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露地栽培ブドウ‘デラウェア’における展葉数を指標とした ジベレリン処理適期把握のための簡便なサンプリング法の検討

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Academic year: 2021

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Ⅰ 緒   言  ブドウ‘デラウェア’は 1882 年にアメリカから 導入されて以来,日本各地で栽培されている早生の 代表的品種である4).大阪府において‘デラウェア’ 2019 年 7 月 31 日受領 2020 年 1 月 6 日受理 Correspondence: KamimoriM@mbox.kannousuiken-osaka.or.jp 〔原著論文〕

露地栽培ブドウ‘デラウェア’における展葉数を指標とした

ジベレリン処理適期把握のための簡便なサンプリング法の検討

上森真広・三輪由佳・磯部武志・細見彰洋

* (地独)大阪府立環境農林水産総合研究所 *現東洋食品研究所

An Experimental Study of a Simple Sampling Method

for Determining the Optimal Timing for Gibberellin Application

to Field-Grown ‘Delaware’ Grape from the Number of Leaves

Masahiro Kamimori, Yuka Miwa, Takeshi Isobe and Akihiro Hosomi

Research Institute of Environment, Agriculture and Fisheries, Osaka Prefecture

Present address: Toyo Institute of Food Technology

Summary

To develop a simple method to determine the optimal timing for the application of gibberellin (GA3) to fruit clusters of ‘Delaware’ grape in the field from the number of leaves using the shoot in the different positions (numbered from the tip of the bearing mother shoot). Using ‘Delaware’ grape leafing data from 1987 to 2018, we analyzed the relationship between the shoot position on the bearing mother shoot and the average number of leaves per shoot on the day when the average number of leaves per shoot in all shoots reached 9.5, which is used as an indicator for the timing of GA3 application in Osaka Prefecture, Japan. The average number of leaves on the day based on the average number of total shoot leaves was the largest on the first shoot as counted from the tip of the bearing mother shoot and decreased gradually toward its base. In view of practical considerations, we analyzed the relationship between the numbers of samples of the first shoot and second shoot (second shoot from the tip of the bearing mother shoot) and the error of estimation of the number of leaves. The results suggested that under the weather conditions in Osaka Prefecture, the optimal timing for GA3 application could be determined from sampling 8 first shoots as the day on which the average number of leaves exceeded 10.5, or from 8 second shoots as the day on which it exceeded 10.0.

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いては,合理的な根拠は示されていない.  そこで,本研究では当所で露地栽培した‘デラウェ ア’の展葉数に関する 30 年分のデータから調査年 ごとに全梢葉基準日を把握した後,GA 処理適期判 定の妥当性を 10 年分の果実品質調査結果により確 認した.続いて,当所や甲府市ジベ処理委員会が示 す方法に基づき,簡易かつ実質的な精度(GA 処理 適期を逸脱する可能性を 5%以下)で GA 処理適期 を把握するために必要な新梢の結果母枝内での位置 とその本数について定量的に明らかにした. Ⅱ 材料および方法 1 新梢の展葉数の測定  大阪府南河内地域に位置する当所(北緯 34 度 32 分,東経 135 度 35 分,標高 70 m,大阪府羽曳野市 尺度 442)内を調査地とした.当所内の気象観測装 置で測定した 1987 年~2018 年の年平均気温の平均 値は 16.3℃ で,瀬戸内海式気候区に属する.  当所内の露地ブドウ圃場(1 園,約 10 a,細粒質 台地黄色土)で,長梢剪定で栽培する樹齢 5 年以上 の‘デラウェア’3~4 樹を用いて,1987 年~2018 年に新梢の展葉数を調査した.調査樹は調査年に よって園内から随意に決めた.1 樹につき生育が平 均的な結果母枝を 8 本程度選び,それぞれの全新梢 (貧弱になり易い結果母枝基部 1~2 節を除く 3~6 本の新梢)の展葉数を 2~5 日おきに計測した.調 査日ごとに調査対象とした全新梢の展葉数の平均値 を算出して,その値が 9.5 枚に達した日である「全 梢葉基準日」を決定した.なお,展葉数の平均値が 9.5 枚に達する前に調査を終了している,あるいは,調 査間隔により展葉数が 9.5 枚を大きく上回った調査 年の全梢葉基準日を補正するために,最終調査日と その前の調査日の展葉数から展葉速度(枚/日)を 調査年ごとに算出し,その平均値を用いて全梢葉基 準日を推定した.調査樹や新梢の数が少なかった 1996 年と 2008 年を除く 30 年分の全梢葉基準日の展 葉数データを用いて,展葉数の平均値(枚),最大 値(枚),最小値(枚),標準偏差(枚)を算出した. は,大粒系品種の増加により減少傾向にあるものの, 府内ブドウ栽培面積 336 ha のうち 282 ha と約 8 割 を占める10)主力品種である.‘デラウェア’の栽培 では,1959 年にジベレリン(GA3,以下 GA)2 回 処理による無核化,果粒肥大促進に成功して以来, 10 年を経ぬうちにほぼ全国で GA2 回処理が実施さ れるようになった2)  ‘デラウェア’の GA2 回処理のうち,満開前の GA1 回目処理(以下,本稿では満開前の GA1 回目 処理を GA 処理と表記する)を適期以外に実施する と「花振るい」や「有核果の混入」が発生するため, その適期を把握することは非常に重要である.その ため,露地での‘デラウェア’栽培では,新梢およ び花穂の生育観察や,気象観測資料を用いた GA 処 理適期把握手法が全国で検討されてきた9).その中 で,新梢の展葉数を指標とした方法は取り入れやす く最も一般的に用いられている6).例えば,山梨県 では,圃場内で平均的な生育を示すとされる第 2 新 梢(結果母枝の先端から 2 番目の新梢)を対象にし て,その展葉数の平均値が 10 枚~11 枚を GA 処理 適期の開始日,11 枚~12 枚を中心日,11 枚~13 枚 を後期としている.また,GA 処理が成功する期間 を「適期の幅」と呼び,平年の気象条件で 6 日間と している6).一方,大阪府では,結果母枝上のほぼ すべての新梢を対象にして,その展葉数の平均値が 9.5 枚に達した日(以下,全梢葉基準日とする)を GA 処理適期の開始日としている2).筆者の所属す る地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究 所(以下,当所とする)では,この指標に基づいた GA 処理適期判定結果を,ホームページで広く情報 提供している1).これは大阪府内の生産者が自園の GA 処理日を決める際の参考とされているため,十 分な信頼性を確保することを目指して,約 10 a の圃 場で 3~4 樹から各 8 本程度選んだ結果母枝上のほ ぼすべての新梢(約 80~110 本)を調査している. 一方,甲府市ジベ処理委員会(1978)6)の指標では, 第 2 新梢に限定して「数本を選ぶ」としていて,個々 の農家が実施できる平易な方法が提示されている. しかしながら,これらのサンプリング方法はいずれ も経験的なものであるため,サンプリングする新梢 は第 2 新梢が適切かどうか,あるいは,実質的な精 度を得るうえで必要なサンプル数であるか否かにつ

