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家庭における蓄積機能について : 家庭経済学序説として

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(1)家庭における蓄積機能について 一家庭経済学序説として一 相. On. Nobuko. life is carried Accumulative function, played. its. remained with the. own a. role fundamental. -. private. goods・ of subsistence has home, not only of itself, but of bone. ownership. essential qualities subsistence of the for the social differentiation. aspect. of economic and. Economics. of the. one. the. of Home. S8MA*. the. under. element. patterns,. and. as. in. development. multifarious form its own. on. Home. to. Introduction. Home. 子. Function. Accumulative. the An. _. 信. 馬. society, ti血e. home. same. at也e. substance. of this treatise. has. come. accumulation. of production・ divided into. to be. has. cllanged. both. facts the abovementioned facts・ base the to clarify'on the historically of these and positively'then in function bone society, and of modern characteristics of the accumulative a to gain of its development・ perspective of the direction The. objective. is to. arrange. 目 は. 次. じめに. Ⅰ家庭の本質と生活財の私有 1生活財の私有について 家庭の本質としての蓄積横能. 2. 農耕生活における生産と蓄積. Ⅱ. 1生産の社会的分化の類型 日本農家の蓄積機能と生産の社会的分化. 2. 家庭額型の多様化と蓄積過程の変化. Ⅲ. 1経済発展段階と家庭額型 家庭額型と蓄横の形態. 2. *家政学教室(Dept.. Ⅳ. 近代家庭軒こおける蓄積棟能. ま. と. of Home. め. Economics).

(2) 2. 相. は. 馬. 信. じ. め. 子. に. 人間の所有欲,蓄積欲というようなものがわれわれの経済生活むこどのように現われ,そ れが家庭生活と如何に関わり,またどのように組織立てられてきたかを考えてみたい。そ の意味で家庭における蓄積機能をとり上げることにする。 生活をとりまくさまぎまな物財は家庭生活を支えている重要な経済的要素であり,さら に文明を支えている基礎でもある。 家庭の蓄積機能についてほさきに本学紀要1'においてふれておいたが,今回は家庭にお ける蓄積機能がどのような発展段階を経て今日に至ったかを明らかにし,その過程におけ る家庭の多様化について考えてみたいと思う. 家庭における蓄積機能というような課題をとり上げる場合,家庭の本質という学問とし ての抽象論と,生活の中で行なわれる蓄積という,いわば抽象論と歴史的実証との接点に おいて問題を明確にしてゆかねばならぬものであると思う.その意味でほ本論は一つの試 論である。. われわれが現在見るような家庭は,生活財の私有という概念が確立したところからはじ まるものと考えられる。私有財産論ほ,その蓄環形成の過程が生活論の一面をなすもので あり,そうした観点に立てば,本論ほ生活給の一部であるということが出来る。. われわれは衰庭を単なる消費体として掴むものではなく,家庭における生活財は生産手 段をも含むものと考え,家庭は生活財をもとにして営まれる生活共同体とみるのである。 さて以上の内容をもとにして本論を仮説的に考えるならば次のようにまとめることが出 来る。 家庭生活が生活財の私有にもとづく物的基礎の上に営まれるものであるならば, ①. 生産財の私有の形態ほ家庭類型の多様化に対応する.. ②. 家庭類型とその蓄積形態ほ経済発展段階に対応し変化を辿る。. 以上の2点を前提とするなら当然将来における家庭の蓄積ほ現在と異なる方向をとるであ ろうoそれが如何なる形態をとるかほ将来の課題であると思われるo Ⅰ 1. 家庭の本質と生活財の私有. 生活財の私有について. 社会の経済的発展の根源は「家庭における生産的榛能」であり,家庭における話力の蓄 苛と長期にわたるその集積である。 財産の私有についてメーンおよびラヴリーほ「私有財産ほ共有財産からのみ進化した」 という説を持しているが,レゲインスキーほその著書『財産起源論』において「所有権と ほ使用,処分の排他的権利を賦与するところの物の永久的占有である.単純なる使用と排 他性とは財産を組成するに充分な特質ではない」と述べており,したがって「最古代にほ 全然財産というものほ存在しなかった」というフユスチル・ズ・クーラソジュおよびヒル 1)横浜国立大学人文紀要第1類第14輯「家庭の生産的横能について」. 1968..

(3) 3. 家庭における蓄環磯台如こついて. デブランド等の説を支持しているo彼はその定義にもわかるように所有の権利の一時的で 「各人が自分の望む ないことと,所有物の自由処分権の保持を重視しているのであって, 所に欲するだけの土地を自由に取りうる間は,土地を以て共有の財産と呼ぶことは出来な い」と言っている。. 「すべで専有ほ,物の分離,保持及び防護より成る或る努力を必要と. する」のであって,欲望に対する個人的欠乏と占有に対するある努力が私有の根源である ように思われる。. 「古代ローマでほ,共用農場の占有ほ,何らの所有権も与えず,単に所. 潜するの権利をあたえたのみであった。」のである。. E.. Laveleye,. Primitive. Property,. 大塚久雄も「富の包括的な基盤たる「土地」,土地に包括されている原始的な生活諸手段 ほまず「共同体」全体により占取されるが,何らかの形ですでに労働が加えられ,生産活 動の結果としてえられた生活諸手段のばあいには,それらほ自己の労働で生産した当の個 々人によって私的に占取されるのをつねとした」とその著書「共同体の基礎理論」に述べ 「個人的 ており,彼はさらにクノウの「経済全史」を引用し,そこに出てくる「所有物」, 所有権」を厳密な意味での「私的所有」と解するならば,それほ正しくない.これほ単な る「私的占取」の事実を示すのみで,この生産力段階では未だ「私的所有」を云々するこ とほ出来ない。なぜなら私的かつ個別的に占取された生活諸手段もなお母胎たる「大地」 「私的所 をはなれてほ「富」としてとうてい何らの独立の意義をもちえないからである。 有」はむしろ「土地」の永続的な「私的占取」をまってほじめて歴史に登場するのである」 と注意しているo プラトンやア1)ストテレス2)などギリシャの思想家たちは財産が自然的なものか,協定 約なものであるかを論じ,人間性の平等ないしほ不平等と財産の分配との関係につき思索 をめくやらせ,後世の財産理論の基礎を作ったが,彼等は所有と労働との関係についてはあ まり述べていない8)。当時の生産的労働はすべて奴隷の任務であり4),主人が一切の所有 2)アリストテレスほ『政治学』第2部で「財産は或る意味では共有であるべきであるが,概して 普通一般にほ私有であるべきである」, 「財産ほ私有でなければならぬがその利用ほ共有である というのが明らか軒こよい」ともいい,その理由として, 「或る物を自分自身の物として感ずる 「友達や客に対して親切乃至奉仕を ときは,その快感は如何程不可測に大きいことであろう」, 振舞うことの内には貴大の快楽が潜んでいるものであるが,これも私有財産あってこそできる ものである。」, 「すべての物が共有であるときは誰も寛仁大度の模範を示したり気前のよい行. 3). いをする老ほもほやなくなるであろう,それというのも,寛仁大度ほ財産から得られる用益に あるからである」と述べている。 「大地と地上の一切のものほ人間の生 I. Lockeは『政府論』の中で労働と私有財産権にふれ, 存のために,神が人類の共有物として与えたものであるが,各人がその生命権と自由権とを行 使しうるためには,各人ほ何らかの方法でこの共有物を私有物に転化しなければならない。そ. こで彼は,労働によって生産される一切のものほ,その勤労者の私有財産であるとし,投下労 働による生産をもって私有財産の基鍵とした. 「原典経済学」長軸-二他編 physiocrateによれば,土地所有権ほ自然の秩序から生ずる神聖な摂理であり,神があたえ たところのものであるo 土地所有は人類の行為をこよって発生したものでなく,選ばれた人々の神の贈り物である。それほ宇宙の意志ともいうべき自然法が人間の歴史の変動にかかわらず 厳と存在しているという思想にもとづくものである。 「原典経済学」 4)プラトンにとってもア1)ストテレスにとっても「書き人間のために余暇を確保するという問題 「支配者の本来的な経済的機能ほ財産を ほ``奴隷制は止むを得ぬこと"であると佐定せしめ」,.

