愛知工業大学研究報告
第
28
号 平 成5
年
63ソ フ ト ド リ ン ク 市 場 に お け る
知 覚 ポ ジ シ ョ ニ ン グ の 研 究
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Kazuyuki TERAMOTO Abustract 1n method of田arketstructure and co田petitor' s posi tions, structure is essential in product development. Ne胃productsmust target occupayed areas by existing co田petitors. This report demonstrates the investigatio日ofsturucture and positions i日 the soft drink1日arketthrough a suvey of 250 consu面白rs. The air日1n this investigation, the market sturucture is searched that new product田aybe set into opportunity space. 1 .はじめに 厳しい飽和市場の中で企業が市場競争に打ち勝つ ためには,常に自社企業を開拓し,活性化する活動 が必要である それはソフトドリンク業界でも言え ることであり,近年のドリンク業界の動きはかなり 活発になってきている とくに平成四年三月に缶飲 料の大半が値上げして1
1
0
月となってからは,これ までの自動販売機におけるワンコインジュースの考 えが崩れ,それに基づきソフトドリンク業界では, 従来なかった高価格高品質の新商品を相次いで投入 し始めた町最近では価格よりも商品特性の勝負に入 ったと言われている ここ近年某P
社が[高付加価値飲料]という商品 概念のもと,高価格帯の缶飲料の販売を始めた.そ の内容は従来の缶飲料の概念に縛られることなく, 新たな要素を盛り込みながら商品開発を進めている のが大きな特徴である 例えば、コーヒー・紅茶類 愛知工業大学 経営工学科 (豊田市〉 における素材の選択,プリン.モカ.ゼリーなどの ようなデザート感覚で飲める物,欽む前に缶を振る 回数によって味が変わると言うような新しい飲み方, 味噌汁・豚汁・茶碗蒸しなどのように食べられる物, があげられる. p社のように積極的に新商品開発を 行っているところもあるが,ソフトドリンク業界全 体ではまだ高価格商品の販売に跨踏しているところ も少なくない.これからどの様な日新しい商品が登 場してくるのか,業界だけでなく消費者の関心も高 まってくるだろう. 本研究では,市場の現状を犯握し,消費者のソフ トドリンクに対する知覚ポジショニングを探索した 2. 研究方法 アンケートの結果から相関分析,判別分析そして マッピングという一連の手順は,図lの流れにした がって実施した64 愛知工業大学研究報告, 第
2
8
号B
, 平成5
年Vo
.128-B
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9
3
2-2
ス ク リ ー ニ ン グ 判 別 分 析 図l
分 析 の 流 れ 2-1 ベ ネ フ ィ ッ ト 評 価 デ ー タ 消 費 者 を 対 象 に ソ フ ト ド リ ン ク に 対 す る イ メ ー ジ 調 査 を 行 い , 既 存 製 品 に 対 す る 消 費 者 の ベ ネ フ ィ ッ ト評価を調べる 調 査 対 象 を2
5
0
人 の 消 費 者 と し た ソ フ ト ド リ ン ク は , 果 汁 飲 料 , コ ー ヒ ー , お 茶 (ウーロン茶を含む) ,スポーツ飲料,炭酸飲料, 健 康 飲 料 , 乳 酸 菌 飲 料 , 清 涼 飲 料 , 野 菜 ジ ュ ー ス の1
0
種類を選んだ. 次 に ソ フ ト ド リ ン ク が 消 費 者 に 与 え る ベ ネ フ ィ ッ ト を 変 数 ( 味 覚 , 品 質 , 容 器 , 飲 用 状 態 , 商 品 イ メ ー ジ,などの5
0
項 目 ) と し て2
3
項目を選んだ(表l
参照) 表 1 . ア ン ケ ー ト 用 紙 ユ ソ あ 朝 和 お 眠 さ ッ ま フ と 食 食 酒 It わ キ ろト 昧 に と 覚 や り ゃな カ? 古b あ 混 ま … … 由 、 か 感 よ う う ぜ し じ 、し よ て ょ に 、 、 果 汁 飲 料 コ ー ヒ ー 紅 茶 お 茶 ( ウ ー ロ ン 茶 ) ス ポ ー ツ 飲 料 ベ ネ フ ィ ッ ト 評 価 デ ー タ を も と に 判 別 次 元 を 選 ぶ 判 別 次 元 の 選 択 は 棺 関 の 高 い も の で 分 散 の 低 い も の を 選 択 す る が , 同 時 に 分 散 の 低 い も の も 選 択 す る こ と に し た . 相 関 の 高 い 次 元 だ け を 選 択 し た 場 合 , そ の 次 元 の 全 相 関 を 調 べ る . も し , 他 の 次 元 に 対 し て の 相 関 が 低 い 値 ば か り で あ っ た と き は , そ の 次 元 は 選 択 さ れ な い 方 が よ い と 思 わ れ る か ら で あ る . ま ず , ア ン ケ ー ト 調 査 に よ っ て 得 ら れ た ベ ネ フ ィ ッ ト 評 価 デ ー タ か ら , 判 別 次 元 の 相 関 係 数 を 求 め る た め に , 平 均 , 分 散 , 共 分 散 を 求 め るX
lX
,
X
p 1 X 11 X '1x
p 1 2 X 12 X 22x
p' n X ln X 'n X p nX
,
平 均 ベ ク ト ル 2 pxi
一
VA-X
分 散 共 分 散 行 列 IS1'S12…
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¥SplSp2'・,S
p2 J 相 関 行 列 1 2 3 p p p z 冒 Z γ ' γ ' γ '••.
