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夢想起における感情別体験頻度

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最近 H artman, et al.(2001)は、夢につ いての定量的な調査研究は数々の興味深い結 果を示しているが、臨床家から見たときには、 夢見る人にとって夢の重要性という観点が抜 け落ちていることが気になると述べ、数々の 評定尺度を用いた研究で評定者が、評定尺度 には夢の核、もしくは中心となることがない と感じることがままあることを示唆している。 それは、トラウマを体験した人たちの夢の報 告が示すような強い感情体験であると指摘し ている。確かに彼らが指摘するように夢見に おいて感情は重要な要素であろう。では、夢 見における感情体験についての定量的調査研 究はどの程度行われてきたのだろうか。 夢見における感情の体験頻度については、 心理学の創世紀から検討されてきた。まず、 内省心理学者たちが夢の中で体験される内容 について目覚ましによる覚醒法を用いて調べ ている。例えば、Calkins(1893)は2名の 被験者について喜び、中性(驚きと興奮)、 痛み(不安、後悔、怒り、など)に関する3 つのカテゴリーに分類し、痛みにかかわる報 告 が 8 割 程 度 に 及 ぶ と 報 告 し て い る 。 Bentley(1915)は5人の被験者の41の夢の 内省報告から、快な夢が14、不快な夢が27と 倍であったと述べている。 次にREMの発見後、REM期覚醒法を用いた研 究が数多く行われたが、その中で感情の体験 頻度も検討された。例えば、大熊(1977)は 情動的要素の出現はNREM期に16%、REM期に3

夢想起における感情別体験頻度

岡 田

Experienced Emotions in Dreams

Hitoshi OKADA

The purpose of the present study is to survey the frequency of emotional experience in dream recall. A total of 1267 undergraduate students completed a dream recall frequency questionnaire, which contained a question about dream recall frequency and about recall frequency of thirteen emotions. Results the of the factor analysis showed that those emotions were divided into two groups; positive emotions in dreaming, which involved happiness, hope, joy, and relief and negative emotions, which involved anxiety, dis-gust, fear, sadness, impatience, and strain. And in contrast to the sleep laboratory study,

participants feel their dreams as rather positive - joyful experiences.

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3%、自宅夢では64%と報告した。MacCarely & Hoffman(1981)14人の被験者から104の夢 を採取し、そのときに体験された感情を調べ た。その結果では不安が最も高く15%弱、以 下、驚き、怒りが10%弱、喜びと悲しみが5 %前後、そして恥じらいが1%強、罪悪感は なかったと報告した。

