Services (TCS)
• Cognizant 日 本 の代 表 的 な IT 企 業 • 富 士 通
第 1 項 各 社 売 上 高 と 従 業 員 推 移 まず各 社 の概 要 を把 握 するために、決 算 資 料 から売 上 高 と従 業 員 推 移 を確 認 する。 なぜならば、大 企 業 向 け業 務 用 アプリケーション開 発 では大 量 の人 員 を投 入 する必 要 があるからであり、また、投 入 される人 数 と月 額 単 価 で売 上 が決 まるからであり、その企 業 の成 長 を図 る一 つの指 標 になると考 えられるからである。ただし、IBM や、日 立 、東 芝 、 富 士 通 といった日 本 を代 表 する IT 企 業 の場 合 、業 務 用 アプリケーション開 発 を相 当 量 行 っているが、公 表 資 料 によれば、売 上 高 にはハードウェアとアプリケーション開 発 が混 在 しているし、従 業 員 数 についてもセグメントごとの公 表 がなされていないので、ここでは 売 上 高 の み 比 較 す る こ と と す る 。ま た 、 イ ン ド と 並 ぶ 新 規 参 入 企 業 を 排 出 し て い る 中 国 については、公 表 資 料 が乏 しいことから本 研 究 の対 象 企 業 に含 まない。 公 表 資 料 からわかることは、IBM のような先 行 企 業 は売 上 高 も従 業 員 数 も横 ばいか微 増 、新 規 参 入 企 業 は 2000 年 以 降 、売 上 高 も従 業 員 数 も急 速 に伸 ばしている。従 業 員 数 について日 本 における IT 産 業 の従 事 者 数 と比 較 してみると、経 済 産 業 省 資 料 (IT 人 材 を取 り巻 く現 状 2011)によれば日 本 の IT 産 業 従 事 者 は約 77 万 人 であるが、一 方 、 新 規 参 入 企 業 の代 表 格 であるインド系 企 業 の上 位 5 社 の従 業 員 数 は 97.5 万 人 であり、 日 本 全 体 の IT 産 業 従 事 者 数 をすでに大 きく超 えている。 表 2 : イ ン ド 系 グ ロ ー バ ル I T 企 業 上 位 5 社 の 従 業 員 数 企 業 名 従 業 員 数 公 表 時 期
Tata Consultancy Services 319,000 Apr. 2014
Cognizant 217,000 Mar-15
Infosys 176,000 Mar-15
Wipro 158,000 Q4 2014-2015
HCL 105,000 2014
一 方 、アプリケーション開 発 専 業 である NTT データは、2010 年 以 降 、他 のオフショア企 業 を追 いかけるように海 外 での M&A を加 速 させ、急 速 に売 上 高 ・従 業 員 数 を伸 ばして いる。 図 1 0 : グ ロ ー バ ル I T 企 業 の 売 上 高 推 移 表 3 : グ ロ ー バ ル I T 企 業 の 売 上 高 推 移 (各 社 Annual Reportより筆 者 が作 成 。単 位 10億 円 ) まず売 上 高 についてであるが、TCSやCognizantといった新 規 参 入 企 業 の躍 進 ぶりが 目 立 つ。それ以 外 にもこの表 には記 載 していないがInfosys、Wipro、HCLといったインド 系 IT企 業 の売 上 高 は1兆 円 を超 えている。2015年 現 在 の売 上 高 で比 較 するとNTTデー タとほぼ同 等 であるが、10年 前 には1/5から1/8であったことを考 えると非 常 に急 速 な伸 びである。一 方 、先 行 企 業 であるIBMは、圧 倒 的 な売 上 高 を誇 るものの伸 びはほぼ横 ば 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 IBM Accenture Capgemini TCS Cognizant 富士通 NTTデータ
