中央学術研究所三十年に寄せて
釈尊の教えと心を継承し、現実世界に実現しようと志す者たちにとって、まさに、﹁現代的問題提起に 対応できる﹂教学の研鎖・研究はいつの世においても必須の要件であり、また、活動の足腰を支える基盤 であると言えます。その意味からも中央学術研究所が創立され、三十年にわたりもたらした数々の実績 は、本会においても重大な意味をもつものであると痛感いたします。ここまで支えてくださった講師の 諸先生方をはじめ、関係各位のご努力とご協力に衷心より感謝申し上げます。 創立三十周年、まことにおめでとうございます。 八年前のこと、本会の法燈継承記念シンポジウムが開かれた席上、ある大学の教授から次のような提 言をいただいたことがあります.l立正佼成会のこれまでの活動は︽法華経の一仏乗の実践X在家 釈尊教団として国民皆信仰に果たす活動﹀︿法華経を基盤とした平和運動の実践﹀という三つに大別でき る。そして、この三つの活動を正しく継承し発展させていくためには、自然科学、社会科学、人文科学 のすべての領域の現代的問題提起に対応できる佼成教学の確立と、教団組織の活性化が不可欠である1 コ立正佼成会会長庭野日鐙
34 さて、世界保健機関︵WHO︶では、﹁健康﹂の定義としてこれまでの﹁肉体的、精神的、社会的﹂の 三面からの考察に加え、新たに人間の尊厳などを視野に入れ﹁スピリチュァル﹂を加える計画であると 伝えられています。この和訳について東西宗教交流学会の諸先生方が論議を重ねるなかで、単に﹁精神 的﹂とか﹁宗教的﹂とかの訳では欠落してしまう重要な内容をくみ上げ、人間の心の深層まで表せる﹁霊 性﹂という言葉が浮かび上がっていると聞きます。 この和訳は、かつて鈴木大拙師が五十年以上も前に訳されたものだそうですが、その的確さが今にな って見直されているという事実に感動すら覚えます。やがて、﹁霊性﹂の言葉が広く使われるようになる のでしょうが、それにしても一語の和訳に込められた苦慮と研究、そして、人間への深い理解を通じて 訳された慧眼には、あらためて敬服いたす思いです。 宗教を中心とした学術的な研究とは、今日という時代に光をもたらす灯明であるとともに、もう一面 においてはその時々の人びとの表層的な関心事を超え、子孫たちに残す確実な文化遺産の構築でもある と言えます。時代の変遷を超え、中央学術研究所の創立当初の精神が長く伝えられ、今後も確かな実を 結んでいかれますよう期待いたします。 三十年間にわたる研鎖の蓄積によって、貴重な論文や評論など研究所内には多くの財産がすでに構築 されていると思われます。現在はそれらのデーター・ベース化が図られ、次のステップへの基礎づくり が進められています。人類の文化と世界の平和に寄与するという中央学術研究所の創立の目的を達成し ていくため、今後はこの蓄積を基に、より広く、より多岐にわたって志を同じくする人たちと結び合い、 互いの成果を生かし合い、研究を深めていく場づくりが求められます。つまり、志を同じくする人びと
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の協労によるネットワークによって、人類学的課題に対処していくという道が求められます。
どうか、私どもの歩みが常に釈尊とともにあるためにも、そして、全人類が直面する現代的諸問題に
対応し、宗教的︵霊的︶情操による新たな文化の創造と世界秩序が構築されるためにも、中央学術研究