1.はじめに 平成19年2月8日に文部科学省検定済となった英語 Reading 教科書8冊の内容を概観したい1)。すべてが一新 されたわけではなく、おなじみの題材も散見できるが、 新たな注目すべき題材が登場している2)。わが国の高 校・高専3年生は平成20年度から英語で何を読むことに なるのか。本稿にはその答えがある。また、文部科学省 が指導するわが国の英語教科書の特殊性が改めて浮き彫 りになるはずだ。 2.障害者の活躍 まず、検定済英語教科書の大きな特色となるのが、障 害者の活躍である。前回の平成15年の検定では、地雷撤 去中に片手片脚を吹き飛ばされたものの義足で長野オリ ンピックの聖火ランナーを務めた Chris Moon、ジュニ アオリンピックの棒高跳びで世界記録を出した全盲の Michael Stone( PROMINENCE で は 今 回 初 め て “True Height”で紹介3))、『五体不満足』の乙武洋匡が 人気の題材になっていたが、今度の平成19年の検定では、 新たなヒーロー、否、ヒロインが誕生している。“Soul Surfer”(Voyager)の Bethany Hamilton である4)。教科 書に掲載されたカラー写真が衝撃的だ。左腕がなくその 付け根が団子状になっている金髪の少女が、大きくえぐ られたサーフボードをもってほほ笑んでいる。ハワイ出 身の彼女は13歳のときサメに襲われたが、長時間の手術 に耐えて、片腕で再びサーフィンを始めたという。“I think that if I can help other people find hope in their hard times, then that is worth losing my arm for.”(105) とまで言える、逆境に挫けない強い精神力が読みどころ になっている。
ダンベルを持ち上げている短髪の白人娘の写真がつい た“Life with Half a Brain”(Planet Blue)も題名が示 すとおり、強烈な印象をのこす。Christina Santhouse は小学3年生のときに病気のため脳の左半分を14時間か けて切除したが普通高校に進学し、同じ手術を受ける患 者の家族の相談にのっている。教科書のもくじには「困 難な状況にぶつかった時、それを受け入れる潔さと、立 ち向かう強さを持ちたいものです」(4)と掲載意図が 述べられている。 映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作に主 演した Michael J. Fox が“Lucky Man”(PRO-VISION) で取り上げられているのも、まさに同じ理由からだ。パ ーキンソン病にかかったことで人々を思いやる気持ちが 芽生えたというこの映画俳優は、治療法が早く見つかる ように患者の代表として積極的に発言している。
しかし、逆境や難病に立ち向かっても克服できない場 合 も あ る 。“ Mattie Stepanek― Listen to Your ‘Heartsong’”(POLESTAR)は2冊の詩集をのこして 13歳で亡くなった筋ジストロフィーの少年の実話だ。自 分の死期を自覚しながら、世界平和を願い、天才的な詩 を書いて、9.11のテロ事件のあと、被害者遺族たちを癒 したそうだ。“Everyone in the whole wide world / Has a special Heartsong. / If you believe in magical, musical hearts, / And if you believe you can be happy, / Then you, too, will hear your song.”(74)という詩は、人間 の善意を信じ、世界平和をめざすわが国の方針にぴった り合致する。
3.世界平和
平和への願いは、第二次世界大戦で戦争の悲惨を体験 し た わ が 国 の 検 定 教 科 書 で は 定 番 の テ ー マ で あ る 。 Magic Hat の第1課“Iwasaki Chihiro”によると、世 界的に人気のある、ちひろが描いたかわいらしい子供の 絵には、東京大空襲を体験した画家の平和への祈りが込 められているという。Voyager は、アンネ・フランクの 一家の隠れ家に食料を届け、『アンネの日記』をナチス から守った “Miep Gies”を改訂版にのこした。ノーベ ル 平 和 賞 受 賞 者 は 教 科 書 の 題 材 と し て 好 ま れ る が 、 POLESTAR は、この賞の生みの親“Alfred Nobel: A Person of Peace”を巻頭に掲げている。Magic Hat は、 地雷廃絶のために働いて1997年にノーベル平和賞を受賞 した英国人女性のわが国での講演も収めている(“Jody Williams on Landmines”)。PROMINENCE では、ボス ニア紛争中、戦争に抗議するために、瓦礫の中でチェロ を演奏した音楽家 Vedran Smailovic の行動を称える (“The Cellist of Sarajevo”)。以上、戦争に反対する個人
の重要性が示されている。 検 定 教 科 書 で は い ま な お 核 戦 争 を 心 配 す る 。
平成
19年文部科学省検定済英語 Reading 教科書を読む
――題材の新たな展開
横 山 孝 一*
(2007年11月30日受理)群馬高専レビュー・№26(2007)
“Morals and Weapons”(Magic Hat)は25年も昔(1983 年)に出版された動物学者 Konrad Lorenz の本から採 った。人間は大量殺戮兵器を手に入れたが、それをコン トロールする本能は持ち合わせていない、と心配を吐露 した文章が、核実験のきのこ雲の写真とともに掲載され ている。Planet Blue は故・星新一が米ソ冷戦時代に皮 肉 を 込 め て 書 い た シ ョ ー ト シ ョ ー ト の 英 訳 “ T h e Memento”を載せている。これは、地球の人間を幸福 にするため砂漠に隠してあった宇宙人からの贈り物が、 核実験のせいで知られぬまま焼き尽くされてしまう SF である。PRO-VISION の“Peace in the Atomic Age” では、冷戦時代に核戦争を心配して反戦デモに参加した Albert Einstein が、信頼に基づいた平和の実現を世界に 向けて訴えている。
