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都道府県データを用いた地域労働市場の分析―失業・無業の地域間格差に関する考察(PDF:809KB)

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目 次 Ⅰ 本稿の関心 Ⅱ 都道府県間失業率格差の分析 Ⅲ 無業率格差の考察 Ⅳ 要約と結論

本稿の関心

「バブル」 経済の崩壊から長きにわたる不況を 経て, 日本経済の現況は回復基調にある。 しかし ながら, 都道府県別にみた雇用失業情勢は決して 一様ではない。 総務省「国勢調査」によれば, 1980 年から 2000 年の 20 年間で, 例外なくすべての都 道府県の失業率が上昇したものの, その相対的な 水準 (順位) は安定的に推移しており, 雇用失業 情勢の地域間格差が構造的に存在することを示唆 している。 日本の地域間失業率格差の構造が硬直的である ことは, これまで多くの研究によって指摘されて いる。 例えば水野 (1992) は, 1970 年から 80 年 について, 都道府県別失業率の異時点間の相関が 極めて高いことを確認し, 失業の地域的パターン が安定的であると結論づけている。 こうした傾向 は近年でも看取される。 事実, 1990 年と 2000 年 の都道府県別失業率の相関係数は 0.9320 となっ て お り , 依 然 と し て 地 域 別 失 業 率 の 粘 着 性 (stickiness) が確認される1) こうした格差構造の硬直性をもたらす要因の一 つに, 労働移動を通じた市場の調整機能の弱さが 挙げられている (Montgomery (1993);太田・大 日 (1996))。 このうち, 1970 年代後半および 1980 年代後半のデータを用いて検討を行った太田・大 日 (1996) は, 失業率の地域間格差の拡大は地域 間労働移動を有意に高めるものの, シミュレーショ ンの結果, 一時的なショックによって生じた失業 率格差は, 少なくとも 10 年以上は解消されない としている。 また, 格差の持続性について労働需 要サイドからの説明を試みた外舘 (1999) は, 各 地域の産業大分類別にみた需要ショックの構造が 失業率を説明すること, さらに 1975 年から 95 年 本稿では, 国勢調査を用いて, 都道府県別の失業率ならびに無業率の静態的な格差を, 基 本的な手法によって検討した。 その結果, 第 1 に, みかけ上の地域間失業率格差は, 労働 需給属性を考慮した場合に大きく縮小するとともに, 最近 10 年間では格差の縮小が示さ れた。 しかし同時に, 近年の不況下では, 地域別の実質賃金コストの格差, ならびに需要 減退の地域差による失業率格差も確認された。 第 2 に, 人口属性を考慮した無業率の都道 府県間格差は, コントロールされた失業率格差との正の相関が強く, 失業率が高い (ある いは上昇した) 地域ほど, 求職意欲喪失効果が大きいことがわかった。 あわせて, こうし た求職意欲喪失効果は, 近年では若年層において 「その他」 の無業者を相対的に増加させ ており, 地域の労働市場状況の悪化が, 若年層のニート化要因の一つになっていることも 示された。 特集●地域雇用 論文(投稿)

都道府県データを用いた地域労働

市場の分析

失業・無業の地域間格差に関する考察

勇上

和史

(労働政策研究・研修機構研究員)

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の 20 年間において, その構造が各地域で固定的 であるために, 地域間失業率格差が持続的である ことなどを明らかにしている。 このように, 時系列的にみた格差が安定的であ るという事実は, 当然ながら, 一時点の静態的な 地域間格差が何に起因するのかという関心を惹起 する。 これまでいくつかの研究が, 静態的な格差 の要因を労働需給構造の地域差 (地域特性) に求 めており, 地域別の人口属性や産業構造と, 地域 別失業率との間に有意な相関を見いだしている (水野 (1992);OECD (2000);厚生労働省 (2003))。 ただし, これらの研究では, 各属性が実際の地域 間格差をどの程度説明するのかについて言及され ていない。 そこで本稿では, まず失業率について, 性, 年齢, 学歴といった労働供給属性および産業 別就業者構成比に代理される労働需要構造の影響 をより直接的に検討するとともに, それら属性の 影響を取り除いた (以下, コントロールという) 地 域間失業率格差の計測を試みる。 一方, 失業率を対象とした分析は, 労働市場で 活動的な労働力人口のみを考察することになる。 しかしながら, 非労働力人口についても, それが 景気に感応的であることが従来から指摘されてお り, また 1990 年代以降, 欧州で主張されている ように, すべての人口を就労に向かわせる (acti-vate) という政策的な観点からは, 無業者の動向 に焦点を当てるという動きも起こっている。 わが 国においても, 少子高齢化が顕著な地域にとって は, 若年無業者はもとより, 女性や高年齢者にお ける非労働力人口の有効活用が今後の地域経済の 活性化の鍵となるだろう。 そこで本稿では, 完全 失業者を含めた有効活用されていない (under-utilization) 労働力の指標として無業率を用い, 労働供給属性をコントロールした地域間格差を定 量的に把握する2) ここでは, 都道府県を単位とする失業率および 無業率に着目し, 時系列的な変化よりも, 各調査 時点における横断的な比較に力点を置く。 分析に 用いるのは 1990 年と 2000 年の 「国勢調査」 であ る。 もとより, 都道府県を地域単位とする静態的 な分析には一定の留保が必要である。 実際には大 都市を擁する都道府県などでは, 労働市場が必ず しも都道府県単位で区分される訳ではなく, 都府 県を超える通勤や, 転居・転勤といった住居の移 動をも考慮することが望ましい3)。 ただし, 地方 行政レベルの産業政策や雇用対策を視野に入れる ならば, その行政単位として都道府県に着目する 意味は小さくない。 以下, 本稿の構成を示す。 Ⅱでは, 労働力の需 給構造を考慮した場合の地域間失業率格差を定量 的に把握し, コントロール後の格差を産み出す地 域要因について検討する。 続くⅢでは, 無業率に ついて人口属性を考慮した地域間格差を計測し, それが地域間失業率格差といかなる関係を有する のか分析する。 最後に, Ⅳで本稿の分析結果をま とめ, 結果から示唆される政策的含意を述べる。

