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(1)

超高層マンションの修繕積立金に関する研究

―大阪市域を事例として―

A study on the Repair Reserve Fund of Super High-rise Condominiums in Osaka City

臼田 利之

*

Toshiyuki USUDA

The purpose of this study is to contribute to the proper maintenance of super high-rise condominiums. In general, expenses for ma-jor repairs and maintenance are reserved for condominiums. Mama-jor repairs and replacements of super high-rise condominiums cost much more than standard for those particular factors, such as structure. This study examines the reserve fund fees for all super high-rise condominiums in Osaka City. The result shows that the reserve fund fees are about half of government’s indication.

Key Words : high-rise condominium, repair reserve fund, management fee, condominium management association タワーマンション、修繕積立金、管理費、管理組合

1.背景・目的 超高層マンション(「タワーマンション」ともいう。 ここでは超高層分譲集合住宅を意味する。)は、都心居 住の有効な手段である。都市部の狭隘な敷地において、 多くの住戸を供給でき、地域のランドマークとして、地 域の価値を高める役割を果たす。超高層マンションでは、 総合設計制度を導入するものも多く、過密な都心部で、 貴重なオープンスペースを提供している。一方で、超高 層マンションは超高層建築であるがゆえに、その大規模 修繕費は通常のマンションと比較して高価となる。 超高層マンションの研究は、これまで大規模修繕の外 壁の劣化状況(永井ら(2014) 等)など技術的な観点が 多い。眺望に関する研究もされており、吉田ら(1997) は、居住者及び開発者へのアンケートから眺望の価値に ついて居住者と開発者の乖離を明らかにしている。森本 ら(2016)は東京都心部における超高層住宅の配置計 画をその開発手法から分析し、岡(2014)は大阪市の都 心6区における超高層住宅の立地動向から都心における 世帯数の増加との関係を分析している。しかし、超高層 マンションの修繕積立金については、その問題が多く指 摘されて いる1ものの、超高層マンションの多い東 京 都・大阪市などの具体的な修繕積立金の状況に焦点を当 てた研究はみられない。 超高層マンションの維持管理が適切になされない場合、 地域のランドマークであった超高層マンションが時間の 経過とともに老朽化し、地域の価値を大きく引き下げる 負の遺産となりかねない。超高層マンションの老朽化に よる外壁落下や崩壊などは一般のマンションよりも影響 が大きいものとなる。 大阪市は超高層マンションの建築予定数が東京都に 次いで多いこと、超高層マンションが古くから建築され てきたこと、市域面積が東京都区部の 1/3 程度と超高 層マンションの集中が想定されることから、大阪市を調 査対象とすることでわが国の超高層マンションが概観で きるものと考えた。 本研究では大阪市内の全超高層マンションを事例と して経年ごとの修繕積立金の状況を明らかにすることで、 超高層マンションの適正な修繕積立金の設定・積立の促 進に寄与することを目的としている。 2.研究の対象と調査手法 超高層マンションには明確な定義がなく、建築基準法 第 20 条で高さ 60m を超える建築物に安全上必要な構造 方法に技術的基準への適合を求めていることから、本研 *都市住宅研究センター 博士(創造都市)

超高層マンションの修繕積立金に関する研究

―大阪市域を事例として―

A study on the Repair Reserve Fund of Super High-rise Condominiums in Osaka City

臼田 利之

*

Toshiyuki USUDA

The purpose of this study is to contribute to the proper maintenance of super high-rise condominiums. In general, expenses for ma-jor repairs and maintenance are reserved for condominiums. Mama-jor repairs and replacements of super high-rise condominiums cost much more than standard for those particular factors, such as structure. This study examines the reserve fund fees for all super high-rise condominiums in Osaka City. The result shows that the reserve fund fees are about half of government’s indication.

