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実践編ⅩⅢ 学校保健 自己の心身の健康に関心をもち、自己肯定感を高めさせるための健康教育の在り方

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Academic year: 2021

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ⅩⅢ 学校保健 小板橋智恵子 自己の心身の健康に関心をもち、自己肯定感を高めさせるための健康教育の在り方 1 研究の概要 (1) 生徒の実態 学校保健では、生徒の現状を次のようにとらえている。 (2) 目指す生徒像について 学校保健では、生徒の実態をふまえ目指す生徒像を次のように設定した。 ① 自分を客観的に見つめ、よさだけでなく、欠点も含めて自分を好きになることができる生徒 ② 人とのかかわりの中で、多様な考え方があることを知るとともに、自分の気持ちや考えを相手 に伝えることができる生徒 ①生き生きと自分らしく生きるためにはまず、自分が好きといった気持ちをもつことが必要である。 そのためには、他者と比較した自分ではなく、自分ができたことやがんばったこと、得意なこと、自分 のよさなどに気付くとともに、自分の行動や考え方を受け止め、自信をもつことである。そして、生徒 自身が「自分の否定的な面を受け止めること」「前向きに取り組むこと」「自分の可能性を信じて努力 すること」など、自分の内面を高めていくことが重要である。 ②自分の気持ちや考えを表現し、それらをうまく相手に伝えることから相互理解は始まる。そして、 人とのかかわりの中で、他の人は自分と異なる個性をもった大切な存在であるとともに、自分も個性を もった周りの人にとって大切な存在だと思えることが必要である。 (3) 目指す健康教育について 学校における健康教育は、教科「保健体育」をはじめ、各教科や道徳、特別活動や日常指導等におい

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て健康に関する知識や態度を習得させるものである。 本校では、自己の健康の状態を定期的かつ多様な視点から見つめさせ、的確にとらえさせるための健 康教育を系統的・計画的に行う場として、「すこやかタイム」を設定している。「すこやかタイム」は、 毎月1回、朝の活動の時間に各クラスの保健委員が主体となり行う保健指導の時間である。ワークシー トを用いて自己を振り返ったり、「すこやかたより」により健康に関する知識を得たりしている。生徒 が「自分」や「自分の生活」に目を向ける時間となっている。昨年度までの実践では、「自分の食生活」 や「生活習慣」について主に振り返りを行い、自らの健康課題解決を目指してきた。 本年度は、この「すこやかタイム」を生徒が「自分自身」に目を向け、「自分の気持ち」や「人との かかわり」について考える健康教育の場として設定し、充実を図ることを目指して以下のような構想で 研究を進めていく。 (4) 重点的に取り組む手だてについて 本校生徒の実態と、学校保健が目指す生徒像をつなぐ「すこやかタイム」での手だてを次のように考 え、健康教育を進めていく。 ① 自己発見ワークシートで「自分を見つめる」場面を設定し、自分を客観的に見ることができる ようにする。 ② シェアリングを行うことで、多様な考え方に気づき、自分の個性と多様な価値観を理解できる ようにする。 ①「すこやかタイム」の時間を充実させ、自己発見ワークシートによる「自分を見つめる」場面を設 定し、「自分や自分の気持ち」を表現する。しかし、自分を表現すること、しかも、曖昧だったり複雑

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だったりする気持ちを「言葉」という形にすることはなかなか難しい。そこでまず「言葉にしてみる」 ことからはじめ、自分の気持ちにあてはまる言葉(表現)を探す。自分の気持ちを「言葉」にすること を繰り返し行うことで、自分の気持ちと向き合ったり、自分を客観的に見ることができるようにする。 ②「表現したもの」を分かち合う(=シェアリング)ことで生徒は、書くことによる表現だけでなく、 声に出すことにより改めて自分の気持ちを実感することができる。友達に「自分が表現したもの」や「感 想」を語ることを通して、もう一度、「表現したもの」をとらえなおしたり、友達の「表現したもの」 を聞くことにより、新たな見方ができたり、表現しきれなかった「何か」に気付くことができる。 また、シェアリングの際の「友達の意見を冷やかさない」「話が終わったら感謝の気持ちで拍手する」 などの基本的なルールにより、自分の気付いたこと、感じたこと、考えたことが共感をもって受け入れ られ、自分を肯定的に受け止めることができるようになる。 そして、多様な考えにふれることで、人によって受け取り方、感じ方がさまざまに違うことを知り、 他者(=友達)を理解するきっかけになり、自分の中で共感や新たな気づきが生まれることにより、他 者の存在が重要に思え、他者を尊重しようとするようになる。 2 実践例 6月に行った第3回「すこやかタイム」では、「無人島へ GO !」というワークシートを用い、自分 にとって大切なものや自分を取り巻く豊かな環境について考えた。また、シェアリングを行うことで、 自分の考えをより深めたり、多様な考えがあることに気付けるようにした。

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3 省察と展望 (1) 実践例について

「すこやかタイム」が自分と向き合う良い機会になっていることは、「いつもはこんなことを考えな いので、4つ書くだけなのにすごく時間がかかってしまった。(以下略)」と書かれた生徒の感想から も分かる。以下にすこやかタイムで使用した自己発見ワークシートの例を載せた。

