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ユーグレナの死滅期における自己タンパク分解-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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香川大学農学部学術報告 第42巻 第1号 23∼28,1990

ユーグレナの死滅期における

自己タンパク分解

佐藤 優行,三宅 隆夫

AUTOPROTEOLYSIS DURINGDEATH PHASE OF

且こ/G乙且M G&4C〟」S

MasayukiSATOandTakaoMIYAKE

Cellsof軸IenagYtlCihsinbuffersuspensionwerealmostextinctafterincubationat250Cfor96hr・under the anaerobic conditionsDuring this death phase,many prOteinsincells were decomposedby autolytic

processandreleasedoutsidecellsh Specificactivityofproteinaseincreasedinthesecells.Butthisincrease WaS repreSSed to some extent by addition of cyc10heximidein the cellsuspension.And the proteinase

activitywasmainlyinhibitedbypepstatinATherefore,majorproteinaseindeathphasecellswassuggest・ edtobeacidproteinase,WhichmightbefreShlysynthesizedinthesecells ユーグレナの細胞は緩衝液にけんだくし,通気を遮断した状態で250Cに静督した時,96時間後にはほぼ100%死滅 した.この死滅期の間に細胞内タンパク賀は自己分解され,細胞外へ放出された.その間に細胞内プロテアーゼの 比活性が増大し,その増大はシクロへキシミドの添加によりある程度抑えられることが明らかになった.また死滅 期のプロテアーゼ活性はペプスタチンにより強く阻害されることから,酸性プロテアーゼが主体であろうと予測さ れ,しかもこの時期に新たに合成される可能性が示唆された. 緒 生物たちは彼らの生命活動によって環境から収奪した分だけ,それに見合った内容を環境へ返納する義務がある. そのことが地球という限られた空間と素材の下で多種多様の生物が長期にわたって共存していく上に必須の条件で ある.したがって,地球の生物あるいは生態系全体としては,生きて増殖する活動のための機構を持っているだレナ でなく,環境の原状回復のために死んで解体することを目的とする機構をも持っているのではなかろう、か.そのよ うな立場から,大橋らは,「プログラムされた自己解体モデル」という仮説を提唱した(1).この仮説は主として微生 物などの細胞レベルにおける自己解体を論じたものであり,その中で原生動物であるテトラヒメナを用いた実験デ 一夕が仮説を支持する実証例として報告されている. 我々は大橋らの仮説に共鳴し,それを実証することを目指して−・連の研究を行なってきた(2ト(7).すなわち,死滅 期に積極的な自己解体を示す好適な現象を種々な微生物にわたって探してきた.今回はテトラヒメナと同様原生動 物の−・種であるユーグレナの細胞を用いた実験結果を報告する.まず細胞集団を適当な条件の下におき死滅期へ導 く.その時に細胞内タンパクが解体されることを確認した.同時に細胞内プロテアーゼの比活性が増大すること, その活性増大が蛋白合成阻害剤シクロヘキシミドによって抑えられることが観察された.さらに,死滅期に入る前 と入った後とでは細胞内に存在するおもなプロテアーゼの種類が異なっている可能性が示唆された.これらのデー