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としてその割合を求めた.各調査年における着粒密 度,有核粒数,果房重,果粒重の GA 処理日ごとの 比 較 に は TukeyHSD 法 を 用 い,R 3.4.1(R Core Team, 2017)11)で解析した. 3 第 1 新梢,第 2 新梢を用いた場合の推定誤差と サンプル数の関係  結果母枝内の新梢の位置が展葉数に及ぼす影響を 把握するため,全梢葉基準日における展葉数を新梢 の位置ごと(結果母枝先端を第 1 新梢とした)に集 計した.ただし,各調査年において新梢の位置ごと に新梢数を集計した際に,新梢数が 5 本に満たない 場合は算出から除外した.全新梢および新梢の位置 ごとの展葉数の平均値の比較には TukeyHSD 法を用 い,R 3.4.1(R Core Team, 2017)11)で解析した.  ここまでの解析から,後述のとおり第 1 新梢,第 2 新梢が比較的展葉数のばらつきが少なかったこと から,第 1 新梢および第 2 新梢を対象としてサンプ ル数と展葉数の推定誤差との関係を解析した.一般 に,ある対象グループ(この場合は圃場の第 1 新梢 および第 2 新梢の展葉数)の分散の推定値 s2が既知 の場合,サンプル数とデータの推定誤差との関係を 解析することができる14, 15).すなわち,平均値の区 間推定を行う t 検定において,95%信頼区間 L(デー タに対して 5%水準の検定で棄却されない母数の値 の範囲)と平均の推定値 M,サンプル数 N および危 険率 ta(自由度 N-1)との関係は, 2 全梢葉基準日による GA 処理適期判定の妥当性 の検討  全梢葉基準日による GA 処理適期判定の妥当性を 確認するため,1987 年,1988 年,1989 年,1991 年, 1992 年,1993 年,1994 年,1995 年,1997 年,2003 年の 10 年分について,全梢葉基準日を中心とした 時期(第 1 表)に GA 処理(100 ppm)を行った. 調査樹は展葉数の測定と同じほ場,同じ樹齢,同じ 栽培条件のデラウェア 3 樹(1992 年は 2 樹)を用い た.各調査樹から平均的な生育の結果母枝を 1~4 本ずつスポット状に選び,発生した新梢(樹あたり 3~12 本,計 9~29 本/区)に着生した花穂に時期 を変えて GA 処理(100 ppm)を実施した.GA2 回 目処理(100 ppm)は全梢葉基準日に最も近い日に GA 処理した花穂の満開約 10 日後に一斉処理した. なお,本試験では摘粒は実施しなかった.  果実品質調査は,まず成熟した基部第 2 果房(な ければ第 1 もしくは第 3 果房で代用)を採取して果 房重を測定した.次に,全果粒を切り離し,果穂軸 の主穂長(着粒部分),有核粒数,果粒重(無核粒 の全重量を無核粒数で除した値),着粒密度(腐敗 粒数,有核粒数と無核粒数の合計を主穂長で除した 値),無核粒果汁のBrix値(以下,糖度)とNaOH(0.1N) による滴定酸度(以下,酸度)を測定した.また, 有核粒数(粒/房),着粒密度(粒/cm),果房重(g), 果粒重(g)に着目し,年次変動を考慮した基準(第 1 表)を設定し,基準を満たした果房を「良果房」 有核粒数 着粒密度 果房重 果粒重 (粒/房) (粒/cm)g)g) 1987 5月12日 5/7, 9, 11, 13*, 15, 18, 21 4以下 8以上13未満 100以上 1.2以上 1988 5月16日 5/9, 12, 15, 16, 18, 24 〃 〃 100以上 1.2以上 1989 5月15日 5/8, 10, 13, 15, 18, 20, 24 〃 〃 100以上 1.2以上 1991 5月13日 4/30, 5/3, 6, 10, 13, 17 〃 〃 90以上 1.0以上 1992 5月15日 5/11, 16, 19 〃 〃 100以上 1.2以上 1993 5月17日 5/7, 10, 13, 17, 21, 24 〃 〃 90以上 1.0以上 1994 5月12日 5/2, 6, 9, 12, 16 〃 〃 90以上 1.0以上 1995 5月18日 5/6, 10, 16, 18, 23, 26 〃 〃 70以上 0.8以上 1997 5月8日 4/28, 5/6, 9, 12, 17, 20 〃 〃 100以上 1.2以上 2003 5月9日 5/4, 7, 9, 12 〃 〃 100以上 1.2以上 調査年 良果房の基準 GA1回目処理日y (月/日) 全梢葉基準日z 第 1 表 各調査年の GA1 回目処理日および良果房の基準 z 調査対象とした全新梢の展葉数の平均値が 9.5 枚に達した日 y *は GA1 回目処理後に降雨があったため,果実品質調査から除外した処理日を示す