(4) 4. 相. 馬. 信. 子. の権利をもつような社会でほ所有と労働の関係ほ問題にならなかったのである。 レヴィソスキーは「比較的重要でない土地を除いてすべて労力の加わった土地や耕作者 の住居附近の土地についてほ常に私有が財産権の最初の形式であった」といい,したがっ. て彼は「われわれの研究の結果は,個人的所有権が最も原始的な∴また自然的な形式であ るというロ-マの古学説にまで復帰せしめうる」といっているのである。 自己の労働によって得たものは自分のものであるという人間の本性に根ざしたところか ら財産は発生し,人口の増加やその他の原因による個人的欠乏は欲望を強め次第に所有の 観念を強め,やがて財産権としてそれを主張し,制度として定着するに至ったものと思わ れるが,ここでほそうした初期段階を経て土地の私有を基盤とする意識的生産・蓄積に入 った以後を対象として取り扱うことにするo さて家庭ほその構成員である家族が,生活に必要な物財を共有しながら生活目標にした がい生活を営むものであるが,家庭は白から物財を求めることの出来ぬ老・幼・病弱老を 内包するものであり,また不時の事態-の慮りや,将来の生活設計のためにもなにがしか の物財の備蓄ほ常に必要であり,備蓄を可能にする前提としてほ,諸財の私有が必要不可 欠な要素であると思われる。また家庭における生産的機能ほ物財の私有をもとにして行な われ,生産手段の私有は農業の生産性を増大し,余剰生産の基礎を造り,社会的分業の這 を開いてゆくのであって,生活財の私有ほ家庭にとって生活の基本的要素をなすものであ り,これを否定しては家庭生活は成り立たぬのである。 2. 家庭の本質としての蓄積機能. 家庭ほ現実の社会での生活単位であり,生活共同体である。家庭はまた経済単位でもあ り,経済主体として自主的に家庭の生活目標にしたがって生産し,消費し,蓄積をなすも のである。. 一方において人間ほ所有欲,蓄積欲というようなものを持っており,こうした本能的部 分に支えられて生活が維持されているのであるが,蓄積の経済的役割は,それが本能的な 消費することであり,奴隷のそれほ財産を生産することである」シュラター『私有財産』 なお奴隷の余剰労力ほ道路,水道,ピラミッドなど集団の生活を誇示するようなもの,或い は沿壌,闘牛場など公共的,非生産的な建造物の建設に向けられた。 マックス・ウニバ-の『プロテスタソティズムの倫理と資本主義の精神』に反対してプレソ 「人は タノほ次のように述べていると本位田博士ほその論文「資本主義精神」に紹介している. 生れながらにして,他人より優位に立つ事を欲する本能を持っている。 -或ほ土地を持つ為 に,社会の優者となり,他の大衆を支配し得る時代があった。この時代には人の獲得欲ほ土地 に対して専ら発露する。中世の封建制度ほ即ちそれである。土地は彼等の生活を保障する財源 であったのみならず,土地をもつことによって,民衆に政治的,社会的支配権を獲得してい た.-」 マックス・ウニバーは, 「プロテスタソトの世俗的禁欲ほ所有の自由な享楽に全力をつくして 反対し,消費,ことに菅停的消費を圧殺した。この禁欲ほ心理作用として財の獲得をば伝統的 倫理の障碍から解きほなち,利潤の追求を合法化するのみでなく,これを直接神の意志と考え ることによって,その桂枯を除去して了った。」といい,また「道徳上真に罪悪とされたもの 紘,財産によって休息すること,富の享楽とその結果である無為と肉の欲,殊に「堅い」生活. -の努力をすて去ることである.財産が道徳上危険であるのも,かかる休息の危険を伴うから に過ぎない.」といっている。 『プロティスタソティズムの倫理と資本主義』.

(5) 家庭における蓄積機能について. 5. ものから意識的なものに変わった時点から意義をもつのであって,しかもそれは私有財産 と不可分の関係にあるものと思われる。. 意識的な蓄積はしだいにわれわれの経済生活のモティーフになり,家庭に蓄積された諸 財はやがて交換現象を生み,社会的生産を可能にするのであって,家庭における蓄積機能 は商品生産化のプロセスの一現象であり,その根源的な要素として把握することが出来る のであるoつまり家庭ほその生活面において諸財の蓄積が本質的に不可欠な要素であると ともに生産面においても,交換現象を生む基本的要素である余剰生産の場であり,その蓄 積の場であると言えるのである。すなわち,生産面における家業の発生,さらに企業-の 転化があり,企業が余剰生産の役割を全面的に引き受けるようになったのちには,家庭の 生産的機能ほ企業への労働力参加という形に変わり,家庭の蓄積機能は専ら物財入手のた めの交換手段としての貨幣の蓄積軒こ集中するのである.しかし家庭の生産機能は,家族の 生活維持のために用役を含む広義の家事労働として残るのであって,家事労働の部分にお ける蓄積の機能についても検討することが必要であり,この点に関してほ改めて後述する。 Ⅱ. 農耕生活における生産と蓄積. 農業ほ文明発展の一つの前提条件である5)。と同時に生活の基盤であり,蓄積の根源的 要素である.したがって農耕生活における耕作物の種類6),耕作法,農具の発達,生産手 段の私有の状態は食料の余剰生産に影響し,手工業の独立に関係し,それらほ社会的生産 5)社会が成長をなすための離陸一着実な成長に対する古い妨害物や抵抗を克服すること一に 成功するためには,農業の生産性が革命的に増大することが不可欠の条件である。社会の近代 化は,農業生産物軒こ対する需要を急激に増加させるからである。 『経済成長の諸段階』W.. W.. Rostov K.E.. Bouldingは『二十世紀の意味』で次のようにいっている。 「都市における食料を生産しない人々を養っていくた捌こほ,食料生産者が自己の必要をみ たし,なお余剰の食料を生み出さねばならない。もし文明が確立されねばならないとしたら, こうした余剰食料の生産の持続的な,かなり安定した生産がなければならない。 余剰生産の僅少な古代文明の殆どすべての都市は,いつでも数週間で餓死してしまうような ものであった。」. Sombartほ都市を「経済学的な意味における都市とは,農産物を受けて生活している人々. 6). の大きな集落である」と定義している。 マルクスほ「物質的生活の生産様式が,社会的,政治的および精神的生活過程一般を制約す るo」 『経済学批判』と言うo 「われわれの持っている文化遺産の建設に直接にまた豊富に貢献することの多かった文明にお いては,小麦と大麦が経済の基掛こなっている。これらの食料ほ栄養飯高く,貯蔵はたやすく, 収穫量も比較的多い。なかでも耕作に要する労力が少ない--麦の栽培者ほかなりの農閑期を もつことが出来,その間は他の仕事に従事出来る。それに反して稲の栽培者ほ休養期間がない」 『文明の起源』ねずまさし 「わが国でほ比較的最近まで農業人口が全人口の半分を占めていた。というのは農家1世帯 あたりわずかに非農家世帯1世帯分の食料余剰しか生産出来なかったということであるo これ に比べると地中海農耕文化の代表作物である麦類は労働の生産性高く,撃使用を通じて畜力を 導入したから耕地面積がふえ,人間の労力投下が少なくてすんだ。この地中海農耕文化の伝統 をうけついだアメリカ農業ほ農業世帯1世帯あたりで非農家10世帯を養うことが出来る。」『世 界の歴史』 Ⅰ今西錦司「人類の誕生」.

