<資料 1>
大規模損壊について
平成30年1月18日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
1.はじめに 本資料では、「高速増殖原型炉もんじゅの廃止措置における保安規定の 認可の審査に関する考え方」に示された「大規模な自然災害(地震(津波 の重畳を含む))」及び「故意による大型航空機衝突」による大規模な災 害が発生した場合に対し、放射性物質の放出低減を目的とした以下の影響 緩和策で使用する資機材の整備方針、仕様等を設定根拠も含めて説明する ものである。 (1)大規模損壊発生時における大規模な火災が発生した場合における消 火活動 (a)故意による大型航空機衝突による航空機燃料火災について (b)大規模な自然災害による1次系ナトリウム火災について (2)大規模損壊発生時における使用済燃料貯蔵槽の水位を確保するため の対策及び使用済燃料の損傷を緩和するための対策 (a)燃料池への給水による水位確保について (b)使用済燃料の損傷緩和について (3)大規模損壊発生時における放射性物質の放出を低減するための対策 (a)放水による放射性物質の拡散抑制について 2.大規模損壊発生時の対応についての共通事項 大規模な自然災害又は故意による大型航空機の衝突によって発生した資 機材等の損壊状況等の確認を行い、確保できる要員及び使用可能な資機材 等により大規模損壊発生時の必要な対応を選択して実施する。 大規模損壊と判断するまでは、保安規定に基づく品質マネジメント文書 「災害対策要領」、「運転管理要領」等に従い必要な措置を講じる。 大規模損壊発生の有無の判断は、大規模な自然災害又は故意による大型 航空機の衝突によって以下の適用開始条件に該当すると判断した場合、そ れぞれの必要な対応を実施する。
・大型航空機の衝突による大規模な航空機燃料火災が発生している場合 ・1次系ナトリウム漏えい発生区画の窒素雰囲気が維持できない場合 ・燃料池の水位が低下し恒設設備では回復できない場合 ・敷地境界での放射線量の有意な上昇が発生している場合 大規模損壊発生時に屋外で使用する可搬型資機材の運搬については、運 搬ルートに瓦礫等が散乱している場合でも運搬を可能とするため、不整地 走行用特殊車両による運搬体制を整備する。さらに、不整地走行用特殊車 両でも走行が困難である場合でも、配備済みのホイールローダにて整地す る等の対応を実施することにより、運搬を可能とする。運搬経路にて火災 が発生している場合は、経路の消火活動を実施する。 大規模損壊発生時に屋内使用する可搬型資機材については、人が運搬で きる程度の重量とし、屋内の被災状況に応じて、運搬経路を臨機応変に選 択して運搬できる体制を整備する。運搬経路にて火災が発生している場合 は、消火器により消火活動を実施する。なお、禁水区域の場合は、消火器 はナトレックス消火器を使用する。 2.1 1-(a).故意による大型航空機衝突による航空機燃料火災について 燃料体及び大量のナトリウムを内包する機器を保有する原子炉建物及び原 子炉補助建物を衝突対象とした場合の航空機燃料火災に対し、その影響範囲 を考慮して、燃料火災に対応可能な資機材等を整備する。以下に整備方針、 仕様等を設定の考え方も含めて説明する。 (1)航空機燃料火災消火のための能力 航空機燃料等の火災の対応資機材として、既に配備済みの消火のための 設備一式に加えて、可搬型泡消火設備を追加配備する。 可搬型泡消火設備は、空港に配備されるべき防災レベル等が記載されて いる国際民間航空機関(ICAO)発行の空港業務マニュアル(第1部)(1)
