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ユーザーの要求に応じて機能を切り替えられるオンデマンド型素子

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Academic year: 2021

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同時発表: 筑波研究学園都市記者会(資料配布) 文部科学記者会(資料配布) 科学記者会(資料配布)

ユーザーの要求に応じて機能を切り替えられるオンデマンド型素子

~一つの素子でダイオード、スイッチ、キャパシタ、脳型記憶素子などの多機能性を実現~

平成

24 年 11 月 15 日

独立行政法人物質・材料研究機構 概 要 1. 独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田資勝)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点のヤン・ ルイ博士研究員、寺部一弥グループリーダー、青野正和拠点長らの研究グループは、J. ジムゼウスキ ー教授(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)との共同で、一つの素子1)でありながらダイオード2) スイッチ3)、キャパシタ4)、脳型記憶素子5)などの多機能性を有し、しかもこれらの機能を要求に応じ て切り替えられるという新しい概念のオンデマンド型素子6)の開発に成功しました。 2. トランジスタに代表される半導体素子は電気機器の主要部品として利用され、その性能向上を日進月歩 続けてきましたが、近年、その発展にも陰りが見えてきました。電子情報用素子が今後も性能向上を続 けて行くためには、新たな原理で動作する素子の開発も重要となっています。今回、我々は、ユーザー の要求に応じて機能を切り替えられるという新しい概念のオンデマンド型素子を開発しました。従来の 半導体素子では、一度、素子を構築して回路内に配置してしまうと、その素子の機能を切り替えること は困難でした。今回開発したオンデマンド型素子を使用すれば、集積回路の素子数やサイズの減少、さ らには集積回路の機能を必要な時に切り替えられるプログラマブル回路の開発などが可能となります。 3. このオンデマンド型素子は、固体内を酸素イオンと電子が移動することができる混合伝導体7)を金属電 極で挟んだ積層構造によって作られています。入力電気信号の大きさや頻度に依存した混合伝導体内の 酸素イオンの移動や電気化学反応を利用して、混合伝導体と金属電極との界面における電気伝導特性を 変化させることが可能です。この電気伝導特性の変化を利用することによって多機能性を実現させ、し かもそれらの機能性を切り替えることにも成功しました。 4. 開発した素子は、従来の半導体デバイスが有するダイオードやスイッチなどの機能を持っているだけで なく、人間の脳の働きである短期記憶や長期記憶8)の機能をも発現させることもできます。そのため、 本素子は、現状の集積回路の単なる発展だけでなく、脳型回路との融合によって次世代の人工知能の開 発にも大きく寄与することが期待されます。 5. 本研究成果は、米国日付2012 年 10 月 28 日に米国科学雑誌「ACS NANO」のオンライン速報版で公 開されました。

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研究の社会的背景 シリコンなどの半導体材料を基盤とした電子情報用半導体素子は、現在、身の回りの多くの電気 機器の主要な部品として利用されています。トランジスタに代表されるこの半導体素子は、微細加 工技術の進歩に支えられて性能向上を日進月歩続けてきました。しかし、その発展にも陰りが見え てきており、近い将来、微細加工技術の限界のみならず、素子の機能、性能、サイズや消費電力な どの限界を迎えることは明白です。そのため、今後も電子情報用素子が性能向上を続けて行くため には、従来の半導体技術の更なる発展だけでなく、新たな原理で動作する素子の開発研究も大変に 重要な課題となっています。 今回、我々は、ユーザーの要求に応じて機能を切り替えられるという、これまでの素子では得ら れなかった新しい概念のオンデマンド型素子を開発しました。従来の半導体素子では、一度、その 素子を回路内に配置してしまうと、その素子の機能を切り替えることは困難でした。また、多機能 性を有する回路を実現させるためには、従来の素子ではそれぞれの機能を有する別個の素子の組み 合わせを必要としていました。もしも、一つの素子で切り替えが可能な多機能性を実現できるなら ば、集積回路の素子数の減少や小型化、さらには集積回路の機能を必要に応じて切り替えられるプ ログラマブル回路9)の開発などが可能となります。 研究の内容 本発明のオンデマンド型素子は、図1に示すように、白金/酸素欠陥を含んだ酸化タングステン/ 白金の積層構造をしています。酸化タングステンは、構成する酸素原子の一部を熱処理によって除 去することによって、酸素原子が抜けた孔(酸素欠陥)を構造中に作ります。この酸素欠陥を構造 内に形成することによって、酸化タングステンが酸素イオンと電子が移動できる混合伝導性を示す ようにしました。作製時のオリジナル状態の素子(図1の中央)の白金電極に入力信号の電圧を印 加することにより、その入力信号の大きさや頻度に依存して酸化タングステン内で酸素イオンの移 動(同時に酸素欠陥も移動する)や電気化学反応が生じることがわかりました。この時、比較的小 さな入力信号(3V電圧程度)では酸素イオンだけが電極との界面付近に移動します(図1の右側)。 この酸素イオンの移動による界面構造の変化により、電気伝導特性を変化させることが可能となり ました。一方、比較的に大きな入力信号(7V電圧程度)では酸素イオンの移動だけでなく電気化 学反応も生じて、酸化タングステン内に電子伝導性フィラメントを形成させることができました(図 1の左側)。この電子伝導性フィラメントと電極との界面における酸素イオンの移動を制御すること によって、さらに多様に電気伝導特性を変化させることが可能となりました。すなわち、本発明の 素子では、入力信号の極性、大きさや頻度を精密に制御することによって、様々な機能性を生じさ せることが出来るようになり、さらにはそれらの機能を切り替えることが可能であることがわかり

