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9MHz) のプローブで近位より対象を高解像度で観察できる経腟超音波法が用いられる それ以降の観察は主に経腹超音波法によって行われることが多い 必要に応じて経腟 経腹法の両者をうまく使い分けるのがよい 婦人科疾患の診断に関しては一方の走査法に依存すると思わぬ見落としが生じうるので注意する また胎児の

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妊婦・胎児・新生児の画像診断

はじめに

 産科医にとっては、子宮内という閉ざされた環境にあ る「胎児」の情報を得る手段として、超音波診断装置は必 需品である。産科領域では母体だけでなく、「胎児」の全 身をみることが特徴であるため、内科的なものだけでは なく、外科的なもの、心臓循環器、脳・中枢神経などあ らゆる臓器やそれらの機能を評価したいという臨床的 欲求が生じてくる。したがって、あらゆる領域で開発さ れた技術や手法は、胎児への応用が新たな研究課題とな る。本稿では妊娠の時期別に妊婦健診における超音波診 断の役割について概説する。

妊娠初期

 妊娠初期の超音波検査の目的として以下の項目が挙げ られる。 ①妊娠の確定診断 ②妊娠週数・分娩予定日の診断  正常経過の確認  胎児数・多胎妊娠の診断(膜性診断) ③異常妊娠の診断 ④子宮および付属器の診断(婦人科疾患の診断) ⑤ 胎児異常の診断(胎児形態異常、胎児染色体異常の確 率に関するリスク評価)  妊娠11週頃までの初期の超音波検査は、高周波数(6~

1.妊婦

1-1.妊婦健康診断-超音波診断の役割-

篠塚 憲男

胎児医学研究所

Prenatal Care

Norio Shinozuka, M.D., Ph.D., SJSUM Summary

 Ultrasonography (US) is an essential procedure for routine prenatal care in Japan. In the clinical management of pregnancy, US is applied for various purposes. In this article, the clinical significance of US in each trimester of pregnancy is discussed. In the first trimester, the reasons for performing US are as follows; ① definitive diagnosis of pregnancy ② Determination of gestational age/estimated date of conception, ③ diagnosis of abnormal pregnancy/multiple pregnancy, ④ diagnosis of embryonal or fetal anomalies, and ⑤ diagnosis of gynecological issues such as uterine and/or adnexal abnormalities. Before 11 weeks of pregnancy, trans-vaginal scanning is the most common method of US. In the second trimester, ① fetal growth assessment, ② fetal well-being check-up, ③ screening of fetal abnormality, and ④ observation of uterine cervix are important issues. Various methods of US such as B-mode scan, pulse and color Doppler scan, and 3D/4D scan are used. In the third trimester, the major goals are to confirm fetal well-being and to assess growth. Recently, basic procedures, including standard values of US measurements, for prenatal care are reaching a consensus after years of discussion.

Laboratory for Fetal Medicine Research

NICHIDOKU-IHO Vol.57 No.1 -19 (2012)

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9MHz)のプローブで近位より対象を高解像度で観察で きる経腟超音波法が用いられる。それ以降の観察は主に 経腹超音波法によって行われることが多い。必要に応じ て経腟・経腹法の両者をうまく使い分けるのがよい。婦 人科疾患の診断に関しては一方の走査法に依存すると思 わぬ見落としが生じうるので注意する。また胎児の観察 も経腟超音波では観察断面の設定や視野に制限があるこ とにも留意する。 1.妊娠の確定診断  子宮内に着床する正常な妊娠であることは、子宮内に 胎(Gestational Sac:GS)を証明することによってな される。超音波によってGSがあると認識できるように なるのは、早くても4週の後半である。妊娠5週(受精後 3週)には正常の経過であれば100%の例でGSが確認で きるはずである。6週以降は卵黄(Yolk Sac)と胎芽心 拍が確認されるようになる(図1)。GSを構成する絨毛 膜は全体に厚く発育し、円形、または楕円形の周囲が高 輝度の胞として観察される。このwhite ringと呼ばれ る絨毛膜のエコー像と子宮外妊娠などで観察されるよう な肥厚した脱落膜によって囲まれた分泌物や血液が貯留 した状態でみられるpseudo GSとの鑑別が問題となるこ とがある。 2.妊娠週数・分娩予定日の診断  妊娠週数・分娩予定日が不明確であれば、その後の胎 児発育評価は意味をなさない。分娩予定日は最終月経か ら算出するのが基本である。ART(assisted reproductive technology)などによる妊娠で排卵日・受精のタイミン グが明らかな場合は、受精のタイミングを2週0日とす る。月経不順など排卵が遅れている可能性がある場合 は、超音波の計測値をもとに妊娠週数・分娩予定日を 修正する必要が生じる。妊娠初期の胎芽の発育には個 体差がほとんどないとされるため1)、妊娠週数(予定日) を確認する、あるいは修正する目的で超音波による諸 計測が行われる。妊娠初期には主に頭臀長(crown rump length:CRL)が胎児計測値として用いられる(図2)。 CRLの基準値は、計測値から妊娠週日を確認すること を目的として算定されているため、妊娠週日はCRLの 関数で表される。すなわち、CRLの値を入れると妊娠 週日が計算されるという意味で、CRLの評価はCRLが ○mm、△週日±□日という表記が正しい。注意しなけ Preg. 6week GS Yolk Sac 2D scan 3D scan 図1 妊娠6週 GS