POLESTAR の“Public Attitudes toward Science” では、冷戦後、人々の意識から遠ざかった核兵器の廃絶 こそ急務であると Stephen Hawking 博士が主張してい る。原典は1993年の本なので、温室効果などの問題は解 決に時間的余裕があると述べているところに古さを感じ ざるをえない。15年近くがたち、自然環境は予想を超え るスピードで悪化している。『不都合な真実』のアル・ ゴアがノーベル平和賞を受賞した現在(2007年)、むし ろ地球温暖化の解決のほうが緊急課題になっている。 4.環境問題 検定教科書では、環境問題も重点的に取り上げている。 “Last Chance”は、西暦2500年、環境の悪化で人の住め なくなった地球を捨てて宇宙船で第二の地球を探す旅を つづける未来の女性が、タイムマシンで現代にやって来 て、「手遅れにならないうちにライフスタイルを改めな さい」と国連で演説する物語である。環境問題を意識し て教科書の名前をつけた Planet Blue が巻頭に掲げてい る。この短い SF は Voyager が先に採用していたのだが、 今回の改訂では逆に省いている。理由は想像がつく。 Voyager は、元祖環境保護論者の“Rachel Carson”の 伝記と、ガラパゴス諸島での経済発展と環境保護の矛盾 を扱った“Fragile Islands”を改訂版でのこしており、 環境問題はかなり重視している。“Last Chance”は物語 としては簡潔にうまくまとまっているが、実際のメッセ ージとしてはあまりにも乱暴だ。“You must change your lifestyle now, before it is too late.”(7)と言われ ても、読者は困惑するばかりだろう。このように、危機 をあおるだけで解決の具体性に乏しい題材は前回の検定 教科書で多々見られた。その傾向は今回の検定でだいぶ 改善されている。
Voyager は代わりに“Going Under”を採用した。 NEW STAGE の“Disappearing Countries”でも扱って いる、地球温暖化による海面の上昇によって将来水没の 危機にある島国ツバルの紹介だ。南極の氷が溶け出して いることは、“Penguin Problems”(PRO-VISION)の 深刻な背景にもなっている。“Going Under”は環境の 悪化を報告するだけでなく、未来の悲劇を避ける方法を 模索している。読者としても安心でき前向きに生きられ る内容だ。燃料電池(fuel cell)や風力・太陽光発電を 取り入れ、アメリカを巻き込んで全家庭でエネルギーを 節約すれば、ツバルと私たちの地球を守ることができる そうだ。Voyager では、次の課“Machines or Humans?” で、手塚治虫の『鉄腕アトム』のおかげでロボットを人 間の友達と考え、世界一のロボット産業を発達させたわ が国の科学技術力を紹介し、“Going Under”の結論に 説得力を持たせている。読者の学生も、技術者になって 頑張ってみようとやる気をだすかもしれない。 他の教科書でも、新しいテクノロジーへの期待が述べ られている。“A New Shade of Green” (PROMI-NENCE)では、ネイティヴアメリカンですら森を破壊 していたという事実をあげ、科学を敵視して過去を美化 す る 硬 直 し た 環 境 保 護 論 者 た ち を 批 判 し 、“ a n environmentalism that uses science and technology” (74)の必要を説いている。“On Environmental Issues” (Magic Hat)での3人の議論の結論も同じだ。“Would
you let me conclude this discussion by saying we all agree human beings need to exercise restraint, and at the same time be intelligent in order to solve the environmental problems facing us today?”(103)──こ れは簡単に言うと、“We should not waste too much. But I still believe that we need to develop new technologies to cope with environmental problems.” (101)と別の人が発言しているとおり、無駄を省いた生 活と新しい技術開発の必要である。次回の検定ではここ からさらに進んで、環境保護の具体的な方法として、わ が国の最新技術の紹介が題材として登場するにちがいな い5)。 技 術 者 で な く て も で き る こ と に つ い て は 、 N E W STAGE が、「乾電池をどこに捨てるか?」といった環 境 問 題 に 取 り 組 む 個 人 の 基 本 姿 勢 を 説 く “ T h i n k Globally, Act Locally”を、国連の「世界環境フォトコン テスト」の入賞写真(“One Picture Tells a Lot”)とと も に 載 せ て い る 。 POLESTAR は “ Tourists of a Different Kind”で、環境問題解決に貢献する海外旅行 者を取り上げている。 乱開発で砂漠化した土地に木を植えるグリーンベルト 運動を1977年から展開し、これまでに3千万本も植樹し た Wangari Maathai は、アフリカ人女性初のノーベル 平和賞を2004年に受賞した。ELEMENT は、“The Green Belt Movement: The Nobel Lecture by Wangari Maathai”で彼女の受賞スピーチを巻末に収録している。 やや冗長だが、子供時代に家のそばにあった、カエルが 卵を産みオタマジャクシがかえった「小川」を取り戻し
