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高齢妊婦と非高齢妊婦における骨密度・骨代謝の比較

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高齢妊婦と非高齢妊婦における骨密度・骨代謝の比較

Comparison of the changes in bone mass that occur during pregnancy

between women aged

≥35 and those aged ≤34

仲 田 靖 子(Yasuko NAKATA)

我部山 キヨ子(Kiyoko KABEYAMA)

* 抄  録 目 的 35歳以上の高齢妊婦の妊娠中の骨密度と骨代謝の変化を明らかにすることである。 対象と方法 対象は妊娠23週未満の健康な単胎妊婦42名であり,35歳以上を高齢妊婦群(19名),35歳未満を非高 齢妊婦群(23名)とし,比較検討を行った。調査方法は縦断的研究であり,妊娠24週未満を第1期,24 週以上36週未満を第2期,36週以降を第3期に分け,骨密度は妊婦健診毎に超音波伝導速度(SOS)を測 定,骨代謝マーカーは第1期と第3期にデオキシピリジノリン(DPD)と尿中カルシウム(Ca),クレア チニン(Cre)を測定した。分析は群内の変化は one-way repeated ANOVA,群間の比較は t 検定を用い た。本研究はA大学倫理委員会の審査を経て実施した。 結 果 骨密度変化は,第1期から第3期にかけて両群とも低下する傾向がみられた(高齢妊婦群の第1期から 第 3 期にかけての変化量−7.88±12.94,p=0.06,非高齢妊婦群の第 1 期から第 3 期にかけての変化量 −5.10±10.43,p=0.09)。高齢妊婦群は非高齢妊婦群に比べ変化量が大きかった。 DPDは第1期では,高齢妊婦群は6.66±5.94(nmol/mmol·Cr)で,非高齢妊婦群の12.84±15.67より低 値を示した。第3期では,高齢妊婦群は3.54±3.07で,非高齢妊婦群の9.36±8.05より有意に低値を示し た(p=0.02)。Ca/Creは第1期において高齢妊婦群は非高齢妊婦群に比べ有意に高値を示した(p=0.04)。 結 論 ①高齢妊婦群の骨密度は低下する傾向にあり,非高齢妊婦群に比べ変化量が大きい傾向がある。②高 齢妊婦群は非高齢妊婦群よりDPDは第1期において低い傾向がみられ,第3期においては有意に低かっ た。Ca/Creは第1期において有意に高かった。 高齢妊婦群は非高齢妊婦群に比べ,妊娠中の骨密度は大きく低下する傾向がある上に,骨吸収が少な くCaの排出が多いことから,産後の骨量回復が期待出来ず,骨密度低下を招きやすい状態にある。 キーワード:妊婦,高齢妊婦,骨密度,骨代謝 2017年1月5日受付 2017年9月17日採用 2017年12月22日公開

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Abstract Purpose

This study aims to compare the changes in bone mass, mineral density, and metabolism that occur during pregnancy between women aged≥35 and those aged ≤34.

Subjects and methods

Pregnancies were categorized as follows: 1st stage (≤23 weeks), 2nd stage (24-35 weeks), and 3rd stage (≥36 weeks). The subjects were 42 healthy pregnant women at≤23 weeks of gestation (n=42). The pregnant women were divided into older (≥35, n=19) and younger groups (≤34, n=23), regardless of their parity. The sound of speed (SOS) was assessed as a measure of bone mineral density during every regular prenatal checkup until≥36 weeks' gestation. The urinary levels of deoxypyridinoline (DPD) and calcium (U-Ca) were evaluated twice (at the 1st and 3rd stages) as measures of bone metabolism. Data analysis was performed using the t-test and one way repeated ANOVA; the significance level was set at 5%.

Results

There were significant differences in age and birth history between the two groups, but no differences in height, weight, or pre-pregnancy weight were observed.

In the evaluation of cross-sectional changes, the SOS tended to decrease from the 1st stage through the 3rd stage (older group: p=0.12, younger group: p=0.05). The change in the older group was larger than that in the younger group, but the difference was not significant. Even in the assessment of longitudinal changes, SOS decreased from the 1st stage through the 3rd stage, and the degree of change in the older group was large.

The urinary DPD level of the older group was significantly lower than that of the younger group (p=0.02), and its tendency to decrease from the 1st to 3rd stage was more marked in the older group (older group: p=0.1, younger group: p=0.38).

The Ca / Cre of the older group tended to decrease from the 1st to 3rd stage and was significantly higher in the 1st stage. However, the Ca / Cre of the younger group increased slightly.

Conclusion

(1) The bone mineral density of the older group tended to decrease during pregnancy, and the change was much greater in the older group than in the younger group. (2) In the older group, little bone resorption occurred, and bone formation did not increase after birth because of the large amount of Ca being lost from bone, so it can be said that prengancy probably causes a reduction in bone density in such patients. Health guidance aimed at maintaining bone density should take account of the age and living conditions of pregnant women.