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ればならないことは、CRLを妊娠週数算定のパラメー タとした場合の診断精度の信頼限界である。基準値は CRL 10~40mmの範囲、妊娠週日では8週0日から11週 0日までの間で用いる必要がある。この範囲外でCRLを 用い妊娠週日を推定することは誤差が大きく、行うべ きではない2)。妊娠10週以降では児頭大横径(biparietal diameter:BPD)の計測が可能で、妊娠週数確認のパラ メータとしてはこちらを用いるべきである。CRLの計 測の正確性を保証できる週数を考慮し、計測値のばら つきから検討すると、妊娠9週前後のCRL、妊娠12週前 後のBPDの2点の計測値をもとに妊娠週数を確認するの が最も精度が高いと考えられる。9週、12週前後の2点、 (CRL・BPDともに20mm前後の計測値を示す時期)の 超音波検査を必須とすることには計測値の分析より科学 的妥当性があると考えられる3)  臨床上必要と考えられる場合には、妊娠12~16週ま での間に妊娠の週数の修正を行うべきである。予測され る計測値による妊娠週日とどの程度誤差があったら修正 すべきかに関しては議論があるが、平均値から3~4日 (平均値を含む7日以内範囲)以上の誤差(ずれ)があれば 修正する方がよいとする意見が多い。基礎体温や排卵誘 発処置で排卵時期が確定できる症例では、CRLの計測 で誤差があると思われても基本的に修正はすべきではな い。早産や低出生体重児など先天的な異常を伴う児の場 合は、初期から小さい(CRLも小さい)とする報告4)もあ り、妊娠週日の修正を行う場合は必ず1週以上間隔をあ けた複数ポイントでの計測値を参照すること、GSの所 見や経時的なCRL、BPDの計測情報を総合的に検討す ることが重要である。超音波には原理的にも計測手技に おいても誤差が生ずることを念頭に置き、ワンポイント の計測値での妊娠週数の修正は厳に慎むべきである。初 期の超音波計測値の基準値の1例を示す(図3)。日本で はほとんどの症例が妊娠初期から医療機関に受診し、妊 娠初期に数回の超音波検査を受けることが一般的である ことが、諸外国と大きく異なるところである。妊娠管理 における予定日の正確性が担保され、 発育/発達評価で きることが、日本の産科医療の特徴である。 図2 妊娠9週 CRLの計測