Key Words : high-rise condominium, repair reserve fund, management fee, condominium management association タワーマンション、修繕積立金、管理費、管理組合

1.背景・目的 超高層マンション(「タワーマンション」ともいう。 ここでは超高層分譲集合住宅を意味する。)は、都心居 住の有効な手段である。都市部の狭隘な敷地において、 多くの住戸を供給でき、地域のランドマークとして、地 域の価値を高める役割を果たす。超高層マンションでは、 総合設計制度を導入するものも多く、過密な都心部で、 貴重なオープンスペースを提供している。一方で、超高 層マンションは超高層建築であるがゆえに、その大規模 修繕費は通常のマンションと比較して高価となる。 超高層マンションの研究は、これまで大規模修繕の外 壁の劣化状況(永井ら(2014) 等)など技術的な観点が 多い。眺望に関する研究もされており、吉田ら(1997) は、居住者及び開発者へのアンケートから眺望の価値に ついて居住者と開発者の乖離を明らかにしている。森本 ら(2016)は東京都心部における超高層住宅の配置計 画をその開発手法から分析し、岡(2014)は大阪市の都 心6区における超高層住宅の立地動向から都心における 世帯数の増加との関係を分析している。しかし、超高層 マンションの修繕積立金については、その問題が多く指 摘されて いる1ものの、超高層マンションの多い東 京 都・大阪市などの具体的な修繕積立金の状況に焦点を当 てた研究はみられない。 超高層マンションの維持管理が適切になされない場合、 地域のランドマークであった超高層マンションが時間の 経過とともに老朽化し、地域の価値を大きく引き下げる 負の遺産となりかねない。超高層マンションの老朽化に よる外壁落下や崩壊などは一般のマンションよりも影響 が大きいものとなる。 大阪市は超高層マンションの建築予定数が東京都に 次いで多いこと、超高層マンションが古くから建築され てきたこと、市域面積が東京都区部の 1/3 程度と超高 層マンションの集中が想定されることから、大阪市を調 査対象とすることでわが国の超高層マンションが概観で きるものと考えた。 本研究では大阪市内の全超高層マンションを事例と して経年ごとの修繕積立金の状況を明らかにすることで、 超高層マンションの適正な修繕積立金の設定・積立の促 進に寄与することを目的としている。 2.研究の対象と調査手法 超高層マンションには明確な定義がなく、建築基準法 第 20 条で高さ 60m を超える建築物に安全上必要な構造 方法に技術的基準への適合を求めていることから、本研 *都市住宅研究センター 博士(創造都市)

超高層マンションの修繕積立金に関する研究

−大阪市域を事例として−

A study on the Repair Reserve Fund of Super High-rise Condominiums in Osaka City

臼田 利之 *

Toshiyuki USUDA

The purpose of this study is to contribute to the proper maintenance of super high-rise condominiums. In general, expenses for major repairs and maintenance are reserved for condominiums. Major repairs and replacements of super high-rise condominiums cost much more than standard for those particular factors, such as structure. This study examines the reserve fund fees for all super high-rise condominiums in Osaka City. The result shows that the reserve fund fees are about half of government’s indication.