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香川大学農学部学術報告 第42巻 第1弓(1990) 24 タからユ・−グレナにおける自己タンパク分解の機構について考察した. 実験ネオ料および方法 Lユーグレナ 実験には軸Jβ乃αgγαC去ぬSM−ZKを使用した.これは大阪府立大学農学部栄養化学研究室から分譲を受けたも のである.SM−ZKは軸IenagYmihs Zを親株として,ストレプトマイシン処理により得られた葉緑体欠損変異 株である(8). 2 培養方法 培養は宮武(9)に準じて行なった.すなわち保存培養にはプロテオースペプトンー寒天培地を,液体培養には Koren−Hutner培地(10)を使用した.後者の場合,培地を500ml容坂口フラスコに99mlずつ分注し,加圧滅菌(120◇C, 10分)した.これに定常期の培養1mlを接種し,250Cの下,往復振退機上(毎分90回往復,振幅6cm)で振逸した. フラスコにはシリコ栓をし,通気のよい状態で行った.SM−ZK株は光を必要としないが,Z株と同じ振逸機で培養 したため,12時間明,12時間暗の反復光条件で行った. 3死滅期の誘発 定常期(培養4∼6日間)に入った細胞を遠心分離により集め,その細胞を殺菌水およびMcIIvaine緩衝液(pH 65)でそれぞれ1回ずつ洗浄した.洗浄細胞を同綬衝液に再けんだくし,これを適当な試験管にほぼ一杯になるよう 入れ,ゴムキャップで密栓した.これを250Cに静置した.この操作はすべて無菌的に行った. 4細胞破砕および粗酵素液の調製 培養液または細胞けんだく液から遠心分離(5000rpm,5分)により細胞を集め,得られた湿菌体を5mMの2− メ)t/カプトエタノールを含むMcIIvaine緩衝液(pH45)で洗浄した.これを同緩衝液にけんだくし,一層量にした 後,00Cの下30秒間ずつ5回遊音波で破砕した.これを遠心分離(10000rpm,60分)し,得られた上清液を粗酵素 液とした. 5分 析 プロデアーゼ活性の測定はKrauspeら(11)の方法に準じ,それを次のように改変して行った.すなわち,2%アゾ カゼイン(pH45)を基質とし,その0,25mlに粗酵素液0.25mlを00Cの下で加え,これを300Cで30分間反応させた. これに10%トリクロロ酢酸を07ml加え,反応を停止させた.これを水中で10分間放置した後,遠心分離(3000rpm, 10分)で沈殿を取りのぞき,得られた上澄み液を366nmで比色した.ブランクには基質のみを30分間インキエペー 卜したのち,酵素液とトリタロロ酢酸を加えたものを用いた.1unitはこの条件下で,1分間に吸光度を01増加さ せうる酵素盈とした. タンパク質およびその分解物(ペプチド類,遊離アミノ酸)を含めてLowry−Folin法(12〉により求めた.標準物質 には,牛血清アルブミンを用いた. 全細胞数は,適当に希釈した試料025mlをけい繰入りスライドグラス上に載せ,顕微鏡で計数した.この時試料 をあらかじめ熱処理(500C,1分)して細胞の運動を止めて用いた.死細胞の判定にはメチレンブルー溶液による 染色検錬法(13)を用いた.なお細胞内顆粒などが洗出して空洞化した細胞をも死細胞とした.また死滅率は全細胞数 に対する死細胞数の百分率で表した. 6.基質および試薬 牛血清ア)t/プミン,アゾカゼインはSigmaChemicalCoより,2−メルカプトエタノー)t/,シクロヘキシミド,

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25 佐藤優行,三宅隆夫:ユ・−グレナの自己タンパク分解 フツ化フユニルメチルスルホニルは和光純薬工業株式会社より,ペプスタチンA,ロイペプチンはペプチド研究所 株式会社より,それぞれ購入した. 実 験 結 果 1死滅期におけるタンパク質の変化 SM−ZK■株を通常の培養をした場合,細胞数は4日目で最大に達し,約−・カ月間は生細胞が減少しない.その後10 日間にほぼ全細胞が死滅した.より早く,確実に死滅期を誘発させる条件を検討した結果,実験方法の項に述べた ように細胞を緩衝液にけんだくし,密栓静置により窒息死させる方法を採用した.その死滅期に細胞がどの程度死 んでいき,その間に細胞内のタンパク質およびその分解物の畳がどのように減少していくかを調べた. Fig1に細胞の死滅率および細胞内の Lowry陽性物質残存率の経時変化を示した.コ ントロ・−ルとは死滅期誘発処理を行わず,通常 の好気培養を続けた場合のデータである.24時 間後に約50%,96時間後にはほぼ100%死滅して いた.Lowry陽性物質の残存率は細胞内と外と を加えた全量に対する内畳の百分率で表した. 時間の経過とともに減少し,48時間後に70%, 96時間後には32%に減っていた.この間にタン パク質は分解されて細胞外へ放出されたものと 考えられる. そこでこれら細胞内タンパク質の低分子化率 を調べた.すなわち細胞抽出液内の5%トリク ロロ酢酸可溶性Lowry陽性物質量が全陽性物 質に占める割合を求めた.死滅期が進むにした がって低分子化率は高くなり,72時間後に約85 %とピークになり,スタート時にくらベ2倍以 上高い率となった. ︵婆sコ8雇SpuコOd20Uむ人妻SOd−トトきOJ−ヨp叫お銭 0 24 48 72 96 Incubation time(hr・) Fig1Extinctionratiounder・AnaerobicConditions andResidualLowry−pOSitiveCompoundsinthe Death Phase Ce11s

