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ピケティ経済学説の読解授業

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Academic year: 2021

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要旨  東京都目黒区の生涯学習機構“めぐろシティカレッジ”でトマ・ピケティ『21 世紀の資本論』を主題とす る授業を行った。本論文は,そのテキスト読解に関して筆者が実践した授業部分について,筆者が何をピケ ティ経済学説のポイントとしたのか,そしてそれをどのように受講者に教えたのかをまとめたものである。 キーワード:ピケティ,『21 世紀の資本(論)』,経済格差,マルクス,生涯学習

Ⅰ.初めに

 フランスの経済学者であるトマ・ピケティ(Thom-as Piketty)が執筆した “Le capital au XXIe siècle”

(2013 年)はその英訳が翌年アメリカで刊行されると 爆発的な売れ行きを示すとともに,アメリカの名だた る経済学者から高い評価を受けた1)。その反響はアメ リカにとどまらず日本も含めた諸外国に波及した。著 作の累計発行部数は世界全体で 160 万部(2015 年 1 月 時点)に達したのである。すでに先進各国ではアメリ カでウォール街占拠運動(2011 年 9 月より)が起こっ たように,経済格差の問題が人々の関心の的になって いた。日本でも経済格差やそれに連動した教育格差が さまざまな識者から論じられていた2)。格差問題を現 状と歴史的視点から取り上げたピケティの『21 世紀 の資本論』がアカデミズムばかりではなく,広範な市 民層からも受け入れられた素地は充分に存在していた のである。  筆者は 2017 年 1 月から 2 月にかけて自身が理事・講 師を務めている“めぐろシティカレッジ”で 2 回にわ たり(4 時間分),「ピケティ『21 世紀の資本論』を読 む〜経済学説上の意義と論点」というテーマで講義を 行った。  講義では,前段として,(ア)日本語のタイトルは 『21 世紀の資本』か『21 世紀の資本論』か,(イ)資 本と労働の対抗関係,(ウ)新古典派の成長論・分配 論,という主題のもとで,ピケティ経済学説が持つ経 済学史的意義を説明した。そのうえで,『21 世紀の資 本論』の内容説明に移った。そして,まとめとして, 筆者のピケティ経済学説に対する批判的検討も加えた3)  本稿は,こうした一連の講義のなかで,本著作の内 容説明に関する授業の部分について紹介するものであ る。ピケティが論じた議論の何に筆者が力点を置き, いかなる事項をどのような順序で説明していったのか が明らかになる。そして,こうした授業に対して受講 者の方々がどのような評価を下したのか,何に関心を 高めたのかが分かる感想も掲載する。

Ⅱ.ピケティ『21 世紀の資本論』の授業展

 筆者がテキストの内容理解の授業をどのように行っ たのか,その流れを次頁に記す。  『21 世紀の資本論』のテキスト読解に関する授業に おいて,ポイントとして指摘したい点が 3 点ある。 第 1 は,授業展開上の方略に関するものであるが, 授業はピケティの叙述の順序通りには進めなかったこ とである。確かに,冒頭の文章は本テキスト全体を俯 瞰する問題意識を取り上げたものとして,初めに丁寧 に説明した。しかし,その後の叙述は自身の学説に至 るまでの経済学説(マルサス,リカード,マルクス, クズネッツ等)を説明するものであったり,国民所得

ピケティ経済学説の読解授業

めぐろシティカレッジでの講義実践

The Journal of Economic Education No.37, September, 2018

Teaching Thomas Piketty’s “Capital in

the twenty-first century”:

Lesson report in lifelong education class

at Meguro city college

KOSHIDA, Toshihiko

越田 年彦

(2)

