ザイロン 644Z デザインハンドブック
旭化成ケミカルズ(株)
ザイロン 644Z ハンドブック Ver. 1.5
目次
• ザイロン 644Z 特性
– 一般物性
– 引張り特性の温度依存性
– 耐低温衝撃性
– 流動性
– 耐薬品性
– シリコン接着性
• 金型設計
– ホットランナーデザイン
– ガス抜き
• 製品設計
– リブ構造
– コーナーR
– 金属インサート
– スナップフィット
ザイロン 644Z ハンドブック Ver. 1.5
<一般物性>
項目 試験方法 単位 ザイロン 644Z BK 比重 ISO 1183 - 1.09 MFR 10kg/250°C ISO 1133 g/10min 3.1 引張り降伏応力 (23°C) ISO 527 MPa 74 引張り降伏応力 ( -40°C) ISO 527 MPa 104 引張り破断伸度 (23°C) ISO 527 % 9 引張り破断伸度 ( -40°C) ISO 527 % 8 引張り弾性率 ISO 527 Mpa 2730 曲げ強度 ISO 178 MPa 110 曲げ弾性率 ISO 178 MPa 2440 シャルピー衝撃 (ノッチあり) 23°C ISO 179 kJ/m2 21 シャルピー衝撃 (ノッチあり) -40°C ISO 179 kJ/m2 8DTUL 1.8MPa ISO 75 °C 129 ボールプレッシャー 125°C IEC 60695-10-2 °C Pass 流動方向 % 0.5 成形収縮率 直角方向 旭化成法 (2mmt) % 0.8 UL94 V-0 / 5VA mm 0.75 / 2.0 CTI PLC 2 RTI (Elec/Imp/Str) °C 125/125/125 HWI PLC 2 HAI 1.5mm PLC 0 HVTR PLC 4 (2mm/5VA) UL 746C f1 (1mm/V-0) そ の他 GWIT (2mmt) IEC60695-2-13 °C 875
ザイロン 644Z ハンドブック Ver. 1.5
<低温衝撃特性>
φ 5 0 試験片 クランプ ベース ストライカー (φ10) • 試験片厚み:1mm, 2mm & 3mm • 試験環境温度::- 40°C • ストライカー重量:3.2kg • ストライカー高さ: 1.5mmザイロン 644Z ハンドブック Ver. 1.5
<射出成形特性: 流動性>
シリンダー温度: 300°C 金型温度 : 100°C 厚み :2mm 金型温度: 100°C 射出圧 :112MPa 厚み : 2mm シリンダー温度: 300°C 射出圧 :112MPa 厚み : 2mm 項目 条件 単位 予備乾燥 乾燥温度 100 - 110 ℃ 乾燥時間 2 - 4 Hr 成形条件 シリンダー温度 260-320 ℃ スクリュー回転 20 - 100 RPM 背圧 2 - 5 MPa 金型温度 60 - 100 °C 加工条件<耐薬品性>
ザイロン 644Zは非晶性樹脂であり、種々の薬品との接触が想定される場合は事前
に耐薬品性確認をお勧めします。表1に示すように酸・アルカリについては影響は
ありませんが、一部のオイル・グリス・溶剤等ではクラック発生を伴うことがあり
ますので注意が必要になります。
<
離型剤>
基本的にザイロンの成形時に離型剤の使用は控えて下さい。複雑な形状の成形品を成
形する場合等、離型剤をやむなく使用する際は、最小限の使用に止めて下さい。もし使
用する場合は、ザイロンに影響の少ない“ペリコートB”(商標名、製造販売元:中京化成
工業)のようなシリコン系離型剤をお薦めします
。
<
切削加工油・グリス>
インサート金属等の切削加工油・グリス はザイロンと接触することがないよう、洗
浄してください。切削加工油の種類によってはクラックを発生させることがあります。
シリコン系のグリスをお勧めします。使用する切削加工油・グリス等の影響が不明な
場合は弊社担当までお問合せください。