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 1)正常妊娠経過の確認  経腟超音波では、妊娠5週後半ごろから胎芽の拍動が 観察されるようになる。正常な胎児心拍(FHB)数の推移 については90~100bpmで始まり、ほぼ直線的に増加し、 9週中ごろに170~180bpmのピークを示し、以後漸減し、 16週には150bpmほどになる。胎芽の発育と心拍数をみ て初期の妊娠経過が正常か否かを評価する。妊娠初期の 流産率は15%程度とされているが、妊娠の8週のレベル、 CRLでは15mmまで到達し、正常な心拍数が確認できれ ば(図4)、それ以降の流産率は数%とされる。  2)胎児数・多胎の診断(膜性診断)  多胎の診断、特に膜性診断はこの時期に必ず行ってお くべきである。諸外国では初期の超音波検査が必ずしも 必須とされていないこともあり、出生前に膜性診断がつ けられていないことも多い。膜性は周産期管理や予後に 大きく影響する。基本的にはGSが二つであれば二絨毛 膜性である。絨毛膜が胎の全周にみえる妊娠10週ま でに確認しておくべきであろう。GSが一つであり、胎 芽が二つみえる時には一羊膜か二羊膜の診断が問題とな る。羊膜数=卵黄の数であり、卵黄の数が羊膜が描 出しがたい場合の一絨毛膜双胎の膜性診断のポイント である(図5)。また、一絨毛膜性の場合は両者の発育差 の有無、無心体などの一方の児の異常の有無にも注意す る。一絨毛膜一羊膜双胎は稀ではあるが、結合双胎など 胎児奇形の頻度も高いので注意する。 60 (mm) (週) 50 40 30 20 10 0 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 妊娠週数 GS CRL BPD 図3 妊娠初期の計測値の基準曲線 図4 胎児心拍(FHB)の確認

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3.異常妊娠の診断  異所性妊娠など異常妊娠に関しては本項では割愛す る。妊娠初期に流産・多胎妊娠との鑑別において臨床上 問題となる事象に絨毛膜下血腫がある。妊娠初期に胎 全周にわたる厚い絨毛膜があるため、厚い子宮内膜との 間隙が血腫のようにみえたり、もう一つのGSがあるよ うにみえたりすることがある。実際、妊娠初期では、絨 毛膜下血腫とvanishing twinなどとの区別が難しい症例 もあるが、解剖学的理解と注意深い観察で鑑別は可能で ある。 4.子宮および付属器の診断(婦人科疾患の診断)  妊娠初期の超音波検査で子宮の形態異常、子宮筋腫や 卵巣腫瘍が偶然発見されることも少なくない。比較的よ くみられる子宮の形態異常には双角子宮などがあるが、 経腟超音波でGSやCRLの計測のみにとらわれていると、 子宮の形態異常を見落としてしまうこともある。妊娠 初期の経腟超音波においては子宮の形、GSの着床部位、 付属器の所見も必ずチェックすべきである。経腟超音波 では視野が限られるため、必要に応じて経腹超音波も 併用すべきである。子宮筋腫もよくみられる所見である が、妊娠初期の子宮筋の局所収縮が筋腫や腺筋症のよう に観察されることもある。卵巣腫では黄体胞(lutein cyst)が最も多くみられる所見であるが、超音波の所見 上は一側性のsimple cystであり、多くは長径6cmを超え ず、妊娠14~15週には消失する。卵巣腫瘍として発見 されるものとして、皮様腫が最も頻度が高いが、経腟 超音波法のみに頼ると、腸管のエコーにまぎれて見落と したりすることがあるので、必要に応じて内診や経腹超 音波を行うべきである。 5.胎児異常の診断(胎児形態異常、胎児染色体異常の 確率に関するリスク評価)  この時期にも多く胎児異常(奇形)の診断が可能であ る。多くの胎児異常の早期診断の報告は妊娠10週以降 である。妊娠10週を越えると、経腟超音波により胎児 の頭部、体幹、四肢が明瞭に観察可能になるため、大き な外表奇形の診断が可能となる。詳しくは成書5)を参照 されたい。この時期の所見で注意しておかなければなら ないのは妊娠8~10週頃にみられる生理的臍帯ヘルニア 二卵性 二絨毛膜二羊膜 一絨毛膜二羊膜 一絨毛膜一羊膜 一卵性 図5 多胎の膜性診断