講義項目 ・冒頭の文章から ・所得格差のモデ ル ・所得格差と資産 格差の実態 ・U 字型曲線 ・U 字型の理由 ・所得格差と資産 格差 ・相続の役割と世 襲資本主義 ・資本の概念 ・マルクスとの対 比 ・資本所得比率 (β)の定義 ・βの形状 ・ヨーロッパにお ける資本所得比率 の下落 ・資本所得比率上 昇の背景 ・格差を示す他の データとの連動 講義内容 ・冒頭の文章(仏 pp. 15-16,英 pp. 1-2)を逐語的に説明しながら,ピケティ経済学説の全体像 を紹介する([仏]はフランス語版原典,[英]は英訳の翻訳本のこと)。 ・筆者が考えた所得格差のモデル=仮想例を使って,所得上位○%,所得下位○%という概念を 説明する。 ・表 7.1(勤労所得における格差),表 7.2 (資本保有における格差),表 7.3(勤労所得・資本 所得の総額から見た格差)にもとづいてアメリカとヨーロッパにおける格差の実態を説明する。 ・上位 10%層,上位 1%層が国民所得や国の総資産に占める比率の経年的軌跡が 20 世紀には U 字 型(初めは高い割合を示すが,1930 年代から 1970 年代まで下がる傾向を持ち,1980 年代より上 昇する傾向を示す)をなすことを説明する。 ・2 つの戦争による資本の物的損害(特にヨーロッパ),インフレによる資本の実質価値の低下 (特にヨーロッパ),資本や所得に対する課税強化,が要因となって,20 世紀前半では所得・資産 格差が縮減したこと(仏 p. 433,英 p. 275)を説明する。 ・アメリカの大企業経営者の法外な報酬の受領(仏 p. 471,英 p. 298)や所得・資産課税のフラ ット化により,1980 年代より,所得・資産格差が上昇傾向にあることを説明する。 ・勤労所得の不平等よりも資本所有の不平等の方が著しいこと(仏 p. 404,英 p. 257)を確認す る。 ・資本所有の格差がもっぱら相続にもとづいていること(仏 p. 388,英 p. 246)を確認したうえ で,資産の高度な集中と何代にもわたる財産の受け渡し,の 2 つで特徴付けられる経済システム をピケティが世襲社会(société d’héritiers, inheritance society),世襲資本主義(le capitalisme patrimonial, patrimonial capitalism)と命名していること(仏 p. 273,英 p. 173)を説明する。 ・ピケティにとって,資本と資産は同義であり,それは非金融資産(土地,住居,在庫品,建 物,機械類,インフラストラクチャー,特許権など)と金融資産(銀行口座,投資信託,債券, 株券,あらゆる類いの金融上の投資,保険証券,年金基金など)から構成される(仏 p. 86,英 p. 48)ことを紹介する。 ・マルクスの場合,資本はあくまでも産業資本であることを説明し(生産に要しない物財や資金 は資本概念の範疇に属さない,スラッファも同様),ピケティの資本概念が多義的であることを 確認する。 ・ピケティ経済学説のキーワードである資本所得比率(国民所得(NI)に対する私的・公的資本 (国富)の比率)を説明する。 ・グラフ 4.5 などが示すように,特に欧米では 1910 年頃には資本は国民所得の 6.5-7 倍だった が,1950年には2.5倍に下がる,しかし,1950年以降再上昇し,現在に至る,という経緯で,20 世紀の資本所得比率の形状は U 字型をなすことを説明する(ただし,ヨーロッパに比べて,アメ リカの U 字型曲線は穏やか)。 ・ヨーロッパでは 1913 年 -1950 年の資本所得比率が,崩壊という言葉がふさわしいほど下落す る事実を説明し,その理由として,戦争による物理的破壊,外国資産の破壊,貯蓄率の低さ,資 産価格の落ち込み,が要因であること紹介する。 ・資本所得比率の上昇は成長率(g)が低いために国民所得が増えないことが背景にあると考え られる点を説明する。 ・20 世紀における先進資本主義各国での格差の縮減と拡大を示す様々な指標と資本所得比率の動 向が連動していること,すなわち U 字型の形状となる事実を説明する。  ピケティが指摘した事例を列挙すると, (ア)フランス,ブリテンの資本占有率(1770-2010)も 20 世紀以降 U 字型となる(グラフ 6. 1,グラフ 6.2)。 (イ)上位 1%,上位 10%の対国民所得比(1910-2010)も U 字型となる(特にアメリカが分かり 易い)。グラフ 8.1(フランス上位 10%),グラフ 8.2(フランス上位 1%),グラフ 8.5(アメ リカ上位 10%),グラフ 8.6(アメリカ上位 10%を分解),グラフ 8.8(アメリカ上位 1%) (ウ)上位 1%,上位 10%の総資本に占める比率(フランス,1810-2010)も 20 世紀以降 U 字型 となる。同様に,ブリテンとスウェーデンも(グラフ 10.1,グラフ 10.3,グラフ 10.4)。 (エ)相続と贈与の対国民所得比(1820 年 -2010 年)も 20 世紀以降 U 字型曲線となる(グラフ 11.1,グラフ 11.12)。 (オ)全個人総資産に対する相続資産の比率(1850 年 -2100 年)も 20 世紀以降 U 字型の傾向と 予想される。すなわち,資本所得比率の上昇に伴い,その割合も上がる(グラフ 11.7)。 (カ)家計の可処分所得に対する年々の相続額の割合(1820 年 -2010 年)も 20 世紀以降 U 字型 である。すなわち,資本所得比率の上昇に伴い,その割合も上がる(グラフ 11. 8)。