たいと述べているところは共感できる。わが国の「もっ たいない」の精神を世界中に広めてくれている人でもあ り(“Mottainai,” PROMINENCE: English II)、わが 国の英語教科書で人気の人物となりそうだ。
5.非西洋への共感
わが国の検定教科書の黒人びいきは、キング牧師の “I Have a Dream”の根強い人気ぶりを例にあげるまで もなく自明のことである。NEW STAGE は、奴隷貿易 の歴史“The Slave Trade”と、南アフリカで黒人の自 由のために戦った“Freedom Hero―Nelson Mandela” を今回の改訂でのこした。ペリーの黒船来航を当時の日 本 人 の 視 点 か ら 描 い た “ The Day the Black Ships Appeared”には西洋人への根源的恐れが表れている。 Magic Hat が“The Birth of Martians”の課で紹介して いる、1938年放送の Orson Welles によるラジオドラマ 『宇宙戦争』を真に受けて、火星人が来襲してきたと信 じパニックを起こした人々と反応がよく似ている。幕末 期にアメリカ人が現れた衝撃は、火星からの侵略に匹敵 したということだろう。黒人を奴隷にし、わが国に原爆 を落とした過去を持つ白人よりは、有色人種に共感を示 すのが、検定教科書に見られる一般的特色である。 今回の検定をとおった教科書で扱われている人種は、 自然と共生してきた少数民族がまず目につく。自然の恵 みを最大限活かしているというサモア人(“Samoan Culture,” PROMINENCE)、カヌーで太平洋を何千キ ロ も 旅 す る こ と が で き た ポ リ ネ シ ア 人 (“ T h e Polynesians―the Great Explorers,” NEW STAGE)、 そして3社が選んだ、マオリ人。
“ New Zealand: Paradise under Pressure” (ELEMENT)によると、James Cook 率いる白人の船
が現れて英国領と一方的に宣言、18世紀末に植民が始ま り、先住民であったマオリ人は土地を奪われた。ペリー 来航を連想させるところが日本人の共感を呼ぶのだろう か。“The Maori People”(Planet Blue)では、銃・ 酒・タバコ・病気を持ち込まれて人口が激減したマオリ 人の悲劇に言及している。どちらのエッセーも、1960年 から70年代、大学に進学したマオリ人の子孫が自分たち の文化と言語を再評価し始め、現在ではマオリ語が英語 とともに公用語となり、マオリの文化がニュージーラン ドの重要な要素であることが述べられている。“Are Some Languages Not Good Enough?”(PRO-VISION) ではラテン語が英語より優勢であった過去の歴史を例 に、現在、テレビ・ラジオ・教育機関で使われているマ オリ語が英語と比べ決して劣っていないことが力説され ている。
そ の 他 、 古 き よ き 文 化 を 維 持 す る モ ン ゴ ル (“Mongolia: The Land of Yesterday and Today,”
Special in India?” NEW STAGE)、そして、昔は西洋 をはるかに凌ぐ技術力を持っていた中国が扱われてい る。“Ancient Wonders”(PROMINENCE)では万里の 長城の壮大さが語られ、“Did the Chinese Discover A m e r i c a ? ”( P O L E S T A R ) で は 、 C h r i s t o p h e r Columbus のサンタマリア号の全長25メートルに対し、 1 0 0 メ ー ト ル を 超 え る 船 を も っ て い た 中 国 人 が 、 Columbus より71年も前に新大陸に到達していたとする 説を紹介している。 西洋画より劣ると見られていた日本画を復興させ、西 洋に茶の湯の文化を紹介した岡倉天心の生涯に注目する “The Cup of Humanity”(PROMINENCE)は、大アジ ア主義の復活を想像させる。“Asians and Westerners Think Differently?”(ELEMENT)は中国人に西洋人と の考え方の根本的な違いを指摘された学者が行なった調 査結果で、西洋人がサルとパンダを動物のカテゴリーで 結びつけるのに対し、アジア人は関係性からサルをバナ ナと結びつける、といった物事のとらえ方の違いが明ら かにされている。Voyager では、自民族中心主義を戒め (“Ethnocentrism”)、文化の違いよりも共通点に目を向 けて世界が友好関係を結ぶべきだとする題材“Small World, Isn’t It?”を今回の検定でものこしているが、検 定教科書の新しい題材を見ると、親米よりは中国寄りの 傾向が見られ、わが国が西洋の先進国よりもアジアの一 員として位置づけられていることがわかる。
“A Village of 100 People”(NEW STAGE)では、世 界が100人の村だとしたら、20人が全エネルギーの80% を消費し、自動車を持っていれば大金持ちの上位7人に 入ると、世界経済の不公平を要約している。わが国は裕 福な国だが、検定教科書では、貧乏な弱者に共感を示す。 “The Grameen Bank”(Magic Hat)は、貧しい人々に
資金を貸し出す「村の銀行」をつくったバングラデシュ の 経 済 学 者 の 取 り 組 み を 紹 介 し て い る 。“ Let us remember that poverty is not created by the poor but by the institutions and policies that we, the better-off, have established.”(135)という最後の言葉は、格差社会へ と変貌を遂げたわが国の現状を想起させる効果もある。 Magic Hat は“Ainu Trade in an Isolated Japan”で、 鎖国の時代に貿易で重要な役割を果たしていたアイヌ民 族を扱い、その歴史と文化を学んでわが国の成り立ちを 知る大切さを説いている。ここでは他民族を侵略した側 として、反省を促しているのである。 6.英語 いまや国際語となっている英語だが、検定済英語教科 書の西洋離れはこの「英語」の扱いにも認められる。 “Ten Languages Die Out Each Year”(PROMINENCE) では、英語の普及のせいでマイナーな言語がどんどん消