都道府県間失業率格差の分析

1 労働需給属性の影響 まず, 失業率の都道府県間格差の計測にあたっ て, 以下のような線形の失業率関数を推定する。   (1) ただし, は, 居住都道府県・性・年齢階層・ 学歴別の労働力状態より計算されるグループの 平均失業率を, はそのグループの労働需給属 性 (女性ダミー, 年齢階層ダミー, 学歴ダミー, 各 グループ内の産業大分類別就業者構成比) を, は 居住都道府県ダミーを示しており, は定数項, は誤差項である。 ここで用いた説明変数について付言すると次の 通りである。 年齢別の失業率は, 周知のように若 年者が最も高いものの, 30 歳代半ば以降 50 歳代 半ばまで低く, それ以降上昇するという傾向があ るため, 年齢階層を, ①15∼24 歳, ②25∼34 歳, ③35∼54 歳, ④55∼64 歳, ⑤65 歳以上の 5 区分 とするダミー変数を用いた。 学歴ダミーは, 国勢 調査の公表値に従い, 小学・中学卒, 高校・旧中 学卒, 短大・高専卒および大学・大学院卒の 4 区 分である。 また, 労働需要構造の地域差を示す指 標として, 同一の地域・性・年齢階層・学歴別グ ループの就業者に占める産業大分類別就業者構成

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比を導入している。 なお, 産業大分類でみた就業 者構成比については, 従来から製造業比率および サービス業比率が多く用いられている。 試みに, 1990 年と 2000 年について都道府県別・年齢別に 有効求人倍率と産業別就業者構成比との相関をみ ると, 製造業比率は, 両年を通じて有効求人倍率 と有意な順相関がみられる一方 (90 年は 0.516, 00 年は 0.323), サービス業比率については, 明確 な相関は認められない。 そこで, 産業別にみて離 職率が低く, かつ労働需給の迫度の弱さを示す 指標として製造業比率を, また産業別にみた離職 率が高く, 構造的・摩擦的なタイプの失業を発生 しやすい要因としてサービス業比率および卸売・ 小売業, 飲食店比率を用いる (ただし, 卸売・小 売業, 飲食店比率については有効求人倍率との順相 関が認められており, 失業率の引き上げあるいは引 き下げの純効果は先験的には不明である)4) 推計に用いたデータは, 都道府県別に性別, 年 齢階層別, 学歴別の失業率が計算できる 1990 年 と 2000 年の国勢調査である5)。 なお, 国勢調査の 公表統計では, 学校教育在学者についてその学歴 区分と労働力状態が明示されていないため, サン プルを学校教育卒業者に限定する6) (1)式の失業率関数を最小 2 乗法で推定するこ とにより, 都道府県ダミーの推定係数のばらつき が, 都道府県間失業率格差の大きさとみなせる。 ここでは, すべての説明変数を用いた場合 (Full-Control) の地域間格差に加え, いずれか一つの説 明変数を落とした場合と, 都道府県ダミーのみを 用いた推定結果から得られる格差 (No-Control) を比較する。 なお, 都道府県ダミーの推定係数の ばらつきの指標には, 各都道府県の労働力人口ウェ イ ト を 考 慮 し た 標 準 偏 差 (Weight Adjusted Standard Deviation: WASD) を用いた7)。 計算の

結果は表 1 に示されている。 グループ別の失業率について, まず労働需給属 性を考慮しない都道府県間格差 (No-Control) の ばらつきをみると, 1990 年の 9.322 から 2000 年 の 12.905 まで拡大する傾向にある。 しかし, 労 働需給属性をコントロールした場合の格差のばら つきは, 1990 年では 1.830, 2000 年は 0.571 と なっており, 両年ともに推定された地域間格差は 大きく縮小する (標準偏差の減少率は 90 年が 80.4 %, 00 年が 95.6%)。 とりわけ, 2000 年では属性 のコントロールによる地域間格差の縮小が大きく, Full-Control の結果からは, 10 年間で地域間格差 が縮小したことが示されている。 あわせて表 1 から, どの変数が地域間格差のば らつきを調整するのかがわかる。 1990 年では, Full-Control から産業別就業者構成比を除いた場 合の標準偏差の増大が最も大きく, 以下, 学歴ダ ミー, 性ダミー, 年齢ダミーの順になっている。 2000 年についても産業構造変数の影響が最大だ が, 次いで性, 学歴, 年齢となっており, 計測さ れる地域間格差の縮小に及ぼす学歴属性の影響が 低下している。 これは, 特に大学・大学院卒といっ た高学歴層の失業率の高まりによる学歴間失業率 格差の縮小を反映したものと思われる。 2 コントロールされた格差の水準 表 1 の結果は, みかけ上観察される都道府県間 失業率格差の多くが, 労働需給構造の地域差によっ ていることを示している。 また, 地域別の産業構 造を考慮した場合に, 格差が大きく縮小すること も注目される。 そこで以下では, 性, 年齢, 学歴 をコントロールした場合 (推定 1) と, さらに産 業別就業者構成比を説明変数に追加した場合 (推 定 2) の地域間失業率格差の水準を検討する。 ま た, 推定 1 および 2 については (失業率の最も低 い長野県をベースとして) 推定された地域ダミー の係数を正規化するため, 各都道府県の労働力人 口でウェイトづけした平均値との差分を, 地域間 失業率格差として計算した8)。 計算結果は, 表 2 に掲げられている。 まず, 労働供給属性を考慮した格差 (推定 1) 表 1 失業率の都道府県間格差 (WASD) 除いた変数 1990 年 2000 年 Full-Control 年齢 性 学歴 産業 1.830 1.711 6.079 7.024 9.344 0.571 3.776 9.343 9.022 12.940 No-Control 9.322 12.905