Schredl and Doll(1998)は、これらの研 究も含め、夢見における感情の出現頻度につ いての数多くの研究をまとめ、次のような問 題点を指摘している。 先に取り上げた研究が示すように、ほとん どの夢の調査研究は夢には肯定的感情よりも 否定的感情が表れる割合が高いという点で一 致している(例えば、Hall & Van de Catstle, 1966; Snyder, 1970; Kramer, Winget, & Whiteman, 1971; Narotra, 1983; Merritt, Stickgold, Pace-Schott, Williams, & Hobson, 1994)。しかし、彼らはその結果に ついて疑問を感じ、日誌法を用いて夢を集め、 本人によりその夢の評定した結果と過去の研 究で行われたような第3者が評定を行った結 果を比較した。その結果、自己評定法では否 定的感情と肯定的感情の出現の割合は約40% づつであったのに対して、外的な評定では否 定的な感情が約60%であったのに対して肯定 的な感情は20%に過ぎなかった。夢の感情的 な内容に否定的感情の比率が高いという結果 は第3者による評定方法を用いたことに由来 し、夢で感じる感情は本来否定的な内容と肯 定的感情の均衡が取れているのではないかと 彼らは主張している。 我々はこれまで質問紙を用いて、夢見にお ける感覚モダリティ別体験頻度、感情別体験 頻度の個人差について調査を行ってきた。感 情については、Plutchik(1980)、Izard(199 1)らの感情の分類の研究をもとに13種を選び、 夢を見たときにその感情をどの程度の頻度で 体験したかを問うた。約500人の大学生(岡 田、畠山、松岡、1994)を対象者とした調査 では他の感情の体験頻度はほぼ同じであった が、嬉しさあるいは楽しさの体験頻度が顕著 に高い傾向が見られた。また、17歳から80歳 までの約800人を対象として感情の体験頻度 を生涯発達的視点から調査した研究では、肯 定的感情、否定的感情とも年代とともにその 頻度が減少していく傾向を見出した(岡田、 畠山、松岡, 1995)。さらに、大学生を対象 として繰り返し体験される夢について調査し 通常の夢と比較した研究(岡田、1997)では、 恐怖、緊張、不安など否定的感情の体験頻度 が通常の夢と比較して顕著に高いことを見出 した。 この結果は最近報告されたHartman, et al.(2001)の研究における強いトラウマ を持っている対象者などの結果と一致する。 これらの結果は繰り返し体験する夢以外では 睡 眠実験室 研究の結 果よりも Schredl and Doll(1998)の主張を裏付ける結果と考えら れる。 彼らは夢見における感情の出現頻度につい てまとめているが、その中では、体験される 感情が肯定的か否定的かのいずれかについて 検討した。しかし、Plutchik(1980)、Izard (1991)らの感情の分類の研究が示唆するよう に、基礎的感情の種類はより多く分化してい るにもかかわらず、多数の被験者を対象とし 基礎的感情の種類を考慮した夢の感情的内容 の主観的体験頻度についての調査研究はあま り行われていないようである。岡田(2000) は約1200人の大学生を対象として夢想起に関 する調査を行い、感覚モダリティ別体験頻度 について報告した。その際基礎的感情の分類 を考慮した感情別頻度についても調査項目に 含んでいたが、その結果については触れてい なかった。そこで、この調査の結果をもとに 本報告では Schredl and Doll (1998)が指 摘するように対象者の主観的評価を用いた場 合、夢で体験される感情の内容が肯定的感情 と否定的感情の体験比率が均衡するのかどう か、また感情のより詳しい内容はどのような ものなのか、さらに、夢想起頻度とこれら感 情の間の関係についても検討する。

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表1 夢想起頻度の評定値と全反応に対する比率の分布

比率

(%) 人 数

比率

(%) 人

比率(%)

毎日必ず見る ほとんど毎日見る 2日に1回は見る 月に1,2回は見る 週に1,2回は見る めったに見ない 全く見ない 総数 71 283 219 354 80 122 3 1,132 6.3 25.0 19.3 31.3 7.1 10.8 0.3 24 95 94 170 43 62 1 489 4.9 19.4 19.2 34.8 8.8 12.7 0.2 46 183 125 182 37 60 2 635 7.2 28.8 19.7 28.7 5.8 9.4 0.3 図1 夢見で体験される感情の評定平均値。 数値が低いほど体験頻度は高い。

被験者 被験者は新潟大学、県立新潟女子短 期大学、学生1267人(男性560人、女性707人) であった。年齢は平均19.5歳(最大65歳、最 小18歳)、年齢別人数は、18歳、691人、19歳 325人、20歳、133人、21歳、51人、22歳、15 人、23歳以上24人、不明28人であった。被験 者は大学生であるが社会人の聴講生が16人含 まれているので最大年齢が高くなっている。 質 問 紙 質 問 に 使 用 し た 感 情 の 項 目 は Plutchik(1980)、Izard(1991)らの基礎的 感情に関する研究を参考にして決定した。使 用した項目は、嬉しさあるいは楽しさ、安堵 感、希望あるいは期待感、幸福感、怒り、悲 しみ、恐怖感、あせり、緊張感、不安感、嫌 悪感、驚き、羞恥心の13種類であった。過去 1ヶ月の間に限って、夢を体験した場合にこ れらの感情を体験する頻度を「いつも感じる」、 「よく感じる」「時々感じる」、「たまに感じる」、 「めったに感じない」、「全く感じない」の6 段階で評定するよう被験者に求めた。 夢想起頻度は「毎日」、「ほとんど毎日」、 「2日に1回」、「週に1,2回」、「月に1, 2回」、「めったに見ない」、「全く見ない」の 7段階評定が求められた。 手続き 質問紙は1996年から1998年にかけて 一般教養心理学の講義の時間中に実施し、回 収した。

