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幼小接続を見据えた教員養成の在り方に関する研究―幼稚園教諭及び小学校教諭免許取得を目指した教育実習指導の課題と展望―

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幼小接続を見据えた教員養成の在り方に関する研究

──幼稚園教諭及び小学校教諭免許取得を目指した教育実習指導の課題と展望──

松永康史  森川拓也  田端智美

上村 晶  北島信子  辻岡和代

A Study on the Education of Teachers Focusing on the Connection between Kindergartens

and Elementary Schools

—The Problems and Prospects of Instruction on Teaching Practical Training to Acquire the Licenses of Kindergarten Teacher and Elementary School Teacher—

Yasushi M

ATSUNAGA

, Takuya M

ORIKAWA

, Tomomi T

ABATA

,

Aki U

EMURA

, Nobuko K

ITAJIMA

and Kazuyo T

SUJIOKA

はじめに  2017年3月に改訂された幼稚園教育要領(以下、新教育要領)(1)及び・小学校学習指導要領 (以下、新指導要領)(2)において、今まで以上に幼児・児童の学びの連続性を視野に入れた幼小 接続の重要性が強調された。本研究では、幼稚園教諭免許及び小学校教諭免許を取得するため の教員養成の在り方を再考し、学生の総合的な学びの在り方について教育実習指導担当教員間 が協働的に検討することを通じて、課題を見出すことを目的とする。加えて、今後求められる 教員養成の在り方を踏まえた教育実習指導の展望について考察する。  本稿では、第1章において、幼小接続の重要性に関する動向について述べる。加えて、第2 章及び第3章においては、本学部の教育実習デザインについて解説し、指導の実際と具体的な 課題を検討すると同時に、展望について考察する。最後に、第4章総合考察では、これらの教 育実習指導の在り方を踏まえた上で、幼小接続を見据えた教師の育成を視野に入れながら、今 後求められる教員養成の展望について考究する。 第1章 2017年改訂幼稚園教育要領及び学習指導要領にみる幼小接続の重要性 第1節 新幼稚園教育要領における幼小接続の重要性  新教育要領において、幼小接続という観点がより一層明示されることとなった。これまでも 幼稚園教育要領においては、度々幼小連携・接続の事項が示されてきた。そして文部科学省の 研究指定校などが多く存在し、すぐれた幼小接続のカリキュラムづくりや実践が提案されてき たといえる。  全国的にみても、幼小双方の教師たちが連携・接続の意義を理解しており、交流活動は何ら

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かの形(連絡会、交流活動等)で実施されていることが多くなってきたといえるが、検討会の ように、異なる学校種で教師間が協同して幼小接続のカリキュラムづくりへの取り組みについ ては、まだまだ進んでいるとは言い難い(3)  連携・接続の先進校園によると、教師らの検討会(実践見学含む)では、双方の子どもたち の発達段階および指導の在り方を実際的に学ぶということがカリキュラムづくりのスタート地 点になってきたといえる(4)。ここに、多くの教師が勤務学校種のみの教育指導経験(教育実習 も含む)しか有していないという課題を挙げることができる。幼小接続をカリキュラム上で具 体化していくにあたっては、その指導者である教師自身が幼稚園教育と小学校教育に精通して いることが重要であるといえる。  しかしながら、幼小連携接続にあたっての現実の問題として、双方固有の教育課題における 多忙化はもとより、とりわけ都市部の場合、一つの幼児教育施設から10校以上の小学校に入 学するということが少なくなく、教師間の連携・連絡が日常的に取りにくいという課題をもち つつも、連携を進めていくということを挙げることができる。  幼小接続を全国的な課題として、具体的に進めていくにあたっては、意識的に双方で接続の カリキュラムづくりに着手していく必要があり、新要領ではこれまで以上にその重要性が明示 されるようになったといえる。  その点を踏まえ、新教育要領で明示されている幼小接続とはどのようなことか述べていく。  第1章総則 第1「幼稚園教育の基本」には変更はないが、第2「幼稚園教育において育み たい資質・能力及び『幼児期の終わりまでに育ってほしい姿』」として、幼稚園教育の基本を 踏まえ、資質・能力を一体的に育むよう努めるものと明示され、以下のように3点が挙げられ ている。 ⑴ 豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする「知 識及び技能の基礎」 ⑵ 気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、 表現したりする「思考力、判断力、表現力等の基礎」 ⑶ 心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする「学びに向かう力、人間性等」  以上は2008年版には記載がなく、新要領より明示されるようになったことである。学習指 導要領との連続性にも着目していきたい。2008年版の学習指導要領においては、国際的な学 力観(「PISA 型」学力観)における、基礎的・基本的知識の習得とその活用、思考力・判断力・ 表現力の育成が目指された。今回の幼稚園教育要領改訂において、こうした資質・能力は小学 校から高等学校まで貫いて連続して育みたい力としている。また2008年版の学習指導要領の 方向性を幼小連携・接続を推進していくため、新要領においても同様の目標とされているとい える。  しかしながら、もちろん幼稚園教育は、小学校以上の「習得目標」ではないため、学習指導 要領における生涯教育の最初の学校段階として、小学校以上と同様の方向性を明示するように

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なったということである。  そして、新教育要領において、上記の3点は「幼稚園教育では、第2章に示すねらい及び内 容に基づく活動全体によって育むものである」とされている。  新教育要領での幼小接続を具体化するため、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として、 「第2章に示すねらい及び内容に基づく活動全体を通して資質・能力が育まれている幼児の幼 稚園修了時の具体的な姿であり、教師が指導を行う際に考慮するものである」とされているの である。具体的には、以下の10の姿が挙げられている。  ⑴健康な心と体、⑵自立心、⑶協同性、⑷道徳性・規範意識の芽生え、  ⑸社会生活との関わり、⑹思考力の芽生え、⑺自然との関わり・生命尊重、  ⑻数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚、⑼言葉による伝え合い、  ⑽豊かな感性と表現  上記の10の姿について、第2章ねらい及び内容において、「各領域に示すねらいは、幼稚園 における生活の全体を通じ、幼児が様々な体験を積み重ねる中で相互に関連をもちながら次第 に達成に向かうものであること、内容は、幼児が環境に関わって展開する具体的な活動をとお して総合的に指導されるものであることに留意しなければならない。」とされている。  すなわち、幼稚園教育要領がこれまで掲げてきたように、幼稚園教育は「幼児期の特性を踏 まえ、環境を通して行うものであることを基本とする」ことは継承されていることがわかる。 その前提での幼小接続の具体化として、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が明示され たのである。したがって、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」は「習得目標」ではなく、 幼小接続を見越した教師のねらいであり願いであるといえる。この10の姿をみていくと、これ までの幼稚園教育要領における5領域で示されてきた内容が改めて整理されているといえる。  そして、幼稚園教育要領第3 教育課程の役割と編成等においては、2008年度版では、第3 章で「指導計画及び教育課程に係る教育時間の終了等に行う教育活動などの留意事項」にあっ た幼小接続に関する事項が、総則「5小学校教育に当たっての留意事項」が明示されるように なった。ここにおいて2点挙げられている。 ⑴ 幼稚園においては、幼稚園教育が、小学校以降の生活や学習の基盤の育成につながること に配慮し、幼児期にふさわしい生活を通して、創造的な思考や主体的な生活態度などの基 礎を培うようにするものとする。 ⑵ 幼稚園教育において育まれた資質・能力を踏まえ、小学校教育が円滑に行われるよう、小 学校の教師との意見交換や合同の研究の機会などを設け、「幼児期の終わりまでに育って ほしい姿」を共有するなど連携を図り、幼稚園教育と小学校教育との円滑な接続を図るよ う努めるものとする。  上記のように、⑴では幼稚園教育が「小学校以降の生活や学習の基盤の育成につながること

