ブドウの早期落葉に関する研究 XI 葉脈黄変葉の発生に及ぼすCuの土壌施用と湛水の影響-香川大学学術情報リポジトリ

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ブドウの早期落葉に関する研究

刃 葉脈黄変葉の発生に及ぼす−Cuの

土壌施用と湛水の影響

樽 谷

勝 Ⅰ緒 口

前報(8)において,Campbell,sEarlyの新梢切枝およびさし木常に対する硫酸銅溶液の水耕実験の結果,葉脈黄

葉の発生はCu蕃の特異な徴候であることを認めた。本報では,ポットに植栽中のCampbell’sEarlyに対して,硫 酸銅の粉末を土壌に施し,湛水処理とあわせて,それが菜脈費変薫の発生に及ぼす影響を観察した結果を報告する・ 本報の実験に関して,ご懇篤なるご教示を賜わった京都大学教授小林華博士をらびに香川大学教授葦沢正義博士に

対して,深甚の謝意を表する.本報の要旨は園芸学会昭和45年度秋季大会において発表した・さらに本報は京都大学

審査学位論文の−・部である. ⅠⅠ材料および方法 1.供試材料 1/2000aポットに水田土壌を入れ,1年生Campbell’sEaIlyの接木苗(台木420A)を植え・ておき,1970年5月15 日に1ポット当たり硫酸銅粉末を5gおよび10g施用した2区と,無施用区を設けた…ついで6月21日より,それぞ れ土壌湿度を適湿状態(対照区)と湛水状態(湛水区)にし,第1図のようにして実験をした・ 第1図1/2000aポットによる実験の方法 実験に供した土壌の組成,pHおよび密換酸度は第1・2真のとおりである.また,湛水処理前(6月18日)の風 臥乾細土中のN/5KCト置換性Cuの畳を調べた結果は第3真のとおりである・

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第2表 供試土壌のpHと置換酸度 第1表 供試土壌の器械的組成と土質 (乾土100g中) pH 置換酸度 れき 粗砂 細砂 微砂。粘土 土 質 H20 KCl yl 全酸度 無 施 用 区 5.35 3.98 7…3 21.9 硫酸銅5g施用区 5.37 4.0511、9 35.7 硫酸銅10g施用区 5”39 4.0714.7 44.1 れきを含む 砂 壌 土 6.2 25.1 31−4 37.7 注:分析は沈降法と節別法による1. 注:1)pHの測定は東亜電波工業KK私 撰帯 用ガラス電極pH計DM−1Aによる. 2)置換酸度は大工原民法による. 第3表 供試土壌中のN/5KCl置換性Cu (乾土100g中) 1日間浸出 3日間浸出 6日間浸出 Ppm ppm pPm lO以下 10以下 32 28 56 44 無 施 用 区 10以下 硫酸銅5g施用区 40 硫酸銅10g施用区 60 2.調査項目および方法 (1)土壌Ehの変化 6月20日(湛水処理開始前),6月24日,7月2日,7月8日に,束亜電波工業KK製・折襟用酸化還元電位差計 (RM,PC−211型)によって土壌Ehを測定した. (2)薬脈黄変薬の発生と根群の状態 7月5日(湛水処理後15日)における,英脈黄変葉の発生と落葉状態を調査した‖ また,各区の掘上げを行ない, 根群の細板状態を観察した. (3)基部莫内の微盈要素含盈の分析 7月5日に,各区の基部第1∼4節の薬を採り,葉内のMn,Fe,Cu,Zn含意を,それぞれ原子吸光法によって 析した. ⅠⅠⅠ実 験 結 果 (1)土壌Ehの変化 湛水処理前・後における各区の土壌Ehの変化状態を調査した結果は,第4表のとおりである. 第4表 湛水処理前・後における土壌Ehの変化 6月20日 6月24日 7月2日 7月8日 (処理前) (処理3日目) (処理12日日) (処理18日目) 対照区 湛水区 対照区 湛水区 対照区 湛水区 310 ? 376 315 ‡ 332 340 i 358 291 104 252 143 222 139 305 279 42 水−31 298 272 45 水−63 322 291 40 水−41 無 施 用 硫酸銅5g施用 硫酸銅10g施用 注:東亜電波工業KK乳 携帯用酸化還元電位差計RMIPC−211型により測定