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究では超高層マンションを 20 階建て以上のものとした。 不動産経済研究所2によれば、2008 年~2017 年の 10 年間のおける全国の超高層マンションの完成年次計画棟 数は 186,117 戸ある。うち首都圏が 111,722 戸(約 60 % ) と 最 も 多 く 、 次 い で 近 畿 圏 が 45,396 戸 ( 約 24%)、その他の地域が 28,999 戸(約 16%)である。 長谷工総研3によれば、近畿圏での超高層マンション 供給の中心地は大阪市であり、2002 年以降の近畿圏で の超高層マンション供給戸数に占める大阪市での供給戸 数割合は 50%を上回る(2008・2010・2014 年を除く)。 本研究では、超高層マンションが多く立地する大阪 市内を対象に超高層マンションの修繕積立金の整理を試 みた。大阪市内の超高層マンションの修繕積立金の把握 には、中古マンションの売却物件情報(不動産販売会社 の不動産広告、(公財)不動産流通推進センター及び三 井不動産リアルティ・住友不動産販売・東急リバブル・ 野村不動産アーバンネット4等のホームページ(平成 30 年 12 月 1 日~30 日調査))を用い、超高層マンション の各室の物件情報の修繕積立金(月額)をその専有面積 で除して修繕積立金を算定した。複数棟ある超高層マン ションでは、棟ごとに整理した。修繕積立金の経年変化 を把握するため、竣工済みのものを対象とし、建築中の ものは含まない。竣工からの経過年数は平成 29 年 12 月時点で算定した。 3.大阪市内の超高層マンションの立地状況 調査の結果、大阪市内に 160 棟(平均 241 戸)の超 高層マンションがあることが明らかとなった(図 1)。 図 1 大阪市内の竣工年別超高層マンションの立地 区別では北区 35 棟が最も多く、次いで中央区 33 棟 とこの 2 区で全体の約 4 割を占める。都心 6 区(北区、 中央区、西区、天王寺区、福島区、浪速区)では 120 棟と全体の 8 割近い棟数が集中している(図 2)。 竣工年代では 1987 年に 2 棟の超高層マンションが竣 工後、2002 年までは年 1~3 棟で推移し、2003 年には 11 棟と大幅に増加し、その後は年 10 棟程度が竣工して いる(図 3)。これは、1997 年の建築基準法の改正5 よりこれまでよりも狭い敷地面積で超高層マンションが 建築できるようになったためと考えられる(図 4)。 図 2 大阪市内の区別超高層マンション棟数 図 3 大阪市内の超高層マンションの竣工年別棟数 注:同一敷地に複数棟があるものは除いた 図 4 大阪市内の敷地面積別超高層マンションの立地 国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」(平 成 20 年 6 月)によれば、マンションの第 1 回目の大規 模修繕は 12 年目程度ごとに実施される。大阪市内では ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ 0 2km ☆ ★ ■ ◆ ● ▲ 2016以降 2011~2015 2006~2010 2001~2005 1996~2000 1995以前 竣工年 ★ ★ ★ ★ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ● ● ● ● ● ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ 35 33 18 16 11 9 9 6 5 5 4 3 2 2 1 1 0 10 20 30 40 北 区 中 央 区 西 区 天 王 寺区 福 島 区 浪 速 区 都 島 区 城 東 区 此 花 区 阿 倍 野区 港区 住 之 江区 淀 川 区 鶴 見 区 東 成 区 平 野 区 超 高 層 マン シ ョ ン 棟 数 2 0 1 0 1 3 2 1 0 1 1 4 3 3 3 1 11 7 15 11 13 12 13 6 5 6 8 9 11 5 2 0 5 10 15 19 87 19 88 19 89 19 90 19 91 19 92 19 93 19 94 19 95 19 96 19 97 19 98 19 99 20 00 20 01 20 02 20 03 20 04 20 05 20 06 20 07 20 08 20 09 20 10 20 11 20 12 20 13 20 14 20 15 20 16 20 17 竣 工棟 数 ( 棟 ) 竣工年 0 2km 9,000 7,000 5,000 3,000 1,000 敷地面積 1997 建築基準法改正 都心6区 北区 西区 福島区 浪速区 中央区 天王寺区