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に配慮し」とあるように、学習指導要領における「生涯学習」の観点をこれまで以上に幼稚園 教育要領においても明記し、学校教育そのものの連携・接続として述べているといえる。文言 そのものに変更はない。また、⑵においても、方向性は同じであるが、「幼児期の終わりまで に育ってほしい姿」を共有するなど、という文言が追加された。  このように幼小接続をこれまで以上に進め、具体化するための手立てとして「幼児期の終わ りまでに育ってほしい姿」を幼児教育者が小学校教員と共有することを、新教育要領が強調し ていることがわかる。「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を共有し、それぞれの固有の 教育課題を深めつつ、接続のカリキュラムづくりの検討を協同で行っていくことが求められて いるといえる。 第2節 新小学校学習指導要領における幼小接続の重要性  これまでの小学校学習指導要領は教員側の視点に立ち、あくまで「教員が何を教えるか」と いう点から組み立てられていた。しかし2020年度から施行される新指導要領には、教員はも ちろん保護者、子ども、地域の人にも、見れば、学校教育を通じて、「子どもたちが何をどう 学び、どのような力が身につき、何ができるようになるのか」が分かる、いわゆる「学びの地 図」の役割をもたせている。  中央教育審議会答申(2016.12)では、「学びの地図」は次の6点から全体像がまとめられて いる。  ①何ができるようになるのか(育成を目指す資質・能力)  ②何を学ぶのか(教科を学ぶ意義と、教科間・学校段階のつながりを踏まえた教育課程の編 成)  ③どのように学ぶのか(各教科等の指導計画の作成と実施、学習・指導の改善・充実)  ④子供一人一人の発達をどのように支援するのか(子どもの発達を踏まえた指導)  ⑤何が身に付いたか(学習評価の充実)  ⑥実施するために何が必要か(学習指導要領の理念を実現するために必要な方策)  新指導要領に、このような役割をもたせた目的は、〈1〉教科・学校間を越えて教員が学習 内容等の全体像を共有すること、〈2〉子ども自身が学びの意義を自覚する手がかりとするこ と、〈3〉家庭,地域,社会の関係者が幅広く活用できること、とまとめられる。  この中で注目したいのが、〈1〉教科・学校間を越えて教員が学習内容等の全体像を共有す ること、である。これは簡単に言うと、例えば幼稚園教員が小・中の学習指導要領の内容を知っ ている、小学校教員が幼稚園教育要領や高校の学習指導要領の内容を知っている必要性を示し ているのだ。  これまでも幼・小・中・高・特別支援学校の接続の重要性は言われてはきたが、今回、新指 導要領に明示されたことは大きな意味をもつ。新指導要領の前文に「幼児期の教育の基礎の上 に、中学校以降の教育や生涯にわたる学習とのつながりを見通しながら……」とあるように、 単に各教科での学びの接続だけでなく、幼児・児童・生徒の発達に応じた全体的な学びの構築

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をめざしてのものである。  総則には、第2 「教育課程の編成」の中で、4「学校段階等の接続」の項が立ち上げられ、 次のように記された。 ⑴ 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を踏まえた指導を工夫することにより、幼稚園教育 要領に基づく幼児期の教育を通して育まれた資質・能力を踏まえて教育活動を実施し、児 童が主体的に自己を発揮しながら学びに向かうことが可能になるようにすること。  また、低学年における教育全体において、例えば生活科において育成する自立し生活を 豊かにしていくための資質・能力が、他教科等の学習においても生かされるようにするな ど、教科等間の関連を積極的に図り、幼児期の教育及び中学年以降の教育との円滑な接続 が図られるように工夫すること。特に、小学校入学当初においては、幼児期において自発 的な活動としての遊びを通して育まれたことが、各教科等における学習に円滑に接続され るよう、生活科を中心に、合科的・関連的な指導や弾力的な時間割の設定など、指導の工 夫や指導計画の作成を行うこと。  このように、現行の指導要領では見られなかった幼小の接続についてかなり詳しく書かれて いる。その中で特に生活科の重要性が強く謳われ、一人一人の児童が「幼児期の終わりまでに 育ってほしい姿」を基礎にしながら、各教科で期待される資質・能力の育成にスムーズに接続・ 発展させていく役割を生活科は担っている。  新指導要領の生活科の指導計画の作成と内容の取扱いでは、「幼稚園教育要領に示す幼児期 の終わりまでに育ってほしい姿と関連を考慮すること」と明示され、これは前節で示した「幼 児期の終わりまでに育ってほしい姿」としての10の具体的な姿などは、当然知っておかなけ ればならないということであるし、さらにそれを知った上で子どもの姿を分析し、小学校の教 育課程を編成することが求められている。  これらのことを小学校現場で取り組み、展開させていくためには、小学校教員が幼児教育の 具体を学ぶことが重要となってくるが、その点については第1章で記した幼稚園教育要領総則 「5小学校教育に当たっての留意事項」と同様に、小学校新学習指導要領総則「第5 学校運 営上の留意事項」の中にも「他の小学校や幼稚園、認定こども園、保育所、中学校、高等学校、 特別支援学校などとの間の連携や交流を図る」と示されている。これは、幼児教育者、小学校 教員が互いにそれぞれの教育の在り方を交流するだけにとどまらず、子どもの実態や成長の様 子、さらに教育の実践的検討までも学び合うことの必要性を述べている。  この点で着目しなければならないことは、「他の小学校や幼稚園、認定こども園、保育所、 中学校、高等学校、特別支援学校などとの間の連携や交流を図る」という一文は現行の指導要 領にもあり、それは「第4 指導計画の作成の当たっての配慮すべき事項」に含まれていたの だが、新指導要領では、総則「第5 学校運営上の留意事項」の中に含まれたことである。こ れは、社会や地域、幼稚園等の学校間の連携の中で学校運営をしていく重要性が高められたと いうことである。  幼小接続に関して具体的に考えると、例えば、小学校の最初の段階では、それまでの幼稚園

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保育実習Ⅱまたは保育実習Ⅲ 㲂 年 㲃 年 㲄 年 㲅 年 前期 後期 前期 後期 前期 後期 前期 後期 共通教育科目 専門教育科目 幼稚園教諭 免許取得希望者 幼稚園・小学校教諭 免許取得希望者 保育実習Ⅰ 介護等体験 教育実習Ⅰ(㧝週間) 教育実習Ⅱ・Ⅲ (15 日間)幼稚園 教育実習Ⅱ・Ⅲ (㧠週間)小学校 教職実践演習 図1 本学部における主な実習形態 での学びで培われた「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」をどう生かし、どう発展させる かを描く「スタートカリキュラム」が重要となる。そのカリキュラムに則り、少しずつ小学校 での授業に向かう意識と姿勢を育てていかなければならない。そして自覚的な学びにつなげて いく。そのためには、幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿を、小学校教育のスタート の根本に位置づけた「学びの地図」を描くことが求められる。そして個々の教員は、幼児教育 で子どもができるようになった事実をさらに発展させた事実をつくりだすことが課題となる。  以上の流れを踏まえ、幼小の学びの系統性を見通した教員養成は、今後ますます必要とされ ると考えられる。 第2章 本学部の教育実習デザインと概要  桜花学園大学保育学部では、教育・保育の多様な現場で活躍できる教育・保育者養成を目指 している。本学部の学生のほとんどは、卒業時に保育士資格および幼稚園教諭1種免許状を取