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度の差がみられ,標準偏差の平均値は 1.4 枚であっ た.また,全梢葉基準日付近の展葉速度(枚/日) の平均値は 0.4 枚/日であった. 2 GA 処理時期と果実品質との関係  全梢葉基準日前後における GA 処理日と果実品質 との関係を第 3 表に示す.調査した 10 年分の果房 特性を概括すると,GA 処理が早いほど主穂が長く なり着粒密度が低く,処理が遅いと密着房となって 有核粒が多く混入した.果房重と果粒重は,年によっ て処理が早い,あるいは遅い場合に小さかった.な お,糖度,酸度には一定の傾向が認められなかった (データ略).次に,良果房率をみると,GA 処理適 期の範囲は調査年によって多少前後したものの,同 一年での相対的な良果房率を比較すると,10 年分の 反復のほとんどで全梢葉基準日付近の GA 処理で良 果房率が高かった. 3 第 1 新梢,第 2 新梢のサンプル数と推定誤差と の関係  1987 年から 2018 年までのうち 30 年分のデータに おける全梢葉基準日の展葉数と結果母枝内の新梢の 位置との関係を第 4 表に示す.展葉数は結果母枝内 の先端である第 1 新梢が 10.7 枚で最も大きく,それ 以降は第 2 新梢で 10.2 枚,第 3 新梢で 9.2 枚,第 4 新梢で 8.8 枚,第 5 新梢で 8.7 枚,第 6 新梢で 8.3 枚 と徐々に減少した.展葉数の標準偏差の平均値は第 1 新梢,第 2 新梢,第 5 新梢で 1.0 枚となり,他の 新梢よりも低い値を示した.  1987 年から 2018 年までのうち 30 年分のデータか ら算出した全梢葉基準日における第 1 新梢および第 2 新梢のサンプル数と展葉数の推定誤差との関係を それぞれ第 5 表,第 6 表に示す.推定誤差の算出に おいて,例えば,2018 年の第 1 新梢の全梢葉基準日 における展葉数(平均値 M = 11.2)をみると,24 本(全サンプル)の新梢サンプリングの結果,標準 偏差 0.9,平均値と信頼区間は危険率 5% で,11.2 ± 0.4 枚(10.8 枚~11.6 枚)と算出された.この標 準偏差をこの年の圃場を代表する値とみなし,サン プル数を 2 本,3 本,5 本,8 本,10 本,20 本とし た時,危険率 5% の推定誤差は,それぞれ 7.7 枚,2.1 枚,1.1 枚,0.7 枚,0.6 枚,0.4 枚となった.この推 L = M ± ta s/N 0.5 となる.ここから,サンプル数 N における平均値推 定の精度(推定誤差 D)は,以下の式で与えられる. D = ta s/N 0.5  ここで,各調査年の分散の推定値 s2を,圃場を代 表する値(母分散)とみなし,推定誤差の算出をす べての調査年で行い,それぞれのサンプル数ごとに 推定誤差の危険率 5% での信頼区間を算出した. Ⅲ 結   果 1 全梢葉基準日における展葉数の統計量  2018 年における発芽日から全梢葉基準日までの展 葉数の平均値の推移を第 1 図に示す.2018 年の展葉 数の平均値は,発芽日(4 月 2 日)から徐々に増加し, 5 月 5 日に 9.6 枚となった.この結果より,2018 年 の全梢葉基準日は 5 月 5 日とした.他の調査年にお いても同様の方法で全梢葉基準日を決定した.  1987 年から 2018 年までのうち 30 年分のデータに おける全梢葉基準日の展葉数の統計量を第 2 表に示 す.全梢葉基準日の平均値は 5 月 11 日,最も早い 年が 5 月 2 日,最も遅い年が 5 月 18 日であった. 各調査年の全梢葉基準日における展葉数の最大値, 最小値の平均値はそれぞれ 12.8 枚,5.7 枚で 7 枚程 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 5 10 15 20 25 30 35 40 展 葉 数 ( 枚 ) z 調査日(月/日)y 9.5枚 第 1 図  2018 年の発芽日から全梢基準日までの展葉数の 推移 z 調査対象とした全新梢の展葉数の平均値(n = 112) y 発芽日から 2~4 日おきに計 11 回調査した