注:WASD (Weight Adjusted Standard Deviation) につい て, 詳細は本文および文末注 7) を参照。

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表2 都道府県間の失業率格差 1990 年 2000 年 10 年間の変化 実際の 格差 推定 1 推定 2 実際の格差 推定 1 推定 2 実際の格差 推定 2 北海道 0.62 0.47 −1.06 0.05 0.08 −1.42 −0.57 −0.36 青森県 1.46 1.11 0.29 0.66 0.56 −0.19 −0.80 −0.48 岩手県 −0.39 −0.56 −0.37 −0.74 −0.78 −0.59 −0.35 −0.21 宮城県 −0.28 −0.31 −0.81 0.18 0.17 −0.67 0.46 0.15 秋田県 −0.30 −0.12 −0.22 −0.46 −0.33 −0.61 −0.15 −0.39 山形県 −1.28 −1.20 −0.41 −1.43 −1.41 −0.33 −0.15 0.08 福島県 −0.60 −0.68 0.08 −0.48 −0.56 0.35 0.12 0.27 埼玉県 −0.34 −0.12 0.67 −0.01 0.10 0.69 0.33 0.02 千葉県 −0.35 −0.13 −0.12 −0.02 0.15 −0.45 0.33 −0.33 東京都 0.10 0.25 −0.68 0.14 0.31 −1.13 0.04 −0.46 神奈川県 −0.03 0.32 0.33 0.11 0.33 −0.24 0.14 −0.57 茨城県 −0.64 −0.71 0.27 −0.51 −0.57 0.62 0.13 0.35 栃木県 −0.76 −0.95 0.24 −0.64 −0.78 0.60 0.11 0.36 群馬県 −0.56 −0.76 0.36 −0.64 −0.85 0.70 −0.08 0.35 山梨県 −0.60 −0.65 0.80 −0.97 −0.98 0.64 −0.36 −0.16 長野県 −1.29 −1.39 0.28 −1.67 −1.93 0.11 −0.38 −0.17 新潟県 −1.00 −1.13 −1.08 −0.91 −1.03 −0.77 0.09 0.31 富山県 −1.03 −1.03 −0.36 −1.32 −1.64 −0.36 −0.29 0.00 石川県 −0.76 −0.94 −1.06 −1.10 −1.22 −0.91 −0.34 0.15 福井県 −1.13 −1.34 −0.21 −1.69 −2.05 −0.61 −0.56 −0.40 岐阜県 −0.98 −1.25 −0.27 −1.03 −1.37 0.22 −0.05 0.49 静岡県 −0.66 −0.89 0.09 −0.97 −1.28 0.38 −0.31 0.29 愛知県 −0.55 −0.69 0.07 −0.70 −0.90 0.39 −0.15 0.32 三重県 −0.42 −0.76 −0.07 −0.89 −1.17 0.02 −0.47 0.08 滋賀県 −0.86 −0.88 0.53 −1.08 −1.14 1.06 −0.22 0.53 京都府 −0.15 −0.11 −0.27 0.22 0.37 0.29 0.37 0.56 大阪府 1.24 1.27 0.88 2.34 2.29 1.93 1.11 1.05 兵庫県 0.33 0.37 0.33 0.65 0.75 0.95 0.32 0.62 奈良県 −0.15 0.17 0.27 0.23 0.71 1.02 0.38 0.75 和歌山県 0.41 −0.06 −0.22 0.20 0.03 −0.07 −0.21 0.15 鳥取県 −0.54 −0.51 0.15 −1.19 −1.57 −0.83 −0.65 −0.98 島根県 −1.07 −1.31 −1.18 −1.81 −2.22 −2.13 −0.74 −0.95 岡山県 −0.08 −0.08 0.63 −0.40 −0.41 0.43 −0.32 −0.20 広島県 −0.46 −0.51 −0.25 −0.46 −0.47 −0.27 0.00 −0.02 山口県 −0.18 −0.28 −0.26 −0.69 −0.78 −0.69 −0.52 −0.43 徳島県 0.87 0.82 1.21 0.15 0.16 0.80 −0.72 −0.41 香川県 0.09 0.15 0.18 −0.02 −0.07 0.20 −0.10 0.02 愛媛県 0.64 0.50 0.86 0.25 0.22 0.61 −0.39 −0.25 高知県 1.74 1.26 0.12 0.57 0.31 −0.91 −1.17 −1.03 福岡県 1.48 1.66 0.42 1.17 1.36 −0.05 −0.31 −0.47 佐賀県 −0.26 −0.40 −0.59 −0.32 −0.26 −0.49 −0.07 0.10 長崎県 0.48 0.23 −1.04 0.10 0.14 −1.23 −0.38 −0.19 熊本県 0.17 0.19 −0.30 −0.32 −0.13 −0.69 −0.49 −0.40 大分県 0.32 0.43 −0.02 −0.30 −0.23 −0.63 −0.62 −0.61 宮崎県 0.36 0.23 −0.29 0.24 0.28 −0.45 −0.12 −0.16 鹿児島県 0.37 0.50 −0.03 0.16 0.22 −0.58 −0.21 −0.55 沖縄県 4.73 4.04 1.58 4.71 4.12 1.43 −0.02 −0.15 注:格差は, 労働力人口でウェイトづけされた全国平均との差を示す (単位は%ポイント)。 実際の格差は, 学校教育在学者を除く都道府県別失業率の全国平均との差である。 なお, 推定1では, 性, 年齢, 学歴ダミーをコントロール。 推定2は, 推定1に加え, 産業別就業者構 成比をコントロールした結果による。

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についてみると, 若年者や低学歴者など, 失業率 が高い層が相対的に多い地方圏ほど, 実際の格差 に比べ, コントロール後の失業率格差が小さくな る。 例えば, 1990 年における青森県の実際の失 業率は, 全国平均に比べ 1.46%ポイント高いが, 性, 年齢, 学歴要因による (ネットの) 失業率引 き上げ効果をコントロールすると, 格差は 0.3% ポイント程度縮小する。 これに対して, 東京都や 大阪府, 福岡県とそれぞれの周辺地域では, 若年 層が多い一方, 失業率を引き下げる高学歴層も多 いため, 結果としてコントロール後の格差は大き くなる。 東京都 (1990 年) の場合, 実際の格差 (0.10%ポイント) に対して, コントロール後の格 差は 0.25%ポイントまで拡大する。 しかし, 両年を通じた愛知県の結果, ならびに 2000 年の大阪府の推定結果はやや異なっており, 年齢 (若年) 要因による失業率引き上げ効果が, 学歴要因による引き下げ効果を上回っている。 推定 1 によるコントロールの結果では, 依然, 全国平均との差が 1%ポイント以上に及ぶ地域が 数多くみられる。 推定 2 では, さらに製造業比率 による失業率引き下げ効果と, 第 3 次産業比率 (卸売・小売業, 飲食店比率, およびサービス業比率) による引き上げ効果をコントロールした場合の失 業率格差を示している。 その結果によると, 相対 的に製造業従事者が多く第 3 次産業従事者が少な い地域において, コントロール後の失業率が上昇 する。 例えば, 労働需要が堅調な愛知県 (2000 年) の結果をみると, 産業構造をコントロールした後 の平均失業率との格差が 0.39%ポイントに対し て, コントロール前のそれは−0.90%ポイントで あり, その差の 1.29%ポイントが製造業への傾 斜による失業率引き下げ分と考えられる。 こうし た傾向は, 北関東・甲信および東海地方で顕著で あり, その他, 東北地方では山形県や福島県に, 西日本では滋賀県と, (島根県・山口県を除く) 中 国地方, および (高知県を除く) 四国地方にみら れる。 これに対して, 卸売・小売業・飲食店やサービ ス業といった第 3 次産業への傾斜が強い地域では, 産業構造による失業率の引き上げ効果があり, 結 果としてコントロール後の格差が低下する。 とり わけ, 製造業の就業者比率が全国で最も低く, サー ビス業比率が最も高い沖縄県でその傾向が顕著で あり, 第 3 次産業への相対的な傾斜をコントロー ルすることにより, 全国との格差は半分以下に縮 小する。 こうした地域として, 北海道や宮城県, 東京都, 京都府, 大阪府, 福岡県といった周辺地 域の中核をなす大都市圏を擁する都道府県が挙げ られるものの, その他に, 青森県や高知県そして 九州地方のすべての県についても, 産業構造によ る失業率の引き上げ効果が確認される。 第 3 次産 業への傾斜は, 分析の定義上, 平均的な離職率の 高さに起因する構造的・摩擦的なタイプの失業を 発生させていると考えられ, こうした地域につい ては, とりわけ職業紹介などを通じたマッチング 機能の強化が, 地域の失業率引き下げ策の一つと して重要になると思われる。 3 その他の地域特性との相関 以上では, 労働需給構造をコントロールした場 合に地域間格差が大きく縮小する点を考察した。 しかし, 労働力属性に主に着目し, 地域属性につ いては地域ダミーのみを考慮した本稿のアプロー チでは, 地域要因の詳細について検討されていな い。 また, 表 2 に示したように, 1990 年から 2000 年にかけてコントロール後の格差が拡大し た地域もあり, その要因についても検討する必要 がある。 そこで, コントロールされた地域間格差 について, いまだ考慮されていない様々な地域属 性との相関を考察する。 地域経済指標としては, ①直近 5 年間の (1 人あたり) 実質県内総生産の 伸び率 (対数階差) と (1 人あたり) 実質国内総生 産のそれとの差 (%ポイント), ②同じく直近 5 年 間の鉱工業生産指数の伸び率の全国平均との差 (%ポイント), ③前年の 10 月に改定された地域別 の 「実質」 最低賃金の全国平均との格差 (対数階 差)9), ④県内総人口に対する同年 1 年間の転入超 過率 (%。 県別人口でウェイトづけ), ⑤各県の産 業大分類別就業者構成比の全国構成比との比 (特 化係数) そして, ⑥全国平均と比べた産業構造の 特化度を示す指標である Hirshman-Herfindhl 指 数, を検討する10) 紙幅の制約もあり, ここでは, コントロール後