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である。これは腹腔内に還納され、妊娠12週以降にみ られることはない。  妊娠初期の胎児のスクリーニングというと、欧米で ルーチン検査として行われている胎児頸部の無エコー 領域、NT(nuchal translucency)の計測に関することが 臨床上よく問題になる。いわゆる血清マーカー検査と同 様、21 trisomyなどの染色体異常をその発生確率でスク リーニングする方法論で、欧米諸国では積極的に行って いるが、わが国では倫理的問題、人種的、宗教上の問題 などを含め、施策として全例に行うことにはいまだ議 論があるのが実情である。NTはその厚み3mmあるいは 3.5mmをカットオフ値とし、NTの基準値の中央値から のズレ、年齢から求められたリスクを加味した確率値で 評価される。NTに加えてnasal boneの有無や(図6)、静 脈管血流波形の所見を加えるとさらに確率推定の精度 が上るとされている6)。NTなどのソフトマーカーは21 trisomyを疑う一つのサインに過ぎないこと、あくまで も母体年令を主変数とする確率診断(リスク評価)にす ぎないこと、NTがみえること自体は正常でもあること を理解しておく必要がある。不完全な情報の広がりによ り妊娠初期の超音波検査→NT≒出生前検査≒遺伝診断 のような誤解を生じないよう、検査する側もされる側も 妊娠初期の超音波検査の意義をよく理解しておく必要が ある7)。したがって通常の検診では④までをルーチンと し、⑤に関しては全例に必須な検査とはいえないこと、 またアウトカムが術者の診断技量に大きく結果が左右さ れるため、同意と説明を希望者に対して十分に行うこと が、専門医が行うべきものではないかと考えている。  実際の臨床に際しては、効率よく超音波検査を行うた めに、妊娠初期の各時期における観察・計測項目をよく 整理しておくとよい(図7)。

妊娠中期

 妊娠中期における超音波検査の目的としては以下の項 目が挙げられる。 ①胎児発育診断  EFW評価 ②胎盤・臍帯所見・羊水量の確認 ③子宮頸管の観察 ④胎児well-beingの診断 ⑤胎児異常の診断 nuchal translucency nasal bone Preg. 13week 図6 NTの計測 nasal boneの観察

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1.胎児発育診断

 胎児各部の計測値とそれらから計算される推定児体重 (estimated fetal weight:EFW)の値が、胎児の発育が正 常か否かの評価に用いられる。基本的な胎児計測断面 (図8)と計測法2、8)を以下に概説する。  児頭大横径(biparietal diameter:BPD):胎児頭部 の正中線エコー(midline-echo)が中央に描出され、透明 中隔腔(septum pellucidum)および、四丘体槽(cisterna corpora quadrigermina)が描出される断面で超音波プロー ブに近い、頭蓋骨外側(O)から対側の頭蓋骨内側(I)ま での距離を計測する。  胎児腹部計測:腹部周囲長(abdominal circumference: AC)または腹部前後径×腹部横経[APTD(antero-posterior trunk diameter)×TTD(transverse trunk diameter)]を用 いる。計測断面は胎児の腹部大動脈に直交する断面で、 胎児の腹壁から脊椎までの距離の前方1/3から1/4の部位 に肝内臍静脈が描出され、同時に胃胞が描出される断面 を設定する。腹壁から脊椎棘突起先端までをAPTD、こ れに直交する横径をTTD、腹部の外周の周囲長をACと して計測する。ACは直交する二直線(通常は前後径と 横径)により作成される楕円で、腹部周囲長を近似計測 するエリプス(近似楕円)法による計測とする。  大腿骨長(femur length:FL):大腿骨の長軸が最も 長く、両端の骨端部まで描出される断面で、化骨部分の 両端のエコー中央部分の距離とする。妊娠中期以降は長 幹骨のすべてが描出されるわけではなく、超音波ビーム に近い一部の反射エコーにしか描出されないことを念頭 に置き、可能な限り、骨端化骨部の中央部分の直線距離 を計測するように心がける。  胎児体重推定には超音波医学会推奨式またはその原式 を用いる2、8、9)  EFW=1.07×BPD3+3.42×APTD×TTD×FL9)  EFW=1.07×BPD3+0.30×AC2×FL2、8)  本式は、出生直後の新生児の比重・体積の実測値を用 いて構築された胎児の体重を頭部の重さ+躯幹の重さで 表した理論式であり、実測の超音波計測値を多数集積し て作成された回帰式ではないことが特徴で、FGR(fetal growth restriction)などプロポーションの異なる胎児で の推定精度の向上や週数、体重に偏らない一定の誤差 範囲での体重推定を目的として作成されたものである9) (図9)。 胎児体重推定に関連して必ずといってよいほど 議論となるのが、その推定誤差に関することである。上 記の方式を用いた場合、その誤差とは、体重、週数や児 のプロポーションなどに関係なく、すべてのレンジで偏 BPD CRL 婦人科疾患の診断 妊娠部位の診断 胎児形態異常の診断 GS確認 FHB NT 尿中HCG 多胎 膜性診断 妊娠週数 (週) 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 図7 妊娠週数ごとの観察・計測項目