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の極性に依存して反対になります。この現象を利用して、入力信号の電圧の極性に依存して、これ らダイオードやキャパシタなどが動作する電圧極性の依存性を逆にさせることができました。さら に、入力電気信号によって移動させた酸素イオンはその入力信号が無くなると元の酸化タングステ ン内部に戻るため、生じた機能は次第に減衰・消失してしまいます。このことから得られた機能は 揮発性10)であることがわかりました。また、この揮発性の電気伝導変化を利用することによって、 人間の脳の記憶のメカニズムである短時間のうちにすぐに忘れてしまう短期記憶の機能を生じさせ ることも可能になりました。 次に、図2の中央に示すオリジナル状態の素子に、比較的に大きな電圧(7V程度)を印加した 場合には、酸素イオンを電極界面に移動させるだけでなく、電気化学反応が生じて酸化タングステ ン内に電子伝導性フィラメントを構築することができました。電子伝導性フィラメントの成長方向 は、図2の上側および下側の素子に示す様に、印加する電圧の極性に依存して反対になります。こ の電子伝導フィラメントと電極との界面における酸素イオンの移動を利用することによってスイッ チや抵抗などの機能が得られ、それら機能の電圧極性の依存性は電子伝導性フィラメントの成長方 向によって反転することができました。さらに、電子フィラメントを構築させた場合には、入力信 号が無くなっても生じた機能は保持され、このことから得られた機能は不揮発性10)であることがわ かりました。また、この揮発性の電気伝導変化を利用することによって、人間の脳の記憶のメカニ ズムである、いったん記録されると容易に忘れることがない長期記憶の機能を生じさせることも可 能であることがわかりました。

図1 オンデマンド型素子の構造と動作の概念図

素子は白金/酸素欠陥を含んだ酸化タングステン/白金の積層構造である。

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図2 オンデマンド型素子の多機能性とその機能の切り替え方 界面付近における電気伝導性をダイオードや抵抗の記号とその大きさで表している。 波及効果 本発明を用いれば、たった一つの素子でありながら、入力信号(電圧付加)によって様々な機能 性(ダイオード、抵抗、スイッチ、キャパシタ、学習や記憶)を生じさせることが可能になり、更 に入力信号の精密な制御によって、高抵抗から低抵抗へ変化する時の電圧極性の異なるスイッチ、 揮発性および不揮発性で整流作用の流れやすい電流方向の異なるダイオード、人間の脳の記憶機能 である短期記憶や長期記憶などの高度な機能も発現させることが可能になります。この様な多機能 性の素子の実現は、従来ではそれぞれの機能を有する別個の素子の組み合わせを必要としていまし たが、本発明では一つの素子で多機能性を実現できるために、集積回路の素子数の減少や小型化、 さらには必要な時に必要な機能に切り替え可能なプログラマブル回路の構築が可能になります。ま た、今回の素子は、従来の半導体素子が有するダイオードやスイッチなどの機能を持っているだけ

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掲載論文

題目:On-Demand Nanodevice with Electrical and Neuromorphic Multifunction Realized by Local Ion Migration

著者:Rui Yang , Kazuya Terabe , Guangqiang Liu , Tohru Tsuruoka , Tsuyoshi Hasegawa ,