いである。 図 1 1 : グ ロ ー バ ル I T 企 業 の 従 業 員 推 移 表 4 : グ ロ ー バ ル I T 企 業 の 従 業 員 推 移 (各 社 Annual Reportより筆 者 が作 成 ) 次 に従 業 員 数 であるが、新 規 参 入 企 業 は従 業 員 を積 極 的 に増 やしており、10年 前 に 比 べて8〜12倍 といった増 加 率 である。もちろん、IBMのように10年 前 にすでに34万 人 も の従 業 員 数 を数 える企 業 がさらに10倍 もの従 業 員 を増 加 させることは常 識 的 に考 えれ ば 不 可 能 で あ る が 、 先 行 企 業 の 中 で も Accenture や Capgemini の よ う に 2.5 倍 の 伸 び を 示 す企 業 もある。新 規 参 入 企 業 が今 後 も従 来 のように従 業 員 を増 やしていくことができ るかについて今 後 の10年 を見 届 ける必 要 があるが、10万 人 単 位 となった従 業 員 を確 保 するためにはそれだけの仕 事 量 をこれらの企 業 が受 注 しているという証 左 でもあろう。 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 350,000 400,000 450,000 500,000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 IBM Accenture Capgemini TCS Cognizant 富士通 NTTデータ
こ の よ う に 新 規 参 入 企 業 は 従 業 員 数 を 飛 躍 的 に 増 加 さ せ て い る が 、 こ れ だ け 大 量 の 従 業 員 を獲 得 するには高 等 教 育 を受 けた学 生 が大 量 に必 要 となる。この状 況 はインド や中 国 が国 策 としてIT産 業 推 進 のために大 学 教 育 を充 実 させた時 期 と重 なっている。 次 表 はインドや中 国 におけるコンピュータサイエンスや数 学 科 卒 の学 生 数 を調 査 した ものであるが、毎 年 約 10万 人 もの学 生 が卒 業 している現 実 を見 ると、インド系 企 業 の躍 進 ぶりが理 解 できる。同 様 に中 国 も10万 人 以 上 の学 生 が毎 年 コンピュータサイエンス等 の学 科 を卒 業 しており、アリババなどの中 国 系 IT企 業 の台 頭 の原 動 力 になっていると思 われる。また今 回 の調 査 対 象 としていないが、アメリカやロシアの卒 業 生 も相 当 数 いるこ とから、これらの国 々におけるIT需 要 が相 当 量 あることがわかる。一 方 日 本 はアメリカ比 で1/4、中 国 比 で1/8以 下 である。実 際 にはそれ以 外 の学 部 出 身 者 もIT企 業 に就 職 し ており、この比 較 だけでIT企 業 の差 を論 じるわけにはいかないが、少 なくとも国 別 の基 礎 的 人 材 供 給 力 の差 があることだけは確 かだと言 える。 図 1 2 : 国 別 I T 技 術 者 供 給 数 ( 各 国 の M a t h e m a t i c s / C o m p u t e r S c i e n c e 系 学 士 過 程 卒 業 者 数 ) (情 報 処 理 推 進 機 構 「グローバル化 を支 えるIT人 材 確 保 ・育 成 施 策 に関 する調 査 」 2011より転 載 )
ここまで各 企 業 の売 上 高 と従 業 員 数 の推 移 を確 認 してきたが、新 規 参 入 企 業 は、IBM は別 格 としても、売 上 高 規 模 でみれば上 位 企 業 に肩 を並 べるに至 った。そして、どの企 業 も今 や同 じビジネスモデル、つまりグローバルデリバリーモデルを採 用 している。しかし な が ら 歴 史 的 に は そ の 進 展 は ま っ た く 逆 の 道 を 辿 っ て い る 。 先 行 企 業 は、 基 本 的 に 各 国 に支 店 を開 設 し、その国 の顧 客 企 業 向 けサービスを展 開 してきた。つまり顧 客 と同 じ 国 の従 業 員 が顧 客 企 業 の IT 開 発 に従 事 してきた。その場 合 の従 業 員 一 人 当 たりの単 価 は、その国 の物 価 水 準 を反 映 するから、オフショア企 業 の単 価 とは比 較 にならないくら い高 額 である。オフショア企 業 がこの点 に目 をつけ低 価 格 を武 器 にマーケットに参 入 し たため、それに対 抗 するためにオフショア開 発 を推 進 せざるをえなかったと考 えられる。ま た、顧 客 企 業 のグローバル化 も一 つの影 響 要 因 であると思 われる。顧 客 企 業 がその国 内 にとどまる限 りにおいては、IT 企 業 がその国 の従 業 員 を使 用 しても顧 客 企 業 にとって ある程 度 の納 得 感 、例 えば文 化 や歴 史 、教 育 水 準 などがある程 度 顧 客 企 業 の従 業 員 と同 一 であれば背 景 まで説 明 せずとも理 解 してもらえるといった期 待 感 が顧 客 側 にあり、 その結 果 、IT 企 業 も一 定 の売 上 を得 ることができるが、顧 客 企 業 が海 外 に出 た場 合 に はその国 の従 業 員 をそのまま使 い続 けるメリットに欠 ける。