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差10%程度の誤差で体重を推定できることを意味する。 すなわち、体重1,000gであれば標準偏差±100g、3,000g であれば±300gということになる。体重が大きいほど 誤差の絶対値が大きくなり、感覚的に推定式の信頼性が 欠けるような誤解があるが、EFWの推定誤差は一定の 範囲内であり、数学的に誤差が大きいわけではないこと を理解しておく必要がある。  各超音波計測値、EFWの基準値はデータの分布の正 規性が確認されているため、1.64SD(標準偏差)が95パー センタイル、-1.64SDが5パーセンタイルに相当する 3-5)。胎児発育の評価は時系列データとして扱い、チャー ト上にデータをプロットすると理解しやすい。最新の超 音波機器にはこのようなプログラムが搭載されており、 超音波固有の計測誤差や、検者による計測誤差などがあ ることを念頭においたうえで、発育の時系列データとし て計測値、EFWを評価すべきである。先に述べたように、 妊娠中期の発育評価はすでに決定された妊娠週数という 時間軸における計測値を評価するものであり、その週数 における分布、すなわち○週○日で、推定××グラム、 △SDというように評価すべきである。超音波機器のプ ログラムは計測値が何週相当であるかも表示するが、そ れは本来の使い方ではなく、当該計測値が何週何日の平 均値であるというだけの参考値である。発育評価の指標 としては意味がなく、患者の誤解を生ずる表現で使うべ きではない。推定体重に関して説明をする際には、胎児 の発育には個体差があること、超音波計測には誤差が伴 うことを十分理解されるように心掛ける。

EFW = weight of the head + weight of the trunk

(weight= specific gravity × volume) EFW = 1.07 × BPD3 + 2.91 × APTD × TTD × SL EFW = 1.07 × BPD3 + 3.42 × APTD × TTD × SL Shinozuka 1987 EFW = 1.07 × BPD3 + 0.30 × AC2 × FL Modified Shinozuka 2000 FL TTD APTD BPD SL AC 図9 胎児体重推定式とその理論 BPD(O-I)(児頭大横径) FL(大腿骨長) AC(エリプス) (腹部周囲長) APTD × TTD(腹部前後径 × 腹部横径) 透明中隔腔 四丘体槽 図8 胎児計測の基本部位

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EFW評価  通常、新生児の出生体重を評価する目的で出生時基準 体重曲線(小川10)、板橋11))が用いられているが、EFW の評価にこの基準値を用いることには問題がある。なぜ なら、この種の出生時基準体重曲線は早産児を多く含む 出生児の体重の値を集積して作られたものであり、37 週以前の基準値はあくまでも「早産に至った児」の基準値 で、基本的に理想的な子宮内環境の正常発育を必ずしも 表してはいないと考えられるからである。EFWの評価 基準としてこのような新生児出生時基準体重曲線を用い て評価を行うと、早い時期から発症するFGRを見逃す 可能性が高い。EFWの評価にはEFWの基準値、曲線2、8) を子宮内胎児発育曲線として使用すべきである12)  実際の臨床における体重推定の主たる目的はFGRの スクリーニングであろう。FGRという病態は、元来その 胎児がもつ発育のポテンシャル(発育の速度・ベクトル・ 率)が内的あるいは外的要因により抑制された状況にあ るものと理解される。したがって、FGRはある時点で の計測値やEFWのみでなく、妊娠週数という時間軸上 の発育経過をみて診断(判断)されるべき疾患群として 捕らえるべきである。出生後の当該週数での新生児の体 重をもとに10~90パーセンタイルのものをappropriate for date(AFD)、出生体重が10パーセンタイル未満の 症例をLFD、90パーセンタイル以上のものをheavy for date(HFD)と定義し、その新生児の出生前の子宮内環 境や、発育の程度の指標としてきた。すなわちLFDで 出生した児であればFGRがあったことは推察できるが、 必ずしもFGR=LFDを意味しないことに留意すべきで ある。発育評価基準として何gという絶対値ではなく、 SD値と用いることでさらに客観的に発育の個別評価が できる可能性がある13、14)。どのレベルでFGRを疑うか・ あるいは診断するかについては現実的に明確な基準はな いが、-1.5SDでは少なくともFGRの可能性のある群と 考えて管理する。前述のごとく、出生後の新生児の診断 で用いる出生時基準曲線と胎児の発育を評価するEFW の基準曲線とは異なることから、出生前はEFWにより FGRと診断されたが出生した新生児側からはAFDであ ると判断されたというような事態が生じる。しかし、結 果的に早産児の中では基準範囲内の体重での出生であっ たが、理想的子宮内環境にあると仮定した胎児の体重 110 80 70 60 50 40 30 20 10 4,500 4,000 3,500 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 100 90 80 70 60 50 40 30 20 40 35 30 25 20 15 10 5 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 BPD(mm) AC(cm) FL(mm) EFW(g) 図10 胎児発育評価のための基準値(基準曲線)