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1 2 3 i t z g zrrr
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l 2 3 3 一 = . = . . r ' -﹁r '
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p t i v t t p q u q ur
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2 t p l l T ' T '2-3
変 数 の 相 関 分 析 ア ン ケ ー ト に 用 い た 項 目 の 総 組 み 合 わ せ に つ い て の属性相関を求める. 変数の相関分析では,2
3
項 目 の 組 み 合 わ せ23C
2二2
5
3
通 り に つ い て , 属 性 相 関 を 求 め る ファイ係数は, ) JU+
ι υ ( ) C C一 千
7
1 3 一 一G
3
一 一 幻ィ
=Mm
一 一 ×
ト =d×=沼 t 一 一 一0=I
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H
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= c ぺ 一 一 × 一 ; i J i=
、
j ? 三 て 4 Z F 6 = 6 一 一 イ × = × v=45=5η
二 E d q ご F ﹄ 3 H H=
6
5
一 一
8 [ 一 一 FIll 戸 ] 仏 , φ , φソフトドリンク市場における 65 知 覚 ポ ン シ ョ ニ ン タ の 研 究 カイ二乗値は,
x
2=N'
φ2
X2=2500X (-0.087)2 =18.92x2
分割表でX
2は自由度l
のカイ二乗分布にしたが うので,有意水準を0.1%
として X2主主1
0
.8
であれ ば,その対のベネフィット変数に関連があるものと みなして,その一方を削除することにする2-4
スクリーニング [判別次元]と[ベネフィット変数]の選択をも とに,母データから選択せれない次元と変数を削除 しでしょうデータを作成し,判別分析を行う.2-5
判別分析 判別分析によって求められた回答は,それぞれの 変量が合成変量となる.合成変量を2つ選択して縦軸 と横軸にし,合成変量の値を各座標点とする個体の 散布図を出力し,マッピングの妥当性を求める.極 端な1
極性,2
極性が現れたときは,選択した変数に 誤りがあるとして2
-
2
へ戻って判別次元と変数を選択 し直す2-6
ソフトドリンクの商品空間 棺関比が最大のベネフィット変数と,次に大きな 変数をそれぞれ第一,第二合成変量として座標軸に し,マップを作る.各判別次元が正解と判別された 合成変量の童心を,それぞれの判別次元の座標点と してマップの空間上に表示する.また,ベネフィッ 卜変数の方も相関係数を座標点として同じマップ上 に表示する.ただし,空間の原点に近い判別次元と ベネフィット変数は,空間での位置を規定すること が少ないので,表示を省く. 2-7 商品空間におけるベネフィット変数 商品空間におけるベネフィット変数の位置から, 既存商品から離れた市場の隙聞を探す 単純に考え て隙聞の部分には既存商品がないので,その空間に 当てはまる商品を作れば,売れやすいはずである. 3. 研究結果 判別次元の相関係数の計算結果を表2に示す. 表2.