(以下「空港業務マニュアル」という。)を参考に、容量を設定する。設 定にあたっては、空港業務マニュアルでは離発着機の大きさにより空港カ テゴリーが定められており、最大であるカテゴリー10 を適用し、カテゴリ ー10 の放水能力を確保する設計とする。放水のための水源は、現有設備の 活用に加え、海水からの取水も可能とするとともに、水源の位置的分散を 強化する観点から水槽を新設する。空港業務マニュアルの規定に対する可 搬型泡消火設備の仕様を第 1 表に示す。 (2)水源 水源の配置を第 1 図に示す。多様な水源として、現有設備の活用に加え、 位置的分散強化、海水を水源とする運用面の改善のため、水槽 を 新設する。また、大容量の水源活用の観点から、現有の へ取水口を追加設置する。 空港業務マニュアルカテゴリー10 の規定を満足する放水能力を確保す るため、水源の容量として32300ℓ(=32.3m3)を満足する必要がある。プ ラント南側及び東側には、現有設備として、原子炉補助建物から 100m の 離隔距離を確保した 等の大容量の水源を有し、容量は 十分満足するものの、位置的分散の観点からは、北側及び西側の水源は比 較的容量の小さい を有するのみである。 から消 防ホースを引き回すことで、プラント全体の消火活動は可能であるものの、 消防ホースを引き回すためには、作業員及び作業に必要な時間も大幅に増 加することとなる。よって、北側及び西側の放水の水源として、位置的分 散の強化の観点から、水槽を新設する。新設する水槽は、海に近い高台に 設置することで、海水を水源として使用する際の汲み上げ用水槽としても 活用する。 (3)可搬型泡消火設備 配備予定の可搬型泡消火設備は、可搬型中容量ポンプ 台、放水銃、泡 消火薬剤混合器の組み合わせを 1 セットとし、これを 3 セット配備する。
可搬型泡消火設備 1 セットの構成を第 2 図に示す。可搬型中容量ポンプの 仕様を第 2 表に示す。可搬型泡消火設備は 3 セットを同時に使用すること で空港業務マニュアルにあるカテゴリー10 の規定を満足する放水能力を 確保する。可搬型泡消火設備は、分散配置することで同時に機能喪失しな い設計とする。現有の設備も含め泡消火設備の設置若しくは保管場所を第 3 図に示す。可搬型泡消火設備は、火災の発生場所に応じて、運搬して使 用する。 可搬型泡消火設備の動的機器である可搬型中容量ポンプについては、故 障に備え、消火のために使用する 台に加えて、予備として 台を整備す る。 (4)禁水区域での消火剤(ナトレックス) 禁水区域での航空機燃料の火災の対応資機材として、ナトレックスを追 加配備する。追加配備するナトレックスは、 対象区画を第 4 図 に、配備するナトレックス量を第 3 表に示す。配備するナトレックス量の 計算は以下のとおり。
2 次系については、ナトリウム漏えい燃焼リスク低減の観点から、仮設 タンクの増設後に全系統ドレン、固化を実施する。殆どのナトリウムは原 子炉補助建物地下階のダンプタンク、オーバフロータンクにて固化、一部 が仮設タンクで固化状態となる。第 5 図に示すとおり、ダンプタンク室、 オーバフロータンク室には燃焼抑制板が設置されており流入空気を制限 していることから、仮に航空機燃料が侵入した場合でも、燃焼抑制板下に 導かれ自己窒息消火に至る。よって、2 次系としては、2 次系仮設タンク 設置室を対象としてナトレックスの配備量を算出する。 2.2 1-(b).大規模な1次系ナトリウム火災について 大規模な自然災害によって生じた原子炉格納容器内での大規模な1次系ナ トリウム火災について、放射性物質の放出低減を最優先とした被害拡大の防 止を目的として、消火の3原則を基本にした影響緩和策を検討し、必要な設 備対策、資機材等を整備する。以下に整備方針、仕様等を設定の考え方も含 めて説明する。なお、炉外燃料貯蔵槽も同様の考え方で整備する。 (1)窒息消火(気密性確保) 窒息消火のためには、漏えいしたナトリウムに供給される空気の量を抑 制する必要がある。原子炉格納容器は空間容積が大きい上、開放状態であ ることから、1次系ナトリウム火災発生時に火災区画への空気供給を抑制 のために、原子炉格納容器内床下と隔離し、床上と床下の空気通気量を制 限する対策を実施する。 損壊箇所が限定される場合は、窒素雰囲気空調設備のダンパを閉止、開 口箇所を不燃布で閉止、隙間部の目張り等を実施し、自己窒息消火を促進