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得する。さらに、希望者については小学校1種免許状の取得ができるようカリキュラムが設定 されている。そのため、本学部に通うほぼ全員の学生が、教育職員免許法施行規則に定める基 礎教育科目の履修と、専門教育科目(教科・教職に関する科目)を履修している。  本学部では、専門教育科目の教職に関する科目の中に位置づけられている教育実習を、教育 実習Ⅰ、教育実習Ⅱ、教育実習Ⅲにわけている。各種教育実習では、いずれも実習に臨む事前 と事後に、大学での指導が行われる。各種教育実習担当教員は、各種教育実習指導および各種 教育実習において、学生の主体的かつ協同的な学びに即した系統的な実習になるよう、各実習 における到達目標を定め段階的に指導を行っている。  教育実習Ⅰは、取得を希望する免許状や就職先の希望に関わらず、学生全員が幼稚園におけ る1週間の観察・参加実習を行い、教育・保育について基礎的な実態に触れる。教育実習Ⅱ、 教育実習Ⅲでは、教育実習Ⅰで得た自己の課題に向き合い、これまでの学びを生かす実習とし て、幼稚園における3週間の観察・参加・責任実習を行う。また、小学校就職希望者について は、小学校における4週間の観察・参加・授業実習を行っている。  その他、教育・保育に関わる実習として学生は、2年次、4年次に保育実習Ⅰおよび保育実 習Ⅱまたは保育実習Ⅲ(保育所・施設)を、小学校教諭1種免許状取得希望者については介護 等体験などを行っている。また本学部では、幼児や児童に関わる自主実習活動を推奨している。 図1は、本学部における主な実習形態を示したものである。 第3章 本学部の教育実習指導における指導内容と課題 第1節 教育実習指導Ⅰにおける指導内容と課題 1)教育実習Ⅰにおける指導内容の実際  教育実習指導Ⅰのシラバスは表1のとおりである。本学における教育実習Ⅰは導入教育であ る。よって、教育実習指導Ⅰは、実習に臨む姿勢、実習生としての態度、実習に関する諸手続 きなどを基本事項から学ぶ。すべての授業において事前事後学修を課している。授業シートを 活用し振り返りを行い、到達度を確認し評価基準に反映させている。  2016年度以降は、1年次前期に事前学修を行っている。学生は、実習の課題、幼稚園の概要、 日誌の書き方、実習マナーについて学ぶ。また幼稚園教育要領を軸として概要を学ぶ。概要を 確認すると同時に、実習を行う幼稚園長による幼稚園生活についての説明を受け、実際を学ぶ。 幼稚園との連携の下、学生は幼稚園教育について学び、具体的な園生活の見通しを持って実習 に臨む。また、幼稚園教育の実際を学ぶという点で、リトミックの演習授業もある。学生は様々 な季節の場面を想定して、ピアノに合わせて歌ったり体を動かしたりしながらロールプレーイ ングを行う。このことを通して、子どもの特性を把握し、実践力・表現力を養う。  その後、9‒12月に5日間の観察・参加実習を行う。観察を行うことで、教師の子どもに対 する指導・援助方法について学ぶ。またその事柄を日誌に書くことで、指導・援助の目的を理 解し、参加実習の際の学生自らの実践に繋げている。

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 また、事後学修として振り返りの意見交換を行う。学生は実習クラス年齢別に分かれて討議 を行い、その内容を発表する事で、年齢における発達を理解するに至る。この実習は初めての 実習であるので、先ずは担当クラスの年齢における発達を理解する。その後友人の意見を傾聴 し、他の年齢との発達を比較し、3‒5歳全般の子どもの発達について理解するに至る。 表1 教育実習指導Ⅰ シラバス 授業概要と方法 教育実習Ⅰのための事前事後学修としての本授業では実習の心構え、実習日誌の書き方、実習の在 り方の基本を学ぶ。また、実習後の振り返りにおいて今後の課題を明らかにする。 授業の到達目標 ①教育実習Ⅰの位置づけについての理解、②教育実習Ⅰの目標の理解、③幼稚園についての理解、 ④教育の実際 ( リトミック ) についての理解、⑤実習日誌の書き方についての理解、⑥実習後の振 り返りについての理解 評価方法  事前課題50%、事後課題40%、授業への意欲10%を総合的に評価する。 授業計画 1 教育実習Ⅰの教育課程上の位置づけと課題1(実習の心構え) 2 教育実習Ⅰの教育課程上の位置づけと課題2(実習の在り方) 3 幼稚園についての概要説明 4 リトミック演習 5 実習日誌の書き方1(日誌の書き方の基礎) 6 実習日誌の書き方2(一日の流れ) 7 実習園事前訪問について 8 事後指導 2)指導上の課題  教育実習Ⅰの実習日誌については、一日の流れ(環境・子どもの様子・教師の援助)と考察 (一日の振り返り)の記入を課している。日誌の書き方については2コマ分を指導に当ててい るが十分であるとはいえない。学生は過分な時間をかけて日誌を書いており、苦労している様 子である。実際に授業評価や事後指導の振り返りシートには日誌を書くことに苦労したことを 述べている学生が多い。これについて、講義で学んだ理論と、実習における実践を結びつけて 考えることが出来ていないことも一因となっている。講義で学んだ子どもの様子が目の前で繰 り広げられているにもかかわらずそれに気づくことが出来ないため、子どもにおける自らの発 見を日誌に書くことが出来ないようである。今後、実習だけでなく専門科目との結びつきも考 えカリキュラムデザインを行う必要がある。 3)今後の展望  本学部では、2007年度入学生より、教育実習において、幼稚園教諭免許状だけでなく、小 学校教諭免許状を取得できる教育課程としてきた。  本学部における教育実習Ⅰの目標は、①幼稚園・小学校の役割や機能についての理解、②幼 稚園・小学校に就園・就学している子どもについての理解、③観察、参加、部分実習、指導実 習等を通して幼稚園・小学校教育の実際についての理解、④幼稚園教諭・小学校教諭の職務内