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0.04 枚と計算された(第 6 表). Ⅳ 考   察  1987 年から 2018 年における全梢葉基準日(調査 対象とした全新梢の展葉数の平均値が 9.5 枚に達し た日)は調査年によって大きく変動し,最も早い年 では 5 月 2 日,最も遅い年では 5 月 18 日と 2 週間 程度の差がみられた(第 2 表).これは,発芽の早 晩や,発芽後の生育に影響する気温8,13)が調査年に 定誤差の算出をすべての調査年で行い,それぞれの サンプル数ごとに推定誤差の危険率 5% での信頼区 間を算出したところ,第 1 新梢のサンプル数が 2 本, 3 本,5 本,8 本,10 本,20 本の推定誤差の信頼区 間は,それぞれ 9.0 ± 0.8 枚,2.5 ± 0.2 枚,1.2 ± 0.1 枚,0.8 ± 0.1 枚,0.7 ± 0.1 枚,0.5 ± 0.04 枚と計算 された(第 2 図,第 5 表).同様に第 2 新梢のサン プル数が 2 本,3 本,5 本,8 本,10 本,20 本の推 定誤差の信頼区間は,それぞれ 9.2 ± 0.8 枚,2.5 ± 0.2 枚,1.3 ± 0.1 枚,0.9 ± 0.1 枚,0.7 ± 0.1 枚,0.5 ± 差 偏 準 標 値 小 最 値 大 最 値 均 平 梢 新 枝 母 果 結 樹 1987 *w 3 30 99 4月8日 5月12日 34 0.4 9.7 12.4 7.4 1.0 1988 3 29 109 4月12日 5月16日 34 0.4 9.6 13.0 5.5 1.1 1989 3 30 111 4月8日 5月15日 37 0.2 9.8 12.7 6.5 1.1 1990 * 3 30 107 4月4日 5月13日 39 0.5 9.7 12.4 7.4 1.1 1991 3 30 105 4月7日 5月13日 36 0.4 9.6 12.0 6.5 1.2 1992 3 30 143 4月6日 5月15日 39 0.4 9.8 12.5 3.0 1.5 1993 3 30 110 4月7日 5月17日 40 0.3 9.7 12.0 7.0 1.1 1994 3 30 106 4月12日 5月12日 30 0.3 9.9 14.0 5.5 1.7 1995 * 3 30 114 4月7日 5月18日 41 0.5 9.6 12.4 4.9 1.7 1997 3 24 88 4月5日 5月8日 33 0.8 9.8 12.5 6.5 1.4 1998 * 3 21 84 4月2日 5月2日 30 0.4 9.9 13.3 6.8 1.5 1999 * 3 26 88 4月6日 5月12日 36 0.4 9.7 12.8 5.7 1.4 2000 3 21 76 4月10日 5月15日 35 0.3 9.6 12.5 4.5 1.3 2001 * 4 24 101 4月8日 5月10日 32 0.5 9.6 12.6 7.1 1.2 2002 * 4 24 92 3月31日 5月4日 34 0.3 9.7 12.3 6.8 1.1 2003 3 21 84 4月9日 5月9日 30 0.3 9.6 12.5 7.5 1.0 2004 * 3 24 91 4月3日 5月5日 32 0.5 9.8 13.4 5.9 1.5 2005 3 24 95 4月9日 5月9日 30 0.3 9.7 13.5 3.0 1.8 2006 * 3 24 88 4月11日 5月16日 35 0.3 9.6 12.4 6.9 1.1 2007 3 21 81 4月1日 5月10日 39 0.4 9.6 12.0 2.0 1.7 2009 * 3 24 93 4月7日 5月11日 34 0.2 9.6 12.7 7.2 1.1 2010 * 3 24 94 4月4日 5月15日 41 0.3 9.9 12.8 6.3 1.4 2011 3 24 94 - 5月11日 - 0.7 9.7 13.0 4.0 1.5 2012 * 3 24 100 - 5月11日 - 0.3 9.6 12.3 5.8 1.4 2013 3 24 116 - 5月13日 - 0.4 9.6 12.5 4.0 1.6 2014 * 3 24 130 - 5月12日 - 0.3 9.7 12.9 6.9 1.3 2015 3 24 112 - 5月8日 - 0.5 9.6 13.5 4.0 1.7 2016 * 3 24 111 - 5月9日 - 0.4 9.7 13.7 5.7 1.7 2017 * 3 24 111 - 5月14日 - 0.3 9.9 13.3 4.8 1.8 2018 3 24 112 4月2日 5月5日 33 0.3 9.6 13.5 6.0 1.5 平均 3 25 102 4月7日 5月23日 35 0.4 9.7 12.8 5.7 1.4 調査年z 調査数(本) 発芽日 全梢葉基準日y発芽日-全梢葉基準日の日数 展葉数(枚) 展葉速度x (枚/日) 第 2 表 各調査年の全梢葉基準日の統計量 z 1996 年および 2008 年は調査樹や新梢の数が少なかったため除外した y 調査対象とした全新梢の展葉数の平均値が 9.5 枚に達した日 x (最終調査日の展葉数―最終調査日より 1 回前の調査日の展葉数)/最終調査日と最終調査日より 1 回前の調査日の日差 w *は 0.4 枚 / 日で展葉が進むと仮定し,全梢葉基準日を推定した調査年を示す