結果と考察

被験者の回答に欠測値があるため、度数の 合計は項目によって異なる。 表1に夢想起頻度について、各段階ごと、男 女別に選択した被験者の度数、全反応度数に 対する比率を示す。 夢想起頻度の評定値の分布を見ると「毎日」 から「週に1,2回」間での範囲に8割以上 が含まれるが、「ほとんど毎日」と「週に1, 2回」の2カ所に山がある傾向が見られる。 性差を見ると、「毎日」「ほとんど毎日」体験 する被験者の比率で比較すると女性のほうが 約5%高い。女性の体験頻度が高い傾向が伺 える。 図1に各感情の評定平均値を、表2から表 14に各感情ごとに体験頻度の分布を示す。全 体と男女の合計が一致しないところがあるが、 これは性別不明の回答があったためである。

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表2 夢見で嬉しさまたは楽しさを体験する頻度

比率

(%) 人 数

比率(%) 人

比率

(%)

いつも感じる よく感じる 時々感じる たまに感じる めったに感じない 全く感じない 総数 138 489 320 86 53 7 1,093 12.6 44.7 29.3 7.9 4.8 0.6 51 187 148 47 25 7 465 11.0 10.2 31.8 10.1 5.4 1.5 87 296 170 39 28 0 620 14.0 47.7 27.4 6.3 4.5 0.0 表3 夢見で安堵感を体験する頻度

比率

(%) 人 数

比率

(%) 人

比率(%)

いつも感じる よく感じる 時々感じる たまに感じる めったに感じない 全く感じない 総数 46 213 334 227 245 27 1,092 4.2 19.5 30.6 20.8 22.4 2.5 16 101 140 92 99 17 465 3.4 21.7 30.1 19.8 21.3 3.7 30 112 194 129 144 10 619 4.8 18.1 31.3 20.8 23.3 1.6 表4 夢見で希望あるいは期待感を体験する頻度

比率

(%) 人 数

比率

(%) 人

比率(%)

いつも感じる よく感じる 時々感じる たまに感じる めったに感じない 全く感じない 総数 87 277 300 219 181 29 1,093 8.0 25.3 27.4 20.0 16.6 2.7 45 128 113 91 69 19 465 9.7 27.5 24.3 19.6 14.8 4.1 42 148 186 125 110 10 620 9.7 27.5 24.3 19.6 14.8 4.1 ※性別不明が9人あり 表5 夢見で幸福感を体験する頻度

比率

(%) 人 数

比率

(%) 人

比率(%)

いつも感じる よく感じる 時々感じる たまに感じる めったに感じない 全く感じない 総数 92 312 356 179 130 24 1,093 8.4 28.5 32.6 16.4 11.9 2.2 42 125 153 69 63 13 465 9.0 26.9 32.9 14.8 13.5 2.8 50 185 200 107 67 11 620 8.1 29.8 32.3 17.3 10.8 1.8

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表6 夢見で怒りを体験する頻度

比率

(%) 人 数

比率

(%) 人

比率(%)

いつも感じる よく感じる 時々感じる たまに感じる めったに感じない 全く感じない 総数 41 146 256 222 340 88 1,093 3.8 13.4 23.4 20.3 31.1 8.1 21 63 113 94 125 49 465 4.5 13.5 24.3 20.2 26.9 10.5 20 80 142 127 213 38 620 3.2 12.9 22.9 20.5 34.4 6.1 表7 夢見で悲しみを体験する頻度

比率

(%) 人 数

比率

(%) 人

比率(%)

いつも感じる よく感じる 時々感じる たまに感じる めったに感じない 全く感じない 総数 54 212 321 224 235 47 1,093 4.9 19.4 29.4 20.5 21.5 4.3 21 90 139 84 101 30 465 4.5 19.4 29.9 18.1 21.7 6.5 33 119 180 140 132 16 620 5.3 19.2 29.0 22.6 21.3 2.6 表8 夢見で恐怖感を体験する頻度