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の基準からすれば小さいということで、EFWを用いた FGR、LFDの診断として誤っているわけではない12、14) 臨床で用いられている超音波計測値、EFWの基準値(曲 線)を図10に示す。 2.胎盤・臍帯所見・羊水量の確認  胎盤の位置の確認も重要である。妊娠20週代前半頃 までは、子宮峡部が開大していないため、正確に胎盤の 位置を同定して低置、前置胎盤の診断を下すことが難し いことがあることに注意する。低置、前置胎盤の最終的 診断は経腟超音波法で、組織学的な内子宮口を同定して 行うべきであるが、後壁付着の場合は位置の診断が経腟 法だけでは判断を誤ることがあり、胎盤の位置は必ず経 腟・経腹の両手法で確認すべきである。臍帯は血管数や その付着部位を確認しておく。単一臍帯動脈の場合には 他の合併奇形を伴う頻度が比較的高いとされる。  羊水の量を数量化して評価するのは現実的には難し い。病的な羊水過多・過少の診断は超音波の観察での主 観的評価で臨床上は十分であろうが、より客観的に表 す方法として羊水腔を計測する方法がある。羊水腔の うち最大ポケットを描出しその部位の垂直長を測定し て、16cm以上ならば重度の羊水過多、2cm以下なら過 少と判断する方法や、より誤差やばらつきを少なくする 方法として羊水腔を四つの部分に分け[四分円法(four-quadrant technique)]、その部分の羊水腔の垂直距離を計 測し合計したAFI(amniotic fluid index)を算出する方法

が提唱されている15)。AFIが25cm以上ならば羊水過多 と5cm以下なら過少と判断する方法である。 3.子宮頸管の観察  早産の予知という観点から、経腟超音波による子宮頸 管の観察の有用性が報告されている16、17)。具体的には 頸管長がその指標として計測される。頸管長は組織学的 内子宮口を同定し、子宮頸管線の長さを計測する。妊娠 30週以前では25mmを頸管長のカットオフ値とする報告 が多い16、17)。頸管無力症の診断には妊娠20週前後の頸 管の観察が有用とされるが、早産予知のスクリーニング のパラメーターとしては偽陰性と偽陽性とも存在するこ とに留意する必要がある。 4.胎児well-beingの診断  この時期の胎児well-beingを確認する確立した方法は ないが、①胎児発育が正常であること、②羊水量が十分 あること、③胎動が認められると、④胎児基準心拍数が 正常で、不整がみられないことは最低限確認しておくべ きであろう。 5.胎児異常の診断  妊娠20週前後の時期に、多少時間をかけて胎児の観 察を行うことで多くの胎児の形態異常のスクリーニング が可能である。具体的な方法については別項にて解説が あるので、この時期に行うとよいと外来レベルで行える チェックポイントを表1に示しておく。通常の胎児計測 を行いつつ、系統的に胎児各部の観察を行うとよい。 表1 妊娠中期(20週前後)胎児異常のチェックポイント 胎児計測   児頭大横径 BPD 大きさは正常? 躯幹計測 AC APTD × TTD 大腿骨長 FL 推定時体重 EFW 羊水量 過多・過少 頭部     頭蓋内構造 対称性 小脳 脳室 脈絡叢 顔 眼窩・口唇 胸部     肺 大きさ 異常腫瘤 胸水の有無 心臓 大きさ 位置・軸  四腔断面  流出路 左室・右室  3 vessel view 腹部     胃泡 位置・大きさ 膀胱 腎臓 異常・腫瘤エコーの有無 腹水の有無 脊椎     彎曲 腫瘤エコーの有無 四肢     長さ (手指)開いている? 臍帯・胎盤   2動脈1静脈 位置