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231 第24巻第2号(1973) すをわち,湛水区の土壌Ehは,湛水処理の開始後次第に低下した.処理後12日目以降の測定結果では,いちじる しく土壌Ehが低下し,土壌が還元状態となった (2)英脈黄変薬の発生と根群の状態 7月5日と7月7日における葉脈黄変薬の発生と落葉状態を調査した結果は,第5表をらびに第2図のとおりであ る. 第5表 硫酸銅の土壌施用と湛水処理が黄変・落斐に及ぼす影響 (新杓1枝当たり:枚) 7 月 5 日 7 月 7 日 黄変乗 務薬 計 資変菓 落葉 計 対照区 湛水区 対照区 湛水区 対照区 湛水区 0 0 0 1‖3 0 13 13 0 13 1.7 0−5 2.2 20 0 2、0 53 0.3 56 0 0 0 1、3 0.7 2.0 0.6 09 1し5 2.6 1.7 4。4 1い5 25 40 43 516 10.0 無 施 用 硫酸銅5g施用 硫酸銅10g施用 すなわち,無施用対照区以外の各ポソトには黄変菓が発生したが,葉脈黄変薬は硫酸銅施用・湛水区のみにみられ た..こ.の場合,硫酸銅10g施用。湛水区においては,黄変薬の発生と,それによる落葉が多くみとめられた. 第2図 案脈費変薫の発生状態(硫酸銅10g施用湛水区)

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また,葉脈黄変薬の発生後(湛水処理後12日目)に根群の細板状憩を観察したところ,第3図のように,湛水処理

を行なった各区の細根は黒変し,毛細根はすでに枯死,脱落の状態であった・ 第3図 編上げによる根群状態の比較 無施用対照区 無施用湛水区 硫酸銅5g施用 硫酸銅10g施用 左より (3)基部案内の微盈要素含盈 7月5日に各区の基部葉(第1∼4節葉)について,案内のMn,Fe,Cu,Zn含孟を分析した鶴来は,第6表のと ぉりであり,湛水処理の各区では,対照区にくらべてCu含急が高く,MnおよびFe含最もやや高い傾向にあった 第6表 硫酸銅の土壌施用と湛水処理が基部葉内の 微盈要素合皮に及ぼす影響 (乾物中:ppm) Mn Fe Cu Zn 170 8.3 68 195 11…1 65 180 14.0 71 190 19.5 79 233 15.8 88 212 20.5 71 対照区 173 湛水区 255 対照区 204 湛水区 242 対照区 180 湛水区 276 無 施 用 硫酸銅5g施用 硫酸銅10g施用 ⅠⅤ 考 察

湛水処理によって土壌Ehが低下し,細根が黒変・枯死したことは,林・脇坂ら(2)の実験ならびに筆者の実験(4)と

一・致する..本実験の結果において,とくに注目すべきこと吼土壌に施されたCuが湛水によって溶出され・それが

根によって吸収されて菓内に入り,葉脈を黄変させる点であるい土壌に肥料あるいは殺菌剤として加わったCuの大

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233 第24巻第2号(1973) 部分は,比戟的浅屑において腐植とキレー・ト化合物をつくって固定された形で存在する(15)小 また,ほかに土壌中に 陽イオンとして溶けているもの,粘土と結合して置換性Cuとして存在するものもある(15)申 したがって,多くのCu 過剰症の発生(1・11・14〉は,土壌の酸度および置換容急に支配され,土壌の粘土と有機物舎監が少ないほどCuが過剰に をりヤすい..Cuの過剰書を軽減するためには,石灰またはリン酸を多く施用することが効果的である(1・9,11,15〉 とい われている。他方,前田(9)が記述しているように,Cuの吸収を抑える要素として,Ca,N,Fe,Pなどがあり,反対 にCuの吸収や体内移動を助ける要素として,K,Mn,Znなどがあげられている. わが国の果樹園土壌におけるCuの集墳軋 大杉・小沢ら(12)の調査で鱒,10%HCl可溶Cu18∼520ppm,三界 ら(10)の調査で吼 比較的表層土壌で288∼557ppmである”このような事例に対して,本実験における硫酸銅粉末施 用ポット中土壌のN/5KCl置換性Cuが,40∼60ppmであることは,上記の報告とほぼイ以ているものと思われる. 土壌が湛水状態になると,土壌Ehが低下し,種々の還元性有事物質を生じ植生を奪する(2・14)が,高橋ら(18〉によ ると,湛水下の土壌中にはCuSあるいはCu2Sが存在し,これが酸化状態のもとでは, CuS+H20+1/202=Cu(OH)2+S と恵るい そしてCuSの溶解度は低いが,作物が天然下でCuを吸収できるのは,CuSの酸化によるものであろうと されている.したがって,ブドウ園の土壌が梅雨期前後において,酸化と還元をくりかえすことによって,CuSあ るいはCu2Sは容易にCu(OH)2の塑として溶出するものと考えられる. 本実験における基部案内の微塵要素含盈の分析結果において,湛水処理の各区のCu含塩が高く,MnおよびFe 含畳もやゃ高い傾向を示したことは,小西ら(3〉をはじめ高橋ら(18)が述べているように,土壌が還元状態にをると, 土壌中において酸化状態で比較的安定していたFe肘,Cu≠,Mn≠ が還元されて易溶化することによるものと思われ る. また,すでに筆者が行をった葉脈黄変薬の恭内要素成分の分析結果(5・7,8)と,本実験の結果をあわせてみたとき, 菜脈黄変葉の発生と菜内のP含量とCu含蓋との相互間に密接な関係があり,Cuが比較的多盈に土壌中に存在する 場合には,土壌が過湿状態になると,土壌中のCuの溶解度が高まり,他方,細根の養分吸収機能が低下することに ともなって,地上部では基部薬内のPは新柄ヤ果実の新生部分への移行が起こる(6)い したがって,土壌中のCu含 立と土壌の還元化は,葉脈黄変薫の発生をもたらす原因または誘因となるものと考えられる. Ⅴ 摘 要

