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ビブリオ・トーク -私のオススメ-:生体用センサと計測装置(ME教科書シリーズ)

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Academic year: 2021

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(1)連載. ビブリオ・トーク. ─ 私のオススメ─. ⇢ 村上知子((株)東芝). 生体用センサと計測装置(ME 教科書シリーズ). 山越憲一 ,戸川達男 著,日本エム・イー学会 編 (株)コロナ社(2000) ,256p.,4,000 円+税,ISBN : 978-4-339-07131-3. 世. 界的に高齢化が進み,家庭でのヘルスケアへ. 量,化学量などの計測対象量によって生体計測を分. の関心が高まる中,3 年ほど前,私の参加し. 類し,以後,第 2 章で生体内圧の計測,第 3 章か. ていたプロジェクトのメンバで,生体および生体計. ら第 6 章まで流量の計測,第 7 章で化学量の計測. 測の基礎知識を体系的に習得しようと教科書選びを. を解説している.. した.洋書を中心に探したが,医学的な専門知識が. 第 2 章では,身体のさまざまな器官の圧力の計. なければ理解が困難であったり,生体計測との関連. 測を対象として,生体内圧を直接あるいは間接的に. が明確に意識されていなかったりなどで適当な書籍. 計測する方法を解説している.直接計測の説明は実. がなかなか見つからなかった.. 際には医療従事者が利用するものであるため,やや. ちょうどその頃,とある大学の先生に本書を薦め. 難解で馴染みが薄い感があるが,図解入りで圧セン. られて,早速取り寄せてプロジェクトメンバで読み. サや計測器具の構造を示していたり,流体力学に基. 込んだ.新しく生体センサや計測システムを設計・. づく計測原理を数式で解説するなど,工学の基礎が. 開発しようとする者にとって,生体計測技術の初歩. ある読者には十分に理解しやすいと思われる.一方,. から現場で利用されている機器における位置付け,. 間接計測は,家庭で測る血圧計でもおなじみのカフ. その応用手法までも一貫して記述した,優れた入門. 式等の非侵襲な計測方式が説明されている.さらに,. 書であると思うので紹介する.. 計測時の注意点や各計測方式の利点や欠点などにも. 基礎から応用までを解説. 1022. 触れられていて,実際に計測する際の参考になる. 第 3 章では,生体内の流れに焦点をあて,主に. 本書は「ME 教科書シリーズ」の 1 巻であり,著. 血流と呼吸計測を中心に解説している.血流計測. 者が前書きでも触れているように,大学・大学院で. は単一血管内と単一組織内における血液の流量の. の教育を目的とした教科書であるが,センサや計測. 2 つに分類し,それぞれで一般的な計測アプローチ. ロジックの特徴,利用時の注意点などについてもで. を紹介している.一方,呼吸計測は,気流速,呼気. きるだけ平易かつ有機的に述べようとしたものであ. 容積,肺気量などの計測対象に応じた手法を紹介し. り,その意図はほぼ満たされていると思う.. ている.. 全体を 4 部に分け,各部分の特徴を活かした読. 第 4 章は生体の運動計測について説明している.. み方・利用を考えるとよい.計測に関する諸概念を. センサは接触型と非接触型に大きく分けられ,光や. 導入する第 1 章では,計測における信号や精度を. 磁気,超音波などの手段を用いて内蔵や血管,眼球. 紹介し,生体計測の特殊性について述べている.生. など生体内のわずかな変位を計測するものや,ジャ. 体計測では,対象が生身の人間になるため,それら. イロスコープや GPS による歩行速度計測や,加速. の生理状態を乱さないように検出方法やセンサの素. 度センサを用いた活動量や睡眠の計測など最近のウ. 材に十分な配慮が必要であるし,生体計測機器には. ェアラブル端末による生体計測の基礎知識について. 高い再現性が求められると説明している.圧力,流. もまとめられている.. 情報処理 Vol.56 No.10 Oct. 2015.

(2) 連載. ビブリオ・トーク. ─ 私のオススメ─. 第 5 章は生体の温度計測に関して解説している.. ら足を踏み入れる学生の教科書としてもよいと思わ. 人の生体の温度には,ほぼ一定に保たれる体内深部. れるし,生体医工学の知識がなくても初歩的な工学. の核心温と,部位や環境によって大きく変化する皮. 的知識があれば,十分に学べるような経験や知見の. 膚温がある.本書では,体温計測の目的や用途に応. 体系化に役立つ.. じたさまざまな温度センサが紹介されている.また,. 近年,センサや記録デバイスの小型化,無線技術. 口内,直腸などのさまざまな部位での核心温計測に. の発展により,人体の動作や生体活動に関する情報. おいて気を付けるべきことや特徴についても解説し. を長期間収集することが可能になった.ウェアラブ. ている.. ルなヘルスケア機器が相次いで市場に登場したこと. 第 6 章は生体からの電気現象の計測に関して述. により,生体計測は注目を集めている.しかし,ハ. べており,心電や筋電,MRI などの非侵襲な計測方. ードウェアや無線技術の進歩と比較するとき,何か. 式の基本的な考え方を解説している.. もう 1 つ飛躍があってしかるべき気がする.理由. 第 7 章は化学量の計測を解説している.ph や血. はいろいろあり,生体計測システム開発のためのソ. 中 pO2,分子やイオンの計測原理を説明している.. フトウェアサポートが大幅に欠如していたことが原. 正直に言うと,化学の知識が乏しい私には難解で,. 因の 1 つだと思う.しかし,私は,生体計測に関. 本章に限っては具体的に生体計測の利用イメージと. する良書が少なすぎて,そのために,経験や断片的. 結びつけるのが難しかった.. な知識を学問的なレベルにまで体系化する流れが弱. 本書は,あらゆる生体計測において共通の重要課. いように思う.この意味で,本書は,初心者には簡. 題である(1)生体信号の検出, (2)生体信号の変換・. にして要を得た入門書として,専門家には知見の体. 処理, (3)利用者へのインタフェースの 3 ステッ. 系化の手段としてお薦めしたい.. プに関して,図を多用して分かりやすく解説してい. (2015 年 7 月 3 日受付). る.また,実際の計測における留意点や機器の扱い 等にも触れられているため,計測の目的や用途に応 じた手法・機器を選ぶ際にも参考になる.本書の前 書きで著者が述べているように,生体計測にこれか. 村上知子(正会員) [email protected]   1998 年慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了.同年(株) 東芝入社.同社研究開発センター勤務の後,2014 年より同社でヘルスケ ア機器,特に生体計測のための研究開発に従事.博士(政策・メディア) .. 情報処理 Vol.56 No.10 Oct. 2015. 1023.

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