Key words: pregnant women, pregnancy over 35, bone density, bone metabolism

Ⅰ.緒   言

一般女性の骨量は初経とともに急激に増加し,排卵 性周期の 確立とともに最大 骨量値 peak bone mass (PBM)に達し,その年齢は 18 歳前後とされている (太田・冬城・杉本,1996,pp.315-322)。その後,骨 量は閉経の数年前まで加齢に伴う緩除な低下が始ま り,周閉経期から更に低下し,閉経後の 10 年間で急 速に骨量低下が進行する(竹内,2013)。しかし,妊 娠中の女性は,全妊娠期間を通して胎児骨格に約30g のカルシウム(Ca)を経胎盤的に供給している(Ko-vacs, 2005, pp.105-118)。そのため,母体の骨量や骨 代 謝 は 妊 娠 中 に 大 き く 変 化 す る(Akesson, Vahter, Berglund, et al., 2004;Black, Topping, Durham, et al., 2000,森川・阿部・梅本他,2005)。妊娠中および授

乳期に母体の骨量の約5%が減少し,腰椎,大腿骨近 位部,骨盤,橈骨遠位端ともに,Ca は妊娠中に減少 すると報告されている(Karlsson, Ahlborg, 2005, pp.2-13)。1990年前半の報告では,妊娠中の骨量が減少す る(Cross, Hillman, Allen, et al., 1995;Sowers, Crutch-field, Jannausch, et al., 1991), もし くは 変 化し ない (Matsumoto, Kosha, Noguchi, et al., 1995)というもの もあったが,これらはサンプル数が少ないことや,測 定 の 間 隔 が 長 い こ と が 指 摘 さ れ て い る(Kalkwarf, Specker, 2002)。1990年後半以降骨量は妊娠中に減少 すると報告されている(Akesson, Vahter, Berglund, et al., 2004;河合,1998;松枝・高橋・守分他,1998; 田村・秋山・田口,1996;米山・池田,1998;米山・ 池田,2000)。

近年,妊産婦を取り巻く環境や妊婦自身の意識も変

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胎児発育への影響も否定できず(今野・茆原・松本 他,2011;小柳・杉山・澤野,1999),妊娠糖尿病, 妊娠高血圧症候群,前期破水,切迫早産,前置胎盤, 常位胎盤早期剥離や胎児死亡といった産科合併症も年 齢依存性に発症頻度が上昇するため(小塚・阿部・横 山他,2015;内田・栗原・林他,2016),出産年齢の 上昇は大きな社会問題である。高齢出産といわれる, 35歳以上の女性の出産割合が平成23年において(「人 口動態統計」厚生労働省,人口動態統計の概況,2011) 27.5%を占めており,平成 7 年が 9.5%,平成 17 年が 16.3%であることから,年々その割合は増加傾向にあ る。前述の通り,妊娠女性の骨量は減少することが示 唆されている。しかし,近年増加している出産年齢 35歳以上の女性は骨粗鬆症リスクが出産年齢 35 歳未 満の女性に比べて 2.164 倍に上昇したとの報告(Ahn, Lee, Park, et al., 2015)があるため,出産年齢 35 歳以 上の女性と 35 歳未満の女性は異なった骨量変化をす ることが予測される。妊娠前,産後とともに,更年期 に近い時期の女性の骨量変化を捉えることは,骨粗鬆 症予防にも重要である。 そのため,本研究では出産時 35 歳以上の高齢妊婦 の妊娠中の骨量,特に骨密度と骨代謝の変化を明らか にすることを目的とし,妊婦を対象に骨密度,骨代謝 マーカーの測定を縦断的に行い,高齢妊婦と非高齢妊 婦における変化の推移を比較検討した。 【用語の定義】 ①骨密度 本研究において,骨密度は超音波骨密度測定装置に よって得られるパラメーターである超音波伝導速度 (Speed of sound:SOS)のことを意味する。 ②高齢妊婦の定義 高齢初産とは,35 歳以上の初産婦と定義されてい るため(産科婦人科用語集・用語解説集(改定新版), 2003),出産時35歳以上を高齢妊婦群,同35歳未満を 非高齢妊婦群と定義した。