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容についての理解、⑤幼稚園・小学校と家庭、地域との関係についての理解、である。  そして、本学部の教育課程の特徴として、小学校教諭免許状取得者に限らず、乳幼児期から 学童期を見越した子どもの発達、教育・保育課程をカリキュラムに反映させていることをあげ ることができる。教育実習指導Ⅰについていえば、本授業を履修するすべての学生にとって、 3歳から12歳の子どもの発達と教育課程を学んだ教育者となることを意味している。教育実 習Ⅰについても、幼稚園・小学校の双方の子ども理解や教育課程を学修し、実践力に繋げてい くことが目標であるといえる。  「教育実習指導Ⅰ」における指導の現状においても、「幼稚園教育要領」の理解、実践を通し た子ども理解、教師の指導方法の理解から、幼稚園教育はもとより、小学校教育への接続につ いても学生は学修している。新教育要領がこれまで以上に幼小接続への具体的な提言をしてい ることから、指導においてより具体的に強調し、学生の幼小接続への理解を助けたいと考える。  もちろん、1年次配当の「教育実習指導Ⅰ」のみで、学生の教職への理解が達成されるわけ ではない。4年を通じて、多くの教職関連講義科目から、そして「教育実習指導Ⅱ」「教育実 習指導Ⅲ」や「教職実践演習」によって螺旋的に学修が深まると考えている。その第一段階と しての「教育実習指導Ⅰ」において、他の教職関連講義科目や「教育実習指導Ⅱ」「教育実習 指導Ⅲ」、「教職実践演習」との系統性も鑑み、学生の幼小接続の教育課程づくりの意義をより 理解を助けるような指導を今後も展開していきたい。 第2節 教育実習指導Ⅱ・Ⅲ(幼稚園)における指導内容と課題 1)教育実習Ⅱ・Ⅲ(幼稚園)における指導内容の実際  3年次における「教育実習指導Ⅱ・Ⅲ(幼稚園)」では、教育実習Ⅱ(幼稚園)での15日間 の実習における指導を中心に据えながら、隣接校種となる小学校実習に関する学びを踏まえた 総合的な実習指導を展開している。主な到達目標として、幼稚園教育実習・小学校教育実習の 意義や目標を理解すると同時に、1年次の教育実習Ⅰの学びを生かしながら、責任実習などに 必要な立案力・実践力を体得するよう配慮している。  授業の詳細としては、表2の通り、全17回の授業を展開している。そして、全ての授業に おいて予復習課題を課し、授業外における事前事後学修の徹底を図っていることが特徴である。 実習指導における学びは講義に出席するだけでなく、その下準備となる事前事後学修を含めて 学修することで、学びが深まると考えている。  授業の展開においては、まず3年次前期の冒頭の5回で、幼稚園教育や小学校教育の実際に ついて、視聴覚教材を利活用しながら理解を深め、教師としての役割や1年間の教師生活の流 れ、実習生としての留意点などを、より具体的に理解していくよう配慮している。また、小学 校教諭免許状取得のために必要な介護等体験を見据えながら、特別支援を専門とする教員の講 話をもとに「特別な支援を要する幼児・児童への支援の在り方」について理解を深める機会を 設けている。昨今、多様な配慮を要する幼児・児童に対して教師が適切な支援を展開していく 必要性が提唱され始め、2017年の教育職員特例法の省令改訂にも「特別な支援を要する幼児・

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児童の理解」という新たな科目が教職コアカリキュラムに新設された経緯を踏まえると、今後 の教育実習指導においても、多様な子どもの存在を想定した細やかな教師の支援の在り方につ いて、より詳細に教授していく必要があると考えられる。 表2 教育実習指導Ⅱ シラバス 授業概要と方法 教育実習Ⅲのための事前事後学修として、実習の在り方、指導案の作成、実習への心構えを学び、 実習後の振り返り、自己課題を明らかにし、今後の課題に生かしていく。 授業の到達目標 ①小学校・幼稚園教育実習の意義や目標を理解する、②実習の心構えを学び、実践に必要な準備に 自ら取り組む、③観察実習、参加実習、責任実習の内容について理解し、準備、実践、振り返りに 意欲的に取り組む、④実習終了後、実習への取り組みを振り返り、自己課題を把握し、今後の学習 や就職に生かしていく。 評価方法  事前課題(ワークシート・指導案発表)50%、事後課題(実習ノート・事後課題発表ワークシー ト)40%、授業への意欲10%を総合的に評価する。 授業計画 1 教育実習Ⅱの課題と事前事後学修の計画の理解 2 幼稚園・小学校における授業や保育の理解 ─幼児教育の実際─ 3 幼稚園・小学校における授業や保育の理解 ─小学校教育の実際─ 4 幼稚園・小学校における授業や保育の理解 ─特別な支援を要する幼児・児童への支援⑴─ 5 幼稚園・小学校における授業や保育の理解 ─特別な支援を要する幼児・児童への支援⑵─ 6 学年別の発達過程に関する理解⑴ 7 学年別の発達過程に関する理解⑵ 8 学年別の発達過程に関する理解⑶ 9 事前訪問のための学内指導 10 教育実習における教育指導案の書き方 11 学年別の指導案の作成と発表⑴ 12 学年別の指導案の作成と発表⑵ 13 学年別の指導案の作成と発表⑶ 14 教育実習に向けての幼児理解と記録 15 教育実習直前指導(教師としての心構え) 16 教育実習事後指導⑴ 学びの振り返り 17 教育実習事後指導⑵ 自己課題の明確化  また、第6講以降では、教育実習Ⅱ・Ⅲ(幼稚園)を履修選択した学生を対象に、幼稚園教 育における具体的な3年間の幼児の成長の歩みについて、文部科学省推奨視聴覚教材を活用し ながら、各学年における幼児の発達過程の理解と教師の援助の在り方について学びを深めてい る。学年に応じて教師の幼児に対する援助の手立てが少しずつ変容する様子を、1年間を通し た幼児の姿から適切に把握し、発達過程に適した指導の在り方を考える機会としている。  後期の第10講以降では、より具体的な実践技術と応用力を中心とした実習指導を展開して いる。具体的には、指導案作成方法や日誌の書き方について復習することで、今までの学びを 更に深めると同時に、責任実習や総合実習に対応できるよう、日案作成方法などについても学 ぶ機会を設けている。また、日誌の書き方に関しては、あえてモデルとなる日誌に朱書きを入 れる機会を通して、環境構成や配慮や援助などで不足している部分について指導者側の観点で 日誌を見る取組も展開している。同時に、3∼4人のグループごとで研究保育を視野に入れた

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指導案を作成・発表し、指導案の検討や実践の際の配慮事項を全体で話し合うなど、学生が主 体的に思考して発表する中で、よりレリバンスの高い指導案の在り方を模索することを促して いる。その後、実習直前には、直前指導などで教師として相応しい身だしなみや SNS の取扱 いなどを含めた実習に際する心構えについて最終確認をしている。  実習終了後には、2回の事後指導も展開しており、主としてアクティブ・ラーニングの手法 を取り入れた、テーマに対するグループワークと全体シェアリングを行っている。各実習にお いて大学が設定した目標に対し、どのような学びを得たかについてグループで話し合い、全体 発表することで個人の学びを全体への学びへと共有している。その他、実習評価票に自己評価 を記載し、今回の実習で優れていた点と今後の課題となる点について記載し、自己の実習を省 察する取組を導入している。同時に、本学部では3年次以降の実習において、実習園評価を口 頭にて開示していることから、開示を希望する学生に対して、3年次後期成績交付終了後に園 長所見の概要を実習担当教員から個別面談で伝えている。学生個人の所感と園側の所感のずれ がある場合は、可能な範囲で適切に評価を伝えることで、今後の自己課題の明確化へつなげる よう配慮している。 2)指導上の課題  教育実習指導Ⅱ・Ⅲ(幼稚園)は、主として幼稚園実習に焦点化して指導をしているが、次 の3点が指導上の課題として浮上している。  まず、学生数の多さに伴うきめ細やかな指導の難しさである。150名以上の学生を対象とし た実習指導ではあるが、教育実習指導Ⅰと同様に「授業シート」という往還的な学びを生み出 すシートを導入しており、学生は毎回の学びの内容や特に印象に残ったこと・質問事項等を記 入している。実習担当教員は、学生のコメントを見ながら、個々の学びの深度やつまずき・戸 惑いを把握し、時には全体で再度確認を兼ねて説明をしたり補足したりしながら、学生の学び の深度に適切な対応ができるよう留意している。しかし、15日間の実習は学生にとっての不 安が大きく、ST 比(受講人数と教員の比率)の多さから充分に細やかな指導が徹底されてい るとは断言し難い。また、グループにおける学び合いの時間や一斉講義における教授の時間が 多いことから、個々の学生の実践的指導力を高めているか否かについての判断が難しいことが 挙げられる。  次に、実習指導の授業における評価の在り方である。事前課題50%、事後課題40%、授業 への意欲10%で総合評価をしているが、各項目における目標をルーブリック化するなどをし て、より細やかな評価基準を設けていく必要があるだろう。特に、アクティブ・ラーニングを 導入することによって、学生同士の対話的な学び合いを促していく際に、個々人のどのような 側面を評価するかという視点をより明確にしていく必要がある。  最後に、幼小接続に関するより深い学びに関して、どのように授業展開の中に取り入れてい くかという視点である。本授業では、幼稚園及び小学校における実習の実際について触れてい るが、それぞれの授業は1回ずつ独立しているデザインであり、幼小の接続や系統性に関して