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の地域間格差と 5%水準で統計的に有意な相関が 認められた地域変数についてのみ結果を紹介する。 まず, 1 人あたり実質 GDP の伸び率の格差は, 不況期の 2000 年について, 失業率格差と有意な 逆相関が認められる。 この点を図 1(a)に示した 散布図から確認すると, 1995 年から 2000 年まで の低成長下で, 全国平均を上回る成長を示し, コ ントロール後の失業率が全国平均を下回っている 地域として, 長野県(20), 大分県(44), 岩手県(3), 島根県(32), 山形県(6), 熊本県(43), 鹿児島県 (46)などが, 逆に, マイナス成長もしくは成長率 が全国平均を下回り, 失業率も高い地域として兵 庫県(28), 岡山県(33), 千葉県(12), 茨城県(8), 神奈川県(14)などが挙げられる。 実質の地域別最低賃金 (あるいは平均賃金) 格 差もまた, 2000 年のみ有意に正の相関がみられ る。 図 1(b)から, 最低賃金ならびに失業率が全 国平均を上回っている地域として, 大阪府(27), 愛知県(23), 岐阜県(21)などが, 最低賃金は全国 平均に近いものの失業率が高い地域として滋賀県 (25)や兵庫県(28), 茨城県(8), 千葉県(12), 静岡 県(22)などがあり, 近畿圏にやや多くなっている。 対して, コントロール後の失業率が全国に比べて 最も低い島根県(32)は, 長崎県(42)や高知県(39) などと並び, 地域別最低賃金が最も低いグループ に属している。 ただし, 最低賃金は大都市を擁す る地域で高い傾向にあるものの, これらの地域で は県外からの通勤により, みかけ上の失業率が高 い可能性もある。 そこで 2000 年について, 従業 地ベースのデータから性・年齢・産業構造をコン トロールした地域間失業率格差を別途計算し, 地 域別実質最低賃金格差との関係をみると, 相関係 27 28 12 25 10 3 47 22 7 32 20 −.1 −.0.5 0 .0.5 1人あたり実質GDP伸び率格差(%ポイント) 図1 コントロール後の地域間格差(2000年)と地域経済指標の関係 相関係数=−0.3600 都道府県番号 北 海 道 青 森 県 岩 手 県 宮 城 県 秋 田 県 山 形 県 福 島 県 茨 城 県 栃 木 県 群 馬 県 埼 玉 県 千 葉 県 東 京 都 神 奈 川 県 新 潟 県 富 山 県 石 川 県 福 井 県 山 梨 県 長 野 県 岐 阜 県 静 岡 県 愛 知 県 三 重 県 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 滋 賀 県 京 都 府 大 阪 府 兵 庫 県 奈 良 県 和 歌 山 県 鳥 取 県 島 根 県 岡 山 県 広 島 県 山 口 県 徳 島 県 香 川 県 愛 媛 県 高 知 県 福 岡 県 佐 賀 県 長 崎 県 熊 本 県 大 分 県 宮 崎 県 鹿 児 島 県 沖 縄 県 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 33 38 44 20 34 42 1 4030 14 8 263716 36 15 21 23 13 24 6 11 2 9 41 18 455 46 43 17 19 39 31 354 a.経済成長率の格差(1995年∼2000年) 27 28 3 47 32 −.1 −.0.5 0 .0.5 実質地域別最低賃金格差(%ポイント) 1 6 b.地域別実質最低賃金の格差(全国平均との差) 42 7 37 1336 29 38 1415 25 28 8 12 22 23 33 26 16 40 30 34 18 2 4 39 3143 41 44 46 5 45 17 19 2035 9 11 10 24 21 相関係数=0.4383 失 業 率 格 差 ︵ % ポ イ ン ト ︶ 失 業 率 格 差 ︵ % ポ イ ン ト ︶ −2 −1 0 1 2 −2 −1 0 1 2