(6) 6. 相. 馬. 信. 子. の分化に直接,間接にかかわりをもつものである。したがって,ここでは農耕生活の代表 的な二つの類型を比較しつつ発展の跡を辿ってみることにする。 1. 生産の社会的分化の類型 1). -ヨーロッパ農業の特徴 ヨーロッパに限らず人類の歴史に長い期間を占めた自給自足経済の初期においてほ, 落共産体」という本質的構成要素の中において,村落の共有財産を利用し,また狩猟,漁. 「村. 捗等共同で行なっていた封鎖的,孤立的な家内経済があり,その枠内の贈与,貸与があり, 招請労働という形で相互的補助の生活が営まれていた。 ここでは農耕時代に入ってからの主としてドイツを中心とする西ヨーロッパにおける農 耕生活を概観し,日本の稲作農業と比較してみることにする。. 私有財産が社会的体制として定着,確立するのほヨ-ロッパである。ヨーロッ′くにおけ る農業の発展段階において,生活財の私有の程度ほ,農民が農奴から自由農-移行する過 程の指標となりうるものである。別言すれば,生産財の私有の程度が人間の社会的地位を 規定するということであーって,ヨーロッパ農業が大土地所有と農奴によるものであったこ とほ,わが国の農業と比較して大きな特色をなすものである。 ヨーロッパ農業ほいわゆる開放農地制(open丘eldsystem)であり,重農具を用いる有 畜農,つまり畜力を使用する大農方式であった.そのことほ鉄製農具が早くから使用され たことによるものであり,鉄製農具の使用ほ農地占有の範囲を増大し,生産性を高めるこ とが出来た。また重農具の使用ほ必然的に有畜農業-向かわせることにもなった。しかも 重農具のもつ非自給性ほ,農具製作を早くから専門化し,社会的生産への道を開くことと なったのである。発達した農具と家畜の私有は,土地さえあれば余剰生産を可能にすると いうことを悟らしめ,そのことは土地に対する占有の欲望を強める結果となった。 以上のようにヨーロッパ農業においてほ,農具の生産ほ社会的に普遍性を持っており, そのことほ,農具が市場性を獲得することによって独立した職人層の発生を早める基とな るのであって,鉄製農具の製作技術の一般化ほ,製鉄マニュファクチュアにつながって行 くのである。 さて,. K.. B凸cher. は農業の発展段階7)を補助生産-需要生産-余剰生産-商品生産の. 4段階に分けている。そしてこの何れの場合においても「家政はその生産経営から完全に 分離することがなく」家庭の本来の生活機能を果しているのである。 初期における農耕生活においてほ,自家の需要に資するための生産のみであり,多くは 女子によって行なわれ,土地の私有観念ほなく,用具も簡単であり,完全な共同耕作であ. った。この場合,農耕は,食料生産として二義的な意義しか持たなかったが,家畜の使用 と農具の改良はその生産性を高め,重農具使用の田畑の仕事は次第に男子の手に移り,蘇 人の生産活動ほ自己経済内でのパン焼,ビール醸造,紡織,石けんの製造などに移ってい ったが,それらほまだ交易生産には結びつかなかった。. B仏cherの言う第三段階に至り,原料素材の変形(加工品)は漸く農家生産から分離し 7). Karl. B也cher. 『国民経済進化論』渋川康一訳著.

(7) 7. 家庭紅おける蓄積横能について. て,ここに手工業者と商人の発生を見るのであるが,全段階を通じて農家の生産ほ第一に は自家の食料,衣料の需要を満すことであり,その後に余剰生産を行なうのであって,こ の余剰生産についてほ,一般に生産品の撰択が行なわれた。その主なものは婦人によって 行なわれ,特に婦人の手先仕事として,バメl,チ-ズ,釈,亜麻などが交易の目的をも って生産された。 2) 日本における農耕生活の特徴. わが国の農業発達史において特徴をなすことほ,その発達段階において本格的な牧畜時 代をもたなかったことであるoそのことほ古い生活秩序を長く温存する結果になった。. 縄文時代の終わりに,採集経済を基調としたそれまでの集落生活を何らかの形で再琴成 し,統制せねばならぬ必要が起きてきた。その原因ほ,水稲耕作を知ったことで,生産活 動の基礎をそれに移しはじめたためである。. 集落ほ水稲耕作に便利な土地に定着し,あるいは分化し,また水稲耕作のために土地や 水利を共同で占取した。わが国ではこうして採集経済からいきなり水田耕作農に入って行 ったもので,この集団があらゆる生活の基礎をなすものとなったのである。. 初期における生産用具は不完全な木製革具で,農業技術もきわめて未熟なものであった。 集団は家族単位に労働を行ない,生活をするようになったが生活共同体としての集団の制 約ほ永くつづいていった。農民が集団の規制から逃れられなかった基本的原因ほ,土地析 有の発展がおくれたためである.農業生産の余熱土集団の首長に収納され,農業技術にお いても弥生後期には鉄製の生産用臭が使用されたがそれらほ少数の権力者に集中して,一 般農民のものとはならなかった。. 農民の家族が自立的性格を強めたのほ,生産用具や生産物の占取主体となった時からで ある。人々の生活圏ほなお基本的には変わらなかったが,これら家族内に貯えられていっ た生産力,ならびに技術の蓄積は生産財の私有の進化に伴い次第に生活内容を複掛こし, 多様化していった。 日本農業の特色ほ前述のように水田稲作を主体に営まれたことである。しかもそれほ, 孤立的,閉鎖的,排他的な農業形態をとり,労働力ほ主として家族の手労働による極めて 小規模なものであった8)o 農具は手道具の範囲を出ない素朴なもので,その製作や修理は 家族内で賄われた。農鍛冶のような専門的な手工職人がいても,それは限られた小地域の 需要を満たすに止まり,技術として一般性を欠き,商品として市場を獲得するに至らなか った。. 水田稲作ほ,水を水平に乗るため,細かく区切り,睦を作らねばならず,まず深耕して 軟かに保つため重農具の使用を不可能にしてきた。こうして狭小な耕地に自家労働を主体 とする零細な家族経営ほ,資本主義的な農場経営を生むことなく,閉鋳的な日本農業の特 殊性を長くになってゆくことになったのである9). 8)狭少な土地に家族労働を主とする日本の農耕生活では,その性格上本格的な奴隷制度は生れる 余地がなかったものと思われる。. 9). 「春耕秋収」という言葉がある。. 「耕収を春秋の季節の循環にまかせる``くりかえし''の生活が.