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十分に学び得ているとは言い難い。第1章で述べた通り、2017年度改訂の幼稚園教育要領及 び小学校学習指導要領には学びの系統性と幼小接続の重要性が従前より更に強調されたことを 踏まえ、幼小の免許取得を目指した教育実習指導の中でもこれらの視点を獲得できるような授 業展開をしていくことが求められるだろう。 3)今後の展望  今後は、授業デザインそのものの見直しが求められると考える。特に、①幼小接続の系統性 を重視した授業を取り入れること、②アクティブ・ラーニングを導入した学生同士の対話的な 学び合いを促していくこと、③その中で個々の学生の学びの道筋を丁寧に捉え、構造的に評価 していくことなどが求められると考えられる。各種実習担当教員と協議を重ねながら、整合性 を担保すべきところは担保し、学年が進むにつれて教育実習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの学びが深まっていく ような配慮を検討していきたい。 第3節 教育実習指導Ⅱ・Ⅲ(小学校)における指導内容と課題 1)教育実習Ⅱ・Ⅲ(小学校)における指導内容の実際  「教育実習指導Ⅱ・Ⅲ(小学校)」では、4年次の教育実習Ⅱ・Ⅲ(小学校)での4週間の実 習における事前事後学修を行っている。その際、隣接校種となる幼稚園実習に関する学びやこ れまでの保育所における実習経験を踏まえ、次のステップとなる小学校の理論と実践を学び、 実践的指導力の育成という観点から指導が行われるよう配慮している。  授業の詳細としては、全15回の授業を展開している(表3)。3年次前期の冒頭の5回は、 前述の「教育実習指導Ⅱ・Ⅲ(幼稚園)」と同様のカリキュラムにて展開し、その後、10コマは、 学習指導案の書き方、児童理解、観察・参加・実習、模擬授業 について等の指導を行ってい る。本稿では、本学の特徴的な実習指導である、「アシスタントティーチャー・体験的学習を 元にした教育実習指導」および、「指導案作成、模擬授業における教育実習指導」について後 述する。 表3 教育実習指導Ⅲ シラバス 授業概要と方法 教育実習Ⅲのための事前事後学修として、実習の在り方、指導案の作成、実習への心構えを学び、 実習後の振り返り、自己課題を明らかにし、今後の課題に生かしていく。 授業の到達目標 ①小学校・幼稚園教育実習の意義や目標を理解する、②実習の心構えを学び、実践に必要な準備に 自ら取り組む、③観察実習、参加実習、責任実習の内容について理解し、準備、実践、振り返りに 意欲的に取り組む、④実習終了後、実習への取り組みを振り返り、自己課題を把握し、今後の学習 や就職に生かしていく。 評価方法  事前課題(ワークシート・指導案発表)50%、事後課題(実習ノート・事後課題発表ワークシー ト)40%、授業への意欲10%を総合的に評価する。

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授業計画 1 教育実習Ⅱの課題と事前事後学修の計画の理解 2 幼稚園・小学校における授業や保育の理解 ─幼児教育の実際─ 3 幼稚園・小学校における授業や保育の理解 ─小学校教育の実際─ 4 幼稚園・小学校における授業や保育の理解 ─特別な支援を要する幼児・児童への支援⑴─ 5 幼稚園・小学校における授業や保育の理解 ─特別な支援を要する幼児・児童への支援⑵─ 6 学習指導案の書き方⑴ 7 学習指導案の書き方⑵ 8 観察・参加・実習 について 9 事前訪問のための学内指導 10 児童理解 11 模擬授業⑴ 道徳 12 模擬授業⑵ 教科 13 教育実習直前指導(教師としての心構え) 14 教育実習事後指導⑴ 学びの振り返り 15 教育実習事後指導⑵ 自己課題の明確化 ①アシスタントティーチャー・体験的学習を元にした教育実習指導  本学部の学生は、小学校での自主実習やインターンシップを行っていたが、体験を共有し学 び合うという点においては、学びが深まりにくいという課題があった。そこで、理論と実践の 往還による育成を目的とし、本学近隣の公立小学校にて、アシスタントティーチャー・体験的 学習を行っている。具体的には、3年次5月より、小学校の始業から終業までを月に1回のペー スで約1年間、さらに、遠足やキャンプなどの小学校行事等に参加し、自ら見出した研究課題 に取り組んでいる。教育実習指導Ⅱ・Ⅲ(小学校)では、その活動をもとにし、実習指導を行っ ている。これらは、実習指導の中では、小学校についての理解、教師の役割、児童理解、観察・ 参加等にあたる。学生の学びのプロセスは、第1段階として、専門的知識・技能に関する事項、 子どもとのかかわりに関する事項、教育課題に関する事項について、既習の理論から活動目標 を設定する。次に、第2段階として、実践を行い、各クラスで終日活動したことを活動目標に そって、気付いたこと、学んだこと、得たこととして活動記録に記録する。第3段階として、 活動から得た事項を、教員と学生同士の話し合いにより既習の理論と結びつけていく。そして、 教師の役割について話し合うことにより、教員の資質を考える。最後に第4段階として、教員 に必要な資質、学んだことから自分が目指す教師像を明らかにし、目指す教師像に迫るために 必要な学びを明らかにしていくことによって、今後の学びに繋げていく。  アシスタントティーチャー・体験的学習を元にした教育実習指導は、学生から「小学校での 1日の流れがわかるので、実際の教育実習でも、次に何をすればよいのか予測がつく」「教育 実習の準備がスムーズにできる」「子どもたちと長い間かかわることができるので児童の発達 段階が実感できる」「1人1人の課題や学級の課題に対して、担任の指導・支援を学ぶことが できる」等の感想が寄せられている。学生にとっては、小学校へ教育実習に行く者全員が体験 を共有して理論と実践の往還による学びを図る事で、学びが深まっていると考えられるため、 アシスタントティーチャー・体験的学習を元にした教育実習指導が果たす役割は極めて大きい と考えられる。