相関係数表 2 3 4 5 E 7 8 9 10 果 汁 飲 料 コーヒー 紅 茶 お茶 H' -7飲 炭 酸 飲 料 健 康 飲 料 乳 酸 菌 飲 清 涼 飲 料 野菜'l"1 -l果 汁 飲 料 -0司0975 O. 21051 O. 12129 0.17838 O. 14248 0.43415 0.76705 0.39605 0.56393 2コーヒー 0.0975 0.63387 0.2786 -0.4334 。1755 -0.1379 -0.1417 -0, 3363 O. 11972 3紅 茶 O. 21051 0.63387 0,08869 0.3373 -0.2031 -0.4159 -0.0142 O. 12280 0, 2171 4お茶 O. 12129 -0.2786 0.08869 O. 39161 -0. 1064 -0.0264 -0.0777 0.29542 -0.0700 5 H'-i飲 。17838 -0.4334 -0.3373 O. 39161 0.46556 0.32508 0.05282 O. 68644 0.04475 E炭 酸 飲 料 日14248 -0. 1755、
O.2031 -0. 1064 0.46556 0.06141 ー0.0023 0.61169 0.01468 7健 康 飲 料 0.43415 -0. 1379 -0,4159 -0.0264 0.32508 0.06141 0.53345 。1081 0.75619 E乳 酸 菌 飲 O. 76705 O. 1417 O. 0142 -0.0777 O. 05282 -0.0023 0.53345 O. 17168 0.61119 日 清 涼 飲 料 0.39605 -0.3363 O. 12280 0.29542 O. 68644 O. 61169 -0. 1081 O. 17168 -0.2611 10野 菜γ r 0.56393 O. 11972 -0. 2171 -0.0700 0.04475 0.01468 0.75619 0,61119 -0. 2611 平均 0.37163 0.01523 0.08679 0.13378 0.23738 目。18083 0.24218 0.29000 0.25784 0.25621 分散 O. 11014 0.20798 0.19657 O. 13164 O. 19130 O. 15240 O. 19691 O. 16267 0.18469 ー。193756
6
Mar.1993 Vo1.28-B, 平成5年, 第28号B, 愛知工業大学研究報告, 0コ ー ヒ ー 喉 が 乾 い た 時 に よ い 。 果 汁 飲 料 。 清 涼 飲 料 ホットでもよい 。紅茶 茶 龍 烏プ
い つ で も 飲 め る ベネフィッ卜変数の選択結果 相関比rニ0
.
5
をめやすとして般に相関係数を選択 した目選択された相関係数の数は,1
8
にした目 ここでいったん選択された変数は属性相関に計算を 行った後で,再度評価した.そこで属性相関の計算 結果をもとに,最終的に1
5
変数が選択された 3 - 1 野菜ジュース0 。 炭 酸 飲 料 冷やして飲みたい 判別分析の結果 3-2 ソフトドリンクのポジショニング図 ホyト で も よ い 図3
図2は,合成変量 1つ 1つをプロットした図であ これでは見にくいので,この点の重心を判別ベ クトルとし,それぞれの次元で合成変量の値の重心 を計算した.表3はその結果である. る, @和食にあう UIl: が 時 乾 に い スッキリ ょた @ さ わ や か い 一 @ 風呂上がり に飲みたい @ 野 村 良 い デ ザ イ ン に 引 かれて買う │ 疲 れ た と きι
/
に飲みたい . 飲むメーカーを @ 決めている @ @お酒に混ぜて良い げ フ ト な 2 tC まろやか 健もに よい 朝貴に あう る 太 町 @ て が つ い よ嫌 にき 人好 たく@さん 飲めない い つ で も 飲める 表3.
合成変量の重心 第l合 成 ベ ク ト ル 第2合 成 ベ ク ト ル 果 汁 飲 料 0.11717 0.3072 コ ー ヒ ー 0.96784 1. 51931 紅 茶 0.51282 0.91613 お 茶 -2.6207 0.27891 炭 酸 飲 料 0.29534 1. 1572 清 諒 飲 料 0.16639 0.5517 野 菜γュ-J -0.2113 ー0.6869 冷 や し て 飲 み た い 図4
ベネフィット変数のポジショニング図 (第l
相関比=
0
.6
0
8
第2
相関比=
0
.
5
7
1)
3 2。
第 2 合成変量 可 可 2 すその他(
7
5
0
)
-
2
第l合成変量 + 1群(
2
5
0
)
02
群(
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5
0
) {
3
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群(
2
5
0
)
x4
群(
2
5
0
)
図2.
ソフトドリンクのポジショニング図-
2
4ソフトドリンク市場における