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数は 0.5181 へと上昇した11)。 従業地データの制 約により, 学歴要因がコントロールされていない ものの, 通勤圏を考慮してもなお, コントロール された格差と実質賃金格差との間には正の相関が 示されている。 その他, 産業別の特化係数については, 第 3 次 産業への特化が強い (第 1 次産業への特化が弱い) 地域ほど, 全国平均に比べた失業率が高く, 特に 2000 年にその傾向が顕著であった。 しかしなが ら, 当該 1 年間の転入超過率, および当該地域の 産業構造の相対的な特化傾向を示す Hirshman-Herfindhl 指数については, 両年ともに地域間失 業率格差との相関係数は有意ではなかった。 最後に, 1990 年から 2000 年の 「コントロール 後」 の地域間失業率格差の変化について, その拡 大 (あるいは縮小) 要因を考察する。 ここでは, 地域間失業率格差 (推定 2) の 10 年間の変化 (差 分) について, 以下の地域経済指標の変化との相 関を検討した。 ①1990 年から 2000 年の (1 人あ たり) 実質県内総生産の伸び率 (対数階差) と (1 人あたり) 国内総生産のそれとの差 (%ポイント), ②1989 年から 1999 年の実質地域別最低賃金の伸 び率 (対数階差) と全国平均のそれとの差(%ポイ ント), ③同じく 10 年間の総人口の伸び率 (対数 階差) と全国平均のそれとの差 (90 年人口でウェ イトづけ, %ポイント), ④産業大分類別特化係数 の 2000 年と 1990 年の比 (1 以上だとより当該産業 への特化傾向が強まったことを示す), そして⑤10 年 間 に お け る Hirshman-Herfindhl 指 数 の 変 化 (差分)。 同じく 5%水準で有意な相関が認められた変数 について検討すると, まず, 1990 年代を通じた 経済成長率の格差とコントロール後の地域間失業 率格差は有意に逆相関の関係にある (相関係数は −0.3534)。 図 2 に示す通り, 大都市部とその近 郊県で, 経済成長率が低く, 失業率が上昇してお り, とりわけ, 兵庫県(28)や京都府(26), 大阪府 (27)などの近畿圏では, 10 年間の地域経済の相 対的な落ち込みが激しく, コントロール後の失業 率格差が最も拡大している。 その他, 建設業ならびに運輸・通信業への特化 傾向について, 失業率格差の変化と有意な相関が 認められる (相関係数は順に−0.3022, 0.4245)。 建設業については, 10 年間で東北や北陸, 山陰, 四国, 九州地方で特化傾向が強まっており, 不況 期に拡大した公共事業が, 地方圏においてコント ロール後の失業率格差を縮小させたものとみられ る。 対して, 首都圏や大阪府などの大都市圏では, 建設業就業者の相対的減少と運輸・通信業への特 化傾向が同時に進んでいる。 この二つの特化係数 の変化は有意に逆相関の関係にあることから, 首 都圏や大阪府でコントロール後の格差が目立って 拡大した要因には, (推論の域を出ないが) 建設業 の減少と運輸・通信業への傾斜に際して, 摩擦的 な失業が発生している可能性もある。 その他の地域経済指標については, 失業率格差 27 28 13 14 1223 26 25 21 19 8 34 33 10 40 11 17 40 3 37 47 38 9 35 31 1612 15 43 36 22 24 18 6 7 41 45 15 2 46 32 44 39 20 3 −.15 −.1 −.0.5 1.39e-17 .0.5 .1 1人あたり実質GDP伸び率格差(%ポイント) 北 海 道 青 森 県 岩 手 県 宮 城 県 秋 田 県 山 形 県 福 島 県 茨 城 県 栃 木 県 群 馬 県 埼 玉 県 千 葉 県 東 京 都 神 奈 川 県 新 潟 県 富 山 県 石 川 県 福 井 県 山 梨 県 長 野 県 岐 阜 県 静 岡 県 愛 知 県 三 重 県 滋 賀 県 京 都 府 大 阪 府 兵 庫 県 奈 良 県 和 歌 山 県 鳥 取 県 島 根 県 岡 山 県 広 島 県 山 口 県 徳 島 県 香 川 県 愛 媛 県 高 知 県 福 岡 県 佐 賀 県 長 崎 県 熊 本 県 大 分 県 宮 崎 県 鹿 児 島 県 沖 縄 県 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 図2 コントロール後の失業率格差の変化と1人あたり実質GDP伸び率格差(1990∼2000年) 注:奈良県(29)のGDP伸び率は全国平均との乖離が大きいため(−2.315),省略している。 相関係数=−0.3534 都道府県番号 −2 −1 0 1 2 失 業 率 格 差 ︵ % ポ イ ン ト ︶

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の変化との間に有意な相関は認められない。 また, 実 質 最 低 賃 金 の 伸 び 率 格 差 と の 相 関 係 数 (−0.3242) の符号は負で有意であり, 90 年代を 通じた地域別最低賃金の上昇が失業率の地域間格 差を拡大したとは言えない。 コントロール後の失 業率が上昇した近畿圏では, むしろ 10 年間の実 質最低賃金の伸び率は全国平均より小さくなって いることから, 地域の失業率の上昇に比して賃金 調整が弱かったために, 先に見たような 2000 年 における有意な順相関が現れたものとも解釈でき る。 以上から, 前節で推定したコントロール後の地 域間失業率格差は, 好況期については概ね地域特 性が考慮されているとみられるものの, 近年では, 地域間の実質賃金コストの格差ならびに低成長下 における需要減退の地域差による地域間格差の拡 大も示されている。

無業率格差の考察

1 人口属性を考慮した無業率格差 以下では, 前節の失業率関数と同様の手法を用 いて, 都道府県別・性別・年齢別・学歴別の無業 率 (対 15 歳以上人口比率) について, 属性を考慮 した地域間格差を計測する。 ただし失業率とは異 なり, 地域の需要構造が無業率に与える影響につ いては明示的な関係が不確定であるため, ここで は, 性, 年齢, 学歴といった人口属性のみをコン トロールした地域間格差を検討する。 なお, ここ でも国勢調査の公表統計の制約により, 学校教育 在学者についてその学歴区分と労働力状態が明示 されていないため, サンプルを学校教育卒業者に 限定する。 そのため一般的な無業率とは異なり, 学生が多い 15-24 歳層が最も無業率が低くなる点 に注意を要する12) 表 3 は, 前節と同様の手法を用いて, 都道府県 別無業率の格差のばらつきをみたものである。 た だし, コントロール前 (No-Control) については, 統計的に有意な地域間格差は検出されなかった。 また, いずれの人口属性変数も, コントロールに よって地域間格差を増大させることがわかる。 推 定結果では, 特に地方圏ほど, 人口属性をコント ロールすることによる無業率の低下が大きく (大 都市圏は逆), 地域間格差のばらつきが大きくな ることが明らかになっている。 加えて, 人口属性 をすべてコントロールした地域間格差は, 前節で 検討した産業構造をコントロールしない失業率格 差と同様に, 10 年間で拡大傾向にあることなど が示されている。 コントロール後の無業率の地域間格差の水準に ついては, 前節と同様に, (長野県をベースとした) 地域ダミーの推定係数を正規化するため, 15 歳 以上人口でウェイトづけした平均値との差分が計 算できる。 その結果は, 表 4 に示されている。 学生を除いた無業率は, 若年層ほど, あるいは 高学歴層ほど低くなるため, こうした人口ウェイ トの高い都市部ほど, コントロール後の無業率が 高くなる。 例えば, 東京都の場合には両年ともに 人口属性をコントロールすることで 1.5∼1.9% ポイント, 大阪府でも 1.7∼1.9%ポイント程度, 無業率が上昇する。 また, 若年層の多い沖縄県で は, 格差が 2.6∼4.9%ポイントも上昇するなど, 人口属性による影響が顕著に現れている。 対して, 高齢層や相対的に低学歴層が多い地方圏ではコン トロール後の格差が低下する。 とりわけ, 全国平 均に比して実際の無業率が小さい北関東・甲信, 北陸などの地域では全国からの乖離がより大きく なるとともに, 実際の無業率が高い中国・四国地 方についても, コントロール後の格差では全国平 均を下回る地域が多くなっている。 このように, 人口属性を考慮した場合, みかけ 上の無業率は大きく変化するものの, コントロー ル後の格差のばらつきは大きい。 また表 4 に示す ように, 1990 年から 2000 年の 10 年間の変化に 表3 無業率の都道府県間格差 (WASD) 除いた変数 1990 年 2000 年 Full-Control 年齢 性 学歴 37.366 37.101 37.242 37.353 40.070 39.814 39.994 40.053 No-Control (37.481) (40.181) 注:No-Control の WASD は, 地域ダミーの係数が全て0であ るという帰無仮説を1%水準で棄却できなかったため, 参 考値