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既に竣工後 30 年を経過した超高層マンションがあり、 特に建築が多い 2003 年以降のものでも竣工後 15 年程 度を経過し、大規模修繕の実施時期に差し掛かっている。 4.超高層マンションの修繕積立金の状況 マンションの修繕積立金は区分所有者の専有床面積 に、各マンションで設定した修繕積立金を掛けて算定さ れる。国土交通省の「マンションの修繕積立金に関する ガイドライン」(平成 23 年 4 月)(以下、「修繕積立 金ガイドライン」という。)において、マンションの修 繕積立金の額の目安(以下、「目安修繕積立金」とい う。)が示されている(表 1)。 表 1 専有床面積当たりの修繕積立金の額 出所:マンションの修繕積立金に関するガイドライン 平成 23 年 4 月 国土交通省 この目安修繕積立金は「主として区分所有者が自ら 居住する住居専用の単棟型のマンションの長期修繕計画 であること」「専有床面積の平均が 55 m2以上のマンシ ョンの長期修繕計画であること」「長期修繕計画作成ガ イドラインに概ね沿って作成された長期修繕計画である こと」の 3 つの要件に該当する長期修繕計画事例(84 事例)に基づいている。目安修繕積立金は、新築時から 30 年間に必要な修繕工事費の総額を当該期間で均等に 積み立てた場合の専有床面積当たりの月額である。 長期修繕計画事例 84 事例中で 20 階以上のマンショ ンは 14 事例ある。この事例の 3 分の 2 以上が包含され る幅は 170 円~245 円/m2・月、平均は 206 円/m2・月 (以下、「平均目安修繕積立金」という。)である。超 高層マンションの修繕積立金が適切に積立てられている かは、平均目安修繕積立金が一つの目安となる。 目安修繕積立金は将来にわたって定額負担である均 等積立方式で算定されている。一般のマンションでは、 段階的に修繕積立金が引き上げられる段階増額積立方式 が採用6されている。段階増額積立方式では当初の修繕 積立金が低く設定され、後年度になるほど修繕積立金が 引き上げられる7(図 5)。段階増額積立方式を採用し ている一般のマンションでは当初の修繕積立金は平均目 安修繕積立金(206 円/m2・月)よりも安価であるが、 年数を経れば平均目安修繕積立金を上回る必要がある。 出所:マンションの修繕積立金に関するガイドライン(平成 23 年 4 月国土交通省)を基に筆者作成 図 5 均等積立方式と段階増額積立方式の比較 目安修繕積立金には機械駐車場に係る修繕積立金は 見込まれてない。修繕積立金ガイドラインによれば、マ ンションに機械式駐車場がある場合は、修繕工事に多額 の費用を要し、修繕積立金の額に影響する度合いが大き いため、機械式駐車場にかかる修繕積立金を特殊要因と して別に加算することとされている。駐車場は機械式だ けでなく、自走式の場合があること、マンションによっ て設置台数が異なることから、本研究では検討の対象外 とした。なお、大阪市内で 30 戸以上の共同住宅を建築 する際には「大阪市共同住宅の駐車施設に関する指導要 綱」に定める基準に基づき、駐車施設等を設置すること とされている。大阪市内の超高層マンションの平均戸数 (241 戸)をもとに、修繕積立金ガイドラインの計算例 から試算すれば、1 戸当たりの機械駐車場に係る修繕積 立金は 142 円/m2・月となる。駐車場料金収入で駐車場 の大規模修繕費が賄えない場合にはマンションの修繕積 立金でその一部を負担する必要がある。 5.大阪市内の超高層マンションの修繕費の状況 大阪市内の超高層マンション 160 棟の修繕積立金は 100~150 円/m2・月が 70 棟と最も多く(43.8%)、次い で 50~100 円/m2・月が 64 棟(40.0%)、これらを包含 した 50~150 円/m2・月は全体の 83.8%である(図 6)。 平均目安修繕積立金(206 円/m2・月)を上回る棟数は 平均値 事例の3分の2が包含される幅 5,000㎡未満 218円/㎡・月 165円~250円/㎡・月 5,000~10,000㎡ 202円/㎡・月 140円~265円/㎡・月 10,000㎡以上 178円/㎡・月 135円~220円/㎡・月 【20階 以上】 206円 /㎡ ・ 月 170円 ~245円 /㎡ ・ 月 【15階未満】 階数/建築延床面積 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 修繕 積立 金(月 額) (円/ 戸) 均等積立方式 段階増額積立方式