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②指導案作成、模擬授業における教育実習指導  教育実習Ⅱ・Ⅲ(小学校)では、実習生という立場ではあるが、授業実習や研究授業を行わ なければならない。そのため大学では、各教科・領域に関する学習指導要領を読みこなし、授 業を創造する力を身に付けさせる必要がある。各単元がどのようなねらいを持って、どのよう なつながりで配置されているか理解することが大切であり、児童の追究意欲を持続させる単元 構成の在り方を、具体的な展開例をもとに学ぶようにさせたい。  授業は教師の仕事の本質であり、授業力は教師の資質の中核であると言える。その意味で授 業づくりを具体的に学ぶ内容を組み、模擬授業を行える力を育てることを目標に取り組んでい る。模擬授業は教育実習への心構えをつくる意味もある。  そのために、学生が自分の選択した単元で模擬授業の指導案を作成する際には、単元を貫く 目的意識を持たせる事象提示の重要性と目的を達成するための問題意識を単元の流れに位置付 ける必要性を理解できるよう配慮し、指導している。  そこで、教育実習指導Ⅱ・Ⅲ(小学校)における指導内容の柱となるのは「教材研究」「指 導案作成(授業展開づくり)」であると考えている。  多くの学生には、教科書に載っていることは理解できるが、何を教えるのか、どう教えたら いいのかが分からないという意識がある。その「何を教えるのか」を学ぶのが「教材研究」で あり、「どう教えるか」を学ぶのが「指導案作成(授業展開づくり)」である。  教材研究は教材作成・開発の面と教材解釈の面があるが、特に重視するのは教材解釈である。  「教師はこう理解する。しかし児童はそう理解していない。」という教師の理解を得ることが 教材解釈であり、教師と児童の理解の差があるからこそ「指導」が生まれるのである。この点 を重視し、授業づくりのための学びを進めた。2017年度に本学の学生(5名)が行った模擬 授業の内容を挙げる。また、その学びの一例を以下に挙げる。  「おさるがふねをかきました」(1年下 光村図書) という詩の教材研究をした際、学生は『この詩の内容 を絵に描くとおそらく煙突から煙が出ているように描 くと予想される(実際に学生もそうであった)。しか し「はかそうと」に着目すると、煙はまだ出ていない ことが分かる。』と発見した。その発見によって、学 生は「これを教えたい」というものを得た。  その後、「まだ煙が出ていない、ことを教えるのに はどうすればいいのか」という点から、指導案づくり に発展させていった。「この発問なら子どもはこう答えるだろう」「こんなふうに働きかければ、 子どもは興味をもつかな」というように展開のための具体的な手立てを考え、授業案作成に取 り組んだ。  さらに、途中途中、学生間で授業をやってみて、よかった点、つまずいた点、うまくいかな おさるがふねをかきました        まど・みちお ふねでも かいてみましょうと おさるが ふねをかきました けむりを もこもこ はかそうと えんとつ いっぽん たてました なんだか すこし さみしいと しっぽも いっぽん つけました ほんとに じょうずに かけたなと さかだち いっかい やりました

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かった点などを指摘しあい、授業案の作り直しを繰り返した。以上と同様の過程をいくつかの 教材で行うことで、教材研究と展開案づくり(授業案作成)の力をつけていった(表4)。  教育実習前に教員、3年生の小学校志望の学生も子ども役として含めた中で模擬授業を行い、 反省・分析会をもち、教育実習に臨む準備を行った。  この模擬授業までの学びを通して、学生からは、「授業をすることの面白さ、また難しさを 実感するよい機会であった」「教材は、見れば、読めば、分かったつもりになっていた、本当 はそうではなかった」「教材に対する教師なりの理解を得ることが、まず授業をする上で重要 なことであると分かった」という声が聞かれた。このことから、教材研究にも重点を置いた「指 導案作成(授業展開づくり)」は、授業づくりに対する意識を高め、効果的に教育実習に臨む ことができる一因を担ったのではないだろうかと考察している。 表4 「おさるがふねをかきました」(本時展開案 学生作成 部分) 展開 学習活動 教師の活動 指導上の留意点 全文を読む (一斉読み・一 人読み) どんなお話が書いてあるのか を見つけるように読みましょ う。 まずは全員で一斉に読む。その後一人ひとりで読 ませる。誰が出てくるのか、何が起こるのか、ど うなるのかを後で発表してもらうことを伝えてお く。 内容を確認する 1・誰が出てきましたか 2・何をしましたか(行動) 3・どうなりましたか 全員が分かっているかどうかを、挙手することで 一つ一つ確認していく。 内容を考える おさるが描いたものと同じ絵 をノートに描きましょう。 おそらく多くの子どもたちの絵はほぼ同じように なると考える。それを黒板に描いてもらい確認す る。 黒板に描いてもらいましょ う。 2人児童に黒板に描いてもらう。 間違いを探しましょう。 「この絵に文と合ってないところがあるよ」と意 表を突き、子どもたちの考える意欲を引き出す。 詩を一つのかたまりごとに番 号分けしましょう。 詩をかたまりごとに番号分けして、「どこが合っ ていないか」を絞っていく。考えたら挙手しても らい、なぜそのように思ったのか発表してもらう。 そして「はかそうと」に注目させ、「食べようと」 (=まだ食べていない)、「遊ぼうと」(=まだ遊ん でいない)などの例を挙げて、「はかそうと」は まだ煙をはかせていないことに気づかせる。 けむりが出ていない絵が描けているかどうかを確 認し、言葉の使い方、文の読み方について伝える。 まとめ もう一度、絵を描きましょう。 最初の読みと違った点を確認する。 2)指導上の課題  本学における教育実習指導Ⅱ・Ⅲ(小学校)の課題は、小学校におけるアシスタントティー チャー・体験的学習の日程調整と、教科指導力の向上となっている。  小学校におけるアシスタントティーチャー・体験的学習は、月に1度終日小学校の流れを経