(3)

や国富,資本の定義の説明であったりするので,受講 者の関心を高めにくいと考えた。そこで,取りかかり として真っ先に取り上げたのは,ヨーロッパとアメリ カにおける現在(2010 年)および過去(1910 年)の, 勤労所得,資本所有,その両者の総額から見た格差を 示す表 7.1,表 7.2,表 7.3 の紹介・理解である。 資本主義国における経済的格差の実態(その深刻さ) はこの表の一瞥で充分に把握できる。しかし,表を理 解するうえで前提となる,“所得上位 10%”や“所得 下位 50%”等の概念は簡単なモデルでの説明を経由 したうえでなければ理解しにくい。そこで,筆者はピ ケティの実際のデータの読みに入る前に次頁に記載し た仮想例を使い,所得上位 10%,1%,下位 50%等の 概念理解を進めた。  そのうえで,現在における先進各国の経済格差の実 態理解を図るとともに,20 世紀から 21 世紀にかけて, 上位 10%層,上位 1%層が各国の国民所得や国富にお いて占める割合の軌跡が U 字型の形状をなすという 長期的傾向を指摘し,その形状の意味背景を講義した のである。  第 2 は,授業内容やテキスト読解の力点に関してで あるが,授業ではマルクスの経済学説との異同の理解 をポイントにしたという点である。マルクスの学説と の比較対照を試みることでピケティの経済学説の特徴 は浮き彫りになる。両者の相違点を確認すれば,1 つ は資本概念の違いである。マルクスの場合,生産や流 通に供されている資本が資本であるのに対して,ピケ ティの場合,資本とは,土地,機械,特許権といった 非金融資産や株式,国債,投資信託等の金融資産を包 含するもので,多義的であり,資産概念との差異を設 けていない。そして最大の相違は,ピケティが資本主 義経済の枠内で経済的格差の是正を図ろうとしている こと,すなわち,目ざす社会像は福祉国家(社会国 家)であるという点である。 ・資本主義の 3 法 則(その 1) ・資本主義の 3 法 則(その 2) ・資本主義の 3 法 則(その 3) ・r > g の意味 ・ピケティの懸念 ・資本主義の核心 的矛盾 ・“ 大きな物語 ” ・経済体制に対す るピケティの見解 ・政策的提言 ・経済外倫理 (キ)相続額と勤労所得の合計に占める相続額の割合(1790 年 -2030 年)も 20 世紀以降 U 字型 となる(グラフ 11.9)。 (ク)フランスで下位 50%の平均賃金に対する上位 1%の相続者の生活水準の倍率(1790-2030) も 20 世紀以降 U 字型となる(上位 1%の勤労所得者の生活水準の倍率は 10 倍程度で不変)(グラ フ 11.10)。 (ケ)下位 50%の人々が稼いだ勤労所得よりも多くの相続を受けた個人の比率(1790 年 -2030 年)も 19 世紀末から 20 世紀以降 U 字型である(グラフ 11.11)。 ・資本占有率(α)=資本収益率(r)×資本所得比率(β)となること(仏 p. 92,英 p. 52)を 説明したうえで,これは恒等式であることを伝える。 ・資本所得比率(β)=貯蓄率(s)/一人あたりの国民所得の増加率(g)となること(仏 p. 262,英 p.166)を説明したうえで,この公式はピケティの発見ではなく,ハロッド・ドーマーの 成長理論であることを伝える。 ・資本収益率(r)>経済成長率+人口増加率(g)という歴史的傾向をピケティが発見したこと (仏 p.558,英 p.351)を説明し,グラフ 10.7,グラフ 10.9,グラフ 10.10 を示して,r > g の歴史的傾向を確認する。 ・r>gが世襲資本の増殖により生まれる所得・資産格差の拡大を意味することを原典に即して説 明する(仏 p. 573,英 p.361,仏 p. 942,英 p. 571)。 ・これからの未来では,r>gの状態の進行により,所得・資産格差の一層の拡大とそれによる社 会的正義の毀損が起こりかねないことをピケティが懸念していること(仏 p. 708,英 p. 443)を 説明する。 ・ピケティ経済学説を総括するものとして,「資本主義の核心的な矛盾は r > g である」(La contradiction centrale du capitalism:r>g, という一文(仏 p. 942,英 p. 571)を紹介する。 ・グラフ 10.11 に関連した説明で,ピケティが過去何世紀の事件を考えるとこれから 200 年に 政治的反動が起こらないと想定するのは疑わしい,あり得ない仮定である,と述べていることを 紹介し,マルクスではないが,ピケティも “ 大きな物語 ” を予想しているように思えることを伝え る(仏 p. 567,英 p. 358)。 ・ピケティはマルクスと異なり,経済的格差や資本主義の矛盾を体制変革の方法で解決すること を意図しておらず,資本主義の枠内で乗り越えようとすること(仏p. 62,英p. 31)を確認する。 ・ 格 差 の 解 決 の た め に, 世 界 規 模 で の 累 進 制 の あ る 資 本 保 有 課 税(un impôt mondial et progressif sur le capital,仏 p. 835,英 p. 515)をピケティが提唱すること(仏 p. 868,英 p. 532) を説明する。