Ⅱ.研 究 方 法

1.研究デザイン 前向きコホート 縦断的研究 2011年5月~12 月にA 病院の産婦人科外来1 施設で 妊婦健康診査(以下,健診)を受診した妊婦(n=42, 高齢妊婦群=19,非高齢妊婦群=23)である。対象の 選定条件は,妊娠 23 週未満の合併症がない妊婦で, 骨密度に及ぼす一定の見解が得られていない多胎妊 娠,胎児異常症例,骨代謝に影響を与える薬剤使用症 例,内分泌疾患の既往歴を有する者および喫煙者を除 外した妊婦を適格とした。調査期間中に分娩予定の妊 婦に対し,妊娠24週未満の健診時に研究目的,方法, 倫理的配慮について説明し,同意を得た妊婦を対象に 調査を実施した。なお,尿試料には若干の欠損が あったため対象者数が幾分減少した。 3.調査手順 先行研究で,骨量の変化は妊娠 20 週以降にみられ (米山・池田,1998),34 週から 38 週で有意に低下す る(Gambacciani, M., Spinetti, A., Gallo, R., et al. 1995) とされており,今回健診時に測定するため,4週間毎 に受診する24週までを第1期,2週間毎に受診する24 週から36週未満を第2期,1週毎に受診する36週以降 を第 3 期とした。選定条件に合致する対象について, カルテ調査から人口統計学的データ(年齢,身長,体 重,妊娠前体重,出産歴,既往歴)を収集した。また 除外条件に合致する妊婦については,カルテ調査で対 象から除外した。尿中骨代謝マーカーは午前中の健診 時の採尿の残りを保存し,妊娠期間を通して第1期と 第 3 期の 2 回分を測定した。調査手順の概要を表 1 に 示す。 4.骨密度の測定方法 骨密度は超音波骨密度測定装置 CM-200(古野電気 ・兵庫)を外来の定位置に設置して同一の研究者が測 定した。CM-200の測定部位は踵骨,測定方法は超音 波パルス透過法,測定項目はSOS(踵骨内の超音波伝 搬速度Speed of Soundで,値が高いほど骨密度が高い ことを示す。測定単位はm/sec,基準値20~24歳女性 1540±33, 25~29 歳 女 性 1537±32 , 30~34 歳 女 性 1533±30, 35~39 歳 女 性 1528±29 , 40~44 歳 女 性 1524±29)(萩野,2005),測定精度は0.5%以下,計測 部 は 乾 式(超 音 波 ゼ リ ー 使 用), 動 作 環 境 は 温 度 10~35°C,湿度 35~85% である。精度を一定に保つ ため,使用前に1日1回精度管理測定を実施した。 骨密度測定には,通常DXA法(二重エネルギーX線

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吸収測定法)が用いられるが,X線を放出するため妊 婦には不適切であるため,妊婦への侵襲が少ないこと も踏まえ超音波法の結果を分析した。なお DXA 法は 直接組成を測定するものであるのに対し,超音波法は 超音波を用いて骨内を伝搬する超音波の衰退と速度を 計測し,これらの計測値によって骨量を推定するもの であるが,DXA 法による腰椎骨,頸椎骨,総骨量と の相関関係がかなり高いこと,踵骨は生体内での測定 の変動係数がかなり小さく骨密度を反映する指標とな り得ることが報告されている(山崎,串田,大村他, 1992;Waud, C.E., Lew, R., Baran, D.T., 1992)。

5.尿中骨代謝マーカーの測定方法 骨強度は単位面積または体積あたりのミネラル量で ある骨密度と,骨代謝回転や微細構造などで表される 骨の質の二側面から評価できる(日本骨粗鬆症学会 2004)。そのため,骨の質を表す骨代謝指標として, 尿中に排泄されるデオキシピリジノリン(DPD)の測 定を行った。また,尿中Ca排泄量を確認するために, 尿中 Ca を測定し,尿中クレアチニン(Cre)で補正し た(以 降 Ca/Cre と 表 記)。 DPD の 基 準 値 は 2.8~ 7.6nmol / mmol·Cr(30-44 才の閉経前女性)で骨折(脊 椎)リスクが高いと予測されるカットオフ値は7.6(望 月,西沢,曜,2005),骨量減少のリスクが高いと予 測されるカットオフ値は5.9(日本骨粗鬆症学会,骨代 謝マーカーガイドライン,2004)である。尿中Ca/Cre の基準値(非妊時)は0.3(mg/dl)/(mg/dl)である。 DPD,尿中 Ca,尿中 Cre は健診時の採尿の一部を −18°Cで凍結保存し,すべて同時に測定した。DPDは 成熟コラーゲン分解の際に放出される物質で測定値に は新しく合成された直後のコラーゲン分解には関与せ ず,食事の影響も皆無で骨組織に高い特異性を示す (畑,1989)ため,随時尿を使用した本研究において, DPDの測定は骨吸収の状態を評価する指標として有 用である。尿中Ca,Creの測定は外部精度管理調査に 加入している臨床医学研究所(京都)に依頼し,尿中 Caはアルセナゾ III 法,尿中 Cre は酵素法で測定した データを得た。DPD は競合法 EIA(体外診断用医薬 品,デオキシピリジノリンキット,オステオリンクス 「DPD」)を用いて臨床検査技師とともに測定した。 6.解析方法 1)妊娠中の骨密度変化 妊娠中の3時期のSOS平均値を比較するために,第1 期SOS(妊娠23週未満),第2期SOS(妊娠28週前後), 第 3 期 SOS(妊娠 36 週以降)を採用した。有意差検定 は,群内の変化はone-way repeated ANOVAで検討し, 各測定ポイントの群間の比較はt検定で実施した。 2)尿中骨代謝マーカーの検討 両群の平均値を求め,t-testにより比較した。また, 第1期および第3期のSOS変化量との相関をみるため にpearsonの相関分析を行った。 なお,1),2)とも,統計処理は SPSS Ver.23 を用 い,すべての分析において統計学的有意水準を有意確 率5%未満とした。 7.倫理的配慮 対象者に対して,研究の目的や方法,研究への参加 や途中での辞退は自由意思であり,研究参加の有無に 関わらず不利益は一切ないこと,プライバシーの保護 を書面と口頭により説明し,同意が得られた後に署名 を得て調査を開始した。なお,これらの内容は京都大 学医学部医の倫理委員会の承認(承認番号 E1136)を 得て実施した。