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5月7日 -5 1.6 bx 9.7 c 127 bc 1.4 a 63.0 5月9日 -3 2.2 b 9.6 c 160 a 1.5 a 57.7 5月11日 -1 1.6 b 10.5 bc 147 ab 1.4 a 62.1 5月15日 3 1.1 b 11.2 bc 129 bc 1.4 a 57.1 5月18日 6 1.9 b 13.7 a 128 bc 1.2 b 11.1 5月21日 9 23.9 a 11.6 b 112 c 1.2 b 0.0 5月9日 -7 3.6 ab 5.3 c 65 d 1.4 a 9.1 5月12日 -4 1.1 b 7.2 c 98 cd 1.5 a 43.5 5月15日 -1 1.2 b 11.0 b 142 ab 1.4 a 64.7 5月16日 0 0.7 b 10.0 b 151 a 1.4 a 68.2 5月18日 2 4.1 ab 13.0 a 145 a 1.3 b 35.0 5月24日 8 9.7 a 11.6 ab 112 bc 1.2 b 0.0 5月8日 -7 3.2 b 8.1 d 95 b 1.5 a 33.3 5月10日 -5 1.0 bc 8.3 cd 98 ab 1.5 ab 30.4 5月13日 -2 0.2 c 9.6 bcd 124 a 1.4 abc 57.9 5月15日 0 0.2 c 9.7 bcd 101 ab 1.3 bcd 45.5 5月18日 3 0.0 c 11.1 b 102 ab 1.3 de 36.4 5月20日 5 1.6 bc 10.3 bc 93 b 1.3 cde 35.0 5月24日 9 22.4 a 14.9 a 99 ab 1.1 e 0.0 4月30日 -13 0.8 ab 5.3 b 36 d 1.1 a 0.0 5月3日 -10 0.8 ab 5.2 b 71 bc 1.3 a 5.0 5月6日 -7 1.1 a 5.5 b 53 cd 1.2 a 17.6 5月10日 -3 0.1 b 8.4 a 90 ab 1.3 a 43.8 5月13日 0 0.1 b 10.6 a 99 a 1.1 a 57.1 5月17日 4 0.3 ab 10.5 a 83 ab 1.0 a 8.3 5月11日 -4 1.6 a 11.1 a 117 a 1.3 a 53.3 5月16日 1 0.9 a 10.9 a 140 a 1.4 a 66.7 5月19日 4 0.7 a 11.6 a 132 a 1.3 a 57.1 5月7日 -10 4.8 c 7.5 b 80 b 1.2 b 16.7 5月10日 -7 3.3 c 7.6 b 89 ab 1.4 ab 27.8 5月13日 -4 0.9 c 9.1 a 105 ab 1.5 a 35.3 5月17日 0 0.5 c 9.3 a 107 ab 1.3 ab 58.3 5月21日 4 12.4 b 9.1 a 100 ab 1.3 ab 4.2 5月24日 7 29.4 a 9.9 a 114 a 1.2 b 0.0 5月2日 -10 5.2 b 7.0 b 78 c 1.3 a 14.3 5月6日 -6 5.3 b 8.6 a 120 a 1.4 a 50.0 5月9日 -3 3.7 b 8.5 a 87 bc 1.2 a 23.5 5月12日 0 1.8 b 9.2 a 113 b 1.4 a 46.7 5月16日 4 16.6 a 8.3 ab 91 bc 1.5 a 6.7 5月6日 -12 4.5 b 5.3 b 19 bc 0.3 d 0.0 5月10日 -8 2.1 bc 4.8 b 15 c 0.3 d 0.0 5月16日 -2 0.3 c 10.7 a 80 a 0.9 a 22.7 5月18日 0 0.1 c 10.2 a 67 a 0.8 ab 26.9 5月23日 5 3.3 bc 9.1 a 41 b 0.6 c 0.0 5月26日 8 17.8 a 10.1 a 61 ab 0.7 bc 0.0 4月28日 -10 6.6 cd 6.7 c 61 b 1.2 c 0.0 5月6日 -2 1.1 cd 9.6 b 149 a 1.7 a 53.3 5月9日 1 0.1 cd 12.4 b 163 a 1.5 ab 47.1 5月12日 4 0.6 d 11.6 b 137 a 1.5 ab 52.9 5月17日 9 25.8 b 15.3 a 160 a 1.3 bc 0.0 5月20日 12 33.1 a 16.2 a 162 a 1.3 bc 0.0 5月4日 -5 12.1 a 4.2 c 95 c 2.0 a 0.0 5月7日 -2 14.3 a 6.3 bc 111 bc 1.9 a 0.0 5月9日 0 2.8 a 8.4 ab 152 a 1.8 a 44.4 5月12日 3 7.3 a 8.7 a 133 ab 1.9 a 11.1 調査年 GA1回目処理日y 全梢葉基準日 との日差 全梢葉基準日z (粒/房)有核粒数 果房重g) 果粒重g) 良果房率 (%) 着粒密度 (粒/cm) 1989 5月12日 5月16日 5月15日 1991 5月13日 1987 1988 1997 5月8日 2003 5月9日 1992 5月15日 1993 1995 5月18日 1994 5月17日 5月12日 第 3 表 各調査年における GA1 回目処理日の違いが果実品質に及ぼす影響 z 調査対象とした全新梢の展葉数の平均値が 9.5 枚に達した日 y 全梢葉基準日に最も近い GA1 回目処理日を太字で示した x 各年度の同一項目の異なる英文字間には,TukeyHSD 検定により 5%水準で有意差があることを 示す