・累進制にもとづいた資本保有課税の提唱の背景には,経済外倫理による資本主義経済の制御を 意図していること(仏 p. 816,英 p. 505)を説明する。

(4)

 一方,共通点としては,資本主義経済には基本的矛 盾があるという指摘であり(ピケティの場合,それは r > g を含意し,マルクス(エンゲルス)の場合は社 会的生産と資本主義的な取得との間の齟齬,という違 いはあるが),ピケティも格差の拡大が放置されれば, “大きな物語”が惹起されるかも知れないと言明して いる点である4)。そして何よりも,資本と労働の対抗 性・相反性を前提に議論を構成している点に両者の共 通点がある(だたし,ピケティの場合,資本概念の多 義性・曖昧さから,資本と労働の対抗性・相反性が所 得・資産の上位層と下位層との対抗性・相反性に意味 が変質しており,この点から資本と労働の対抗関係は 不分明となる,こうした点は重要な相違点なのではあ るが)。筆者がピケティのテキストのタイトルを『21 世紀の資本論』と訳する根拠は主にこの点にある。授 業では,こうした内容を受講者に講義したのである。  第 3 も,授業内容やテキスト読解の力点に関するポ イントであるが,ピケティの社会哲学への理解を進め たことである。ピケティは才能のある有為な人物が富 を築くこと自体を否定しない。しかし,その富が相続 という形で継承されるとそれは勤労による収益を凌駕 してしまい,経済的不平等を引き起こす。それは社会 的正義の価値を毀損するものである。こうした主張は ピケティが福祉国家(社会国家)をあるべきモデルと してそれを正当化する論拠として経済学説を構築して いることを示す。そして,そうした国家の実現に向け て世界規模での累進的資本保有税を提唱することから, ピケティは資本主義経済を経済外倫理の観点から規制 することを論じていることも明らかである5)。授業で は,経済学を超えて,あるべき社会を模索する社会哲 学へ受講者を誘うように講義を進めたのである。