Ⅲ.結   果

1.対象者の属性 リクルートした人数と研究への同意が得られた人数 が同数であった。表2は対象者の属性である。両群に 表1 調査手順の概要(●は実施を示す) 対象者の妊娠週数 第1期 ■ 第2期 ■ 第3期 24週未満 24 26 28 30 32 34 36週以降 測定・調査項目 ・カルテ調査 ● ・骨密度 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●(健診毎に実施) ・尿中骨代謝マーカー ● ● 注)第1期:~妊娠24週,第2期:妊娠24~35週,第3期:妊娠36週~ カルテ調査:人口統計学的データ(年齢,身長,体重,妊娠前体重,出産歴,内服薬の有無,既往歴)を収集 骨密度測定:超音波骨密度測定装置によりSOS(Speed Of Sound)を測定 尿中骨代謝マーカー:尿中デオキシピリジノリン(DPD),尿中カルシウム(Ca)および補正用尿中クレアチニン(Cre)を測定 高齢妊婦と非高齢妊婦における骨密度・骨代謝の比較

(5)

おいて,身長,体重,妊娠前体重に差はみとめられな かった。出産歴で高齢妊婦群が初産婦5名,経産婦14 名,非高齢妊婦群が初産婦 13 名,経産婦 10 名で,高 齢妊婦群に経産婦が多い傾向がみられた(p=0.05)。 2.妊娠中の骨密度変化 第1期は一人当たり平均2.17回測定,平均妊娠週数 は 18.07 週,第 2 期は一人当たり平均 5.07 回測定,平 均妊娠週数は 28.99 週,第 3 期は一人当たり平均 1.05 回測定,平均妊娠週数は 36.17 週であった。測定した 対象者数を図1のフローチャートに示した。研究への 同意が得られた42名の対象者のうち,第1期に骨密度 測定ができたのは 39 名(高齢妊婦群 18 名,非高齢妊 婦群21名)であり,研究への同意が得られ第2期から 骨密度測定を開始した 3 名(高齢妊婦群 1 名,非高齢 妊婦群2名)を加え,第2期に高齢妊婦群1名が入院加 療となり分析対象から除外されたため,第2期に骨密 度測定ができたのは 42 名(高齢妊婦群 19 名,非高齢 妊婦 23 名)であった。第 3 期は第 2 期で入院加療と なった高齢妊婦群1名と里帰り出産等で36週以降の健 診を受診しなかった 4 名(高齢妊婦群 2 名,非高齢妊 婦群 2 名)を除いた 37 名を対象に骨密度測定をした。 また SD(以降±は SD を示す)が±18.5~±31.1 である ことから,第1期から第3期にかけてSOSが30以上の 大幅な変化があった対象者を外れ値として処理し,外 れ値として分析対象から除外したのは 3名(高齢妊婦 群1名,非高齢妊婦群2名)であった。 第1期,第2期,第3期の3点すべてを測定できた31 名(高齢妊婦群14名,非高齢妊婦群17名)を対象とし て縦断的に分析した結果を表 3,図 2 に示す。第 1 期 から第3期にかけて両群ともSOSは低下する傾向がみ られた(高齢妊婦群の第 1 期から第 3 期にかけての変 化量−7.88±12.94,p=0.06,非高齢妊婦群の第 1 期か ら第3期にかけての変化量−5.10±10.43,p=0.09)。高 齢妊婦群は非高齢妊婦群に比べ変化量が大きかった。 また,両群とも第 1 期から第 2 期よりも第 2 期以降に 大きく低下した(高齢妊婦群の第 1 期から第 2 期にか けての変化量−1.88±8.94,非高齢妊婦群の第1期から 第2期にかけての変化量−0.85±9.84,高齢妊婦群の第 項目 全体n=42 高齢妊婦群n=19 非高齢妊婦群n=23 p値 年齢(歳) 33.2±5.0 37.7±1.8 29.8±3.7 <.000*** 身長(cm) 159.2±5.5 159.2±6.5 159.3±4.7 .95 体重(Kg) 58.0±9.4 58.1±7.2 58.0±10.9 .99 妊娠前体重(Kg) 55.2±10.2 55.0±7.9 55.4±11.9 .91 出産歴(回) 1.6±0.5 1.7±0.4 1.4±0.5 .04* 初経産 初産婦18名経産婦24名 経産婦14名初産婦5名 初産婦13名経産婦10名 .05 注)t-test,初経産のみFisher's 正確確率検定 * p<.05,***:p<0.000 ➨1ᮇ㦵ᐦᗘ ᐃ n=39 㧗㱋ዷ፬⩌n=18 㠀㧗㱋ዷ፬⩌n=21 ➨2ᮇ㦵ᐦᗘ ᐃ n=41 㧗㱋ዷ፬⩌n=18 㠀㧗㱋ዷ፬⩌n=23 ➨3ᮇ㦵ᐦᗘ ᐃ n=37 㧗㱋ዷ፬⩌n=16 㠀㧗㱋ዷ፬⩌n=21 ࢹ࣮ࢱศᯒ(ᶓ᩿) n=39 㧗㱋ዷ፬⩌n=17 㠀㧗㱋ዷ፬⩌n=21 ➨2ᮇ࠿ࡽ ᐃ㛤ጞ n=3 㧗㱋ዷ፬⩌n=1 㠀㧗㱋ዷ፬⩌n=2 ධ㝔ຍ⒪ n=1 㧗㱋ዷ፬⩌n=1 㔛ᖐࡾฟ⏘➼࡛36㐌௨㝆ࡢ೺デࢆཷデࡏࡎ n=4 㧗㱋ዷ፬⩌n=2 㠀㧗㱋ዷ፬⩌n=2 እࢀ್࡜ࡋ࡚ศᯒᑐ㇟࠿ࡽ㝖እ n=3 㧗㱋ዷ፬⩌n=1 㠀㧗㱋ዷ፬⩌n=2 ࢹ࣮ࢱศᯒ(⦪᩿) n=31 㧗㱋ዷ፬⩌n=14 㠀㧗㱋ዷ፬⩌n=17 図1 骨密度測定の対象者数流れ 表3 骨密度測定結果(縦断) 高齢妊婦群n=14 ■ 非高齢妊婦群n=17 mean±SD mean±SD ①第1期SOS 1533.1±28.4 1531.3±20.7 ②第2期SOS 1531.3±31.0 1530.4±20.2 ③第3期SOS 1525.3±23.4 1526.2±17.5 変化量①−② −1.88±8.94 −0.85±9.84 変化量①−③ −7.88±12.94 −5.10±10.43 変化量②−③ −6.00±14.60 −4.25±8.46 3点の群内比較 F値 P値 F値 P値 2.648 .06 2.913 .09