システムそのものについても、 国 ごとに商 習 慣 や法 令 が異 なるから本 国 のシステムをそのまま使 うことができず、そのた め他 国 における IT サービスをいずれかの IT 企 業 に依 頼 する必 要 が出 てくる。こうした顧 客 企 業 の要 望 に対 する柔 軟 な対 応 力 は、もともと海 外 で多 くのアプリケーション開 発 を 行 ってきたオフショア企 業 の方 が勝 っていたのかもしれない。 第 2 項 従 業 員 一 人 あ た り 売 上 高 次 に従 業 員 一 人 当 たりの売 上 高 を確 認 する。なぜならば、顧 客 企 業 がオフショア開 発 を採 用 する一 般 的 なメリットの一 つはコストの効 率 化 であり、従 業 員 一 人 当 たりの売 上 高 を見 れば人 月 単 価 が推 定 できるからである。
図 1 3 : グ ロ ー バ ル I T 企 業 の 従 業 員 一 人 あ た り 売 上 高 推 移 表 5 : グ ロ ー バ ル I T 企 業 の 従 業 員 一 人 あ た り 売 上 高 推 移 (各 社 Annual Reportより筆 者 が作 成 。単 位 百 万 円 ) IBMおよび富 士 通 についてはハードウェア等 の売 り上 げが含 まれるため、除 外 して考 え るとして、ここで特 筆 すべきはNTTデータの従 業 員 一 人 あたり売 上 高 の急 速 な低 下 であ る 。 こ れ は 2008 年 頃 か ら の 急 速 な 海 外 展 開 ( 海 外 企 業 の 買 収 ) に よ る も の と 思 わ れ る 。 NTTデータよりも一 足 早 くオフショア開 発 を開 始 したAccentureやCapgeminiも開 発 拠 点 をインド等 に設 立 し、コスト競 争 に参 入 し、現 在 では約 1/3の従 業 員 がインド国 内 で従 事 しているといわれている。その結 果 徐 々にではあるが従 業 員 一 人 当 たりの売 上 高 を低 下 させている。 一 方 、新 規 参 入 企 業 の従 業 員 一 人 あたりの売 上 高 は、少 しずつではあるが上 昇 傾 向 にある。業 務 用 アプリケーション開 発 は多 くの要 員 を必 要 とするため、世 界 的 に見 れば 製 造 業 と同 様 に賃 金 コストの低 い国 でのアプリケーション開 発 にシフトしているが、近 年 0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00 30.00 35.00 40.00 45.00 50.00 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 IBM Accenture Capgemini TCS Cognizant 富士通 NTTデータ
ではインドや中 国 のIT技 術 者 の賃 金 も上 昇 傾 向 にあるため顧 客 に対 する請 求 額 も増 加 傾 向 にある。結 果 として従 業 員 一 人 当 たりの売 上 高 の増 加 となっている。それでもTCS やCognizantの一 人 当 たり売 上 高 は現 在 500万 円 前 後 であり、AccentureやCapgemini の1,000万 円 強 と比 較 すれば半 分 であるし、NTTデータとの比 較 では、1/3と、依 然 とし てコスト優 位 性 がある。このコスト優 位 性 であるが、新 規 参 入 企 業 の従 業 員 一 人 当 たり の売 上 高 は増 加 傾 向 にあるのに対 して先 行 企 業 が低 下 傾 向 であることから、将 来 的 に は各 社 の従 業 員 一 人 当 たりの売 上 高 はほぼ同 程 度 に収 斂 していき、優 位 性 を失 うかも しれない。これはまさに世 界 がフラット化 していくことの一 つの証 左 であり、こうした状 況 を 踏 まえた対 応 が日 本 のIT企 業 にも必 要 なことであろう。 第 3 項 収 益 性 と 配 当 次 表 は各 社 の売 上 高 利 益 率 である。ここでも IBM と富 士 通 を除 外 して考 えるとし、そ の他 の企 業 群 を比 較 してみると、新 規 参 入 企 業 の高 い収 益 性 がわかる。特 に TCS の 30%前 後 の利 益 率 は驚 異 的 であり、しかもその利 益 率 はこの 10 年 間 継 続 している。