●:eXtinctionr・atiowhence11swereincubated anaerobicallyin McIlvaine buffer(pH6”5)at 250C0(control):eXtinction ratio when the aerobicculturewaskept ◎:r・eSidualLowry −pOSitivecompoundsinthedeathphasecells 2“プロテアーゼ活性の変動 前項までの実験で,細胞の死滅期に細胞内のタンパク質が自己分解されて外へ放出されることが予測された.そ こでこの死滅期の自己タンパク分解に働いていると考えられる細胞内プロテア1−ゼ活性がどのように変動するか調 べた.その結果をFig2に比活性で示した.同時にタンパク合成阻害剤シクロへキシミドを細胞けんだく液に100 〟g/mlになるよう添加した場合のプロデアーゼ比活性をも図示した. 死滅期に入った細胞では,時間とともにプロテアーゼ比活性は上昇し,48時間後に約2倍,96時間後には4倍以 上に増大した.ただし,細胞当たりの活性で見るとこの間あまり大きな変動はなかった.なお前項と同じコントロ ールの細胞では,比活性の増大は全く示さなかった.一男,シクロへキシミドを添加した場合の死滅期細胞では, 無添加に比べ明らかに比活性が低くなっていた. 3プロテアーゼインヒビターの影響

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26 香川大学農学部学術報告 第42巻 第1号(1990) Krauspeらはユーグレナの葉緑体が生成さ れる時関与するプロテアーゼの種類を明らかに する方法として,数種のプロテアーゼインヒビ ターを利用した(14),(15).それに準じて死滅期の細 胞内プロテア1−ゼ活性が各種インヒビターによ ってどの程度阻害されるかを調べた.システイ ンプロテアーゼのインヒビターとしてロイペプ チンを,酸性プロテアーゼに対してペプスタテ ンAを,セリンプロテア、−ゼに対してフツ化フ ェニルメチルスホニル(PMSF)をそれぞれイ ンヒピタ・一に用いた.これらを作用液中で20 〟Mになるよう添加し,その阻害率を求めた. Fig3に示したようにロイペプチンの阻害率は 死滅が進むに従って低下しており,その道にペ プチスタテンの阻害率は上昇した.−・方,PMSF はどの時期の粗酵素にも阻害が認められなかっ た. 考 察 Krauspeら(14)′(15)は暗条件で培養したユヤーグレナの 細胞けんだく液に光照射を開始しタロロブラストを生 成させ,その時クロロプラスト合成用アミノ酸を供給 するために働くプロテアーゼについて−・連の研究を行 っている.その時主役を演じるのはシステインプロテ アーゼであること,光照射はタンパク分解活性の制御 因子ではなく照射前に存在している活性だけでタロロ プラスト合成に必要なアミノ酸を十分供給できるであ ろう,といった結果を得ている.我々は細胞が生きて いる間の増殖とか合成のために必要な代謝回転として のタンパク分解ではなく,死滅期の,つまり死んで自 己解体するための自己タンパク分解に注目している. したがって,同じ自己タンパク分解でも酵素の種類や 制御機構は当然Krauspeらの結果と異なることが予 想される.実際,本実験におけるタンパク分解に働く 酵素は,Fig.3に示したようにペブスタチンにより阻 害されたことから,酸性プロテアーゼではなかろうか と予測される.大橋らの仮説にもあるように我々は, 自己解体用のサブユニットとしてリソゾ・−ムを想定し ︵ぎ\︸tun︶翳苫lβ○已uO合一七︶Ud U芯.6鼠s 4 5 3 0 0 0 1 2 0 0 24 48 72 96 Incubation time(hr)

Fig2EffectofCycloheximideon Speciac

Activity of Proteinasein the Death

Phase Cells

Cellswereincubatedanaerobicallyat

250CinMcIIvainebu任er(pH6h5)with CyCloheximide(○)or without(●)

Control cells were kept under aerobic

Culture conditions without cyclohex・

imide(◎) 0 0 0 4 3 2 ︵訳︶ 已Ot︶−q苫uI 0 48 96 Incubation time(hr)

Fig”3h Effect ofInhibitor・S On Pr・Oteinase Activityin the Death Phase Cells Proteinase activity was assayedwith

leupeptine([:::コ),pepStatin A(匡≡≡ヨ)

Or.PMSF(−)in the crude enzymes prepared fr.om the cells which were incubated anaer■Obicallyin McIIvaine buffer(pH6り5)at250C.