群馬高専レビュー・№26(2007)
ら れ て い る 。“ One World, One Language?” (ELEMENT)では、中国語・スペイン語・アラビア語 の強さに注目して英語が唯一の国際語ではないと断言 し、マイナーな言語文化の消滅を悲劇と見なし、言語の 多様性が失われると世界はつまらなくなると警告してい る。こうした教材を読まされると、英語を敵視する口実 ができた学生は英語を勉強しなくなるかもしれない。
こ れ に 対 し 、“ The Changing Global Linguistic Environment”(Planet Blue)では、少数民族の言語の 消滅を心配しながらも、英語がもはやネイティヴスピー カーの独占物ではなくなっている現実を伝えている。英 語はネイティヴでない外国人同士の会話に使われること が多くなった。また、より多くの読者を求めて英語で作 品を書く作家も出てきたという。
“Who Speaks English?”(Voyager)でも、イギリス 人とアメリカ人のものであった英語がみんなのものにな ったと喜んでいる。EU の共通語として期待される「ユ ーロ英語」についても言及があるが、アジア各国での英 語学習の取り組みが興味深く紹介されている。上海など の街角で中国人の学生や会社員が英語で演説する、中国 の大都市ではおなじみになっている「英語コーナー」、 英語を実際に使う場所を子供たちに提供している韓国の 「英語村」。カンボジア・ラオス・ベトナムでは官僚をシ ンガポールへ語学留学させている。英語を母語以外にし ゃべる人口はネイティヴスピーカーの3倍にも達してお り、それぞれの国で英語が変化してゆく現象も自然なこ とと肯定している。ネイティヴの英語にこだわりがちだ ったわが国の英語教育も、ジャパングリッシュを堂々と 話せる学生を輩出してゆくことになるかもしれない。 7.科学 検定済英語教科書で扱われる科学系の読み物にはどの ようなものがあるのか。平成19年の検定をとおった Reading 教科書を見ると、2社が、1965年にノーベル物 理学賞を受賞している Richard P. Feynman(1918-88) のエッセーを掲載している。“The Making of a Scientist” (ELEMENT)は、父親から科学者になるための英才教
育を受けた幼年時代の回想だ。「恐竜ティラノサウルス の身長は今いる家の2階くらいあり、頭はこの窓より大 きいんだぞ」と父親が百科事典の内容を具体的にいきい きと説明してくれたという。“It’s as Simple as One, Two, Three…”(POLESTAR)は好奇心旺盛な大学院 生時代のエピソードで、音読しながら同時に60まで数え る方法を考え出している。 Feynman 以外では、SF 映画などで、ミクロの大きさ になった人間や巨大化した昆虫が、もとの大きさのとき と同じ行動をとっているのが科学的に見ていかに荒唐無 稽であるかを解説したエッセーもある。Magic Hat の “Size and Shape”だ6)。
以上の3点は気楽に読めるが、環境問題のように現代 人の危機意識とからんでいると重苦しく感じられる。医 療の進歩に追いつけない倫理の問題を扱う“Medical Technology and Bioethics”(ELEMENT)、人口問題解 決のためには「フランケンシュタインフーズ」と気味悪 がられている遺伝子組み替え食品を食べなければならな い と 結 論 す る “ Genetic Engineering and Food Production”(ELEMENT)などがそうだ。
“You and Your Genes!”(Planet Blue)は自分の遺伝 子情報を知るメリットが書かれているのでよい。“This knowledge may help us prevent―or avoid―a lot of disease and disability, producing a better, safer future for us all.”(S1- 6)という最後の一文を読めば安心でき る。同様に、抗生物質の効かない耐性菌の出現を話題に している“Antibiotic Resistance”(Magic Hat)もその 対処法をきちんと示しており、無知に基づく不安感は消 える。だまし絵を載せて脳の錯覚などを具体的に示した “Mysteries of the Brain”(Voyager)でも、“Scientists no longer believe that we lose large numbers of brain cells as we grow older.”(80)と、年をとるごとに脳細 胞がどんどん死んでゆくという俗説を否定しており、未 来に希望が持てる。
同じ脳を扱った題材でも、ジェンダーフリーなどの奇 怪なイデオロギーが混入していると、教科書を編纂した 人 の 意 図 を 疑 わ ざ る を え な い 。“ Where Does the Difference Come from?: The Nature Versus Nurture Argument”(Planet Blue)では、男女の違いは、心理 学者や社会学者が主張していたような社会環境によって 生まれるものではなく、「1990年以来の圧倒的証拠によ り」脳の構造の違いによって先天的に決められていると、 科学者の成果を紹介しているが、“Sex and the Brain” (POLESTAR)では、脳の構造の違いは男女の得意・
不得意を一般化して説明できるが個人レベルでは例外が あ り 、 科 学 者 は 脳 の 違 い を 強 調 し す ぎ る と 批 判 。 “Today, many people think that a lot of the male-female