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よって異なるためだと考えられる.  全梢葉基準日を用いた GA 処理適期判定の妥当性 を確認するために,全梢葉基準日前後で GA 処理を 2~5 日おきに実施したところ,全梢葉基準日付近で 良果房率が高い傾向を示すことがわかった(第 3 表).これらは GA 処理時期と果実品質の関係に関 する過去の知見5)と概ね合致するものであった.こ のことから,暦日や発芽後日数による GA 処理適期 判定と比較して,全新梢基準日は信頼性の高い指標 であることを確認できたといえる.  結果母枝内の新梢の位置ごとに全梢葉基準日にお ける展葉数を集計した結果,展葉数は先端の第 1 新 梢で最も多く,基部に向かって徐々に減少した(第 4 表).これは結果母枝の先端付近の芽が旺盛に成長 1987 23 22 10.5 0.9 1988 28 27 10.5 0.9 1989 30 29 10.6 0.8 1990 30 29 10.6 1.0 1991 29 28 10.4 0.8 1992 30 29 10.9 0.8 1993 30 29 10.4 1.0 1994 30 29 11.4 1.1 1995 30 29 10.8 0.8 1997 24 23 10.4 0.8 1998 19 18 10.9 1.2 1999 26 25 10.2 1.6 2000 21 20 10.5 1.1 2001 24 23 10.4 1.0 2002 24 23 10.6 1.0 2003 21 20 10.6 0.8 2004 24 23 10.9 1.2 2005 22 21 10.9 1.2 2006 24 23 10.4 0.8 2007 21 20 10.8 0.7 2009 24 23 10.6 0.9 2010 24 23 10.9 1.0 2011 24 23 10.5 1.2 2012 24 23 10.6 1.2 2013 24 23 10.5 1.1 2014 23 22 10.8 0.9 2015 24 23 11.4 0.9 2016 23 22 10.9 1.9 2017 24 23 11.6 0.8 2018 24 23 11.2 0.9 平均(展葉数)z - - 10.7 1.0 9.0 ± 0.8 2.5 ± 0.2 1.2 ± 0.1 0.8 ± 0.1 0.7 ± 0.1 0.5 ± 0.04 0.4 ± 0.04 0.9 0.4 0.5 0.4 0.5 0.4 0.5 0.6 0.4 1.3 0.6 0.6 0.8 1.0 0.8 1.6 0.7 0.7 2.1 1.1 1.2 1.0 1.3 1.0 2.0 1.2 0.9 1.4 4 . 0 1 . 1 2.1 2.4 2.1 2.7 1.9 3.9 7.7 0.8 7.1 2.0 1.0 0.7 0.6 0.4 0.3 4.6 2.3 16.6 0.4 4 . 0 1 . 1 3 . 2 1 . 8 2.3 1.1 8.2 0.5 10.0 2.8 1.4 0.9 0.8 0.5 0.5 2.9 1.5 10.6 0.8 0.8 0.7 0.4 0.4 10.7 3.0 1.5 1.0 0.9 0.6 0.5 2.5 1.2 0.7 0 . 9 0.3 8.3 2.3 1.2 0.8 0.7 0.4 0.4 1.9 0.9 0.5 7 . 6 0.5 7.6 2.1 1.1 0.7 0.6 0.4 0.4 8 . 0 9 . 2 1.0 4 . 0 1 0.4 11.0 3.1 1.5 1.0 0.9 0.6 0.5 5 . 0 9 . 1 0.6 8 . 6 0.4 8.8 2.4 1.2 0.8 0.7 0.5 0.4 7 . 0 4 . 2 0.8 6 . 8 0.6 9.6 2.7 1.3 0.9 0.8 0.5 0.5 1.1 0.7 3 . 1 1 . 4 1 0.3 11.1 3.1 1.5 1.0 0.9 0.6 0.6 0.6 0.4 7 . 0 0 . 7 0.4 6.8 1.9 0.9 0.6 0.5 0.4 0.3 0.8 0.5 9 . 0 6 . 9 0.3 9.3 2.6 1.3 0.9 0.7 0.5 0.4 0.6 0.4 7 . 0 4 . 7 0.4 7.4 2.0 1.0 0.7 0.6 0.4 0.3 0.7 0.5 8 . 0 6 . 8 0.3 7.4 2.0 1.0 0.7 0.6 0.4 0.3 0.6 0.4 7 . 0 6 . 7 8.3 2.3 1.2 0.8 0.7 0.4 0.4 8本 10本 20本 全サンプル 推定誤差 推定誤差 推定誤差 推定誤差 推定誤差 推定誤差 調査年 新梢数 自由度 展葉数 標準偏差 サンプル数 2本 3本 5本 推定誤差 第 5 表 全梢葉基準日における第 1 新梢のサンプル数と展葉数の推定誤差との関係 z各サンプル数における値は,各調査年の推定誤差から算出した信頼区間(危険率 5%,平均値±推定誤差)を示す 標準偏差 第1新梢 30 748 10.7 ay 1.0 第2新梢 30 730 10.2 b 1.0 第3新梢 30 720 9.2 d 1.1 第4新梢 30 546 8.8 e 1.2 第5新梢 19 182 8.7 de 1.0 第6新梢 6 48 8.3 e 1.3 全新梢 30 3045 9.7 c 1.4 新梢の位置z 調査年数(年) 新梢数(本) 展葉数(枚) 平均値 第 4 表  全梢葉基準日における結果母枝内の新梢の 位置と展葉数の関係 z 結果母枝内の先端の新梢を第 1 新梢とした y 異なる英文字間には TukeyHSD 検定により 5%水準で有 意差があることを示す