比率

(%) 人 数

比率

(%) 人

比率(%)

いつも感じる よく感じる 時々感じる たまに感じる めったに感じない 全く感じない 総数 88 304 354 202 116 29 1,093 8.1 27.8 32.4 18.5 10.6 2.7 47 130 155 72 48 13 465 10.1 28.0 33.3 15.5 10.3 2.8 41 171 196 128 68 16 620 6.6 27.6 31.6 20.6 11.0 2.6 表9 夢見であせりを体験する頻度

比率

(%) 人 数

比率

(%) 人

比率(%)

いつも感じる よく感じる 時々感じる たまに感じる めったに感じない 全く感じない 総数 76 285 305 199 175 53 1,093 7.0 26.1 27.9 18.2 16.0 4.8 40 126 129 87 64 19 465 8.6 27.1 27.7 18.7 13.8 4.1 36 158 174 110 108 34 620 5.8 25.5 28.1 17.7 17.4 5.5

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表10 夢見で緊張感を体験する頻度

比率

(%) 人 数

比率

(%) 人

比率(%)

いつも感じる よく感じる 時々感じる たまに感じる めったに感じない 全く感じない 総数 68 197 304 249 208 67 1,093 6.2 18.0 27.8 22.8 19.0 6.1 39 96 135 103 69 23 465 8.4 206 29.0 22.2 14.8 4.9 29 100 167 145 136 43 620 4.7 16.1 26.9 23.4 21.9 6.9 表111 夢見で不安感を体験する頻度

比率

(%) 人 数

比率

(%) 人

比率(%)

いつも感じる よく感じる 時々感じる たまに感じる めったに感じない 全く感じない 総数 60 242 303 264 183 41 1,093 5.5 22.1 27.7 24.2 16.7 3.8 29 106 130 106 75 19 465 6.2 22.8 28.0 22.8 16.1 4.1 31 135 172 156 104 22 620 5.0 21.8 27.7 25.2 16.8 3.5 表12 夢見で嫌悪感を体験する頻度

人 数

比率

(%) 人 数

比率

(%) 人 数

比率(%)

いつも感じる よく感じる 時々感じる たまに感じる めったに感じない 全く感じない 総数 34 107 184 258 375 135 1,093 3.1 9.8 16.9 23.6 34.3 12.4 17 49 77 111 158 53 465 3.7 10.5 16.6 23.9 34.0 11.4 17 56 106 145 214 82 620 2.7 9.0 17.1 23.4 34.5 13.2 表13 夢見で驚きを体験する頻度

比率

(%) 人 数

比率

(%) 人

比率(%)

いつも感じる よく感じる 時々感じる たまに感じる めったに感じない 全く感じない 総数 55 192 310 249 228 59 1,093 5.0 17.6 28.4 22.8 20.9 5.4 31 87 132 103 84 28 465 6.7 18.7 28.4 22.2 18.1 6.0 24 103 175 146 141 31 620 3.9 16.6 28.2 23.5 22.7 5.0

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表14 夢見で羞恥心を体験する頻度

比率

(%) 人 数

比率

(%) 人

比率(%)

いつも感じる よく感じる 時々感じる たまに感じる めったに感じない 全く感じない 総数 25 71 181 244 399 173 1,093 2.3 6.5 16.6 22.3 36.5 15.8 8 36 73 103 162 83 465 1.7 7.7 15.7 22.2 34.8 17.8 17 34 107 140 232 90 620 2.7 5.5 17.3 22.6 37.4 14.5 表15 夢見で体験される感情の頻度の評定値 の因子分析の結果

