脊髄部分損傷後の機能回復過程における大規模回路再編
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(2) 670. 理学療法学 第 42 巻第 8 号 動ニューロンに接続するという経路が提唱されている。近年筆 者らも同様な実験をサルの上肢筋運動ニューロンに対して行 い,同様な結果を得ている(未発表データ)。したがって,こ のような反対側の RSN を介する経路が脱抑制されることで緊 急避難的に機能を代償するのではないかと考えられる。. 辺縁系の関与 一方,上記の PET を用いた解析において,課題遂行時に損 傷反対側の側坐核(以下,NAc)の血流が機能回復期に上昇し ていることがわかった。そこで,PET で記録された脳血流の データを用いて,NAc や関連する前帯状回皮質(ACC)や前 頭眼窩回皮質(OFC)などの辺縁系の領域と,回復の鍵になる 役割を果たす損傷反対側 M1 の間の機能的結合を解析したとこ ろ,回復過程において NAc および関連する辺縁系領域,さら に M1 の間の機能的結合が回復期において選択的に上昇するこ とが明らかになった 4)5)。これら辺縁系はモチベーションの制 御に関与するとされており,このような NAc と M1 の間の結 合の強化は,「モチベーションがリハビリテーションの効果を 促進するメカニズム」に関連するものとして注目される。しか し,解剖学的に NAc と M1 を結びつける経路は,今後の大き な問題である。 図1 A 運動野(M1)から手指筋運動ニューロン(MN)にい た る 経 路 と そ の 遮 断.C3 – C4 髄 節 の 脊 髄 固 有 ニ ュ ー ロ ン (C3 – C4PNs)と髄節内介在ニューロン(SINs)を介する経 路がある. B 手指の把持運動.1.健常児,2.C5 での皮質脊髄路損傷 後 33 日.第 2 指と第 5 指の独立制御が可能になっている,3. C2 での損傷後 106 日.独立制御は回復していない. C 回復時の回路の変化の概要.1.健常時,2.回復初期,3. 回復安定期,contra:(運動ニューロンの反対側.便宜上同側 に描いてある).ipsi:(運動ニューロンの同側.便宜上反対 側に描いてある).. ま と め 以上の結果をまとめると,図 1C2 のように,C5 レベルでの 皮質脊髄路の損傷直後は,脱抑制をかけることで損傷同側の M1 から RSN を介して運動ニューロンに至る経路を使うなど して機能回復が行われる。その後,神経回路の可塑的な変化が 起きてくると(安定期:図 1C3)損傷反対側 M1 および両側の PMv によって十分に機能回復が図られるようになり,もはや 損傷同側 M1 の活動は必要としない。一方,このような運動野 の可塑性を誘導するメタ因子として,NAc などの辺縁系が機 能しているのではないかと考えられる。. 動領域の拡大が観察された. 3). 。そしてさらに両側の運動前野腹. 側部(以下,PMv)の活動が上昇した。そこでムシモルをこれ ら大脳皮質部位に微量注入して,これらの活動増加部位の機能 回復への貢献を直接調べてみた。すると反対側 M1 は回復初期 にも安定期にも回復に重要な役割を果たしていること。同側の M1 は回復初期に選択的に関与すること。一方で PMv は回復 安定期により強く関与することが示された 3)。このように大脳 皮質の異なる部位が機能回復に関与することは,機能回復のメ カニズムを理解するうえで重要である。 同側の M1 から運動ニューロンにいたる経路については,ネ コを用いた研究で皮質出力線維が反対側の網様体脊髄路細胞 (以下,RSN)を活性化し,これらの細胞から反対側脊髄を下 行する線維が脊髄内の交叉性ニューロンに接続し,それらが運. 文 献 1) Sasaki S, Naito K, et al.: Cortico-motoneuronal system and dexterous finger movements. J Neurophysiol. 2004; 92: 3601–3603. 2) Kinoshita M, Matsui R, et al.: Genetic dissection of the circuit for hand dexterity in primates. Nature. 2012; 487: 235–238. 3) Nishimura Y, Onoe T, et al.: Time-dependent central compensatory mechanism of finger dexterity after spinal-cord injury. Science. 2007; 318: 1150–1155. 4) Nishimura Y, Onoe H, et al.: Neural substrates for the motivational regulation of recovery after spinal-cord injury. PLoS One. 2011; 6: e24854. 5) Sawada M, Kato K, et al.: Function of the nucleus accumbens in motor control during recovery after spinal cord injury. Science. 2015; 350: 98–101..
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