Ⅲ.まとめ~受講者の感想~

 受講者は私の実践した授業に対してどのように思っ たのであろうか。授業の最後にアンケートを実施した のでその結果の一部をここに記載する(回答者総数 24 人,3 番目の質問は複数回答)。 本講義は知的な意味において 大変おもしろかった 18 多少おもしろかった 5 あまりおもしろくない 0 全然おもしろくなかった 1 わからない 0 内容・説明の仕方・レジュメ・資料からみて 大変わかりやすい授業だった 11 普通にわかる授業だった 11 わかりにくい箇所がある授業だった 1 総じてわかりにくい授業だった 1 本講義において興味がわいた事項は 先進国における格差の歴史的変化 16 r > g などの経済理論 7 マルクス等との学説的比較 8 その他 4 特に興味がわいた事項なし 1 自由記述の例: ・「自分は大学で経済学を卒業しており,それもあり, この講義はとても興味深かったです」。 ある国には,10 人(A さん〜 J さんまで)の国民がいる。それぞれの年収は次の通りである(A)。これを年収の高い 順から並べると(B)。 [国の総所得は 10,000 万円(1 億円)] 所得上位 10%の人の所得は国の総所得の,2800 万円/ 10,000 万円× 100 = 28%を占める。 所得上位 20%の人々の所得は国の総所得の,(2800 万円+ 2000 万円)/ 10,000 万円× 100 = 48%を占める。 所得下位 50%の人々の所得は国の総所得の ,(500 万円+ 250 万円+ 200 万円+ 150 万円+ 100 万円)/ 10,000 万 円 × 100 = 1200 万円/ 10,000 万円× 100 = 12%である。 (A) A 250 万円 F 1600万円 (B) 1 位 H 2800万円 6 位 I 500 万円 B 200 万円 G 2000万円 2 位 G 2000万円 7 位 A 250 万円 C 1000万円 H 2800万円 3 位 F 1600万円 8 位 B 200 万円 D 150 万円 I 500 万円 4 位 E 1400万円 9 位 D 150 万円 E 1400万円 J 100 万円 5 位 C 1000万円 10 位 J 100 万円

(5)

・「ピケティ論についてもっと深く知りたいと思いま す。日本の政治家達にしっかり勉強してもらいたいと 思います」。 ・「200 年間の統計を駆使したピケティの論考の結論 的なところは解説などで読み,ある程度知っていたが, 統計資料,特に図の解説をわかりやすくしていただい たので,理解が深まった。ピケティのクズネッツ批判 も興味深かった」。 ・「自由と平等という基本的政治理念について問題を つきつける名著だと思いました」。 註 1) ポール・クルーグマンとジョセフ・スティグリッツを例 示することができる。 2) 例えば橘木俊詔氏は 2010 年 7 月に『日本の教育格差』(岩 波文庫)を上梓している。 3) (ア),(イ),(ウ)の主題及びピケティ経済学説への筆者 の批判的検討といった点については,経済教育学会第 33 回全国大会(2017 年 9 月 30 日)で発表した際の資料を参 照されたい。 4) ピケティは,「社会的階級の間にこのような極端な拡散を 伴って永久に機能している経済や社会を想像するのは困 難である」(仏 p. 471,英 p. 297)とも言っている。ただ し,起こりうる事態が何なのかを言い得ることは出来な いので,“ 大きな物語 ” と表現した。 5) 経済外倫理(そして経済内倫理)については,拙稿「2 つ の経済倫理をめぐって」(『経済教育』No. 35. 2016 年 9 月) を参照されたい。 参考・引用文献

[1] Piketty, Thomas. Le capital au XXIe siècle, Édition du Seuil, 2013. Capital in the Twenty-First Century, trans-lated by Arthur Goldhammer, The Belknap Press of Har-vard University Press, 2014.

参照

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