低 コ ストの労 働 力 を大 量 に使 い、それを安 価 で提 供 することでビジネスを拡 大 していることを 伺 い知 ることができる。 表 6 : グ ロ ー バ ル I T 企 業 の 売 上 高 利 益 率 (各 社 Annual Reportより筆 者 が作 成 。単 位 百 万 円 ) 最 後 に 各 社 の 一 株 あ た り 配 当 額 を 調 べ る こ と と す る 。 上 場 企 業 の 株 価 は 、 そ の 企 業 の 持 つ将 来 性 を反 映 した市 場 の評 価 の一 つと言 われるから、一 株 あたりの配 当 額 はそうし た市 場 の評 価 に対 する企 業 側 の意 識 を反 映 させたものである。もちろん、株 券 の額 面 の 違 いや株 価 の差 があるから単 純 に額 を比 較 するだけで何 かを導 出 することができるわけ ではないが、傾 向 値 を知 ることは可 能 である。
表 7 : グ ロ ー バ ル I T 企 業 の 一 株 あ た り 配 当 額 (各 社 Annual Reportより筆 者 が作 成 ) ここで特 筆 すべきは新 規 参 入 企 業 の TCS と Cognizant の違 いであろう。TCS は売 り上 げの伸 びにともない配 当 額 を毎 年 あげてきているが、Cognizant はいっさい配 当 を行 っ ていない。TCS の大 株 主 はタタ財 団 でありタタ財 団 はその利 益 の一 定 部 分 を使 って公 共 事 業 を行 っている。例 えば、TCS が利 益 をあげ配 当 を増 やせば、タタ財 団 はインドとイ ンドの人 のために公 園 を作 る、といった具 合 である。一 方 Cognizant は Annual レポート に、将 来 に向 けた投 資 を行 うため、配 当 は行 わないと明 言 している。使 い道 の多 くは従 業 員 教 育 にあてている。アプリケーション開 発 を主 業 務 とする企 業 にとって、資 産 の多 く は人 的 資 源 であり、その人 的 資 源 を強 化 向 上 させるための投 資 を怠 らないという姿 勢 は 企 業 の競 争 力 向 上 の観 点 から特 筆 できるものである。Google もそうであるが、Cognizant の従 業 員 はその時 間 の一 定 パーセントを業 務 とは直 接 関 係 のない業 務 にあてることが できるという。このような点 も優 秀 な従 業 員 を獲 得 し、また、雇 用 し続 けるための魅 力 の一 つとなっていると思 われる。 第 4 項 定 性 的 な 記 載 事 項 最 後 に各 社 の年 次 報 告 書 に記 載 される定 性 的 な言 葉 を確 認 する。こうした定 性 的 な 記 載 は本 来 年 次 報 告 書 には必 須 項 目 ではないが、それでもなお各 社 が記 載 する内 容 には、その企 業 が重 要 と考 えている事 柄 が記 載 されていると考 えられるからである。 • IBM ! 当 社 は継 続 的 にトランスフォーメーションを実 施 中 。 ! 市 場 における差 別 化 を深 耕 させるため、$40 億 ドルの経 費 予 算 をデータ、 クラウドおよびエンゲージメントにシフトする。 • Accenture ! 当 社 はアクセンチュアストラテジーと呼 ぶビジネスとテクノロジーを両 立 した
世 界 初 の戦 略 論 を開 発 した。 ! 当 社 はデジタルマーケティング、アナリティクスそしてモビリティを統 合 した ア ク セ ン チ ュ ア デ ジ タ ル を 市 場 に 送 り 出 し た 。 ア ク セ ン チ ュ ア デ ジ タ ル は 28,000 人 のプロフェッショナルによる世 界 最 大 級 のエンドツーエンドのデ ジタルケーパビリティである。 ! グローバルデリバリーネットワークをさらに向 上 させるとともに、効 率 性 と生 産 性 を向 上 させるために優 秀 なタレントのリクルートと投 資 を実 施 した。 ! 最 も優 先 的 に行 うべきことの一 つは、顧 客 のニーズに応 える優 秀 な人 材 を適 材 適 所 に配 置 し、スキル向 上 のための投 資 を行 うことである。当 社 は 305,000 人 の従 業 員 のキャリア開 発 を深 くコミットしている。2014 年 に、7 億 8700 万 ドルの費 用 を従 業 員 教 育 に費 やした。その結 果 、FORTUNE が選 ぶ働 きがいのある会 社 Best 100 に6年 連 続 で選 ばれたことを誇 りに 思 う。 • Capgemini ! IT の Industrialization には技 術 的 なイノベーションが不 可 欠 である。先 進 的 な生 産 方 式 や新 たな分 野 への自 動 化 の適 用 に投 資 を行 っている。 ! IT における重 心 がシフトしている。以 前 はコンピュータなどの基 盤 であった が、今 では、データがすべてである。 ! 当 社 のブランド哲 学 を表 わす約 束 事 。人 が最 重 要 、結 果 はついてくる。 ! 当 社 の才 能 溢 れる社 員 は、顧 客 に専 門 知 識 を提 供 することで、当 社 のコ ミットメントに対 する生 きた証 明 となっている。 ! 1967 年 の創 立 以 来 、7 つの価 値 観 (正 直 さ、大 胆 さ、信 頼 、自 由 、チー ムスピリット、謙 虚 さ、楽 しみ)を共 有 してきた。 ! 学 習 とトレーニング 顧 客 は急 速 に進 む経 済 的 、技 術 的 、社 会 的 な変 化 に直 面 している。この状 況 に対 処 するために、継 続 的 なトレーニングは欠 かせない。社 内 研 修 機 関 は 300 万 時 間 にのぼる学 習 機 会 を提 供 してい る。 ! 人 々が、文 化 に対 して敏 感 で、アイデアやコラボレーションの価 値 を理 解 する場 所 。
! グローバルな組 織 は、多 くのことを要 約 したものである。人 、場 所 、文 化 、 地 理 、休 日 、癖 、ユーモア、喜 びと悲 しみ。それは人 種 のるつぼとなり、お そらく、お互 いを見 たり聞 いたり、相 互 に話 さなかった人 々のスコアが境 界 を超 越 する共 通 結 合 によって接 続 されている独 自 の宇 宙 :共 有 の精 神 、 共 通 の 目 標 。 傑 出 し た 情 熱 。 組 織 は 単 な る 経 済 主 体 よ り も は る か に 多 く の も の に な る 。 独 自 の エ コ シ ス テ ム と コ ミ ュ ニ テ ィ に な る 。 地 理 的 な 境 界 を 持 つ一 国 のような。 ! 想 像 してください。118 の国 籍 を持 つ 30 万 人 もの人 々が、46 の国 で生 活 し 働 いています。100 以 上 の言 語 が話 されています。けれども文 化 と DNA は 一 つです。それが TCS です。 • Cognizant ! デジタルに関 するスキル、スコープ、そしてスケールを築 いていく。 ! 新 たなデジタルの時 代 は、才 能 と知 的 なデリバリーを必 要 としている。 ! 顧 客 の成 功 のためにビジネス上 の意 味 をきちんと理 解 する。 • 富 士 通
! Human Centric Innovation
こ れ か ら の 時 代 に お け る イ ノ ベ ー シ ョ ン へ の 新 た な ア プ ロ ー チ は 、 人 ・ 情 報 ・インフラの3つの資 源 を融 合 させるソリューションやサービスを通 じてビ ジネス・社 会 の価 値 を実 現 していくことです。
! Shaping tomorrow with you
富 士 通 グループのブランドプロミス「shaping tomorrow with you」には、 お客 様 とともにビジネスを推 進 し、ICT の力 でより豊 かな社 会 を実 現 して いくという想 いが込 められています。
! 現 在 、約 16 万 人 の富 士 通 グループの社 員 が 100 カ国 以 上 で、お客 様 を サ ポ ー ト し て い ま す 。 今 後 も 富 士 通 グ ル ー プ は 、 日 本 に 軸 足 を 置 い た 真 の グ ロ ー バ ル ICT 企 業 と し て 、 あ ら ゆ る 事 業 領 域 で お 客 様 へ の 約 束 「shaping tomorrow with you」を実 現 し、より一 層 、魅 力 ある会 社 を目 指 します。
• NTT データ
を創 造 し、より豊 かで調 和 のとれた社 会 の実 現 に貢 献 する。 ! グループビジョン:Global IT Innovator ! 私 たちはお客 様 との間 に「ロングターム・リレーションシップ 長 期 にわたる 揺 るぎない関 係 性 」を築 き上 げ、お客 様 の夢 や望 みを実 現 します。 ! 私 たちは先 端 技 術 を進 化 させ、さまざまな企 業 ・サービスが集 結 する「エ コシステム」を 創 りあげることで、サービスの付 加 価 値 をさらに高 めていき ます。 ! 私 たちは、働 く一 人 ひとりの多 様 性 を尊 重 することによって、グローバルに 通 用 する創 造 力 を培 い、刺 激 し、さらに成 長 させていきます。 