(8) 名. 相. 馬. 信. 子. 大農方式をこよる畠-ロッパ農業は生産面において,早くから技術の一般化,画一化が行 なわ九,それが手工業の独立に発展したのと対照的に水田稲作を中心とする日本農業はそ の生産面においてほ極めて停滞的であったが,生活の消費面においてほ画一化が進行した ように思われる。 2. 日本義褒の蓄積機能と生産の社会的分化. 生産の社会的分化という観点に立って,その前提である日本農家における蓄積について 考えると,ヨーロッパ農業が生産面において早くから社会的分化を遂げたのに対し,日本 農業は自給自足的農耕生活が実質的には近世までつづいているoその主な原因は,日本の 農耕生活における蓄積の不足であり,その形態であるo別言すれば,日本の稲作農の労働 生産性の低さと,権力の収奪による農民生活の貧しさがその原因である。 少数の支配者や権力者を臨桝ぎ大多数は農民であり,農民の貧しさはいわゆる-セソ、ン ヤル・ミニマムで画一化され,必要最少の生活を強いられていたのであって,農民は自家 の需要を満たし,その上で余剰生産をなし,それを商品化するという生活の余裕を持たな かったのである10)。. さて,日本農民のそうした貧しい生活における蓄積の形態はどうであったかというと, すべてが家族内における私的蓄積であり,それは全く備蓄の範囲を出るものでほなかった。 農耕生活における生産的諸機能,すなわち生産手段も,原料も,生産物もその蓄積ほすべ て家族的な中に隠匿されてしまい,家族内に隠匿されたそうした生産的諸機能ほ結局,坐 活手段として消極的に機能するにとどまってしまったのである。それは日本農業のもつ孤 立的,閉鏡的性格の一面であり,生産物が資本的性質を持ち得なかった理由でもある。 わが国では,歴史のほとんどはじめから,政治的支配がすべての中心にあり,その力に よる収奪ほ生活の末端まで及んでいた。一方経済的にほ上述のように極めて閉鎖的,排他 的な生産形態にゆだねられていたので,経済問題についてはつねに私的解決という農民的 方法をとらざるを得なかったのである。したがってその蓄積は自己防衛的な私的備蓄にす 実ほ慣れることでありしたがって習いが性となり,慣習が生れ,生活定型が出来る。」 農耕というものは人間を農耕地という仕事場に定着させる。そこを離れてほ生きられない。 農耕民は地域的限定を受けることになる。 鋤'鍬で水稲栽培をする初期の水田耕作の形式が,その最初の段階から定型づけられていた。 水田農業は四季の気温と風雨という自然的現象に依存し,自然現象は神一神秘性とむすびつ く,と日本農耕生活の性格を述べている。 『日本生活史』 10)農民は年貢米を上納すれば,後にはくず米しか残らないというのが一般的状態であった。 寛永の御条目には「百姓の食物常に雑穀を用うべし,米はみだりに食うべからざるよう申し きかせること」があり,農民は軽い場合でも四公六民,五公五民,普通で六公四民,ひどい場 合ほ七公三民という想像もつかない過重な貢粗を強いられ,良い米を上納し,自家用にほ,く ず米,砕米を用いなければならなかった.しかも砕米や麦が食べられればよい方で,東北,九 州,飛騨の山村でほ最近まで,粟や稗のみを主食としていたという。 そうした貧しさの中で考えられた生活技術として,或は生活の知恵として,庶民生活を支え てきた生活法則ともいうべきものは,生活の中に-レ(晴)とケ(褒)を分けることであった。 つまり,ふだんとよそゆきを分けることが日常の行為を律する基本的な生活態度となったので あるo.

(9) 家庭における蓄積横合凱こついて. 9. ぎぬものであり,それははじめから社会的解決を不可能にする要素をそれ自体の中に含む ものであった。. 水稲を生産の主体とした日本の農耕生活では,村や部落の共有財産や共有施設にたよら なければならぬ一面を有しており,. -例えば,濯概用水や入り合い権のある山林,水草 「村」或は「部落」ほ「家」とならんで重要 のような加工施設など-日本農民にとって, な社会生活の単位であった.しかし村や部落ほ,山や水をめぐって常に利害が対立し,他. 村,他部落とほ排他的であり,また同じ村内,部落内において,各家族ほ互いに閉鎖的, 孤立的態度をとってきた11'o農家の個々の倉や納屋に貯えられた備蓄ほあくまでも消費的, 生活的Stockであって,資本に転化する力をもつものでなかった。 また生産的技術について言えば,その伝承は父子相伝的な閉鎖性をもち,技術そのもの ほ個々まちまちに進歩し,多称化ほするが,停滞的で,社会的普遍性を持たず,専門職と して独立自営してゆく経済的基盤を持ち得なかったのであるo これに対して,大農方式によるヨ-ロッパ農業は,生産性が高く,また石炭,鉄鉱石な どの基礎的資源の豊富な保有と相待って,生産の社会的分化が早くより行なわれたoその ことはつまり,ヨーロッ′叫こおいては,生産手段をもつことにより,生活を転換すること. が出来るということ,すなわち自分の生活をよくするためには,生産手段を持たなければ 駄目であるという所有の意識を白からのうちに確立して行ったのである。そしてこれは当 pヨ-ロッ′く人の生活意識を形成する基本的態度の一 然,物質文明への道を開く基となり, つとなっていったのであるo. ヨーロッ′叫こおける封建額主ほ日本とほ比較にならない大がかりな備蓄を可能にするの であるが,一方において領主は住民(農民)を保護する義務を負うものであって,領主と 農民との関係は日本における家と家との絶対的な関係でなく,あくまでも個人間の双務契 約的な関係に立つものであって,それほ中世初期のヨーロッパ封建制度の特色をなすもの である12).. ヨーロッパにはこうした政治的背景があり,さらに宗教的要素が加わり'イギリスでは 救貧法Poor Low18'なる社会制度が生れるのであって,その結果の良否は別として,問題 ll). 「村落内における農家の所有や経営の規模の差にもとづく利害の相違ほ,村落の一体性を強調 する村の道徳的慣習的規範によっておしころされた。村の指導層であった地主層の権位的支配 は,一般村民の共同生活からの離反をきびしく制圧し,部落の団結が,村民の最大の倫理的目 標となっていた。」. 「農業生産上 村民の共同が必要であり,村落一体としての統制が必要であった。日本の村 落では,その住民が一つの神社を祭った. ・・-神社ほ村の鋲守として,村落の社会結合の象徴 であった。」 『日本農業の変革過程』東畑精一 12) 「ヨ-ロッパ封建制度における主従の関係は双務契約的であるから,主君が従者を保護する義 務を怠った場合や従者が忠誠の誓を破ったときにほこれを解き,別に新たな主従関係を結ぶこ とも可能であり,日本のように二君にまみえずといった主従関係の絶対性ほないのであるo」 『ヨーロッパとは何か』増田四郎 13)救貧法の起源ほ中世に発するが,一般的にほ資本主義壊構から脱落した貧民を救済するための 立法の総称である。 --エリザべス女王治下一連の救貧法が,救貧支出をまかなうため,救貧 税制度を設けたこと′ほ,資本のための相対的過剰人口の維持費を社会全般から強制的に徴収す.