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表4 都道府県間の無業率格差 1990 年 2000 年 10 年間の変化 実際の 格差 推定値 実際の格差 推定値 実際の格差 推定値 北海道 3.23 1.63 2.82 1.28 −0.41 −0.35 青森県 0.67 −0.46 0.14 −0.97 −0.54 −0.51 岩手県 −2.02 −3.36 −1.09 −3.28 0.93 0.08 宮城県 0.58 0.17 0.46 0.61 −0.12 0.44 秋田県 2.20 −0.56 3.09 −0.87 0.89 −0.31 山形県 −0.61 −3.67 −0.23 −4.03 0.37 −0.36 福島県 −0.92 −2.31 −0.09 −1.74 0.83 0.57 埼玉県 −2.19 0.98 −2.32 0.84 −0.13 −0.14 千葉県 −0.95 1.56 −1.12 1.54 −0.17 −0.01 東京都 −2.95 −1.49 −2.82 −0.94 0.13 0.55 神奈川県 −0.80 2.36 −0.55 2.42 0.25 0.06 茨城県 −0.85 −0.38 −0.78 0.05 0.07 0.43 栃木県 −2.30 −2.24 −2.07 −1.85 0.23 0.38 群馬県 −1.51 −2.27 −1.04 −2.20 0.46 0.06 山梨県 −1.36 −3.26 −1.80 −3.72 −0.44 −0.46 長野県 −3.66 −5.65 −3.18 −6.04 0.48 −0.39 新潟県 −0.75 −3.00 −0.10 −2.75 0.65 0.25 富山県 −2.03 −4.06 −1.64 −4.69 0.39 −0.63 石川県 −2.78 −3.89 −2.23 −4.03 0.56 −0.14 福井県 −3.80 −5.85 −2.89 −6.24 0.91 −0.38 岐阜県 −2.25 −3.53 −1.31 −3.37 0.94 0.17 静岡県 −3.76 −3.18 −3.16 −3.59 0.60 −0.41 愛知県 −3.35 −1.77 −2.87 −1.73 0.48 0.04 三重県 0.88 −0.72 0.86 −1.41 −0.01 −0.69 滋賀県 0.13 −0.16 −0.84 −0.57 −0.97 −0.41 京都府 0.33 −0.73 −0.20 −0.28 −0.53 0.45 大阪府 0.84 2.54 1.54 3.42 0.69 0.89 兵庫県 3.12 2.88 2.84 2.95 −0.28 0.07 奈良県 5.66 4.63 4.93 4.88 −0.73 0.25 和歌山県 4.98 1.30 4.70 1.09 −0.28 −0.21 鳥取県 −2.36 −4.03 −1.71 −4.74 0.65 −0.71 島根県 0.15 −3.68 0.65 −4.88 0.50 −1.20 岡山県 1.09 −0.65 1.53 −0.64 0.44 0.01 広島県 0.66 −0.57 0.68 −0.66 0.01 −0.09 山口県 3.09 −0.21 3.20 −0.57 0.11 −0.36 徳島県 2.72 0.58 2.68 −0.45 −0.04 −1.03 香川県 1.29 −0.26 1.17 −0.58 −0.12 −0.32 愛媛県 3.68 1.61 4.11 1.15 0.43 −0.46 高知県 2.50 −0.69 2.50 −1.58 0.00 −0.89 福岡県 4.35 3.82 2.36 2.65 −1.99 −1.17 佐賀県 1.27 −1.22 0.32 −1.80 −0.95 −0.58 長崎県 5.45 1.97 4.46 1.50 −0.99 −0.48 熊本県 3.39 0.80 2.44 −0.08 −0.95 −0.88 大分県 4.27 1.61 3.52 0.36 −0.75 −1.25 宮崎県 1.60 0.27 1.40 −0.42 −0.21 −0.69 鹿児島県 5.23 1.73 4.38 0.94 −0.86 −0.80 沖縄県 1.22 3.82 0.89 5.76 −0.33 1.94 注:格差は, 15 歳以上人口でウェイトづけされた全国平均との差を示す (単位は%ポ イント)。 実際の格差は, 学校教育在学者を除く都道府県別無業率の全国平均との差である。 なお, 推定式には定数項, 性, 年齢, 学歴ダミーを含む。