各 企 業 の方 向 性 の表 し方 にはその国 の文 化 が反 映 するようである。例 えばアメリカ系 企 業 の場 合 は、数 字 項 目 を補 完 する意 味 での企 業 戦 略 を説 明 する文 言 が目 を引 いた。 一 方 、企 業 理 念 などの記 載 は少 ない。他 方 、日 本 や欧 州 の企 業 の場 合 、企 業 理 念 が 記 載 されていることが多 い。 一 般 的 にアメリカ人 は応 用 優 先 の思 考 法 (帰 納 的 思 考 )を取 ると言 われているし、 反 対 にヨーロッパ人 は原 理 優 先 の思 考 法 (演 繹 的 思 考 )を優 先 すると言 われてい る 。 ま た 、 ア ジ ア 人 は い わ ゆ る 「 包 括 的 な 」 思 考 パ タ ー ン を 持 っ て い る と い わ れ 、 西 洋 人 は「特 定 的 な」アプローチを取 るといわれている。(エリン・メイヤー(2015)) こ う し て 各 国 企 業 の 年 次 報 告 書 を 比 較 し て み る と 、 そ の 記 載 内 容 が 異 な る 理 由 が 、 根 底 に流 れる文 化 の違 いであることは明 らかである。この傾 向 は IT 開 発 においても同 様 で、 アメリカ人 の場 合 はまずやってみる、あるいは成 功 事 例 があればそれを使 ってみて、うま くいかなければ別 の方 法 を検 討 する、といった方 法 をとるが、ヨーロッパの場 合 はまず枠 組 みをきちんと作 ってから物 事 を始 めようとする。一 方 日 本 人 の場 合 は全 体 感 がつかめ るまでは動 こうとしない。別 の言 い方 をすれば、アメリカ人 の場 合 はスピード重 視 であるし、 ヨ ー ロ ッ パ 人 の 場 合 は 基 本 原 理 を 構 築 す る ま で に 時 間 が か か る が 、 構 築 後 に は 、 そ の 原 則 に 従 っ て 手 戻 りな く開 発 を 行 う か ら作 業 工 程 は効 率 的 とも言 える。一 方 日 本 人 は 大 きいものから小 さいものへと順 番 に進 めることが文 化 的 な背 景 に照 らしてみた時 に自 然 に思 われる。こうしてみると、アメリカでアジャイル方 式 による IT 開 発 が盛 んに行 われる のに対 して、日 本 ではウォーターフォール型 の開 発 手 法 が好 まれる理 由 が説 明 できる。
第 5 項 人 材 育 成 ところで、多 くのグローバル IT 企 業 にとって、その保 有 資 産 は人 材 が全 てと言 っても過 言 ではないから、8 社 中 7 社 が従 業 員 について言 及 している。IT の世 界 に限 らないが、 技 術 は日 進 月 歩 であるから、今 日 の技 術 が明 日 も通 用 する保 証 はなく、常 にスキルアッ プを目 指 していかないと他 社 との競 争 に遅 れをとることになる。もちろん教 育 にはコストが かかるから、企 業 間 競 争 が厳 しく十 分 な従 業 員 教 育 を行 えない企 業 も多 い。次 表 は日 本 の IT 企 業 の従 業 員 教 育 についての調 査 結 果 であるが、無 回 答 を除 いて考 えると、過 半 数 の企 業 は年 間 総 人 件 費 の 1%未 満 しか費 やしていないし、また、時 間 数 にしても 20 時 間 未 満 の企 業 が大 半 である。これに対 して Accenture は 7 億 8700 万 ドル(約 940 億 円 120 円 /$)の費 用 を従 業 員 教 育 に費 やしたとしている。この額 は人 件 費 の 4%以 上 で あるし、Capgemini の総 教 育 時 間 (300 万 時 間 超 )も従 業 員 一 人 当 たりで計 算 すると 20 時 間 を超 えることとなり、どちらも日 本 の IT 企 業 の平 均 値 を超 える水 準 にある。もちろん、 日 本 の平 均 的 な IT 企 業 とグローバル IT 企 業 を単 純 に比 較 しても置 かれた環 境 は同 じ ではないから一 概 にどちらが優 れているという判 断 材 料 にはならないが、少 なくともグロー バル IT 企 業 はその利 益 の源 泉 が人 であることを自 覚 し、従 業 員 教 育 に十 分 な投 資 を 行 っていると言 える。 図 1 4 : 日 本 の I T 企 業 に お け る 人 材 育 成 投 資 (情 報 処 理 推 進 機 構 『IT人 材 白 書 2013』 概 要 より転 載 )