ザイロン 644Z ハンドブック Ver. 1.5 商品名 製造メーカー 臨界歪み(%) ランク グリス Z260 HASCO 1.2 A A7002 HASCO 1.2 A オイル シリコーンオイル KF96 信越化学 >1.5 A シリコーンオイルSH200 東レ ダウコーニング >1,5 A ダイアカット OELHELD 0.6 C 離型剤 ぺリコート B 中京化成 >1.5 A 接着剤 ケムロック LORD 0.08 D 洗剤(界面活性剤) チャーミー V クイック 花王 1.0 A アルコール エタノール 1.2 A イソプロピルアルコール(IPA) 0.9 B 酸・アルカリ 硫酸 (50% sol) >1.5 A アンモニウム水溶液 (25% sol) >1.5 A 有機溶剤・その他 トリブチルフォスフェート 0.11 D ガソリン <0.10 D 臨界歪み (%) 留意点 ランク >1.0 薬品の接触は、クラック発生の主原因とは なりません。 A 1.0 – 0.5 薬品の接触は、外部応力の非常に高い部分 や応力集中部等の厳しい使用条件下ではク ラック発生の原因1つとなる可能性がある 為、使用に際しては注意が必要です。(一 般的な状態での使用においては、クラック 発生の主原因にはなりません。) B 0.5 – 0.2 薬品の接触はクラック発生の主な原因の1 つとなる可能性がある為、使用に際しては、 実用的試験により慎重に判断する必要があ ります。(特に応力集中部,成形歪みが大 きい部分への使用は避けて下さい) C 0.2> 薬品の接触は、クラック発生の第一原因となりますので、使用は避けて下さい。 D
表1 耐薬品性
ベンディング バー 薬品 試験片<耐薬品性(シリコーン接着剤/ポッティング剤)>
ベンディング バー 薬品 試験片 品名 メーカー 臨界歪み (%) ランク 23°C 接着剤KE45W Shin-Etsu Chemical >1.5 A KE4828W Shin-Etsu Chemical >1.5 A TSE382W Momentive >1.5 A TSE392W Momentive >1.5 A PV 804 Dow Corning >1.5 A PV 8101 Dow Corning >1.5 A APF125 Wacker Chemical 0.6 B
VHB TAPE 4941 3M >1.5 A ポッティン グ 剤 KE-200 CX-200 Shin-Etsu Chemical 0.41 C KE-210F
CAT-210 Shin-Etsu Chemical >1.5 A PV7010 Dow Corning 1.5 A 臨界歪み (%) 留意点 ランク >1.0 薬品の接触は、クラック発生の主原因とは なりません。 A 1.0 – 0.5 薬品の接触は、外部応力の非常に高い部分 や応力集中部等の厳しい使用条件下ではク ラック発生の原因1つとなる可能性がある 為、使用に際しては注意が必要です。(一 般的な状態での使用においては、クラック 発生の主原因にはなりません。) B 0.5 – 0.2 薬品の接触はクラック発生の主な原因の1 つとなる可能性がある為、使用に際しては、 実用的試験により慎重に判断する必要があ ります。(特に応力集中部,成形歪みが大 きい部分への使用は避けて下さい) C 0.2> 薬品の接触は、クラック発生の第一原因となりますので、使用は避けて下さい。 D
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<金型設計:ホットランナーシステム>
マニホールド形状は製品形状、キャビティ数等により決定して下さい。マニホールドブロック設計の際の注 意点は下記の通りです。 1. ヒーター容量は余裕をもち、320℃程度まで上昇が可能な設計にします。マニホールドのブロック ヒーターは下記の計算式(1)を参考にして下さい。マニホールドブロックの温度分布を正確にコン トロールするために、ヒーターのワット密度が低い(3W/cm2)ものを多数設置した方が効果が有 ります。 2. スプルーブッシュは圧力伝達と熱伝導を考慮して、可能な限り短く、径は太く(φ8.0mm~ φ9.5mm)する必要があります。 3. メインランナー径は、製品重量、使用材料等により変わります。ザイロンでは一般にφ8.0mm~ φ16.0mmにして下さい。メインランナー径の決定は下記の計算式(2)から算出できます。 4. ゲート径:1.5~2.5㎜φ(若干大きめにする必要がおります) 5. 多点ゲートの場合は、各ゲート独立してコントロー.ルできるシステムにして下さい。 6. マニホールドはデットスペースが無い形状とし、内径は7~15㎜の範囲で設計します。 