注)SOS:踵骨内の超音波伝搬速度 Speed of Sound(m/sec) One way repeated ANOVA

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2期から第3期にかけての変化量−6.00±14.60,非高齢 妊婦群の第 2 期から第 3 期にかけての変化量−4.25± 8.46)。 また,第 1 期,第 2 期,第 3 期のいずれかが測定で きなかった対象者も合わせ,すべての対象者39名(高 齢妊婦群 17 名,非高齢妊婦群 21 名)を横断的に分析 した結果を表 4に示す。縦断的結果と同様に第1 期か ら第3期にかけて両群ともSOSは低下する傾向がみら れた(高齢妊婦群の第 1 期から第 3 期にかけての変化 量−6.27±13.60,p=0.12,非高齢妊婦群の第 1 期から 第3期にかけての変化量−5.10±8.60,p=0.05)。第1期 から第 2期よりも第 2期以降に大きく低下した点にお いても同様であった(高齢妊婦群の第 1 期から第 2 期 にかけての変化量−2.35±8.00,非高齢妊婦群の第1期 から第2期にかけての変化量−1.28±9.40,高齢妊婦群 の第2期から第3期にかけての変化量−5.46±14.11,非 高齢妊婦群の第 2 期から第 3 期にかけての変化量 −3.37±8.46)。 また,横断的な群間比較した結果(表4)においても SOSは第1期から第3期,第2期から第3期において有 意に低下,または低下傾向がみとめられた(第 1期か ら第 3 期にかけての変化量:高齢妊婦群−6.27±13.6, p=0.12,非高齢妊婦群−5.10±8.60,p=0.05,第2期か ら 第 3 期 に か け て の 変 化 量 : 高 齢 妊 婦 群 −5.46± 14.11,p=0.18,非高齢妊婦群−3.37±8.46,p=0.04)。 なお,各期の SOS は両群間で差はみとめられなかっ た。一方,変化量は第2期以降に大きく,高齢妊婦群 は非高齢妊婦群よりも第2期および第3期ともに大き かったが,個人差(SD値)も大きく,有意差はみとめ られなかった。 3.妊娠中の尿中代謝マーカーの変化 DPD,Ca/Cre の結果を表 5 に示した。DPD の同時 期の群間比較において,第1期では,高齢妊婦群では 6.66±5.94(nmol/mmol·Cr)であり,非高齢妊婦群の 12.84±15.67より低値を示した。第 3 期では,高齢妊 婦群では3.54±3.07であり,非高齢妊婦群の9.36±8.05 より有意に低値を示した(p=0.02)。Ca/Cre の同時期 の群間比較において,第 1 期では高齢妊婦群では 0.21±0.14((mg/dl)/(mg/dl))であり,非高齢妊婦群の 0.14±0.07より有意に高値を示した(p=0.04)。第 3 期 では高齢妊婦群は 0.15±0.12,非高齢妊婦群は 0.15± 0.15であり有意な差はみとめられなかった(p=0.99)。 一方,時期別変化では,DPDは両群とも第1期より 第 3期にかけて低下する傾向がみられた(高齢妊婦群 p=0.10,非高齢妊婦群p=0.38)。Ca/Creは両群とも有 意な変化はみられなかった。 4.骨密度変化と骨代謝マーカーとの関連 次に,DPDとSOS,Ca/CreとSOSの相関関係を表6 ὀ㸧➨㸯ᮇ㸸㹼ዷፎ24 㐌ࠊ➨ 2 ᮇ㸸ዷፎ 24 㹼 35 㐌ࠊ➨ 3 ᮇ㸸ዷፎ 36 㐌㹼            ➨ᮇ ➨ᮇ ➨ᮇ 626 PVHF  ᐃ᫬ᮇ 㧗㱋ዷ፬⩌ Q  㠀㧗㱋ዷ፬⩌㸦Q  図2 骨密度測定結果(縦断) 表4 骨密度測定結果(横断) 高齢妊婦群 ■ 非高齢妊婦群 ■ 平均値の群間比較 n mean±SD p値 n mean±SD p値 p値 ①第1期SOS 17 1531.9±31.1 19 1532.5±21.0   >.99 ②第2期SOS 16 1529.3±30.1 21 1529.8±21.8 >.99 ③第3期SOS 15 1525.5±22.5 19 1525.5±18.5 >.99 変化量①−② 16 −2.35±8.00 .30 19 −1.28±9.40 .55 .65 変化量①−③ 14 −6.27±13.60 .12 15 −5.10±8.60 .05 .85 変化量②−③ 15 −5.46±14.11 .18 19 −3.37±8.46 .04* .63 注)SOS:踵骨内の超音波伝搬速度Speed of Sound(m/sec) t-test,* p<.05 高齢妊婦と非高齢妊婦における骨密度・骨代謝の比較