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妊娠後半期の超音波診断

 基本的には妊娠中期と同様であるが、主たる目的は胎 児発育診断および胎児well-beingの診断であろう。胎児 奇形などの診断は、胎児が大きくなると困難になる場 合もあるため、いわゆる胎児異常のスクリーニングは必 要であれば中期までに行っておくべきである。したがっ て、外来レベルでは胎児計測とEFWの評価、羊水量の 測定、胎動、FBMのチェックが行えればよいであろう。 SD値を用いたFGRの臨床的診断手法に関しては簡略的 にすでに述べたが、胎児の血流計測も胎児well-being の指標として重要ではあるが、臍帯血流波形の異常は FGRや臍帯・胎盤異常に伴うことが多いため、外来レ ベルのスクリーニングでは必須とはいえず、この時期に は積極的に心拍モニタリングを行うことのほうが臨床的 には重要度が高いと考えられる。臍帯血流波形の計測例 を図11に示す。  超音波を用いた胎児well-beingの指標としてよく知 られたものに、Manningら18)により提唱された方法で

biophysical profile score(BPS)がある。これは、胎児心

拍所見に胎児呼吸様運動(FBM)、胎動、筋緊張、羊水 量の情報を加えたスコアリング法(表2)である。心拍以 外の情報は胎児の未熟性の影響が少ないとされ、NST のバックアップテストとして有用とされる。妊娠週数に 関するパラメータがないこと、心拍数の異常の有無、呼 吸様運動の有無などを同じ重みでポイント化しているな ど、病態生理学的評価法としては問題が多いと思われる が、胎児well-beingの臨床的スクリーニング法として有 効な手法である。10点を正常とし、胎羊水量正常の8点 は10点と同様にあつかう。羊水量減少であれば分娩を 考慮する。

3D/4D超音波法について

 胎児の疾患の診断には3D超音波がその威力を発揮す る。ボリュームデータを任意断面で切り出したり、CT のようにマルチスライスの表示も可能であったりと、 解剖学的構造が容易に把握できるようになった。単純 にスキャンすれば誰でも容易に診断にたる画質をもつ ボリュームデータが得られるわけではなく、通常の2D 図11 臍帯血流計測 Resistance indexやpulsatility indexがその指標として用いられる.

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表2 Biophysical profile score(BPS) 項目 正常(2点) 異常(0点) ノンストレステスト (non-stress test) 20〜40分の観察で,15bpm 以上かつ15秒以上の一過性頻 脈が2回以上 20〜40分の観察で,15bpm 以上かつ15秒以上の一過性頻 脈が1回,もしくは認められ ない 胎児呼吸様運動

(fetal breathing movement)

30分間の観察で,30秒以上 持続する胎児呼吸様運動が1 回以上認められる 30分間の観察で,30秒以上 持続する胎児呼吸様運動が認 められない 胎動

(gross fetal body movement)

30分間の観察で,胎児体幹 や四肢の運動を3回以上認め る(連続した運動は1回と数え る) 30分間の観察で,胎児体幹や 四肢の運動が2回以内 筋緊張 (fetal tone) 30分間の観察で,四肢の伸展 とそれに引き続く屈曲運動, もしくは手の開閉運動を1回 以上認める 30分間の観察で,四肢の伸展 屈曲もしくは手の開閉運動を 認めない 羊水量

(amniotic fluid volume)

羊水ポケットが2cm未満 羊水ポケットが2cmを超える

図12 妊娠8週の経腟超音波による胎芽像 3D構築像で生理的臍帯ヘルニア(この時期でみられるのは正常)が観察できる.