否定的感情 肯定的感情

共通性

不 安 感 緊 張 感 恐 怖 感 あ せ り 嫌 悪 感 悲 し み 怒 り 驚 き 羞 恥 心 幸 福 感 嬉 し さ 希 望 安 堵 感 固 有 値 比率(%) 0.79 0.73 0.73 0.72 0.70 0.64 0.57 0.46 0.43 0.07 0.00 0.09 0.11 3.86 29.66 -0.05 0.01 -0.03 -0.01 0.05 0.16 0.24 0.22 0.25 0.82 0.73 0.72 0.71 2.42 18.60 0.62 0.54 0.53 0.52 0.50 0.43 0.38 0.26 0.25 0.68 0.53 0.52 0.51 図2 夢見で体験される感情の頻度の評定値 の因子分析の結果 縦軸は第1因子の因子負荷量、 横軸は第2因子の因子負荷量 平均評定値(図1)を見ると怒り、嫌悪感、 羞恥心の体験頻度が他の感情と比べやや低く、 嬉しさがやや多く体験される傾向が見られる。 表2から14に示す体験頻度の分布を見ると、 羞恥心と嫌悪感は「めったに感じない」が最も 多いのに対して怒りは「時々感じる」と「めっ たに感じない」に二つの山を持つ傾向が見ら れる。これらをまとめてみると夢の中では、 嬉しさを良く感じるが、怒り、嫌悪感、羞恥 心はめったと感じない。他の感情は時々は感 じるとなろう。 次に、評定値について因子分析を行った。 主 因子 法 によって因 子抽出を行い、その後v arimax回転を行った。その結果得られた因子 負荷量を表15に示す。固有値1を基準として 因子数を決定したところ2因子が抽出された。 寄与率は2因子で48%であったので分析は概 ね妥当であったと思われる。

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表16 夢想起頻度と感情の評定値間 の相関係数

相関係数

嬉 し さ 安 堵 感 希 望 幸 福 感 怒 り 悲 し み 恐 怖 感 あ せ り 緊 張 感 不 安 感 嫌 悪 感 驚 き 羞 恥 心 0.184 0.129 0.093 0.120 0.099 0.093 0.020 -0.009 -0.005 0.010 0.070 0.036 0.106 *** *** *** *** *** *** n.s n.s n.s n.s * n.s *** * p<.05, *** p<.001 表15の結果を横軸に第1因子の因子負荷量、 縦軸に第2因子の因子負荷量として各項目を プロットした結果を図2に示す。 表15、図2に示されるように13の感情は2 群に分かれる。第1因子に因子負荷量の高い 項目は不安感、緊張感、あせり、恐怖感、嫌 悪感である。これらは否定的な感情ととらえ られる。一方、第2因子は嬉しさあるいは楽 しさ、安堵感、希望あるいは期待感、幸福感 の因子負荷量が高い。これらは肯定的な感情 と考えられる。羞恥心、怒り、驚き、悲しみ は第1因子の因子負荷量が高いが同時に第2 因子の因子負荷量もやや高い。図2に示すよ うに羞恥心、怒り、驚き、悲しみは肯定的感 情と否定的感情のちょうど中間にあることが わかる。この因子分析の結果は明晰夢と通常 の 夢 を 比 較 し た Gackenbach and Schilig (1983)の結果や、夢で体験される感情を肯 定的感情と否定的感情の2つの側面に分類し、 そ の 出 現 頻 度 を 調 べ た Schredl and Doll (1998)や Hartmann, et al.(2001)などの 研究における分類の妥当性を裏付ける結果で あると考えられる。 次に夢想起頻度とこれら感情別体験頻度の 関係を調べる目的で夢想起頻度と各感情の評 定値の間の相関係数を求めた(表16)。相関 係数は全体としてあまり高くはないが、いく つかの項目で有意な相関が見られた。有意だっ た項目は、因子分析の結果まとまった肯定的 感情にかかわる項目であった。さらに、夢想 起頻度を目的変数、感情別体験頻度を目的変 数として重回帰分析を行った結果、嬉しさあ るいは楽しさと羞恥心の二つの感情が重相関 係数R=0.222,R2=0.050、自由度調整済み R2=0.038と有意になった。2つの感情のβ の値は「嬉しさあるいは楽しさ」が、0.161、 「羞恥心」が0.069、であった。 最後に性差について検討する。夢想起頻度 と13の感情の評定値について性差を検定した。 その結果性差が認められた項目は、夢想起頻 度(t=4.25, n=1122, p<.001)、「嬉しさあ るいは楽しさ」(t=3.82, n=1083, p<.001)、 「あせり」(t=2.20, n=1083, p<.05)、「緊 張感」(t=4.16,n=1083, p<.001)の4項目 であった。夢想起頻度、「嬉しさあるいは楽 しさ」は女性のほうが高く、「あせり」、「緊張 感」は逆に男性のほうが体験頻度が高かった。 過去の研究の多くで報告された夢見におい て体験される感情には否定的感情が多く、肯 定的感情は少ない傾向にあった。しかし、今 回の調査の結果では、肯定的感情、とりわけ 嬉しさあるいは楽しさが比較的多いという結 果となった。この結果は、実験室で行われた 数々の研究で報告された夢で体験される感情 は否定的内容が多いという報告ではなく、日 誌法を用いた Schredl and Doll(1998)や 「覚えている限りにおいて最も最近の夢」につ いて報告を求め、その感情的な内容を分類し た Hartmann, et al.(2001)らが肯定的感 情と否定的感情の出現比率は大きな精神的問 題はあまりかかえていないと思われる対象者 ではほぼ同じくらいの比率になるという報告 を裏付けるものである。少なくとも今回の対 象となった大学生の夢の感情的内容は比較的 楽しく、怒りや嫌悪感や羞恥心はめったに感