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し,中間や基部の芽の成長はそれよりも劣る頂芽優 勢性3)によるものと考えられる.甲府市ジベ処理委 員会(1978)6)の方法に採用されている第 2 新梢に ついて,全梢葉基準日の展葉数の 30 年分の平均値 は 10.2 枚であった(第 4 表).これは,甲府市ジベ 処理委員会の方法から求めた GA 処理適期の開始日 の平均展葉数 10 枚~11 枚とほぼ一致した.すなわ ち,甲府市ジベ処理委員会(1978)6)と段(1996)2) が示した方法は,計測手法が異なるものの,得られ る予測結果には整合性があるといえる.しかし,標 準偏差を比較すると,第 2 新梢のみの標準偏差は全 新梢より小さかった(第 4 表).すなわち,結果母 枝上の全新梢を測定するより第 2 新梢のみを測定し た方が,推定誤差が小さくなる結果であった.また, 1987 22 21 10.0 0.7 1988 26 25 9.9 0.9 1989 28 27 10.3 0.9 1990 30 29 10.0 0.7 1991 28 27 10.0 1.0 1992 29 28 10.3 1.2 1993 30 29 10.1 0.9 1994 28 27 10.5 1.0 1995 30 29 10.5 0.9 1997 23 22 10.7 1.2 1998 20 19 10.4 1.1 1999 25 24 10.3 1.0 2000 20 19 9.9 0.7 2001 24 23 10.1 1.0 2002 24 23 10.0 0.8 2003 21 20 10.0 0.8 2004 24 23 10.1 1.3 2005 23 22 10.8 1.3 2006 24 23 9.9 0.9 2007 20 19 10.2 1.2 2009 24 23 10.1 1.0 2010 24 23 10.4 1.1 2011 24 23 9.9 1.2 2012 24 23 9.8 1.5 2013 24 23 10.5 1.0 2014 24 23 10.7 0.8 2015 21 20 10.5 0.9 2016 21 20 10.4 1.7 2017 23 22 10.6 1.0 2018 22 21 10.5 0.8 平均(展葉数)z - - 10.2 1.0 9.2 ± 0.8 2.5 ± 0.2 1.3 ± 0.1 0.9 ± 0.1 0.7 ± 0.1 0.5 ± 0.04 0.4 ± 0.04 調査年 新梢数 自由度 展葉数 標準偏差 サンプル数 2本 3本 5本 推定誤差 全サンプル 6.3 1.8 8.4 2.3 8.0 2.2 8本 10本 20本 推定誤差 推定誤差 推定誤差 推定誤差 推定誤差 推定誤差 0.9 1.2 1.1 0.5 0.7 0.6 6.1 1.7 9.0 2.5 10.9 3.0 0.8 1.2 1.5 10.4 2.9 9.9 2.7 8.8 2.4 8.0 2.2 9.2 2.5 8.3 2.3 7.4 2.0 11.9 3.3 11.5 3.2 6.7 1.9 8.9 2.5 7.3 2.0 10.2 2.8 10.5 2.9 13.5 3.7 8.0 2.2 10.7 3.0 8.6 2.4 15.6 4.3 9.1 2.5 7.5 2.1 9.2 2.5 6.9 1.9 8.0 2.2 0.9 1.1 2.2 1.3 1.0 0.6 0.7 1.5 0.8 0.7 0.3 1.5 1.2 1.4 1.5 1.9 1.3 1.2 1.0 1.0 1.6 1.6 1.1 1.3 1.1 1.4 1.4 0.8 0.6 1.1 0.6 0.8 0.7 0.6 0.8 1.0 0.7 1.2 0.9 0.9 0.8 1.0 0.9 1.0 0.8 0.9 1.0 1.3 0.9 0.8 0.7 0.7 1.1 1.1 0.7 0.5 0.7 0.6 0.5 0.7 0.9 0.6 0.7 0.7 0.5 1.2 0.7 0.6 0.3 0.4 0.4 0.3 0.5 0.8 0.8 1.1 0.7 0.5 0.6 0.6 0.9 0.9 0.6 0.9 0.7 0.8 0.8 0.7 0.3 0.4 0.3 0.3 0.4 0.5 0.3 0.7 0.5 0.6 0.4 -0.5 0.5 0.5 0.5 -0.5 0.4 0.6 0.4 0.5 0.4 0.5 0.4 0.3 0.4 0.6 0.6 0.4 0.4 0.3 0.5 0.5 0.4 0.3 0.4 0.8 0.4 0.4 0.4 0.6 0.6 0.4 0.5 0.5 0.6 0.4 0.4 0.4 0.4 0.8 0.5 第 6 表 全梢葉基準日における第 2 新梢のサンプル数と展葉数の推定誤差との関係 z各サンプル数における値は,各調査年の推定誤差から算出した信頼区間(危険率 5%,平均値±推定誤差)を示す 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0 5 10 15 20 推 定 誤 差 ( 枚 ) 第1新梢サンプル数(本) 第 2 図  全梢葉基準日における第 1 新梢のサンプル数(本) と推定誤差(枚)との関係(危険率 5%,1987 年~2018 年の平均値)

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期の許容範囲は長年の経験から,適期中心日を挟ん で約 6 日とされている6).つまり,GA 処理適期の 中心日から許容できる誤差は前後 2.5 日分,すなわ ち± 1.0 枚(0.4 枚×前後 2.5 日分)と仮定される. まず,第 1 新梢について第 5 表をみると,サンプル 数を 8 本とした場合に,推定誤差の 95%信頼区間が 0.8 ± 0.1 枚(0.7 枚~0.9 枚)となり,許容できる誤 差範囲である 1.0 枚以内に収まる.同様に第 2 新梢 では第 6 表より,サンプル数を 8 本とした場合に推 定誤差の 95%信頼区間が 0.9 ± 0.1 枚(0.8 枚~1.0 枚) となり,許容できる誤差範囲である 1.0 枚以内に収 まる.以上より,具体的には,第 1 新梢を用いる場 合は第 1 新梢を 8 本選択して得られた展葉数の平均 値が 10.5 枚に達した日を,第 2 新梢を用いる場合は 第 2 新梢を 8 本選択して得られた展葉数の平均値が 10 枚に達した日を GA 処理適期とすればよいと考え る.  以上より,新梢の展葉数を用いた GA 処理適期把 握手法において,適切な新梢の位置やサンプル数を 30 年間のデータから定量的に示すことができた.甲 府市ジベ処理委員会(1978)6)の指標では,新梢の 展葉数にばらつきがあるため,他の方法を含めた総 合的な判断が重要と指摘されている.他の GA 処理 適期把握手法としては,花粉の発育状態を指標とし たものや,気温などの気象データを指標としたもの がある6).しかし,これらの手法では顕微鏡観察や 気象観測装置が必要であり生産者が自ら行うのは容 易ではなく,実用上は展葉数だけで GA 処理適期を 把握することが望ましい.そこで,本研究で明らか となったように,第 1 新梢もしくは第 2 新梢を 8 本 サンプリングすることで,展葉数だけの判断でも実 質的な信頼性を担保できると考えられる.GA 処理 適期の把握の上で,様々な手法による総合的な判断 の重要性を否定するものではないが,十分な規模の サンプリングを行えば展葉数だけを指標にしても問 題は生じないと予想される.なお,今回の結果の前 提となる展葉速度 0.4 枚/日は,あくまで大阪での データであり全ての地域に当てはまるものとはいい がたい.今後,今回の知見を活用しながら,他の地 域や作型でのデータを蓄積していく必要がある. 第 1 新梢,第 5 新梢の標準偏差は,第 2 新梢と同程 度であったものの,第 5 新梢は芽かきされる可能性 が高いことを考慮すると実用性が低いといえる.そ こで,以下では第 1 新梢,第 2 新梢を対象として, サンプル数と展葉数の推定誤差の関係を解析した.  推定誤差とサンプル数の関係は,サンプル数を増 やすと推定誤差は減少するが,その減少程度はサン プル数の増加に伴い小さくなる(第 2 図).そのため, 必要なサンプル数を検討するには,どの程度の推定 誤差が許容されるのかを考える必要があり,まずは その許容範囲の中心,すなわち GA 処理適期の中心 日が展葉数のどこにあたるのかを議論する.近年, GA 処理時にホルクロルフェニュロン液剤を加用す ることにより,GA 処理を従来よりも早めに行い, 花穂伸長を促して着粒密度の低い,いわゆる「ゆる 房」を作る処理方法が登録された.「ゆる房」を導 入している生産者は多く7),市場でも果粒が密着し て裂果が生じやすい房より好まれる傾向がある12) また,当所が用いている全梢葉基準日は,前述のと おり GA 処理適期の開始日の指標としてきたが2) 48 年の実績のうち,降雨などによる再処理を除いて は,実質この開始日に一斉処理を行っており,その 結果,適期を逸脱する問題はほとんど生じていない. さらに,10 年分の GA 処理日を変えた果実品質調査 結果からも,全梢葉基準日からおよそ± 3 日の範囲 の良果房率は同程度であった(第 3 表).これらを 勘案すると,GA 処理適期の範囲は従前より前方に スライドし,全梢葉基準日は開始日ではなく,中心 日として以下の議論を進める.  次に,第 1 新梢,第 2 新梢の展葉数について議論 する.第 1 新梢,第 2 新梢の全梢葉基準日付近の展 葉速度を全新梢と同様の方法で算出したところ,と もに 0.4 枚/日であった.すなわち,全梢葉基準日 前日の第 1 新梢の展葉数は計算上 10.7 枚- 0.4 枚= 10.3 枚となり,全梢葉基準日に 10.5 枚に達する.同 様に,第 2 新梢展葉数は計算上 10.2 枚- 0.4 枚= 9.8 枚となり,全梢葉基準日に 10 枚に達する.ここから, 第 1 新梢では「第 1 新梢の展葉数の平均値が 10.5 枚 に達した日を GA 処理適期」,第 2 新梢では「第 2 新梢の平均展葉数が 10 枚に達した日を GA 処理適 期」とするとわかりやすい.そこで,この基準をも とに必要なサンプル数の議論を進める.GA 処理適