(13)

と同様、acoustic shadowやアーチファクトを考慮しつ つ、目的の領域の画像情報が含まれるような方向で、ボ リュームデータを得ることが肝要である。診断という意 味では一枚のきれいな2D画像が、データ量としては勝 る3Dで収集して再構築した画像より有用である場合も 多いのである。しかしながら、立体的な位置関係の把握 では3Dにかなうものはない(図12)。カラードプラによ る血流情報の3D/4D表示も、今までは得られなかった ような子宮内の情報を提供してくれるようになった(図 13)。これらの方法を駆使することにより、多くの胎児 疾患の診断が妊娠中期までの早い時期に診断が可能に なってきている。しかしながら診断技術の進歩に耐えう る周産期の医療体制の構築が急務である。

おわりに

 まず超音波で胎児を計測、観察することが、わが国に おける妊婦健診の一般的なスタイルとなった感がある。 しかしながら産科医不足が現実となった現在、妊婦健診 の基本に立ち戻り、健診に超音波を用いている意義を鑑 みて、ポイントを押さえた効率のよい超音波検診システ ムを再構築する必要があるのかもしれない。胎児計測 に関する基準値、回帰式を曲線のデータ、発育評価用の チャートのサンプル(JUSM/Shinozuka)は筆者のサイト http://www.shinozuka.com から必要に応じてダウンロー ドして使用されたい。 【参考文献】

1)Robinson HP, Fleming JE:A critical evaluation of sonar "crown-rump length" measurements. Br J Obstet Gynaecol

82:702-710, 1975 2)超音波胎児計測の標準化と日本人の基準値の公示につい て.超音波医学 30:J415-438, 2003 3)篠塚憲男,田口彰則:胎児発育の解析からみた妊婦健診に おける超音波検査の至適時期と回数に関する検討に基づ く超音波検査のminimal requirementに関する提言. 厚生 労働科学研究補助金―わが国における新しい妊婦検診体 制構築のための研究―(主任 松田義雄).平成21年度 総括・分担研究報告書:66-95,2010 図13 胎児心臓/血管のカラードプラ3D/4D表示

STIC(spacio temporal image collection)という技術により,心臓の動き,血流をvolume dataとして取り込 み,4D画像として構築できる.

胎児心臓

下大静脈

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4)Smith GC, Smith MF, McNay MB, et al:First-trimester growth and the risk of low birth weight. N Engl J Med 339: 1817-1822, 1998 5)竹内久彌:超音波胎児病学.南江堂,東京,2009 6)http://www.fetalmedicine.com/ 7)http://www.jsog.or.jp/ethic/H23_6_shusseimae.html 8)篠塚憲男,升田春夫,香川秀之,他:超音波胎児計測にお ける基準値の作成. 超音波医学 23:879-888, 1996 9)Shinozuka N, Okai T, Kohzuma S, et al:Formulas for fetal

weight estimation by Ultrasound measurements based on neonatal specific gravities and volumes. Am J Obstet Gynecol 157:1140-1145, 1987 10)小川雄之亮,岩村 透,栗谷典量,他:日本人の在胎週数 別出生時体格基準値.日本新生児学会誌 34:624-632, 1998 11)板橋家頭夫,藤村正哲,楠田 聡,他:新しい在胎期間別 出生時体格標準値の導入について.日本小児科学会雑誌 114:1271-1293, 2010 12)篠塚憲男:胎児発育・児体重推定(産婦人科検査法,研修 コーナー).日本産婦人科学会雑誌 59:"N-168"-"N-173", 2007

13)Yoshida S, Unno N, Kagawa HN, et al:Prenatal detection of high-risk group for intrauterine growth restriction based on sonographic fetal biometry. Int J Gynecol Obstet 68: 225-232, 2000

14)Shinozuka N, Taguchi A:Ultrasound diagnosis and management of intra-uterine growth restriction. Ultrason Rev Obstet Gynecol 6:157-162, 2006

15)Moore TR, Cayle JE:The amniotic fluid index in normal human pregnancy. Am J Obstet Gynecol 162:1168-1173, 1990

16)Lams JD, Goldenberg RL, Meis PJ, et al:The length of the cervix and the risk of spontaneous premature delivery. N Eng J Med 334:567-572, 1996

17)Guzman ER, Ananth CV:Cervical length and spontaneous prematurity: Laying the foundation for future interventional randomized trials for the short cervix. Ultrasound Obstet Gynecol 18:195-199, 2001

18)Manning FA, Morrison I, Lange IR, et al:Fetal assessment based on fetal biophysical profile scoring: experience in 12,620 referred high-risk pregnancies. I. Perinatal mortality by frequency and etiology. Am J Obstet Gynecol 151: 343-350, 1985

参照

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