differences would disappear if boys and girls were treated the same by their parents from the beginning.” (65)と、一般大衆を楯にジェンダーフリーの理想を掲 げ、脳科学の成果を否定しようとする。男女の違いが養 育方法によって消えると思っている人が多いのはそのよ うに喧伝されていたからであり、それをもって従来の説 が正しいと言うことはできない。著者は女性で、しかも 原典は1992年出版の本。Planet Blue のエッセーが男女 の共著で1998年出版であることを見れば、なぜ思想的に 偏 っ た 古 い 疑 似 科 学 エ ッ セ ー を 載 せ る の か 、 POLESTAR の編集方針を聞きたいところだ。なにしろ この教科書は、外見がそっくりな男女の写真をいっしょ に掲載しているのである。男女のユニセックス化を本当 に望んでいる一般大衆は、はたしてどれくらいいるのだ
ろうか?「多い」とは到底思えない。
しかし、こうした思想的に左に傾いた題材は検定教科 書中に散見できるものなのである。平成15年の検定教科 書には、“I believe marriage is for fools and dreamers. Who in their right mind is willing to give up their freedom for another person?”(“It Just Isn’t Fair,” MAINSTREAM II, 31)と結婚制度をヒステリックに否 定する英文が載っていた。言うまでもないことだが、わ が国では思想の自由が保障されており、上記のような考 えで結婚しないのも個人の自由だ。しかし、公の教育現 場でこのような偏った思想を広めようとするのはいかが なものか。 今回の教科書でも同様の疑念を抱かせるエッセーがあ る。“Why Do People Fall in Love?”(Magic Hat)だ。 一見、科学的と思わせる題名だが、作家の小池真理子が 『朝日新聞』に書いた科学とは無縁のエッセーをわざわ ざ英訳したものだ。内容は恋愛作家らしい恋愛至上主義 の人生観を語ったもので、人は80歳になっても恋をする と書き、“People who are married also fall in love. As long as we live, love is a natural feeling that comes to us.”(110)とつづける。結婚後も恋におちるのは自然 なことだそうだ。ここにも結婚制度を否定する考えが垣 間見える。
とりわけ Magic Hat の読者はそう感じざるをえない。 というのは、次の課“The Man from Australia”が幽霊 屋敷を舞台とした怪談の形をとっているものの、語られ る呪いの真相は、今はやりの子殺し・親殺しであるから だ。この教科書では、親子からなる家庭を否定的に見せ て、個人の恋愛感情が最優先されている。小池真理子に よれば、死を思うことで恋愛はさらにすばらしいものと なるそうだ。不倫小説の創作術として読まされるのなら 納得できるが、『結婚アウトサイダーのすすめ』で現行 の結婚制度を否定した人が書いた特殊な思想を学校の教 科書で真理のごとく読ませるのは、やはり不適切であろ う7)。 Magic Hat は、東京大学大学院の現職者が3人も名 を連ねており、このエッセーには確信犯的な思い入れが あるのだろうが、影響を受けやすい多感な学生を洗脳す るような小細工はやめていただきたい。検定教科書は英 語習得を第一に編集されるべきだ。 8.文学 TOEIC テストなど実用英語志向の潮流にあって英米 文学の人気は凋落した観があるが、検定教科書ではいわ ゆ る 巨 匠 の 作 品 が 復 調 傾 向 に あ る 。 W i l l i a m Shakespeareの名作“Romeo and Juliet”(Planet Blue)、 アメリカのノーベル賞作家 Ernest Hemingwayの“The Old Man and the Sea”のクライマックス(Voyager)、
氏の違いがわからずに死を覚悟する、Hemingway の有 名な短編“A Day’s Wait”(PRO-VISION)、英詩につい ても、若者に人気のヒップホップと結びつけた“The Pleasures of Poetry”(PROMINENCE)で詩の鑑賞方 法を示し、アメリカの代表的詩人 Robert Frost の“The Road Not Taken”が PROMINENCE と ELEMENT の 両方で掲載されている。
今年(2007年)亡くなったアメリカの人気作家Kurt Vonnegut, Jr.の“Long Walk to Forever”(Planet Blue) は、婚約してしまった幼なじみを取り戻すために軍隊を 抜け出して散歩に誘う話で、よく知られた秀作。平成19 年 3 月 1 5 日 に 検 定 済 と な っ た 2 年 生 用 の PROMINENCE にも掲載されている。ちなみに、木の 葉 に 人 の 一 生 を 重 ね て 描 い た 「 葉 っ ぱ の フ レ デ ィ 」 (“The Fall of Freddie the Leaf”)は、今回 Magic Hat
に美しいカラー写真つきで掲載されているが、その前に は1年生用の POLESTAR (平成14年検定済)が採用 していた。ひとひらの雪に女の一生を重ね合わせた Paul Gallico の傑作 Snowflake(1952)からカトリック の宗教色を取り除き、エコロジー的世界観で書き換えた 哲学者 Leo Buscaglia の作品は、環境問題を重視するわ が国の英語教科書にはうってつけの作品だ。 検定教科書に載る物語は概して、意外なオチのある話 と、読者と同じ青春期の若者が主人公になる話に分ける ことができる。例をあげよう。オチのある話は、絵のモ デルになっていた乞食が実は大金持ちであった Oscar Wilde の“The Model Millionaire”(PRO-VISION)、60 年間交換のいらない電球が老婦人の台所にあった謎を語 る“See the Light”(PRO-VISION)、タクシー運転手 が泣きながら読んでいた親友の手紙のどんでん返し “The Letter”(Voyager)、骨董品店で買った古い机の引 き出しを使って19世紀の女性と文通する“The Drawers” (Voyager)など。