(10) 10. 相. 馬. 信. 子. の私的解決よりほ,社会的解決を志向する基盤が出来ているのであって,こうした傾向ほ やがて社会保証への道を開いてゆくのである。日本の農業が閉鎖的個別的生産体係を辿り, 家族的解決を迫られた事情とほ対照的である。 日本において,父権を中心とする特殊な家族制度が成り立ち,乏しい家産を維持するの に都合のよい家族関係が形成14'されるに至った背後の政治的,経済的要因はきわめて特異 であり,根深いものがあるのである。 さて,ヨーロッパの大土地所有による大農方式ほ,集団的,社会的Stockを可能にし, こうした大がかりなStockほまたCapitalとして機能する力をもっており,その意味で ほ,アダム・スミスが,. Stock-Capitalとしたことがわかるのであって,日本の場合の. ように,生活的な機能しかもたぬ私的なStockとほ根本的に異なるものなのである。 ヨ-ロッパ人の一般的態度として,彼等が生活の中でつねに「支配者,被支配者の関係 を法的な関係としてとらえてゆく」意識をもち,また「支配力を受けとめる横の関係が,. 重商両面意盲 亡蘭画i打 裏面宥テ盲面であって,それが今日のヨ-ロ ブ′く文明を開いた原動力でもあり,社会生活において彼等が,合理性を求めてゆく姿勢と もなり,平等への要求ともなっているように思われる。 Ⅲ. 家庭類型の多様化と蓄積過程の変化. 「精神的生産ほ物質的生産の変化に応じて変わる」とマ∼レクスほ『経済学批判』に述べて いる16)0. われわれの家庭は物質的基礎の上に営まれているものであり,生産される生活財の多寡 ほ,直接間接に生活に影響をもつものである。 ることを意味したo産業革命の進展ほ大量の貧民を生み出し,救貧税ほいちぢるしく膨張した。 1834年の新救貧法は,貧民の救助を縮減するた軌劣等処遇などによって制止的原理を露骨に 示したo救貧法の慈恵的,制止的性格はその後労働者階級の批判の的となり,再編制されて, 社会保証制度のなかに統合されることになった。 『経済学辞典』 14)長男相続ほ, 「家」制度の集中的表現であり,封建的社会体制によって,つくり上げられたも のとみることが出来る. 『日本農業の変革過程』東畑精一 15) 『西洋封建社会成立期の研究』増田四郎 『ヨ-ロッパとほ何か』増田四郎 マックス・ウェバーほ'欧州における近代文化の特質を,ギリシャ以来の合理的思惟方法に 基づく「人文的合理主義」と,キリスト教の禁欲的生活態度である「禁欲的合理主義」という 二つの合理的態度の結合であるという。 また近世文化の構成要素の一つである職業観念を基鍵とする合理的生活態度ほキリスト教の 禁欲精神から生れた。といっている. 『プロテスタソティズムの倫理と資本主義の精神』マック ス・ウェーバー. 16). Rostowはマルクス主義を次のように批判している。 「マルクス主義文献の主流においては最初から最後まで,ひとびとが真に重大な関心を払って いるものほ'財産と所得を求め,それを護り,それを殖やしていくことであるとされているo 人間行動ほ必ずしも経済的利己心と関係づける必要のない,あるいは経済的利己心に収赦する 必要のない,動機によって影響されるという認識がもし体係的に精教化されていたならば,そ れほマルクス主義の議論およびそれからひき出される結論の全体を根本的に変えてしまってい たであろう」.

(11) ll. 家庭における蓄積機能について. ここでは家庭の経済生活を4段階に分仇各段階における家庭の蓄積機能の特質を「物 的生産の変化」に対応せしめて考えてみたいo 1経済発展段階における家庭類型 1)自給する段階における家庭(農耕家庭) 2)家業をもつ段階における家庭(職人家庭). 3)貨幣経済段階における家庭(近代家庭) 4)脱工業社会段階における家庭(未来家庭) この家庭類型は大体K・凱cherの経済発展段階17'に対応するものであるo 2)の職人家庭は すなわち, 1)の自給家庭はBiicherの封鎖的家内経済の段階に当り, 3)の近代家庭は, 都市経済の段階,主として生産者と消費者の直接交換の範掛こ相応し, Bdcherの都市経済の段階に発生し,商品生産を主とする国民経済の段階にあたるo. 4)は,. 現代家庭を含めた未来家庭の展望であるo Biicherの工業化の歴史的順序にしたがえば,自給家庭は,家内仕事と賃仕事の. また,. 両範囲を含み,職人家庭ほ,賃仕事よりはじまり,手工業を経て家内工業に至る発展過程 であり,. 3)の近代家庭ほ,その萌芽はすでに前段階にあるが,商品生産を主とする工場. 制工業以後としてつかむことにする。 さてこうした家庭類型の発生と多様化の原因,およびそれら各段階における家庭の蓄積 機能の形態ほ如何なるものであったか,その変化と意義をさぐってみることにするo 2. 家庭類型と蓄積の形態. 家庭類型における蓄積の形態とその特徴を次のような形で考えてみたいo 17)経済発展の段階についての主なる説をあげると, Listは,狩猟,牧畜,農耕,農工,農工商の5段階に分けたo 甘ildebrandは,経済の発展を財貨の分配手段の観点から,自然経済,貨幣経済,信用経済 の3段階に分けた。 scbmollerは, 「重商主義とその歴史的意義」で,村落経済,都市経済,貸地経済'および 国民経済の4段階とした。 Engelsは,自己経済,交換経済,資本主義経済に分け,交換経済を更に, ① 交換が偶然に行なわれるものo (余剰財貨の交換) ㊥ 交換が規律的に行なわれるもの。 (牧畜と農民との分化) ④ 交換が必然的に行なわれるもの。 (農業と手工業との分立). の3段階軒こ分けたo Biicherは,財貨が生産者から消費者に到達するまでの道程の長さをもとにして'封鎖的家 内経済,都市経済,国民経済の3段階としたo ①家内仕事, ㊥賃仕事, ㊥手工業, ④家 彼はまた!農業より工業化-の歴史的順序として, 内工業, ⑤工場制工業,に分類した○歴史学派の段階説の中で,最も大きな影響力を残したの はBiicherの説である。. Rostowほ,すべての社会は,その経済的次元において次の5つの範時のいずれかにあると みることが出来るとして,伝統的社会,離陸(テイク・オフ)のための先行条件期,離陸(チ イク・オフ),成熟-の前進,そして高度大衆消費時代に分けているo ロスト-は更にこの諸段階に対応するものとして,マルクスの封建主義・ブルジョア資本主 『経済成長の諸段階』 義・社会主義・共産主義という成長段階をあげている。.

(12) 12. 相. 馬. 家庭類型. 子. 蓄積の形態 余剰生産物 生産用具. 1.自給段階の家庭 2.家業段階の家庭. 信. 農業家庭 職人家庭 商人家庭. 同. 上. 技. 術 幣. 貨. 貨. 3.貨幣段階の家庭. 幣. 人間的資質. 4.脱工業段階の家庭. 精神文化 以上ほ非常に大まかな分類であるが,各段階における蓄積の特徴を見るために,その段 階において,主として集中された蓄積対象に焦点をしぼってみたものであるo 1). 自給段階の豪産と蓄積. 自給する家庭の一般的蓄積形態はすでに各章で述べてきたように,自家の需要を超える 余剰生産物-の志向であり,余剰生産を可能にする生産手段としての農具の私有である。. ヨーロッパ農業でほ当然家畜が生産手段として登場する。そして土地の私有の度合が最も 強い影響をもちつつ余剰生産を可能にし,余剰生産は交換の道を拡大し,また生産用具と しての農具の独立生産への道を開いてゆくのであるが,わが国でほ,労働生産性の低い水 田稲作農を主体とし,また前述のように,強い政治的支配の下におかれていたため,この 段階における自給家庭の生活は貧しく,物が生活を規制することが多かった。この段階は, いわゆるマルクスの原書過程の初期にあたり,勤倹節約などの道徳律が生活に浸透してい た。自給家庭のこうした基本的態度ほ,なお次の段階にも引きつがれてゆくのである。 2)家業段階における技術の蓄積 前段階における一般的生活資料の蓄積と,生産用具の私有による蓄積の増加ほ,手工職 人の発生をうながし,社会的生産の分化という経済上重要な時点に到達し,農耕家庭の中 から手工職人層の家庭が分化独立してゆくのであるoこうして家庭類型は多様化の方向 を辿るが,それほ生産手段の技術的変化に対応し,また私有財産が確立してゆく過程に対 応しているのであるo 以上のように,家業をもつ家庭が独立して,生活を営む段階になり,. ていた前段階の状態にはじめて,. "物"に支配され "独立した個人"という人的要素が主体的に現われてき ●. ●. ●. ●. ●. ●. ●. たのであって,ここで大事なことは,無形の蓄積である"技術"が一つの財産として生活 の中に確立されたことである18). 「腕に職」という新型の財産は,技術の伝承に対し,徒弟制度19'というきびしい制限の 18)唯物論的解釈では,身についた無形の技術を財産とすることは承認出来ないであろう.単なる 技術という抽象形でなく即物的証明が必要であり,技術の具体的表現,すなわち技術ほ道具で あり,機械であるとしてそれを財産とするのである。 19)中世都市の同職ギルドにおいて後継者の養成のためにつくられた制度,徒弟期間を修了すると 職人となり,やがて親方となって独立する。. --ギルドが没落期に入ると徒弟制度の内容も変 化し,職人の親方への昇進ほ制限され,徒弟-職人-親方という階梯ほ身分関係に固定化され た。. 日本のギルド(座)における徒弟制度もこの傾向をもつが,家族制度との関連が深い。.