する。 複数箇所の破損が発生した場合は、空気雰囲気空調設備の防火ダンパを 閉として床下区画と隔離し、現有配管等を活用して窒素ガスを注入し、窒 息消火を促進する。床下区画を隔離できるようにするため、予め原子炉格 納容器階段室扉の通気量制限対策工事、原子炉格納容器とコンクリートの 隙間(エアギャップ)の穴仕舞い工事を実施する。また、空気雰囲気空調 設備の防火ダンパの閉止の強化策として、アクセス性改善のため、梯子を 設置する。 (2)窒息消火(窒素ガス注入) 窒素ガス注入による窒息消火のための設備構成を第 6 図に示す。現有窒 素ガス供給設備を活用するとともに、可搬型設備による窒素供給を可能と することにより、アクセスルートも含めて窒素ガス供給源の位置的分散を 強化する。窒素ガスを床下のナトリウムが漏えいした部屋又は隣接部屋 (空気雰囲気室)へ注入するため、現有の配管を複数選定(窒素雰囲気室 空調系への窒素ガス供給配管及び空調ダクト、真空清掃系配管)し、被災 状況に応じて、注入経路を確保する。更に、恒設配管損傷時に備え、フレ キシブルチューブを追加配備する。 火災鎮火後は、再着火防止の観点から、ローリーにより液体炭酸ガスを 運び、蒸発器(可搬型)により炭酸ガスを発生させてナトリウムの安定化 処理を実施する。 2.3 2-(a).燃料池への給水による水位確保について 燃料池の水位が低下した場合であっても、現状の崩壊熱では、燃料池水位 の低下及び冷却機能の喪失に対して、燃料被覆管の破損リスクは極めて低い ことから、水位を確保するための影響緩和策は必ずしも必要ない。ただし、 事故時の周辺公衆のスカイシャイン線による被ばくを低減する観点から給水 による水位確保は必要であり、その方策を検討し、必要な資機材等を整備す
る。以下に整備方針、仕様等を設定の考え方も含めて説明する。 (1)給水設備 給水対策として、可搬型消火設備による給水体制を整備する。 なお、現有設備を活用した燃料池への給水については、体制を整備済み であり、それらに加えて、 体制を整備する。 2.4 2-(b).使用済燃料の損傷緩和について 現状の崩壊熱では、燃料池水の喪失に対して、燃料被覆管の破損リスクは 極めて低いことから、使用済燃料への水スプレイ等の対策は必ずしも必要な く、上記「2-(a).燃料池への給水による水位確保」の対策に包含される。 2.5 3-(a).放水による放射性物質の拡散を抑制する対応 放射性物質が拡散する災害について、放射性物質の拡散抑制を目的として、 影響緩和策を検討し、必要な資機材等を整備する。以下に整備方針、仕様等 を設定の考え方も含めて説明する。 (1)放射性物質拡散抑制のための放水設備 可搬型消火設備を使用して放水することで、大気中への放射性物質拡散 を抑制する。放水にあたっては、建物内の放射性物質を含んだ排気の経路 を考慮し、建物外に放出する開口箇所で集中的に放水銃を用いて、大気に 拡散していく放射性物質を地表に落とす。排気経路を考慮した対応イメー ジを第 7 図に示す。排気経路が定まらない場合は、建物を囲うよう可搬型 消火設備を配置し、ナトリウムと水との反応を避けながら、風向に合わせ て、原子炉建物に直接放水が降り掛からないように運用する。放水点の配 置例を第 8 図に示す。可搬型中容量ポンプ を接続することで、低所 からの放水でも、原子炉建物の最頂部 高さまで
の放水が可能である。 (2)海洋への放射性物質拡散抑制のための放射性物質吸着剤(ゼオライト) 放水による大気中への放射性物質拡散抑制にて発生した放射性物質を含 んだ排水の海洋への拡散抑制のため、排水経路にゼオライトを敷設する。 ゼオライトの敷設場所及び保管場所を第 9 図に示す。 3. 参考文献 (1) 「空港業務マニュアル第 1 部避難及び消防」,国際民間航空機関(ICAO) , (2010.10) 以上
第 1 表 空港業務マニュアルの規定に対する可搬型泡消火設備仕様 空港業務マニュアルの規定 (カテゴリー10) 可搬型泡消火設備の仕様 水の量 32300ℓ 多様な水源からの給水にて 要求水量を確保 混合泡溶液の放射量 11200ℓ/min 第 2 表 可搬型中容量ポンプ仕様 型番 形式 性能 規格圧力 規格放水量 高圧圧力 高圧放水量 寸法(全長×全幅×全高) 乾燥重量
第 1 図 水源配置
第 4 図 対象区画
第 6 図 窒素ガス注入設備構成
第 8 図 放水点の配置