若者を主人公としているのは、クリスマスの早朝にひ とりで牛の乳搾りを済ませて父親を喜ばせた少年時代を 回想するPearl S. Buck作の“Christmas Day in the Morning”(ELEMENT)、ホームステイ先の英国人一 家と気乗りしないハイキングに出たイタリアの若者を描 いた “The Shivering Mountain”(POLESTAR)、高校 を 中 退 し て 引 き こ も っ て い る 若 者 を 主 人 公 に し た Bernard Malamud の “ A Summer’s Reading” (PROMINENCE)など。 もちろん、若者を主人公にしたオチのある話もある。 “Friends”は、いじめられていたところを助けて親友に なった学生が、卒業式のスピーチで、偶然知り合う直前 までじつは自殺を考えていたと告白する。友情がひとり の人間の命を救ったというオチはインパクトがあり、 PROMINENCE は巻頭に飾っている。
群馬高専レビュー・№26(2007)
9.実用と笑い ―― 結びにかえて
検定教科書は時代を映す鏡でもある。“Pablo Picasso” ( NEW STAGE)、“ Picasso: Young All His Life” (PRO-VISION)のように評価の定まった芸術家は時代
に関係なくいつでも教科書の題材になりうるが、学生は もっと身近な有名人のことを知りたがる。たとえば、メ ジャーリーグで活躍中のイチロー。“High School Days: An Interview with Ichiro”(ELEMENT)で、高校時代、 野球部の寮で先輩たちの洗濯をさせられたので練習時間 を確保するため朝の3時に起床していたと語る。“An Interview with J.K. Rowling”(Planet Blue)では、魔 法使いの少年の成長を描いた人気小説シリーズ『ハリ ー・ポッター』がいつどのようにして生まれたのか、原 作者が自ら語っている。これらは今なお旬の話題かもし れないが、人気の衰えとともに近い将来、差し換えなけ ればならない。PROMINENCE に古い映画『十二人の 怒れる男』のスクリプト“Twelve Angry Men”が載っ ているのは、わが国で施行される裁判員制度を念頭に置 いてのことだろう。 以上、平成19年検定済の英語 Reading 教科書8冊の 中身を見てきた。多様な題材にもかかわらず、全体から 受ける印象はあまりにも単調だ。世界平和を願い、環境 問題や貧富格差を直視し、あらゆる差別をなくすといっ た国際人の心構えが道徳の教科書のように説かれてい て、進んで読みたくなるような本とは言いがたい。また、 英語そのものよりも四角四面の話題が先行しすぎてい て、英語の使える人材を求める社会の要請に応えている かどうか疑問だ。もちろんTOEICテストに出るような 無味乾燥な英文ばかりでは学生は退屈するにちがいない のだが、実用的な英文にまったく接する機会がないのも 問題かもしれない8)。 Planet Blue は、この問題に取り組んだ唯一の教科書 と言えるかもしれない。サッカーの戦術“Football Tactics”、メールのエチケット“The Rules to Be Cool”、 旅行の行き先選び“Choosing a City”、クッキーや料理 の作り方“Chocolate Chip Cookies”、“Sukiyaki”など。 英語を媒介として有益な情報を提供している。Planet Blue は各英文を2ページに収める手法で豊富な話題と バラエティーに富んだ英文を集めており、新しい英語教 科書の方向性を示している。ちなみに、Voyager の “The GDP of Happiness”は西洋人と東洋人の幸福観の 違いを論じたエッセーだが、最後に、幸福になるための 具体的な方法が示されていて興味深い。①人に親切にす る。②何でも話せる親友を作る。③楽しいこと、体によ いことをする。――こうした実生活ですぐに役立つ情報 も教科書の題材として望ましいのではないか。 “The GDP of Happiness”によると、微笑や笑いは幸 せに直結しているそうだ。“The Smile”(ELEMENT) では「微笑」が戦争中の敵に人間的な感情を呼び戻した ことが書かれている。それにしては、検定教科書は笑い が少ない。授業中に英文を読んでほほ笑むことはほとん どないのだ。教科書中の文学作品で例外的に笑えたのは、 30代の独身女性がバレンタインデーにやきもきする “Bridget Jones’s Diary”(PROMINENCE)くらいだ。
このほろ苦いユーモアは若い10代の学生には理解がむず かしいかもしれない。
年齢にあった笑いをかなり意識して載せているのは、 Planet Blue 同様、短めの英文をたくさん集めている NEW STAGE である。巻頭の“What Is Friendship?” は題名から連想するような硬い内容ではなく、ユーモア で真実を伝えている。――森の中でクマが現れ、ふたり は逃げる。ひとりはわれ先に木に登ってしまい、取り残 された男は死んだふりをする。クマが何かを囁いて去っ て行くのを木の上から見ていた友人が、何て言われたの か聞くと、無傷の男は答える。“It told me not to walk with friends who leave you when there is danger.”(6)。 他にも、「ニンニクを食べた者は4時間たたないとバス に乗ってはいけない」といったアメリカのおもしろい州 法を紹介した“It’s the Law”、診察室の医師がなぜドラ イバー・のこぎり・ハンマーを必要としたのか考えさせ る“The Right Tools for the Job”、バスで傘泥棒と間違 われた男が修理店から8本の傘を持ち帰るときに、また も 同 じ 女 性 と 出 く わ し て “ You’ve certainly had a successful day!”(34)と嫌みを言われる“Umbrella Man”、“Guess who sent these.”と書かれたメモととも に送られてきたミュージカルのチケットを使った夫婦 が、帰宅後、“Now you know!”