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佐藤優行,三宅隆夫:ユーグレナの自己タンパク分解 27 ている.酸性プロテアーゼはリソゾーム内酵素として知られているところから,この結果は我々の想定を支持する ものと考えられる. 細胞当たりのプロテアーゼ活性は大きな変動がなかったにもかかわらず,Fig3の結果からは死滅期の進行に伴 って酸性プロテアーゼ活性の占める割合が高くなった.−L方,Fig2に示したようにプロテアーゼ比活性の増大がタ ンパク合成阻害剤であるシクロヘキシミド添加によりある程度抑えられた.これらの結果から考察すると,死滅期 のユ1−グレナ細胞内では,自己タンパク分解の目的で主に酸性プロテアーゼが新たに合成されるのではない かと考 えられる. このように死滅期の細胞あるいはオ・−トリシスを起こす細胞は自己の巨大分子を解体するために,タンパクなど の巨大分子を新たに合成しているという可能性を示唆あるいは証拠立てる材料が今までにいくつか報告されてい る.バクテリアではSayar・eらによるStY砂tococcusjbecalis(16)の場合やSvarachornらによる励cillus subtilis(17) の場合などがある.また大橋らによるテトラヒメナの酸性ホスファタ・−ゼの場合(18〉がある.助c(血z和明γCβS Cβγ− βび去二s∠αβの細胞を用いた我々の研究(7)でもその可能性を示唆した.最近同酵母細胞を用いた実験でさらに有力な証拠 が得られつつある.今後さらに多くのこうした事例が明らかになることにより,「プログラムされた自己解体」仮説 はますます確かなものへと発展していくものと確信する. 謝 辞 ユ・−グレナを分譲していただき,その培養の仕方などをご教示いただいた大阪府立大学農学部の北岡正三郎教授, 宮武和事博士に感謝いたします.貴重な助言とあたたかい励ましをいただいた本農学部岩庶章二郎教授および放送 教育開発センター大橋力教授に感謝いたします. 引 用 (1)大橋 力,中田大介,菊田 隆,村上和雄:科学 基礎論研究,18,79(1987) (2)SATO,Mand MSHIGEMURA:7セch“BullPbc Agク「此酢紺αび搾れ37,7(1985) (3)SATO.Mand Y“OHTA:7セck助IJFbcAgク′ 互毎閣肌Zび如町37,11(1985)

(4)SATO,M,YOKADA and KTAOKA:7セck β〟JJj屯cAgγ1互嘩狩紺α肋∠〝,釘,17(1985)

(5)佐藤優行,吉野東吾:香川大学農学部学術報告, 39,75(1987)

(6)SATO Mh,HMoRIMOTO and T“00HASHI: Agγ∠cβ去oJCゐβ椚リ51,2609(1987)

(7)SATO,M,SUEMATSU,H SENOO and ChNAR IMATSU:7bckβ〟llFbcAgrKqgawa thliv”, 41,85(1989) (8)MccAL.LA DR∴/伽わz∂OJ,10,491(1963) (9)宮武和孝:遺伝,40,49(1986) ㈹ KoREN,LE.and SH HuTNER:JPYOiozool, 文 献 10,491(1963) (lD KRAUSPE,Rand AScHEER:AnatBiochem”, 153,242(1986) (12)LowRY,0H,NJRosEBROUGH,A.L FARR and RJRANDALL:JBi0[Chem.,193, 265(1951) (13)微生物研究法懇談会編:微生物学実験法,202,講 談社(1975)

(14)KRAUSPE,Rand ASHEER:JPlant Physirol., 123,441(1986)

u5)A.SHEER,BPARTHIER and RKRAUSPE:J 邦肌り物S套oJリ123,455(1986) u6)SAYARE,M,LDMooREandGDSHOCKMAN: /助cねγわJリ112,337(1972) u7)SvARACHORN,A,A”SHINMYO,TTsucHIDO and MTAKANO:].Ferment.Bioeng,68, 252(1989) ㈹ 大橋 力,中田大介,菊田 隆:生化学,55,

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28 香川大学農学部学術報告 第42巻 第1号(1990)

667(1983)

参照

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