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1996. 5) 岸 光夫・田崎三男:ぶどうに対するジベレリ ン利用試験,農業及園芸,35,381-384,1960. 6) 甲府市ジベ処理委員会:デラウェアのジベレリ ン処理,甲府市ジベ処理委員会編,甲府市ジベ 処理委員会,山梨,1978. 7) 持田圭介・倉橋孝夫:ブドウ‘デラウェア’に おけるジベレリン処理方法の違いが裂果発生に 及ぼす影響,園学研,9,477-484,2010. 8) 本永尚彦・藤巻伸一・松本辰也:ブドウ「巨峰」 の 開 花 期 予 測 法, 新 潟 農 総 研 報,2,71-72, 2000. 9) 農林省:昭和 35.36 年度果樹試験研究年報,農 林水産技術会議事務局,1962. 10) 農林水産省生産局園芸作物課:果樹品種別生産 動向調査,ぶどう{生食用},平成 27 年産特産 果樹生産動態等調査,2015.

11) R Core Team: R: A language and environment for statistical computing, R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria, <http://www.R-project. org/>, 2017. 12) 島根県農林技術センター:ハウスぶどう(デラ ウェア)栽培指針,圃場における裂果対策, <http://www.pref.shimane.lg.jp/nogyogijutsu/ gijutsu/budou-sisin/9_1.html>,2013. 13) 杉浦俊彦・前島 勤・本條 均:ブドウの開花 予測モデルについて,園学雑,64,210-211, 1995. 14) 山縣 登:土壌および底質,環境汚染分析法 2  サンプリングと評価(水・土壌・食品),40-45, 大日本図書,東京,1973. 15) 矢内純太・松原倫子・李 忠根・森塚直樹・真 常仁志・小崎 隆:土壌診断のための水田土壌 の合理的サンプリング法の検討,土肥誌,79, 61-67,2008. Ⅳ 摘   要  新梢の展葉数を指標とする露地栽培ブドウ‘デラ ウェア’の GA1 回目処理(以下,GA 処理)適期把 握のため,サンプリングする新梢の適切な位置や本 数を定量的に検討した.1987 年から 2018 年までの うち 30 年分の新梢展葉数のデータを用い,結果母 枝上の全新梢の平均展葉数が 9.5 枚に達した日(全 梢葉基準日:大阪府で GA 処理適期の基準)におけ る結果母枝内の新梢の位置と展葉数の関係を解析し たところ,展葉数は先端の第 1 新梢で最も多く,基 部に向かうにつれて徐々に減少した.実用性を考慮 し,推定誤差が小さい第 1 新梢,第 2 新梢の展葉数 を対象にサンプル数と推定誤差との関係を解析し, GA 処置適期を逸脱する確率を 5%以下にできる範 囲を推定した.その結果,大阪の気象条件下では第 1 新梢を用いる場合は第 1 新梢を 8 本サンプリング してその平均展葉数が 10.5 枚に達した日,第 2 新梢 を用いる場合は第 2 新梢を 8 本サンプリングしてそ の平均展葉数が 10 枚に達した日が GA 処理適期の 指標になると推定された. 引 用 文 献 1) 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研 究所:露地デラウェアのジベレリン処理適期情 報,<http://www.kannousuiken-osaka.or.jp/nourin/ gijutsu/techinfo_delaware/index.html>,2018. 2) 段 正幸:ジベレリン処理による無核果形成技 術,堀内昭作編著,日本ブドウ学,388-395, 養賢堂,東京,1996. 3) 福田文夫:整枝・せん定,米森敬三編著,果樹 園芸学,190,朝倉書店,東京,2015. 4) 河瀬憲次:日本の品種変遷と育種史,堀内昭作 編 著, 日 本 ブ ド ウ 学,43, 養 賢 堂, 東 京,

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