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6棟(3.8%)、修繕積立金 3 分の 2 以上が包含される 幅の下限値 170/m2・月(以下、「下限目安修繕積立金」 という。)を上回る棟数は 19 棟(11.9%)である。大 阪市内の超高層マンションの修繕積立金は最小 38 円 /m2・月、最大 350 円/m2・月、単純平均は 116 円/m2・月 (以下、「単純平均修繕積立金」という。)となり、平 均 目安 修 繕積 立金 ( 206 円 /m2・ 月) を 大き く下 回 る (図 7)。 図 6 修繕積立金(円/m2・月)と棟数 図 7 経過年数と修繕積立金(円/m2・月) 竣工年代ごとの修繕積立金の傾向を把握するため、 大規模修繕計画が概ねる 5 年ごとに見直しされること から、竣工年代で 5 年ごとに区分(以下、「年代区分」 という。)し、修繕積立金の平均(以下、「平均修繕積 立金」という。)を算定した。 平均修繕積立金は竣工後の経過年数 0~5 年は 94 円 /m2・月、6~10 年は 121 円/m2・月、11~15 年は 122 円 / m2・月、16~20 年は 110 円/m2・月、21~25 年は 114 円/m2・月、26 年以降は 170 円/m2・月である(表 2)。 表 2 経過年数と修繕積立金(円/m2・月) ※( )は最大値を除いた平均 経過年数 21~25 年は 7 棟、26 年以降は 4 棟と母集団 が少なく、修繕積立金が高いものの影響を大きく受ける ため、最大修繕積立金を除いた平均修繕積立金は 21~ 25 年で 99 円/m2・月、26 年以降で 122 円/m2・月となる。 各年代区分のいずれの場合にも、平均修繕積立金は経過 年数を経るごとには大きくは増加していない。 段階増額積立方式では、本来は竣工後年数を経るご とに次の大規模修繕費に備えて修繕積立金が引き上げら れる。しかし、大阪市内の超高層マンションでは 1 回 目の大規模修繕が完了した竣工後 16 年以降にも平均修 繕積立金の増加がみられない。いずれの年代区分の平均 修繕積立金も平均目安修繕積立金(206 円/m2・月)を 大幅に下回り、下限目安修繕積立金(170 円/m2・月) にも満たない。修繕積立金ガイドラインでは「修繕積立 金の額が「目安」の範囲に収まっていないからといって、 直ちに不適切であると判断される訳ではありません。」 とされているが、大阪市内の超高層マンションの多くの 修繕積立金は目安修繕積立金を大きく下回り、必要な修 繕積立金が確保されていない可能性がある。マンション の大規模修繕積立金で機械式駐車場の大規模修繕費を負 担する必要がある場合にはさらに深刻な状況となる。 多くのマンションで分譲時に修繕積立金を一時金と して徴収している。そこで、大阪市内で新規分譲中(平 成 29 年 12 月 31 日時点、修繕積立金が未定の 2 棟を除 く)の超高層マンションの専有床面積当たりの一時金の 修繕積立金(長期修繕計画期間の 30 年間平均)を算定 した(表 3)。一時金の修繕積立金は約 18 円/m2・月と 平均修繕積立金の 1 割未満となり、その影響は小さい。 表 3 大阪市における建設中の超高層マンションの 修繕積立基金(一時金) 区名 町名 総戸数 竣工予定 年月 円/m 2 円/m2・月 北区 長柄西1 358 2018.4 6,003 17 北区 野崎町 490 2019.1 5,408 15 北区 豊崎3 312 2019.2 8,000 22 北区 豊崎3 653 2019.11 7,999 22 中央区 西心斎橋1 140 2018.12 7,538 21 中央区 瓦町3 181 2019.1 6,000 17 福島区 鷺洲 850 2018.7 5,098 14 福島区 福島7 134 2019.2 6,763 19 福島区 海老江1 566 2019.8 5,014 14 平均 6,425 18 出所:新築超高層マンションの不動産広告を基に筆者作成 3 64 70 17 3 1 2 0 20 40 60 80 50 50-100 100-150 150-200 200-250 250-300 300 棟 数 (棟 ) 修繕単価(円/m2・月) 0 100 200 300 400 0 5 10 15 20 25 30 修繕積 立金 ( 円/m 2・ 月 ) 経過年数 0~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~30 0~30 平均 94 121 122 110 114 (99) 170 (122) 116 最大 172 248 350 193 200 315 350 最小 60 40 38 41 59 115 38 41 49 45 14 7 4 160 経過年数(年) 修繕 積立金 単価 母集団数(棟) 単純平均修繕積立金 116 円/m2・月 平均目安修繕積立金 平均修繕積立金