ポットに植栽したCampbe11’sEarlyについて,硫酸銅(CuSO.・5H20)の粉末を土壌に施用したのち,土壌を湛水

して,葉脈黄変薬の発生に及ぼす影響を調査した。、 1‖ 供試土壌はれき質の砂壌土で,pH4.0であった.硫酸銅施用の土壌中におけるN/5rKCl肝換性Cuは,40 および60ppmであった. 2,湛水処理開始後の土壌は土壌Ehが低下し,終わりには細根は枯死した. 3.硫酸銅を土壌に施用して,湛水処理を行なったものは,いずれも新杓基部葉に葉脈黄変薬が発生した.

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献 (9)前田正男:原色作物の要素欠乏・過剰症一診断 と対策,東京,農山漁村文化協会(1969)い

(10)三井進午,天正 治,熊沢喜久雄,藤田 哲,

矢崎仁也:作物体の鉄・マンガン代謝に及ぼす 鋼の影響について(第1報).銅鉱毒地帯に生育 する陸稲のクロロシスに関する現地調査,並び に果樹園に於ける鋼集積状況調査,土肥雑,28, 505−507(1958)巾 (11)三井進午,今泉育良:原色図解作物の要素欠乏 一診断と対策,東京,博友社(1958). (12)大杉 繁,小澤潤二郎:鋼薬剤使用に依る果樹 園土壌の銅寄積に就て,農及園,13(8),7−10 (1938)い (13)高橋英一・,谷田澤迫彦,大平幸次,原田登五郎, 山田芳雄,田中 明:作物栄養学,73w74,135 −136,東京,朝倉書店(1969). (14)山崎 伝:畑作物の湿害に関する土壌化学的並 に植物生理学的研究, 農技研報B,Ⅰ,ト92 (1952), (15)山崎 伝:微鼻要素と多孟要素(土壌・作物の 診断・対策),東京,博友社(1966). 文 (1)藤沼善亮‥微盛宴素の施用とその過剰審,虚及 園,44(8),1201−1204(1969),. (2)林 真二,脇坂章雄:果樹の湿昔について,土 壌の酸化還元電位の低下及び有害還元物質との 関係,園学雑,25(1),59−67(1956)小 (3)小西千賀三,高橋治助:土壌肥料講座,2,108 −111,東京,朝倉番店(1966). (4)樽谷 勝:ブドウの早期落莫に関する研究,Ⅴ 梅雨期の湛水・多湿が早期落葉に及ぼす影響に ついて,香川大農学軌 21,207−216(1970), (5)樽谷 勝‥ブドウの早期落葉に関する研究,ⅤⅠ 新梢基部菓の黄変・落葉に及ぼす恭内要素舎監

の変化 香川大農学報,22(2),123−134(1971).

(6)樽谷 勝‥ブドウの早期落葉に関する研究,ⅤⅠⅠ 新梢基部築からの82Pの吸収・移行について, 香川大農学報,22(2),135−141(1971)い (7)樽谷 勝:ブドウの早期落莫に関する研究,ⅠⅩ 梅雨期における葉脈黄変菓の案内要素成分につ いて,香川大農学軌 24(1),97−103(1972). (8)樽谷 勝:ブドウの早期落葉に関する研究,Ⅹ 集脈黄変薬の発現に及ぼすCu溶液の影響一新 棉切枝およびさし木幼木についての観察,香川 大農学軌 24(1),104−115(1972)..

STUDIES ON THE DEFOLIATION OF GRAPE VINES

IN THE SUMMER SEASON

XIl,Thee能ctofthecopperandthefloodirrigationonthe appearance・Oftheleavesoftheturnln計yellowvein・ Masaru KuRETANI SⅦmma甘y

ThispaperconcernSWiththee駄ctofcoppersulfateappliedtothesoilandthefl00dirrigation

ontheappearanceoftheleavesofCampbell,sEarlygrapeculturedinpot

l“The soilused herewas a graVe11ysandyloam and pH4lOIIAIso the contents ofthe

substitutiveN/5KCl−Cuintheusedsoilwere40and60ppmrespectively

2.The oxidation−reductionvalueofsubmergedsoilwaslow,andfinally the roothairsof

Planthadbeendiedduringthefl00dirrigation

3”BytreatlngOfboth CuSO4・5H20andfl00dirrlgation)theleavesinthe basalpartOf

currentshoothadappearedtheleavesofturnlng−yellowvein

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