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ついては, 実際の無業率ならびにコントロール後 の無業率ともに, 九州地方や近畿圏などを除いた 過半数の県で, 格差の拡大傾向が認められる。 2 無業率格差と需要要因 2 時点におけるコントロール後の地域間格差, あるいはその 10 年間における変化の要因の一つ には, 当然ながら地域の労働市場状況の差異があ るだろう。 そこで最後に, 前節で推定したコント ロール後の都道府県別失業率格差との関係を検討 する。 いま, 性・年齢・学歴に加え, 産業構造をコン トロールした上で得られる地域間失業率格差 (推 定 2) と, 人口属性を考慮した無業率格差との相 関 係 数 は , 1990 年 で は 0 . 3840 , 2000 年 で は 0.4821 であり, 両年ともに有意な順相関が確認 できるとともに, 2000 年においてよりその傾向 が強まっている。 また 10 年間の変化についても, コントロール後の失業率の変化と無業率のそれと の相関係数は 0.5442 となっている。 したがって, 失業率が高い, あるいは上昇した地域ほど, 労働 市場での求職活動を諦める傾向が強いこと (以下, 求職意欲喪失効果と呼ぶ) が確認できるとともに, 2000 年においてその傾向がより強まっているこ とがわかる13) ところで, ここで検討されている無業率に学生 が除かれていることを勘案すれば, こうした求職 意欲喪失効果は, 定義上, 「家事」 あるいは 「そ の他」 の無業者を増加させることを意味している。 とりわけ後者は, 社会参加をしない深刻な無業者 として捉えられており, 近年, その増加傾向が指 摘されている (厚生労働省 (2004))。 また, 小杉 (2004) は, 15∼34 歳の 「その他」 無業者を日本 型ニート (NEET: Not in Education, Employment or Training) と定義し, 各地域における若年失業 率と人口に占めるニート比率との間に正の相関関 係を見いだしている。 そこで, 小杉 (2004) の定 義を踏襲し, 1990 年と 2000 年について, 都道府 県別に①15∼34 歳, ②35∼54 歳, ③55 歳以上の 各年齢層の無業者に占める 「その他」 無業者 (以 下, ニートと呼ぶ) 比率を計算し, 各時点におけ るコントロール後の失業率格差 (推定 2) との関 係を考察する14)。 その結果は表 5 に示されている。 表 5(a)より, 1990 年では, コントロール後の 失業率格差と各年齢層の無業者におけるニート率 との間には有意な相関は認められない。 先にみた ように, 無業率そのものは失業率と正の相関を有 しているため, 90 年については, 求職意欲喪失 効果は, 「学生・家事」 と 「その他」 に偏りなく 無業化に結びついたと言える。 ところが, 2000 年では(b), 15-34 歳層と 35 歳以上層で異なった 無業化の動きがみられる。 35-54 歳層あるいは 55 歳以上層では, 地域の失業情勢は 「家事・学生」 のウェイトの上昇に結びついているのに対して, 15-34 歳については高失業地域におけるニート化 を示している。 また, (c)の 10 年間の変化につい ても同様に, コントロール後の地域間失業率格差 が上昇した地域ほど, 若年層のニート化が進行し たことがわかる。 もとより, 若年層におけるニート率上昇の背景 には, 失業情勢の悪化だけなく学校教育の変化 (中退の増加や高校による就職支援の変化) や世帯行 動の変化 (親による援助) といった供給サイドの 要因もあるだろう。 しかしながら, 近年では, 高 失業地域ほど無業率が高く, そのうち若年層ほど ニート率が高い (35 歳以上では逆に 「家事・学生」 率が高い) という結果は15), 若年の失業・無業を 考える際に無視しえない要因であろう。

要約と結論

本稿では, 都道府県別の失業率ならびに無業率 について, 性別や年齢といった人口属性, 学歴や 産業構造といった労働需給に係わる属性をコント ロールした地域間格差を計測するとともに, その 格差を産み出す要因を基本的な手法によって検討 した。 その結果は次のように要約される。 ①失業率について, 労働需給属性を考慮しないみ かけ上の都道府県間格差は, 1990 年から 2000 年にかけて拡大する傾向にある。 しかし, 属性 をコントロールした地域間格差は両年ともに大 きく縮小するとともに, 10 年間で地域間格差 が縮小したことが示されている。 とりわけ, 地 域別の産業構造の違いが, 都道府県間格差のば

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らつきの多くを説明する。 ②コントロール後の地域別失業率格差は, 好況期 については概ね地域特性が考慮されているとみ られるものの, 近年の不況下では, 地域別の実 質賃金コストの格差, ならびに需要減退の地域 差による失業率の格差拡大も示唆されている。 ③人口属性を考慮した無業率の都道府県間格差は, コントロールされた失業率格差との正の相関が 強く, 失業率が高い, あるいは 10 年間で上昇 した地域ほど, 求職意欲喪失効果が大きいこと が確認される。 ④求職意欲喪失効果は, 好況期の 1990 年では 「学生」 や 「家事」 「その他」 といったカテゴリー にかかわらない全般的な無業化に結びついてい た の に 対 し て , 2000 年 で は 若 年 層 に つ い て 「その他」 の無業者を相対的に増加させている (35∼54 歳は 「学生・家事」 比率が増加)。 また, 10 年間でコントロール後の失業率が上昇した 地域ほどそうした傾向が強まっているなど, 労 働市場状況の悪化が地域における若年層のニー ト化の要因の一つになっているものと考えられ る。 労働需給属性を考慮した地域間の失業率格差が 大きく縮小するという本稿の分析結果は, 地域の 失業問題が, まずもって労働力や産業の地域的な 偏在という 「地域特性」 に起因することを改めて 示しており, 地域雇用問題の解消にあたって, 各 地域の実情に即した雇用対策が必要とされている ことを意味している。 現在, 地方分権化の流れの 中で, 都道府県や市区町村といった地方政府によ る地域産業・雇用政策が進められており, 今後は 各施策の有効性について個別の事例に即した検証 が必要とされている。 一方, 本稿の結果から, 実質賃金コストや地域 経済の落ち込みが一部の地域の失業率を押し上げ ていることも示された。 とりわけ地域経済の落ち 込みの激しい近畿圏については, 産業構造の転換 の促進などにおいて, 中央政府との連携を通じた 総合的な対策が必要であろう。 また, 地域別の実 質最低賃金についても, (それがどの程度地域の労 働市場に影響力を持つかを検証したうえで), 中央政 府による地域労働市場政策の一手段として検討す 表5 失業率格差と無業者における 「その他」 無業者の比率 (NEET 率) との相関 a.1990 年 失業率格差 (推定 2) 無業者における NEET 率 15-34 歳 35-54 歳 55 歳以上 失業率格差 (推定 2) 1 無業者におけ る NEET 率 15-34 歳 −0.0979 1 35-54 歳 −0.1986 0.7572*** 1 55 歳以上 −0.0906 0.5173*** 0.6364** 1 b.2000 年 失業率格差 (推定 2) 無業者における NEET 率 15-34 歳 35-54 歳 55 歳以上 失業率格差 (推定 2) 1 無業者におけ る NEET 率 15-34 歳 0.2592* 1 35-54 歳 −0.4539*** 0.1363 1 55 歳以上 −0.2570* −0.0968 0.6505*** 1 c.1990-2000 年の変化 失業率格差 (推定 2) 無業者における NEET 率 15-34 歳 35-54 歳 55 歳以上 失業率格差 (推定 2) 1 無業者におけ る NEET 率 15-34 歳 0.3366** 1 35-54 歳 0.2058 0.5592*** 1 55 歳以上 0.4244*** 0.213 0.1204 1 注:***, **は, それぞれ 1%, 5%の水準で統計的に有意であることを示す。