とメモが置かれている のを見つけ、泥棒に入られたことを知る“A Witty Thief” など。先に見た重苦しい話題の途中に挿入されているの で、ほっと一息つけて、授業の潤滑油になる。他の教科 書会社もぜひ見習って欲しいものだ。 注 1)筆者が勤務する群馬高専英語科に届いた平成19年2 月8日検定済教科書見本8冊を対象とする。 2)表紙でRevised Editionと断っているのは、NEW STAGE、Planet Blue、POLESTAR の3冊だが、 NEW EDITION と銘打っている Voyager も過去の 題材をかなりのこしており、実質、改訂版といえる。 今 回 、 新 し い 題 名 の 教 科 書 が 2 冊 出 て い る が 、 ELEMENT は旧 MILESTONE の改訂版、Magic Hat という奇抜な書名のついた教科書は旧 ONE WORLD の最後の1編を入れ替えただけ。書名を 変えるのは採用を増やす工夫の1つなのだろうが、 こうなると文字通り「手品」だ。PROMINENCE は、2編以外は新しくなっている。評判のいい題材 はのこして文部科学省の検定を受けるのが通例のよ うだ。すべてを一新しているのは PRO-VISION だ
けである。 とは言え、各社ともカラー写真をふんだんに使い、 前回の検定よりも見栄えがよくなっているのは確か だ。本稿では新版・改訂版にかかわらず、平成20年 度から使われる新しい教科書として題材を吟味する ことにする。 なお、平成15年3月20日に検定済になった旧教科 書については、拙論「文部科学省検定済英語教科書 を読む――学生は何を読まされているか」を参照さ れたい。ビートルズ世代の教科書著作者の好みに着 目し、1∼3年生用45冊の題材を調査した。 3)以下、Lesson の題名と教科書名を本文中に示す。 原文を引用するときは本文中のカッコ内にページ数 を示す。教科書のデータについては「参考文献」を 参照。 4)本人が書いた Soul Surfer (2004)が種本。わが国 でも2005年にソニー・マガジンズより翻訳版が刊行 され、2007年には副題を加え、『ソウル・サーファ ー――サメに片腕を奪われた13歳』として文庫化さ れている。
PROMINENCE: English II では“Me, Quit? Never”の題名で掲載されている。「ある日突然、 片腕を奪われながらも、大好きなサーフィンを決し てあきらめなかった13歳の少女ベサニー。生きるこ とに前向きな彼女の真実の物語。あなたはどのよう に受け止めますか」(47)と日本語で導入文がつく。 5)期待を込めてこう書いた。概して、英語の検定教科 書は自国についてあまりにも謙虚である。他国を褒 めて自国については沈黙している傾向がある。日本 国内では美徳かもしれないが、国際社会では通用し ない。世界に向けて英語でわが国の存在を誇示する ためにも、自己アピールが必要だろう。ちなみに、 PROMINENCE: English I では、わが国のまんが の歴史を扱った“Japan’s Goodwill Ambassadors to the World”の日本語タイトルを「世界に誇る日本 の文化」としている。
6)1996年に出版され60万部を売った柳田理科雄の『空 想科学読本』が思い浮かぶが、“Size and Shape” の方がずっと前に発表された。Stephen Jay Gould, Ever Since Darwin (1977)所収。教科書に掲載さ れている写真が『ミクロの決死圏』『縮みゆく人間』 など、現在の学生になじみのない古い映画なのはそ のためらしい。 7)小池真理子は『結婚アウトサイダーのすすめ』(『そ の結婚をする前に』東京白川書院、1981年を改題) でこう書いている。「近代に入って、言われるよう になった母性という言葉は、家父長制を維持するた めに、女に向けて強要されたもの、女をなだめすか た、都合のいい言葉にすぎないものだというのが、 私の考えです」(139)。典型的なフェミニズムの書 で、硬直した主張は時代がかっている。 同業者の藤田宜永と「結婚」したあとに夫婦で書 いた『夫婦公論』(初版は毎日新聞社、1995年)で は、過去のエッセーを「「つまんないことにこだわ っちゃって。若かったんだな」などと苦笑するのは しょっちゅう」(311)と明かし、「おしどり夫婦」 ぶりをアピールしている。しかし、子供を中心とす る普通の結婚生活を否定した根本思想は変わってい ない。「私は、あなたをものすごく愛しているけれ ど、子供は欲しくない」(34)と恋した男たちに言 いつづけてきた小池は、『夫婦公論』でも、「私はか つて一度も、子供が欲しいと思ったことがない」 (290)と繰り返し、「ツレアイ」の藤田に「私たち は子供を作る気はない」(102)と言わせている。子 供と母性と家を拒否したからこそ、個人の恋愛感情 を最優先できるのである。これを普遍化すれば、国 は滅ぶ。価値観の多様性は結構だが、偏向した思想 を真理のごとく語っている文章を教科書に載せるの は危険極まりないことだ。 8)TOEIC テストについては、拙論「TOEIC 信仰の落 とし穴」を参照。検定教科書の存在意義は擁護して いる。 参考文献
ELEMENT: English Reading, 大熊昭信ほか7名、啓 林館、平成19年2月8日検定済
Magic Hat: English Course READING, 高橋正夫・丹 治愛ほか7名、教育出版、平成19年2月8日検定済 MAINSTREAM II, 鈴木寿一ほか13名、増進堂、平成15
年2月10日検定済
NEW STAGE: English Reading, 谷岡朗・畠田豊文ほ か2名、池田書店、平成19年2月8日検定済
Planet Blue: Reading Navigator, 根岸雅史ほか4名、 旺文社、平成19年2月8日検定済
POLESTAR: Reading Course, 西光義弘ほか11名、数研 出版、平成19年2月8日検定済
PROMINENCE: English I, 田辺正美ほか8名、東京書 籍、平成18年3月9日検定済
PROMINENCE: English II, 田辺正美ほか8名、東京 書籍、平成19年3月15日検定済