(13) 13. 家庭における蓄積機能について. 中に受けつがれてゆく一つの社会制度を作り上げたのである。こうして技術という無形財 産の蓄積は,生産の集団化というなかで,社会的地位を確保してゆくのである20'o さて,手工職人の発生ならびにその独立ほ,商品生産の拡大につながっており,手工職 人の作る農具ほ,すでに商品的農具であって,自家の使用を目的として生産したり,また ほその余剰を目指す生産ではないのである。 水田稲作を主とするわが国においては,前述のような諸制約により,農耕家庭からの手. 工職人の分離がおくれるのであるが,. (この点に関してはさらに後述する。)生活面におけ. る手工職人層,たとえば,陶磁器,紙料,服飾に関するものなど,一般性を持つ生活資料 ほ,商品性と市場性を確保して独立して行った。 職人層は家業としての小商品の生産からやがて近代的な商品生産-脱皮してゆくのであ (工場制手工業)の段階を経て,作莱場 るが,その過程においていわゆるmanufactur (生産の場)は家庭から分離するのである。そしてその作業場の私有,またほ生産手段と しての機械の私有により,資本家の成立を見るに至るのである。 さてこの段階における商業であるが,商人は貨幣を通じて交換のルートを開拓するが, 初期商人の交換は何ら合理性のない不等価交換であり,商人の得る貨幣は,いわゆる前期 的資本で,貨幣が資本として機能する社会的諸条件が未だ整っていなかったのであるo 日本における商業資本についていうなら,わが国の場合は,極めて特殊な事情のもとに ぉかれていたということが出来る.商人の活動を停滞させた直接的な原田ほ政治的要因で あり,強力な権力支配である。 米を例にとってみると,米ほ社会にとって必需性の高い,重要生産物であるから,経済 の自然な状態でほ,その余剰生産は必ず商品化して米商人の発生を見る筈であるが, の場合はこうした経済の正常な発達が出来なかった。. 'B本. 1.米はあらゆる時代を通じ,先ず貢納品であったことで,収穫された米ほ直ちに貢納 『経済学辞典』 散所とともに荘園領主に把握されたのが座衆である。産は12世紀の初頭から中葉がその成 立期と見られる。 -・12牲紀以降手工業者の座・商人の座・芸能者の座などが京都や奈良など の荘園領主を本所として続出するようになった。 散所の民・座衆などの発生とともに,京都や奈良などの特殊消費-地方の特産物を運んだ行 商人一行商集団の発生を見,これらの人々の活躍は,やがて荘園の年貢諸公事物が商品化さ れるや,ますます活発となった。貢租の商品化は農業と手工業,手工業と商業との分化をすす めた。 『日本産業史大系』総論篇,地方史研究協議会編 20)ヨ-ロッパ中世は,それまで奴隷労働が容易に得られることによって,おさえられていた技術 を広く応用することから始めた。そして2-3世紀以後には,近代世界の土台となった発明を っぎつぎとうみだし始めた。その結果一般人の生活水準がいちじるしく向上し'10世紀(進歩 の復活がまだほとんど始まらなかった時期)の農奴ほすでにp-マ最盛期のプロレタ1)アより 豊かな生活をしていたといわれているo. --(ローマ帝国むこおいて奴隷の供給がつづいたのは ローマが強くて膨張的な軍事国家であるあいだだけだ。ローマの権力が傾くにつれ,奴隷の供 給が減退した.そのことほ,生産の新しい基礎が見出されるまでほ,もっとも原始的な生活に もどるほかないことを意味していた。)--中世の最も興味ふかい新規さほ,それまでに他で発 明された諸技術を開発する能力をもっていたことである。 S・ Liller 『人類と模械の歴史』.

(14) 14. 相. 馬. 唇. 子. され,後ほ農民自身の必要さえ充たすことが出来なかった。. 2.次に農本主義の名のもと. 3.また, に,農民を支配し,農村における商人の排除,農民の転業の禁止などを行ない, 城下町に在来産業を集中移住させてこれらを挽制し21),窯業,鉱山,磯織などのマニュフ. ァクチュアを直接支配することにより,商業資本と工業生産力を掌撞した。したがって, 一部の御用商人を除いて,日本の商業資本はその極地化,零細性により,農民と変わらぬ ほど無力なものであった22).. つまり,商人の発生すべき米が貢納品であったこと,手工業が制限されたこと,マニュ ファクチュアが直接支配下にあったことなどの原因により,わが国でほ手工業も商業も正 常な発達を見ず,社会的分化が不完全であった。こうした事情のもとに,日本でほ,行商 人という形が長く残ってゆくのである。 Ⅳ. 近代家庭における蓄積. 近代家庭における蓄積は貨幣に集約される。家庭から生産の場が分離し,家庭は生産単 位から離れるのであるが,そのことによって,家庭の生産的機能が全く消滅してしまった のでほなく,家庭の生産的機能は,社会的生産に参加するという形に変わったのであり, 21)戦国大名は,領内の寺社・農民・商人・手工職人らを統制し,農民は逃散を厳禁して郷村に足 任せめしめ,商人の来商を歓迎し,職人の技術を利用して治水工事や耕地開発などを行なった。 とくに荘園体制下の産制を廃止した。戦国大名は領国内に検地を行ない,本年貢・反銭・棟別 銭・懸銭などとし,本年貢ほこれを在地領主に与えた。また従来代銭納化されていた年貢・諸 公事物を田畑の年貢として,現物納を原則として,農民が貨幣経済にまきこまれるのを防いだ。 『日本産業史大系』Ⅰ総論篇 領主のための商業組織の所在地としての城下町ほ純然たる自然発生的な商業都市ではなく, 意識的に育成されたものが普通であったo 江戸時代の農民統治策の中心ほ,貢税を納めたあと自給自足を辛じて果しうるよ`ぅに貢楓を 取り立てることであり,農民が商業過程に接触することを禁ずることを主眼としていた。城下 町-の領内商人招致策ほその政策の-表現でもあるが,城下町形成後ほ,城下町外における商 業を禁止して,商業を城下町の特権とした。単に城下町外の商業を禁ずるのみでなく,積極的 に城下町の商人にほ特権を与えた。 『江戸時代の商品流通と交通』古島敏雄 江戸時代において,農民が商品を求めることを制限し,農村において商業の行なわれること を防ぎ,また農民が商品を生産することを禁止する政策が執られた.熊本藩の貞享元年(1684) の農民法度では,在くざい〉中-農村に居住して田畑を作らず商売で渡世を営むことを禁じ, そのような者ほ熊本そのはかの宿町へ引移ることを命じ,また在々では商売晶を入れることを 禁じ,享保13年(1728)の令でほ,在中の小商いを一層きびしく吟味し, -村ごとに改めて, 右横の暑がいれば宿町-移し,役人を派遣して改めるから,隠しておいたならば本人はもちろ ん5人組・庄屋までおち度とするといい,商人の農村からの放逐を命じている. 「諸国より参り供繰綿貫いども問屋より在々-買いに達す間数きこと」元線13年(1700)な どという禁令は諸藩到る所に見える。 『近世農民生活史』児玉幸多 22)商人に対する権力支配ほ,士農工商に分ける身分社会にまで及んだ.この段階的区分は商業の もつ性格にもよるが,封建社会における強い支配体制の形でもある. --. マックス・ウニバーほ「賎民的資本主義」なる言葉を用いているが「英国-プライズム」に つき次のように述べている。 「ユダヤ主義ほ政治的或は投磯的方向をもつ「冒険者」的資本主義の側に立つものであり,そ の性格は一言でいえば, 「膿民約資本主義」のそれであった。」 『プロテスタソティズムの倫理と 資本主義の精神』.