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に示す。非高齢妊婦群において,第 1期 SOSと第 3 期 DPDに弱い正の相関(r=0.38),第 3 期 SOS と第 3 期 DPDにおいても弱い正の相関(r=0.42)がみられたが, いずれも有意差はみとめられなかった。

Ⅳ.考   察

対象者において,出産歴に有意差があり,高齢妊婦 群に経産婦が多い。本邦における第1子出産時の母の 平均年齢は 30.7 歳(平成 27 年),第 2 子出産時の母の 平均年齢は 32.3 歳(平成 25 年)である(少子化社会対 策白書.2015)ため,高齢妊婦群に経産婦が多いこと がわかる。対象者全体の平均年齢は33.2歳と第2子出 産時の母の平均年齢を上回っているのに対し,平均出 産歴が1.56回と2回未満であるので,本対象は本邦の 平均よりやや初産婦が多く,少し高齢に傾いている集 団であるといえる。一方,本邦の 20~40 歳における 女 性 の 平 均 体 重, 平 均 身 長 は そ れ ぞ れ 50~52kg, 158cmであることから,本研究の対象者の出産歴以外 はほぼ標準的な集団であるといえる。 1.骨密度変化について 縦断的変化では両群ともSOSは第1期から第 3期に かけて低下する傾向がみられた。これは,妊娠中に骨 吸収が亢進し,骨形成は抑制されているため(桐山・ 福岡,1994),もしくは代謝的な調整のみでは胎児に 必要なCa量を確保できず,妊娠中に母体の骨からCa 供給が起こる(米山・池田,1998)ため骨密度が低下 したと考えられる。SOS変化量は第2期以降に大きく みられ,第 1 期から母体内で代謝的な調整が行われ, それだけでは補いきれず骨密度に影響を及ぼすのでは ないかと考えられる。妊娠期間中第 1期から第3 期の 高齢妊婦群と非高齢妊婦群の SOS 変化量の差は約 2.7 であった。非妊娠時の 5歳区分のSOS基準値では5歳 年齢が増加するごとにSOSは3~5程度減少しており, 5歳程度加齢によるSOS変化と同じ変化がみられると 考えられる。 先行研究において,横断的観察で妊娠末期では妊娠 初期より有意に低下するとの報告(真鍋・鍵谷・丹藤 他,1996),縦断的観察においても妊娠中に骨量は有 意に低下するとの報告(Karlsson, Ahlborg, 2005)があ り,今回の調査の結果と一致するものであった。妊娠 中の骨密度は低下し,さらに第2期以降に多くみられ 高齢妊婦群 ■ 非高齢妊婦群 ■ 平均値の群間比較 n mean±SD p値 n mean±SD p値 p値 ①第1期DPD 14 6.66±5.94 21 12.84±15.67 .17 ②第3期DPD 12 3.54±3.07 18 9.36±8.05 .02* 変化量①−② 12 1.61±5.03 .10 18 2.56±8.61 .38 ③第1期Ca/Cre 14 0.21±0.14 21 0.14±0.07 .04* ④第3期Ca/Cre 12 0.15±0.12 18 0.15±0.15 .99 変化量③−④ 12 0.03±0.13 .25 18 −0.01±0.15 .79 注)DPD:デオキシピリジノリン(nmol/mmol·Cr) Ca / Cre:尿中Caを尿中Cre補正((mg/dl)/(mg/dl)) t-test * p<.05 表6 骨代謝マーカーとSOSの相関関係