7. ゲートからの流動距離は最大10~15㎝とし、それ以上になる場合はゲートを追加して流動距離を 調整する必要があります。 計算式(2) ΔP= (8μLQ)/(πr4) ΔP:圧力損失(MPa) μ:粘性係数(kg・sec/mm2) L:ランナー長(mm) Q:流量(mm2/sec) r:ランナー半径(mm) 計算式(1) (a) P=(c・tW)/(860・T・η) もしくは (b) P= W×0.35 P: ヒーター容量 kW c: 比熱 kcal/(㎏・℃) 一般的に鋼なので0.11 t: 加熱温度 ℃ W: マニホールド重量 ㎏ T: 上昇時間 h (金型,ランナーの大きさに異なるが、0.5~1.0hが一般的) η: 効率(0.3)<金型設計:ガス抜き / 金型材質 / 抜き勾配>
<
ガスベント(ガス抜き)>
- ガス抜きが不十分ですと、ガス焼け,ウエルド強度不足,ショートショート,ヒケ,モールドデポジットの 原因となります。 - ガス抜きの方法は樹脂が流れ込まず、キャビティー内の空気や樹脂からの揮発性ガスのみを通過さ せるスリットを設けます。<
金型材料>
- ザイロン用の金型には、特に耐蝕鋼材等の使用は必要ありません。通常の金型用鋼材(SC材、SCM 材、SKD材、SKS材等)を使用目的(強度、加工性、表面仕上性、耐摩耗性、摺動性等)に応じて使い別 けることができます。 - 金型腐食の防止を目的としたメッキの必要はありませんが、成型品の光沢改良等を目的としたメッキ は通常の樹脂と同じ様に行うことができます。通常の金型鋼材の他にBe-Cu合金の使用も可能です。<抜き勾配>
- 成形品を金型から容易に取り出すために、抜き勾配を付ける必要があります。抜き勾配は、ノックアウト ピンの位置,製品の形状や深さ,シボの深さなどにより変化します。 通 常 1~2°(形状によっては0.5°程度で可能) シボ付き 4~6°シボの深さにより最適抜き勾配(抜き勾配目安:シボ深さ=1°:10μ )ザイロン 644Z ハンドブック Ver. 1.5
<製品設計: リブ構造>
リブは ①耐荷重性 ②ソリ防止 など補強効果や ③サブランナーの役割を果たし、樹脂を流れ易くする。 に有効です。 一方、リブ部分は、ひけ・ボイドが発生し易くなります。 リブの厚みは基盤の約50~70%を目処にし、厚みを十分大きく出来ない場合は、数を増やす設計をし て下さい。 また、応力集中を避けるために、リブの根本にはRを設けて下さい。<製品設計: コーナーRおよび製品肉厚>
1. 成形品の肉厚は加工時の流動性,寸法安定性と成形品の外観(ヒケ,フローマーク,ソリなど)及び 成形品の物性(耐熱性,強度,剛性)面を加味することが必要であり、成形品の重量のみを重視する のではなく、機能上,充分な構造を持つ最小の肉厚構造の選定が望ましいです。 2. 成形品の肉厚は、2~4㎜tが一般的であり、最小0.8㎜t,最大でも6㎜t以下を基準として下さい。肉 厚が大きすぎるとヒケ,ボイドが発生し易くなり、冷却時間がかかり、成形サイクルが長くなります。 そり変形の低減 外観不良 歪み低減 推奨できる肉厚変化ザイロン 644Z ハンドブック Ver. 1.5
<製品設計: 衝撃強度に対するコーナーR依存性>
Hummer
R:0.25-1.0
<製品設計:金属インサート>
1. メタルインサート成形の場合、樹脂とメタルの線膨張率が異なるため、下図のように応力集中が 発生しない形状が望ましいです。アルミニウム,真鍮は線膨張率が比較的大きく、鉄製インサート よりもこの点で適しています。 2. 締結力を得るために、ローレット,グルーブをインサートに設けることを推奨します。ローレットは、 応力集中を避けるため、ピッチの広いものを選定ください。 3. インサートメタルの底形状が筒状の場合、応力集中を避けるため“Cカット”を付けて下さい。 4. インサートメタルの予熱インサートメタルは、80~100℃に予熱して成形を行うことを推奨します。 5. オイルインサートメタルは、脱脂乾燥を行って下さい。また、インサート部に、オイルや薬品の接触 を避けて下さい。成形時の時の残留歪みによりの影響によりクラックが発生する恐れがあります。(インサートメタル)
(ボス寸法の参考例)
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