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る必要があると思われる。 *本稿は, 勇上 (2005) を全面的に改稿したものである。 地域 間格差の計測にあたってやや異なった手順を踏んでおり, 結 果の一部が異なっているものの全体的な結論に変化はない。 改訂に際しては, 大竹文雄氏 (大阪大学社会経済研究所), 高木真吾氏 (北海道大学), 白石栄司氏 (前, 労働政策研究・ 研修機構, 現, 建設業労働災害防止協会), 浅尾裕氏, 本川 明氏, 堀春彦氏, 大谷剛氏 (以上, 労働政策研究・研修機構), ならびに本誌レフェリーより貴重なコメントをいただいた。 また, 本稿で用いた国勢調査データは, 東京大学空間情報科 学研究センター 「時空間社会経済システム研究部門共同研究 プロジェクト」 (共同研究代表者・大竹文雄大阪大学教授, 共同研究者・周燕飛労働政策研究・研修機構研究員) におい て利用したものである。 記して感謝したい。 なお, 残る誤り はすべて筆者に帰する。 1) こ の 点 は , 失 業 期 間 を 考 慮 し て も 同 様 で あ る 。 篠 崎 (2004) によれば, 失業期間が 1 年未満の短期失業率と 1 年 以上の長期失業率の関係は, 1992 年から 2002 年にかけて, 各都道府県で安定的であることが示されている。 2) 本稿で扱う無業率とは, 15 歳以上人口に占める完全失業 者および非労働力人口 (家事, 通学, その他) の割合である。 3) 近年は, 市町村間の通勤者の割合から労働市場圏 (「都市 雇用圏」) を定義し, 各都市圏経済の発展を分析する試みも なされている (金本・徳岡 (2002))。 4) ただし, 静態的な地域間格差に関して産業構造の影響を論 じることに批判的な見解もある (外舘 (1999))。 本稿では, 産業別の労働需給の迫度と離職率によって, 産業構成が, 「定義的に」 失業率に与える影響を論じるにとどめる。 5) したがって 1 調査年あたりの観測値は, 47 (都道府県)× 2 (性別)× 5 (年齢区分)× 4 (学歴区分)=1880 となる。 6) 欠落する学校教育在学者のサンプルは, 1990 年で 1.4%, 2000 年で 1.6%を占めており, サンプルを限定することによ り, 全国の平均失業率は, 1990 年で 3.01%から 3.02%へ, 2000 年は 4.72%から 4.80%へと若干上昇する。 7)        であり, 産業間賃金格差の実証分析において多用される格差 指標である。 ただし, は県の労働力人口ウェイト, は その推定係数, は推定係数の標準誤差を表す。 なおここで は , 産 業 間 賃 金 格 差 に つ い て 分 析 し た Krueger and Summers (1988) と同様に変数間の共分散項は考慮してい ない。 8) ここでの地域間格差は,    によって表される。 ただし,は, 県の失業率格差を,  はその地域ダミーの推定係数である。 また右辺第 2 項は, 各 都道府県の労働力人口ウェイト () でウェイトづけされた 地域ダミー係数の平均値を示している。 9) 地域別最低賃金の実質化にあたっては, 1987 年および 1997 年の総務省 「全国物価統計調査」 より, 帰属家賃を除 いた消費者物価地域差指数 (全国=100) を用いた。 ただし, 地域別最低賃金については, それがどの程度地域の労働市場 に影響を与えているのかについては議論の余地がある。 事実, 安部 (2001) によれば, 地域別最低賃金とパートタイマーの 平均賃金との間には順相関が確認できるものの, 特に, 最低 賃金が最も低い D ランクの県のなかでは, パート賃金と最 低賃金との乖離の程度は, 県によって大きく異なっている。 したがってここでは, 最低賃金を政策的にコントロールすべ き変数としてではなく, 平均賃金の地域間格差の代理指標と して用いる。 10) 特化係数は   。 ただし, は県における産業  の従業者構成比を,は全国平均の産業の構成比を示す。 また, Hirshman-Herfindhl 指数,    は 0 から 2 の値をとり, この数値が大きいほど,県の産業 構造が全国平均と比べ相対的に特化度が高いことを, 0 に近 いほど全国平均によった産業構造であることを示す。 なお, 産業分布が狭い, あるいは特化傾向が強い地域は, 当該産業 の需要ショックの影響を受けやすく, 結果として, 高失業率 にあえぐリスクが高いとする指摘もある (Krug man (1993))。 11) 従業地ベースの失業率は, 完全失業者数/(完全失業者数 +従業地による就業者数) によって計算した。 国勢調査の調 査項目の制約から, ここでは 「失業者は常住地においてのみ 求職活動を行う」 とするやや強い仮定に基づいた試算値であ る点に留意されたい。 12) 無業者である学生を除くことにより, 全国平均の無業率は 1990 年で 38.4%から 30.1%へ, 2000 年では 40.2%から 33.0%に低下する。 しかしながら, 都道府県別無業率は沖縄 県のみ 4%ポイント程度小さくなるものの, その他の地域に ついては全国平均との格差についてほとんど差がないため, 無業率の地域間格差の分析にあたって大きな問題はないもの と思われる。 13) ただし, 無業率には失業者が含まれるため, 両者の相関は 定義上高くなる。 しかし, 別途, 非労働力率についても検討 を行ったが傾向は変わらなかった。 性・年齢・学歴属性を考 慮した 「コントロール後」 の地域間非労働力率格差と失業率 格差との関係は 1990 年の 0.3055 から 2000 年には 0.4940 と 順 相 関 が 強 ま る と と も に , 10 年 間 の 変 化 の 相 関 係 数 も 0.3319 と, 無業率を用いた場合よりは低下するものの, 有 意な順相関が確認された。 14) 小杉 (2004) による日本型ニートの定義は, 非労働力人口 のうち, ①15∼34 歳, ②学校卒業者, ③家事・通学をして いない者 (統計上は 「その他」 の無業者) である。 なお, 小 杉 (2004) とやや異なり, 本稿の分析では, 地域の失業情勢 が各年齢階層別にいかなる無業化をもたらしたのかを検証し ている。 15) 2000 年では, 先に用いた無業率格差とニート率との相関 係数は, 15-34 歳では 0.5790, 35-54 歳では−0.2838, 55 歳 以 上 で は − 0 . 3275 と な っ て い る (1990 年 は そ れ ぞ れ , −0.0988 (非有意), −0.3600, −0.2069)。 参考文献

Krueger, A. and L. H. Summers (1988) Efficiency Wages and Inter-Industry Wage Structure,"  , Vol. 56, No.2, pp. 259-293.

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Krugman, P. (1993) Lessons of Massachusetts for EMU," in Torres, F. and F. Giavazzi, eds.,              , Cambridge University Press, MA, pp. 241-269.

Montgomery, E. (1993) Patterns in Regional Labour Market Adjustment: The United States vs. Japan,"       , No. 4414, National Bureau of Economic Research.

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参照

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