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じない、平穏な内容であることが示唆される。 対象となった大学生が比較的のんびりした地 方の総合大学や短期大学の女子学生が中心で あったことが反映されたのかもしれない。 次に夢想起頻度と感情の体験頻度の相関と 重回帰分析の結果、両者の間の相関はかなり 低かったのだが、夢想起頻度は肯定的感情と 有意な関連性を示し、否定的感情とは関係性 を示さなかった。つまり良く夢を見る人は夢 の中で楽しい体験が多い、もしくは夢の中で 楽しい体験が多いから夢を良く覚えていると いうことになろう。この結果は Schredl and Doll(1998)が報告した夢想起頻度と夢の中 での感情の強さの相関係数と絶対値を含めて とほぼ一致した。彼らは感情の種別は分類し ていないし、日誌法を用いたが、今回の結果 は日誌法と頻度の評定法の間で一貫した結果 が得られたことを示すと考えられる。しかも 彼らは肯定的感情と幅広くとらえていたが今 回の結果からは、肯定的感情の中でも嬉しさ や楽しさといった感情が夢想起頻度と関わっ ている可能性が示唆される。 この結果の解釈については、Cohen(1974) 指 摘 する 夢 想 起 頻 度 に つ い て の 抑圧 仮 説 (repression hypothesis)と顕著仮説(salien ce hypothesis)の2つの側面から考えられ よう。抑圧仮説に従えば、たとえ夢の中で不 安や恐怖などの否定的感情は感じていてもそ れは抑圧されるから想起されなくなるという ことになる。しかし、このように抑圧仮説が 有効なら夢想起頻度と否定的感情の間では負 の相関が観測されるはずであるが、そのよう な結果得られなかった。むしろ、Shredl and Doll(1998)も指摘するように、夢が良く想 起されるのは夢の内容が豊かであるからだと いう夢想起の顕著仮説が支持される。

性差については Schredl and Doll(1998) は夢想起頻度では女性が多いという傾向はあ るものの、体験する感情には性差はないと報 告しているが、今回の結果では、夢想起頻度 と嬉しさあるいは楽しさの頻度が女性で高く、 緊張感、あせりは男性のほうが体験頻度が高 いという結果であった。前者については夢想 起頻度と嬉しさあるいは楽しさと有意な相関 が見られたことと関連するのであろう。後者 についてはその理由は明確ではない。今回わ ずかながらも性差が見られたことは、感情の 種類を細かく分類して検討した方法に起因す るのではないかと思われる。 引用文献

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参照

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