PROMINENCE: English Reading, 上地安貞ほか9名、 東京書籍、平成19年2月8日検定済
PRO-VISION: ENGLISH READING, 塩澤利雄ほか7 名、桐原書店、平成19年2月8日検定済
Voyager: Reading Course, 沖原勝昭ほか10名、第一学 習社、平成19年2月8日検定済
群馬高専レビュー・№26(2007) 小池真理子『結婚アウトサイダーのすすめ』(角川文庫、 1983年) 小池真理子・藤田宜永『夫婦公論』(集英社文庫、2000 年) 拙論「文部科学省検定済英語教科書を読む――学生は何 を読まされているか」『高専教育』第29号(独立行政 法人国立高等専門学校機構、平成18年3月)195-200. ――「TOEIC信仰の落とし穴」『CHART NETWORK』 第50号(数研出版、平成18年9月)22-24. ベサニー・ハミルトン『ソウル・サーファー――サメに 片腕を奪われた13歳』(ヴィレッジブックス、2007年) 柳田理科雄『空想科学読本』(宝島社、1996年)
On New English Reading Textbooks Authorized in
2007 by the
Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology
Koichi YOKOYAMA
The main purpose of this paper is to survey new topics in 8 English Reading textbooks authorized in 2007 by the Ministry of Education in Japan. It cannot be denied that each textbook obtains its own character, but it is surprising that every textbook has very similar topics. Generally, it consists of the following 7 common kinds of themes: 1) world peace, 2) environmental problems, 3) physically challenged people, 4) foreign countries, 5) English, 6) science, 7) literature.
Probably because the nation experienced the sheer misery and was completely defeated in the Second World War, the government of Japan seems to expect the people, especially, the young students, to study and appreciate the value of world peace and human rights, both of which are believed to have been gained after the war. Japanese authors of the English textbooks, who are mostly university professors understanding the national policy, are also eager to realize the ideal world without war, poverty and any sort of discrimination.
Perhaps their attitudes are not wrong in the least; but are they really right in choosing topics for the students who want to learn English? Is there any possibility of the authorized textbooks preventing Japanese students of English from enjoying learning the foreign language at school? The students wanting to be able to use English do not always want to become such moral cosmopolitans as the Ministry of Education has expected them to be.
It is too rude to call the authorized English textbooks boring. On the contrary, some stories are really good. Despite the moral lessons, they are definitely worth reading. For example, Bethany Hamilton in “Soul Surfer,” or Christina Santhouse in “Life with Half a Brain” might move the students even to tears. “The Fall of Freddie the Leaf” will help the students think about their own life.
Yet the textbooks with one exception lack in laughter. The Ministry of Education as well as the textbook authors should change their too serious views on ideal English textbooks as soon as possible, and encourage the students to much more enjoy studying English with some good, humorous stories.