(15) 15. 家庭における蓄積機能について. 家庭にほなお家事労働という家族のために行なわれる用役を含む大事な,あるいほむしろ 家庭の生産的機能の本命ともいうべき領域を残しているのであって,われわれがそのこと を強調するのほ,それが家庭における"人間的資質形成"という重要な任務に関わる要素 を含んでいるにほかならぬからである。 人間的資質の向上ほ一方でほ労働力を高め,より多くの貨幣収入をもたらし,家庭にお "人間的資質形成の場"としての家庭の重 ける貨幣的蓄積の増加を招来するのであるが, 要さは,貨幣蓄積の面より,むしろ,家庭生活における個性の創造という面にある。それ は家事労働という家庭生活に欠かすことの出来ない生活技術の中で,家族という人間関係 を通して養われていく人間的個性の創造という問題である。 われわれはさきに,職人の技術を無形の財産と考えた。その蓄積ほ,経済発展の重要な ステップであったことを見てきた。技能を身につけることにより,独立自営の生活が可能 になったのであった。同様に,家庭生活の中で培われてゆく人的資質もまた重要な無形の 財産であるとわれわれほ考えるのである。 近代生活の無個性化,画一化という傾向に対して,何よりも家庭の主体性の回復をねが うものであるが,そうした意味で,人間的資質という無形財産を育て,蓄積してゆく場と しての家庭を土きわめて重要な意義をもつもので, 「家庭における生産的機能」としての, 広義の家事労働について,正当な評価を与えねばならぬと考えるのである. さて,家庭における生産的磯能の一部が,社会に移ったことにより,人々は生産の場と しての企業に通うこととなり,ここにおびただしい勤労者家庭の出現を見るのである。そ こで生産される商品は,貨幣を媒介として,ただ交換を目的とする不特定多数のための商 品である。家庭は社会的生産の参加によって得られる貨幣をもって生活を営み,拡大され た商品社会の中で,生活の画一化を否応なく要求されるのである. この段階においてほ,それまで目指してきた物的蓄積としての生産手段ほ,次第に経済 的価値を変え,.家庭生活では,商品消費傾向を急速に進展せ.しめ,そうした生活に都合の よい形態として核家族化-の債向を強めるようになったのであるo 日本の現状は, Rostowのいういわゆる高度大衆消費時代にすでに踏み込んでいるもの と思われる。. さてこうした僚向の中で,前段階までは少なくとも家庭における蓄積の最終日標であっ た土地や家慶などの不動産も次第に換金性を要求され,商品的性格を帯びるに至り,やが てこれらのものを含めすべてが貨幣という形に還元されてゆくのである。すなわち,貯蓄 の形態における不動産の動産化旗向という現象を生むに至るのである0 これまで家庭の蓄積対象であった生活財-生産手段を含めた-紘,少なくとも生活 g的的であった.それは自己の生活に必要な生産用具であり,必要な生活資料を生産する ための土地であり,生産の場,蓄積の場としての性格を有する家庭であった。そして,坐 産物は第一に家庭の需要を充たすためのものであった。ところが近代における工業社会で ほ,生産物は無個性的な商品として市場に登場し,社会的,非経済的刺激によって家庭に 購入される商品にすぎなくなり,家庭における貨幣の蓄積は,将来の購入のための備蓄で.

(16) 16. 相. 馬. 信. 子. あり,企業側から見れば,それは家庭における将来の消費を予測する基準となりうるもの でもあった。こうして家庭ほ将来に備えてひたすら貨幣の蓄積に専念するようになったの である。この傾向ほさらに進んで,いわゆる商品の割賦制購入となった。これは現在の購 入能力を越える耐久消費財の先き取りと考えられるo ここにおいて近代家庭は,一方に貨 幣蓄積を有しながら,核家族化という債向を通し,実質においては,いよいよ無産化傾向 を辿るのである。. この状態がさらにすすむと,家庭における貨幣の蓄積はまた新たな家庭類型を生み出し てゆく一面を有するのである。 貨幣の蓄積は,家庭の側からすれば,将来の消費に対する備蓄であるが,社会の側から 見ると,それらの金融機関に予託された貨幣は集積され,資本として活用されるのであっ て,家庭は貨幣蓄積を通して社会的生産に間接に参加しているのである。資本として利用 される貨幣蓄積に対し家庭ほ,利潤の配分,ないしは利子を受け取るのであって,貨幣の 蓄積は,社会的生産を通していわゆる"利子生み資本皇3)"として機能してゆくのであるo したがって,家庭においても,こうした利子や利潤の配当を目的とする貨幣蓄積が現われ, それによって得る利子や配当金を再投資してゆくという今までに見なかった新しい家庭の 類型が生じてくるのであるo. この新しい家庭類型ほ,もはや投資家という家業的性格を帯びているものであり,それ. ほすでに消滅したはずの,家庭の生産的機能の復癌と見ることが出来るのである。 さて貨幣形態の蓄積は,物価の変動や利子率の変化などにより不安定であることをまぬ がれない。そこでこの段階においてほ,家庭の蓄積形態としてなお,換貸可能な"物" の志向がある。それほ,例えば,宝石などの貴金属,書画骨董品などの美術品である。 こうした換貨可能で,また一般的価値の変動を受けにくい物の所有は,家庭の経済生活 に安定をもたらすと同時に,精神的安定の作用があると思われる。 ヨーロッパにおいては,利子生活者の家庭ほ可成多く,また宝石,美術品などを所持す る家庭が多い。その量においても質においても,とうてい日本の家庭の及ぶところではな い.堅牢な住宅に住むこともその原因であるが,家庭における長期にわたる蓄積の相異に よるものである。. 貨幣蓄積の個人割合においては,日本ほ世界第一である。しかしこの傾向のよってきた るところをも考えなければならない。それは一般的に貧しい生活を基調とした排他的,封 鎖的生活の中できずかれた本能的自己防衛策であり,その根底にひそむものは生活の不安 であり,また,政治への不信でもあると思われる。. さてこのようにしてすすんできた現段階において考えねばならぬことは,すでに資本の 所有の不明確化という問題である。すなわち株式による会社組織において,会社は一体誰 23). B・ Bawerk,彼の最もすぐれた独創的な理論的貢献ほ資本利子論である.彼は従来の資本利子 論を,生産力説,用役説,制欲説,労働説,搾取説,折衷説などむこ分類して批判し,彼ほ自説 として,現在財の将来財にたいする価値優越によって,すべての資本利子を説明しようとした. (時差説). -.