n 第1期SOS ■ 第3期SOS ■ SOS変化量

r p r p r p 第1期DPD 非高齢妊婦群高齢妊婦群 1421 −.09.15 .77.59 −.20.14 .52.61 −.05−.11 .73.87 第3期DPD 非高齢妊婦群高齢妊婦群 1218 .01.38 .97.20 −.22.42 .51.15 −.30.01 .34.98 第1期Ca/Cre 非高齢妊婦群高齢妊婦群 1421 −.04.29 .34.90 −.05.34 .26.86 −.03−.09 .78.93 第3期Ca/Cre 非高齢妊婦群高齢妊婦群 1218 −.14−.21 .68.50 −.28−.41 .39.17 −.33−.12 .70.27 注)DPD:デオキシピリジノリン(nmol/mmol·Cr) Ca / Cre:尿中Caを尿中Cre補正((mg/dl)/(mg/dl)) pearsonの相関分析

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るという見解は妥当であると考えられる。縦断的結果 からも,高齢妊婦群の SOS 変化量が大きい傾向があ ることが示唆された。これは,高齢妊婦の骨密度低下 が大きいことを意味しており,より高齢妊婦に対し て,骨密度低下を食い止めるような保健指導が必要と いえる。 2.骨代謝と骨密度について DPDは前述したようにコラーゲン分解の際に放出 される物質であることから,骨吸収が亢進すると高値 を示し,逆に骨吸収が亢進しないときは低値を示す。 そのため,第3期のDPDにおいて高齢妊婦群は非高齢 妊婦群に比べ有意に低いことから,第3期の高齢妊婦 群において骨吸収が非高齢妊婦群と比べ亢進されてい ない状態であることが示唆された。しかし,DPD の 減少幅は高齢妊婦群と非高齢妊婦群で同程度であった ことから,妊娠中の DPD の変化については,より多 くの対象数を集め,詳細な分析を行う必要性がある。 また,両群とも第1期より第3期において,DPD値が 低くなっていたことから,第3 期に比べ第 1期に骨吸 収が亢進したと解釈できる。しかし,妊娠前の DPD の基礎値が不明であり,妊娠に伴う生理的な血液希釈 や糸球体濾過率(GFR)の増加,胎児・胎盤からの マーカー分泌など,様々な因子の影響を受けるため解 釈が難しいが,DPD の骨量減少のリスクが高いと予 測されるカットオフ値(5.9)より,両群とも第 1 期に おいて DPD 値が高いことから,初期に骨吸収が亢進 しているものと推測される。 骨吸収マーカー(血中)の推移が妊娠期間を通して 高値を示し(Kovacs, 2005),初期ほど高く妊娠の経過 と と も に 下 降 傾 向 を 示 す(田 村 ・ 秋 山 ・ 田 口 他, 1996)という報告と一致していた。妊娠中の骨形成は 低下,骨吸収は亢進するアンカップリング状態の骨代 謝を営んでいるとの報告がある(米山・池田,1998)。 したがって,妊娠中は骨吸収が亢進するうえに,骨形 成は抑制されていると考えられ,その結果として母体 骨量は妊娠前に比べて減少するという本研究における 骨密度変化との整合性に合う。本研究では骨形成 マーカーの測定をしておらず,骨形成状態を把握する ことはできなかったが,骨形成マーカーである骨芽細 胞に由来する酵素の骨型アルカリフォスファターゼ (BAP)は18歳まで急激に低下し,その後一定を保ち, 閉 経 前 後 か ら 再 び 上 昇 す る と さ れ て い る(太 田, 2012)。そのため,本研究の対象者の年齢からすると 骨形成は年齢による差がみられない期間であることを 考慮して,高齢妊婦群のDPDが第1期,第3期とも非 高齢妊婦群より低い傾向がみられたことから,高齢妊 婦群の骨代謝回転が非高齢妊婦群に比べ低い可能性が 示唆される。 Ca / Cre値の結果から,高齢妊婦群は非高齢妊婦群 と比べて骨吸収が少なく,Ca 排泄量が多い状態であ り,反対に非高齢妊婦群は,高齢妊婦群と比べて骨吸 収が多く,Ca 排泄量が少ない逆の状態であった。Ca 摂取については,「第6次改訂日本人の栄養所要量」ま では,妊娠中と授乳期にはCaの付加(300~400mg)が 必要とされてきた。しかし,その後の「日本人の食事 摂取基準(2005 年版)」では,妊娠授乳中の新しい Ca 代謝動態の知見に基づき,Ca の付加は必要ないとさ れるに至った。Ca摂取量を増やすと,尿中へのCa排 泄をさらに増加させる結果になるためである(福岡・ 向井,2010)。これより,妊娠中にCa摂取量を増やし ても母体の骨量減少を抑制するものではないと考えら れる。今回,Ca 摂取量の調査を行わなかったため, 対象者の Ca 摂取量は不明であるが,非妊娠時から目 安量の Ca を摂取する習慣を持ち,それを妊娠中も含 めて一生維持することが重要である。 妊娠中は,胎盤由来の大量のエストロゲンや活性型 ビタミン D が高値となり腸管からの Ca 吸収が亢進す るが,母体尿中への Ca 排泄も増加すると報告されて おり(Kovacs, 2005;米山・池田,1998),妊娠中に骨 吸収が亢進した者ほど,出産時には骨形成が亢進し, 高代謝回転となる(米山・池田,1998)ため,骨吸収 が亢進しない高齢妊婦群は出産時の骨形成が亢進しに くく,将来骨密度の低下を招きやすい状態であるとい える。また,高齢妊婦群は非高齢妊婦群と比べて妊娠 中に骨密度はより低下する一方,骨吸収の亢進は小さ いので,骨密度が非妊娠前に回復するのに時間がかか り,出産後の全身状態の回復が遅延する可能性がある と考えられる。 しかも,前述したように,高齢妊婦群は SOS 変化 量が大きいため,回復するのに時間がかかる上に,回 復しにくいことが骨代謝の面からも示唆された。 高齢妊婦群において,DPD と SOS の間に弱い負の 相関がみられ,骨吸収が進むと SOS は低下するとい う骨粗鬆症と同じ機序がみられたのに対し,非高齢妊 婦群は逆の弱い正の相関がみられた。Ca/Cre と SOS の間には両群とも弱い負の相関がみられ,Ca の排出 が多くなると SOS は低下することが示唆された。Ca 高齢妊婦と非高齢妊婦における骨密度・骨代謝の比較