James K. Gimzewski , and Masakazu Aono

雑誌:ACS NANO (2012) (オンラインで投稿原稿が公開中、巻・号・ページは現時点では未定) 本件に関するお問い合わせ先 (研究内容に関すること) グループリーダー 寺部一弥 (てらべかずや) 独立行政法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 E-mail: [email protected] TEL: 029-860-4383 URL: http://www.nims.go.jp/group/g_nanoionic-device/index.html (報道担当) 独立行政法人物質・材料研究機構 企画部門 広報室 〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1 TEL: 029-859-2026 FAX: 029-859-2017 用語解説 (1) 素子 電子回路で使われる部品であり、例えばトランジスタ、コンデンサ、抵抗などを指す。 (2) ダイオード 整流作用(電流を一定方向にしか流さない作用)を持つ電子素子。 (3) スイッチ 電子回路において、電流を多く流す状態(ON)と、全く流さないあるいは少しだけ流す状態(O FF)を切り替える働きをする素子。 (4) キャパシタ 電荷を蓄えたり、放出したりする働きをする素子。コンデンサは別名。 (5) 脳型記憶素子 従来型の記憶素子(メモリデバイス)は、入力情報を1または0といったようにデジタル信号に置 き換えて、それを単に書き込んだり、読みだしたりする働きをする。一方、人間の脳の記憶は、より

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複雑なメカニズムと考えられており、学習の回数や興味深さなどによって、超短期記憶、短期記憶あ るいは長期記憶などの形態があると考えられている。例えば、視覚や聴覚の得られた連続的な情報は、 数秒程度で忘れてしまうが、何度も学習した情報は、長期記憶として保存されて、一生忘れることが ない。脳型記憶素子とは、このような人間の脳の記憶メカニズムと類似の機能によって情報を貯蔵す る素子をいう。 (6) オンデマンド型素子 英語のon-demandであり「要求に応じて」という意味である。本素子は、様々な機能を持ってお り、ユーザーの要求に応じてその中の必要な機能の働きをする。近年、ビデオオンデマンド、ゲーム オンデマンドやオンデマンド印刷などの用語も使われるようになってきている。これらでは、ユーザ ーの要求があった時にそれぞれのサービスや機能などを提供することができる。 (7) 混合伝導体 固体の電気伝導とは、電圧を印加することによって電荷が移動して電流が流れる現象である。この 時、固体内を流れる電荷が電子のみの場合には電子伝導体と呼ばれ、銅やシリコンなどが知られてい る。また、流れる電荷がイオンのみの場合にはイオン伝導体(固体電解質)と呼ばれ、酸化ジルコニ アやヨウ化銀などが知られている。さらに、流れる電荷が電子とイオンの両方である場合には混合伝 導体と呼ばれ、硫化銀や酸化リチウムコバルトなどが知られている。 (8) 短期記憶、長期記憶 人間が学習して記憶する際には、「短期記憶」「長期記憶」という記憶メカニズムが脳にあると考 えられている。短期記憶は一時的に情報を保存するだけで、しかも容量が小さいので、短時間のうち にすぐに忘れてしまう。一方、長期記憶はいったんここに記録されると容易に忘れることはなく、し かも大きな量の情報を保持することができる。 (9) プログラマブル回路 一般的な集積回路は設計時に仕様や機能を決め、製造時に全ての回路が固定されるために、後から 機能を変更する事は出来ない。一方、プログラマブルロジックデバイスは、出荷時に特定の仕様や機 能が固定されておらず、ユーザーが必要な回路の構成情報をデバイスに設定することにより初めて機 能を発揮させることができる。通常は、回路内の各素子を結ぶリード線上にスイッチが構築されてお り、このスイッチをユーザーが後から設定することによって必要な機能を持った回路構成を再構築す ることができる。

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(11) ニューロコンピューター 人間の脳の情報処理メカニズムを模倣して、神経細胞(ニューロン)が神経回線網(ニューラル ネット)を張り巡らせることで 情報処理を行うという動作を基本原理とするコンピューター。従来 のコンピューターの機能にはない、状況に応じて自らの回線網を変えていく自己組織能力をもつこ とが特徴である。これにより、コンピューターに学習、認識、連想などの高度な機能が新たに付与 されて、複雑な組合せ問題などを短時間で解くことが可能になると考えられている。

参照

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