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これらのワークシートの生徒の記述を見ると、 発達段階における学年の違いを見ることもできる。 5月に行った「がんばってるね、私」(自分が「が んばっているよ」と思うこと書く)では、1年生 では「勉強」「部活」「係活動」などを「がんばっ ていること」として多く書かれているが、2年生 になると、それらに加え「人にやさしく」「人の気 持ちを考える」「相談にのってあげる」など、人と のかかわりでがんばったことをあげる生徒が増え てくる。 また、4月に行った「自己紹介ワークシート “私は○○です”」では、一人あたりの文章数が、1年生では 0~2文が11名、3~5文が26名、6文以上が4名なのに対し、 2年では1名、17名、14人と、自己紹介文を多く書くことがで きている。1年生は初めての「すこやかタイム」であり、自分 を見つめ、表現する経験が少なく、記述が少ないが、2年生以 上は、自己を見つめ、表現することができてきたことが分かる。 また、自己紹介文が多く書ける生徒ほど、自分ががんばっている事を多く書ける傾向にあることが分 かった。 これらのワークシートに書かれた生徒の感想には、次のようなものがある。 自己発見ワークシート「ありがとうの花束を作ろう」 ○普段はあまり意識していないけれど、考えてみれば、感謝しなければいけないことがたくさんあった。今度は これを言葉にしたい。(2年女子) ○ありがとうという言葉は本当に良い言葉だと改めて実感させられた。口では言えないことも、文字に置き換え ると素直に伝えられると言うことも実感した。(3年男子) 自己発見ワークシート「がんばってるね!私」 ○今まで「自分ががんばっているな!」と思うことを書いたり、思ったりしたことがなくて考えるのが難しか ったけど、自分自身がんばっていることが、あったのでほっとしました。(1年男子) ○自分が頑張っている事というのは、やっている時は「あたりまえ」と思ってしているけれど、今振り返って、 前は「できなかったかも」と思うと頑張っているのかなと感じた。(1 年女子) ○「がんばっていること」が自分にもあってびっくりした。他人ががんばっているのはよく分かるけれど、自分 のがんばりには気づきにくい。(2年女子) ◇「比較なしで」というのはけっこうむずかしい。みんなが「がんばっている」ことは、誰から見ても「がん ばっていない。あたりまえ」と言われるだろう。(2年男子) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1年 2年 3年 自己紹介文の数 0~2文 3~ 5文 6文以上

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6・7月に行った「すこやかタイム」では、自分の気持ちについて考えるだけでなく、ワークシート で自分の考えをまとめた後にシェアリングを行い、他者の様々な考えにふれる機会とした。 「周りの人は自分と同じ意見のものもあったし、違う意見もあったけど、理由を聞いて考えを深めら れました。周りの人の意見で、『なるほど』と思うものもたくさんありました。(1年女子)」「自分と 全く違った意見の人も多くて『なんで?』と思うことがあった。でも、その人の意見を聞いて『なるほ ど』と共感できて、面白かった。(3年女子)」といった生徒の感想もあり、シェアリングを行うこと で自分の「考え」を深められている生徒がいることが分かる。 自分を振り返る機会を定期的に設定することで、自分の気持ちに向き合うことができる生徒が増えて きた。しかし、なかなか自分を肯定的にとらえることができない生徒や自分の気持ちを言葉としてうま く表現できない生徒もいる。これらの生徒には、個別の対応として積極的に声かけをしていくとともに、 全体の対応として、「すこやかタイム」にシェアリングやショートエクササイズをの手法を取り入れた り、「すこやかたより」に生徒の記入例を紹介するなどして、生徒自身の気気付きの手助けとなるよう にしていきたい。 (2) 今後の展望 今回、研究主題「自己の心身の健康に関心をもち、自己肯定感を高めさせるための健康教育の在り方」 として、「すこやかタイム」における工夫に重点をおいて取り組んだ。 しかし、自己肯定感を高めるための取組は、道徳や学級活動をはじめ、すべての場面で扱われるもの である。養護教諭としてのかかわり方を更に研究していきたい。 心の変容ぶりをアンケートなどの客観的なデータによって示すことは難しい。しかし、生徒自身が書 いたワークシートのデータを細かく見ていくことで、心の変容を見とることができる。「すこやかタイ ム」で使用するワークシートは、ファイルに整理し、3年間持ち上げることになっている。今回実施し たワークシートを時間をおいて、繰り返し行い、過去に記述したものと比較することで、変容を見てき たい。 〈参考文献〉 1) 東京都教育委員会 自尊感情や自己肯定感に関する研究 2) 諸富祥彦 監修 大竹直子 著 (2006) 『自己表現ワークシート』 図書文化社 3) 大竹直子 (2009) 『自己表現ワークシート2』 図書文化社 4) 上条晴夫 編 (2009) 『ポジティブコミュニケーションカード』 民衆社 5) 國分康孝 監修 (2009) 『ショートエクササイズ集』 図書文化社

参照

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