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験してくるということが特徴であるが、その日程を確保するために、その時間にあたる授業(現 在は総合演習Ⅱ)の一部分は、授業担当者の協力を得ながら行っているのが現状である。また、 行事については、小学校の年間計画に合わせて行われるため、大学の講義日程と重なる場合も あり得る。また、アシスタントティーチャー・体験的学習自体は、教育実習指導Ⅱ・Ⅲ(小学 校)の指導上必要なボランティア活動となっているが、教育実習指導Ⅱ・Ⅲ(小学校)のカリ キュラムに含まれているものではなく、単位化されているものではない。これまでは、学生の 学びたいという意志と小学校のご好意に支えられ運営できてきたが、今後、この活動の必要性 を軽視する学生が出てきたときには指導上困難が生じるものと考えられる。  教科の指導力を育てる点の課題としては、まず、模擬授業という形で実際に授業をやってみ る機会を1回しか作れないことである。一つの教科の一つの単元を中心に取り組むが、やはり 幅広い教科の内容や、他の学年の内容にも取り組む機会があればより効果がある。しかし、時 間的な制約があり簡単ではない。  それを少しでも補うために、定期的に参加するアシスタントティーチャーなどのボランティ アの機会に、授業を見る目を養うことが大切である。ただ漠然と授業を見て学ぶのではなく、 発問の効果や教師の働きかけ、子どもの思考過程など、具体的な視点で授業を見る力をつけ、 そして学び得たことを自分の授業に生かすためにつなげていかなければならない。そのために は授業を分析する学びが必要となる。 3)今後の展望  小学校へ就職した本学部の卒業生が、小学校現場で役に立っていると感じることについては、 未就学児の発達等の知識・経験、児童とのかかわり方、人間関係に関わるもの、保・幼・小連 携、自己の個性を生かした教育づくりについて挙げていた(5)。これは、本学で、0歳から就学 後の発達・教育について学んでいること、幼稚園、保育所、小学校の実習に行き実習生として の体験をしていることが効果として表れていると考えられる。具体的には、どこまでも子ども と同じ目線に降りることができ子どもといっしょに授業をつくっていくという意識で取り組め ること、そして子どものやる気を引き起こす働きかけができることなどが顕著である。そのた め、教育実習指導Ⅱ・Ⅲ(小学校)では、教育実習ⅠおよびⅡ・Ⅲ(幼稚園)、等他の実習指 導との連携をはかり、学生自身が学びの深まりを感じられるような指導を行っていきたい。  さらに、模擬授業の充実、指導案づくり、教科指導法や教材研究の工夫を重ね、授業づくり における強化を図っていく必要がある。また同時に、ICT の活用、道徳教育、英語教育、特別 支援教育の充実などの初等教育における新たな教育課題に対応できるよう、検討を行っていく ことも、教員の資質能力を向上させるために教員養成学部が果たす役割として必要な事項とな る。

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第4章 今後求められる教育実習指導の在り方と教員養成の展望 第1節 幼小接続の具体的な接続とは  今後求められる教育実習指導の在り方を検討するにあたり、前章までに教員養成で望まれる ことを整理し、現在の本学の教育実習指導の在り方を振り返ってきた。新教育要領、新指導要 領を読み解く中で幼小接続の重要性を確認した。新教育要領を読み解けば、幼小接続を具体化 するための手立てとして「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を幼児教育者が小学校教員 と共有することが強調されていることが明らかになった。また、「幼児期の終わりまでに育っ てほしい姿」を幼児教育者と小学校教員が共有し、それぞれの固有の教育課題を深めつつ、幼 小接続のカリキュラムづくりの検討を協同で行っていくことが求められた。新指導要領を読み 解けば、小学校教員は、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」としての10の具体的な姿な どは、知っておかなければならないということであり、さらにそれを知った上で子どもの姿を 分析し、小学校の教育課程を編成することが求められることが明らかになった。しかしながら、 多くの小学校教員はこれまで、幼稚園教育の内容や具体を十分に認識できていなかったという 反省に立ち、幼児教育で子どもができるようになった事実からさらに発展させた事実をつくり だすことが小学校教育の課題であることも分かってきた。  以上のことを踏まえ、再度、新教育要領に立ち返ってみると、新教育要領の第1章総則〔第 6 幼稚園運営上の留意事項〕について次のような記述がみられる(傍点は著者による)。   3 地域や幼稚園の実態等により、幼稚園間に加え、保育所、幼保連携型認定こども園、 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校などとの間の連携や交流を図るも 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 のとする。特 に、幼稚園教育と小学校教育の円滑な接続のため、幼稚園の幼児と小学校の児童との交流の 機会を積極的に設けるようにするものとする。また、障害のある幼児児童生徒との交流及び 共同学習の機会を設け、共に尊重し合いながら協働して生活していく態度を育むよう努める ものとする。  傍点部の連携や交流を図るといった場合の具体的な動きとして、「幼児教育と小学校教育の 円滑な接続を進めるために、教職員同士(幼稚園教諭・保育教諭等・保育士と小学校教諭)が 互いにその教育及び保育の在り方について理解を深めるような機会を用意することとしてい る。それは単に小学校教員が幼稚園教育要領等を読むだけにとどまらず、互いの教育の理念・ 実態や子供の様子・成長の在り方などについて意見を交換する。また、一緒になって、どのよ うにすれば円滑な接続が実現できるかを実践的に検討し、実施していくこと(6)」が重要である と述べられている。そこで、今述べられた「教職員」を「教育実習生」と読み替えることで、 大学における教育実習指導の在り方にヒントを得られるのではないだろうか。今日、実践的指 導力のある教員を期待する現場において、教員養成課程をもつ大学は、その要請に応えていく ことが重要であると考えられる。そうであるならば、本学の教育実習指導においても、幼小接

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続の重要性を考慮したカリキュラムと授業実践がなされる必要がある。実践的指導力のある教 員として期待される学生に幼小接続の重要性を学ぶ教育実習指導の在り方を模索せねばなるま い。では、「教職員」を「教育実習生」と読み替えた場合を見てみよう。  幼児教育と小学校教育の円滑な接続を進めるために、教育実習生同士(幼稚園教諭希望者・ 保育教諭等希望者・保育士希望者と小学校教諭希望者)が互いにその教育及び保育の在り方に ついて理解を深めるような機会を用意することとしている。それは単に小学校の教育実習生が 幼稚園教育要領等を読むだけにとどまらず、互いの教育の理念・実態や子供の様子・成長の在 り方などについて意見を交換する。また、一緒になって、どのようにすれば円滑な接続が実現 できるかを実践的に検討し、実施していくこと  このことを手掛かりに、本学での教育実習指導の在り方に対して「円滑な幼小接続の重要性」 という視点から考察し、検討する。 第2節 本学部における幼小接続を意識した教育実習指導への提言  前節の読み替えから言えることを整理すると、次の3点である。 ①幼稚園での教育実習生と小学校での教育実習生が互いにその教育及び保育の在り方について 理解を深めるような機会を用意する。 ②小学校の教育実習生が幼稚園教育要領を読む。(幼稚園の教育実習生が小学校学習指導要領 を読む。) ③幼稚園での教育実習生と小学校での教育実習生が、互いの教育理念・実態や子供の様子・成 長の在り方などについて意見交換する。また、一緒になって、どのようにすれば円滑な接続 ができるかを実践的に検討し、実施していくこと。  以上の3点を本学部の教育実習指導と関連しながら検討する。①については、本学部では、 教育実習指導Ⅰにおいて、その大きな役割を担うことができるのではないかと考える。特に教 育実習指導Ⅰでは、教育・保育の概論を中心としてすすめてはどうだろうか。本学部では、授 業計画3時間目に、幼稚園についての概要説明がある。それは、教育実習指導Ⅰでは、すべて の学生の幼稚園実習を想定しているからである。ここに少しでも小学校についての概要説明が 入るだけで、実際実習に行った学生は、小学校就学前の幼児はどんな姿なのだろうかという視 点をもって観察ができるのではないかと考えられる。このことは、第3章第1節の今後の展望 で述べたように、乳幼児期から学童期を見越した子どもの発達、教育課程を考慮し、カリキュ ラムに反映させることが望まれる。  ②については、本学では教育実習指導Ⅰにおいて幼稚園教育要領を理解することを行ってい る。また、教育実習指導以外の科目でも、「教育原理」「保育原理」など、教職科目や保育の本 質に関する科目の中で、学生は幼稚園教育指導要領を読む機会がある。一方で、小学校学習指