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修繕積立金を引き上げるには、マンションの総会で の合意形成(普通議決)が必要となる。普通議決は区分 所有法第 39 条(議事)第 1 項に基づき、「総会(集会) の会議は議決権の半数以上の出席で,出席者の過半数で 決する。」とされている。修繕積立金ガイドラインにお いて「将来の負担増を前提としており、計画どおりに増 額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修 繕積立金が不足する場合がある。」と指摘されている通 り、この合意形成は容易ではない。 本研究では管理費(月額)をその専有面積で除して管 理費を算定し、その整理も試みた(図 8)。 管理費の単純平均は 169 円/m2・月となり、どの経過 年数でもばらつきが多く、特別な傾向は見いだせなかっ た。管理費が共有施設の有無やその管理内容により、そ の構成要素が大きく変動するためであると考えられる。 管理費と修繕積立金の合計を 5 年ごとに年代区分した 結果、平均額は概ね 280 円/m2・月とほぼ一定となった。 これは居住者の負担を考慮しているものと推察される。 図 8 経過年数と管理費等(円/m2・月) 6.修繕積立金の引き上げに係る合意形成 修繕積立金を引き上げの合意形成の状況を把握するた めに、大阪市内で大規模修繕工事を計画中の超高層マン ションの管理組合にヒアリング8を実施した。 当該マンションは 30 階を超える超高層マンションで ある。竣工後約 15 年を経過し、現在の修繕積立金は 80 円/m2・月程度と、単純平均修繕積立金(116 円/m2・月) の約 7 割にとどまる。当該マンションの当初の修繕積 立金は 40 円/m2・月と市内平均の 0~5 年の平均修繕積 立金(94 円/m2・月)の半分を下回っていた。長期修繕 計画の見直しに合わせて、竣工後 5 年目に当初の修繕 積立金から 2 倍程度に引き上げている。しかし、引き 上げ後の修繕積立金では 15 年目の大規模修繕費が賄え ない計画であった。将来の大規模修繕に備えて必要な修 繕積立金への引き上げが行えなかったのである。 修繕積立金の引き上げ時には、管理会社から 235 円 /m2・月と当初の修繕積立金の 6 倍程度に引き上げが提 案された。しかし、あまりにも大きな引き上げであった ため、2 倍程度の引き上げにとどまったのである。 理事会において長期修繕計画書に基づき、管理会社 から 3 段階での修繕積立金の値上げ案の提示がなされ た。理事からは「3 年連続の値上げ案は居住者の方より 理解を得るのは困難」との意見が出され、「再度 5~10 年間隔で値上げし、不足が見込まれる場合は一戸当たり の臨時徴収金額を検討するもの」とされた。 その後の総会では、総会決議により修繕積立金を当 初から 2 倍に引き上げたものの、住民からは「できる だけ現行の金額設定を維持できるように検討して欲しい」 「ここに住み続けることができるのか不安」「売却する にも積立金の設定が高いと売れなくなる可能性がある」 「あまり住人に不安をあおらないで欲しい」との声が上 がった。この修繕積立金の引き上げ後、理事会で修繕積 立金の引き上げの議論が度々なされているものの、合意 形成の困難さから先送りされている。修繕積立金の引き 上げから約 10 年が経過した今も必要とされる修繕積立 金への引き上げられていない。 現在、同マンションでは大規模修繕の時期に差し掛 かっており、管理組合にて大規模修繕委員会が立ち上げ られている。大規模修繕工事に向けて、長期修繕計画の 見直しに着手し、外部の専門家であるマンション管理士 及び一級建築士を顧問に迎えて、超高層マンションの適 切な維持管理に向けた取り組みが始められている。 7.まとめと今後の課題 本研究では、大阪市内の超高層マンションの修繕積立 金を竣工年で5年ごとに整理した結果、経年ごとに大き な増加がみられず、修繕積立金ガイドラインの目安修繕 積立金を大きく下回っており、大規模修繕に必要となる 修繕積立金が十分に積み立てられていない可能性がある ことを明らかにした。また、大阪市内の超高層マンショ ンの管理組合へのヒアリングにより、修繕積立金の引き 上げには住民の負担が増すため、合意形成が困難である 事例があったことが確認できた。 超高層マンションの適正な修繕積立金の設定・積立の ためには、修繕積立金ガイドラインにおいて考慮が求め られている、躯体や設備関係、施工方法という超高層マ 0 100 200 300 400 0 5 10 15 20 25 30 管 理 費 等 ( 円 / m 2・ 月 ) 経過年数 単純平均管理費 169 円/m2・月 管理費と修繕積立金の合計