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できるかもしれない。

Ⅴ.研究の限界と今後の課題

本研究は単一施設での対象者で,かつ 42 名と少な く,今後十分な対象者数が得られるようなデータ収集 方法を検討する必要がある。骨は骨吸収と骨形成のバ ランスで成り立っているが,本研究では,対象者の協 力が得られやすいように随時尿を用い骨吸収マー カーである DPD の測定を行い,血中の骨形成マー カーは測定しなかった。妊娠中の骨代謝を明確にする ためには,今後,骨形成マーカーの検討も行うことが 望ましい。 本研究において,SOS 値の個人差は大きかったが, 他の調査においても個人差が大きいことが報告されて おり(河合,1998;坂本・三好,2007;米山・池田, 1998),個人差を排除した集団を抽出するのは困難で あると考えられる。妊娠中に骨密度が低下することは 本研究でも示されたが,分娩後も骨密度は変化すると の報告(Black, Topping, Durham, et al., 2000)があるの で,今後産褥,授乳期の骨量変化も調査する必要があ る。

Ⅵ.結   論

①高齢妊婦群の骨密度は妊娠中に低下する傾向にあ り,非高齢妊婦群に比べ SOS 変化量が大きく低下す る傾向がみられた。②高齢妊婦群は非高齢妊婦群より DPDは第1期において低い傾向がみられ,第3期にお いては有意に低かった。Ca/Creは第1期において有意 に高く,第3期において同値であった。 妊娠中の骨密度は,高齢妊婦群が非高齢妊婦群に比 べ,変化が大きい傾向がある上に,骨代謝の変化から みても,高齢妊婦群は骨吸収が少ないうえに,Caの排 出が多いことから,産後の骨量回復が非高齢妊婦群よ り期待出来ず,骨密度低下を招きやすい状態にある。 両群においては妊娠前から骨量の維持を目的とした Caを摂取する習慣や運動習慣の啓発,特に高齢妊婦 群は産後の骨量回復に向けての啓発が重要であるとい える。 今後,年齢に応じた骨密度維持に役立つ保健指導 や,妊婦の生活背景も考慮しながら研究方法を精選 し,研究を継続する必要がある。 本研究に協力頂いた妊婦の皆様,ならびに産科ス タッフの皆様,尿検査室の皆様に心より感謝申し上げ ます。 なお,本研究は,京都大学大学院医学研究科修士論 文の一部である。 利益相反 本研究に関し開示すべき利益相反はない。 文 献

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