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導要領をどれだけ読んでいるかというと、小学校希望の学生は読む機会があるにせよ、幼稚園 希望の学生で小学校免許を取得しない学生は、読む機会が乏しいというのが現状であろう。今 後、免許希望にかかわらず学生が受講する教育実習指導Ⅰにおいて、小学校学習指導要領を読 むという学びが必要であろう。しかしながら、現状の授業で、その時間を捻出する難しさと教 員の指導体制を整える難しさの両面を抱えている。  最後に③については、実際に幼稚園と小学校に実習に行った学生同士が、実際に見た子ども の様子について意見交換することは、教育実習指導Ⅱ・Ⅲにおいて、授業内に組み込むことが 望まれる。これまで実習後の事後指導における学びの振り返りや自己課題の明確化では、幼稚 園、小学校と別れて行ってきた経緯がある。そこには、それぞれの専門性の中で振り返り、深 めることを狙ってきたからである。今後、その専門性を大切にしながらもそれぞれの実習先で の様子を意見交換できる時間を設定することが期待される。意見交換の方法としては、実習記 録をもとに、自分が関わった幼児や児童の姿を、実習報告会として伝え合う。そこで出された 姿を学生同士が話し合いながら「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」で整理・考察(7)して みる。すると、そこに成長していく子どもの姿や、教師の働きかけの在り方などが見いだされ はしないだろうか。このことは、第2章第2節の今後の展望で述べた、アクティブ・ラーニン グを導入した学生同士の対話的な学びにもつながるであろう。また、第2章第3節で述べられ た、教育実習指導間での連携にもなるであろう。限られた時間の中で意見交換の時間を設定し ていくことの難しさも考慮しながら、進めていかねばならないのが今後の課題である。  また、幼稚園での教育実習生と小学校での教育実習生が一緒になって、どのようにすれば円 滑な接続ができるかを実践的に検討し、実施していくことについては、実習指導の中に取り入 れることは大変難しいように考えられる。教育実習指導Ⅱ・Ⅲにおいて、それぞれの指導案作 成や授業づくりについてその専門性から別れて取り組んでいるのが現状である。授業の中で幼 小接続についての実践的な検討ができるかというと難しさを抱えている。しかしながら、例え ば、幼小において同一教材を用いての指導計画に沿った実践記録を両方の実習生で読み、検討 していくことは可能ではないだろうか(8)。同一教材のさらなる開発にもつながる可能性があり はしないだろうか。また、上述したように教育実習後の意見交換の中で、「幼児期の終わりま でに育ってほしい姿」をキーワードに対話的な学びを進めれば、幼児、児童の姿において重な りそうな点であったり、隔たりのある点であったりが見えてくるかもしれない。そこを切り口 にどのような支援・指導が必要かといった具体的な視点も浮き彫りになることが考えられる。 この点は、検討に値する課題であろう。  ここまで本学部の教育実習指導の在り方への検討を行ってきた。時間的にも人的にも、すぐ に取り掛かるには難しいというのも現状である。しかしながら、「幼小接続」を意識した教育 実習指導への困難さを自覚しつつ、それを切り開いていく教員体制の重要性は自覚している。 本稿への協働検討、作成がそのスタートである。  本学部では、現在、教育実習指導を長く経験し蓄積のあるもの、幼稚園での勤務経験のある もの、小学校での勤務経験のあるものが、試行錯誤の中に教育実習指導に当たっている。「幼

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小接続」の重要性は、さまざまな経験をもつ我々教員の「接続」なしには語れない一面があり、 そのことが教育実習指導改善への道標となることも忘れてはならないだろう。 おわりに  本稿では、本学部における教育実習指導の課題と展望を見出すことから、幼小接続の重要性 を見据えた教員養成の在り方を検討してきた。各教員がそれぞれの立場や専門性を発揮しなが ら実習指導を展開する中で、各実習指導における授業の到達目標や専門的な学びの探究に着手 する一方、「幼小接続期の 接面における学び をどのようにつないでいくか」という課題が 浮き彫りになった。  2017年改訂の新教育要領・新指導要領に記された社会に開かれた教育課程の編成とは、地 域社会や家庭との連携と同時に、未来展望的な学びの系統性を教育現場がどのように保障し、 教育水準を担保するかが重要な視点である。したがって、取得免許の有無にかかわらず、5歳 児後半期から小学校への円滑な接続を支える教師を育成していく上で、学生が科目及び領域横 断的な視点を体得すること、小学校を含む地域社会や家庭との連携の在り方について深く考え ること、幼児・児童の学びの在り方を確かな地図として描いていく重要性を理解することなど は、幼小のいずれの免許を取得する上で必須課題になっていくと考えられる。したがって、本 学部のように幼小の免許を取得できる大学でしか体得できない学びを提供していくことは、今 後の教育現場に輩出する教師の質を担保しうる社会的使命であるとも言えよう。  次世代の教育の在り方を見据え、まずは我々大学教員が協働しながら授業の在り様を検討し、 学生が主体的かつ対話的に幼小接続の学びを体得できるような機会を、今後も模索していきた い。 註 ⑴ 文部科学省(2017)『幼稚園教育要領』http://www.mext.go.jp(2017年8月21日取得) ⑵ 文部科学省(2017)『学習指導要領』http://www.mext.go.jp(2017年8月21日取得) ⑶ 豊田和子、北島信子(2014)「幼小連携の現状と課題についての研究」『桜花学園大学保育学部 研究紀要』第12号、において、東海地区の幼稚園・保育所に幼小連携の課題についてのアンケー ト調査結果より、交流活動自体は多くの校園で取り組まれているが、「連携カリキュラムの開発」 という点においては、進んでいないところが多いことが明らかになった。 ⑷ 例えば、秋田喜代美、有馬幼稚園・小学校(2002)『幼小連携のカリキュラムづくりと実践事例』 小学館、秋田喜代美、第一日野グループ編(2013)『保幼小連携 育ちあうコミュニティづく りの挑戦』ぎょうせい、において連携カリキュラムづくりにおける、合同研修の意義が述べら れている。 ⑸ 杉浦渉、辻岡和代、吉田眞砂(2016)「実践的指導力の育成を目指す小学校教員養成の在り方 に関する考察」『桜花学園大学保育学部研究紀要』第14号、93‒105頁 ⑹ 無藤隆(2017)「幼児教育と小学校教育の接続の展望」『初等教育資料』平成29年6月号(No. 954)、東洋館出版、111頁

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⑺ 佐々木晃(2017)「より多面的な幼児理解と指導改善のために」『初等教育資料 7月号臨時増 刊(No. 956)』東洋館出版、37頁∼40頁において、幼児の事例記録をもとに「幼児期の終わり までに育ってほしい姿」の観点から考察をしている。実習記録の中の幼児の姿をもとに、佐々 木が行ったような考察方法で、実習生が考察することはできないだろうか。 ⑻ 斎藤多江子(2017)「幼小接続における教育課程の編成に関する研究」『こども教育宝仙大学紀 要』8、37頁∼45頁において、同一教材・題材に着目した研究を、指導の在り方についての 共通理解を深めるための手段として有効であるものとして紹介している。 付記  本稿は、はじめにを上村、第1章を北島・森川、第2章を田端・辻岡が執筆した。同様に、第3 章に関しては、第1節を田端・北島、第2節を上村・松永、第3節を森川・辻岡が、各実習担当者 の立場から執筆した。最後に、第4章総合考察を松永が、おわりにを上村が、執筆した。 (受理日 2017年8月22日)

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