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ンションの特殊性を鑑みた「超高層マンションの修繕積 立金に関するガイドライン」の策定が必要である。また、 新築の超高層マンションおいて、必要な修繕積立金を確 保するために、修繕積立金を均等積立方式ではなく、段 階増額積立方式の採用を超高層マンションの分譲主に義 務付けることが求められる。 マンションは区分所有物であり、私有財産への行政の 直接的な関与は困難である。日本マンション学会法律実 務研究委員会は「マンション行政については、公共的な 存在に近い存在として扱わざる得ない時代になってきて いると認識すべき」「そのような視点に立って今後のマ ンション行政を進めない限り、区分所有者の自覚を促す ことには限界があり、マンションは巨大な廃棄物と化し ていく危険がある」と指摘している。 このような中で東京都区部では、既存マンションの良 好な維持管理を行うための合意形成の円滑化等を目的と したマンションの適正管理に関する条例が策定されてい る。豊島区(平成 25 年 7 月 1 日施行)や墨田区(平成 29 年 4 月 1 日施行)では、マンションの適正管理に係 る条例を制定し、管理組合にマンションの長期修繕計画 の策定等と届出を義務化した。届出がなされていない場 合や条例の規定に適合していない場合には、行政から指 導、要請を行い、特に必要と認める場合には是正勧告や マンション名を公表できる。これらの条例は、既存マン ションの維持管理の向上に効果があるものと想定される。 今回の研究では大阪市の超高層マンションの修繕積立 金について、修繕積立金ガイドラインの目安修繕積立金 とを比較したが、今後各マンションでの長期修繕計画に 基づく修繕積立金必要額との比較、修繕積立金の引き上 げに関する合意形成についての管理組合へのアンケート や、大阪市と東京都等の都市間での超高層マンションの 修繕積立金の比較を行いたいと考えている。 本研究は超高層マンションの有効性を否定するもの ではない。人口減少や超高齢化社会の中では、特に都心 部への人口集中が今後も不可避な状況にある。超高層マ ンションは限られた都市空間の中で高質な住環境を提供 でき、都心部に貴重なオープンスペースを創出できるな ど、今後も都心居住の有効な手段である。一方で適切な 維持管理がなされなければ、超高層マンション自体が地 域の荒廃を示す負のランドマークとなりかねない。 本研究の成果が超高層マンションの適正な修繕積立 金の設定・積立の促進の参考となればと考えている。 【参考文献】 岡絵理子(2014)「大阪市都心6区における超高層集合住宅の 立地動向とその実態に関する研究」『都市住宅学 87 号』 pp.86-91 永井香織・星川晃二郎等(2014)「超高層集合住宅の大規模修 繕に関する調査研究」『日本建築仕上学会 大会学術講演 会研究発表論文集 2014』 pp.95-98 吉田誠・横内憲久・桜井慎一・閑野高広(1997)「超高層マン シ ョ ン か ら の 眺 望 価 値 に 関 す る 研 究 」 都 市 計 画 論 文 集 32(0), pp487-492 森本修弥・宮本文人(2016)「東京都中心部における都市開発 諸制度と超高層集合住宅の配置計画」『日本建築学会計画 系論文集 81(719)』pp.1-10 米倉喜一郎(1993)「マンション管理の法制度上の課題」『日 本不動産学会誌 第 8 巻第 2 号』,pp.12-22 日本マンション学会法律実務研究委員会(2006)『マンション 紛争の上手な対処法-法的解決のノウハウと実務指針』民事 法研究会 【注釈】 1 日本経済新聞2018 年 3 月 27 日、週刊東洋経済 2014 年 12/6 号、週刊新潮2018 年 5 月 17 日号等 2 不動産経済研究所「超高層マンション市場動向 2018 年 4 月24 日」 3 長谷工総合研究所「超高層マンション市場動向 2017 年 1026 日」 4 (公財)不動産流通推進センター「2017 不動産業統計集 9 月期改訂」の流通大手各社の取扱高等の推移の上位4 社 5 建築基準法の第52 条(容積率)の改正により、「建築物の 延べ面積には、共同住宅の 共用の廊下又は階段の用に供す る部分の床面積 は、算入しないものとする。」とされた。 6 修繕積立金ガイドラインで「新築マンションの場合は、段 階増額積立方式を採用している場合がほとんど」とされる。 7 米倉(1993)は段階増額積立方式を採用した場合は「なぜ分 譲時に分譲業者は必要額を提示しなかったかという不満が 例外なく噴出する」と指摘し、分譲会社が積立金について 「同業他社物件が提示する数字に拘泥するから、合理的な 設定の基準を示すことはある意味で分譲会社の過度な右顧 左べんを不必要なものとするはずである」と合理的な設定 基準の必要性を訴えている。 8 平成 30 年 1 月 9 日 管理組合理事長及び大規模修繕委員 (3 名)にヒアリング

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