(17) 家庭における蓄積機能について. 17. のものかという問題,つまり,株式の支配形態,経営と所有の分離などの問題が当然起き てくるのである。. 財産に対する私有の発生は古く,強く,種々の過程を経ながら現在の文明をきずいてき たのである.少なくともそうした点で大きな役割を果たしてきたo殊に私有の対象として の土地のもつ意義ほ大きかった。しかし現在,その土地の私有が,経済生活における正常 な動きを停滞せしめ,様々なアンバランスを生む原因となっているのも事実であるo人口 が増えても土地はふえるわけでほない。つまり土地がほかの生産手段と異なる点ほ,土地 ほ再生産が出来ないという点である。経済圏がすべての点で広域化している現在,個々人 の細分化された土地の私有は今後問題をもつものと思われる。 資本私有の不明確化は将来企業q)性格に影響を持つであろうし,土地私有の問題は今後 家庭における蓄積に何らかの形で関わりをもつものと思われる.現在すでに,家庭におけ る物的問題が,過去におけるほどきびしいものでなくなっていることはたしかである.蘇 庭が物質的問題から少しずつ解き放されている事実を認識するとき,家庭における蓄積の 対象と任務もまた従来と異なる方向をとるであろう,少なくとも,その重点を物的なもの. から,精神的なもの-移行させてゆく傾向をとるであろうと思われるのである。 貨幣段階の家庭が今後ほ貨幣蓄積よりも,人間的資質育成という無形の蓄積に,より情 熱を注いで行くものと考えられる。家庭の蓄積機能としてわれわれは前段階においてすで に技術という無形の蓄積を認めてきた。今後の家庭における蓄積の最も重要なものとして, 知識,教養,文化というような無形の蓄積をも考えてゆかねばならぬと思われるのであるo これらの変化を概観す さて経済の発展段階において,家庭ほ蓄積の対象を変えてきたo るとき,次のように言うことも出来る。 すなわち,家庭における蓄積ほ,物と人との関係において進んできたものと考えること が出来るoつまり家庭の生活において,物の無い時には物の不足をカバ-するための生活 規律があり,強い精神的な抑制作用が働くのであって,蓄積の初期段階においてほ,物は 何より貴重であり,生活のなかで"物"優先の態度が形成される.物一家財一家産と いうようなものを保護しこれを安全にふやすことが第一の任務であり,それに必要な規律 「長男相続ほその集中的表現」な や道徳,制度が家庭をも共同体をも支配するのである。 のである。この段階では人間ほ全く掛こ縛られ,物に対して従属の形でしか現われない, 物を持つ者のみが力をもつ段階である。 次の段階になって,. 「技術」という新たな財産形態が発生するに及んでほじめて人間は. 物より優位のものとして顔を出すのである。これほ生活の発展段階において,きわめて重 要な時点を画すのであって,こうした無形の財産をもって生活する一群の職人は,技術を 収得し,自分の"腕"に対する自信とプライドを持って独立し,生業を営むのであって, 経済発展の一段階をなすものである. さて生活のなかで,物より人間が次第に大きな役割を占めつつ近代生活に入るのである が,この段階で人間は,主体的生活人として物を支配するようになるのである。家庭にお ける蓄積は,交換の媒介物である貨幣の形をとりつつ,生活のなかでほ,人間的資質の向.

(18) 18. 相. 馬. 借. 子. 上に意が注がれはじめ,教育,教養などが家庭における重要な課題となり,それは貨幣所 有者に限られて与えられるものでなく,すべての人の問題として取り上げられるようにな ってきたのである。個人の身についた知識,教養もまた家庭における重要な蓄積なのであ る.. しかしこの段階において新たな問題の発生がある。物の乏しかった初期段階において, 物は重要視され,大切に扱われたが,近代工業の機械化による大量生産ほ,物を豊かにす ると同時に,物を軽視する生活態度を醸成することになった。社会的刺激による欲望の造 成は,従来の価値観を変え24',そのことによる生活の混乱をきたしているのである.生活 をとり巻く非経済的条件(たとえば流行など)による影響,過剰な情報に対して,賢明な 選択と整理が新たな家庭の課題になるのである。カルドアは,人間の幸福ほ物と精神のバ ラソiにあるといっている.今後の家庭が人間的資質育成の場として,如何にこの問題に 対処してゆくかが未来社会の家庭における蓄積を展望する上に大事な要素となってくるの であるo Rostowほ耐久消費財革命がその普及速度を低下しなければならない点に近づいたとき, アメリカ社会ほきわめて風変わりな思いがけない決断を行なった。アメリカ人ほ消費をさ らに-単位ふやすよりも赤坊を1人ふやすことを望んでいるように振舞いほじめたのであ る。つまり耐久消費財の相対的限界効用がある点を過ぎると逓減しはじめる。そして彼等 ほ子供をたくさんつくるという道を選んだのである,といい,トーマス・マンの三世代に ついて書いた小説を引用し,人ほ当然なこととして受け入れているものに対してほ低い価 値しかおかないで,新しい形の満足を求めるようになると言っている。 日本における核家族化現象もやがて別の傾向をとるかもしれない。それが単に経済的事 情にもとづく変化でなく,家庭の側からの本来の姿としての変化でなければならないと思 うのである。 24). Packard. 『浪費をづくり出す人々』 『消費者行動』 Rostowは『経済成長の諸段』階の中で, 「技術が改良され,新しい産業が加速度を増し古い産業が脱落しはじめるにつれて,経済的 構成ほ絶えず変化する. -社会は近代的かつ能率的な生産の要求に歩調を合わせて,古い価 値や古い制度に対して新しい価値と新しい制度をもってバランスさせ,あるいほ古い価値や古 Katona. -. い制度を,成長過程を阻害せずケこそれを支持するような方向に改めていく。」といっているo Duesenberryは,従来個人の消費支出が,自己の所得の関数として独立に定まるという考 え方を転換して,自己の消費ほ自己の所得の関数だけでなく,世間の消費(自己が社会的に接 触する人々の消費水準の加重平均)によっても定まると考えた。 われわれ.の消費生活は,地域拍,職域的,社交的に自分に接触する人々から絶えず影響を受 け,その中で自分の生活を他人のそれと比較しながらより高い生活を望んで消費行動を決めて いるいわゆるデモソストレーショソ効果がそれである。 つまり従来のクロス・セクショソ分析でほ世間の消費水準が一定であれば所得階層が高まる につれて消費性向が逓減するo また生活水準の一般的上昇にしたがって世間の消費水準もそれ につれて上昇するo そこに家計主体の態度について内面的分析の必要があるo 『体系経済学辞 典』,『日本人の生活意識』国民生活研究所痴.

(19) 19. 家庭における蓄積機能について. ま. と. め. 家庭は種々の物財の私有の上に生活が営まれており,生活財の私有ほ家庭存立の根本的 要素であるo 私有をもととする家庭の蓄積機能は,家庭生活の経営に不可欠の要素であるが,そうし. た生活面ばかりでなく,社会の生産面に大きな役割を果たしてきた。 1.生産財の私有の形態ほ,農家や職人の家庭など,種々の類型を生み,その家庭類型 ほ,経済の発展段階に対応しつつ蓄積の形態を変えてきた。そして,近代家庭に至り,そ の蓄積は次第に貨幣より人間的資質という無形の精神財にその重点をうつしつつあること を述べてきた。 しかし人間的資質の形成ほ,経済的要因ばかりでほなく,非経済的要素をより多く含む ものである.したがって家庭における蓄積機能の問題は今後さらに広範な諸条件の分析が 必要である。 本小論は全体に歴史的実証部分の整理が不充分であり,そのため論述の所々に断層部が あり,また飛躍がある。生活の中から拾い上げてゆくべき歴史的事項を可成省略せざるを えなかったことにもよる。. 未来家庭の蓄積の展望についてはあまり触れることが出来なかった。それほⅣ章の近代 家庭の蓄積の背景をなす経済学的諸条件の分析が不備のためであり,それを含めて別の機 会に補充したいと考えている。 この小論をまとめるにあたり,終始ご懇篤なご指導をいただいた国学院大学の飯塚重威 教授に心から感謝を申し上げますo.

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参照

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